IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベーの特許一覧

特許7261233新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム
<>
  • 特許-新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム 図1
  • 特許-新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム 図2
  • 特許-新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム 図3
  • 特許-新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム 図4
  • 特許-新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム 図5
  • 特許-新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム 図6A
  • 特許-新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム 図6B
  • 特許-新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】新規のバイオセンサー及び関連する創傷被覆システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20230412BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230412BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230412BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20230412BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20230412BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61B5/00 N
G01N33/483 E
G01N33/68
G01N27/416 386Z
G01N27/02 D
A61F13/00 301Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020524512
(86)(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-28
(86)【国際出願番号】 SE2018051117
(87)【国際公開番号】W WO2019093944
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】1730308-2
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】507226709
【氏名又は名称】メンリッケ・ヘルス・ケア・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【弁理士】
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】パウル イプセン
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス テーギル
(72)【発明者】
【氏名】ダービド ベンスボー ポサリク
【審査官】外山 未琴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/013937(WO,A1)
【文献】特表2012-532642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0271278(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0231380(US,A1)
【文献】特表2005-530541(JP,A)
【文献】国際公開第2017/064311(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/047095(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
G01N 33/483
G01N 33/68
G01N 27/416
G01N 27/02
A61F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液、分泌液、又は滲出液中のバイオマーカーを検出するためのバイオセンサーであって、前記バイオセンサーは、
第1の電極(100a)であって、導電性であり、及びその外面に設けられた導電性面を備える、第1の電極(100a)
第2の電極(100b)であって、導電性であり、及びその外面に設けられた導電性面を備える、第2の電極(100b)
前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)が互いに一定で均一な距離に保たれるように配置された、機械的電極安定器(300)、及び
電極コーティング(200)
を備え、
前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)の少なくとも1つの導電性面は、前記電極コーティング(200)により完全に被覆されており、
前記バイオマーカーは、化学反応を触媒する酵素であり、前記電極コーティング(200)の単一の又は複数の構成要素は、バイオマーカーと接触すると共有化学結合を切断することにより化学的に変更され、
前記電極コーティング(200)は、前記バイオマーカーの天然又は合成基質及び電気的増幅器を備え、前記電気的増幅器は、前記バイオマーカーによって自身の化学的及び関連する機械的分解が誘導されて前記電極コーティング(200)中の固定化形態から機械的に放出されると、前記第1の電極(100a)と前記第2の電極(100b)との間のインピーダンスを低下させ、並びに、
前記バイオセンサーは、前記電極コーティング(200)が前記バイオマーカーによって化学的に変更されていない、高インピーダンス状態と、前記電極コーティング(200)が前記バイオマーカーによって化学的に変更された、低インピーダンス状態を含む、状態の群の少なくとも1つの状態で存在する、バイオセンサー。
【請求項2】
前記第1の電極(100a)が、その外面に設けられた第1の絶縁部分面(110a)をさらに備え、
前記第2の電極(100b)が、その外面に設けられた第2の絶縁部分面(110b)をさらに備え、
前記機械的電極安定器(300)が、前記第1の絶縁部分面(110a)及び前記第2の絶縁部分面(110b)のそれぞれに接着され、
前記第1の電極(100a)の外面の導電性面は、第1の導電性部分面(120a)として規定され、
前記第1の導電性部分面(120a)は、前記第1の電極(100a)の外面の前記第1の絶縁部分面(110a)を欠いていて、
前記第2の電極(100b)の外面の導電性面は、第2の導電性部分面(120b)として規定され、
前記第2の導電性部分面(120b)は、前記第2の電極(100b)の外面の前記第2の絶縁部分面(110b)を欠いていて、並びに
前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)のそれぞれの前記導電性部分面(120a、120b)の少なくとも1つは、前記電極コーティング(200)により完全に被覆されている、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項3】
前記体液、分泌液、又は滲出液は、組織の損傷に応答して体で産生した創傷滲出液又は創傷排出液である、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項4】
前記機械的電極安定器(300)は、前記創傷を保護するように適合される創傷被覆材(500)の一体部分であるか又は密接に一体化されている、請求項3に記載のバイオセンサー。
【請求項5】
前記酵素は、ゼラチナーゼ及びホスホリパーゼA2(PLA2)から成る酵素の群から選択される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項6】
前記酵素は、マトリックスメタロプロテアーゼ-2(MMP2)であり、前記天然又は合成基質は、コラーゲンI、III、IV、V、VII及びX、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、アグリカン及びエラスチンから成る基質の群から選択される、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項7】
前記酵素は、ホスホリパーゼA2(PLA2)であり、前記天然又は合成基質は、グリセロール骨格を有するリン脂質である、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項8】
前記第1の電極(100a)又は前記第2の電極(100b)の導電性は、金属、元素状炭素及び導電性有機ポリマーから成る導体の群から選択される電気伝導体の存在に、完全に又は部分的に由来されることができる、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項9】
前記機械的電極安定器(300)は、セルロース、化学的に修飾されたセルロース、有機ポリマー、ガラス繊維、シリコン、熱可塑性物質から成る、請求項1に記載のバイオセンサー。
【請求項10】
請求項1に記載のバイオセンサー、
創傷を保護するように適合される創傷被覆材(500)、
前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)に電気的に接続され、前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)の間のインピーダンス又は抵抗を連続的に又は周期的に測定するように適合されるインピーダンス読み取りユニット(600)、及び
前記インピーダンス読み取りユニット(600)に接続され、そのインピーダンス又は抵抗データを単一又は複数のプリセット限界値と比較して前記プリセット限界値を満たすか超えると警告信号を出力するように適合されるプロセッサユニット(700)
を備える、診断用創傷被覆システム。
【請求項11】
前記創傷又はその隣接する周囲の温度を測定するよう適合される温度センサー(800)をさらに含み、前記温度センサー(800)は、警告信号の前記出力の基礎としてそれにさらに入力を提供するために前記プロセッサユニット(700)に接続される、請求項10に記載の診断用創傷被覆システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷に関する監視又は診断を目的とした体液、分泌液、又は滲出液中のバイオマーカーを検出するためのバイオセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケアシステムにおいて皮膚が修復できないことや非治癒性潰瘍による病気の負担が広範囲に広がっている。米国においては、非治癒性潰瘍及び慢性創傷は650万人の患者に発症して年間の国民費用は300億ドルになると報告されている。これらの数字は、人口が高齢化し、非治癒性潰瘍の発生に寄与する、肥満や糖尿病などの病気の有病率が上昇するのに伴い増えていくと予想されている。さらに、合併症は火傷創にも影響し、局所的に感染すると治癒が遅延し、侵襲性の感染や敗血症のリスクが生じる。例えば、スウェーデンでは、病院の抗生物質の消費量の約3分の1は手術後の予防に関連する。
【0003】
易感染性治癒は、合成グラフトやプロテーゼなどの、生体材料の使用に関連しても見られ、炎症反応を誘発したりさらなる感染リスクを増加させる可能性がある。
【0004】
現在、創傷及び創傷治癒は従来の被覆材や絆創膏により最も一般的に管理される。概して、患者は病院を定期的に訪問して医師や看護師に治癒している創傷を診察してもらうよう予定されており、その過程においては被覆材や絆創膏は、取り除かれて新しいものに取り換えられることが多い。創傷治癒の合併症は、次回の訪問より比較的かなり前の時点で発生する可能性があり、それにより合併症の場合に保証されることが多いようにすぐには手当されない可能性がある。加えて、被覆材や絆創膏を病院環境で開くとそれ自体が重篤なリスクを成す。病院に関連する微生物は、複雑な二次感染を招く可能性があり、したがって創傷が想定通りに治癒して被覆材が取り除かれて取り換えられる必要が全くないと結論が出た場合でさえ導入される可能性がある。
【0005】
創傷治癒の過程は非常に複雑なので、創傷の状態を評価するために利用されることがもしかしたらできる多くの考えられる方法、マーカー、及び生物学的及び物理学的原則があることを示す。特に、感染を、好ましくは初期に検出することができることが望ましい。したがって、多くの努力がこのような感染に関連する方法、マーカー、及び生物学的及び物理学的原則の同定に充てられてきた。
【0006】
黄色ブドウ球菌(S. aureus)や緑膿菌(P. aeruginosa)からのホスホリパーゼA2やヘモリジンなどの、細菌性毒素は、基質標的から脂質容器の形で検出可能な色素を遊離し得る(Zhou, J., Loftus, A.L., Mulley, G., Jenkins, A.T.A., 2010. Journal of the American Chemical Society 132 (18), 6566-6570)。この方法の欠点は、例えば、読み出し情報の主観的な又は手の込んだ数量化を含み、主観的な目視検査又は蛍光分光法用の器具使用などを必要とする別の分析の必要性のいずれかを伴う。さらに、創傷被覆材の外装により、下にある遊離した色素の目視検査が妨げられるかもしれない。このような場合には、創傷被覆材の少なくとも外装部を取り除く必要があり、それにより感染のリスクが上昇する。
【0007】
マトリックスメタロプロテアーゼは、慢性創傷液中で活性が増加する亜鉛依存性のエンドペプチダーゼであり、チップ形式の基質が被覆された多孔質シリコンを使用することにより検出され得る(Gao, L.Z., Mbonu, N., Cao, L.L., Gao, D., 2008. Analytical Chemistry 80 (5),1468-1473)。この方法の不利益は、例えば、分析対象に暴露した後、視覚的に読み取るために乾燥又は他の手段によりチップを処理する必要があることを含む。したがって、この方法は創傷被覆材などで望まれているリアルタイム分析にはあまり適していない。
【0008】
温度は、創傷中の感染の確立されたマーカーであり、創傷の外観に対するどんな明白な変化が観察されるよりも前に慢性化を表す早期予測因子として使用され得る(Nakagami, G., Sanada, H., lizaka, S., Kadono, T., Higashino, T., Koyanagi, H., Haga, N., 2010. Journal of Wound Care 19 (1 1 ), 465-472)。感染の予測因子として温度のみを使用する不利益は、例えば、いくつかの良性の過程は、治癒している創傷に対して正常だが、温度を一時的に上昇させる可能性があるという事実に起因する偽陽性のリスクが高いことを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在の従来技術の上述した問題及び不利益を考慮して、創傷の治癒過程を監視するための改良されたバイオセンサーの必要性がある。特に、創傷被覆材に組み込まれてもよく、感染した場合などの、創傷急性の治療が必要な場合でも、警告信号を出力できるようなセンサーの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
要約
したがって、本発明の実施例及び実施形態は、好ましくは上で明らかにしたものなどの当該技術における1つ以上の欠陥、不利益又は問題点を単独で又は任意の組み合わせで、添付の特許の請求項にしたがったバイオセンサーを提供することにより軽減、緩和又は除去しようとする。
【0011】
第1の態様によると、第1の電極、第2の電極、電極コーティング、及び機械的電極安定器を備える、体液、分泌液、又は滲出液中のバイオマーカーを検出するためのバイオセンサーが提供される。このバイオマーカーは、化学反応を触媒する酵素であり、前記電極コーティングの単一の又は複数の構成要素は、バイオマーカーと接触すると共有化学結合を切断することにより化学的に変更される。前記電極コーティングは、前記バイオマーカーの天然又は合成基質を備える。前記第1の電極及び第2の電極は、導電性であり、前記機械的電極安定器手段により互いに実質的に一定で均一な距離に保たれている。前記第1の電極及び前記第2の電極の少なくとも1つの前記露出した導電性面は、前記電極コーティングにより実質的に完全に被覆される。前記バイオセンサーは、前記電極コーティングが前記バイオマーカーによって実質的に化学的に変更されていない、高インピーダンス状態と、前記電極コーティングが前記バイオマーカーによって化学的に変更された、低インピーダンス状態を含む、状態の群の少なくとも1つの状態で存在する。
【0012】
第2の態様によると、第1の態様にしたがったバイオセンサーを備え、前記機械的電極安定器は、創傷を保護するように適合される創傷被覆材の一体部分(integral part)であるか又は密接に一体化されている、バイオセンサーが提供される。
【0013】
第3の態様によると、第1又は第2の態様のバイオセンサー、創傷を保護するように適合される創傷被覆材、インピーダンス読み取りユニット及びプロセッサユニットを備える診断用創傷被覆システムが提供される。インピーダンス読み取りユニットは、前記第1の電極及び前記第2の電極に電気的に接続され、前記第1の電極及び前記第2の電極の間のインピーダンス及び抵抗を連続的に又は周期的に測定するように適合される。プロセッサユニットは、前記インピーダンス読み取りユニットに接続され、そのインピーダンス又は抵抗データを単一又は複数のプリセット限界値と比較して前記プリセット限界値を満たすか超えると警告信号を出力するように適合される。
【0014】
本発明のさらなる例は、従属項において定義され、本開示の前記第2及び前記第3の態様についての特徴は、前記第1の態様に関する限り準用する。
【0015】
本開示のいくつかの例は、ゼラチナーゼ及びホスホリパーゼA2(PLA2)から成る酵素の群から選択される酵素に対して感受性があるバイオセンサーを提供する。
【0016】
本開示のいくつかの例は、前記創傷又はその隣接する周囲(immediate surrounding)の温度を測定するよう適合される追加の温度センサーを備える診断用創傷被覆システムを提供する。前記温度センサーは、警告信号の前記出力の基礎として、バイオマーカー関連信号と並行して及び加えて、それにさらに入力を提供するために前記プロセッサユニットに接続される。
【0017】
用語「を備える/を備えた(comprises/comprising)」は、この明細書において使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップ又は成分の存在を明示するために用いられるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、成分又はそれらの組み合わせの存在又は追加を排除しないことは強調されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
これら及び本発明の例が可能である他の態様、特徴、及び利点は、本発明の例の以下の記述から明らかになり解明され、添付図面に参照がなされる。
図1図1は、電極の各々は上部外面に電極コーティング200が被覆され、電極の各々は非導電性界面により機械的電極安定器300に固定化された下部外面を有する、第1の電極100a及び第2の電極100bを示す、本開示の実施形態に従った、本発明のバイオセンサーの切断図である。
図2図2は、機械的電極安定器300に固定化され、電極100a、100bの上部外面が露出して電極コーティング200により被覆されるように、今度は創傷被覆材500と一体となっている、長方形又はシート状の第1の電極100a及び長方形又はシート状の第2の電極100bを示す、本発明の実施形態にしたがった、本発明のバイオセンサーの切断図である。
図3図3は、機械的電極安定器300により互いにある距離で分離し、電極に第1の絶縁部分面110a及び第2の絶縁部分面110bにより接着され、電極の第1の導電性部分面120a及び第2の導電性部分面120bは、電極コーティング200により完全に被覆されている、長方形の第1及び第2の電極100a、100bを示す、本発明の実施形態にしたがった、本発明のバイオセンサーの切断図である。
図4図4は、電極コーティング200に完全に一体化されていることにより互いにある距離で分離し、電極コーティング200は、機械的電極安定器300としての役割を同時に果たしており、バイオマーカーによって化学的に変更される可能性があり電極間のインピーダンスを下げることになる構成要素を備えている、円形の第1及び第2の電極100a、100bを示す、本発明の実施形態にしたがった、本発明のバイオセンサーの切断図である。
図5図5は、第1の電極100aの外面は電極コーティング200の層により完全に被覆され、第2の電極100bは、電極がその延長部分に沿って実質的に一定の距離で互いに分離されるように、電極コーティング200の外面に巻きつけられる、円形の第1及び第2の電極100a、100bを示す、本発明の実施形態にしたがった、本発明のバイオセンサーの切断図である。
図6A図6Aは、電極の各々が、露出した外面に基質を備え、内容積に電気的増幅器(S状物として図解される)を備える、複数の微視的ベシクルから成る電極コーティング200で被覆された、第1及び第2の電極100a、100bを示す、高インピーダンス状態の本発明のバイオセンサーの概要図である。
図6B図6Bは、基質がバイオマーカーにより化学的に変更されて微視的ベシクルの大部分が破裂(bursting)して付随的に電気的増幅器が電極の局所的環境に放出された、低インピーダンス状態の図6Aのバイオセンサーの図である。
図7図7は、電極コーティング200で被覆された、第1の電極100a及び電極コーティング200で被覆された、第2の電極100bが内部に一体化し、互いに均一な距離で創傷被覆材500の延長部分に沿って伸びている、創傷被覆材500及びWIFIによりデータを送受信するように適合され、電気コネクター400により電極100a、100bに電気的に接続された、結合されたインピーダンス読み取りユニット600及びプロセッサユニット700を示す、本発明の診断用創傷被覆システムの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の具体例は以下の図面を参照して記載される。この発明は、しかしながら、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書において記載された実施例に限定されると解釈すべきではなく、むしろ、これらの実施例は、本開示が徹底的で完全であり、本発明の範囲が当該技術分野における当業者に充分に伝えるよう提供される。以下の図面において例示される実施例の詳細な説明に使用される用語は、本発明を限定することを意図しない。図面において、同様の番号は同様の要素を指す。
【0020】
本発明のバイオセンサーは、本質的に2個の電極、第1の電極100a及び第2の電極100bを備える。電極は、部分的に又は完全に導電性材料が存在するために電気伝導体である。電極を構成するのに適切な導電性材料の例は、金属、元素状炭素、及び導電性有機ポリマーを含むが、これに限定されるものではない。電極、すなわちその活性測定面導電部は、これらの間のインピーダンスが隣接する環境の性質に大いに依存するように互いに均一な距離を適切に維持する。電極を互いに本質的に均一な距離に維持するために、機械的電極安定器300を使用してもよい。例えば、機械的電極安定器300は、電極をその面に固定化している、シート形であってもよく、又は当該技術分野において公知の任意の他の適切な形状を有していてもよい。電極安定器300の適切な材料の例は、セルロース、化学的に修飾されたセルロース、有機ポリマー、ガラス繊維、シリコン、熱可塑性物質又はこれらの組み合わせを含むが、これに限定されるものではない。好ましくは、電極と電極安定器300の間の界面は、第1の電極100aが電極安定器300の面に第1の絶縁部分面110aにより固定され、第2の電極100bが電極安定器300の面に第2の絶縁部分面110bにより固定されるように、絶縁されてもよい。電極の活性測定面導電部は、電極の残りの面、すなわち第1の電極100aの第1の導電性部分面120a及び第2の電極100bの第2の導電性部分面120bに実質的に等しい。
【0021】
本発明のバイオセンサーの機能は、バイオマーカーによって化学的に変更されていない又は影響されていない状態、すなわち高インピーダンス状態において電極間のインピーダンスに対して実質的に寄与する電極の第1及び/又は第2の導電性部分面120a、120bの電極コーティング200に依拠する。電極コーティング200が、バイオマーカーの影響により部分的に又は完全に化学的に分解されるなど、影響された状態、すなわち低インピーダンス状態においては、インピーダンスに対する寄与は高インピーダンス状態の場合より低い。低インピーダンス状態は、電極コーティングがバイオマーカーによって異なる程度に化学的に変更された複数の状態を備えてもよい。例えば、電極コーティングは比較的小程度化学的に変更されてもよく、それにより電極間のインピーダンスの差は、この場合と高インピーダンス状態の場合の間で比較して、比較的小さい。別の実施例においては、電極コーティングは比較的高程度化学的に変更されてもよく、それにより電極間のインピーダンスの差は、この場合と高インピーダンス状態の場合の間で比較して、比較的大きい。したがって、これら、すなわち第1及び/又は第2の導電性部分面120a、120bの少なくとも1つの導電活性測定面が電極コーティング200で被覆されているならば、バイオマーカーの存在は、第1の電極100aと第2の電極100bの間のインピーダンスを定期的に測定することにより検出され得る。バイオマーカーを、インピーダンス対時間の関係を分析することにより定性的及び任意に定量的に測定してもよい。このような分析は、関連する電気信号を受け取るのに好適であり、プログラム形式の適切なアルゴリズムを備える、プロセッサユニット700により自動的に実行されてもよい。
【0022】
バイオマーカーは、化学反応を触媒する酵素であってもよく、電極コーティング200の単一の又は複数の構成要素は、バイオマーカーと接触すると共有化学結合を切断することにより化学的に変更される。したがって、電極コーティング200は、酵素の天然又は合成基質を備えてもよい。本質的には、電極コーティング200は、酵素の効果により分解されると電極コーティング200に検出可能な微視的又は巨視的な変化を生じ、電極間のインピーダンスが変化することになる性質などを有する、充分な量のこのような基質を備える。電極コーティング200に組み込むための適切な基質は、例えば、感染などの、創傷の望ましくない医療状態に関連する、酵素活性を有するバイオマーカーの基質である。このようなバイオマーカーの例は、コラゲナーゼ及びゼラチナーゼなどの、マトリックスメタロプロテアーゼを含む。このようなバイオマーカーのさらなる例は、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2及びホスホリパーゼCなどの、ホスホリパーゼを含む。
【0023】
1つの実施形態によると、電極コーティング200の基質は、コラーゲンI、III、IV、V、VII及びX、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、アグリカン及びエラスチン又はこれらの混合物又は合成派生物から成る基質の群から選択されてもよい。
【0024】
1つの実施形態によると、電極コーティング200の基質は、ゼラチナーゼの影響により化学的に分解されてもよい。このような基質の例は、IV型コラーゲン及びゼラチンを含む。
【0025】
1つの実施形態によると、電極コーティング200の基質は、MMP-2の影響により化学的に分解されてもよい。
【0026】
1つの実施形態によると、電極コーティング200の基質は、ゼラチンであってもよい。
【0027】
1つの実施形態によると、電極コーティング200の基質は、ホスホリパーゼA1及び/又はホスホリパーゼA2の影響により分解化学的に分解されてもよい。このような基質の例は、内在性脂肪酸残基を有するホスファチジルコリンなどの、グリセロール骨格を有するリン脂質を含む。
【0028】
1つの実施形態によると、電極コーティング200の基質は、合成非内在性脂肪酸残基を有するホスファチジルコリンであってもよい。このような合成非内在性脂肪酸残基は、例えば内在性脂肪酸残基と比較して、その溶液中のインピーダンス又は抵抗を比較的大きくする効果を生じるよう設計されてもよい。例えば、脂肪酸残基は、電荷を帯びた置換基又は酸化還元元素を備えてもよい。有利な、対応する基質は、ホスホリパーゼA1、ホスホリパーゼA2及び/又はホスホリパーゼCの影響により加水分解されると、内在性脂肪酸を使用する対応するバイオセンサーと比較して本発明にしたがったバイオセンサーの感度を高くし得る。
【0029】
1つの実施形態によると、電極コーティング200は、本質的にゼラチンなどの基質から成ってもよい。
【0030】
電極コーティング200は、機械的安定化特性及び、放出形で、インピーダンス低減又は増大効果を、それぞれ提供するように適合される追加のコーティング安定化剤及び/又は電気的増幅器を備えてもよい。コーティング安定化剤の例は、当該技術分野において周知であり、当業者によって使用される基質に基づいて選択されてもよい。例えば、コーティング安定化剤は、電極コーティング200が塗布されている、織った、又はもつれた、高分子非導電性繊維であってもよい。適切な電気的増幅器の選択は、当業者によって選択された基質に基づいて実行されてもよい。このような電気的増幅器は、当該技術分野において周知である。このような電気的増幅器の1つの例は、導電性ナノファイバーであり、バイオマーカーが化学的及び関連する機械的分解を誘導して電極コーティング200中の固定化形態から機械的に放出される(mechanically released)と、電極間のインピーダンスを低下させ得る。別の例は、固体又は非晶質の固定化塩であり、同じように放出されると電極に隣接する水性環境に溶解してその導電性が増大し、インピーダンスの低下として検出できる。
【0031】
1つの実施形態によると、電極コーティング200は、本発明にしたがったバイオマーカーの基質が存在することに依存する構造的一貫性を有する、微視的ベシクルを備える又は実質的に微視的ベシクルから成ってもよい。このようなベシクルの合成及び生産は、当該技術分野において周知である。例えば、ホスホリパーゼに対して感受性がある適切なベシクルは、Zhouらによって記述された(Zhou, J., Loftus, A.L., Mulley, G., Jenkins, A.T.A., 2010. Journal of the American Chemical Society 132 (18), 6566-6570)。このようなベシクルの内容積は、好ましくは単一又は複数の適切な電気的増幅器を充填してもよい。適切な電気的増幅器は、ベシクルの内容積からバイオマーカーによる分解効果として放出されるとき、第1の電極100aと第2の電極100bの間のインピーダンスを著しく変化させる物理的又は分子的実体である。適切なものは、例えば、カーボンナノファイバーなどの電気伝導体のようなインピーダンス増大増幅器又はベシクルから放出されるとき電極に絶縁する非導電性又は低導電性フィルムを形成する電気絶縁体のようなインピーダンス低減増幅器を含む。
【0032】
本発明のバイオセンサーは、例えば、ヒト体液、分泌液、又は滲出液中のバイオマーカーを検出するのに適している。特に、創傷滲出液又は創傷排出液の関連するバイオマーカーを定性的に又は定量的に測定するのに適している。このようなバイオマーカーを連続的に監視するために、創傷被覆材500に一体化されてもよい。例えば、任意に適切な修正された織物又は創傷被覆500の組織それ自体が、機械的電極安定器300を構成してもよい。有利には、そして基本的に電気的な読み出しのため、このような用途においてはユーザーに創傷の治癒又は感染に関連するバイオマーカーの本質的な情報を、被覆材を開く必要なく提供し得る。視覚的に読み取る方法又は分析用に一定容量のサンプルを採取する必要がある方法などの、従来技術の方法は、概して、例えば感染をもたらす、関連するリスクを有する被覆材の開放のようなことが必要となる。
【0033】
本発明の診断用創傷被覆システムは、通常の創傷治癒及び管理によると創傷を保護するように適合される創傷被覆材500に適切に一体化された、本明細書において教授された本発明のバイオセンサーを本質的に備える。一体化されたバイオセンサーは、当業者に周知の、適切なインピーダンス読み取り器600に接続されてもよく、さらに第1の電極100aと第2の電極100bの間のインピーダンス又は抵抗を連続的に又は周期的に測定するようにさらに適合されてもよい。プロセッサユニット700は、インピーダンス読み取りユニット600に接続され、インピーダンス読み取りユニット600からインピーダンス又は抵抗データを取得してもよい。救急医療を表す警告信号を出力するべきであるならば、このようなインピーダンス又は抵抗データを保存された所定の限界値と比較することを支援するプロセッサユニット700を、自動測定用に使用してもよい。
【0034】
1つの実施形態によると、インピーダンス読み取りユニット600及びプロセッサユニット700は、同じユニット又は筐体に一体化されて、さらに診断用創傷被覆システムの創傷被覆材500に着用可能な「プラグイン」としての役割を果たすよう適合されてもよい。このようなユニット又は筐体は、医療関係者に例えばインターネットで、又は例えば患者のスマートフォン又はタブレットにすぐに合図できるための、例えば警告信号を例えばWIFI又はBluetooth(登録商標)で無線転送する手段をさらに備えてもよい。このような着用可能な「プラグイン」の利点は、例えば、対応する一回利用品の場合と比較してコストを低減し環境を保護することに関連して、同じものを再利用できることを含む。
【0035】
1つの実施形態によると、診断用創傷被覆システムは、一体化した温度センサー800をさらに備えてもよい。このようなセンサーは、それにさらに入力を提供するためにプロセッサユニット700に接続され、創傷又はその隣接する環境の温度を測定するよう適合されてもよい。インピーダンスデータ入力と温度データ入力の両方に基づいて、プロセッサユニット700が保存された所定の限界値との比較を支援すると、有利にはこれらの入力の種類の1つのみを考慮した場合と比較して擬陽性の警告信号のリスクを低減し得る。
【実施例
【0036】
一般的で標準的な実験器具と試薬を傍らに、以下のものを本発明の以下の実施例1~3を実行するために使用した。
-メトロームAGからのガラス基板上に10ミクロンのラインとギャップを有する互いに噛み合った金電極をインピーダンス測定用に機械的電極安定器300(Naked Biosensor Model,NBM)に固定化された第1の電極100a及び第2の電極100bのモデルとして使用した。
-ウシゼラチンの5%水溶液(5%BG)及びブタゼラチンの5%水溶液(5%PG)を、対応する乾燥ゼラチン粉末(5.0g)を水中(100ml)23℃で60分間初めに水和反応を行うことにより調製した。過剰な水(約40ml)をその後注意深くデカントし、残りの水和ゼラチンを水で全容積100mlに希釈した。攪拌しながら、懸濁液を均一になるまで50~52℃で加熱して、電極が基質としてのゼラチンを備える電極コーティング200で被覆されている本発明のバイオセンサーのモデルとしての役割を果たす、ウシが被覆されたNBSを作成するために直接使用した。
【0037】
-ダルベッコリン酸緩衝食塩水(BSAPBS)中の0.1%ウシ血清アルブミンを含む、対応する創傷の急性の治療を必要としない健常な創傷滲出液のモデルとしての役割を果たす、原液をダルベッコリン酸緩衝食塩水(6.67ml)中の7.5%ウシ血清アルブミンをダルベッコリン酸緩衝食塩水で500mlに希釈することにより調製した。
【0038】
-MMP-2(10μg、Sigma#SRP31 18のヒト組み換え大腸菌から発現した)の原液を0.1%BSA(1.0ml)に溶解して調製し、使用前に-16℃で保存した。
【0039】
-急性の治療を必要とする創傷に対応する創傷滲出液のモデルとしての役割を果たす、MMP-2を含む実験溶液(BSAPBS-MMP2)を、MMP-2の上述した原液0.1mlをBSAPBS(4.9ml)で希釈することにより調製した。
【0040】
実施例1―ゼラチンが被覆されたバイオセンサーモデルの調製(BGBM及びBGBM)
直径約5mmの球形である丸みをつけた端部を有する、ガラス温度計を、熱した(50~52℃)5%BGに浸けた。垂直位置に保持した時、下部端部に重力により形成された液滴は、その全面が完全に被覆されるように、垂直に保持されたNBMの電極側にすぐに塗りつけられた。次に、被覆されたNBMを-16℃で5分間水平に維持してウシゼラチンが被覆されたNBM(BGBM)を形成し、使用前に環境温度に到達させた。ブタゼラチンが被覆されたNBM(PGBM)を類似の方法で調製した。
【0041】
実施例2-NBMとBGBM又はPGBMの間の電気的特性の比較及び後者のBSAPBS中での安定性
NBM及びゼラチンが被覆されたNBM(BGBM及びPGBM)をインピーダンス読み取り器に接続して23℃で穏やかに攪拌されたBSAPBSに、電極が被覆された面全体がBSAPBS内にあり、BGBM及びPGBMの場合には、ゼラチンフィルムの上面がBSAPBSよりも上になるように、浸した。電極間の抵抗を1Hz~1kHzで走査すると、NBMの場合12kohm(1kHzで)~117kohm(1Hzで)、NBM及びBGBMの場合14kohm(1kHzで)~132kohm(1Hzで)という、抵抗と周波数の間に実質的に直線関係があることが分かった。このことは、NBMとBGBM又はPGBMの間には2kohm(1kHzで)及び15kohm(1Hzで)の差があることに対応し、後者の2つは比較的高い抵抗を一貫して示す。この差は6時間のインキュベーション後も変化は認められなかった。熱水(約45℃)中で洗浄することによりBGBM及びPGBMからゼラチンフィルムを除去した後、続けて同様の方法で抵抗を新しく走査すると、抵抗―周波数関係は、NBMのものと差が生じなかった。
【0042】
これらの実験結果から、電気的特性を測定することにより、ゼラチンを基質として備える本発明のバイオセンサーとこのゼラチンが完全に又は部分的に除去された対応するバイオセンサーの差が支持される。さらに、このようなバイオセンサーの電気的特性は、長時間にわたって安定であることが分かった。
【0043】
実施例3-MMP-2が誘導するゼラチンの分解
実施例2にしたがった実験を、BSAPBS-MMP2をBSAPBSの代わりに溶媒として使用したことのみを除いて繰り返した。この場合において、BGBM及びPGBMの両者の電気的特性は2時間インキュベーションした後のNBMのものと差がないことが明らかになった。したがって、MMP-2が存在するとBGBM及びPGBMの安定性が2時間未満に低減する(6時間を超える安定性が認められた実施例3と比較する)。
【0044】
一緒に取られたこの実施例と実施例2の実験結果から、電気的特性を測定することにより、ゼラチンを基質として備える本発明のバイオセンサーでバイオマーカーMMP-2が局所的環境に存在しない、第1の場合と、バイオマーカーMMP-2が局所的環境に存在する、第2の場合での差が支持される。
【0045】
本発明は、特定の実施例を参照して上述されてきた。しかしながら、上述したもの以外の他の実施例は本発明の範囲内に可能な限り等しい。本発明の異なる特性及びステップは、記載されたもの以外の組み合わせに組み合わせてもよい。本発明の範囲は、添付の特許請求項によってのみ制限される。
【0046】
より一般的に、当該技術分野における当業者は、本明細書において記載された全てのパラメーター、寸法、材料及び構成は例示を意図するものであり、実際のパラメーター、寸法、材料及び/又は構成は具体的な用途又は本発明の教示が使用される用途に依存するということを容易に理解する。
【0047】
実施形態の項目別表
1.体液、分泌液、又は滲出液中のバイオマーカーを検出するためのバイオセンサーであって、前記バイオセンサーは、第1の電極(100a)、第2の電極(100b)、電極コーティング(200)、及び機械的電極安定器(300)を備え、
-前記バイオマーカーは、化学反応を触媒する酵素であり、前記電極コーティング(200)の単一の又は複数の構成要素は、バイオマーカーと接触すると共有化学結合を切断することにより化学的に変更され、
-前記電極コーティング(200)は、前記バイオマーカーの天然又は合成基質を備え、
-前記第1の電極(100a)及び第2の電極(100b)は、導電性であり、前記機械的電極安定器(300)手段により互いに実質的に一定で均一な距離に保たれており、
-前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)の少なくとも1つの前記露出した導電性面は、前記電極コーティング(200)により実質的に完全に被覆されており、並びに、
-前記バイオセンサーは、前記電極コーティング(200)が前記バイオマーカーによって実質的に化学的に変更されていない、高インピーダンス状態と、前記電極コーティング(200)が前記バイオマーカーによって化学的に変更された、低インピーダンス状態を含む、状態の群の少なくとも1つの状態で存在する、バイオセンサー。
【0048】
2.前記機械的電極安定器(300)は、前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)のそれぞれの外面の第1の絶縁部分面(110a)及び第2の絶縁部分面(110b)に接着され、
-前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)のそれぞれの外面の第1の導電性部分面(120a)及び第2の導電性部分面(120b)は、前記電気絶縁界面を欠いた、導電性面であり、並びに
-前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)のそれぞれの導電性部分面(120a、120b)の少なくとも1つは、前記電極コーティング(200)により実質的に完全に被覆されている、請求項1に記載のバイオセンサー。
【0049】
3.前記体液、分泌液、又は滲出液は、組織の損傷に応答して体で産生した創傷滲出液又は創傷排出液である、請求項1~2のいずれかに記載のバイオセンサー。
【0050】
4.前記機械的電極安定器(300)は、前記創傷を保護するように適合される創傷被覆材(500)の一体部分であるか又は密接に一体化されている、請求項3に記載のバイオセンサー。
【0051】
5.前記酵素は、ゼラチナーゼ及びホスホリパーゼA2(PLA2)から成る酵素の群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【0052】
6.前記酵素は、マトリックスメタロプロテアーゼ-2(MMP2)であり、前記天然又は合成基質は、コラーゲンI、III、IV、V、VII及びX、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、アグリカン及びエラスチン又はこれらの混合物あるいは合成派生物から成る基質の群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【0053】
7.前記酵素は、ホスホリパーゼA2(PLA2)であり、前記天然又は合成基質は、グリセロール骨格を有するリン脂質又はこれらの混合物あるいは合成派生物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【0054】
8.前記第1の電極(100a)又は前記第2の電極(100b)の導電性は、金属、元素状炭素及び導電性有機ポリマーから成る導体の群から選択される電気伝導体の存在に、完全に又は部分的に、由来されることができる、請求項1~7のいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【0055】
9.前記機械的電極安定器(300)は、セルロース、化学的に修飾されたセルロース、有機ポリマー、ガラス繊維、シリコン、熱可塑性物質又はこれらの組み合わせから実質的に成る、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオセンサー。
【0056】
10.請求項1~9のいずれか一項に記載のバイオセンサー、創傷を保護するように適合される創傷被覆材(500)、前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)に電気的に接続され、前記第1の電極(100a)及び前記第2の電極(100b)の間のインピーダンス又は抵抗を連続的に又は定期的に測定するように適合されるインピーダンス読み取りユニット(600)、及び前記インピーダンス読み取りユニット(600)に接続され、そのインピーダンス又は抵抗データを単一又は複数のプリセット限界値と比較して前記プリセット限界値を満たすか超えると警告信号を出力するように適合されるプロセッサユニット(700)を備える、診断用創傷被覆システム。
【0057】
11.前記創傷又はその隣接する周囲の温度を測定するよう適合される温度センサー(800)をさらに備え、前記温度センサー(800)は、警告信号の前記出力の基礎としてそれにさらに入力を提供するために前記プロセッサユニット(700)に接続される、請求項10に記載の診断用創傷被覆システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7