IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図1
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図2
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図3
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図4
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図5
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図6
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図7
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図8
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図9
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図10
  • 特許-吸収体の製造方法及び積繊装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】吸収体の製造方法及び積繊装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A61F13/15 321
A61F13/15 357
A61F13/15 380
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020198767
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086639
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健佑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 優喜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 仁
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288960(JP,A)
【文献】特開2020-078490(JP,A)
【文献】特開2007-089826(JP,A)
【文献】特開2015-059287(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110575314(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積繊装置を用い、繊維材料として互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料を含み、且つ繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部と相対的に少ない低坪量部とを一方向に有する吸収体を製造する、吸収体の製造方法であって、
前記積繊装置は、固定ドラムと、該固定ドラムの外周部周りを回転可能に設けられ、繊維材料が積繊される集積用凹部を外周部に有する回転ドラムと、該集積用凹部に向けて繊維材料を飛散状態にて供給する供給路とを備え、該回転ドラムを回転させて該集積用凹部をドラム周方向に沿う搬送方向に搬送させつつ、該固定ドラム側からの吸引によって該供給路に生じた空気流に乗って搬送された繊維材料を、該集積用凹部の底面上に積繊させるようになされており、
前記集積用凹部は、前記高坪量部を形成する第1積繊領域と、前記低坪量部を形成する第2積繊領域とを、ドラム周方向に有し、
前記供給路は、前記第1繊維材料を供給する第1供給路と、前記第2繊維材料を供給する第2供給路とを、ドラム周方向に有し、
前記集積用凹部に対して前記第1供給路から前記第1繊維材料を供給する第1供給工程と、該第1供給工程の後に、該第1繊維材料が積繊された該集積用凹部に対して、前記第2供給路から前記第2繊維材料を供給する第2供給工程とを有し、
前記第1供給工程では、前記第1繊維材料が前記第1積繊領域に優先的に積繊されるように、前記空気流を制御し、
前記第2供給工程は、第1の工程と、該第1の工程の後に行われる第2の工程とに区分され、
前記第1の工程では、前記第2繊維材料が前記第2積繊領域に優先的に積繊されるように、前記空気流を制御し、
前記第2の工程では、前記第2繊維材料が前記第1積繊領域及び前記第2積繊領域の双方に積繊されるように、該空気流を制御する、吸収体の製造方法。
【請求項2】
固定ドラムと、該固定ドラムの外周部周りを回転可能に設けられ、繊維材料が積繊される集積用凹部を外周部に有する回転ドラムと、該集積用凹部に向けて繊維材料を飛散状態にて供給する供給路とを備え、該回転ドラムを回転させて該集積用凹部をドラム周方向に沿う搬送方向に搬送させつつ、該固定ドラム側からの吸引によって該供給路に生じた空気流に乗って搬送された繊維材料を、ドラム周方向の所定の吸引領域にて該集積用凹部の底面上に積繊させるようになされており、
繊維材料として互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料を含み、且つ繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部と相対的に少ない低坪量部とを一方向に有する積繊体を製造する、積繊装置であって、
前記集積用凹部は、前記高坪量部を形成する第1積繊領域と、前記低坪量部を形成する第2積繊領域とを、ドラム周方向に有し、
前記供給路は、前記第1繊維材料を供給する第1供給路と、前記第2繊維材料を供給する第2供給路とを、ドラム周方向に有し、
前記吸引領域は、前記固定ドラム側からの吸引が部分的に可能になされている選択的吸引領域を有し、該選択的吸引領域は、前記第1供給路に対応する第1の選択的吸引領域と、前記第2供給路に対応する第2の選択的吸引領域とを有し、
前記固定ドラムの外周部に、前記選択的吸引領域に対応する選択的吸引領域対応部が配されており、
前記選択的吸引領域対応部は、前記第1の選択的吸引領域に対応し、第1開口部がドラム軸方向に部分的に設けられた非通気性の第1の対応部と、前記第2の選択的吸引領域に対応し、第2開口部がドラム軸方向に部分的に設けられた非通気性の第2の対応部とを、ドラム周方向に有し、前記空気流は、該第1開口部及び該第2開口部を通じてのみ該選択的吸引領域対応部を厚み方向に通過可能になされており、該第1開口部と該第2開口部とは、ドラム軸方向の位置が互いに異なっており、
前記回転ドラムの前記固定ドラムの外周部との対向部分に、前記第1積繊領域に対応する非通気性の第1開口部閉鎖部材と、前記第2積繊領域に対応する非通気性の第2開口部閉鎖部材とが配されており、該第1開口部閉鎖部材は、前記第2開口部とドラム軸方向において同位置にあり、該第2開口部閉鎖部材は、前記第1開口部とドラム軸方向において同位置にあり、
前記集積用凹部の前記第1の選択的吸引領域での搬送中では、前記第1開口部に対し、前記第1開口部閉鎖部材は重ならずに、前記第2開口部閉鎖部材が重なることで、前記第2積繊領域の前記空気流の流量を低減するようになされており、
前記集積用凹部の前記第2の選択的吸引領域での搬送中では、前記第2開口部に対し、前記第2開口部閉鎖部材は重ならずに、前記第1開口部閉鎖部材が重なることで、前記第1積繊領域の前記空気流の流量を低減するようになされている、積繊装置。
【請求項3】
前記第2開口部閉鎖部材のドラム軸方向の長さは、前記第1開口部のドラム軸方向の長さに比べて長く、前記第1開口部閉鎖部材のドラム軸方向の長さは、前記第2開口部のドラム軸方向の長さに比べて短い、請求項に記載の積繊装置。
【請求項4】
前記吸引領域は、前記選択的吸引領域と、前記固定ドラム側からの吸引が全面的に可能になされている全面的吸引領域とを、ドラム周方向に有し、該全面的吸引領域は、前記第2供給路に対応して配されており、
前記固定ドラムの外周部に、前記選択的吸引領域対応部と、前記全面的吸引領域に対応する全面的吸引領域対応部が配されており、
前記全面的吸引領域対応部は、非通気性部材を含まず、前記空気流は、該全面的吸引領域対応部の全域を厚み方向に通過可能になされている、請求項又はに記載の積繊装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種の繊維材料どうしの積層構造を有するとともに、坪量が部分的に異なる吸収体の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の吸収性物品に用いられる吸収体として、木材パルプなどの繊維材料の坪量が部分的に異なり、該坪量が相対的に多い高坪量部と該坪量が相対的に少ない低坪量部とを有する偏在吸収体が知られている。偏在吸収体の典型例として、吸収性物品の着用者の前後方向に対応する方向(縦方向)の中央部に、周辺部に比べて繊維材料の坪量が大きい部分(いわゆる中高部)を有するものが知られている。このような偏在吸収体は、高い液吸収性が要求される部分に体液吸収性(親水性)の繊維材料が偏在し、それ以外の他の部分は繊維材料の坪量が抑制されて厚みが薄いため、液吸収性及び着用感の双方が良好である。
【0003】
また、吸収体の製造装置として、固定ドラムと、外周部に集積用凹部を有する回転ドラムと、該集積用凹部に向けて繊維材料を飛散状態にて供給する供給路とを備え、該固定ドラム側からの吸引によって該供給路内に生じた空気流(バキュームエア)に乗って搬送された繊維材料を、該集積用凹部内に積繊させるように構成された積繊装置が知られている。例えば特許文献1には、回転ドラムにおける多孔性部材の内面側に、バキュームエアの風量及び流れを調整する調整体の配置領域と非配置領域とが、回転ドラムの回転方向に配され、また、固定ドラムの外周部に、吸引が部分的に可能になされた選択的吸引領域と、吸引が全面的に可能になされた全面的吸引領域とが、該回転方向にこの順で配された積繊装置が記載されている。特許文献1に記載の積繊装置によれば、比較的簡単な構造で、偏在吸収体を安定的に製造できるとされている。
【0004】
また、吸水特性が互いに異なる複数種の繊維材料を含有する吸収体が知られている。例えば、親水性のパルプ繊維と疎水性の合成繊維とを含む吸収体は、前者のみを含む吸収体に比べて、柔軟性、クッション性等に優れるという特徴を備えたものとなり得る。特許文献2及び3には、異種の繊維材料どうしの積層構造を含む吸収体の製造に使用可能な積繊装置として、回転ドラムに繊維材料を供給する供給路が、該回転ドラムの回転方向に2つ設けられたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-59287号公報
【文献】特開2007-89826号公報
【文献】特開2020-78490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した構成の積繊装置において、繊維材料が積繊される集積用凹部の底部を形成する部材は通常、バキュームエアが通過可能な多数の吸引孔を有する多孔性部材からなるところ、該積繊装置を用いて坪量が部分的に異なる偏在吸収体を製造する場合には従来、該多孔性部材の開口率(該多孔性部材の表面積に対する該吸引孔の総面積の比率)を部分的に異ならせることで、集積用凹部を通過するバキュームエアの流量(吸引風量)に部分的な差を生じさせ、それによって繊維材料の積繊量を部分的に異ならせる方法が採用されている。図10には、そのような開口率差を有する多孔性部材の一例である多孔性部材90が示されている。多孔性部材90は、吸収体製造時の搬送方向MDの中央域が、相対的に開口率が高く吸引風量が大きい高吸引部91、高吸引部91の搬送方向MDの端部域が、相対的に開口率が低く吸引風量が小さい低吸引部92となっており、多孔性部材90を集積用凹部の底部に用いた積繊装置によって製造される吸収体(積繊体)は、高吸引部91に対応する中央域に、繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部を有し、低吸引部92に対応する端部域に、繊維材料の坪量が相対的に少ない低坪量部を有する。
【0007】
図11のグラフは、多孔性部材90の如き開口率差を有する多孔性部材を集積用凹部の底部に用いた積繊装置を用いて実際に繊維材料の積繊を行った場合の、該集積用凹部の各部の吸引風量と時間との関係を示したものである。図11のグラフの横軸の時間は、集積用凹部が所定の吸引領域を搬送されている時間を示す。集積用凹部を外周部に有する回転ドラムが固定ドラムの外周部周りを回転し、その回転によってドラム周方向に搬送される集積用凹部が、所定の吸引領域(固定ドラム側からの吸引により回転ドラムの内外を通過するバキュームエアが生じる領域)に搬送された直後、すなわち図11のグラフの横軸の時間がゼロのときは、集積用凹部に繊維材料が積繊していないので、高吸引部と低吸引部との吸引風量の差はそれらの開口率の差を反映したものとなり、この状態では繊維材料は高吸引部に優先的に積繊され、低吸引部にはほとんど積繊されない。その後、高吸引部における繊維材料の積繊量の経時的な増加に伴い、高吸引部の吸引風量が減少していき、高吸引部の吸引風量と低吸引部の吸引風量とが同程度になる、すなわち吸引平衡点に達するまで、繊維材料は高吸引部に優先的に積繊され、吸引平衡点に達した後に、低吸引部にも繊維材料が積繊されるようになる。したがって、所定の吸引領域を通過した集積用凹部内に形成された積繊体は、該集積用凹部の高吸引部に対応する位置に高坪量部を有し、該集積用凹部の低吸引部に対応する位置に低坪量部を有する。
【0008】
しかし、このような集積用凹部の底部に開口率差を設けただけの、いわば成り行き任せの積繊方法では、積繊体の各部の坪量の制御が不十分なため、例えば、低吸引部の開口率を低下させた場合には、該低吸引部に形成された積繊体の低坪量部の一部に、繊維材料が存在しないか又は繊維材料の坪量が設計値よりも少ない部分が生じるおそれがあり、また、低吸引部の開口率を増加させた場合には、該低応力部に隣接する高吸引部の積繊状態が悪化するおそれがある。特に、互いに異種の繊維材料を含む吸収体において坪量を部分的に異ならせるべく、前述した成り行き任せの積繊方法を採用すると、このような不都合を招く可能性が高まる。
【0009】
本発明の課題は、繊維材料の坪量を設計どおりに制御することができ、互いに異種の繊維材料を含む吸収体において坪量を部分的に異ならせる場合に有用な技術を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、積繊装置を用い、繊維材料として互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料を含み、且つ繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部と相対的に少ない低坪量部とを一方向に有する吸収体を製造する、吸収体の製造方法である。
本発明の吸収体の製造方法の一実施形態では、前記積繊装置は、固定ドラムと、該固定ドラムの外周部周りを回転可能に設けられ、繊維材料が積繊される集積用凹部を外周部に有する回転ドラムと、該集積用凹部に向けて繊維材料を飛散状態にて供給する供給路とを備え、該回転ドラムを回転させて該集積用凹部をドラム周方向に沿う搬送方向に搬送させつつ、該固定ドラム側からの吸引によって該供給路に生じた空気流に乗って搬送された繊維材料を、該集積用凹部の底面上に積繊させるようになされている。
本発明の吸収体の製造方法の一実施形態では、前記集積用凹部は、前記高坪量部を形成する第1積繊領域と、前記低坪量部を形成する第2積繊領域とを、ドラム周方向に有している。
本発明の吸収体の製造方法の一実施形態では、前記供給路は、前記第1繊維材料を供給する第1供給路と、前記第2繊維材料を供給する第2供給路とを、ドラム周方向に有している。
本発明の吸収体の製造方法の一実施形態では、前記集積用凹部に対して前記第1供給路から前記第1繊維材料を供給する第1供給工程と、該第1供給工程の後に、該第1繊維材料が積繊された該集積用凹部に対して、前記第2供給路から前記第2繊維材料を供給する第2供給工程とを有している。
本発明の吸収体の製造方法の一実施形態では、前記第1供給工程では、前記第1繊維材料が前記第1積繊領域に優先的に積繊されるように、前記空気流を制御する。
【0011】
本発明は、固定ドラムと、該固定ドラムの外周部周りを回転可能に設けられ、繊維材料が積繊される集積用凹部を外周部に有する回転ドラムと、該集積用凹部に向けて繊維材料を飛散状態にて供給する供給路とを備え、該回転ドラムを回転させて該集積用凹部をドラム周方向に沿う搬送方向に搬送させつつ、該固定ドラム側からの吸引によって該供給路に生じた空気流に乗って搬送された繊維材料を、ドラム周方向の所定の吸引領域にて該集積用凹部の底面上に積繊させるようになされており、
繊維材料として互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料を含み、且つ繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部と相対的に少ない低坪量部とを一方向に有する積繊体を製造する、積繊装置である。
本発明の積繊装置の一実施形態では、前記集積用凹部は、前記高坪量部を形成する第1積繊領域と、前記低坪量部を形成する第2積繊領域とを、ドラム周方向に有している。
本発明の積繊装置の一実施形態では、前記供給路は、前記第1繊維材料を供給する第1供給路と、前記第2繊維材料を供給する第2供給路とを、ドラム周方向に有している。
本発明の積繊装置の一実施形態では、前記吸引領域は、前記固定ドラム側からの吸引が部分的に可能になされている選択的吸引領域を有し、該選択的吸引領域は、前記第1供給路に対応する第1の選択的吸引領域と、前記第2供給路に対応する第2の選択的吸引領域とを有している。
本発明の積繊装置の一実施形態では、前記固定ドラムの外周部に、前記選択的吸引領域に対応する選択的吸引領域対応部が配されている。
本発明の積繊装置の一実施形態では、前記選択的吸引領域対応部は、前記第1の選択的吸引領域に対応し、第1開口部がドラム軸方向に部分的に設けられた非通気性の第1の対応部と、前記第2の選択的吸引領域に対応し、第2開口部がドラム軸方向に部分的に設けられた非通気性の第2の対応部とを、ドラム周方向に有し、前記空気流は、該第1開口部及び該第2開口部を通じてのみ該選択的吸引領域対応部を厚み方向に通過可能になされており、該第1開口部と該第2開口部とは、ドラム軸方向の位置が互いに異なっている。
本発明の積繊装置の一実施形態では、前記回転ドラムの前記固定ドラムの外周部との対向部分に、前記第1積繊領域に対応する非通気性の第1開口部閉鎖部材と、前記第2積繊領域に対応する非通気性の第2開口部閉鎖部材とが配されており、該第1開口部閉鎖部材は、前記第2開口部とドラム軸方向において同位置にあり、該第2開口部閉鎖部材は、前記第1開口部とドラム軸方向において同位置にある。
本発明の積繊装置の一実施形態では、前記集積用凹部の前記第1の選択的吸引領域での搬送中では、前記第1開口部に対し、前記第1開口部閉鎖部材は重ならずに、前記第2開口部閉鎖部材が重なることで、前記第2積繊領域の前記空気流の流量を低減するようになされている。
本発明の積繊装置の一実施形態では、前記集積用凹部の前記第2の選択的吸引領域での搬送中では、前記第2開口部に対し、前記第2開口部閉鎖部材は重ならずに、前記第1開口部閉鎖部材が重なることで、前記第1積繊領域の前記空気流の流量を低減するようになされている。
本発明の他の特徴、効果及び実施形態は、以下に説明される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、繊維材料の坪量を設計どおりに制御することができ、互いに異種の繊維材料を含む吸収体において坪量を部分的に異ならせる場合に有用な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、本発明によって提供される吸収体の一実施形態の模式的な斜視図である。
図2図2は、本発明の積繊装置の一実施形態を一部透視して模式的に示す斜視図である。
図3図3は、図2に示す積繊装置をドラム軸方向から見た場合の模式的な側面図である。
図4図4は、図2に示す積繊装置の集積部の模式的な分解斜視図である。
図5図5は、図2に示す積繊装置の集積用凹部の一部のドラム周方向に沿う断面を模式的に示す断面図である。
図6図6は、図2に示す積繊装置における吸引領域の配置の一例を示す模式的な側面図である。
図7図7(a)は、図2に示す積繊装置における固定ドラムの外周部の選択的吸引領域対応部の第1の対応部の模式的な平面図、図7(b)は、該選択的吸引領域対応部の第2の対応部の模式的な平面図、図7(c)は、回転ドラムの外周部の該固定ドラムの外周部との対向部分の模式的な平面図、図7(d)は、集積用凹部の該選択的吸引領域での搬送中における図7(a)~図7(c)に示す各部の対応関係の説明図である。
図8図8は、図2に示す積繊装置の集積用凹部における第1積繊領域及び第2積繊領域の吸引領域での吸引状態をまとめた表であり、該表中の図は、当該積繊領域のドラム軸方向に沿う模式的な断面図である。
図9図9は、図2に示す積繊装置における吸引領域の配置の他の一例を示す模式的な側面図である。
図10図10は、積繊装置の集積用凹部の底面に従来使用されている多孔性部材の一例の模式的な斜視図である。
図11図11は、集積用凹部の高吸引部及び低吸引部における吸引風量と時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0015】
本発明(積繊装置、製造方法)によって提供される吸収体は、体液をはじめとする水性液を吸収し得るものである。吸収体の用途は特に限定されないが、吸収性物品の吸収体として特に好適である。ここでいう「吸収性物品」には、人体から排出される体液(尿、軟便、経血、汗等)の吸収に用いられる物品が広く包含され、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ、失禁パッド等が包含される。
吸収性物品は、典型的には、吸収体と、該吸収体よりも着用者の肌から近い側に配される液透過性の表面シートと、該吸収体よりも着用者の肌から遠い側に配される液難透過性ないし不透過性の裏面シートとを含んで構成されている。
【0016】
図1には、本発明によって提供される吸収体の一実施形態である吸収体10A,10Bが示されている。以下、両吸収体10A,10Bを総称して「吸収体10」とも言う。吸収体10についての説明は特に断らない限り、両吸収体10A,10Bに適用される。吸収体10は、吸収性物品用のものであり、吸収性物品の着用者の前後方向に対応する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有する。
縦方向Xは、後述する吸収体10の製造時における流れ方向MD(Machine Direction)に一致し、横方向Yは、流れ方向MDと直交する方向である搬送直交方向CD(Cross machine Direction)に一致する。なお流れ方向MDは、後述するドラム周方向X1に沿う回転ドラム3の回転方向R1(すなわち集積用凹部40の搬送方向)に一致し、搬送直交方向CDは、後述するドラム軸方向Y1に一致する。
【0017】
吸収体10は、繊維材料を主体とする。吸収体10における繊維材料の含有量は、少なくとも50質量%以上であり、100質量%すなわち繊維材料のみから形成されていてもよい。吸収体10は、繊維材料に加えて更に、吸水性ポリマーを含有してもよい。吸水性ポリマーとしては、一般に粒子状のものが用いられるが、繊維状のものでもよい。粒子状の吸水性ポリマーの形状は特に限定されず、例えば、球状、塊状、俵状、不定形状であり得る。吸水性ポリマーは、典型的には、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合物又は共重合物を主体とする。
【0018】
吸収体10は、繊維材料として互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料を含む。ここでいう「異種」とは、対比する繊維材料どうしで、組成、平均繊維径(太さ)、平均繊維長、製造方法の1つでも異なる場合を意味する。対比する繊維材料どうしでこれらの全て同じ場合、それらの繊維材料は互いに「同種」である。吸収体10に含まれる2種類の繊維材料(第1繊維材料、第2繊維材料)の組み合わせは特に制限されず、吸収体として使用可能な繊維材料の中から選択することができる。
互いに異種の繊維材料の組み合わせの一例として、吸水特性が互いに異なる繊維材料の組み合わせ、具体的には例えば、親水度(疎水度)が互いに異なる繊維材料の組み合わせが挙げられ、その具体例として、セルロース系繊維(親水性繊維)と、疎水性合成樹脂からなる合成繊維(疎水性繊維)との組み合わせを例示できる。セルロース系繊維としては、例えば、木材パルプ;綿パルプ、麻パルプ等の非木材パルプ等の天然繊維;カチオン化パルプ、マーセル化パルプ等の変性パルプが挙げられる。疎水性の合成樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂が挙げられる。第1繊維材料及び第2繊維材料のどちらが親水性繊維でもよく、第1繊維材料及び第2繊維材料のどちらが疎水性繊維でもよい。
【0019】
吸収体10は、図1に示すように、繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部11と、相対的に少ない低坪量部12とを一方向に有する。本実施形態では、吸収体10は、平面視で縦方向Xに長い形状(略長方形形状)を有し、その長手方向すなわち縦方向Xの中央部に高坪量部11、縦方向Xの両端部に低坪量部12が配されており、低坪量部12、高坪量部11、低坪量部12の順に縦方向Xに配置されている。
【0020】
また吸収体10は、繊維材料として第1繊維材料のみを含む第1繊維層13と、繊維材料として第2繊維材料のみを含む第2繊維層14とを含んで構成されている。
吸収体10Aでは、図1(a)に示すように、高坪量部11が第1繊維層13からなり、低坪量部12が第2繊維層14からなる。
吸収体10Bでは、図1(b)に示すように、第2繊維層14の一方の面における縦方向Xの中央部のみに第1繊維層13が積層されており、吸収体10Bの縦方向Xの中央部が高坪量部11、それ以外の第1繊維層13の非配置部が低坪量部12となっている。
吸収体10A,10Bの何れも、縦方向Xの中央部が高坪量部11、該中央部を挟んで前後端部が低坪量部12であり、且つ高坪量部11に第1繊維材料が含まれている。
高坪量部11は低坪量部12周辺部に比べて厚みが大きく、この厚み差に起因して、吸収体10の一方の面(図1では上面)には、高坪量部11が周辺部よりも厚み方向の外方に突出した突出部11Aが形成されている。高坪量部11はいわゆる中高部である。
【0021】
吸収体10は、突出部11Aの形成面(図1では上面)を、該吸収体10が用いられる吸収性物品の着用者の肌側に向けて使用されてもよく、あるいは突出部11Aの形成面とは反対側の面を該着用者の肌側に向けて使用されてもよい。
高坪量部11は、主に吸収体10の液吸収性の向上に寄与し、低坪量部12は、主に吸収体10を備える吸収性物品の着用感の向上に寄与する。吸収体10では、吸収体10が使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の吸収体として使用された場合に、その吸収性物品の着用者の股間部(陰茎、膣口などの排泄部)に配される部分である、縦方向Xの中央部を高坪量部11とし、それ以外の部分を低坪量部12としている。吸収体10の縦方向Xの中央部は、着用者の排泄物が集中する部位であるので、該中央部を高坪量部11とすることで十分な液吸収性を確保し、また、吸収体10における該中央部以外の部分は、液吸収に使用される機会が該中央部に比べて少ないので、繊維材料の坪量を極力低減して厚みを薄くすることで着用感の向上を図っている。
【0022】
また例えば、高坪量部11を構成する第1繊維層13の構成繊維である第1繊維材料が、熱可塑性樹脂等の合成樹脂を素材とする合成繊維であると、高坪量部11の柔軟性、クッション性の物理的特性の一層の向上が期待できる。すなわち、互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料の組み合わせ好ましい一例として、第1繊維材料が合成繊維、第2繊維材料がセルロース系繊維という組み合わせが挙げられる。
【0023】
以下、本発明の積繊装置及び吸収体の製造方法について、前述した吸収体10の製造方法を例にとり図面を参照しながら説明する。図2及び図3には、本発明の吸収体の積繊装置の一実施形態である積繊装置1の全体構成が示されている。
積繊装置1は、固定ドラム2と、固定ドラム2の外周部2Sの周りを回転可能に設けられ、繊維材料が積繊される集積用凹部40を外周部3Sに有する回転ドラム3と、集積用凹部40に向けて繊維材料を飛散状態にて供給する供給路50とを備え、回転ドラム3を図中符号R1で示す回転方向に回転させて集積用凹部40をドラム周方向X1に沿う搬送方向(流れ方向MD)に搬送させつつ、固定ドラム2側からの吸引によって供給路50に生じた空気流(以下、「バキュームエア」とも言う。)に乗って搬送された繊維材料を、ドラム周方向X1の所定の吸引領域Sにて集積用凹部40の底面上に積繊させ、集積用凹部40に積繊体を製造する。こうして製造された積繊体は、繊維材料として互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料を含み、且つ繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部11と相対的に少ない低坪量部12とを一方向(流れ方向MD、回転方向R1)に有する吸収体10である。
【0024】
本実施形態では、積繊装置1は、固定ドラム2及び回転ドラム3を含む集積部4と、集積部4(回転ドラム3)に繊維材料をはじめとする各種原材料を供給する原材料供給機構5と、回転ドラム3の集積用凹部40から排出された吸収体10を搬送する搬送機構6とを備えている。
【0025】
供給路50は、第1繊維材料(例えば合成繊維)を供給する第1供給路50Aと、第2繊維材料(例えばセルロース系繊維)を供給する第2供給路50Bとを、ドラム周方向X1に有している。
本実施形態では、原材料供給機構5は、第1供給路50Aを内部に有するダクト51Aを備える第1原材料供給機構5Aと、第2供給路50Bを内部に有するダクト51Bを備える第2原材料供給機構5Bとを、ドラム周方向X1に有し、回転ドラム3の回転方向R1すなわち流れ方向MDに対して、第1原材料供給機構5Aが上流側、第2原材料供給機構5Bが下流側に位置している。したがって集積用凹部40は、第1供給路50A、第2供給路50Bの順で、繊維材料をはじめとする各種原材料の供給を受ける。
ダクト51A,51Bは、それぞれ、原材料の供給方向の両端が開口し、その一端側の開口部が、回転ドラム3の一部を覆い、他端側の開口部から第1繊維材料又は第2繊維材料が投入される。
例えば、ダクト51A,51Bの回転ドラム3側とは反対側の開口部に、第1繊維材料又は第2繊維材料からなるシートを粉砕、切断する等して繊維化する繊維化手段(図示せず)を配置し、該繊維化手段によって製造された繊維材料をダクト51A,51B内に送り込むように構成されていてもよい。
また、ダクト51A,51Bには、吸水性ポリマー粒子を供給路50A,50B内に導入する吸水性ポリマー導入部(図示せず)が配されていてもよい。
【0026】
搬送機構6は、集積部4の下方に配され、集積部4から排出された吸収体10を搬送面上に吸引しつつ搬送するバキュームコンベア(図示せず)を備えている。集積部4における固定ドラム2の内部には、ブロー発生機構(図示せず)が配されており、該ブロー発生機構による集積部4の内部側から回転ドラム3の外周部3S側へのエアーの吹きつけにより、外周部3Sの集積用凹部40から吸収体10が排出され、前記バキュームコンベアの搬送面上に転写されるようになされている。
本実施形態では、前記バキュームコンベアの搬送面上に、吸収体10の外面を被覆するコアラップシートなどとも呼ばれるシート材15が予め配されており、集積部4から排出された吸収体10はシート材15上に転写され、シート材15ごと搬送される。シート材15は、前記バキュームコンベアによる搬送途中で、吸収体10の全体を被覆するように折り曲げられる。
【0027】
積繊装置1の要部である集積部4について説明する。集積部4は、図2図4に示すように、金属製の剛体からなる固定ドラム2と、固定ドラム2の外周部2Sに重ねて配された回転ドラム3とを主体として構成され、円筒状を有している。集積部4は、両ドラム2,3の周方向に対応するドラム周方向X1と、回転ドラム3の回転軸が延びる方向に対応するドラム軸方向Y1とを有している。
【0028】
固定ドラム2は円筒状を有し、その円筒状の固定ドラム2の軸方向両端の開口部は、側壁21及びフェルト等のシール材に(図示せず)よって気密に封鎖されている。固定ドラム2の内部は、隔壁22によって周方向に複数(本実施形態では3つ)に区分され、各該区分に対応した複数の空間A~Cが形成されている。
固定ドラム2には、その内部を減圧する減圧機構(図示せず)が接続されている。前記減圧機構は、側壁21に接続された排気管(図示せず)と該排気管に接続された排気ファン(図示せず)とを含んで構成されている。前記減圧機構を作動させることで、固定ドラム2内の複数の空間A~Cのうちの任意のものを負圧に維持される。固定ドラム2は、隔壁22によって仕切られた複数の空間A~Cの負圧(吸引力)をそれぞれ独立に調整可能になされている。
回転ドラム3は、モータ等の原動機からの動力を受けて、水平な回転軸を回転中心としてドラム周方向X1に沿って方向R1に回転するのに対し、固定ドラム2は回転しない。
【0029】
本実施形態では、回転ドラム3は、図4に示すように、金属製の円筒状のドラム本体3Aと、ドラム本体3Aの外周部3ASに重ねて配され、集積用凹部40を有する外層部3Bとを含む。
ドラム本体3Aは、回転ドラム3において固定ドラム2に最も近接する部材であり、固定ドラム2の外周部2Sに対向配置されている。ドラム本体3Aは、ドラム周方向X1の全長にわたって連続する環状の部材であるのに対し、外層部3Bは、ドラム周方向X1に複数に分割されている。外層部3Bは、ボルト等の締結具、接着剤等の接合手段により、ドラム本体3Aの外周部3ASに接離自在に接合される。
外層部3Bは、典型的には、開口部を有する複数のプレート(板状部材)が厚み方向に重ね合わされて構成され、その複数のプレートの開口部が厚み方向の重なった部分が集積用凹部40となる。図4に示す形態では、外層部3Bは、ドラム本体3Aに近い順に、底面形成プレート33、凹部区画プレート34及びリングプレート35を含む。底面形成プレート33は、集積用凹部40の底面を形成し、バキュームエアが通過可能な多数の吸引孔を有する通気性の多孔性部材である。凹部区画プレート34は、集積用凹部40に形成される積繊体に溝状凹部を形成するためのものである。リングプレート35は、回転ドラム3の最も外側に位置し、集積用凹部40を挟んでドラム軸方向Y1の両側に一対配される。
なお本発明では、回転ドラム3の外層部3Bの構成は、図示の形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば外層部3Bは、凹部区画プレート34を含まなくてもよい。図1に示す吸収体10は、凹部区画プレート34無しで製造されたものであり、凹部区画プレート34を使用した場合に形成される溝状凹部を有していない。
【0030】
集積用凹部40は、図4に示すように、製造目的物である吸収体10(積繊体)の高坪量部11を形成する第1積繊領域41と、吸収体10の低坪量部12を形成する第2積繊領域42とを、ドラム周方向X1に有している。
【0031】
本実施形態では、集積用凹部40は、回転ドラム3のドラム周方向X1の全長にわたって連続的に配されており、ドラム周方向X1に隣り合う第1積繊領域41と第2積繊領域42とが、ドラム周方向X1の全長にわたって交互に配されている。1つの第1積繊領域41と、これを挟んでドラム周方向X1の前後に配された2つの第2積繊領域42それぞれのドラム周方向X1の半分の領域とが、1個の吸収体10に対応し、集積用凹部40から搬送機構6の前記バキュームコンベアに排出される吸収体10は、複数の吸収体10が縦方向Xに連続した吸収体連続体である。
【0032】
本実施形態では、図5に示すように、第1積繊領域41は、第2積繊領域42に比べて凹部深さが深い。すなわち、第1積繊領域41の底面41Sは、第2積繊領域42の底面42Sに比べて、固定ドラム2に近い側に位置している。前述した吸収体10の突出部11A(図1参照)は、第1積繊領域41の底面41Sと第2積繊領域42の底面42Sとの段差に対応する部分である。なお、前記の「凹部深さ」は、集積用凹部40を挟んでドラム軸方向Y1の両側に位置する部材の外面と集積用凹部40(第1積繊領域41、第2積繊領域42)の底面との離間距離を指し、本実施形態では、該部材はリングプレート35である。
【0033】
回転ドラム3は固定ドラム2の外周部2Sの周りを、回転方向R1の上流側から下流側に向かって、空間Aに対応する領域、空間Bに対応する領域、空間Cに対応する領域の順に移動する。「空間Aに対応する領域」とは、固定ドラム2の空間Aを固定ドラム2の半径方向(ドラム軸方向と直交する方向)の外方に仮想的に延長した場合のその延長部分と重複する領域を指す。「空間Bに対応する領域」及び「空間Cに対応する領域」については、前記の「空間Aに対応する領域」の説明において「空間A」を「空間B」又は「空間C」に置換したものが適用される。
【0034】
本実施形態では、空間A,Bに対応する領域が、積繊材料が集積用凹部40内に積繊される吸引領域Sであり、吸引領域Sは、第1供給路50Aを内部に有するダクト51A及び第2供給路50Bを内部に有するダクト51Bそれぞれの一端側の開口で覆われている。吸引領域Sのうち、空間Aに対応する領域は、第1供給路50Aに対応し、繊維材料をはじめとする原材料の供給を第1供給路50Aから受ける。また吸引領域Sのうち、空間Bに対応する領域は、第2供給路50Bに対応し、繊維材料をはじめとする原材料の供給を第2供給路50Bから受ける。
【0035】
前記減圧機構を作動させ固定ドラム2の空間A,Bを負圧に維持した状態で、回転ドラム3を回転方向R1に回転させると、回転ドラム3の集積用凹部40が、空間A,Bに対応する吸引領域Sを通過している間に、集積用凹部40の底面を形成する通気性部材に空間A,B内の負圧が作用し、該通気性部材が有する多数の吸引孔を通じた空気の吸引が行われる。この吸引孔を通じた吸引により、吸引領域Sを覆うダクト51A内の第1供給路50A及びダクト51B内の第2供給路50Bに、吸引領域Sに向かうバキュームエアが生じ、このバキュームエアに乗った繊維材料等の原材料が吸引領域Sに供給される。
【0036】
吸引領域Sは、図6に示すように、固定ドラム2側からの吸引が部分的に可能になされている選択的吸引領域S1を有している。選択的吸引領域S1は、第1繊維材料を供給する第1供給路50Aに対応する第1の選択的吸引領域S1aと、第2繊維材料を供給する第2供給路50Bに対応する第2の選択的吸引領域S1bとを、ドラム周方向X1に有している。また、図4に示すように、固定ドラム2の外周部2Sには、選択的吸引領域S1に対応する選択的吸引領域対応部23が配されている。
【0037】
本実施形態では、図6に示すように、吸引領域Sは、選択的吸引領域S1に加えて更に、固定ドラム2側からの吸引が全面的に可能になされている全面的吸引領域S2を有しており、選択的吸引領域S1と全面的吸引領域S2とがドラム周方向X1に並んでいる。全面的吸引領域S2は、第2供給路50Bに対応して配されている。したがって本実施形態では、回転ドラム3の回転方向R1(流れ方向MD)の上流側から下流側に向かって、第1の選択的吸引領域S1a、第2の選択的吸引領域S1b、全面的吸引領域S2がこの順で配されている。
また本実施形態では、図4に示すように、固定ドラム2の外周部2Sに、選択的吸引領域対応部23と、全面的吸引領域S2に対応する全面的吸引領域対応部24とが配されている。
【0038】
選択的吸引領域対応部23は、図4及び図7に示すように、第1の選択的吸引領域S1aに対応し、第1開口部26Aがドラム軸方向Y1に部分的に設けられた非通気性の第1の対応部23Aと、第2の選択的吸引領域S1bに対応し、第2開口部26Bがドラム軸方向Y1に部分的に設けられた非通気性の第2の対応部23Bとを、ドラム周方向X1に有している。バキュームエアは、第1開口部26A及び第2開口部26Bを通じてのみ選択的吸引領域対応部23を厚み方向に通過可能になされている。
本実施形態では、固定ドラム2の外周部2Sには、回転ドラム3の回転方向R1(流れ方向MD)の上流側から下流側に向かって、第1の対応部23A、第2の対応部23B(以上、選択的吸引領域対応部23)、全面的吸引領域対応部24の順で配されている。
【0039】
また、第1開口部26Aと第2開口部26Bとは、ドラム軸方向Y1の位置が互いに異なっている。すなわち、第1開口部26Aをドラム周方向X1に仮想的に延長した場合、その第1開口部26Aの仮想延長線と第2開口部26Bとが重ならないように、第1開口部26Aと第2開口部26Bとが配置されている。
選択的吸引領域対応部23(第1の対応部23A、第2の対応部23B)を形成する非通気性の素材としては、金属、樹脂等を用いることができる。
【0040】
本実施形態では、第1開口部26A及び第2開口部26Bは、それぞれ、平面視でドラム周方向X1に延在する連続直線状を有し、ドラム軸方向Y1に所定間隔を置いて複数配されている。第1の対応部23Aには、平面視直線状の3個の第1開口部26Aがドラム軸方向Y1に間欠配置され、その3個の第1開口部26Aどうしは、ドラム周方向Y1において同位置にある(3個の第1開口部26Aのドラム軸方向Y1への投影視においてそれらの投影像が完全に重なる)。第2の対応部23Bには、平面視直線状の2個の第2開口部26Bがドラム軸方向Y1に間欠配置され、その2個の第2開口部26Bどうしは、ドラム周方向Y1において同位置にある(2個の第2開口部26Bのドラム軸方向Y1への投影視においてそれらの投影像が完全に重なる)。
【0041】
なお、本明細書において、集積部4(固定ドラム2、回転ドラム3)の外周部の如き、湾曲部についての「平面視」又は「平面図」とは、その湾曲部(例えば、選択的吸引領域対応部23、集積用凹部40など)を、該湾曲部の法線方向(ドラム軸方向と直交する方向)の外方から見た場合を意味する。
【0042】
前述したとおり、選択的吸引領域対応部23(第1の対応部23A、第2の対応部23B)は、開口部26A,26Bを除いて非通気性であるのに対し、全面的吸引領域対応部24は、非通気性部材を含まず、集積用凹部40に対応する部分の全域が開口している。そのためバキュームエアは、全面的吸引領域対応部24の全域を厚み方向に通過可能である。
【0043】
また、図4及び図7(c)に示すように、固定ドラム2の外周部2Sの選択的吸引領域対応部23に対応して、回転ドラム3における固定ドラム2の外周部2Sとの対向部分である、ドラム本体3Aの外周部3ASには、集積用凹部40の第1積繊領域41に対応する(平面視で第1積繊領域41と重なる)非通気性の第1開口部閉鎖部材30Aと、集積用凹部40の第2積繊領域42(平面視で第2積繊領域42と重なる)に対応する非通気性の第2開口部閉鎖部材30Bとが配されている。
第1開口部閉鎖部材30Aは、選択的吸引領域対応部23の第2の対応部23Bが有する第2開口部26Bとドラム軸方向Y1において同位置にあり、第2開口部閉鎖部材30Bは、選択的吸引領域対応部23の第1の対応部23Aが有する第1開口部26Aとドラム軸方向Y1において同位置にある。
両開口部閉鎖部材30A,30Bを形成する非通気性の素材としては、金属、樹脂等を用いることができる。
【0044】
固定ドラム2及び回転ドラム3が前述の如く構成された積繊装置1においては、回転ドラム3が回転方向R1に回転すると、集積用凹部40は吸引領域Sを図7(d)に示すように、第1の選択的吸引領域S1a、第2の選択的吸引領域S1b(以上、選択的吸引領域S1)、全面的吸引領域S2の順に移動する。
そして、集積用凹部40の選択的吸引領域S1での搬送中に、固定ドラム2の外周部2Sに設けられた第1開口部26A及び第2開口部26B、すなわち当該領域S1での固定ドラム2側からの吸引を可能にする吸引用開口部に対し、回転ドラム3の外周部3ASに設けられた非通気性の第1開口部閉鎖部材30A及び第2開口部閉鎖部材30Bのうちの一方が重なることで、集積用凹部40における該吸引用開口部と重なった開口部閉鎖部材30A又は30Bに対応する部分(第1積繊領域41又は第2積繊領域42)のバキュームエアの流量(吸引風量)を低減するようになされている。
【0045】
図8には、吸引領域Sの各部における第1積繊領域41、第2積繊領域42それぞれの吸引状態をまとめた表が示されている。以下、積繊装置1における吸引風量の制御機構について、図8を参照しながら説明する。
集積用凹部40の第1の選択的吸引領域S1aでの搬送中では、固定ドラム2の第1開口部26Aに対し、回転ドラム3の第1開口部閉鎖部材30Aは重ならずに、第2開口部閉鎖部材30Bが重なることで、集積用凹部40の第2積繊領域42の吸引風量を低減するようになされている。
第1開口部26Aに第2開口部閉鎖部材30Bが重なると、第1開口部26Aが実質的に閉鎖されるため、この閉鎖された状態の第1開口部26Aに対応する位置にある第2積繊領域42の吸引が阻害される。一方、第1積繊領域41は、これに対応する(第1積繊領域41と平面視で重なる)第1開口部閉鎖部材30Aが第1開口部26Aと重ならず、該第1積繊領域41と対応する位置にある第1開口部26Aが閉鎖されずに開口した状態を保っているため、固定ドラム2側からの吸引は制限されない。
したがって、第1繊維材料を供給する第1供給路50Aに対応する第1の選択的吸引領域S1aでは、集積用凹部40において、第2積繊領域42に比べて吸引風量の大きい第1積繊領域41に第1繊維材料が優先的に積繊される。
【0046】
また、集積用凹部40の第2の選択的吸引領域S1bでの搬送中では、固定ドラム2の第2開口部26Bに対し、回転ドラム3の第2開口部閉鎖部材30Bは重ならずに、第1開口部閉鎖部材30Aが重なることで、集積用凹部40の第1積繊領域41の吸引風量を低減するようになされている。
第2開口部26Bに第1開口部閉鎖部材30Aが重なると、第2開口部26Bが実質的に閉鎖されるため、この閉鎖された状態の第2開口部26Bに対応する位置にある第1積繊領域41の吸引が阻害される。一方、第2積繊領域42は、これに対応する(第2積繊領域42と平面視で重なる)第2開口部閉鎖部材30Bが第2開口部26Bと重ならず、該第2積繊領域42と対応する位置にある第2開口部26Bが閉鎖されずに開口した状態を保っているため、固定ドラム2側からの吸引は制限されない。
したがって、第2繊維材料を供給する第2供給路50Bに対応する第2の選択的吸引領域S1bでは、集積用凹部40において、第1積繊領域41に比べて吸引風量の大きい第2積繊領域42に第2繊維材料が優先的に積繊される。
【0047】
また、集積用凹部40の全面的吸引領域S2での搬送中では、これに対応する固定ドラム2の全面的吸引領域対応部24が、選択的吸引領域対応部23(第1の対応部23A、第2の対応部23B)の如き非通気性部材を含まず、全面的吸引領域対応部24における集積用凹部40に対応する部分の全域が開口しているため、集積用凹部40の全域で固定ドラム2側からの吸引が阻害されず、吸引風量は実質的に低減されない。
したがって、第2繊維材料を供給する第2供給路50Bに対応する全面的吸引領域Sでは、集積用凹部40の全体に第2繊維材料が積繊される。
【0048】
本発明の吸収体の製造方法は、前述した積繊装置1に代表される、本発明の積繊装置を用いて実施することができる。
本発明の吸収体の製造方法は、集積用凹部40に対して第1供給路50Aから第1繊維材料を供給する第1供給工程と、該第1供給工程の後に、該第1繊維材料が積繊された集積用凹部40に対して、第2供給路50Bから第2繊維材料を供給する第2供給工程とを有している。
本発明の吸収体の製造方法は、前記第1供給工程において、第1繊維材料が第1積繊領域41に優先的に積繊されるように、バキュームエアを制御する点で特徴付けられる。この特徴的な構成については、既に述べたとおりである(図8の表の「第1の選択的吸引領域(第1繊維材料)」の欄を参照)。
【0049】
本発明の吸収体の製造方法では、前記第2供給工程におけるバキュームエアの制御方法は特に制限されない。
前述した実施形態では、前記第2供給工程において、第2繊維材料が第2積繊領域42に優先的に積繊されるように、バキュームエアを制御した。すなわち、前記第2供給工程が実施される第2の選択的吸引領域S1bでは、前述したとおり、固定ドラム2の第2開口部26Bに対し、回転ドラム3の第2開口部閉鎖部材30Bを重ねずに、第1開口部閉鎖部材30Aを重ねることで、第1積繊領域41の吸引風量を低減させて、第2積繊領域42の吸引風量が相対的に高め、そうすることで、第2積繊領域42に第2繊維材料を優先的に積繊させるようにした(図8の表の「第2の選択的吸引領域(第2繊維材料)」の欄を参照)。
【0050】
より具体的には、前述した実施形態では、図6に示すように、前記第2供給工程(前記第1供給工程の後に実施され、第1繊維材料が積繊された集積用凹部40に対して、第2供給路50Bから第2繊維材料を供給する工程)は、第2の選択的吸引領域S1bで行われる工程(第1の工程)と、該第1の工程の後に全面的吸引領域S2で行われる工程(第2の工程)とに区分されていた。そして、前記第1の工程では、第2繊維材料が第2積繊領域42に優先的に積繊されるように、バキュームエアを制御し、前記第2の工程では、第2繊維材料が第1積繊領域41及び第2積繊領域42の双方に積繊されるように、バキュームエアを制御した(図8の表の「第2の選択的吸引領域(第2繊維材料)」及び「全面的吸引領域(第2繊維材料)」の欄を参照)。
このように、前記第2供給工程を更に第1の工程と第2の工程とに区分し、該第1の工程で第2積繊領域42に第2繊維材料を優先的に積繊させ、該第2の工程で集積用凹部40の全体に第2繊維材料を積繊させることで製造される吸収体の一例が、吸収体10A(図1(a)参照)である。
本発明の吸収体10Aの製造方法の一実施形態では、先ず、前記第1供給工程において、第1繊維材料が集積用凹部40の第1積繊領域41に優先的に積繊される結果、第1積繊領域41に第1繊維材料からなる第1繊維層13が形成され、次に、前記第2供給工程の第1の工程において、第2繊維材料が第2積繊領域42に優先的に積繊される結果、第2積繊領域42に第2繊維材料からなる第2繊維層14が形成され、最後に、前記第2供給工程の第2の工程において、第1積繊領域41及び第2積繊領域42の双方(集積用凹部40の全体)に第2繊維材料が積繊されて、吸収体10Aが製造される。
【0051】
前記第2供給工程は、前記第2の工程、すなわち「第2繊維材料が第1積繊領域41及び第2積繊領域42の双方に積繊されるようにバキュームエアを制御する工程」を有さず、前記第1の工程のみを有していてもよい。その場合、積繊装置1の吸引領域Sの構成としては、図9に示すように、選択的吸引領域S1(第1の選択的吸引領域S1a、第2の選択的吸引領域S1b)のみからなり、全面的吸引領域S2を有さない形態を採用することができる。この図9に示す吸引領域Sを備えた積繊装置1を用いて製造される吸収体の一例が、吸収体10B(図1(b)参照)である。
本発明の吸収体10Bの製造方法の一実施形態では、先ず、前記第1供給工程において、第1繊維材料が集積用凹部40の第1積繊領域41に優先的に積繊される結果、第1積繊領域41に第1繊維材料からなる第1繊維層13が形成され、次に、前記第2供給工程において、第2繊維材料が第2積繊領域42に優先的に積繊される結果、第2積繊領域42に第2繊維材料からなる第2繊維層14が形成され、製造目的物である吸収体10Bが製造される。
【0052】
本発明の積繊装置及び吸収体の製造方法によれば、前述したように、固定ドラム2の第1開口部26A及び第2開口部26Bと回転ドラム3の開口部閉鎖部材30A,30Bとの、回転ドラム3の回転に伴う周期的な重なりを利用して、吸引領域Sでの集積用凹部40の吸引風量に変化を与えているため、従来行われている、集積用凹部40の底部に開口率差を設けただけの成り行き任せの積繊方法に比べて、積繊体における各部の繊維材料の坪量を設計どおりに制御することができ、互いに異種の繊維材料を含み、坪量が部分的に異なる吸収体を効率良く製造することができる。
【0053】
特に本発明の積繊装置では、前述したとおり、第1開口部26Aと第2開口部26Bとでドラム軸方向Y1の位置が互いに異なっており(図7参照)、また、第1開口部閉鎖部材30Aは第2開口部26Bと、第2開口部閉鎖部材30Bは第1開口部26Aと、それぞれドラム軸方向Y1において同位置にあるので、回転ドラム3を通常どおり回転させるだけで、特定の開口部と特定の開口部閉鎖部材とが自動的に重なり、集積用凹部40の吸引風量の制御が適切になされる。
【0054】
前述した、選択的吸引領域S1における吸引風量の制御による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、図7を参照して、第2開口部閉鎖部材30Bのドラム軸方向Y1の長さ(幅)W2は、これと重なる第1開口部26Aのドラム軸方向Y1の長さ(幅)V1に比べて長く、第1開口部閉鎖部材30Aのドラム軸方向Y1の長さ(幅)W1は、これと重なる第2開口部26Bのドラム軸方向Y1の長さ(幅)V2に比べて短いことが好ましい。すなわち、選択的吸引領域S1において互いに重なり合う関係にある固定ドラム2の吸引用開口部と回転ドラム3の開口部閉鎖部材とについて、第1の選択的吸引領域S1aでは「第1開口部26Aの幅V1<第2開口部閉鎖部材30Bの幅W2」の大小関係が成立し、第2の選択的吸引領域S1bでは「第2開口部26Bの幅V2>第1開口部閉鎖部材30Aの幅W1」の大小関係が成立することが好ましい。
第1の選択的吸引領域S1aで「第1開口部26Aの幅V1<第2開口部閉鎖部材30Bの幅W2」の大小関係が成立することで、第1開口部26Aが第2開口部閉鎖部材30Bによって一層確実に閉鎖されるため、第1開口部26Aでの吸引が阻害されない第1積繊領域41と該吸引が阻害される第2積繊領域42との吸引風量差が一層大きくなり、その結果、第1積繊領域41への第1繊維材料の積繊がより優先的に行われるようになる。
また、第2の選択的吸引領域S1bで「第2開口部26Bの幅V2>第1開口部閉鎖部材30Aの幅W1」の大小関係が成立することで、第2開口部26Bに第1開口部閉鎖部材30Aが重なったときに、該第2開口部26Bの一部(典型的にはドラム軸方向Y1の端部)に、第1開口部閉鎖部材30Aと重ならない部分が存在し得るようになるため、第1積繊領域41では、第2積繊領域42に比べて少ないながらも、第2開口部26Bでの吸引が行われるようになる。また、第2の選択的吸引領域S1bを搬送中の第1積繊領域41には、第1の選択的吸引領域S1aで積繊された第1繊維材料が積繊されている。したがって、第2の選択的吸引領域S1bにおいて第1積繊領域41での吸引が可能であることで、第1積繊領域41に既に積繊されている繊維材料を一層確実に吸引保持することが可能となる。
【0055】
前記の大小関係の成立による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、第1開口部26Aの幅V1(図7(a)参照)と第2開口部閉鎖部材30Bの幅W2(図7(c)参照)との比率は、前者<後者を前提として、前者/後者として、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、そして、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である。
同様の観点から、第2開口部26Bの幅V2(図7(b)参照)と第1開口部閉鎖部材30Aの幅W1(図7(c)参照)との比率は、前者>後者を前提として、前者/後者として、好ましくは1.0以上1.6未満、より好ましくは1.0以上2.0未満である。
【0056】
前述した、選択的吸引領域S1における吸引風量の制御による作用効果をより一層確実に奏させるようにする観点から、第1の対応部23A(第1開口部26A)に第2開口部閉鎖部材30Bが重なった状態で、第1の対応部23A(第1開口部26A)と第2開口部閉鎖部材30Bとの離間距離は、好ましくは0mmを超えて3mm以下、より好ましくは0mmを超えて2mm以下である。
同様の観点から、第2の対応部23B(第2開口部26B)に第1開口部閉鎖部材30Aが重なった状態で、第2の対応部23B(第2開口部26B)と第1開口部閉鎖部材30Aとの離間距離は、好ましくは0mmを超えて3mm以下、より好ましくは0mmを超えて2mm以下である。
【0057】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0058】
<1>
積繊装置を用い、繊維材料として互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料を含み、且つ繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部と相対的に少ない低坪量部とを一方向に有する吸収体を製造する、吸収体の製造方法であって、
前記積繊装置は、固定ドラムと、該固定ドラムの外周部周りを回転可能に設けられ、繊維材料が積繊される集積用凹部を外周部に有する回転ドラムと、該集積用凹部に向けて繊維材料を飛散状態にて供給する供給路とを備え、該回転ドラムを回転させて該集積用凹部をドラム周方向に沿う搬送方向に搬送させつつ、該固定ドラム側からの吸引によって該供給路に生じた空気流に乗って搬送された繊維材料を、該集積用凹部の底面上に積繊させるようになされており、
前記集積用凹部は、前記高坪量部を形成する第1積繊領域と、前記低坪量部を形成する第2積繊領域とを、ドラム周方向に有し、
前記供給路は、前記第1繊維材料を供給する第1供給路と、前記第2繊維材料を供給する第2供給路とを、ドラム周方向に有し、
前記集積用凹部に対して前記第1供給路から前記第1繊維材料を供給する第1供給工程と、該第1供給工程の後に、該第1繊維材料が積繊された該集積用凹部に対して、前記第2供給路から前記第2繊維材料を供給する第2供給工程とを有し、
前記第1供給工程では、前記第1繊維材料が前記第1積繊領域に優先的に積繊されるように、前記空気流を制御する、吸収体の製造方法。
<2>
前記第2供給工程では、前記第2繊維材料が前記第2積繊領域に優先的に積繊されるように、前記空気流を制御する、前記<1>に記載の吸収体の製造方法。
<3>
前記第2供給工程は、第1の工程と、該第1の工程の後に行われる第2の工程とに区分され、
前記第1の工程では、前記第2繊維材料が前記第2積繊領域に優先的に積繊されるように、前記空気流を制御し、
前記第2の工程では、前記第2繊維材料が前記第1積繊領域及び前記第2積繊領域の双方に積繊されるように、該空気流を制御する、前記<1>に記載の吸収体の製造方法。
<4>
前記積繊装置は、前記空気流に乗って搬送された繊維材料を、ドラム周方向の所定の吸引領域にて前記集積用凹部の底面上に積繊させるようになされており、
前記吸引領域は、前記固定ドラム側からの吸引が部分的に可能になされている選択的吸引領域を有し、該選択的吸引領域は、前記第1供給路に対応する第1の選択的吸引領域と、前記第2供給路に対応する第2の選択的吸引領域とをドラム周方向に有し、
前記集積用凹部は、前記吸引領域を、前記第1の選択的吸引領域、前記第2の選択的吸引領域の順に移動する、前記<1>~<3>の何れか1項に記載の吸収体の製造方法。
<5>
前記吸引領域は、前記固定ドラム側からの吸引が全面的に可能になされている全面的吸引領域を有し、
前記集積用凹部は、前記吸引領域を、前記第1の選択的吸引領域、前記第2の選択的吸引領域、前記全面的吸引領域の順に移動する、前記<4>に記載の吸収体の製造方法。
<6>
前記固定ドラムの外周部に、前記第1の選択的吸引領域に対応する第1開口部と、前記第2の選択的吸引領域に対応する第2開口部とが配されているとともに、前記回転ドラムの該固定ドラムの外周部との対向部分に、前記第1積繊領域に対応する非通気性の第1開口部閉鎖部材と、前記第2積繊領域に対応する非通気性の第2開口部閉鎖部材とが配されており、
前記第1開口部及び前記第2開口部と前記第1開口部閉鎖部材及び前記第2開口部閉鎖部材との、前記回転ドラムの回転に伴う周期的な重なりを利用して、前記吸引領域での前記集積用凹部の吸引風量に変化を与える、前記<4>又は<5>に記載の吸収体の製造方法。
【0059】
<7>
固定ドラムと、該固定ドラムの外周部周りを回転可能に設けられ、繊維材料が積繊される集積用凹部を外周部に有する回転ドラムと、該集積用凹部に向けて繊維材料を飛散状態にて供給する供給路とを備え、該回転ドラムを回転させて該集積用凹部をドラム周方向に沿う搬送方向に搬送させつつ、該固定ドラム側からの吸引によって該供給路に生じた空気流に乗って搬送された繊維材料を、ドラム周方向の所定の吸引領域にて該集積用凹部の底面上に積繊させるようになされており、
繊維材料として互いに異種の第1繊維材料及び第2繊維材料を含み、且つ繊維材料の坪量が相対的に多い高坪量部と相対的に少ない低坪量部とを一方向に有する積繊体を製造する、積繊装置であって、
前記集積用凹部は、前記高坪量部を形成する第1積繊領域と、前記低坪量部を形成する第2積繊領域とを、ドラム周方向に有し、
前記供給路は、前記第1繊維材料を供給する第1供給路と、前記第2繊維材料を供給する第2供給路とを、ドラム周方向に有し、
前記吸引領域は、前記固定ドラム側からの吸引が部分的に可能になされている選択的吸引領域を有し、該選択的吸引領域は、前記第1供給路に対応する第1の選択的吸引領域と、前記第2供給路に対応する第2の選択的吸引領域とを有し、
前記固定ドラムの外周部に、前記選択的吸引領域に対応する選択的吸引領域対応部が配されており、
前記選択的吸引領域対応部は、前記第1の選択的吸引領域に対応し、第1開口部がドラム軸方向に部分的に設けられた非通気性の第1の対応部と、前記第2の選択的吸引領域に対応し、第2開口部がドラム軸方向に部分的に設けられた非通気性の第2の対応部とを、ドラム周方向に有し、前記空気流は、該第1開口部及び該第2開口部を通じてのみ該選択的吸引領域対応部を厚み方向に通過可能になされており、該第1開口部と該第2開口部とは、ドラム軸方向の位置が互いに異なっており、
前記回転ドラムの前記固定ドラムの外周部との対向部分に、前記第1積繊領域に対応する非通気性の第1開口部閉鎖部材と、前記第2積繊領域に対応する非通気性の第2開口部閉鎖部材とが配されており、該第1開口部閉鎖部材は、前記第2開口部とドラム軸方向において同位置にあり、該第2開口部閉鎖部材は、前記第1開口部とドラム軸方向において同位置にあり、
前記集積用凹部の前記第1の選択的吸引領域での搬送中では、前記第1開口部に対し、前記第1開口部閉鎖部材は重ならずに、前記第2開口部閉鎖部材が重なることで、前記第2積繊領域の前記空気流の流量を低減するようになされており、
前記集積用凹部の前記第2の選択的吸引領域での搬送中では、前記第2開口部に対し、前記第2開口部閉鎖部材は重ならずに、前記第1開口部閉鎖部材が重なることで、前記第1積繊領域の前記空気流の流量を低減するようになされている、積繊装置。
<8>
前記第2開口部閉鎖部材のドラム軸方向の長さは、前記第1開口部のドラム軸方向の長さに比べて長く、前記第1開口部閉鎖部材のドラム軸方向の長さは、前記第2開口部のドラム軸方向の長さに比べて短い、前記<7>に記載の積繊装置。
<9>
前記吸引領域は、前記選択的吸引領域と、前記固定ドラム側からの吸引が全面的に可能になされている全面的吸引領域とを、ドラム周方向に有し、該全面的吸引領域は、前記第2供給路に対応して配されており、
前記固定ドラムの外周部に、前記選択的吸引領域対応部と、前記全面的吸引領域に対応する全面的吸引領域対応部が配されており、
前記全面的吸引領域対応部は、非通気性部材を含まず、前記空気流は、該全面的吸引領域対応部の全域を厚み方向に通過可能になされている、前記<7>又は<8>に記載の積繊装置。
【0060】
<10>
繊維材料からなるシートを繊維化する繊維化手段を備え、該繊維化手段によって製造された繊維材料が前記供給路に供給される、前記<7>~<9>の何れか1項に記載の積繊装置。
<11>
前記回転ドラムは、金属製の円筒状のドラム本体と、該ドラム本体の外周部に重ねて配され、前記集積用凹部を有する外層部とを含む、前記<7>~<10>の何れか1項に記載の積繊装置。
<12>
前記ドラム本体は、ドラム周方向の全長にわたって連続する環状をなし、前記外層部は、ドラム周方向に複数に分割されている、前記<11>に記載の積繊装置。
<13>
前記外層部は、開口部を有する複数のプレートが厚み方向に重ね合わされて構成され、前記集積用凹部は、該複数のプレートの該開口部が厚み方向の重なった部分からなる、前記<11>又は<12>に記載の積繊装置。
<14>
前記外層部は、前記ドラム本体に近い順に、前記集積用凹部の底面を形成する底面形成プレートと、該集積用凹部内の繊維材料の積繊体に溝状凹部を形成する凹部区画プレートと、前記回転ドラムの最外層に位置するリングプレートとを含む、前記<11>~<13>の何れか1項に記載の積繊装置。
<15>
前記第1積繊領域は、前記第2積繊領域に比べて凹部深さが深い、前記<7>~<14>の何れか1項に記載の積繊装置。
<16>
前記第1開口部の幅(ドラム軸方向の長さ)と前記第2開口部閉鎖部材の幅(ドラム軸方向の長さ)との比率は、前者<後者を前提として、前者/後者として、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、そして、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である、前記<7>~<15>の何れか1項に記載の積繊装置。
<17>
前記第2開口部の幅(ドラム軸方向の長さ)と前記第1開口部閉鎖部材の幅(ドラム軸方向の長さ)との比率は、前者>後者を前提として、前者/後者として、好ましくは1.0以上1.6未満、より好ましくは1.0以上2.0未満である、前記<7>~<16>の何れか1項に記載の積繊装置。
<18>
前記第1の対応部(前記第1開口部)に前記第2開口部閉鎖部材が重なった状態で、該第1の対応部(該第1開口部)と該第2開口部閉鎖部材との離間距離は、好ましくは0mmを超えて3mm以下、より好ましくは0mmを超えて2mm以下であり、
前記第2の対応部(前記第2開口部)に前記第1開口部閉鎖部材が重なった状態で、該第2の対応部(該第2開口部)と該第1開口部閉鎖部材との離間距離は、好ましくは0mmを超えて3mm以下、より好ましくは0mmを超えて2mm以下である、前記<7>~<17>の何れか1項に記載の積繊装置。
【符号の説明】
【0061】
10,10A,10B 吸収体
11 高坪量部
11A 突出部
12 低坪量部
X 縦方向
Y 横方向
1 積繊装置
2 固定ドラム
2S 固定ドラムの外周部
23 選択的吸引領域対応部
23A 第1の対応部
23B 第2の対応部
24 全面的吸引領域対応部
26A 第1開口部
26B 第2開口部
3 回転ドラム
3A ドラム本体
30A 第1開口部閉鎖部材
30B,第2開口部閉鎖部材
3B 外層部
4 集積部
40 集積用凹部
41 第1積繊領域
42 第2積繊領域
5A,5B 原材料供給機構
50A,50B 供給路
51A,51B ダクト
6 搬送機構
S 吸引領域
S1 選択的吸引領域
S1a 第1の選択的吸引領域
S1b 第2の選択的吸引領域
S2 全面的吸引領域
X1 ドラム周方向
R1 回転ドラムの回転方向(MD)
Y1 ドラム軸方向(CD)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11