(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】改変カスパーゼ-9ポリペプチドおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/57 20060101AFI20230412BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20230412BHJP
C12N 9/50 20060101ALI20230412BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230412BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230412BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230412BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230412BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230412BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230412BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
C12N15/57 ZNA
C12N15/10 200Z
C12N9/50
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2020524246
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(86)【国際出願番号】 US2018058573
(87)【国際公開番号】W WO2019089844
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-15
(32)【優先日】2017-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519089657
【氏名又は名称】アロジーン セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ガリンド カサス メリットセル
(72)【発明者】
【氏名】バン ブラーコム トーマス ジョン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/134877(WO,A1)
【文献】PING LI; ET AL,CASPASE-9: STRUCTURE, MECHANISMS AND CLINICAL APPLICATION,ONCOTARGET,2017年04月04日,VOL:8, NR:14,PAGE(S):23996 - 24008,http://dx.doi.org/10.18632/oncotarget.15098
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/50
C12N 5/10
C12N 5/078
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列と、1以上のアミノ酸置換とを含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、
前記アミノ酸置換が、S271
Y、S274
E、F342
H、I370
E、D379
E、V387
A、A390
N、およびK409
Nからなる群から選択され、
各アミノ酸位置は配列番号1の各アミノ酸の位置を示す、改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
【請求項2】
前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む、請求項1に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
【請求項3】
前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号3に示すアミノ酸配列を含む、請求項1
または2に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号11に示す核酸配列を含む、請求項
4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項
4または
5に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項7】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド、または請求項
4もしくは
5に記載のポリヌクレオチドを含む、操作された免疫細胞。
【請求項8】
二量体化ドメインと改変カスパーゼ-9ポリペプチドとを含むキメラタンパク質であって、
前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列
と、および1以上のアミノ酸置換
とを含み、
前記アミノ酸置換が、S271
Y、S274
E、F342
H、I370
E、D379
E、V387
A、A390
N、およびK409
Nからなる群から選択され、
各アミノ酸位置は配列番号1の各アミノ酸の位置を示す、キメラタンパク質。
【請求項9】
前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む、請求項
8に記載のキメラタンパク質。
【請求項10】
前記二量体化ドメインが、FKBPポリペプチドおよびシクロフィリンポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを含む、請求項
8または9に記載のキメラタンパク質。
【請求項11】
前記二量体化ドメインが、FKBP12ポリペプチドを含む、請求項
8から
10のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項12】
前記FKBP12ポリペプチドが、アミノ酸置換F36Vを含む、請求項
11に記載のキメラタンパク質。
【請求項13】
前記キメラタンパク質が、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、請求項
8から
12のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項14】
前記二量体化ドメインが、二量体化リガンドAP1903、AP20187、二量体化FK506、または二量体化FK506様アナログに結合する、請求項
8から
13のいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
【請求項15】
請求項
8から
14のいずれか1項に記載のキメラタンパク質をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号8に示す核酸配列を含む、請求項
15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
請求項
15または
16に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項18】
請求項
8から
14のいずれか1項に記載のキメラタンパク質、または請求項
15もしくは
16に記載のポリヌクレオチドを含む、操作された免疫細胞。
【請求項19】
キメラ抗原受容体(CAR)、またはCARをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項
18に記載の操作された免疫細胞。
【請求項20】
前記免疫細胞がT細胞である、請求項
18または
19に記載の操作された免疫細胞。
【請求項21】
請求項18から20のいずれか1項に記載の操作された免疫細胞を含む、前記操作された免疫細胞を被験体内で改変する方法に使用するための、免疫療法用医薬組成物であって、、
前記方法が、
前記操作された免疫細胞を先に投与された被験体に、二量体化リガンドを投与することを含み、
前記二量体化リガンドが、キメラタンパク質の二量体化ドメインに結合し、前記リガンドが前記二量体化ドメインに結合されると、カスパーゼ-9活性が誘導される方法
である、上記医薬組成物。
【請求項22】
前記リガンドがAP1903である、請求項
21に記載の
医薬組成物。
【請求項23】
操作された免疫細胞を調製する方法であって、
前記方法が、請求項
4、
5、
15もしくは
16に記載のポリヌクレオチド、または請求項
6もしくは
17に記載の発現ベクターを、前記免疫細胞に導入することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年11月1日に出願された米国仮特許出願第62/580,276号および2017年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/592,447号に対する優先権を主張するものであり、すべての目的のためにその全体が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
配列表への参照
本願はEFS-Webを通じて電子出願されたものであり、電子形式で提出されたtxt形式の配列表が含まれる。本txtファイルには、2018年10月31日に作成された24,781バイトの配列表「ALGN01302WO_Seqtxt.txt」が含まれている。本txtファイルに含まれる配列表は明細書の一部をなすものであり、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0003】
本開示は、改変カスパーゼ-9ポリペプチドおよびその用途に関する。本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドには、野生型ヒトカスパーゼ-9タンパク質と比較して、1以上のアミノ酸突然変異が含まれる。
【背景技術】
【0004】
カスパーゼ9は、哺乳動物細胞のアポトーシスの開始(プログラム細胞死)に関与するタンパク質である。カスパーゼ-9部を含むキメラタンパク質は、当該キメラタンパク質を発現するように操作された宿主細胞においてアポトーシスの誘導を可能にするシステムの一部として使用できる。例えば、リガンド媒介性の二量体化ドメインにリンクしたカスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラタンパク質を調製できる。キメラタンパク質を含む宿主細胞を、二量体化ドメインの二量体化を媒介するリガンドに曝露すると、宿主細胞内でカスパーゼ-9のシグナル伝達が活性化され、アポトーシスおよび細胞死がもたらされる。本システムは、例えば、細胞療法の安全機構として使用できる。本システムでは、被験体に投与される宿主細胞をまず操作し、キメラタンパク質を含むカスパーゼ-9を発現させる。次に、操作した宿主細胞を被験体に導入した後、必要に応じて(例えば、宿主細胞が重篤かつ望ましくない作用を被験体に引き起こす場合に)被験体に二量体化誘導リガンドを投与することができる。被験体にリガンドを投与することで、キメラタンパク質を含む宿主細胞内でカスパーゼ-9のシグナル伝達が活性化し、続いて当該宿主細胞が死に至ることで、被験体内における宿主細胞の望ましくない作用を低減する(例えば、Gargett TおよびBrown M,Front Pharmacol.2014;5:235を参照)。
【0005】
一定の状況下において、カスパーゼ-9ポリペプチドおよび二量体化ドメインを含むキメラタンパク質は、キメラタンパク質を発現する宿主細胞で、カスパーゼ-9が不所望に高水準の基礎活性を有することがある(すなわち、キメラタンパク質は二量体化を媒介するリガンドがなくても活性を有することがある)。このようなカスパーゼ-9の基礎活性により、例えば、リガンドが存在しない状態で不所望に高水準の細胞死がもたらされることがある。
【0006】
キメラカスパーゼ-9タンパク質におけるカスパーゼ-9の基礎活性を低減し得る手法の1つとして、キメラカスパーゼ-9タンパク質のカスパーゼ-9部に、1以上の改変を導入する手法がある。例えば、キメラカスパーゼ-9タンパク質におけるカスパーゼ-9ポリペプチドのアミノ酸配列に、1以上の変異を導入することができる。理想的には、このような改変でキメラタンパク質のカスパーゼ-9の基礎活性を低下させる一方、二量体化誘導リガンドに反応するキメラタンパク質のカスパーゼ-9活性は、低減させないか、若干の低下に留めることが望ましい。例えば、米国特許第9,434,935号に、カスパーゼ-9ポリペプチドの基礎活性を低減させる変異の例がいくつか説明されている。
【0007】
しかしながら、改変カスパーゼ-9ポリペプチドには、代替および改善の余地がある。代替および改善された改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、例えば、細胞療法のための代替および改善された組成および方法を提供することができる。
【発明の概要】
【0008】
本明細書で提供するのは、改変カスパーゼ-9ポリペプチドおよびその用途である。改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、対応する未改変カスパーゼ-9ポリペプチドと比較して、有用な特性を1つ以上有してよい。
【0009】
例えば、本明細書で提供するいくつかの実施形態によれば、改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、その基礎活性が対応する未改変カスパーゼ-9ポリペプチドの基礎活性よりも低減されているが、依然としてカスパーゼ-9のシグナル伝達を効果的に媒介できる。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、カスパーゼ-9ポリペプチドおよびリガンド誘導性二量体化ドメインを含むキメラカスパーゼ-9タンパク質に組み込まれる改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。本開示により提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラカスパーゼ-9タンパク質の基礎活性は、野生型カスパーゼ-9ポリペプチドを含む対応キメラカスパーゼ-9タンパク質の基礎活性よりも低減されたものであってよい。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列と、1以上のアミノ酸置換とを含み、当該アミノ酸置換が、S271、S274、D330、F342、I370、D379、V387、A390、F406、およびK409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。任意にて、アミノ酸置換は、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、およびK409Nからなる群から選択される。任意にて、上記ポリペプチドが2以上のアミノ酸置換を含み、当該アミノ酸置換が、Q221-V387、D330-I370、D330-D379、D330-S271、D330-S274、D330-F342、D330-D379、D330-V387、D330-A390、およびD330-K409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる。任意にて、上記ポリペプチドが、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む。
【0012】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列と、少なくともアミノ酸置換D330M-D379E(すなわち、D330MおよびD379E)とを含む、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、配列番号2に対して、70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列と、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、およびK409Nからなる群から選択される1以上のアミノ酸置換を含む、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。任意にて、当該改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む。任意にて、当該改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列を含む。
【0014】
任意にて、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドの基礎活性は、配列番号2のアミノ酸配列を含む野生型カスパーゼ-9ポリペプチドの50%未満である。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。任意にて、ポリヌクレオチドは、配列番号11に示す核酸配列を含む。
【0016】
本明細書は、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、発現ベクターを更に提供する。
【0017】
本明細書は、改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたは本明細書で開示する改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのいずれかを含む、宿主細胞を更に提供する。任意にて、宿主細胞は免疫細胞である。任意にて、免疫細胞はT細胞である。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、二量体化ドメインおよび改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラタンパク質であって、上記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列と、1以上のアミノ酸置換とを含み、当該アミノ酸置換が、S271、S274、D330、F342、I370、D379、V387、A390、F406、およびK409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされるキメラタンパク質を提供する。任意にて、1以上のアミノ酸置換は、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、およびK409Nからなる群から選択される。任意にて、キメラタンパク質の改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、2以上のアミノ酸置換を含み、2以上の当該アミノ酸置換は、Q221-V387、D330-I370、D330-D379、D330-S271、D330-S274、D330-F342、D330-D379、D330-V387、D330-A390、およびD330-K409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる。任意にて、キメラタンパク質の改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、二量体化ドメインおよび改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラタンパク質であって、当該改変カスパーゼ-9ポリペプチドが配列番号2に対して、70%、80%、90%、95%、97%、98%、または99%以上の配列同一性と、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、およびK409Nからなる群から選択される1以上のアミノ酸置換とを含むキメラタンパク質を提供する。任意にて、改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む。任意にて、二量体化ドメインは、FKBPポリペプチドおよびシクロフィリンポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを含む。任意にて、二量体化ドメインはFKBP12ポリペプチドを含む。任意にて、FKBP12ポリペプチドは、アミノ酸置換F36Vを含む。任意にて、上記キメラタンパク質は、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む。任意にて、上記二量体化ドメインは、二量体化リガンドAP1903、AP20187、二量体化FK506、または二量体化FK506様アナログに結合する。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、二量体化ドメインおよび改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラタンパク質であって、当該改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列と、少なくともアミノ酸置換D330M-D379E(すなわち、D330MおよびD379E)とを含む、キメラタンパク質を提供する。
【0021】
任意にて、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質の基礎活性は、FKBP12リガンド結合領域と、カスパーゼリクルートメントドメイン(CARD)を欠き、配列番号2のアミノ酸配列を有するカスパーゼ-9ポリペプチドと、を含むキメラタンパク質の基礎活性の50%未満である。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチドを提供する。任意にて、ポリヌクレオチドは、配列番号8に示す核酸配列を含む。
【0023】
本明細書は、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを含む、発現ベクターを更に提供する。
【0024】
本明細書は、キメラカスパーゼ-9タンパク質、または本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドのいずれかを含む宿主細胞を更に提供する。任意にて、宿主細胞は免疫細胞である。任意にて、免疫細胞はT細胞である。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含む免疫細胞、キメラカスパーゼ-9タンパク質、もしくは本明細書で開示する改変カスパーゼ9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、さらにキメラ抗原受容体(CAR)またはCARをコードするポリヌクレオチドを含んでよい。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、操作された免疫細胞を被験体内で改変する方法であって、キメラカスパーゼ-9タンパク質、または本明細書で開示するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む免疫細胞を先に投与された被験体に、二量体化リガンドを投与することを含み、当該二量体化リガンドがキメラタンパク質の二量体化ドメインに結合し、当該二量体化ドメインに結合されるとカスパーゼ-9活性が誘導される方法を提供する。任意にて、リガンドはAP1903である。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、操作された免疫細胞を調製する方法であって、改変カスパーゼ-9ポリペプチド、または本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチド、またはポリヌクレオチドを含む発現ベクターを免疫細胞へ導入することを含む方法を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、本明細書で説明されるようにキメラカスパーゼ-9タンパク質を発現する、薬剤として使用するための、操作された免疫細胞を提供する。いくつかの実施形態によれば、健康なドナーから免疫細胞を採取する。いくつかの実施形態によれば、患者から免疫細胞を採取する。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、免疫細胞を提供することと、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードする1以上のポリヌクレオチドを上記免疫細胞に導入することと、上記ポリヌクレオチドを細胞にて発現させることとを含む方法を提供する。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、本明細書で説明されるようにキメラカスパーゼ-9タンパク質を発現させる免疫細胞を提供することと、当該免疫細胞を上記患者に投与することとを含む、被験体を治療する方法を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する組成物および方法に用いられる免疫細胞は、T細胞またはナチュラルキラー細胞に由来し得る。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、本明細書で説明されるようにキメラカスパーゼ-9タンパク質を含む宿主細胞を含む、医薬組成物を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、宿主細胞は免疫細胞であり、免疫細胞は1以上の内在性遺伝子の破壊を含んでもよく、当該内在性遺伝子は、TCRα、TCRβ、CD52、グルココルチコイド受容体(GR)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)、またはプログラム死-1(PD-1)などの免疫チェックポイントをコードする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A-1C】
図1Aから
図1Cは、本明細書で提供するいくつかの構築物を示す一連の概略図である。これらの構築物において、カスパーゼ-9および二量体化ドメインの変異体を含むキメラカスパーゼ-9タンパク質は、P2A(
図1A)またはIRES(
図1B)リボソームスキップ部位を使用してCARと共発現する。また、アポトーシスの程度を評価するために使用する制御の模式図も示されている(
図1C)。
【
図2】
図2は、ドナー#1からの宿主細胞内で、各種キメラカスパーゼ-9タンパク質がAP1903に反応したことにより誘導されたアポトーシスを示す棒グラフである。
【
図3】
図3は、ドナー#2からの宿主細胞内で、各種キメラカスパーゼ-9タンパク質がAP1903に反応したことにより誘導されたアポトーシスを示す棒グラフである。
【
図4】
図4は、プライマリT細胞(対の左側の棒)またはジャーカット細胞(対の右側の棒)を形質導入した4日後に、1以上の変異を含む各種キメラカスパーゼ-9タンパク質の発現レベルを示す棒グラフである。
【
図5】
図5は、CAR陽性プライマリT細胞(対の左側の棒)またはジャーカット細胞(対の右側の棒)の発現レベルを示す棒グラフである。
【
図6】
図6は、AP1903を投与した場合または投与しなかった場合に、ドナー#8からのプライマリT細胞に発現された、1以上の変異を含む各種キメラカスパーゼ-9タンパク質の、AP1903投与1日後のアポトーシス活性を示す棒グラフである。
【
図7】
図7は、AP1903を投与した場合または投与しなかった場合に、ドナー#8からのプライマリT細胞に発現された、1以上の変異を含む各種キメラカスパーゼ-9タンパク質の、AP1903投与2日後のアポトーシス活性を示す棒グラフである。
【
図8】
図8は、AP1903を投与した場合または投与しなかった場合に、ドナー#8からのプライマリT細胞に発現された、1以上の変異を含む各種キメラカスパーゼ-9タンパク質の、AP1903投与3日後のアポトーシス活性を示す棒グラフである。
【
図9】
図9は、AP1903を投与した場合または投与しなかった場合に、ドナー#8からのプライマリT細胞に、CARと共発現した、1以上の変異を含む各種キメラカスパーゼ-9タンパク質の、AP1903投与4日後のアポトーシス活性を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本明細書の開示は、改変カスパーゼ-9ポリペプチド、および改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラタンパク質に関する。本開示は更に、これらのカスパーゼ-9ポリペプチドおよびキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドおよび関連組成物、ならびに被験体に投与するための操作された宿主細胞などにおける、製造方法および使用方法を提供する。
【0036】
一般的な技法
本開示の実施には、他に示されない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、免疫学、ウイルス学、およびモノクローナル抗体の作製工学の従来技術を用いることとし、これらは当業者の技術範囲内である。このような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrookら,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,編,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,編,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,編,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,編,1993-1998)J.WileyおよびSons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell,編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos,編,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら,編,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullisら,編,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら,編,1991);Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons,1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers,1997);Antibodies(P.Finch, 1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty,編,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean,編,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra,編,Harwood Academic Publishers,1995)などの文献で完全に説明されている。
【0037】
定義
「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を指し、本明細書では同義に用いられる。例えば、鎖長が比較的短い場合もあれば(例えば、10以上100以下のアミノ酸)それより長い場合もある。鎖は、線状または分岐状であることがあり、改変アミノ酸を含むことがあり、非アミノ酸が割り込むこともある。これらの用語は更に、自然または介入により改変されたアミノ酸鎖も網羅する。例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分との結合など、その他のあらゆる操作または改変などである。本定義には更に、例えば1以上のアミノ酸アナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、および当業者に公知のその他の改変も含まれる。ポリペプチドは、単鎖または付随鎖として発生し得ることが知られている。
【0038】
当該技術分野において知られているように、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、本明細書では同義に用いられ、任意の長さのヌクレオチド鎖を指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらのアナログ、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによって鎖に組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらのアナログなどの改変ヌクレオチドを含んでよい。ヌクレオチド構造の改変がある場合、鎖を構築する前または後に改変がなされてよい。ヌクレオチドの配列には、非ヌクレオチド成分が介在してもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分との結合などにより、重合後にさらに改変されてよい。その他の型の改変としては、例えば、「キャップ」、1以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログによる置換、例えば無荷電結合(例えばホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)および荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を含むヌクレチオド間の改変、例えばタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)などのペンダント部分を含む改変、介在因子(例えば、アクリジン、ソラレンなど)による改変、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含む改変、アルキル化剤を含む改変、改変された結合(例えば、アルファアノマー核酸など)による改変、およびポリヌクレオチド(複数可)の非改変形態が挙げられる。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基はいずれも、例えば、ホスホン酸基、リン酸基によって置換されるか、標準的な保護基によって保護されるか、またはさらなるヌクレオチドに対するさらなる結合を調製するために活性化されるか、あるいは固体支持体上に結合されてもよい。5’末端および3’末端のOHは、リン酸化され得るか、またはアミンもしくは1から20までの炭素原子の有機キャップ基部分で置換され得る。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化されてよい。ポリヌクレオチドはまた、当業者に公知のリボース糖またはデオキシリボース糖のアナログ形態を含み得、例えば、2’-O-メチル-リボース、2’-O-アリル-リボース、2’-フルオロ-リボースまたは2’-アジド-リボース、炭素環式糖アナログ、α-アノマー糖、β-アノマー糖、エピマー糖(例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース)、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式アナログ、および脱塩基性ヌクレオシドアナログ(例えば、メチルリボシド)が挙げられる。1以上のホスホジエステル結合は、代替の結合基によって置換されてよい。これら代替の結合基としては、リン酸が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)によって置換される実施形態であって、RまたはR’がそれぞれ独立してHであるか、置換されたかもしくは置換されていないアルキル(1~20個のC)であり、任意でエーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルジルを含む実施形態が挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド中の全ての結合が同一である必要はない。先の記載は、RNAおよびDNAを含め、本明細書で言及されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0039】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物を組み込むためのベクター(複数可)のレシピエントとなり得るか、またはレシピエントとなった、個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には単一宿主細胞の子孫が含まれる。自然的、偶発的、または意図的な変異により、子孫と元の親細胞は(形態またはゲノムDNA相補体において)必ずしも完全に同一ではない。宿主細胞には、本開示のポリヌクレオチド(複数可)とともに生体内で遺伝子導入された細胞が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」とは、自然および/または適応免疫応答の開始および/または実行に機能的に関与する造血系起源の細胞を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「自己」とは、患者を治療するために用いた細胞、細胞株または細胞集団が、上記患者またはヒト白血球抗原(HLA)適合ドナーに由来することを意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「同種異系」とは、患者を治療するために用いた細胞または細胞集団が、上記患者ではなく、ドナーに由来することを意味する。
【0043】
「個人」または「被験体」とは、例えばヒトなどの哺乳動物である。哺乳動物には更に、霊長類、馬、犬、猫、マウスおよびラットも含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ベクター」とは、宿主細胞内で1以上の目的遺伝子または配列を送達し、かつ通常は発現することができる構築物を意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、ネイキッドDNAまたはRNA発現ベクター、プラスミド、コスミドまたはファージベクター、カチオン性凝縮剤に関連づけられたDNAまたはRNA発現ベクター、リポソームに被包されたDNAまたはRNA発現ベクター、および特定の真核細胞(例えばプロデューサー細胞)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用される場合、「発現制御配列」とは、核酸の転写を指示する核酸配列を意味する。発現制御配列は、構成型ならびに誘導型プロモーター、またはエンハンサーなどのプロモーターであり得る。発現制御配列は、転写される核酸配列に機能的に結合されている。
【0046】
本明細書において、ある数値またはパラメータに「約」が言及される場合、その数値またはパラメータ自体を対象にした実施形態が網羅される(かつ記述される)。例えば、「約X」に言及する記載には「X」の記載を含む。数値範囲には、当該範囲を定義する数値が含まれる。一般的に「約」という用語は、変数として指示された値に加えて、指示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)にある全数値か、指示された値の10%以内にある全数値かの、いずれか大きい方を指す。期間(年、月、週、日など)の文脈で「約」という用語が用いられる場合、「約」という用語は、期間プラスマイナス次の下位期間の1期間(例えば、約1年は11か月から13か月、約6か月は6か月プラスマイナス1週間、約1週間は6日から8日など)または指示値の10%以内の、いずれか大きい方を意味する。
【0047】
本明細書において、実施形態が「含む」という文言で説明される場合は、常に「からなる」および/または「から本質的になる」という用語で説明される類似の実施形態も提供する。
【0048】
本開示の態様または実施形態が、マーカッシュ群または他の代替群の観点から説明される場合、本開示は全体として記載された群全体だけでなく、群の個別要素および主群の下位群すべてに加え、1以上の要素を欠く主群も網羅する。本開示は更に、請求された発明内のいずれかの群の要素を1つ以上明示的に除外することを想定している。
【0049】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書およびその定義を優先する。本明細書および請求項全体を通じて、「含む(comprise)」という用語または「comprises」もしくは「comprising」などの変化形は、記載された完全体または完全体群の包含を意味すると理解されるが、他の完全体または完全体群を除外するものではない。文脈により特に必要とされない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれるものとする。
【0050】
本明細書には例示的な方法および材料が説明されているが、本明細書で説明されているのと同様または同などの方法および材料も、本開示の実施または試験に用いることができる。材料、方法、および実施例は例示のみであり、限定を意図したものではない。
【0051】
改変カスパーゼ-9ポリペプチド
本明細書で提供する開示は、改変カスパーゼ-9ポリペプチドに関する。本明細書で使用される場合、「カスパーゼ-9ポリペプチド」とは、野生型ヒトカスパーゼ-9のアミノ酸配列を含むポリペプチド(すなわち、配列番号1)か、野生型ヒトカスパーゼ-9のアミノ酸配列の一部を含むポリペプチドであって、その一部が、カスパーゼ9媒介のシグナル伝達を誘導できる(例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列を有する、カスパーゼリクルートメントドメイン(「CARD」)のないヒトカスパーゼ-9)ポリペプチドか、または配列番号1もしくは2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上の配列同一性を有するポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「改変カスパーゼ-9ポリペプチド」とは、ポリペプチドが、対応する野生型ヒトカスパーゼ-9ポリペプチドに対して1以上のアミノ酸変異を有する、上述の通りのカスパーゼ-9ポリペプチドを指す。
【0052】
野生型ヒトカスパーゼ9タンパク質のアミノ酸配列(UniProt識別#P55211)は、MDEADRRLLRRCRLRLVEELQVDQLWDALLSRELFRPHMIEDIQRAGSGSRRDQARQLIIDLETRGSQALPLFISCLEDTGQDMLASFLRTNRQAAKLSKPTLENLTPVVLRPEIRKPEVLRPETPRPVDIGSGGFGDVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELAQQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTS(配列番号1)である。したがって、いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、配列番号1に示すアミノ酸配列と比較して、1以上のアミノ酸改変を含む。
【0053】
CARDドメインがないヒトカスパーゼ9タンパク質のアミノ酸配列は、GFGDVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELAQQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLDAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEDLQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTS(配列番号2)である。したがって、いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、配列番号2に示すアミノ酸配列と比較して、1以上のアミノ酸改変を含む。
【0054】
配列番号2のポリペプチドは、配列番号1のポリペプチドと同じであるが、配列番号2のポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸1から134まで(すなわち、野生型カスパーゼ9のCARDドメイン)を含まないことだけが異なっている。したがって、配列番号2の1番目のアミノ酸は、配列番号1のアミノ酸#135と同じとなる。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、1以上のアミノ酸置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、アミノ酸置換が、S271、S274、D330、F342、I370、D379、V387、A390、F406、およびK409からからなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。記載された位置でなされるアミノ酸置換は、保存的置換または非保存的置換であってよい。改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有してよい。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、次のアミノ酸置換を1以上含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する:S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、またはK409N。いくつかの実施形態によれば、本明細書は、次のアミノ酸置換を1以上含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって:S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、またはK409N、配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する、改変カスパーゼ-9ポリペプチドである。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、2以上のアミノ酸置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、上記アミノ酸置換が、Q221-V387、D330-I370、D330-D379、D330-S271、D330-S274、D330-F342、D330-I370、D330-D379、D330-V387、D330-A390、およびD330-K409なる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。記載された位置でなされるアミノ酸置換は、保存的置換または非保存的置換であってよい。改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有してよい。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、2以上のアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態によれば、本明細書では、2以上のアミノ酸置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、上記2のアミノ酸置換がQ221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、またはD330M-K409Nから選択される、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、本明細書では、2以上のアミノ酸置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、上記2のアミノ酸置換がQ221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、またはD330M-K409Nから選択され、上記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、2以上のアミノ酸置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドは次のアミノ酸配列を含む:GFGDVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELAQQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLMAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEELQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTS(配列番号3)。配列番号3は、D330MおよびD379Eの置換を有する配列番号2の配列である。上記の配列番号3内にこれらの置換を下線で示している。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、本明細書の実施例1で説明されるいずれかのアミノ酸置換を含む、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態によれば、本明細書は、本明細書の実施例1で説明される1、2、3、4または5のいずれかの置換位置を有するアミノ酸置換を含む、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態によれば、本明細書は、実施例1に記載されるアミノ酸置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチド、または実施例1に記載される1、2、3、4、または5のいずれかの置換位置を有するアミノ酸置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、当該改変カスパーゼ-9ポリペプチドが配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の配列同一性を有する、改変カスパーゼ-9ポリペプチドである。
【0062】
明確性向上のため、本明細書で示されるアミノ酸置換には次のように注釈が付されている。例えば「D379E」と記載されている置換において、「D」は、野生型カスパーゼ9タンパク質のアミノ酸位置379のアミノ酸を指す(すなわち、野生型カスパーゼ9アミノ酸配列をN末端からC末端の方向に数えて379番目のアミノ酸)。また、「E」は、「D」から置き換わったアミノ酸を指す。また、本明細書で示されるすべてのカスパーゼ-9アミノ酸置換は、野生型カスパーゼ-9ポリペプチドの全長に対するアミノ酸の位置(すなわち、配列番号1におけるアミノ酸位置)に従って記載されている。したがって、例えば、置換「D379E」は、配列番号1および配列番号2において、同じアミノ酸置換を指す(配列番号2の配列が配列番号1の配列より短いが)。
【0063】
本明細書で使用される場合、「カスパーゼ-9活性」は、カスパーゼ-9によって媒介される、細胞内における1以上の効果を指す(例えば、カスパーゼ-9依存性細胞シグナル伝達事象、アポトーシスの誘導、細胞死など)。カスパーゼ-9活性は直接アッセイすることもできるし(例えば、プロカゼパーゼ-3またはプロカスパーゼ-7などのカスパーゼ-9標的のカスパーゼ-9媒介切断を直接アッセイすることにより)、カスパーゼ-9活性は、細胞内の更に下流のカスパーゼ-9媒介事象によりアッセイすることもできる(例えば、アポトーシスまたは細胞死)。例えば、いくつかの実施形態によれば、カスパーゼ-9活性は、本明細書の実施例1で説明されるようにアッセイすることができる。カスパーゼ-9活性は更に、例えば、カスパーゼ活性のアッセイに関する当業者に公知の方法によりアッセイすることができる。当業者に公知の方法としては、カスパーゼ-Glo(登録商標)アッセイ(Promega)、アネキシンVアッセイ、または分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)アッセイ(例えば、MacCorkle,R.A.,K.W.Freeman,およびD.M.Spencer,Synthetic activation of Caspases:artificial death switches.Proc Natl Acad Sci USA,1998.95(7):p.3655-60を参照)などが挙げられる。また例えば、米国特許第9,434,935号の実施例8も参照されたい。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドの基礎カスパーゼ9活性は、対応する野生型カスパーゼ-9ポリペプチドよりも小さくてよい。本明細書で使用される場合、「基礎カスパーゼ-9活性」、「基礎活性」などは、特定のカスパーゼ-9誘導因子が存在しない状態下のカスパーゼ-9ポリペプチドの活性を指す(例えば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質の場合、基礎活性は、対応する二量体化リガンドが存在しない状態下のキメラカスパーゼ-9タンパク質のカスパーゼ-9活性を指す)。いくつかの実施形態によれば、改変カスパーゼ-9ポリペプチドの基礎カスパーゼ-9活性は、対応する野生型カスパーゼ-9ポリペプチドの50%、40%、30%、20%、10%、5%、3%、2%、または1%未満であってよい。カスパーゼ-9ポリペプチドの基礎活性は、上述の方法および本明細書の実施例1の方法など、カスパーゼ活性のアッセイに関して当業者に公知の方法によってアッセイしてよい。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、上述の1または2のアミノ酸置換を有し、各カスパーゼ-9ポリペプチドの特性に有意な影響を与えない、1以上のアミノ酸置換、付加、または欠失を更に含む、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。各実施形態において、変更は、表1に示すように、1以上の保存的アミノ酸置換であってよい。アミノ酸配列の挿入には、1残基から100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さのアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一および複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。いくつかの実施形態によれば、本明細書は、上記のアミノ酸置換を1または2有し、1以上のアミノ酸置換、付加、または欠失を更に含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、上記1以上のアミノ酸置換、付加、または欠失により各カスパーゼ-9ポリペプチドの1以上の特性が改善される、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを提供する。
【表1】
【0066】
キメラカスパーゼ-9タンパク質
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、少なくとも2つの成分1)改変カスパーゼ-9ポリペプチド、および2)二量体化ドメイン、を含む操作されたキメラタンパク質を提供する。これら2つの成分を含むキメラタンパク質は、本明細書では「キメラカスパーゼ-9タンパク質」とも呼称される。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質の二量体化ドメインは、改変カスパーゼ-9ポリペプチドのN末端にある。任意にて、キメラカスパーゼ-9タンパク質内の二量体化ドメインと改変カスパーゼ-9ポリペプチドとの間にリンカー領域が存在し得る。任意にて、キメラカスパーゼ-9タンパク質は、N末端からC末端の方向に、二量体化ドメイン-リンカー領域-改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含んでよい。
【0068】
キメラカスパーゼ-9タンパク質:カスパーゼ-9ポリペプチド部
キメラカスパーゼ-9タンパク質のカスパーゼ-9ポリペプチド部は、改変カスパーゼ-9ポリペプチドが上記で提供される特性のいずれかを有してよい。
【0069】
例えば、いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質のカスパーゼ-9ポリペプチドは、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、またはK409Nのアミノ酸置換を1以上含んでよく、改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する。別の例として、いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質のカスパーゼ-9ポリペプチドは、2以上のアミノ酸置換を含んでよく、2以上の当該アミノ酸置換が、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、またはD330M-K409Nから選択され、改変カスパーゼ-9ポリペプチドが配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する。別の例として、いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質のカスパーゼ-9ポリペプチドは、1以上のアミノ酸置換を含んでよく、当該アミノ酸置換が、S271、S274、D330、F342、I370、D379、V387、A390、F406、およびK409からなる群より選択されるアミノ酸位置でなされ、改変カスパーゼ-9ポリペプチドが配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する。別の例として、いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質のカスパーゼ-9ポリペプチドは、2以上のアミノ酸置換を含んで良く、当該アミノ酸置換が、Q221-V387、D330-I370、D330-D379、D330-S271、D330-S274、D330-F342、D330-I370、D330-D379、D330-V387、D330-A390、およびD330-K409からなる群より選択されるアミノ酸位置でなされ、改変カスパーゼ-9ポリペプチドが配列番号1または2に示すアミノ酸配列に対して、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する。
【0070】
キメラカスパーゼ-9タンパク質:二量体化ドメイン
キメラカスパーゼ-9タンパク質の「二量体化ドメイン」は、二量体化ドメインに結合できる二量体化リガンドなどによって二量体化を誘導できる任意のアミノ酸配列であってよい。例えば、二量体化ドメインは、FK506結合タンパク質(「FKBP」)のアミノ酸配列を含んでよい。FKBPタンパク質は、薬剤FK506に特異的に結合する。FK506の多量体アナログ(すなわち、FK506のコピーを2以上含むリガンド、またはその誘導体)であるリガンドは、第1タンパク質および第2タンパク質双方に結合することにより、FKBPのアミノ酸配列をそれぞれ含む第1タンパク質および第2タンパク質の二量体化を誘導し、それにより両者を結合する。そのため、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質は、キメラカスパーゼ-9タンパク質の二量体化ドメインに結合する好適な二量体化リガンドに曝露することで、二量体化を誘導できる。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質の二量体化ドメインには、例えば、FKBP、シクロフィリン、ステロイド結合タンパク質、エストロゲン結合タンパク質、グルココルチコイド結合タンパク質、ビタミンD結合タンパク質、またはテトラサイクリン結合タンパク質のアミノ酸配列、またはそれに由来するアミノ酸配列が含まれてもよい。本明細書で使用される場合、「FKBPポリペプチド」、「シクロフィリンポリペプチド」などは、各タンパク質のアミノ酸配列、その一部、またはその変異体を有するポリペプチドを指し、当該アミノ酸配列の一部または当該変異体が、対応するリガンド(例えば、FKBPポリペプチド、リガンドFK506および関連分子)に大きい親和性をもって結合する能力を保持する。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインにはFKBPポリペプチドアミノ酸配列が含まれてもよい。FKBPは、プロリルイソメラーゼ活性を有し、薬剤FK506およびその他の関連薬剤に結合するタンパク質群である。
【0073】
任意にて、FKBPはヒトFKBP12(FKBP1Aとも呼称される;GenBank:CAG46965.1)でもよい。任意にて、FKBP12ポリペプチドにはF36V変異が含まれてよい。F36V変異を含むFKBP12は、高親和性で二量体化リガンドAP1903に結合する(Jemal,A.et al.,CA Cancer J.Clinic.58,71-96(2008);Scher,H.I.およびKelly,W.K.,Journal of Clinical Oncology 11,1566-72(1993))。さらに、F36V変異を含むFKBP12は、野生型FKBP12がAP1903に結合するよりも、はるかに大きい親和性でAP1903に結合する。
【0074】
例示的な二量体化ドメインのアミノ酸配列(F36V変異を有するFKBP12ポリペプチドを含む)は、GVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLES(配列番号4)である。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインはシクロフィリンポリペプチドアミノ酸配列であってよい。シクロフィリンは、シクロスポリン(シクロスポリンA)に結合するタンパク質である。シクロフィリンには、例えばシクロフィリンAおよびシクロフィリンDが含まれる。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインは、アミノ酸の長さが約25個、50個、75個または100個以上、かつ約150個、約200個、約250個、約300個、約350個、または約400個以下である。いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインは、米国特許第9,434,935号(すべての目的のために参照によって本明細書に援用される)に開示されるリガンド結合領域のいずれかの特性を有してよい。
キメラカスパーゼ-9タンパク質:リンカー領域
【0077】
いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質のリンカー領域は、アミノ酸の長さが約5個から約100個までの間である。任意にて、リンカー領域は、アミノ酸の長さが約5個から約20個までの間であり得る。リンカー領域は通常、柔軟性を有し、グリシを豊富に含む。いくつかの実施形態によれば、リンカー領域は、GGGSGVD(配列番号5)、(GGGGS)x(配列番号12)(ここでxは1から5までの間の整数)、(GGGS)x(配列番号13)(ここでxは1から5までの間の整数)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号14)、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号15)、xxxGKPGSGExxxGKPGSGExxx(ここでxは任意のアミノ酸)(配列番号16)、KPGSGE(配列番号17)、GKPGSGE(配列番号18)、GKPGSGG(配列番号19)、GGGSGKPGSGEGGGS(配列番号20)、GGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号21)、GGGGSGKPGSGGGGS(配列番号22)、GGGGSGKPGSGEGGS(配列番号23)、GGGGSGKPGSGEGGGS(配列番号24)、GGGGSGKPGSGEGGGGS(配列番号25)、GSGKPGSGEG(配列番号26)、GKPGSGEG(配列番号27)、SGKPGSGE(配列番号28)、KPGSG(配列番号29)、STSGSGKPGSGEGST(配列番号30)、GGGGSGGGGSGGGGSG(配列番号31)、GGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号32)、およびGGGGSGGGGSGGGGGS(配列番号33)のアミノ酸配列を有し得る。
【0078】
キメラカスパーゼ-9タンパク質:例
いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質は次のアミノ酸配列を有し得る。GVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLESGGGSGVDGFGDVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELAQQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLMAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEELQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTS(配列番号6)。この配列では、N末端からC末端の方向に、次の成分が存在する。1)F36V変異を有するFKBP12ポリペプチドを含む二量体化ドメイン、2)リンカー領域(リンカー領域の1番目のアミノ酸を下線で示す)、および3)CARDドメインのないカスパーゼ-9ポリペプチドを含み、かつD330MおよびD379E置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチド(改変カスパーゼ-9ポリペプチドの1番目のアミノ酸を下線で示す)。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質は、本明細書の実施例1で説明されるキメラカスパーゼ-9タンパク質のいずれかであってよい。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質(すなわち、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むもの)は、野生型カスパーゼ-9ポリペプチドを含む、対応するキメラカスパーゼ-9タンパク質より小さい基礎活性を有してよい。いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質は、野生型カスパーゼ-9ポリペプチドを含む対応キメラカスパーゼの基礎活性の50%、40%、30%、20%、10%、5%、3%、2%、または1%未満の基礎活性を有してよい。いくつかの実施形態によれば、FKBP12二量体化ドメインと、CARDドメインを欠く改変カスパーゼ-9ポリペプチドとを含む、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質は、FKBP12二量体化ドメインと、CARDドメインを欠く野生型カスパーゼ-9ポリペプチドとを含む、対応キメラカスパーゼ-9タンパク質の50%、40%、30%、20%、10%、5%、3%、2%、または1%未満の基礎活性を有してよい。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質(すなわち、改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むもの)は、野生型カスパーゼ-9ポリペプチドを含む対応キメラカスパーゼ-9タンパク質よりも小さい基礎活性を有してよい(SEAPアッセイ、Caspase-Glo(登録商標)アッセイ、アネキシンVアッセイ、または本明細書の実施例1で提供するアッセイを用いた測定による)。いくつかの実施形態によれば、FKBP12二量体化ドメインおよび本明細書で提供するCARDドメインを欠く改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラカスパーゼ-9タンパク質は、FKBP12二量体化ドメインおよびCARDドメインを欠く野生型カスパーゼ-9ポリペプチドを含む、対応キメラカスパーゼ-9タンパク質の基礎活性の50%、40%、30%、20%、10%、5%、3%、2%、または1%未満の基礎活性を有し得る(SEAPアッセイ、Caspase-Glo(登録商標)アッセイ、アネキシンVアッセイ、または本明細書の実施例1で提供されるアッセイを用いた測定による)。いくつかの実施形態によれば、FKBP12二量体化ドメイン、および本明細書で提供するCARDドメインを欠く改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラカスパーゼ-9タンパク質は、FKBP12二量体化ドメイン、およびCARDドメインを欠く野生型カスパーゼ-9ポリペプチドを含む、対応キメラカスパーゼ-9タンパク質の基礎活性の50%、40%、30%、20%、10%、5%、3%、2%、または1%未満の基礎活性を有してよい(SEAPアッセイ、Caspase-Glo(登録商標)アッセイ、アネキシンVアッセイ、または本明細書の実施例1で提供するアッセイを用いた測定による)。上記キメラカスパーゼ-9タンパク質はさらに、FKBP12二量体化ドメイン、およびCARDドメインを欠く野生型カスパーゼ-9ポリペプチドを含む、対応キメラカスパーゼ9タンパク質の二量体化リガンドに反応するカスパーゼ活性が、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%または5%以上である(SEAPアッセイ、Caspase-Glo(登録商標)アッセイ、アネキシンVアッセイ、または本明細書の実施例1で提供するアッセイを用いた測定による)。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質は、二量体化リガンドが存在しない状態よりも、対応する二量体化リガンドが存在する状態の方が、より大きいカスパーゼ-9活性を有してよい。いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質は、二量体化リガンドが存在しない状態よりも、例えば10nMまたは10mMの対応二量体化リガンドが存在する状態で、2x(すなわち、「2倍」)、3x、5x、10x、20x、50x、または100x以上のカスパーゼ-9活性を有してよい。例えば、本明細書で提供するいくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質は、FKBP12二量体化ドメインを含み、当該FKBP12タンパク質はF36V置換を更に含む。この例を続けると、いくつかの実施形態によれば、AP1903が10mM存在する状態でのキメラカスパーゼ-9タンパク質のカスパーゼ-9活性は、AP1903が0mMの状態の2x、3x、5x、10x、20x、50xまたは100x以上である。
【0083】
二量体化リガンド
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質は、好適な二量体化リガンドを介して二量体化するように誘導されてよい。二量体化リガンドにより(両タンパク質のコピーの二量体化ドメインを介して)キメラカスパーゼ-9タンパク質の2つのコピーが結合され、それによりキメラカスパーゼ-9タンパク質の二量体化が誘導される。通常、本明細書で提供する実施形態に用いられる二量体化リガンドは、被験体に容易に投与できる3kDa未満の小分子である。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインはFKBP12ポリペプチドであり、対応する二量体化リガンドは、AP1903、AP21087、AP1510、二量体化ラパマイシン、二量体化FK1012、二量体化FK506、または二量体化FK506様アナログである。
【0085】
本明細書に開示される二量体化リガンド、AP1903、AP21087、AP1510、二量体化FK1012、二量体化FK506などは、当業者に公知のものである。例えば、AP1903(rimiducidとも呼称される)は、次の識別情報を有する合成分子である。CAS索引名:2-ピペリジンカルボン酸、1-[(2S)-1-オキソ-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブチル]-、1,2エタンジイルビス[イミノ(2-オキソ-2,1-エタンジイル)オキシ-3,1-フェニレン[(1R)-3-(3,-4-ジメトキシフェニル)プロピリデン]]エステル、[2S[1(R*)、2R*[S*[S*[1(R*)、2R*]]]]]-(9Cl);CAS登録番号:195514-63-7;分子式:C78H98N4O20、分子量:1411.65。
【0086】
AP1903は、F36V変異を伴うFKBP12ポリペプチドに対して、野生型FKBP12よりもはるかに大きい親和性を有する。そのため、F36V変異およびAP1903を有するFKBP12を含む組換えタンパク質を被験体内で使用するシステムでは、組換えタンパク質の被験体内で、AP1903の選択的ターゲティングが可能となる。これは、野生型FKBP12に対するAP1903の親和性が小さいことにより、二量体化リガンドと野生型FKBP12との結合から生じる得る副作用が最小限に抑えられるため好都合である(すなわち、F36V変異を有するFKBP12のみが標的となる)。F36V変異を含むFKBP12ポリペプチドと共にAP1903を用いる方法は、例えば、Jemal,A.ら,CA Cancer J.Clinic.58,71-96(2008);Scher,H.I.およびKelly,W.K.,Journal of Clinical Oncology 11,1566-72(1993)に説明されている。AP1903のヒトへの投与については試験されている(例えば、Iuliucci J.D.ら,J Clin Pharmacol.41:870-9,2001を参照のこと)。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインは、シクロフィリンポリペプチドを含み、対応する二量体化リガンドは二量体化シクロスポリンAである。いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインはエストロゲン結合ポリペプチドであり、対応する二量体化リガンドは二量体化エストロゲンである。いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインは、グルココルチコイド結合ポリペプチドであり、対応する二量体化リガンドは二量体化グルココルチコイドである。いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインはテトラサイクリン結合ポリペプチドであり、対応する二量体化リガンドは二量体化テトラサイクリンである。いくつかの実施形態によれば、二量体化ドメインはビタミンD結合ポリペプチドであり、対応する二量体化リガンドは二量体化ビタミンDである。
【0088】
本明細書で使用される場合、「二量体化」リガンドは、任意にて好適な結合分子のコピーを2以上含んでよい(すなわち、リガンドは多量体であってよい)。ただし、そのようなリガンドも、対応する結合分子を二量体化する能力に基づき、本明細書で使用されるように「二量体化」とみなされてよい。同様にいくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する「二量体化ドメイン」は、多量体化をサポートできるものでもよい(例えば、二量体化ドメインの複数のコピーが同じ分子に提供される場合)。ただしそのようなドメインも、二量体化能力に基づき、本明細書で使用されるように「二量体化ドメイン」であるとみなされてよい。通常、カスパーゼ-9のシグナル伝達は、カスパーゼ-9分子の二量体化により効果的に誘導できる(すなわち、三量体化またはその他の多量体化は不要)。また、本明細書において「リガンド」が言及される場合、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、二量体化リガンドを言及する(例えば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質の二量体化を誘導する「リガンド」を指す場合)。
【0089】
本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質のリガンド媒介二量体化により、キメラカスパーゼ-9タンパク質を含む宿主細胞におけるカスパーゼ-9媒介シグナル伝達イベントが誘導される。このシグナル伝達により、通常アポトーシスおよび細胞死がもたらされる。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質は、化学的に誘導される二量体化(CID)の二量体化機能を1つ以上含んでよく、化学的に誘導される二量体化(CID)のためのシステムで提供されるシステムまたは方法を通じて二量体化するように誘導されてもよい。CIDシステムは、表面受容体の凝集が、下流のシグナル伝達カスケードを効果的に活性化するという概念に基づく。CIDシステムは、合成二価リガンドを用いて、リガンド結合ドメインに融合されたシグナル伝達分子を迅速に架橋する。このシステムは、細胞表面(Spencer,D.M.ら、Science,1993.262:p.1019-1024;Spencer D.M.ら、Curr Biol 1996,6:839-847;Blau,C A.ら、Proc Natl Acad.Sci.USA 1997,94:3076-3081)または細胞質タンパク質(Luo,Z.ら、Nature 1996,383:181-185;MacCorkle,R.A.ら、Proc Natl Acad Sci USA 1998,95:3655-3660)のオリゴマー化および活性化、転写を調節するDNA要素への転写因子のリクルートメント(Ho,S.N.ら、Nature 1996,382:822-826;Rivera,V.M.ら、Nat.Med.1996,2:1028-1032)、またはシグナル伝達を刺激する原形質膜へのシグナル伝達分子のリクルートメント(Spencer D.M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1995,92:9805-9809;Holsinger,L.J.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1995,95:9810-9814)を引き起こすために使用されている。したがって、CIDシステムは条件付きで制御されたタンパク質またはポリペプチドを生成する。この手法は、誘導性であることに加えて、不安定な二量体化剤の分解またはモノマーの競合阻害剤の投与に起因して、可逆性である。
【0091】
ポリヌクレオチド
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、本明細書で説明する改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを更に提供する。
【0092】
例えば、いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、核酸配列GGATTTGGCGATGTGGGCGCCCTGGAGTCTCTGAGAGGCAATGCCGATCTGGCCTACATCCTGAGCATGGAGCCTTGCGGCCACTGTCTGATCATCAACAATGTGAACTTCTGCAGGGAGTCCGGCCTGAGAACCAGGACAGGCTCTAATATCGACTGTGAGAAGCTGCGGAGAAGGTTCTCTAGCCTGCACTTTATGGTGGAGGTGAAGGGCGATCTGACCGCCAAGAAGATGGTGCTGGCCCTGCTGGAGCTGGCCCAGCAGGACCACGGCGCCCTGGATTGCTGCGTGGTGGTCATCCTGTCTCACGGATGCCAGGCCAGCCACCTGCAGTTCCCAGGAGCCGTGTATGGAACCGACGGATGTCCCGTGAGCGTGGAGAAGATCGTGAACATCTTTAATGGCACAAGCTGCCCATCCCTGGGAGGCAAGCCAAAGCTGTTCTTTATCCAGGCCTGTGGCGGCGAGCAGAAGGATCACGGCTTTGAGGTGGCCAGCACCTCCCCAGAGGACGAGTCTCCTGGCAGCAACCCAGAGCCCGATGCCACCCCTTTCCAGGAGGGCCTGCGCACATTTGACCAGCTGATGGCCATCTCCTCTCTGCCTACCCCATCCGACATCTTCGTGTCTTACAGCACATTCCCTGGCTTCGTGAGCTGGCGGGACCCCAAGTCCGGCTCTTGGTACGTGGAGACACTGGACGATATCTTTGAGCAGTGGGCACACAGCGAGGAGCTGCAGTCCCTGCTGCTGAGAGTGGCCAACGCCGTGTCCGTGAAGGGCATCTACAAGCAGATGCCAGGCTGCTTCAATTTTCTGAGGAAAAAACTGTTCTTCAAAACTAGC(配列番号7)によってコードされる。配列番号7の核酸配列は、CARDドメインを欠き、かつD330MおよびD379Eの置換を有する改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードする。これらの置換をコードするコドンを下線で示している。
【0093】
更に例えばいくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質は、核酸配列GGAGTGCAGGTCGAAACAATCTCACCCGGCGATGGACGGACATTCCCCAAAAGAGGACAGACTTGCGTCGTGCATTATACCGGCATGCTGGAGGACGGCAAGAAGGTGGACAGCTCCCGCGATCGGAACAAGCCCTTCAAGTTTATGCTGGGCAAGCAGGAAGTGATCAGGGGATGGGAGGAGGGAGTGGCACAGATGAGCGTGGGACAGAGGGCAAAGCTGACCATCTCCCCAGACTACGCATATGGAGCAACAGGACACCCTGGAATCATCCCACCTCACGCCACACTGGTGTTCGATGTGGAGCTGCTGAAGCTGGAGTCCGGAGGAGGATCTGGAGTGGACGGATTTGGCGATGTGGGCGCCCTGGAGTCTCTGAGAGGCAATGCCGATCTGGCCTACATCCTGAGCATGGAGCCTTGCGGCCACTGTCTGATCATCAACAATGTGAACTTCTGCAGGGAGTCCGGCCTGAGAACCAGGACAGGCTCTAATATCGACTGTGAGAAGCTGCGGAGAAGGTTCTCTAGCCTGCACTTTATGGTGGAGGTGAAGGGCGATCTGACCGCCAAGAAGATGGTGCTGGCCCTGCTGGAGCTGGCCCAGCAGGACCACGGCGCCCTGGATTGCTGCGTGGTGGTCATCCTGTCTCACGGATGCCAGGCCAGCCACCTGCAGTTCCCAGGAGCCGTGTATGGAACCGACGGATGTCCCGTGAGCGTGGAGAAGATCGTGAACATCTTTAATGGCACAAGCTGCCCATCCCTGGGAGGCAAGCCAAAGCTGTTCTTTATCCAGGCCTGTGGCGGCGAGCAGAAGGATCACGGCTTTGAGGTGGCCAGCACCTCCCCAGAGGACGAGTCTCCTGGCAGCAACCCAGAGCCCGATGCCACCCCTTTCCAGGAGGGCCTGCGCACATTTGACCAGCTGATGGCCATCTCCTCTCTGCCTACCCCATCCGACATCTTCGTGTCTTACAGCACATTCCCTGGCTTCGTGAGCTGGCGGGACCCCAAGTCCGGCTCTTGGTACGTGGAGACACTGGACGATATCTTTGAGCAGTGGGCACACAGCGAGGAGCTGCAGTCCCTGCTGCTGAGAGTGGCCAACGCCGTGTCCGTGAAGGGCATCTACAAGCAGATGCCAGGCTGCTTCAATTTTCTGAGGAAAAAACTGTTCTTCAAAACTAGC(配列番号8)によってコードされる。配列番号8の核酸配列は、N末端からC末端に向かって、以下の成分を含むキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする。1)F36V変異を有するFKBP12ポリペプチドを含む二量体化ドメイン。2)リンカー領域、および3)CARDドメインを欠くカスパーゼ-9ポリペプチドを含む改変カスパーゼ-9ポリペプチド、ならびにD330MおよびD379E置換を含む改変カスパーゼ-9ポリペプチド。また、配列番号8の核酸配列は、配列番号6に示すアミノ酸配列を有するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする。
【0094】
別の態様によれば、本開示は、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質を含む宿主細胞を含む組成物(医薬組成物など)を提供する。いくつかの実施形態によれば、上記組成物には、本明細書で説明する改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む細胞が含まれる。
【0095】
発現ベクター、およびポリヌクレオチド組成物の投与については、本明細書で詳説する。
【0096】
別の態様によれば、本開示は、本明細書で説明される任意のポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。ポリヌクレオチドは、当業者に公知の手順によって作製および発現させることができる。
【0097】
本開示には、このような配列に相補的なポリヌクレオチドも含まれる。ポリヌクレオチドは一本鎖(コーディングまたはアンチセンス)または二本鎖であってもよいし、DNAまたはRNA分子であってもよい。追加のコード配列または非コード配列が本開示のポリヌクレオチド内に存在してもよいが、そうである必要はない。また、ポリヌクレオチドが他の分子および/またはサポート材料にリンクされてもよいが、そうである必要はない。
【0098】
2つのポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列が「同一」であるとされるのは、以下で説明するように、2つの配列内のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が、最大に一致するようにアライメントされている状態で同一であるときである。通常2つの配列の比較は、比較ウインドウで配列を比較し、配列が類似するローカル領域を特定および比較することによって実施される。本明細書で使用される場合、「比較ウインドウ」とは、約20以上(通常30から約75まで、または40から約50まで)の近接位置のセグメントを示す。比較ウインドウでは、2つの配列が最適にアライメントされた後、配列を近接位置の同数の参照配列と比較することができる。
【0099】
比較のための配列最適アライメントは、生命情報科学ソフトであるLasergeneスイート内のMegalignプログラム(DNASTAR,Inc.,Madison,WI)を、初期設定パラメータで用いて実行することができる。本プログラムは次の参考文献に説明されているいくつかのアライメントスキームを具体化する。Dayhoff,M.O.(編)Atlas of Protein Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation,Washington DC Vol.5,Suppl.3,pp.345-358;Hein J.,1990,Unified Approach to Alignment and Phylogenes pp.626-645 Methods in Enzymology vol.183,Academic Press,Inc.,San Diego,CA;Higgins,D.G.およびSharp,P.M.,1989,CABIOS 5:151-153;Myers,E.W.およびMuller W.,1988,CABIOS 4:11-17;Robinson,E.D.,1971,Comb.Theor.11:105;Santou,N.,Nes,M.,1987,Mol.Biol.Evol.4:406-425;Sneath,P.H.A.およびSokal,R.R.,1973,Numerical Taxonomy the Principles and Practice of Numerical Taxonomy,Freeman Press,San Francisco,CA;Wilbur,W.J.およびLipman,D.J.,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:726-730。
【0100】
一般に、配列同一性パーセントは、20以上の位置の比較ウインドウで、最適に配列された2つの配列を比較することによって判定される。2つの配列の最適アライメントには、比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列の一部には、参照配列(付加または欠失を含まない)に対して、20%以下の付加または欠失(すなわち、ギャップ)が含まれてよい(通常5%以上15%以下または10%以上12%以下)。同一性パーセントは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列に出現する位置の数を判定することにより一致する位置の数を求め、一致する位置の数を参照配列の位置総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、その結果に100を掛けることで、求めることができる。
【0101】
本開示のポリヌクレオチドは、化学合成、組換え法、またはPCRを用いて取得できる。化学ポリヌクレオチド合成の方法は周知技術であり、本明細書で詳説する必要はない。当業者であれば本明細書で提供する配列、および市販のDNA合成装置を用いて、所望のDNA配列を生成できる。
【0102】
組換え法を用いてポリヌクレオチドを調製するには、所望の配列を含むポリヌクレオチドを好適なベクターに挿入し、本明細書で更に説明するように、ベクターを好適な宿主細胞へ導入し、複製および増幅を行う。ポリヌクレオチドは、当業者に公知の任意の手段によって宿主細胞に挿入することができる。細胞は、直接摂取、エンドサイトーシス、トランスフェクション、F接合、またはエレクトロポレーションによって外因性ポリヌクレオチドを導入することにより形質転換される。一旦導入されると、外因性ポリヌクレオチドは、非統合ベクター(プラスミドなど)として細胞内で維持されるか、宿主細胞ゲノムに組み込まれることができる。このように増幅されたポリヌクレオチドは、当業者に周知の方法により宿主細胞から単離することができる。例えば、Sambrookら(1989)を参照すること。
【0103】
あるいは、PCRでDNA配列を複製することができる。PCR技術は周知技術であり、米国特許第4,683,195号、米国特許第4,800,159号、米国特許第4,754,065号および米国特許第4,683,202号ならびにPCR:The Polymerase Chain Reaction,Mullisら,編,Birkauswer Press,Boston(1994)に説明されている。
【0104】
RNAは、適切なベクター内で単離されたDNAを使用し、それを好適な宿主細胞に挿入することによって取得できる。細胞が複製され、DNAがRNAに転写されると、例えば前述のSambrookら(1989)に記載されるように、当業者に周知の方法を用いて、次いでRNAを単離できる。
【0105】
好適なクローニングベクターは、標準技法によって構築してもよいし、当該分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択してもよい。選択するクローニングベクターは、使用される宿主細胞によって異なるが、有用なクローニングベクターは、一般に自己複製能力があり、特定の制限酵素に単一のターゲットを持つことができ、かつ/またはベクターを含むクローンの選択に使用できるマーカー用遺伝子を保有することができる。好適な例としては、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)およびその誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3およびpAT28などのシャトルベクターなどのプラスミドおよび細菌ウイルスが挙げられる。これらおよびその他多くのクローニングベクターは、BioRad、Strategene、およびInvitrogenなどの民間業者から入手できる。
【0106】
発現ベクターとは一般的に、本開示のポリヌクレオチドを含む複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームとして、あるいは染色体DNAの不可欠要素として、宿主細胞内で複製可能でなければならないことが示唆されている。好適な発現ベクターには、プラスミドと、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびレトロウイルスを含むウイルスベクターと、コスミドと、PCT公報第WO87/04462号に開示される発現ベクター(複数可)とが含まれるが、これらに限定されない。ベクトル成分には、一般的に、シグナル配列、複製の起点、1以上のマーカー遺伝子、およびベクター内のポリヌクレオチドを転写する好適な転写制御要素(プロモーター、エンハンサーおよびターミネーターなど)の1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。例えば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質または改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、宿主細胞内で核酸の転写を誘導するプロモーターを有してよい。発現(すなわち、翻訳)には、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、および停止コドンなど、1つ以上の翻訳制御要素も通常は必要である。
【0107】
目的のポリヌクレオチドを含むベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウムDEAE-デキストラン、またはその他の物質を使用したトランスフェクション、微粒子銃、リポフェクション、および感染(例えば、ベクターがワクシニアウイルスなどの感染病原体である場合)を含む、いずれかの適切な手段によって細胞に導入できる。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入するための選択肢は、宿主細胞の機能に依存することが多い。
【0108】
本明細書で説明される改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレチオドは、発現カセットまたは発現ベクター(例えば、細菌宿主細胞に導入するためのプラスミド、または昆虫宿主細胞にトランスフェクションするためのバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、または哺乳動物宿主細胞にトランスフェクションするためのレンチウイルスなどのプラスミドまたはウイルスベクター)に存在し得る。いくつかの実施形態によれば、ポリヌクレオチドまたはベクターは、例えば2Aペプチドをコードする配列などを含むがそれに限定されない、リボソームスキップ配列をコードする核酸配列を含んでもよい。ピコルナウイルスのアフトウイルス属で同定された2Aペプチドは、コドンによってコードされる2つのアミノ酸間にペプチド結合を形成することなく、リボソームをあるコドンから次のコドンへ「スキップ」させる(DonnellyおよびElliott(2001);Atkins,Willsら(2007);Doronina,Wuら(2008)参照)。「コドン」とは、リボソームによって1つのアミノ酸残基に翻訳されるmRNA上(またはDNA分子のセンス鎖上)の3つのヌクレオチドを意味する。したがって、2つのポリペプチドは、フレーム内の2Aオリゴペプチド配列によって分離されている場合、imRNA内の単一近接翻訳領域から合成できる。このようなリボソームのスキップ機構は、周知技術であり、単一のメッセンジャーRNAによってコードされるいくつかのタンパク質を発現させる目的でいくつかのベクターによって用いられることが知られている。
【0109】
膜貫通ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に導くために、いくつかの実施形態によれば、分泌シグナル配列(シグナルペプチド、リーダー配列、プレプロ配列、またはプレ配列とも呼称される)が、ポリヌクレオチド配列またはベクター配列に提供される。分泌シグナル配列は、膜貫通核酸配列に機能的にリンクしている。すなわち、2つの配列は、正しい翻訳領域で結合され、新しく合成されたポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に導くように配置される。分泌シグナル配列は、通常、当該ポリペプチドをコードする核酸配列の5’に位置するが、一定の分泌シグナル配列は、当該核酸配列の別の場所に位置する場合がある(例えばWelchら、米国特許第5,037,743号;Hollandら、米国特許第5,143,830号を参照)。当業者であれば、遺伝暗号の縮重を考慮すると、これらのポリヌクレオチド分子間でかなりのバリエーションの配列が可能であることを認識するであろう。いくつかの実施形態によれば、本開示の核酸配列は、哺乳動物細胞での発現(例えば、ヒト細胞での発現)のために、コドンが最適化されている。コドンの最適化とは、特定の種の高発現遺伝子では一般的に稀である当該コドンの配列を、その種の高発現遺伝子で一般的なコドンに交換することを指し、交換コドンは被交換コドンと同一のアミノ酸をコードする。
【0110】
宿主細胞を操作する方法
いくつかの実施形態によれば、本明細書は、宿主細胞を調製する方法を提供する。
【0111】
いくつかの実施形態によれば、上記方法は、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することを含む。任意により、上記方法は更に細胞を増殖することを含んでもよい。
【0112】
いくつかの実施形態によれば、宿主細胞は免疫細胞である。いくつかの実施形態によれば、免疫細胞はT細胞である。いくつかの実施形態によれば、免疫細胞は例えば幹細胞に由来し得るが、これに限定されない。幹細胞は、成体幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より具体的には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞であり得る。代表的なヒト細胞はCD34+細胞である。単離細胞は、樹状細胞、キラー樹状細胞、マスト細胞、NK細胞、B細胞、または炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球、記憶Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球からなる群から選択されたT細胞でもあり得る。いくつかの実施形態によれば、細胞は、CD4+Tリンパ球およびCD8+Tリンパ球からなる群に由来し得る。
【0113】
いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが導入される宿主細胞は、更にキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含むポリヌクレオチドを含んでよい。あるいは、いくつかの実施形態によれば、改変キメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする核酸配列が宿主細胞に導入された後、CARをコードする核酸を含むポリヌクレオチドが細胞に導入されてもよい。上記のどちらの実施形態においても、キメラカスパーゼ-9タンパク質およびCARの両方を含む宿主細胞が生成される。本明細書の別の場所で説明されているように、例えばCARを含む免疫細胞を操作して本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質を更に含め、必要に応じてこれらの細胞内でアポトーシスの誘導を可能にすることが望ましい場合がある。
【0114】
免疫細胞およびCAR-T細胞を操作する方法は、例えばPCT特許出願公報WO/2014/039523、WO/2014/184741、WO/2014/191128、WO/2014/184744、およびWO/2014/184143に説明されており、本明細書の一部を構成するものとし各公報の全体が参照によって援用される。またいくつかの実施形態によれば、CARおよび、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質を含むCARならびにCAR-T細胞は、通常、例えばJacksonら,Nature Reviews Clinical Oncology,13,370-383(2016);Mausら,Blood,123,2625-2635(2014);Daiら,Journal of the National Cancer Institute,Vol.8,No.7(2016);Wang&Riviere,Molecular Therapy-Oncolytics,3,16015(2016);Liechtensteinら,Cancers(Basel),5(3),815-837(2013)で提供されるような方法および当該文献が引用する方法で調製してもよい。いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質、およびCAR含有免疫細胞は、2016年3月30日に出願された米国特許出願第15/085,317号(すべての目的のためにその内容が参照によって本明細書に援用される)で提供されるCARおよびCAR含有免疫細胞の特徴を有してよいし、上記特許出願に記載されるいずれかの方法によって調製してよい。
【0115】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する方法は、i)本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする1以上のポリヌクレオチド、およびCARをコードする1以上のポリヌクレオチドにより免疫細胞を形質転換することと、ii)ポリヌクレオチドを細胞内に発現させることとを含む。
【0116】
CARをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを導入する方法および技法は、キメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを導入するためにも使用できる。いくつかの実施形態によれば、キメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、細胞内での安定発現のためにレンチウイルスベクターに存在してもよい。
【0117】
いくつかの実施形態によれば、改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを有する宿主細胞を操作する方法は、1以上の遺伝子発現(例えばTCRの成分、免疫抑制剤の標的、HLA遺伝子、および/またはPDCD1もしくはCTLA-4などの免疫チェックポイントタンパク質などが挙げられるが、これらに限定されない)を不活性化することで宿主細胞を遺伝的に改変する工程を更に含んでもよい。遺伝子の不活性化により、目的の遺伝子が機能的タンパク質の形で発現しないよう意図されている。いくつかの実施形態によれば、不活性化される遺伝子は、例えばTCRα、TCRβ、dCK、CD52、GR、PD-1、およびCTLA-4からなる群から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、上記方法は、選択的DNA切断により遺伝子を選択的に不活性化できる希少切断エンドヌクレアーゼを細胞に導入することで1以上の遺伝子を不活性化させることを含む。いくつかの実施形態によれば、希少切断エンドヌクレアーゼは、例えば、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEヌクレアーゼ)またはCas9エンドヌクレアーゼであってよい。
【0118】
いくつかの実施形態によれば、本開示によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、例えばエレクトロポレーションによって、細胞に直接導入されるmRNAであってよい。いくつかの実施形態によれば、CytoPulse技術を用いて生細胞を一時的に透過性にし、物質を細胞内に送達できる。最小限の死亡率かつ高い導入効率を実現する条件を判断するため、パラメータを変更してもよい。
【0119】
操作された宿主細胞
本開示は更に、本明細書で提供する改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質のいずれかをコードするポリヌクレオチドを含む操作された宿主細胞も提供する。いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、導入遺伝子としてプラスミドベクターを介して宿主細胞に導入できる。いくつかの実施形態によれば、プラスミドベクターは更に、例えばベクターを受け取った細胞の識別および/または選択を行う選択マーカーを含んでもよい。通常、本明細書で提供する宿主細胞は免疫細胞であり、例えばプライマリT細胞である(例えば、
図4から
図9までを参照)が、他の種類の宿主細胞も可能である。
【0120】
本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質が宿主細胞で発現される場合、通常、キメラカスパーゼ-9タンパク質は、二量体化ドメインが細胞外になるように配向され(したがって二量体化リガンドとの相互作用が容易である)、上記タンパク質のカスパーゼ-9ポリペプチドの少なくとも一部が細胞内となる(したがって細胞内のカスパーゼ-9シグナル伝達経路を容易に媒介できる)。
【0121】
改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入した後、当該細胞内でin situで合成されてもよい。あるいは、改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、細胞外で作製され、その後細胞内に導入されても良い。ポリヌクレオチド構築物を細胞内に導入する方法は、当業者に公知のものである。いくつかの実施形態によれば、安定したトランスフェクション法を用いてポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに組み込むことができる。その他の実施形態においては、一過性トランスフェクション法を用いてポリヌクレオチド構築物を一時的に発現させ、ポリヌクレオチド構築物を細胞のゲノムに組み込まないこともできる。更に他の実施形態においては、ウイルス媒介方法を用いることができる。ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)およびリポソームなどの好適な手段によって細胞に導入されてもよい。一過性トランスフェクション法には、例えば、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、または微粒子銃が含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクターなどのベクターに含まれてもよい。
【0122】
本明細書は、本明細書で提供する上記の細胞を操作する方法によって得られる単離細胞および細胞株を更に提供する。いくつかの実施形態によれば、単離細胞は、本明細書で説明されるように、改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質を1以上含む。本明細書は、上記のいずれかの方法によって得られる単離された免疫細胞を更に提供する。
【0123】
拡張および遺伝子改変に先立って、様々な非限定的な方法を通じて細胞源を被験体から得ることができる。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍など、多くの非限定的な細胞源から得ることができる。いくつかの実施形態によれば、当業者に周知であり、かつ当業者が利用可能な任意数のT細胞株を用いることができる。いくつかの実施形態によれば、細胞は、健康なドナー、癌と診断された患者、または感染症と診断された患者に由来してよい。いくつかの実施形態によれば、細胞は、異なる表現型形質を示す細胞の混合集団の一部であってよい。
【0124】
本明細書は、上記のいずれかの方法によって遺伝子導入された免疫細胞から得られた細胞株を更に提供する。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、本開示による単離細胞は、例えば
図1Aから
図1Cの概略的に示されるように、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドおよびCARをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0126】
本明細書で提供する組成物および方法に用いる免疫細胞は、例えば米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、第6,867,041号、および米国特許出願公開第2006/0121005号(ただしこれらに限定されない)に概して説明されている方法を用いて、細胞の遺伝子改変の前または後に活性化および増殖できる。T細胞は、試験管内または生体内で増殖できる。一般的にT細胞の増殖は、例えばCD3-TCR複合体および共刺激分子をT細胞の表面上で刺激し、T細胞の活性化シグナルを発生させる媒介物と接触することにより実現できる。たとえば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12-ミリスチン酸13-アセテート(PMA)、またはマイトジェンレクチン様フィトヘマグルチニン(PHA)などの化学物質を用いてT細胞の活性化シグナルを発生させることができる。
【0127】
いくつかの実施形態によれば、本開示の細胞は、組織または細胞と共培養することで増殖させることができる。本開示の細胞は、生体内(例えば、細胞を被験体に投与した後、被験体の血液中にて)で増殖させることもできる。
【0128】
いくつかの実施形態によれば、宿主細胞内のTCRα遺伝子および/またはTCRβ遺伝子(複数可)を不活性化することで、本明細書で提供する宿主T細胞内でTCRを機能させない状態にする。
【0129】
治療適用
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質、または改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、治療目的で被験体に導入するために用いることができる。例えば、宿主細胞は免疫細胞であってもよく、被験体内の癌を治療するために免疫細胞(例えばCAR-T細胞)を被験体に導入してもよい。宿主細胞を被験体に投与する前に、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に組み込むことにより、本明細書で提供するシステムおよび方法に従い宿主細胞を被験体内で(必要に応じて)改変できる。例えば、宿主細胞を被験体に導入した後、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質を含む宿主細胞でアポトーシスを誘導することが必要であるか望ましい場合、宿主細胞のキメラカスパーゼ-9タンパク質の二量体化ドメインに結合する好適な二量体化リガンドを被験体に投与できる。導入した細胞を排除するかどうかの判断は、例えば、許容できないレベルの毒性が検出された場合、または細胞が望ましくない状態で増殖している場合など、導入された細胞に起因して患者に望ましくない影響が検出された際に必要となることがある。例えば、本明細書で提供するキメラカスパーゼ-9タンパク質を含む宿主細胞を被験体に投与した後、いくつかの実施形態によれば、被験体に宿主細胞を投与した後、2時間、4時間、8時間、12時間、16時間、24時間、36時間、48時間、72時間、96時間、120時間、または144時間以内に、対応する二量体化リガンドを被験体に投与することができる。
【0130】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で説明されるキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞、または当該細胞に由来する細胞株は、医薬品として用いることができる。いくつかの実施形態によれば、上記医薬品は、固形腫瘍および液性腫瘍を含めた癌の治療に用いることができる。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、本明細書で提供する治療用宿主細胞は、F36V変異二量体化ドメインを有するFKBP12を含んでよい。上記宿主細胞を被験体内中で改変するために、被験体にAP1903を投与してもよい。AP1903は、各種治療計画に従って被験体に投与できる。例えば、任意により、2時間のIV点滴による注射を通じて、被験体に0.4mg/kgの量のAP1903を投与できる。AP1903はヒトで研究されており(例えば、Iuliucci J.D.ら,J Clin Pharmacol.41:870-9,2001を参照のこと)、少なくとも1mg/kgの投与量まで良好な耐容性を示す。任意にて、被験体の血流内のAP1903濃度が、例えば、約10nMから100nMまで、約100nMから1000nMまで、または約1mMから100mMまでの範囲になるように、AP1903を被験体に投与してもよい。
【0132】
本開示の治療方法は、回復、治療または予防目的であってよい。被験体内の自己宿主細胞および同種宿主細胞の両方でアポトーシスを誘導することが望ましい場合、または(状況によって)必要な場合があるため、本明細書で提供する組成物および方法は、自己免疫療法の一部または同種免疫療法の一部のいずれかであってよい。
【0133】
本明細書で提供する方法で用いることのできる細胞は、例えば前項に記載されている。治療は、例えば、癌、または治療用宿主細胞を被験体に導入することが望ましい他の疾患が診断された患者を治療するために用いることができる。宿主細胞は、静脈内投与などの任意かつ便利な方法で被験体に投与できる。
【0134】
キット
本開示は更に、本方法で用いるためのキットも提供する。本開示のキットには、i)本明細書で説明されるように改変カスパーゼ-9ポリペプチドまたはキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または改変カスパーゼ-9ポリペプチドもしくはキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む操作された免疫細胞と、ii)本明細書で説明される開示の方法のいずれかに従って使用するための説明書とを含む。一般的に説明書には、上記の治療処置のために操作された免疫細胞を投与するための説明が含まれる。任意にて、キットには更に、キメラカスパーゼ-9タンパク質の二量体化ドメインに結合する好適な(例えば、AP1903などの)二量体化リガンドと、例えば必要とする被験体に二量体化リガンドを投与する必要性と時期を含めた説明書とが含まれてよい。
【0135】
操作された免疫細胞および二量体化リガンドを本明細書で説明されるように用いるための説明書には、通常、意図する治療での投与量、投与日程、および投与経路に関する情報が含まれている。容器は、投与量単位、大量包装(例えば、複数投与量包装)、または投与量サブユニットであってよい。本開示のキットで提供される説明書は、通常ラベル、または添付文書に記載された説明(例えば、キットに含まれる紙シート)であるが、機械可読媒体による説明(例えば、磁気または光学保存ディスクに記載された説明)でもよい。
【0136】
本開示のキットには好適な包装がなされている。好適な包装には、バイアル、瓶、ジャー、柔軟性のある包装(例えば、密封されたマイラーまたはビニール袋)などが含まれるが、これらに限定されない。キットは、無菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであってよい)。容器もまた、滅菌接近ポートを有してよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針により貫通可能なストッパーを有するバイアルであってよい)。
【0137】
キットは、任意選択により、バッファーおよび判断用の情報などの追加的な構成要素を提供してもよい。通常、キットは、容器と、容器上の、または容器に関連する、ラベルまたは添付文書(複数可)を含む。
【0138】
例示的実施形態
本明細書で説明される開示および発明は、番号が付された以下の例示的実施形態を参照することにより定義することができる。
【0139】
1.配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列と、1以上のアミノ酸置換とを含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、前記アミノ酸置換がS271、S274、C287、D330、F342、I370、D379、V387、A390、F406、およびK409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
【0140】
2.前記1以上のアミノ酸置換が、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、およびK409Nからなる群から選択される、請求項1に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
【0141】
3.前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが2以上のアミノ酸置換を含み、前記2以上のアミノ酸置換が、Q221-V387、D330-I370、D330-D379、D330-S271、D330-S274、D330-F342、D330-D379、D330-V387、D330-A390、およびD330-K409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、実施形態1に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
【0142】
4.前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドがQ221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む、実施形態1に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
【0143】
5.前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが配列番号3に示すアミノ酸配列を含む、実施形態1から4までのいずれか1つに記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
【0144】
6.実施形態1から5までのいずれか1つに記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【0145】
7.前記ポリヌクレオチドが配列番号11に示す核酸配列を含む、実施形態5に記載のポリヌクレオチド。
【0146】
8.実施形態6または7に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【0147】
9.実施形態1から5までのいずれか1つに記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド、または請求項6もしくは7に記載のポリヌクレオチドを含む、操作された免疫細胞。
【0148】
10.二量体化ドメインと改変カスパーゼ-9ポリペプチドとを含むキメラタンパク質であって、前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列および1以上のアミノ酸置換を含み、前記アミノ酸置換が、S271、S274、D330、F342、I370、D379、V387、A390、F406、およびK409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、キメラタンパク質。
【0149】
11.前記1以上のアミノ酸置換が、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、およびK409Nからなる群から選択される、実施形態10に記載のキメラタンパク質。
【0150】
12.前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、2以上のアミノ酸置換を含み、前記2以上のアミノ酸置換が、Q221-V387、D330-I370、D330-D379、D330-S271、D330-S274、D330-F342、D330-D379、D330-V387、D330-A390、およびD330-K409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、実施形態10に記載のキメラタンパク質。
【0151】
13.前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む、実施形態10に記載のキメラタンパク質。
【0152】
14.前記二量体化ドメインが、FKBPポリペプチドおよびシクロフィリンポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを含む、実施形態10から13までのいずれか1つに記載のキメラタンパク質。
【0153】
15.前記二量体化ドメインが、FKBP12ポリペプチドを含む、実施形態10から14までのいずれか1つに記載のキメラタンパク質。
【0154】
16.前記FKBP12ポリペプチドが、アミノ酸置換F36Vを含む、実施形態15に記載のキメラタンパク質。
【0155】
17.前記キメラタンパク質が、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、実施形態10から16までのいずれか1つに記載のキメラタンパク質。
【0156】
18.前記二量体化ドメインが、二量体化リガンドAP1903、AP20187、二量体化FK506、または二量体化FK506様アナログに結合する、実施形態10から17までのいずれか1つに記載のキメラタンパク質。
【0157】
19.実施形態10から18までのいずれか1項に記載のキメラタンパク質をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【0158】
20.配列番号8に示す核酸配列を含む、実施形態19に記載のポリヌクレオチド。
【0159】
21.実施形態19または20に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【0160】
22.実施形態10から18までのいずれか1つに記載のキメラタンパク質、または実施形態19もしくは20に記載のポリヌクレオチドを含む、操作された免疫細胞。
【0161】
23.キメラ抗原受容体(CAR)またはCARをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、実施形態22に記載の操作された免疫細胞。
【0162】
24.前記免疫細胞がT細胞である、実施形態22または23に記載の操作された免疫細胞。
【0163】
25.操作された免疫細胞を被験体内で改変する方法であって、前記方法が、実施形態22から24までのいずれか1つに記載の操作された免疫細胞を先に投与された被験体に、二量体化リガンドを投与することを含み、前記二量体化リガンドが、キメラタンパク質の二量体化ドメインに結合し、前記リガンドが、前記二量体化ドメインに結合されるとカスパーゼ-9活性が誘導される方法。
【0164】
26.前記リガンドが、AP1903である、実施形態25に記載の方法。
【0165】
27.操作された免疫細胞を調製する方法であって、前記方法が、実施形態6、7、19、もしくは20に記載のポリヌクレオチド、または実施形態8もしくは21に記載の発現ベクターを前記免疫細胞に導入することを含む方法。
【0166】
以下の実施例は、例示のみを目的として提供されるものであり、決して本開示の範囲を限定することを意図したものではない。実際、当業者であれば、前述の説明により、本明細書に示される内容および本明細書で説明される内容の他にも、本開示に様々な変更を加えることが可能であることが明らかになるであろうし、またそのような変更も添付の請求の範囲内に属する。
【実施例】
【0167】
実施例1
各種改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラカスパーゼ-9タンパク質のアポトーシス誘導活性の判定
【0168】
本実施例では、各種キメラカスパーゼ-9タンパク質がT細胞でアポトーシスを誘導する能力を判定する。各キメラカスパーゼ-9タンパク質は、FKBP12二量体化ドメインおよび改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含有する。
【0169】
実施例1(パートA)
各種キメラカスパーゼ-9タンパク質を含むT細胞の調製
形質導入のためのT細胞の調製
次のように、4つの異なるヒト血液ドナー(「ドナー1」、「ドナー2」、「ドナー3」、および「ドナー8」)から、それぞれプライマリT細胞を調製した。
【0170】
SepMate-50チューブ(StemCell Technology、カタログ番号15450)およびFicoll-Paque Plus(GE、カタログ番号17-1440-03)を用いて、スタンフォード血液細胞バンクの全血から末梢血単核細胞(PBMC)を精製した。Miltenyi Pan T細胞単離キット(Miltenyi、カタログ番号130-096-535)でプライマリT細胞を単離し、必要時まで-86℃で凍結した。
【0171】
FKBP12二量体化ドメインおよび改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスの調製
異なるレンチウイルスベクターを複数生成した。各レンチウイルスベクターには、FKBP12二量体化ドメインおよび改変カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドが含まれた。異なるレンチウイルスベクターは、同じアミノ酸配列を有するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードしたが、カスパーゼ-9ポリペプチドに1、2、または3つの異なるアミノ酸変異を有した点のみが異なった。生成されたレンチウイルスベクターには、カスパーゼ-9ポリペプチドに以下の各種改変を含むキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする、ポリヌクレオチドが含まれた。
単一置換:R192K、E202K、C239N、G248L、E261S、N265E、S271A、S271Y、C272D、C272M、S274E、L275H、L275I、L275K、K280G、C287A、G288P、G289D、D330L、D330M、D330Q、S334V、P338W、F342H、I370E、D379E、D379V、S382I、L385W、V387A、A388W、A390N、Y397I、K398D、Q399I、P401I、N405Q、F406D、F406W、L407H、K409D、K409N
二重置換:Q221R-V387A、Q221R-C287A、S242M-G289D、S271Y-D330M、D274E-D330M、S275E-D330M、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、D330M-K409N、G360D-L380V、V387A-K409N
三重置換:D330M-D379E-K409N
【0172】
この実験で用いたキメラカスパーゼ-9タンパク質の例示的なアミノ酸配列を以下に提示する。この配列は、カスパーゼ-9ポリペプチド部にD330M-D379E二重変異を含有するキメラカスパーゼ-9タンパク質の場合である。
GVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLESGGGSGVDGFGDVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELAQQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLMAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEELQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTS(配列番号6)
【0173】
上記のキメラタンパク質において、次の構成要素が表記されている(N末端からC末端の順に)。
下線部:F36V変異を有するFKBP12二量体化ドメイン。FKBP12二量体化ドメインのアミノ酸配列も、ここに別途提供する:GVQVETISPGDGRTFPKRGQTCVVHYTGMLEDGKKVDSSRDRNKPFKFMLGKQEVIRGWEEGVAQMSVGQRAKLTISPDYAYGATGHPGIIPPHATLVFDVELLKLES(配列番号4)。直前の配列において、F36V変異のVに下線が引かれている。
斜体部:リンカー領域。リンカーのアミノ酸配列も、ここに別途提供する:GGGSGVD(配列番号5)。
太字部:改変カスパーゼ-9ポリペプチド。改変カスパーゼ-9ポリペプチドのアミノ酸配列も、ここで別途提供する:
GFGDVGALESLRGNADLAYILSMEPCGHCLIINNVNFCRESGLRTRTGSNIDCEKLRRRFSSLHFMVEVKGDLTAKKMVLALLELAQQDHGALDCCVVVILSHGCQASHLQFPGAVYGTDGCPVSVEKIVNIFNGTSCPSLGGKPKLFFIQACGGEQKDHGFEVASTSPEDESPGSNPEPDATPFQEGLRTFDQLMAISSLPTPSDIFVSYSTFPGFVSWRDPKSGSWYVETLDDIFEQWAHSEELQSLLLRVANAVSVKGIYKQMPGCFNFLRKKLFFKTS(配列番号3)。直前の配列において、D330M変異のM、およびD379E変異のEに下線が引かれている。配列番号3の改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、全長野生型カスパーゼ9タンパク質のCARDドメインを含まない。
【0174】
この実施例で使用される他のキメラカスパーゼ-9タンパク質は、各タンパク質がそれぞれのアミノ酸置換(複数可)を有する点を除いて、配列番号6に示すキメラカスパーゼ-9タンパク質と同じ構造を有する。
【0175】
上記のキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードする例示的な核酸配列(すなわち、D330M-D379E二重変異を含む)、およびその一部を表2に示す。
【表2】
【0176】
各種レンチウイルスベクターを、次のように生成した。HEK293T細胞に、ゲノムプラスミドpLVX-EF1a-GFP-P2A-FKBP-F36V-Casp9、gag/polプラスミドpsPAX2、およびエンベローププラスミドpMD.2G(GenScript)を含む、3つのレンチウイルスプラスミドを形質移入した。ゲノムプラスミドは、目的のカスパーゼ9置換(複数可)をそれぞれ有するキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。ゲノムプラスミドはまた、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードしており、これはキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレチオドにより形質移入された細胞の識別を容易にする。生成された各レンチウイルスベクターを、異なる各HEK293T細胞トランスフェクション培養液の上澄部に放出した。
【0177】
キメラカスパーゼ-9タンパク質を含むT細胞を生成するための、キメラカスパーゼ-9タンパク質構造物をコードするポリヌクレチオドによる、レンチウイルスを媒介したT細胞の形質転換
キメラカスパーゼ-9タンパク質を含むT細胞を、次のように生成した。
【0178】
予め凍結されたプライマリT細胞を解凍し、ImmunoCult Human CD3/CD28 T細胞アクティベーターで活性化した(StemCell、カタログ番号10971)。48時間後、上述のようにキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むレンチウイルスベクターを活性化されたプライマリT細胞に加え、形質導入を実施した。異なるレンチウイルスベクターを異なるプライマリT細胞のサンプルに加え、異なるキメラカスパーゼ-9タンパク質の活性を試験した。HEK293T細胞からのろ過された上澄液内で、それぞれのレンチウイルスベクターをT細胞に導入した。キメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドが導入されたT細胞では、その後それぞれのキメラカスパーゼ-9タンパク質が発現した。
【0179】
以下の表3から表7に示すように、複数の異なるキメラカスパーゼ-9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、ドナー1、2、および3の各T細胞に遺伝子導入した。
【0180】
また比較目的で、野生型カスパーゼ-9ポリペプチドを含むキメラカスパーゼ-9タンパク質の調製を試みた。しかしこれらの取り組みは成功しなかった。なぜなら、野生型カスパーゼ-9ポリペプチド構築物を含むプラスミドで形質転換したHEK293T細胞は生き残らず、T細胞に遺伝子導入するためのレンチウイルスが生成されなかったためである。特定の理論に縛られることなく、これは野生型カスパーゼ-9ポリペプチド(プラスミドを細胞に導入する際にHEK293T細胞で発現され得る)の基礎活性が比較的大きいためと考えられ、また表3から表7に記載される全てのカスパーゼ-9変異体が、野生型カスパーゼ-9よりも小さい基礎活性を有することを示している。
【0181】
実施例1(パートB)
異なるキメラカスパーゼ-9タンパク質を含むT細胞で誘導したアポトーシスのアッセイ
異なるキメラカスパーゼ-9タンパク質を含むT細胞を、上記パートAで説明したように調製し、二量体化リガンドAP1903により誘導されたアポトーシスをアッセイした。
【0182】
各アッセイにおいて、特定のキメラカスパーゼ-9タンパク質を含む約1,000,000個の細胞を、10nMのAP1903がある状態、またはない状態で、3日間または4日間培養した。3日目または4日目に、フローサイトメトリーで細胞を測定し、GFP陽性(+)の細胞の割合を判定した。(GFPとは、キメラカスパーゼ-9タンパク質のマーカーである。)したがって、GFP+の生細胞の割合が大きくなるほど、このアッセイの各キメラカスパーゼ-9タンパク質のアポトーシス活性が小さくなると推定できる。
【0183】
アッセイされたドナー細胞とキメラカスパーゼ-9タンパク質とのさまざまな組み合わせを以下の表3から表7に、アッセイ結果とともに記載する。
【0184】
以下の表3および表4に記載される結果は、それぞれ
図1および
図2のグラフ形式でも示されている。
図1および
図2では、X軸に異なったキメラカスパーゼ-9タンパク質を示し、Y軸にGFP陽性細胞の割合(%)を示している。また、異なるキメラカスパーゼ-9タンパク質が、それぞれ隣接する2つの棒を有している。左側の棒がAP1903を用いずに培養した細胞であり、右側の棒がAP1903を用いて培養した対応する細胞である。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0185】
上記の表に示されているように、本明細書で提供する複数の異なる改変カスパーゼ-9ポリペプチドは、AP1903によって誘導されるアポトーシス活性を有する。これは、例えば、AP1903が0mMである場合のGFP陽性細胞の割合と、AP1903が10mMである場合のGFP陽性細胞の割合とを、異なる改変カスパーゼ-9それぞれにおいて比較することで確認できる。また、通常、AP1903のない状態でGFP陽性細胞の割合が大きい(キメラカスパーゼ-9タンパク質の基礎活性が小さいことを示す)ことが望ましく、また、AP1903が10mMの状態で培養された細胞のGFP陽性細胞の割合と、AP1903が0mMの状態で培養された細胞のGFP陽性細胞の割合との差が大きいことが望ましい。これら2集団間のGFP陽性細胞の割合の差が大きいということは、キメラカスパーゼ-9タンパク質の活性が誘導できることを示している。2つの集団の差が大きくない場合、i)キメラカスパーゼ-9タンパク質の基礎活性が比較的大きいことを示すか(リガンドなしでGFP陽性割合が小さい場合)またはii)AP1903が存在する状態においても、キメラカスパーゼ-9タンパク質の基礎活性が比較的小さいことを示す(リガンドありでGFP陽性割合が大きい場合)。例えば、上記に示すような魅力的な活性特性を有するキメラカスパーゼ-9タンパク質の一部としては、例えば、単一変異としてS271Y,S274E,D330L,D330M,F342H,I370E,D379E,V387A,A390N,F406W,およびK409N、二重変異としてQ221R-V387A,D330L-I370E,D330L-D379E,D330M-S271Y,D330M-S274E,D330M-F342H,D330M-I370E,D330M-D379E,D330M-V387A,D330M-A390N,およびD330M-K409Nが挙げられる。
【0186】
実施例2
異なるキメラカスパーゼ-9タンパク質およびCARを含むT細胞で発現したアポトーシスの誘導および発現レベルのアッセイ
各種キメラカスパーゼ-9タンパク質を含むドナー#8に由来するT細胞(その一部はさらにCARを含む)を上記のパート1Aで説明したように調製し、キメラカスパーゼ-9タンパク質の発現および二量体化リガンドAP1903に反応して誘導されたアポトーシスをアッセイした。
【0187】
各アッセイにおいて、特定のキメラカスパーゼ-9タンパク質を含む約1,000,000個の細胞を、10nMのAP1903がある状態、またはない状態で、3日間または4日間培養した。AP1903後1日目、2日目、および3日目(それぞれ
図6、7、および8)に、フローサイトメトリーで細胞を測定し、GFP陽性(+)の細胞の割合を判定した。(GFPとは、キメラカスパーゼ-9タンパク質のマーカーである。)したがって、GFP+の生細胞の割合が大きくなるほど、このアッセイの各キメラカスパーゼ-9タンパク質のアポトーシス活性が小さくなると推定できる。
【0188】
結果を
図4から
図9に示す。
図4から
図9では、X軸に異なったキメラカスパーゼ-9タンパク質を示し、Y軸にGFP陽性細胞の割合またはCAR陽性細胞の割合を示している。
図4では、異なるキメラカスパーゼ-9タンパク質がそれぞれ隣接する2つの棒を有している。左側の棒がプライマリT細胞での発現を表し、右側の棒がジャーカット細胞での発現を表す。
【0189】
図5では、棒グラフがCAR陽性のプライマリT細胞(対の左側の棒)またはジャーカット細胞(対の右側の棒)の発現レベルを示している。
【0190】
図6から
図9では、CARなしまたはCARありで発現した各種キメラキメラカスパーゼ-9タンパク質が、それぞれ隣接する2つの棒を有している。左側の棒はAP1903を用いずに培養した細胞であり、右側の棒はAP1903を用いて培養した対応する細胞である。
図6は、D330M-D379E構築物によるアポトーシスが、N405Q構築物によるアポトーシスよりも、1日目で約3倍速く誘導されたことを示している。この観察結果は、D330M-D379E構築物をCAR-T療法の速効型「安全スイッチ」として適用することとつじつまが合う。
【0191】
開示された教示は、様々な適用、方法、キット、および組成を参照して説明されたが、本明細書の教示、および以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な変更および改変を行うことができることが理解されよう。前述の例は、開示された教示をよりよく説明するために提供されたものであって、本明細書で提供された教示の範囲を限定することを意図していない。本教示をこれらの例示的な実施形態の観点から説明してきたが、当業者は、不要な実験をすることなくこれらの例示的実施形態に多くの変形および改変が可能であることを容易に理解するであろう。そのようなすべての変形および改変は、本教示の範囲内に属する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列と、1以上のアミノ酸置換とを含む改変カスパーゼ-9ポリペプチドであって、
前記アミノ酸置換が、S271、S274、C287、D330、F342、I370、D379、V387、A390、F406、およびK409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
〔2〕前記1以上のアミノ酸置換が、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、およびK409Nからなる群から選択される、前記〔1〕に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
〔3〕前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、2以上のアミノ酸置換を含み、
前記2以上のアミノ酸置換が、Q221-V387、D330-I370、D330-D379、D330-S271、D330-S274、D330-F342、D330-D379、D330-V387、D330-A390、およびD330-K409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、前記〔1〕に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
〔4〕前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む、前記〔1〕に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
〔5〕前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号3に示すアミノ酸配列を含む、前記〔1〕から〔4〕までのいずれか1項に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド。
〔6〕前記〔1〕から〔5〕までのいずれか1項に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
〔7〕前記ポリヌクレオチドが、配列番号11に示す核酸配列を含む、前記〔5〕に記載のポリヌクレオチド。
〔8〕前記〔6〕または〔7〕に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
〔9〕前記〔1〕から〔5〕までのいずれか1項に記載の改変カスパーゼ-9ポリペプチド、または前記〔6〕もしくは〔7〕に記載のポリヌクレオチドを含む、操作された免疫細胞。
〔10〕二量体化ドメインと改変カスパーゼ-9ポリペプチドとを含むキメラタンパク質であって、
前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、配列番号2に対して90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列、および1以上のアミノ酸置換を含み、
前記アミノ酸置換が、S271、S274、D330、F342、I370、D379、V387、A390、F406、およびK409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、キメラタンパク質。
〔11〕前記1以上のアミノ酸置換が、S271Y、S274E、D330L、D330M、F342H、I370E、D379E、V387A、A390N、F406W、およびK409Nからなる群から選択される、前記〔10〕に記載のキメラタンパク質。
〔12〕前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、2以上のアミノ酸置換を含み、
前記2以上のアミノ酸置換が、Q221-V387、D330-I370、D330-D379、D330-S271、D330-S274、D330-F342、D330-D379、D330-V387、D330-A390、およびD330-K409からなる群から選択されるアミノ酸位置でなされる、前記〔10〕に記載のキメラタンパク質。
〔13〕前記改変カスパーゼ-9ポリペプチドが、Q221R-V387A、D330L-I370E、D330L-D379E、D330M-S271Y、D330M-S274E、D330M-F342H、D330M-I370E、D330M-D379E、D330M-V387A、D330M-A390N、およびD330M-K409Nからなる群から選択される2以上のアミノ酸置換を含む、前記〔10〕に記載のキメラタンパク質。
〔14〕前記二量体化ドメインが、FKBPポリペプチドおよびシクロフィリンポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドを含む、前記〔10〕から〔13〕までのいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
〔15〕前記二量体化ドメインが、FKBP12ポリペプチドを含む、前記〔10〕から〔14〕までのいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
〔16〕
前記FKBP12ポリペプチドが、アミノ酸置換F36Vを含む、前記〔15〕に記載のキメラタンパク質。
〔17〕前記キメラタンパク質が、配列番号6に示すアミノ酸配列を含む、前記〔10〕から〔16〕までのいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
〔18〕前記二量体化ドメインが、二量体化リガンドAP1903、AP20187、二量体化FK506、または二量体化FK506様アナログに結合する、前記〔10〕から〔17〕までのいずれか1項に記載のキメラタンパク質。
〔19〕前記〔10〕から〔18〕までのいずれか1項に記載のキメラタンパク質をコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
〔20〕前記ポリヌクレオチドが、配列番号8に示す核酸配列を含む、前記〔19〕に記載のポリヌクレオチド。
〔21〕前記〔19〕または〔20〕に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
〔22〕前記〔10〕から〔18〕までのいずれか1項に記載のキメラタンパク質、または前記〔19〕もしくは〔20〕に記載のポリヌクレオチドを含む、操作された免疫細胞。
〔23〕キメラ抗原受容体(CAR)、またはCARをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、前記〔22〕に記載の操作された免疫細胞。
〔24〕前記免疫細胞がT細胞である、前記〔22〕または〔23〕に記載の操作された免疫細胞。
〔25〕操作された免疫細胞を被験体内で改変する方法であって、
前記方法が、前記〔22〕から〔24〕までのいずれか1項に記載の操作された免疫細胞を先に投与された被験体に、二量体化リガンドを投与することを含み、
前記二量体化リガンドが、キメラタンパク質の二量体化ドメインに結合し、前記リガンドが前記二量体化ドメインに結合されると、カスパーゼ-9活性が誘導される方法。
〔26〕前記リガンドがAP1903である、前記〔25〕に記載の方法。
〔27〕操作された免疫細胞を調製する方法であって、
前記方法が、前記〔6〕、〔7〕、〔19〕もしくは〔20〕に記載のポリヌクレオチド、または前記〔8〕もしくは〔21〕に記載の発現ベクターを、前記免疫細胞に導入することを含む方法。
【0192】
特許、特許出願、論文、教科書などを含む、本明細書に引用される全ての参考文献、および当該参考文献に引用される参考文献は、まだ援用範囲に含まれていない場合、それらの全体が参照によって本明細書に援用される。定義された用語、用語の用法、説明された技術など(を含むがこれらに限定されない)において、援用された1以上の文献および類似の資料と本願とが矛盾する場合、本願が優先するものとする。
【0193】
前述の説明および実施例は、本発明の特定の実施形態を詳述しており、発明者によって企図された最良の形態を説明している。しかし、前述の内容がどれほど詳細に記載されていようとも、本発明は多くの方法で実施することができ、かつ本発明は添付の特許請求の範囲およびその均等物に従って解釈されるべきである。
【配列表】