(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】分析装置及び分析装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20230412BHJP
B65G 65/40 20060101ALI20230412BHJP
B65G 65/48 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
G01N35/04 G
B65G65/40 A
B65G65/48 A
(21)【出願番号】P 2020218489
(22)【出願日】2020-12-28
(62)【分割の表示】P 2018185493の分割
【原出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-06-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】大月 喜久子
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-233830(JP,A)
【文献】特開2007-309792(JP,A)
【文献】特開平10-329930(JP,A)
【文献】特開2014-194349(JP,A)
【文献】特開2000-118722(JP,A)
【文献】特開2011-232353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
B65G 65/40
B65G 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を分析する分析部を備えた分析装置であって、
前記検体を収容可能なキュベットを貯留可能であり、底部に排出口を有する第1の貯留部と、
前記第1の貯留部の下方に設けられた第2の貯留部と、
前記排出口内に設けられ、前記排出口の縁との間に前記キュベットが排出される隙間がある駆動部と、を備え、
前記第1の貯留部は、前記駆動部にキュベットが接することで前記排出口付近にキュベットを留めるように構成され、前記駆動部が駆動することにより、前記駆動部と前記排出口の縁との間の前記隙間を通じてキュベットを下方に排出する、分析装置。
【請求項2】
前記駆動部は、キュベットに接触しながら回転駆動する回転機構を有する、
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記第1の貯留部は、前記第2の貯留部よりも多くの前記キュベットを貯留可能に構成されている、
請求項1または2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第2の貯留部に貯留された前記キュベットを前記第2の貯留部から搬出する搬送部と、
前記搬送部から搬送された前記キュベットを検出可能なセンサと、
前記センサの検出結果に基づいて、前記駆動部の動作を制御する制御部と、をさらに備えた、
請求項1~3のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項5】
検体を収容可能なキュベットが、底部に排出口を有する第1の貯留部の前記排出口付近に設けられている駆動部に接して留まるように、前記キュベットを前記第1の貯留部に貯留する工程と、
前記駆動部が駆動することで、前記キュベットを前記駆動部と前記排出口の縁との間に形成されている隙間を通じて前記第1の貯留部から下方に排出する工程と、
排出された前記キュベットを第2の貯留部に貯留する工程と、を備える、分析装置に用いるキュベットの貯留方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置及び分析装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液凝固分析や免疫血清分析などの血液分析は、通常分析装置を用いて行われる。この分析装置は、一般的に、検体容器の検体を、分析時に用いられる容器に注入し、その容器に試薬を注入して検体と混合し、容器を加温した後分析部に搬送して検体の分析を行う。
【0003】
上述の分析装置で用いられる容器は、分析装置内に予め貯留されている。このため、分析装置は、空の状態の多数の容器を貯留する貯留部と、その貯留部の容器を検体の注入部等に搬送するための搬送部を備えている。
【0004】
例えば特許文献1に記載された分析装置は、
図19に示すように容器としてのキュベットを供給する供給機構部500を備え、供給機構部500は、複数のキュベットを貯留する貯留部501と、貯留部501からキュベットを取り出す取り出し部502を備えている。取り出し部502は、
図20に示すように貯留部501の内部の最下部に設置された揺動レール503にキュベット504を載せ、その揺動レール503を揺動させてキュベット504を貯留部501から搬出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、分析装置では、容器が貯留部になくなると、ユーザーが貯留部に空の容器を補充する必要がある。このため、ユーザーの作業負担の軽減の観点から、貯留部の貯留容量は大きければ大きいほどよい。この点、貯留部の容積を単純に大きくすることが考えられるが、この場合、上述の揺動レール503のような、貯留部から容器を搬出する搬送部の一部が、多量の容器で埋もれてしまい、容器の取出しを適切に行うことができなくなる恐れがある。
【0007】
そこで、分析装置に2つの貯留部を隣接して設け、容器をはじめ第1の貯留部に貯留し、その第1の貯留部の容器を適宜第2の貯留部に搬送し、その第2の貯留部の容器を搬送部により搬出することが考えられる。かかる分析装置によれば、貯留部を2つ設けて全体の貯留容量を増やしつつ、第2の貯留部の容器の貯留量を相対的に減らすことができるので、揺動レール503のような搬送部の一部が容器で埋もれることを防止することが可能となる。
【0008】
しかしながら、上述の場合には、第1の貯留部の容器を第2の貯留部に搬送するための新たな搬送部が必要になる。また、この新たな搬送部は、第2の貯留部において上述の揺動レール503のような搬送部の一部が容器で埋もれないために、第1の貯留部から第2の貯留部に搬送する容器の量を調整する機能を必要とする。このため新たな搬送部は複雑で大型なものになり、その結果分析装置も大型化してしまう。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、検体を収容可能な容器を貯留するための貯留部の貯留容量を増大させつつ、装置の大型化を抑えることができる分析装置及び分析装置の制御方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る検体を分析する分析部(24)を備えた分析装置(1)は、検体を収容可能なキュベット(B)を貯留可能であり、キュベット(B)を排出可能な排出口(150)を有する第1の貯留部(131)と、第1の貯留部(131)の排出口(150)から排出されたキュベット(B)を貯留可能な第2の貯留部(132)と、第1貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)のうち排出口(150)付近に留まっているキュベット(B)に動きを与えて、排出口(150)から第2貯留部(132)へキュベット(B)を排出する排出機構(165、300、310)と、を備えている。
【0011】
本態様によれば、分析装置(1)が、第1の貯留部(131)と第2の貯留部(132)の2つの貯留部を備えるので、貯留部のトータルの容積を増大させることができる。また、第1の貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)を、第1の貯留部(131)の底部の排出口(150)から排出させて第2の貯留部(132)に貯留することができ、なおかつ排出機構によりその排出口(150)からのキュベット(B)の排出を制御して第2の貯留部(132)に貯留されるキュベット(B)の量を調整することができる。これにより、第1の貯留部(131)から第2の貯留部(132)にキュベット(B)を搬送する新たな搬送部を別途備える必要がなく、分析装置(1)の大型化を抑えることができる。なお、「検体を収容可能なキュベット(B)」には、検体以外のものが検体に混合されるキュベットも含まれる。
【0012】
排出機構(165、300、310)は、第1の貯留部(131)の排出口(150)からキュベット(B)を落下させるように構成されていてよい。
【0013】
本態様によれば、第1の貯留部(131)から落下を用いてキュベット(B)を排出し、そのキュベット(B)の排出を制御できるので、分析装置(1)の構成を簡略化することができる。なお、「落下」は、重力により落ちるものであればよく、キュベット(B)が排出口(150)から第2の貯留部(132)に直接落ちる場合のみならず、キュベット(B)が、第1の貯留部(131)の排出口150と第2の貯留部(132)との間に設けられた搬送路などを介して落ちる場合も含まれる。
【0014】
排出機構は、第1の貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)に振動を付与する振動付与機構(165)を有するものであってもよい。
【0015】
本態様によれば、第1の貯留部(131)に複数のキュベット(B)を貯留し、キュベット(B)がキュベット(B)同士の自然な摩擦力により停滞している状態において、振動付与機構(165)により、第1の貯留部に貯留された複数のキュベット(B)に振動を与え、その振動により第1の貯留部(131)の排出口(150)からキュベット(B)を落下させることができる。この結果、第1の貯留部(131)の排出口(150)からのキュベット(B)の落下を好適に制御することができる。
【0016】
振動付与機構(165)は、第1の貯留部(131)に対して上方向に振動を付与するものであってもよい。
【0017】
本態様によれば、第1の貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)に対し、重力と反対方向に振動を与えることができる。これにより、第1の貯留部(131)で停滞しているキュベット(B)が動きやすくなり、第1の貯留部(131)の排出口(150)からのキュベット(B)の落下を好適に制御することができる。
【0018】
振動付与機構(165)は、第1の貯留部(131)の排出口(150)付近に設けられた振動板(153)と、振動板(153)を振動させる振動部材(160)と、を有するものであってもよい。
【0019】
本態様によれば、板状の振動板(153)から第1の貯留部(131)の排出口(150)付近のキュベット(B)に振動が付与されるので、振動の伝達が効果的に行われ、第1の貯留部(131)の排出口(150)からのキュベット(B)の落下を好適に制御することができる。
【0020】
振動板(153)は、第1の貯留部(131)の底部の少なくとも一部を構成していてもよい。
【0021】
本態様によれば、第1の貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)が接触している底部が振動するので、振動板(153)の振動がキュベット(B)に直接的に伝わり、排出口(150)からのキュベット(B)の落下を好適に制御することができる。
【0022】
振動部材(160)は、振動板(153)における第1の貯留部(131)の内部に面しない裏面に設けられていてもよい。
【0023】
本態様によれば、キュベット(B)が振動部材(160)に当たることがなく、振動部材(160)が保護されるので、キュベット(B)及び振動部材(160)の破損を防止することができる。
【0024】
第1の貯留部(131)は、第2の貯留部(132)よりも多くのキュベット(B)を貯留可能に構成されていてもよい。
【0025】
本態様によれば、第2の貯留部(132)の貯留容量が相対的に小さくなるので、第2の貯留部(132)の搬送部(133)がキュベット(B)に埋もれて搬送できない状態になることを抑制することができる。一方、第1の貯留部(131)の貯留容量が相対的に大きくなるので、2つの貯留部のトータルの容積を増やすことができる。
【0026】
分析装置(1)は、第2の貯留部(132)に貯留されたキュベット(B)を前記第2の貯留部(132)から搬出する搬送部(133)と、搬送部(133)から搬送されたキュベット(B)を検出可能なセンサ(260)と、センサ(260)の検出結果に基づいて、排出機構の動作を制御する制御部(26)と、をさらに備えていてもよい。
【0027】
本態様によれば、センサを用いて、搬送部(133)による第2の貯留部(132)からのキュベット(B)の搬送状態を検出し、その搬送状態に基づいて、第1の貯留部(131)の排出口(150)から第2の貯留部(132)へのキュベット(B)の排出を調整することができる。この結果、第2の貯留部(132)に貯留されるキュベット(B)の量をより厳格に制御することができる。
【0028】
本発明の一態様に係る、検体を分析する分析部(24)を備えた分析装置(1)は、検体を収容可能なキュベット(B)を貯留可能であり、底部に排出口(150)を有する第1貯留部(131)と、第1貯留部(131)の下方に設けられた第2の貯留部(132)と、排出口(150)に設けられた駆動部と、を備え、第1貯留部(131)は、駆動部にキュベット(B)が接することで排出口(150)付近にキュベット(B)を留めるように構成され、駆動部が駆動することにより、駆動部と排出口(150)によって形成される隙間を通じてキュベット(B)を下方に排出する。
【0029】
駆動部は、キュベット(B)に接触しながら回転駆動する回転機構(300)を有すものであってもよい。
【0030】
本態様によれば、第1の貯留部(131)に複数のキュベット(B)を貯留し、キュベット(B)がキュベット(B)同士の自然な摩擦力により停滞している状態において、回転機構(300)が回転することにより、第1の貯留部(131)に貯留された複数のキュベット(B)に振動や直接的な力を与え、その外力により第1の貯留部(131)の排出口(150)からキュベット(B)を排出させることができる。この結果、第1の貯留部(131)の排出口(150)からのキュベット(B)の排出を好適に制御することができる。
【0031】
第1の貯留部(131)は、第2の貯留部(132)よりも多くのキュベット(B)を貯留可能に構成されていてもよい。
【0032】
分析装置(1)は、第2の貯留部(132)に貯留されたキュベット(B)を前記第2の貯留部(132)から搬出する搬送部(133)と、搬送部(133)から搬送されたキュベット(B)を検出可能なセンサ(260)と、センサ(260)の検出結果に基づいて、排出機構の動作を制御する制御部(26)と、をさらに備えていてもよい。
【0033】
本発明の一態様に係る、分析装置(1)に用いるキュベット(B)の貯留方法は、検体を収容可能なキュベット(B)を第1の貯留部(131)に貯留する工程と、第1貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)のうち排出口(150)付近に留まっているキュベット(B)に動きを与えて、排出口(150)から第2貯留部(132)へキュベット(B)を排出する工程と、第1貯留部(131)の排出口(150)から排出されたキュベット(B)を、第2の貯留部(132)に貯留する工程と、を備える。
【0034】
排出口(150)から第2貯留部(132)へキュベット(B)を排出する工程は、第1の貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)に外力を与えることにより行われるようにしてもよい。
【0035】
排出口(150)から第2貯留部(132)へキュベット(B)を排出する工程は、第1貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)のうち排出口(150)付近に留まっているキュベット(B)に対して上方向に振動を付与することにより行われるようにしてもよい。
【0036】
排出口(150)から第2貯留部(132)へキュベット(B)を排出する工程は、第1貯留部(131)に貯留されたキュベット(B)のうち排出口(150)付近に留まっているキュベット(B)に対して回転機構(300)を回転駆動することにより排出口(150)によって形成される隙間を通じてキュベット(B)を下方に排出するようにしてもよい。
【0037】
排出口(150)から第2貯留部(132)へキュベット(B)を排出する工程は、キュベット(B)の搬送状態に基づいて行なわれるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、検体を収容可能な容器を貯留するための貯留部の貯留容量を増大させつつ、装置の大型化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、分析装置の構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、分析装置の内部構成の概略を示す横断面の説明図である。
【
図3】
図3は、キュベットの一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、キュベット供給装置の外観の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、キュベット供給装置の投入部の内部構成の一例を示す縦断面の説明図である。
【
図7】
図7は、キュベット供給装置の第1の貯留部の内部構成の一例を示す横断面の説明図である。
【
図8】
図8は、後側から見た第1の貯留部及び第2の貯留部の内部構成の一例を示す縦断面の説明図である。
【
図9】
図9は、左側から見た第1の貯留部及び第2の貯留部の内部構成の一例を示す縦断面の説明図である。
【
図10】
図10は、第2の貯留部と搬送部の内部構造の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、筐体の第2の貯留部にアクセスするための扉を示す説明図である。
【
図12】
図12は、第2の貯留部と搬送部の内部構造の一例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、第1の貯留部と第2の貯留部にキュベットが貯留された状態を示す説明図である。
【
図15】
図15は、振動付与機構の主な動作工程を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、排出制御部が回転機構を備えた場合の説明図である。
【
図17】
図17は、排出制御部が開閉機構を備えた場合の説明図である。
【
図18】
図18は、第2の貯留部に振動部材を備えた場合の説明図である。
【
図19】
図19は、関連技術に係る構成を説明するための模式図である。
【
図20】
図20は、関連技術に係る構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略す。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0041】
<分析装置の構成>
図1は、本実施の形態に係る分析装置1の外観の一例を示す斜視図である。
図2は、分析装置1の内部の構成を示す模式図である。
【0042】
分析装置1は、自動で血液などの検体を分析するものである。
図1に示すように分析装置1は、略直方体の外形を有する筐体10を備えている。筐体10は、例えば前面壁10aと、前面(正面)から見て右側の側壁10bと、前面から見て左側の側壁10cと、天井壁10d及び後面壁10eを備えている。
【0043】
図2に示すように分析装置1は、筐体10の内部に、検体容器Aを搬入する検体容器搬入部20と、複数の、検体を収容可能な容器としてのキュベットBを環状に並べて保持する第1のテーブル21と、検体に混合される試薬が収容された複数の試薬容器Cを保持する第2のテーブル22と、キュベットBを保持して加温する加温部23と、キュベットBを保持してキュベットBの分析試料(検体と試薬を混合したもの)を分析する分析部24と、分析が終了したキュベットBを排出する排出部25と、制御部26等を備えている。
【0044】
また分析装置1は、キュベットBに液体を注入する装置として、検体容器搬入部20に搬入された検体容器Aの検体を第1のテーブル21のキュベットBに注入する検体注入アーム27と、第2のテーブル22の試薬容器Cの試薬をキュベットBに注入する2つの試薬注入装置28、29等を備えている。
【0045】
さらに、分析装置1は、キュベットBを搬送する装置として、装置本体にキュベットBを供給するキュベット供給装置30と、キュベット供給装置30により供給されたキュベットBを第1のテーブル21に搬送する第1の搬送アーム31と、第1のテーブル21のキュベットBを第1の試薬注入装置28や加温部23に搬送する第2の搬送アーム32と、加温部23のキュベットBを第2の試薬注入装置29や分析部24、排出部25に搬送する第3の搬送アーム33等を備えている。
【0046】
平面視で、検体容器搬入部20は、筐体10内の前面側に配置され、第1のテーブル21と第2のテーブル22は、筐体10内の中央付近に配置されている。加温部23は、筐体10内の右側に配置され、分析部24は、後面(背面)側に配置されている。排出部25は、加温部23と分析部24の間に配置されている。キュベット供給装置30は、分析部24と第1のテーブル21との間の筐体10内の左側に配置されている。
【0047】
検体容器搬入部20は、複数の検体容器Aを収容するラックRを搬入するラック搬入部40と、検体注入アーム27がアクセス可能で、検体注入アーム27によりラックRの検体容器Aから検体が吸引される検体吸引部41と、検体が吸引された検体容器AのラックRを搬出するラック搬出部42と、ラックRをラック搬入部40、検体吸引部41及びラック搬出部42にこの順で搬送する搬送装置43を備えている。搬送装置43は、例えばコンベアを用いてラックRを移送している。
【0048】
第1のテーブル21は、円環形状を有し、駆動部(図示せず)により回転可能に構成されている。第1のテーブル21は、キュベットBを保持する複数のキュベット保持部50を備えている。キュベット保持部50は、周方向の全周にわたり等間隔で配置されている。
【0049】
キュベットBは、
図3に示すように液体を収容する胴部b1と、胴部b1の入口付近に設けられた鍔部b2を備えている。鍔部b2は、胴部b1の上部から径方向の外方に突出しており、胴部b1よりも大きな外径を有している。キュベットBは、例えば30mm程度の長手方向の寸法を有し、胴部b1が8mm程度の外周外径D1を有し、鍔部b2が10mm程度の外周外径D2を有している。
図2に示すキュベット保持部50は、キュベットBの胴部b1の外周外径D1よりも大きく鍔部b2の外周外径D2よりも小さい孔を備え、この孔にキュベットBの胴部b1を収容して、キュベットBを保持することができる。
【0050】
第2のテーブル22は、第1のテーブル21の内側に配置されている。第2のテーブル22は、円盤形状を有し、駆動部(図示せず)により回転可能に構成されている。第2のテーブル22は、試薬容器Cを保持する複数の試薬容器保持部60を備えている。試薬容器保持部60は、例えば複数重の同心円状に配置されている。試薬容器保持部60は、例えば周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0051】
加温部23は、円形状の加温プレート70を有している。加温プレート70は、キュベットBを保持する複数のキュベット保持部71を有している。キュベット保持部71は、例えば加温プレート70の最外周付近の全周にわたり等間隔で配置されている。加温プレート70は、図示しない熱源を有し、キュベット保持部71に保持されたキュベットB内の液体を所定の温度に加温することができる。
【0052】
分析部24は、長方形状の分析プレート80を有している。分析プレート80は、キュベットBを保持する複数のキュベット保持部81を有している。キュベット保持部81は、例えば分析プレート80の長手方向に沿った複数列で配置されている。分析部24は、図示しない照射部と受光部を有し、照射部からキュベット保持部81に光を照射し、キュベットBの分析液を透過した光を受光部で受光し、その受光結果から検体を分析することができる。
【0053】
排出部25は、キュベットBは排出する排出孔82を備えている。排出孔82は、筐体10の下部に設けられた図示しないキュベット回収部に連通している。
【0054】
検体注入アーム27は、平面視で、筐体10内の検体容器搬入部20の検体吸引部41と第1のテーブル21との間に配置されている。検体注入アーム27は、検体注入アーム27を駆動する駆動部90と、検体を注入及び吸引するノズル91を備えている。
【0055】
駆動部90は、例えば検体注入アーム27を検体吸引部41と第1のテーブル21との間で平面方向に回転させる回転駆動部と、検体注入アーム27を上下動させる昇降駆動部を備えている。ノズル91は、検体注入アーム27の先端部に設けられ、図示しないポンプ等により検体を吸引したり注入することができる。かかる構成により、検体注入アーム27は、検体吸引部41の検体容器Aにアクセスし、検体を吸引し、第1のテーブル21上に移動し、第1のテーブル21のキュベットBに検体を注入することができる。
【0056】
試薬注入装置28、29は、平面視で、細長いアーム100を有し、その下部にノズル101を備えている。第1の試薬注入装置28のアーム100は、第2のテーブル22上から加温部23付近まで延びている。第2の試薬注入装置29のアーム100は、第2のテーブル22から分析部24付近まで延びている。アーム100は、例えば筐体10の天井に固定されている。
【0057】
ノズル101は、図示しない駆動部により、アーム100に対しその長手方向と上下方向に移動自在に構成されている。第1の試薬注入装置28のノズル101は、アーム100に沿って第2のテーブル22上から加温部23の加温テーブル70上付近まで移動自在である。第2の試薬注入装置29のノズル101は、アーム100に沿って第2のテーブル22上から分析部24の分析プレート80上付近まで移動自在である。ノズル101は、図示しないポンプ等により試薬を吸引したり注入することができる。また、ノズル101は、熱源を備えており、吸引した試薬を所定の温度に加温することができる。かかる構成により、第1の試薬注入装置28のノズル101は、第2のテーブル22の試薬容器Cにアクセスし、試薬を吸引し、加温テーブル70上付近に移動し、加温テーブル70付近で第2のアーム32に保持されたキュベットBに試薬を注入することができる。また、第2の試薬注入装置29のノズル101は、第2のテーブル22の試薬容器Cにアクセスし、試薬を吸引し、分析プレート80上付近に移動し、分析プレート80付近で第3のアーム33に保持されたキュベットBに試薬を注入することができる。
【0058】
キュベット供給装置30は、外部から投入された空のキュベットBを貯留し、そのキュベットBを順次後述のキュベット搬出部182に供給するものである。キュベット供給装置30の構成の詳細は後述する。
【0059】
第1のアーム31は、平面視で、
図2に示すように例えばキュベット供給装置30の後述の搬送路181と第1のテーブル21との間に配置されている。第1のアーム31は、第1のアーム31を駆動する駆動部110と、キュベットBを保持するキュベット保持部111を有している。駆動部110は、例えば第1のアーム31をキュベット供給装置30のキュベット搬出部182と第1のテーブル21との間で平面方向に回転させる回転駆動部と、第1のアーム31を上下動させる昇降駆動部を備えている。キュベット保持部111は、第1のアーム31の先端部に設けられ、例えばU字形状を有し、キュベットBの鍔部b2を下から引っ掛けてキュベットBを保持することができる。かかる構成により、第1のアーム31は、キュベット供給装置30のキュベット搬出部182のキュベットBを保持し、当該キュベットBを第1のテーブル21上に移動させ、第1のテーブル21のキュベット保持部50に置くことができる。
【0060】
第2のアーム32は、例えば加温部23の加温プレート70に配置されている。第2のアーム32は、第2のアーム32を駆動する駆動部115と、キュベットBを保持するキュベット保持部116を有している。駆動部115は、例えば第2のアーム32を第1のテーブル21と加温テーブル70との間で平面方向に回転させる回転駆動部と、第2のアーム32を上下動させる昇降駆動部と、第2のアーム32を水平方向に伸縮させる伸縮駆動部を備えている。キュベット保持部116は、第2のアーム32の先端部に設けられ、例えばU字形状を有し、キュベットBの鍔部b2を下から引っ掛けてキュベットBを保持することができる。かかる構成により、第2のアーム32は、第1のテーブル21のキュベット保持部50のキュベットBを保持し、当該キュベットBを第1の試薬注入装置28のノズル101の下方に移動させたり、加温テーブル70のキュベット保持部71に移動させることができる。
【0061】
第3のアーム33は、平面視で筐体10内の分析部24の後面側に配置されている。第3のアーム33は、第3のアーム33を駆動する駆動部120と、キュベットBを保持するキュベット保持部121を有している。駆動部120は、第3のアーム33を左右方向、前後方向及び上下方向に移動させる駆動機構を備えている。キュベット保持部121は、第3のアーム33の先端部に設けられ、例えばU字形状を有し、キュベットBの鍔部b2を下から引っ掛けてキュベットBを保持することができる。かかる構成により、第3のアーム33は、加温テーブル70のキュベット保持部71のキュベットBを保持し、当該キュベットBを第2の試薬注入装置29のノズル101の下方に移動させたり、分析部24のキュベット保持部81に移動させることができる。第3のアーム33は、分析の終了したキュベットBを排出部25に搬送することができる。
【0062】
<キュベット供給装置の構成>
図4は、キュベット供給装置30の構成の概略を示す斜視図である。キュベット供給装置30は、例えば空のキュベットBを投入する投入部130と、投入部130から投入されたキュベットBを貯留する第1の貯留部131と、第1の貯留部131から排出されたキュベットBを貯留する第2の貯留部132と、第2の貯留部132のキュベットBを搬送する搬送部133を備えている。
【0063】
投入部130は、例えば方形の投入口140と、投入口140から第1の貯留部131に続く搬送路141を備えている。投入口140は、
図5に示すように筐体10の天井壁10dに設けられた扉142を開けることにより筐体10の上面に開口する。搬送路141は、筐体10の前面側から後面側に向かう方向に延伸する。搬送路141は、延伸方向に対し垂直の鉛直断面が略方形となる断面形状を有している。搬送路141は、
図6に示すように投入口140から第1の貯留部131に向けて次第に下がるように傾斜した底面143を有している。
【0064】
図4に示すように第1の貯留部131は、直方体の外形を有し、例えば前面から見て右側の側壁131aと、前面から見て左側の側壁131bと、天井壁131cと、後面壁131dを備えている。第1の貯留部131の前面側の面は開口し、搬送路141が接続されている。また、第1の貯留部131は、
図7及び
図8に示すように底部131eを有している。
図7は、第1の貯留部131の内部構成を示す横断面の説明図である。
図8は、筐体10の後側から見た第1の貯留部131及び第2の貯留部132の内部構成を示す縦断面の説明図である。
図9は、筐体10の左側から見た第1の貯留部131及び第2の貯留部132の内部構成を示す縦断面の説明図である。
【0065】
底部131eは、
図7に示すように平面視で左右方向に長い長方形形状を有している。底部131eは、例えば排出口150と、第1の傾斜板151と、第2の傾斜板152と、振動板153を備えている。
【0066】
排出口150は、例えば方形状を有し、下方の第2の貯留部132に開口している。排出口150は、後面壁131dに隣接し、左右方向の中央よりも右側の側壁131aに近い位置に配置されている。排出口150は、キュベットBの最大寸法(
図3に示す長手方向の寸法)をL、排出口の最大寸法(対角線の寸法)をDとしたときに、L<D<3×Lの関係、好ましくはL<D<2×Lの関係を満たす寸法を有している。
【0067】
第1の傾斜板151は、
図7乃至
図9に示すように第1の貯留部131の前面側に設けられ、搬送路141の底面143と滑らかに連続している。第1の傾斜板151は、
図7及び
図9に示すように左右方向の中央よりも右側にある排出口150に向かって次第に下がるように傾斜している。
【0068】
第2の傾斜板152は、
図7及び
図8に示すように第1の貯留部131の左の側壁131b側に設けられ、左の側壁131bから排出口150に向かって次第に下がるように傾斜している。第1の傾斜板151及び第2の傾斜板152には、キュベットBの滑りを良くするために摩擦力の低い樹脂(例えばポリアセタール)が用いられている。
【0069】
振動板153は、
図7に示すように例えば長方形状を有し、底部131eの一部を構成している。振動板153は、右の側壁131aから排出口150に向けて水平方向に延びている。振動板153は、周囲の他の部よりも振動しやすい構成、例えば薄い板形状や、弾性率の高い材質などからなる構成を有している。
【0070】
振動板153は、
図8に示すように例えばL字型の形状を有し、右の側壁131aから排出口150側に向けて延びる水平部153aと、水平部153aの先端から下方に向けて延びる垂直部153bを備えている。垂直部153bは、排出口150に面し、排出口150の縁の一部を構成している。水平部153aの上面153cは、第1の貯留部131の内部に面する上面となり、垂直部153bの外側面153dは、排出口150に面する側面となっている。水平部153aの上面153cと垂直部153bの外側面153dとは、排出口150の縁の上縁において滑らかに接続されている。
【0071】
振動板153の裏面には、上下方向に振動する振動部材160が設けられている。振動部材160は、例えば給電により振動する振動アクチュエータである。振動部材160の振動は、制御部26により制御することができる。この振動部材160により振動板153を振動させ、第1の貯留部131に溜まったキュベットBを排出口150から第2の貯留部132に落下させることができる。本実施の形態においては、振動板153及び振動部材160は、振動付与機構165を構成し、これが第1の貯留部131から第2の貯留部132へのキュベットBの落下を制御する排出制御部を構成している。
【0072】
図4、
図8及び
図9に示すように第2の貯留部132は、第1の貯留部131の直下に設けられている。第2の貯留部132は、第1の貯留部131よりも小さい貯留容量を有している。
【0073】
第2の貯留部132は、
図4に示すように前面壁132a、前面から見て右側の側壁132bと、前面から見て左側の側壁132cと、後面壁132dと、底壁132eを有している。
【0074】
図10に示すように底壁132eは、中央付近が最も低くなる逆円錐形状(すり鉢形状)の傾斜面を有している。
【0075】
第2の貯留部132の上面は開口しており、第1の貯留部131の底部131eに露出している。これにより、
図8に示すように第2の貯留部132の後面から見て左側の上面は、底部131eの第2の傾斜板152に露出しており、第2の傾斜板152の直下には、外部から第2の貯留部132にアクセス可能な空隙170が形成されている。第2の貯留部132の左側の空隙170に対応する筐体10の左側の側壁10cには、
図1に示すように開閉自在な扉171が設けられている。
図11に示すように扉171を開放することにより、筐体10の外部から第2の貯留部132にアクセスすることができる。
【0076】
図4に示す搬送部133は、第2の貯留部132のキュベットBを取り出し、キュベットBを順次キュベット搬出部182に搬送するものである。
【0077】
搬送部133は、例えば第2の貯留部132のキュベットBを取り出す取出し機構180と、取出し機構180により取り出したキュベットBを搬送する搬送路181と、搬送路181により搬送されたキュベットBを収容するキュベット搬出部182を備えている。
【0078】
図10及び
図12に示すように取出し機構180は、例えば板面が前面を向くように設置された垂直板190と、垂直板190の板面に固定された回転軸191と、回転軸191周りに上下に揺動して第2の貯留部132のキュベットBを拾い上げる拾い上げ部材192と、拾い上げ部材192を上下に揺動させる揺動機構193を備えている。
【0079】
第2の貯留部132の底壁132eには、左右方向に沿ったスリット132fが形成され、垂直板190は、そのスリット132fに配置されている。拾い上げ部材192は、例えば略扇型形状を有し、その扇型の側面が上を向くように回転軸191に取り付けられている。拾い上げ部材192は、上面に、キュベットBをその長手方向を左右方向の搬出方向に向けた状態で(寝かした状態で)載置可能な溝状の載置部200を備えている。
【0080】
揺動機構193は、リンク機構である。揺動機構193は、拾い上げ部材192を回転軸191周りに回転させ、載置部200が第2の貯留部132の底壁132eの最下部に位置する第1の位置と、載置部200が搬出方向側(右側)が低くなるように傾斜する第2の位置との間で揺動させることができる。
【0081】
搬送路181は、傾斜した載置部200から搬出方向側に滑り落ちたキュベットBを鍔部b2が上になるように立ち上げ、その状態でキュベットBをキュベット搬出部182に送るように構成されている。
【0082】
具体的には、搬送路181は、傾斜した載置部200に連続し、キュベット搬出部182に向けて延びる、平行に配置された2本の直線状のレール230を有する。レール230は、キュベット搬出部182に向けて次第に低くなるように傾斜している。2本のレール230の間には、スリット231が形成されている。スリット231の幅は、キュベットBの胴部b1の外周外径D1よりも大きく、鍔部b2の外周外径D2よりも小さい。これにより、キュベットBは、搬送路181において胴部b1がスリット231に入り、鍔部b2がレール230にひっかかり、鍔部b2を上にして立ち上がる。また、キュベットBは、その立ち上がった状態のままレール230及びスリット231に沿って滑り落ち落下する。
【0083】
図13に示すようにキュベット搬出部182は、略直方体の外形を有する。キュベット搬送部182は、例えば駆動部(図示せず)により回転する回転部250を備えている。回転部250は、円柱形状を有し、外周面に複数、例えば3つの収容孔251を備えている。収容孔251は、回転部250の外周面からキュベットBを収納可能な略円柱形状を有する。搬送路181を落下したキュベットBは、回転部250が回転し収容孔251がレール230のスリット231と合ったときに、収容孔251に収容され保持される。収容孔251がレール230のスリット231と合わないときには、キュベットBはレール230上に留まる。なお、平常時は、キュベットBがキュベット搬出部182に保持される数に比べて、搬送路181におけるキュベットBの落下量が多くなるように設定されているので、搬送路181には、レール230の上部まで複数のキュベットBが溜まった状態(順番待ちの状態)になる。搬送路181には、その長さに応じて所定の数、例えば10個のキュベットBを溜めることができる。
【0084】
キュベット供給装置30は、搬送部133によるキュベットBの搬送状態を検出可能なセンサを備えている。具体的には、搬送路181には、レール230の最上部に設けられ、キュベットBの有無やキュベットBの通過を検出可能な第1のセンサ260と、レール230の最下部に設けられ、キュベットBの有無を検出可能な第2のセンサ261が設けられている。第1のセンサ260及び第2のセンサ261は、例えば光の照射部と受光部を有する非接触式の光センサであり、受光部が、照射部から照射された光を受光したか否かに応じて、キュベットBの有無などを検出する。第1のセンサ260及び第2のセンサ261による検出結果は、制御部26に出力される。
【0085】
制御部26は、例えばコンピュータであり、メモリに記憶されたプログラムをCPUにより実行することにより、検体注入アーム27、試薬注入装置28、29、第1のアーム31、第2のアーム32、第3のアーム33、検体容器搬入部20、第1のテーブル21、第2のテーブル22、加温部23、分析部24、キュベット供給装置30などの各種駆動部の駆動を制御して、検体の分析処理を実施することができる。特に、制御部26は、分析処理において、センサ260、261によるキュベットBの搬送状態の検出結果に基づいて、振動付与機構165の動作を制御することができる。
【0086】
<分析装置の動作>
次に以上のように構成された分析装置1の動作(制御)について説明する。
【0087】
先ず、血液などの検体の分析処理が開始される前には、ユーザーにより、多数の空のキュベットBがキュベット供給装置30に投入される。このとき、ユーザーは、
図5に示した筐体10の天井壁10dの扉142を開き、投入口140から多数の空のキュベットBを投入する。投入されたキュベットBは、搬出路141を通過し、第1の貯留部131に供給される。
図14に示すように、第1の貯留部131に供給された一部のキュベットBは、排出口150を通じて第2の貯留部132に落下し、残りのキュベットBは、キュベットB同士の自然な摩擦力により停滞し、第1の貯留部131に貯留される。このとき第2の貯留部132には、第2の貯留部132の貯留容量に対して多すぎない、およそ定量のキュベットBが貯留される。
【0088】
次に搬送部133が駆動すると、拾い上げ部材192は、一定の速度で上下に揺動する。
図12に示すように拾い上げ部材192は、はじめ第2の貯留部132の最下部の第1の位置にあり、その後拾い上げ部材192は、回転軸191周りに上方に回動する。拾い上げ部材192は、一つのキュベットBを拾い上げて載置部200に載せて第2の位置まで上方に揺動し、載置部200が搬出方向側が低くなるように傾斜する。キュベットBは、搬出方向の搬送路181側に滑り落ち、搬送路181のレール230上に移動する。このとき、
図13に示すようにキュベットBは、胴部b1がスリット231に落ちて鍔部b2がレール230に保持され、立ち上げられる。この状態で、キュベットBは搬送路181の傾斜に沿って落下し、キュベット搬出部182の回転部250に当たり止まる。これが繰り返されると、搬送路181には下から順にキュベットBが溜まっていき、最終的には、搬送路181の最上部まで所定個数のキュベットBが溜まる。
【0089】
回転部250が所定のタイミングで回転し、収容孔251とスリット231の位置が一致すると、キュベットBが収容孔251に入る。キュベット搬出部182のキュベットBは、
図4に示す第1のアーム31により第1のテーブル21に搬送され、キュベット保持部50に収容される。これが繰り返され、第1のテーブル21には、空のキュベットBが周方向に並べられる。
【0090】
次に検体の分析処理が開始されると、まず、複数の検体容器Aが収容されたラックRが検体容器搬入部20のラック搬入部40に搬入される。ラックRは、搬送装置43により検体吸引部41に搬送される。次に検体注入アーム27により、ラックRの検体容器Aの検体が吸引され、第1のテーブル21の空のキュベットBに注入される。次にキュベットBは、第2のアーム32により保持され、第1の試薬注入装置28の下方に移動される。
【0091】
次に、第1の試薬注入装置28のノズル101により、第2のテーブル22の試薬容器Cの試薬が吸引され、所定の温度に加温され、第2のアーム32に保持されているキュベットBに注入される。これにより、キュベットBの検体と試薬が混合される。
【0092】
次に、キュベットBは、第2のアーム32により加温部23の加温プレート70に搬送される。ここで、キュベットBの検体と試薬の混合液は所定の温度まで加温される。
【0093】
続いて、キュベットBは、第3のアーム33により保持され、例えば第2の試薬注入装置29の下方に移動される。次に、第2の試薬注入装置29のノズル101により、第2のテーブル22の試薬容器Cの試薬が吸引され、第3のアーム33に保持されているキュベットBに注入される。これにより、キュベットBの検体と試薬が混合され、分析試料となる。
【0094】
次に、キュベットBは、第3のアーム33により分析部24の分析プレート80に搬送される。なお、第2の試薬注入装置29により試薬が注入されない場合もあり、この場合には、加温部23のキュベットBが、第3のアーム33により直接分析部24に搬送される。
【0095】
分析部24において、キュベットB内の分析試薬の分析が行われる。分析が終了すると、キュベットBは、第3のアーム33により排出部25に搬送され、排出される。
【0096】
上述の分析処理中は、空のキュベットBが、第2の貯留部132からキュベット搬出部182に供給され、キュベット搬出部182から第1のテーブル21に補充されるため、第2の貯留部132のキュベットBが次第に減少する。このため、第2の貯留部132にもキュベットBを補充する必要がある。第2の貯留部132へのキュベットBの供給は、振動付与機構165を作動させ、第1の貯留部131の複数のキュベットBを排出口150から落下させることにより行う。振動付与機構165が作動すると、振動部材160が振動し、振動板153が振動して、その周囲のキュベットBに振動が付与され、その振動により一部のキュベットBが落下する。このときのキュベットBの落下量(供給量)は、振動の強さや時間に依存する。
【0097】
次に第2の貯留部132にキュベットBを補充する際の振動付与機構165の動作の制御について説明する。
図15は、振動付与機構165の主な動作制御のフローを示すフローチャートである。
【0098】
先ず、制御部26は、搬送路181における搬送状態、例えばキュベットBの個数Nを把握する。このキュベットBの個数Nの把握は、第1のセンサ260、第2のセンサ261、制御部26自身の制御信号等を用いて行われる。例えば第1のセンサ260は、搬送路181の最上部においてキュベットBが通過した数をカウントする。制御部26は、第1のアーム31に与えた、キュベット搬出部182からキュベットBを搬出するための制御指令をカウントする。そして、キュベットBの個数Nは、例えば第1のセンサ260でカウントされたキュベットBの数n1から、キュベット搬出部182から搬出されたキュベットBの数n2を引くことにより把握される。なお、キュベットBの数n2は、キュベット搬出部182にセンサを設けてカウントしてもよいし、第2のセンサ261を用いて搬送路181からキュベット搬出部182に搬送されたキュベットBの数をカウントしてもよい。
【0099】
制御部26は、搬送路181におけるキュベットBの個数Nに基づいて振動付与機構165の動作を制御する。
【0100】
例えば搬送路181におけるキュベットBの個数Nが、所定の閾値H、例えば最大個数10個中7個以上あると判断された場合には、振動付与機構165による振動は行われない。一方、搬送路181におけるキュベットBの個数Nが、所定の閾値H未満の6個以下場合には、振動付与機構165による振動が行われる。
【0101】
そして、振動付与機構165による振動が行われる場合には、キュベットBの個数Nに応じて振動の程度を変えてもよい。例えばキュベットBの個数Nが3個以上6個以下の場合には、所定時間断続的に振動が行われる。また、例えばキュベットBの個数Nが0個以上2個以下の場合には、所定時間継続的に振動が行われる。
【0102】
さらに、キュベットBの個数Nが0個の場合であって、所定時間以上、例えば30秒間以上0個の状態が続いている場合には、第1の貯留部131及び第2の貯留部132の両方にキュベットBがない可能性があるので、振動が停止される。なお、この0個の状態が継続されている時間は、第2のセンサ261により検出できる。
【0103】
本実施の形態によれば、分析装置1が、第1の貯留部131と第2の貯留部132の2つの貯留部を備えるので、貯留部のトータルの容積を増大させることができる。また、第1の貯留部131に貯留されたキュベットBを、第1の貯留部131の底部131eの排出口150から落下させて第2の貯留部132に貯留することができ、なおかつ振動付与機構165により排出口150からのキュベットBの落下を制御して第2の貯留部132に貯留されるキュベットBの量を調整することができる。これにより、第2の貯留部132にキュベットBを搬送する新たな搬送部を別途備える必要がなく、分析装置の大型化を抑えることができる。
【0104】
振動付与機構165が第1の貯留部131のキュベットBに振動を付与するので、第1の貯留部131のキュベットBがキュベットB同士の自然な摩擦力により停滞している状態において、第1の貯留部131の複数のキュベットBに振動を与え、その振動により第1の貯留部131の排出口150からキュベットBを落下させることができる。この結果、第1の貯留部131の排出口150からのキュベットBの落下を好適に制御することができる。
【0105】
振動付与機構165は、第1の貯留部131の排出口150側から上方向に振動を付与するものであるので、第1の貯留部131に貯留されたキュベットBに対し、重力と反対方向に振動を与えることができる。これにより、第1の貯留部131で停滞しているキュベットBが動きやすくなり、第1の貯留部131の排出口150からのキュベットBの落下を好適に制御することができる。
【0106】
振動付与機構165は、第1の貯留部131の排出口150付近に配置された振動板153と、振動板153を振動させる振動部材160とを有するものである。これにより、板状の振動板153から第1の貯留部131の排出口150付近のキュベットBに振動が付与されるので、振動の伝達が効果的に行われ、第1の貯留部131の排出口150からのキュベットBの落下を好適に制御することができる。なお、「排出口150付近」には、排出口150から20cm以内が含まれ、好ましくは15cm以内が含まれ、より好ましくは5cm以内が含まれる。
【0107】
振動板153は、第1の貯留部131の底部131eの一部を構成しているので、第1の貯留部131に貯留されたキュベットBが接触している底部が振動する。この結果、振動板153の振動がキュベットBに直接的に伝わり、排出口150からのキュベットBの落下を好適に制御することができる。
【0108】
振動板153は、排出口150の縁の少なくとも一部を構成するので、排出口150の縁の一部が振動する。この結果、振動が排出口150付近のキュベットBに直接的に伝わり、排出口150からのキュベットBの落下を好適に制御することができる。
【0109】
振動板153は、第1の貯留部131の内部に面する上面153cと、排出口150に面する外側面153dを有し、排出口150の縁の上端において上面153cと外側面153dが滑らかに接続されている。これにより、キュベットBが排出口150の縁の上端に衝突して損傷することを防止することができる。
【0110】
振動部材160は、振動板153における第1の貯留部131の内部に面しない裏面に設けられているので、キュベットBが振動部材160に当たることがなく、キュベット(B)及び振動部材160が保護される。これにより、振動部材160が破損することを防止することができる。
【0111】
排出口150は、キュベットBの最大寸法をL、排出口150の最大口径をDとしたときにL<D<2×Lの関係を満たす寸法を有するので、キュベットBが排出口150付近に留まりやすくなるため、キュベットBの落下を適正に止めることができ、これにより第2の貯留部132に落下するキュベットBの量を適切に制限することができる。なお、D≦Lの場合には、キュベットBが排出口150に詰まることがあり、2×L≦Dの場合には、キュベットBが排出口150から落下しすぎることがある。
【0112】
第1の貯留部131は、第2の貯留部132よりも多くのキュベットBを貯留可能に構成されている。これにより、第2の貯留部132の貯留容量が相対的に小さくなるので、第2の貯留部132の搬送部133がキュベットBに埋もれて搬送できない状態になることを抑制することができる。一方、第1の貯留部131の貯留容量が相対的に大きくなるので、2つの貯留部のトータルの容積を増やすことができる。
【0113】
分析装置1は、分析装置本体を覆う筐体10を備え、筐体10には、第2の貯留部132にアクセス可能な扉171が設けられている。これにより、仮に第2の貯留部132に過剰な量のキュベットBが入り込んだ場合に、扉171を開けて、第2の貯留部132の余分なキュベットBを筐体10の外部に取り出すことができる。この結果、メンテナンス作業が簡単になる。
【0114】
分析装置1は、搬送部133によるキュベットBの搬送状態を検出可能なセンサ260、261と、センサ260、261によるキュベットBの搬送状態の検出結果に基づいて、振動付与機構165の動作を制御する制御部26とを備えている。これにより、センサ260、261を用いて、搬送部133による第2の貯留部132からのキュベットBの搬送状態を検出し、その搬送状態に基づいて、振動付与機構165の動作を制御して第1の貯留部131の排出口150から第2の貯留部132へのキュベットBの落下を調整することができる。この結果、第2の貯留部132に貯留されるキュベットBの量をより厳格に制御することができる。なお、キュベットBの搬送状態の把握には、センサ260、261のどちらか一方を用いてもよいし、センサ260、261以外の他のセンサや制御信号等を用いてもよい。
【0115】
分析装置1は、第1の貯留部131にキュベットBを投入するための投入部130を備えているので、第1の貯留部131へのキュベットBの投入を好適に行うことができる。
【0116】
<排出制御部の他の態様>
上記実施の形態において、第1の貯留部131の排出口150からのキュベットBの落下を制御可能な排出制御部は、振動付与機構165を有するものであったが、他の機構を有するものであってもよい。
【0117】
例えば排出制御部は、
図16に示すように排出口150付近に設けられ、回転駆動する回転機構300を有するものであってもよい。回転機構300は、例えば排出口150付近に設けられた回転体301と、回転体301を駆動するモータ302を有している。モータ302の駆動は、制御部26により制御されている。かかる場合、回転機構300は、上記振動付与機構165の場合と同様に、搬送路181のキュベットBの個数Nに応じて回転駆動が制御される。例えばキュベットBの個数Nが所定の閾値H未満の場合に、回転機構300の回転体301の回転が行われ、個数Nが所定の閾値H以上の場合には、回転機構300の回転体301の回転が行われない。回転機構300の回転体301の回転が行われると、第1の貯留部131に貯留された複数のキュベットBに振動や直接的な力が与えられ、その振動等の外力により第1の貯留部131の排出口150からキュベットBが落下し、第2の貯留部132に貯留される。一方、回転機構300の回転体301の回転が停止されると、第1の貯留部131の排出口150からキュベットBが落下せず、第2の貯留部132にキュベットBが補充されない。
【0118】
本態様によっても、第1の貯留部131の排出口150からのキュベットBの落下を好適に制御することができる。
【0119】
さらに別の態様として、排出制御部は、
図17に示すように排出口150を開閉する開閉機構310を有するものであってもよい。開閉機構310は、例えば排出口150に設けられた開閉板311と、開閉板311を駆動するモータ312を有している。モータ312の駆動は、制御部26により制御されている。かかる場合、開閉機構310は、上記振動付与機構165の場合と同様に、搬送路181のキュベットBの個数Nに応じて開閉駆動が制御される。例えばキュベットBの個数Nが所定の閾値H未満の場合には、開閉機構310の開閉板311が開き、排出口150が開放される。個数Nが所定の閾値H以上の場合には、開閉機構310の開閉板311が閉じて、排出口150が閉鎖される。排出口150が開放されると、第1の貯留部131の排出口150からキュベットBが落下し、第2の貯留部132に貯留される。一方、排出口150が閉鎖されると、第1の貯留部131の排出口150からキュベットBが落下せず、第2の貯留部132にキュベットBが補充されない。
【0120】
本態様によれば、第1の貯留部131の排出口150からのキュベットBの落下を好適に制御することができる。
【0121】
以上の実施の形態において、
図18に示すように第2の貯留部132は、振動部材320を備えていてもよい。振動部材320は、例えば第2の貯留部132の前面壁132aの上部に設けられている。振動部材320は、振動アクチュエータである。振動部材320の駆動は、制御部26により制御される。また制御部26は、例えば第1のセンサ260による搬送路181の最上部におけるキュベットBの有無に基づいて振動部材320の駆動を制御する。
【0122】
具体的には、所定時間以上、例えば15秒以上第1のセンサ260がキュベットBを検出しない場合に、振動部材320を振動させる。こうすることにより、例えば第2の貯留部132の上部で引っかかっているようなキュベットBが最下部に落ち、搬送部133により搬送れる。この結果、キュベットBの第2の貯留部132からの搬出が適切に行われる。
【0123】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0124】
例えば以上の実施の形態における振動付与機構165は、振動板153と振動部材160を有するものであったが、これに限られず他の構成を有するものであってもよい。振動板153や振動部材160の形状や設置位置、設置数も、他の態様のものであってもよい。特に振動板153は、第1の貯留部131の底部131eに限られず、例えば排出口150に近いいずれかの側壁に設けられていてもよい。
【0125】
分析装置1は、
図2に示したような第1のテーブル21、第2のテーブル22、加温部23、分析部24などの構成を有するものであったが、本発明の分析装置はこれに限られず、他の構造を有するものであってもよい。本発明の分析装置は、血液凝固分析のみならず、血液免疫検査などの他の血液分析や、血液以外の検体の分析にも適用できる。キュベット供給装置30の構成も、上記実施の形態のものに限られず、他の構成を有するものであってもよい。第1の貯留部131、第2の貯留部132、搬送部133等の構成も上記実施の形態のものに限られない。排出制御部は、振動付与機構165、回転機構300、開閉機構310以外のものであってもよい。キュベットBの形や構成は、上記実施の形態のものに限られず、他の容器であってもよい。以上の実施の形態では、キュベットBが第1の貯留部131の排出口150から第2の貯留部132に直接落下していたが、例えば第1の貯留部131の排出口150と第2の貯留部132の間にキュベットBの搬送路などがあり、キュベットBが、重力により、第1の貯留部131の排出口150からその搬送路を通じて第2の貯留部132に落下するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、検体を収容可能な容器を貯留するための貯留部の貯留容量を増大させつつ、装置の大型化を抑えることができる分析装置を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0127】
1 分析装置
30 キュベット供給装置
131 第1の貯留部
132 第2の貯留部
133 搬送部
150 排出口
153 振動板
160 振動部材
165 振動付与機構
B キュベット