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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/24 20180101AFI20230412BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230412BHJP
   C09J 121/00 20060101ALI20230412BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230412BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C09J7/24
C09J7/38
C09J121/00
C09J11/06
B32B27/00 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020521692
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2019005558
(87)【国際公開番号】W WO2019230067
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-10-29
(31)【優先権主張番号】P 2018103942
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃純
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大輔
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-228917(JP,A)
【文献】特開2009-249510(JP,A)
【文献】特開2003-157737(JP,A)
【文献】特開平10-338856(JP,A)
【文献】特開平06-158007(JP,A)
【文献】特開平8-48953(JP,A)
【文献】特開2001-240828(JP,A)
【文献】特開2013-100438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、粘着剤層とを備え、
前記粘着剤層は前記基材上に直接又は他の層を介して設けられ、
前記基材は、ポリ塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、亜鉛化合物とを含み、
前記基材中の前記可塑剤の含有量は、前記基材全質量に対し30~50質量%であり、
前記基材中の亜鉛原子の含有量は、前記基材全質量に対し0.01~0.15質量%であり、
前記粘着剤層は、粘着成分と、加硫剤とを含有する粘着剤を含
前記粘着成分は、ゴム系粘着成分を含み
前記加硫剤の含有量は、前記粘着剤層全質量に対し、0.1~5質量%である、
粘着テープ。
【請求項2】
前記可塑剤は、カルボン酸エステルである、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤は、加硫助剤をさらに含有する、請求項1又は請求項2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記亜鉛化合物は、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ブチル安息香酸亜鉛、アミノ酸亜鉛、又はリン酸エステル亜鉛塩である、請求項1~請求項の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記他の層の1つは、下塗り層である、請求項1~請求項の何れか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着剤層の膜厚は、25~45μmである、請求項1~請求項の何れか1項に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温でも柔軟性を有し、かつ低温及び一定時間経過後の粘着力、一定時間経過後の保持力が優れる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
保護フィルムとして、粘着テープが使用されており、柔軟性に優れる事からPVC(ポリ塩化ビニル)テープが利用されている。また、ワイヤーハーネス用途において薄肉化のためにPVC基材の薄肉化も求められており、クラック防止のために可塑剤を多く基材に含有させ、低温でも柔軟性を得ることが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-119806号公報
【文献】特開2017-200978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基材に可塑剤を多く含む場合、一定時間置いた後に剥離する際、保持力の低下により被着体の表面に汚れが付着してしまうことがあった。また、これを改善するためにアルキルフェノール類等を添加する方法がある(特許文献2)が、今度は粘着力の低下が生じるという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、低温でも柔軟性を有し、かつ低温及び一定時間経過後の粘着力、一定時間経過後の保持力が優れ、一定時間置いた後に剥離した場合でも糊残りの少ない粘着テープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、基材と、粘着剤層とを備え、前記粘着剤層は前記基材上に直接又は他の層を介して設けられ、前記基材は、ポリ塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、亜鉛化合物とを含み、前記基材中の前記可塑剤の含有量は、前記基材全質量に対し30~50質量%であり、前記基材中の亜鉛原子の含有量は、前記基材全質量に対し0.01~0.15質量%であり、前記粘着剤層は、粘着成分と、加硫剤とを含有する粘着剤を含む、粘着テープが提供される
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、基材に所定量の亜鉛原子及び所定量の可塑剤を含有し、粘着剤層に加硫剤を含む場合に、低温でも柔軟性を有し、かつ低温及び一定時間経過後の粘着力、一定時間経過後の保持力が優れ、一定時間置いた後に剥離した場合でも糊残りの少ないことを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記可塑剤は、カルボン酸エステルである。
好ましくは、前記加硫剤の含有量は、前記粘着剤層全質量に対し0.1~5質量%である。
好ましくは、前記粘着剤は、加硫助剤をさらに含有する。
好ましくは、前記亜鉛化合物は、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ブチル安息香酸亜鉛、アミノ酸亜鉛、又はリン酸エステル亜鉛塩である。
好ましくは、前記他の層の1つは、下塗り層である。
好ましくは、前記粘着剤層の膜厚は、25~45μmである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0010】
1.粘着テープの構成
本発明の粘着テープは、基材と、粘着剤層とを備え、粘着剤層は基材上に直接又は他の層を介して設けられている。
【0011】
1-1.基材
基材は、ポリ塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、亜鉛化合物とを含む。
【0012】
<ポリ塩化ビニル樹脂>
塩化ビニル樹脂は、特に制限されないが、塩化ビニル樹脂の平均重合度は1000~1500が好ましく、平均重合度の異なるポリ塩化ビニル樹脂を2種類以上使用してもよい。平均重合度が1000未満では、基材加工時に樹脂が柔らかくなりすぎ、成膜性が低下する場合がある。平均重合度が1500より高いと、基材が硬くなり被着体にテープを巻き付ける際のテープの被着体の形状への追従性が低下する場合がある。
【0013】
基材中のポリ塩化ビニル樹脂の含有量は、基材全質量に対し、好ましくは50~70質量%であり、より好ましくは58~68質量%である。ポリ塩化ビニル樹脂が70質量%を超える場合、加工性が落ちてしまいフィルムへの成型が難しい。また、ポリ塩化ビニル樹脂が50%未満では基材の強度が低下してしまう。
【0014】
<可塑剤>
可塑剤は、特に限定されないが、好ましくはカルボン酸エステル等であり、より好ましくはトリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、フタル酸エステル等であり、さらに好ましくはフタル酸エステルである。これらの化合物は、単独で又は2種以上を併せて使用してもよい。
【0015】
フタル酸エステルの例としては、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHP)、フタル酸ジブチル(DVP)、フタル酸ジノルマルオクチル(DNOP)等が挙げられる。これらの中でも、フタル酸ジイソデシル又はフタル酸ジイソノニルが好ましく、フタル酸ジイソデシルがより好ましい。
【0016】
基材中の可塑剤の含有量は、基材全質量に対し30~50質量%であり、好ましくは32~40質量%である。当該含有量が30質量%未満では、粘着テープの柔軟性が十分ではなく、低温での粘着力が低く、さらに一定時間経過後の保持力の低下により糊残りが生じる場合がある。また、当該含有量が50質量%を超えると、低温での粘着力が低く、保存後の粘着力が劣り、さらに一定時間経過後の保持力の低下により糊残りが生じる場合がある。
【0017】
<亜鉛化合物>
亜鉛化合物は、当該化合物中に亜鉛原子が含まれていれば制限されないが、例えば、無機亜鉛化合物又は有機亜鉛化合物であり、好ましくは有機酸亜鉛塩である。
【0018】
有機亜鉛塩の例としては、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ブチル安息香酸亜鉛、アミノ酸亜鉛、及びリン酸エステル亜鉛塩等が挙げられる。これらの中でも、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛が好ましく、ステアリン酸亜鉛がより好ましい。
【0019】
基材中の亜鉛原子の含有量は、基材全質量に対し0.01~0.15質量%であり、好ましくは0.05~0.15質量%である。当該含有量が0.01質量%未満では、一定時間経過後の保持力の低下により糊残りが生じる場合がある。また、当該含有量が0.15質量%を超えると、粘着力、特に一定時間経過後の粘着力が低下する場合がある。
【0020】
<その他の成分>
また、本発明における基材には必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、無機充填剤、改質剤、及びその他添加剤として着色剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等を配合することができる。
【0021】
1-2.粘着剤層
粘着剤層を形成する粘着剤は、粘着成分と、加硫剤とを含有する。
【0022】
<粘着成分>
粘着成分は、好ましくはゴム系粘着成分を含む。ゴム系粘着成分は、溶剤型、エマルジョン型の何れであってもよい。ゴム系粘着成分は、好ましくは天然ゴムまたは合成ゴムから選択される1種以上のゴムを含む。また、粘着剤は、粘着成分として粘着付与剤をさらに含有するものが好ましい。また、粘着成分は、天然ゴム、合成ゴム、及び粘着付与剤の混合物であることがさらに好ましい。粘着付与剤の混合割合は、天然ゴム及び合成ゴムを含有する混合物のゴム成分100質量部に対し、粘着付与剤50~150質量部含有することが好ましい。
【0023】
天然ゴム及び合成ゴムとしては、天然ゴム-メチルメタアクリレート共重合体ラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して選択して使用してもよい。
【0024】
粘着付与剤としては、軟化点、各成分との相溶性等を考慮して選択することができる。例えば、テルペン樹脂、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、テルペン-フェノール樹脂、キシレン系樹脂、その他脂肪族炭化水素樹脂又は芳香族炭化水素樹脂等のエマルジョンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0025】
ゴム系粘着成分は、溶剤型、エマルジョン型を自由に選択できるが、好ましくは、VOCの発生量が少ないエマルジョン型がよい。
【0026】
また、粘着剤層の膜厚は、好ましくは25~45μmである。
【0027】
<加硫剤>
加硫剤は、粘着剤に含まれるゴムの高分子鎖を網目状に架橋結合しうる物質であれば制限されないが、例えば、硫黄、硫黄化合物等が挙げられる。硫黄の例としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等が挙げられる。硫黄化合物の例としては、塩化硫黄、二塩化硫黄、高分子多硫化物、モルフォリンジスルフィド(4,4'-ジチオジモルホリン)、アルキルフェノ-ルジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。
これらの中でも、硫黄化合物が好ましく、特にモルフォリンジスルフィドが好ましい。これら硫黄、硫黄化合物は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
【0028】
加硫剤の含有量は、粘着剤層全質量に対し、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.4~2.5質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。当該含有量が0.1質量%未満であると、一定時間経過後の保持力の低下により糊残りが生じる場合がある。また、当該含有量が5質量%を超えると、粘着力、特に一定時間経過後の粘着力が低下する場合がある。
【0029】
また、加硫剤は、加硫助剤と併用されることが好ましい。加硫助剤の例としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾ-ルスルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾ-ルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2',4'-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(4'-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、ジ-2-ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)等のチアゾール系化合物;ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン、ジオルソニトリルグアニジン、オルソニトリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン化合物;アセトアルデヒド-アニリン反応物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミンまたはアルデヒド-アンモニア系化合物;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系化合物;チオカルバニリド、ジエチルチオユリア、ジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソトリルチオユリア等のチオユリア系化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィドテトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド等のチウラム系化合物;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnBDC)、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系化合物;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系化合物;亜鉛華(酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0030】
1-3.他の層
また、本発明の粘着テープは、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲で、基材と粘着剤層の密着性を向上させる等の目的で、下塗剤層を設けてもよい。下塗剤層の膜厚は通常0.1~1μm、より好ましくは0.3~0.5μmである。
【0031】
下塗剤層を形成する下塗剤としては、天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体とアクリロニトリル-ブタジエン共重合体からなるものが好ましい。より具体的には、下塗剤は、天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフトさせた化合物とカルボキシ基変性アクリロニトリルブタジエンラバーからなる。また、天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体100質量部に対するアクリロニトリル-ブタジエン共重合体の量は25~300質量部であることが好ましい。
【0032】
下塗剤に用いられる天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体は、天然ゴム70~50質量%にメチルメタアクリレート30~50質量%グラフト重合させたものが好ましい。グラフト重合体中のメチルメタアクリレートの比率が30質量%未満だと、メチルメタアクリレートとフィルム基材との密着性が悪くなって、粘着テープの層間剥離が起こる場合がある。また、メチルメタアクリレートの比率が50質量%より多いと、下塗剤自体が硬化してフィルム基材の変形に追従できなくなり、粘着テープの層間剥離が起こる場合がある。
【0033】
下塗剤に用いられるアクリロニトリル-ブタジエン共重合体としては、中ニトリルタイプ(アクリロニトリル25~30質量%、ブタジエン75~70質量%)、中高ニトリルタイプ(アクリロニトリル31~35質量%、ブタジエン69~65質量%)高ニトリルタイプ(アクリロニトリル36~43質量%、ブタジエン64~57質量%)等がある。これらは、単独で使用するか、あるいは2種類以上を併用してもよい。
【0034】
2.粘着テープの製造方法
<基材の製造方法>
本発明の基材はポリ塩化ビニル樹脂、可塑剤、亜鉛化合物、その他の成分などを混合した樹脂組成物を溶融混練して得ることができる。溶融混練方法は特に限定されるものではないが、二軸押出機、連続式及びバッチ式のニーダー、ロール、バンバリーミキサー等の加熱装置を備えた各種混合機、混練機が使用でき、前記樹脂組成物が均一分散するように混合し、得られる混合物を慣用の成形方法であるカレンダー法、Tダイ法、インフレーション法等により基材に成形する。成形機は生産性、色変え、形状の均一性などの面からカレンダー成形機が好ましい。カレンダー成形におけるロール配列方式は、例えば、L型、逆L型、Z型などの公知の方式を採用でき、また、ロール温度は通常150~200℃、好ましくは155~190℃に設定される。基材厚みは使用目的や用途等に応じて様々であるが、通常40~450μm、より好ましくは50~200μm、さらに好ましくは55~100μmである。
【0035】
<下塗剤層及び粘着剤層の形成>
本発明における粘着テープは、基材の片面に加硫剤と混合した粘着剤を塗工し乾燥炉により溶媒を十分に除去させ粘着剤層を形成することにより粘着テープが得られる。また、別の実施形態においては、基材の片面に下塗剤を塗工し、乾燥炉により溶媒を十分に除去させた後、粘着剤を塗工し、乾燥炉により溶媒を十分に除去させ粘着剤層を形成し粘着テープが得られる。なお、基材表面にはあらかじめ天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフトさせた化合物とカルボキシ基変性アクリロニトリルブタジエンラバーからなる層などが形成されていてもよい。なお、下塗剤の塗工方式としては、グラビア方式、スプレー方式、キスロール方式、バー方式、ナイフ方式等が挙げられ、粘着剤の塗工方式としては、コンマ方式、リップダイ方式、グラビア方式、ロール方式、スロットダイ方式等が挙げられる。
【0036】
3.粘着テープの物性・用途
本発明の粘着テープは、以下の物性を満たすことが好ましく、保護フィルムやワイヤーハーネス等の結束用として用いることができる。
【0037】
3-1.柔軟性
<低温柔軟性>
本発明のポリ塩化ビニル系基材は、-30℃での貯蔵弾性率(E')が1.5×10Pa以下、かつ-30℃雰囲気下での引張り伸び率が80%以上である。貯蔵弾性率(E')が1.5×10Paより高いと、-30℃雰囲気下での引張り伸び率が80%を下回り、電線へのテープ巻き付け後、-30℃雰囲気下で電線を曲げた際、テープにヒビ、割れが発生する。
3-2.粘着力
<120℃3時間保存後常温粘着力(25℃)>
本発明の粘着テープは、120℃で3時間保存した後に、JIS Z 0237に規定の「粘着テープ・粘着シート試験法」に準拠して、粘着力(180度引き剥がし粘着力)を測定した粘着力が、好ましくは1.7N/10mm以上であり、より好ましくは1.8N/10mm以上であり、さらに好ましくは2N/10mm以上である。
【0038】
<低温粘着力(-20℃)>
本発明の粘着テープは、-20℃において、JIS Z 0237に規定の「粘着テープ・粘着シート試験法」に準拠して、粘着力(180度引き剥がし粘着力)を測定した粘着力が、好ましくは1.5N/10mm以上であり、より好ましくは1.7N/10mm以上であり、さらに好ましくは2N/10mm以上である。
【0039】
3-3.保持力
<120℃4時間保存後保持力>
本発明の粘着テープは、120℃で4時間保存した後に、JIS Z 0237に準拠して測定した。温度23±2℃、湿度50±5%RHに設定された評価試験室内に試験テープを24時間以上静置した後で、被着体としてガラスを用いて、これに20×20mmの大きさの粘着テープを貼り付けた。その後、100℃雰囲気下で、重力方向に100gの荷重をかけ、錘の落下時間(分)をn=3以上で測定した。
【実施例
【0040】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0041】
<低温柔軟性:-30℃雰囲気下貯蔵弾性率(E')>
「貯蔵弾性率」は動的粘弾性測定により求めた。厚み100μmの動的粘弾性測定用テープサンプルを温度23℃、相対湿度50%RHに調整された室内にて24時間以上保管し、下記の装置を用いてその測定用テープサンプルに周波数1Hzの引っ張り方向の応力、及び歪みを加え、-30℃での貯蔵弾性率を測定した。
装置:ティー・エイ・インスツルメント社製 動的粘弾性測定装置 RSA3
測定結果については以下の様に判断する。
A:貯蔵弾性率が1.5×10Pa以下
B:貯蔵弾性率が1.5×10Paより高い
【0042】
<120℃3時間保存後常温粘着力(25℃)>
粘着テープを、120℃で3時間保存した後に、JIS Z 0237に規定の「粘着テープ・粘着シート試験法」に従って、粘着力(180度引き剥がし粘着力)を測定した粘着力である。
【0043】
<低温粘着力(-20℃)>
粘着テープを、-20℃において、JIS Z 0237に規定の「粘着テープ・粘着シート試験法」に従って、粘着力(180度引き剥がし粘着力)を測定した。
【0044】
<120℃4時間保存後保持力>
粘着テープを、120℃で4時間保存した後に、JIS Z 0237に従って測定した。温度23±2℃、湿度50±5%RHに設定された評価試験室内に試験テープを24時間以上静置した後で、被着体としてガラスを用いて、これに20×20mmの大きさの粘着テープを貼り付けた。その後、100℃雰囲気下で、重力方向に100gの荷重をかけ、錘の落下時間(分)をn=3以上で測定した保持力である。
【0045】
実施例・比較例においては、それぞれ下記の試薬を用いた。
TH-1000:ポリ塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ株式会社製、平均重合度1000)
DINP:フタル酸ジイソノニル(株式会社ジェイプラス)
DIDP:フタル酸ジイソデシル(株式会社ジェイプラス)
H-6319:Zn系安定剤(堺化学社製:ステアリン酸亜鉛35質量%含有)
ZN-3:ラウリン酸亜鉛(日東化成工業社製)
HA LATEX:天然ゴム(レヂテックス社製)
JSR1502:スチレンブタジエンゴム(越谷ゴム社製)
アルコンP-9:C-9水添石油樹脂(タッキファイアー)(荒川社製)
アクターR:4,4'-ジチオジモルホリン(川口化学社製)
アクセルM:2-メルカプトベンゾチアゾール(川口化学社製)
ステアリン酸カルシウム:(堺化学社製)
【0046】
[実施例1]
(1)TH-1000(ポリ塩化ビニル樹脂)、DINP(可塑剤)、H-6319(亜鉛化合物)、及び滑剤としてステアリン酸を表1に示す配合にてバンバリーミキサーで均一に分散するように溶融混練したのち、カレンダー成形機により、ロール温度165℃にて150μm厚の基材を作製した。
【0047】
(2)作製した基材の片面に、グラビア方式により下塗剤として天然ゴムにメチルメタアクリレートをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックスとアクリロニトリルブタジエン共重合体エマルジョンの混合物エマルジョン(イーテック社製、KT4612A)を塗工し、乾燥させた。その後、HA LATEX(天然ゴム)、JSR1502(合成ゴム)、アルコンP-9(粘着付与剤)、及びアクターR(加硫剤)、アクセルM(加硫助剤)をトルエンに溶解し表1に示す配合にて混合した粘着剤をコンマ方式により塗工し、乾燥させて得られた粘着シートをテープログ形状に巻き取った後10mm幅に切断し、サンプルテープを得た。各種特性評価を行った結果は表1に示した。
【0048】
[実施例2~11及び比較例1~5]
各成分の種類及び配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてサンプルテープを得た。各種特性評価を行った結果は表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1~11では、良好な結果が得られた。一方、可塑剤が少ない比較例1では、低温柔軟性が良好でなかったことに加え、低温粘着力に劣る結果となった。また、可塑剤の多い比較例5では、低温での粘着力が低く、保存後の粘着力が劣り、さらに一定時間経過後の保持力が低下する結果となった。また、亜鉛化合物を添加しなかった比較例2では、保存後の保持力が劣る結果となった。また、亜鉛化合物の添加量が多かった比較例3では、保存後の粘着力が劣る結果となった。また、亜鉛化合物の代わりにステアリン酸カルシウムを用いた比較例4では、保存後の保持力が劣る結果となった。