(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】混合済硬化型ジョイントコンパウンドにおける石膏シードの形成を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/14 20060101AFI20230412BHJP
B28C 7/04 20060101ALI20230412BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20230412BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20230412BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20230412BHJP
C04B 22/16 20060101ALI20230412BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20230412BHJP
C09J 1/00 20060101ALI20230412BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230412BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C04B28/14
B28C7/04
C04B14/10 Z
C04B22/08 Z
C04B22/14 A
C04B22/16 A
C04B24/12 A
C09J1/00
C09K3/10 Q
E04F13/02 K
(21)【出願番号】P 2020524884
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 US2018058939
(87)【国際公開番号】W WO2019094297
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-06
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】ガイ・エル・ローゼンタール
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・ジェイ・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】タイラー・キンケード
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・スクルード
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】ソ連国特許発明第01180362(SU,A)
【文献】特表2008-532897(JP,A)
【文献】特開平08-060139(JP,A)
【文献】特表2013-518795(JP,A)
【文献】特開昭59-227965(JP,A)
【文献】国際公開第2008/115929(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102712536(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1155871(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
B28C 7/04
C09J 1/00
C09K 3/10
E04F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合済硬化型ジョイントコンパウンドにお
いて貯蔵及び輸送中に硬化反応を制御し
且つ石膏シードの形成を抑制するための方法であって、
少なくとも焼石膏、水、少なくとも1つの非カルシ
ウムリン酸塩化合物、ならび
に少なくとも1つの金属イオン制御剤を混合し、それにより石膏シードの形成が抑制された混合済硬化ジョイントコンパウンドを得ることを含み、
前記金属イオン制御剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウム、エデト酸ナトリウムカルシウム、ヒドロキシ-エチル-エチレン-ジアミン三酢酸(HEDTA)、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸三ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記金属イオン制御剤は
、焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され、
前記非カルシウムリン酸塩化合物が、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸カリウム一塩基性、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記少なくとも1つの非カルシ
ウムリン酸塩化合物は
、焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用される、方法。
【請求項2】
前記方法がさらに、
カドミウム化合物、鉛化合物および/または亜鉛化合物を含む第1の硬化活性剤と、第一鉄化合物、アルミニウム化合物および/またはマンガン化合物を含む第2の硬化活性剤とをともにブレンドし、それにより硬化活性剤ブレンドを得ることと、
前記硬化活性剤ブレンドを前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドと混合し、それにより前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドの前記硬化反応を開始すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の硬化活性剤が酸化亜鉛、水酸化亜鉛および/または亜鉛塩であり、前記第2の硬化活性剤が酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび/またはアルミニウム塩である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の硬化活性剤が硫酸亜鉛であり、前記第2の硬化活性剤が
アルムであり、前記硫酸亜鉛および
アルムが、硫酸亜鉛対
アルムの乾燥重量で、3:1~1:1の範囲の比率で使用され、前記硬化活性剤ブレンドが、前記混合済硬化型ジョイントコンパウンド中の乾燥成分の0.5重量%~5重量%の範囲の量で、前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドと混合される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記金属イオン制御剤がジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを含み、前記非カルシ
ウムリン酸塩化合物がピロリン酸四カリウム(TKPP)および/またはピロリン酸四ナトリウム(TKPP)を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ラテックス結合剤、デンプン、またはそれらの任意の組み合わせを含む結合剤、炭酸カルシウム、雲母、タルク、粘土、
1,500~7,000の分子量を有する低分子量ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つが前記硬化型ジョイントコンパウンドとさらに混合される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の
硬化活性剤が硫酸亜鉛であり、前記第2の
硬化活性剤が
アルムであり、硫酸亜鉛対
アルムの比率が乾燥重量で3:1~1:1であり、前記ジョイントコンパウンドが炭酸カルシウムを含み、前記混合が40°F
(約4.4℃)~65°F
(約18.3℃)の範囲の温度で実施され、前記硬化活性剤ブレンドが、水を除いて、0.5~5重量%の量で前記混合済硬化ジョイントコンパウンドに添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
混合済硬化型ジョイントコンパウンドにおける硬化反応を制御し、石膏シードの形成を抑制するための方法であって、
少なくとも焼石膏、水、少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物、ならびにアミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む少なくとも1つの金属イオン制御剤を混合し、それにより石膏シードの形成が抑制された混合済硬化ジョイントコンパウンドを得ることを含み、
第1の硬化活性剤と、第2の硬化活性剤とをともにブレンドし、それにより硬化活性剤ブレンドを得ることと、
前記硬化活性剤ブレンドを前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドと混合し、それにより前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドの前記硬化反応を開始することと、を含み、
前記金属イオン制御剤は、焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され、
前記非カルシウムリン酸塩化合物が、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸カリウム一塩基性、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物は、焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され、
前記第1の硬化活性剤が硫酸亜鉛であり、前記第2の硬化活性剤が
アルムであり、前記硫酸亜鉛および
アルムが、硫酸亜鉛対
アルムの乾燥重量で、3:1~1:1の範囲の比率で使用され、前記硬化活性剤ブレンドが、前記混合済硬化型ジョイントコンパウンド中の乾燥成分の0.5重量%~5重量%の範囲の量で、前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドと混合される
、方法。
【請求項9】
混合済硬化型ジョイントコンパウンドにおける硬化反応を制御し、石膏シードの形成を抑制するための方法であって、
少なくとも焼石膏、水、少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物、ならびにアミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む少なくとも1つの金属イオン制御剤を混合し、それにより石膏シードの形成が抑制された混合済硬化ジョイントコンパウンドを得ることを含み、
第1の硬化活性剤と、第2の硬化活性剤とをともにブレンドし、それにより硬化活性剤ブレンドを得ることと、
前記硬化活性剤ブレンドを前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドと混合し、それにより前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドの前記硬化反応を開始することと、を含み、
前記金属イオン制御剤は、焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され、
前記非カルシウムリン酸塩化合物が、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸カリウム一塩基性、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物は、焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され、
前記第1の
硬化活性剤が硫酸亜鉛であり、前記第2の
硬化活性剤が
アルムであり、硫酸亜鉛対
アルムの比率が乾燥重量で3:1~1:1であり、前記ジョイントコンパウンドが炭酸カルシウムを含み、前記混合が40°F
(約4.4℃)~65°F
(約18.3℃)の範囲の温度で実施され、前記硬化活性剤ブレンドが、水を除いて、0.5~5重量%の量で前記混合済硬化ジョイントコンパウンドに添加される
、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏シードの硬化を防止するためのジョイントコンパウンドおよび方法に関する。本発明はまた、硬化型ジョイントコンパウンドを硬化および固化させるための速効性硬化剤および遅効性硬化剤のブレンド、ならびにこのブレンドを用いて硬化反応を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョイントコンパウンドは、一般に建物の建設に使用される。用途の1つは、2枚の石膏パネル間の継ぎ目を接合することである。通常、内壁は石膏パネル(ウォールボードとも呼ばれる)を間柱に取り付けることで作られる。次に、ジョイントコンパウンドを使用して、石膏パネル間の継ぎ目(ジョイントとも呼ばれる)を埋めてコーティングする。
【0003】
2種類のジョイントコンパウンドが知られている:硬化型ジョイントコンパウンドと乾燥型ジョイントコンパウンドである。硬化型ジョイントコンパウンドは、本開示では焼石膏と呼ばれることがある硫酸カルシウム半水和物を含む。硬化型ジョイントコンパウンドは、硫酸カルシウム半水和物(焼石膏)が水和して硫酸カルシウム二水和物(石膏)になる硬化反応により硬化する。
【0004】
硬化型ジョイントコンパウンドは、塗布前に水と混合される乾燥粉末として配合できる。乾燥粉末に水を加えると、焼石膏の石膏への変換が始まり、これがジョイントコンパウンドの硬化および固化を引き起こす。
【0005】
硬化型ジョイントコンパウンドは、すでに水と混合されている混合済硬化型ジョイントコンパウンドとして配合することもできる。混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、あらかじめ水と混合されているが、しかし、これらのコンパウンドは焼石膏が石膏に変換される硬化反応がなく、一定期間、棚に貯蔵できる。貯蔵および輸送中の硬化反応を抑制するために、混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、焼石膏が水和され石膏に変換される硬化反応を抑制する少なくとも1つの遅延剤を含む。米国特許第5,746,822号で提供されるような非カルシウムリン酸塩化合物、米国特許第4,661,161号で提供されるタンパク質性遅延剤およびキレート剤の組み合わせ、ならびに米国特許第5,779,786号で提供されるような低分子量ポリアクリレート等の、様々な硬化遅延剤が知られている。
【0006】
次に、硬化反応を開始させるために、活性剤が混合済硬化型ジョイントコンパウンドに添加される。United States Gypsum Companyに譲渡された米国特許第5,746,822号に提供されている硫酸亜鉛等の様々な活性剤が知られている。しかし、大量の硫酸亜鉛が必要になる場合や、硬化反応が非常にゆっくりと進行する場合があり得る。アルムを活性剤として使用する多くの試みもなされてきた。しかしながら、アルムは石膏系コンパウンド中に炭酸カルシウムを含む配合剤には適合しないとみなされているが、多くの硬化型ジョイントコンパウンドには炭酸カルシウムが含まれているため、アルムにより硬化反応を制御することは困難である。
【0007】
15℃未満の温度で硬化型ジョイントコンパウンドを使用する必要がある場合は、たとえ活性剤が添加されていても、これらの条件では硬化反応が非常に遅くなる得るため、硬化反応の制御がさらに困難になる可能性がある。
【0008】
したがって、当技術分野では、広範囲の硬化型ジョイントコンパウンドにおける硬化反応を制御するために使用できる硬化活性剤が依然として必要とされている。
【0009】
混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、通常、焼石膏の早過ぎる水和と硬化を防止する1つ以上の硬化遅延剤を含む。適切な硬化遅延剤には、米国特許第5,746,822号に開示されているもの等の非カルシウムリン酸塩化合物、米国特許第4,661,161号に提供されているタンパク質性遅延剤とキレート剤の組み合わせ、および米国特許第5,779,786号に開示されているもの等の低分子量ポリアクリレートが含まれる。
【0010】
シード硬化とは、通常はペースト状である硬化型ジョイントコンパウンド混合物における、石膏シードと呼ばれる石膏の塊の形成である。シード硬化は、遅延剤を含む硬化型ジョイントコンパウンドでも起こり得る。シード硬化は、硬化型ジョイントコンパウンドの作業性を阻害するため望ましくない。したがって、当技術分野において、シード硬化を防止または最小化する硬化型ジョイントコンパウンド配合剤が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
一態様では、本開示は、混合済硬化型ジョイントコンパウンドにおける硬化反応を制御し、かつ混合済硬化型ジョイントコンパウンドにおける石膏シードの形成を抑制する、方法を提供する。
【0012】
この方法は、少なくとも、焼石膏、水、少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物、ならびにアミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む少なくとも1つの金属イオン制御剤を混合し、それにより混合済硬化型ジョイントコンパウンドを得ることと、それにより石膏シードの形成が抑制された混合済硬化ジョイントコンパウンドを得ることとを含む。この方法では、金属イオン制御剤は、乾燥焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用することができ、少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物は、乾燥焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され得る。
【0013】
本方法は、カドミウム化合物、鉛化合物および/または亜鉛化合物を含む第1の硬化活性剤と、第一鉄化合物、アルミニウム化合物および/またはマンガン化合物を含む第2の硬化活性剤とをともにブレンドし、それにより硬化活性剤ブレンドを得ることと、硬化活性剤ブレンドを、混合済硬化型ジョイントコンパウンドと混合し、それにより、混合済硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を開始することとを、さらに含む。
【0014】
第1の硬化活性剤は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および/または亜鉛塩であり得る。第2の硬化活性剤は、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび/またはアルミニウム塩であり得る。いくつかの好ましい実施形態では、第1の硬化活性剤は硫酸亜鉛であり、第2の硬化活性剤はアルムである。いくつかの好ましい実施形態では、第1の硬化活性剤は硫酸亜鉛であり、第2の硬化活性剤はアルムであり、硫酸亜鉛およびアルムが、硫酸亜鉛対アルムの乾燥重量で、3:1~1:1の範囲の比率で使用される。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態では、第1の硬化活性剤は硫酸亜鉛であり、第2の硬化活性剤はアルムであり、硫酸亜鉛およびアルムが、硫酸亜鉛対アルムの乾燥重量で3:1~1:1の範囲の比率で使用され、さらに、硬化活性剤ブレンドは、混合済硬化型ジョイントコンパウンド中の乾燥成分の0.5重量%~5重量%の範囲の量で混合済硬化ジョイントコンパウンドと混合される。
【0016】
本方法において、非カルシウムリン酸塩化合物は、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸カリウム一塩基性、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0017】
本方法において、金属イオン制御剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸ナトリウムカルシウム、ヒドロキシ-エチル-エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸三ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0018】
本方法では、乾燥焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の金属イオン制御剤を使用することができる。本方法では、乾燥焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の非カルシウムリン酸塩化合物を使用することができる。
【0019】
本方法では、金属イオン制御剤は、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の量で、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを含むことができ、非カルシウムリン酸塩化合物は、乾燥焼石膏の重量に基づいて、ピロリン酸四カリウム(TKPP)を、約0.01重量%~約10重量%の量、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)を約0.01重量%~約10重量%の量、またはTKPPとTSPPの組み合わせを約0.01重量%~約10重量%の量で含むことができる。
【0020】
本発明の方法では、結合剤、炭酸カルシウム、雲母、タルク、粘土、低分子量ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを混合済硬化型ジョイントコンパウンドとさらに混合してもよい。
【0021】
硬化活性剤ブレンドと混合済硬化型ジョイントコンパウンドとの混合は、40°F~95°Fの範囲の温度で行うことができる。第1の活性剤は硫酸亜鉛であってよく、第2の活性剤はアルムであってよく、硬化型ジョイントコンパウンドは炭酸カルシウムを含み、混合は40°F~75°Fの範囲の温度で行われる。いくつかの実施形態において、第1の活性剤は硫酸亜鉛であり、第2の活性剤はアルムであり、硫酸亜鉛対アルムの比率は乾燥重量で3:1~1:1であり、硬化型ジョイントコンパウンドは炭酸カルシウムを含み、40°F~65°Fの範囲の温度で混合が行われ、その際、硬化活性剤ブレンドが、水を除いて、0.5重量%~5重量%の量で硬化型ジョイントコンパウンドに添加される。
【0022】
本開示のさらなる態様は、本発明の方法によって得られ、かつ焼石膏の重量に基づき、アミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む金属イオン制御剤を0.01重量%~10重量%含む、混合済硬化型ジョイントコンパウンドに関し、また、硬化ジョイントコンパウンドは、焼石膏の重量に基づき、0.01~10重量%の非カルシウムリン酸塩化合物をさらに含む。
【0023】
混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、金属イオン制御剤がジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸ナトリウムカルシウム、ヒドロキシ-エチル-エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸三ナトリウム、またはこれらの任意の組み合わせを含むコンパウンドを含む。混合済硬化型ジョイントコンパウンドには、非カルシウムリン酸塩化合物がヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸カリウム一塩基性、またはそれらの任意の組み合わせを含むコンパウンドが含まれる。金属イオン制御剤は、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを含むことができ、非カルシウムリン酸塩化合物は、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸四ナトリウムまたはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】添加された活性剤の量の関数としての硬化時間のプロットである。
【
図2】温度と添加された
アルム活性剤の量の関数としての硬化時間のプロットである。
【
図3】温度と添加した硫酸亜鉛の量の関数としての硬化時間のプロットである。
【
図4】温度と、
アルムと硫酸亜鉛のブレンドの添加量の関数としての硬化時間のプロットである。
【
図5A】DTPA五ナトリウムを含まない混合済硬化型ジョイントコンパウンドの写真である。
【
図5B】DTPA五ナトリウムを含むMIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドの写真である。
【
図6A】DTPA五ナトリウムを含まない混合済硬化型ジョイントコンパウンドの基材への塗布を示す写真である。
【
図6B】DTPA五ナトリウムを含むMIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドの基板への塗布を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
一態様では、本開示は、2つの硬化活性剤のブレンドを提供する。このブレンドは、広範囲の温度で混合済硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御するのに適している。
【0026】
「硬化活性剤」という用語は、カルシウムイオンキレート剤を含むジョイントコンパウンドにおける硫酸カルシウム半水和物の硬化反応を活性化、加速、または、そうでなければ速度を増すことができる化合物を指す。硬化活性剤は、カルシウムよりも高いlog K値を有するカチオンを含む化合物であり、「K」はキレート化反応の平衡定数である。硬化活性剤として作用し得る化合物は、第二鉄、水銀、第二銅、ニッケル、コバルト、カドミウム、鉛、亜鉛、第一鉄、アルミニウム、およびマンガンのカチオンのいずれかを含み得る。
【0027】
本開示で提供される2つの硬化活性剤のブレンドは、第1の硬化活性剤および第2の硬化活性剤を含む。第1の硬化活性剤は、カドミウム、鉛および/または亜鉛のカチオンのいずれかを含む化合物から選択されてもよい。適切な第1の活性化合物は、塩、酸化物および/または水酸化物の形態であってよい。第1の硬化活性剤として特に好ましいのは、亜鉛カチオンを含む化合物である。そのような亜鉛化合物には、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および亜鉛塩が含まれるが、これらに限定されない。適切な塩としては、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、塩素酸亜鉛、硫酸亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、クロム酸亜鉛、および酢酸亜鉛が挙げられるが、これらに限定されない。第1の活性剤として特に好ましいのは、硫酸亜鉛である。硫酸亜鉛の一般的な化学式はZnSO4である。しかしながら、本開示における「硫酸亜鉛」という用語は、硫酸亜鉛七水和物等の、3種の硫酸亜鉛水和物のいずれも含むことが理解されよう。
【0028】
ブレンド中の第2の活性剤は、第一鉄、アルミニウムおよび/またはマンガンのカチオンのいずれかを含む化合物から選択することができる。適切な第2の活性剤化合物は、塩、酸化物および/または水酸化物の形態であってよい。第2の活性剤として特に好ましいのは、アルミニウムを含む化合物である。そのようなアルミニウム化合物には、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよびアルミニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。適切な塩には、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、および硫酸アルミニウムカリウムが含まれるが、これらに限定されない。第2の活性剤として特に好ましいのは、硫酸アルミニウムである。この開示において、「硫酸アルミニウム」という用語は、「アルム」という用語と互換的に使用される。アルムとも呼ばれる硫酸アルミニウムの化学式はAl2(SO4)3である。「硫酸アルミニウムまたはアルム」という用語は、無水硫酸アルミニウム、および硫酸アルミニウム18水和物等の硫酸アルミニウム水和物も含むことが理解されよう。
【0029】
第1の活性剤と第2の活性剤のブレンドは、1)カドミウム化合物、鉛化合物および/または亜鉛化合物から選択される少なくとも1つの化合物と、2)第一鉄化合物、アルミニウム化合物および/またはマンガン化合物から選択される少なくとも1つの化合物とを、含むことができる。ブレンドにおいて、第1の活性剤対第2の活性剤の比率は変動し得、第1の活性剤対第2の活性剤は、重量で99:1~1:99の範囲であり得る。
【0030】
本開示の硬化活性剤ブレンドは、硬化型ジョイントコンパウンドにおける硬化反応を活性化するのに十分な任意の量で使用することができる。典型的には、これらのブレンドは、乾燥成分(水を除く)の重量に基づいて、硬化型ジョイントコンパウンドの0.5%~5%の量で使用できる。
【0031】
本開示のいくつかのブレンドは、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および/または亜鉛塩および第一鉄化合物、アルミニウム化合物および/またはマンガン化合物を含み得る。
【0032】
本開示の少なくともいくつかのブレンドは、第1の活性剤として、酸化亜鉛、水酸化亜鉛および/または亜鉛塩、ならびに第2の活性剤として酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび/またはアルミニウム塩を含み得る。
【0033】
本開示のいくつかのブレンドは、カドミウム化合物、鉛化合物および/または亜鉛化合物、ならびに酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび/またはアルミニウム塩のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0034】
本開示のいくつかのブレンドは、亜鉛塩および酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび/またはアルミニウム塩を含み得る。
【0035】
本開示の好ましい硬化活性剤ブレンドは、第1の活性剤としての硫酸亜鉛および第2の活性剤としての硫酸アルミニウムを含み、含有し、本質的にそれらからなり、またはそれらからなってもよい。ブレンドにおいて、第1の活性剤対第2の活性剤の比率は変動し得、第1の活性剤対第2の活性剤の乾燥重量で99:1~1:99の範囲であり得る。硫酸亜鉛対硫酸アルミニウムの最も好ましい範囲は、硫酸亜鉛対硫酸アルミニウムの乾燥重量で3:1~1:1の範囲にある。これらの好ましい硬化活性剤ブレンドは、水を除いた乾燥成分の重量により、硬化型ジョイントコンパウンドの0.5%~5%の量で使用することができる。
【0036】
本開示の硬化活性剤ブレンドは、硬化遅延剤を含んで、または含まずに配合された任意の硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御するために使用することができる。本開示の硬化活性剤ブレンドは、遅延剤とともに配合された混合済硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御するために使用できる。本開示の硬化活性剤ブレンドは、乾燥粉末として配合され、使用中に水と混合される硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御するためにも使用することができる。これらの乾燥粉末硬化型ジョイントコンパウンドは、遅延剤を含んでも、含まなくてもよい。本開示の硬化活性剤ブレンドが、遅延剤を含まない硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御するために使用される場合、活性剤ブレンドは、発泡を防ぎ、硬化反応を促進するための促進剤として使用される。
【0037】
本開示の硬化活性剤ブレンドは、少なくとも1つの硬化遅延剤を含む混合済硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御するのに特に有用である。そのような硬化遅延剤は、カルシウムキレート剤を含み得る。硬化遅延剤は、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、および/またはリン酸カリウム一塩基性等の、非カルシウム含有リン酸塩のいずれかであり得る。他の硬化遅延剤は、SUMA硬化遅延剤などのタンパク質性遅延剤を含み得る。硬化遅延剤はまた、アクリル酸およびアクリルアミドモノマー単位を含むコポリマー組成物、またはアクリル酸ホモポリマーとアクリルアミドホモポリマーのブレンド等の、低分子量ポリアクリレートなどの低分子量ポリマーのいずれかを含み得る。
【0038】
本開示の硬化活性剤ブレンドは、任意の有用な量で別々にまたは互いに組み合わせて使用し得る硬化遅延剤(非カルシウム含有リン酸塩、タンパク質性遅延剤、低分子量ポリマー)のいずれかを含む硬化型ジョイントコンパウンドの中で、硬化反応を制御するために使用され得る。
【0039】
本開示の硬化活性剤ブレンドは、アルファ-半水和形態の硫酸カルシウム、ベータ-半水和物形態の硫酸カルシウム、合成硫酸カルシウム半水和物、およびそれらの任意の組み合わせを含む化合物、複合体等の、任意の硫酸カルシウム半水和物を含む硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御するために使用できる。
【0040】
本開示の硬化活性剤ブレンドは、混合済または乾燥粉末ライトまたは従来の重量硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御するために使用することができる。適切なコンパウンドには、炭酸カルシウム、雲母、タルクおよび/または粘土を含むものが含まれる。
【0041】
本願の硬化活性剤ブレンドは、特定の事業を完了するために必要な時間と、硬化型ジョイントコンパウンドがその事業において使用される予定の温度に応じた建設現場での求めに応じて設定できる硬化時間の選択肢を提供する。
【0042】
硬化型ジョイントコンパウンドの硬化時間は、硬化型ジョイントコンパウンドが固化する温度に依存する。典型的には、硬化反応はより低い温度でよりゆっくりと進行する。したがって、気温が60°F未満の寒い月に完了するウォールボード設置計画と、温度が60°Fを超える夏の月に完了する同様の設置計画では、硬化時間に変動が生じる可能性がある。いくつかの状況下では、硬化型ジョイントコンパウンドにおける硬化反応は、50°Fより低い温度では先行技術の活性剤では満足に完了することができない。
【0043】
本硬化活性剤ブレンドにより提供される技術的利点の1つは、これらのブレンドが、40°F~60°Fの範囲のより低い温度での硬化反応の速度を速めることができることである。そのため、気温の季節変動があっても、設置事業は同じスケジュールで進めることができる。このように、硬化活性剤ブレンドにより、重要な労働力と材料コストが節約される。
【0044】
図1を参照すると、添加された硬化活性剤の量の関数として、混合済硬化型ジョイントコンパウンドの硬化時間を報告している。混合済硬化型コンパウンドは、硬化遅延剤を含む。硬化時間は分単位で測定される。添加される活性剤の量は、水が除外された、ジョイントコンパウンド中の乾燥成分の質量に対する質量%で表される。対照として、硫酸亜鉛が、タルクを含む硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応の開始(曲線1)、および炭酸カルシウムを含む硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応の開始(曲線2)についても試験される。別の対照として、タルクを含む硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応の開始について
アルムが試験される(曲線6)。
アルムによる硬化反応は、硫酸亜鉛による反応よりもはるかに速く進行する(曲線2と曲線6を比較)。予期せぬことに、硫酸亜鉛と
アルムのブレンドによる様々な硬化反応において相乗的な反応速度が明らかにされる。この相乗効果は、タルクを含む硬化型コンパウンド(曲線3を参照)と炭酸カルシウムを含む硬化型コンパウンド(曲線4を参照)の両方で観察される。硬化反応の速度は、硫酸亜鉛と
アルムの比率を変えることで厳密に制御できる(硫酸亜鉛と
アルムの3:1の比率についての硬化反応の曲線3を、硫酸亜鉛と
アルムの2:1比率の硬化反応の曲線5と比較せよ)。
【0045】
図2を参照すると、タルクと硬化遅延剤を含む混合済硬化型ジョイントコンパウンドの温度の関数として硬化時間が報告されている。これらのコンパウンドでは、40°F(曲線1)、75°F(曲線2)、または95°F(曲線3)で様々な量の
アルムで硬化反応が開始された。75°Fまたは95°Fで行われる硬化反応に大きな違いはない(それぞれ曲線2および3)が、40°Fでは硬化反応が大幅に抑制される(曲線1)。それでも、使用される
アルムの量を増やすことで、60分の硬化時間を達成できる。
【0046】
図3を参照すると、タルクと硬化遅延剤を含む混合済硬化型ジョイントコンパウンドについて硬化時間が温度の関数として報告されている。これらのコンパウンドでは、40°F(曲線1)、75°F(曲線2)または95°F(曲線3)で様々な量の亜鉛により硬化反応が開始された。
アルムとは異なり、硫酸亜鉛は40°Fでは効率的に硬化反応を開始しない(曲線1)。硫酸亜鉛が硬化型ジョイントコンパウンドの乾燥成分の重量に対して2重量%未満の量で使用される場合、75°F(曲線2)と95°F(曲線3)で行われる硬化反応の速度にも有意差が観察される。
【0047】
図4を参照すると、炭酸カルシウムと硬化遅延剤を含む混合済硬化型ジョイントコンパウンドについて硬化時間が温度の関数として報告されている。これらのコンパウンドでは、40°F(曲線1)、75°F(曲線2)または95°F(曲線3)で、硫酸亜鉛と
アルムのそれぞれ3:1の比率のブレンドにより硬化反応が開始された。
アルムとは異なり、硫酸亜鉛は40°Fで効率的に硬化反応を開始しない(曲線1)。硫酸亜鉛単独とは異なり、硫酸亜鉛と
アルムのブレンドは、40°Fで非常に効率的に硬化反応を活性化する(曲線1)。このブレンドはまた、硫酸亜鉛単独よりも少ない量で非常に効率的に機能する。重要なことに、ブレンド中の活性剤の1つが
アルムであるときですら、炭酸カルシウムが硬化型調合剤に存在する場合に、有意な有害反応は観察されなかった。これは、
アルムのみで行われる反応よりも大幅な改善である。
【0048】
図1~
図4に関連して、ヴィカー(Vicat)硬化時間は、活性剤(または活性剤ブレンド)が混合済硬化型ジョイントコンパウンドに添加された瞬間から、硬化型ジョイントコンパウンドが固体化または固化するのに必要な時間である。硬化時間は、硬化型ジョイントコンパウンド混合物の表面に垂直に保持され、混合物がまだ固体化または固化していない場合は、混合物中に自重のため沈むヴィカー針で測定される。
【0049】
本開示の硬化活性剤ブレンドは、2つの活性剤、第1のパッケージのカドミウム化合物、鉛化合物および/または亜鉛化合物から選択された第1活性剤、および第2のパッケージの第一鉄化合物、アルミニウム化合物、および/またはマンガン化合物から選択された第2活性剤、を含むキットとして販売されてもよい。キットはさらに取扱説明書を含み得る。取扱説明書は電子形式にすることができる。取扱説明書は、1)使用時の建設現場の温度。および/または2)必要な硬化時間のパラメータの少なくとも1つに応じて、ブレンドで使用される第1の活性剤および第2の活性剤の量を提供する図表を含み得る。
【0050】
一態様では、本開示は、第1のパッケージに硫酸亜鉛を含み、第2のパッケージにアルムを含むキットを提供する。キットはさらに、様々な温度で必要な硬化時間を達成するために硫酸亜鉛とアルムをブレンドすることができる比率を記載した取扱説明書を含むことができる。
【0051】
別の態様では、本開示は、広範囲の温度で硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御する方法を提供する。この方法では、硬化反応は、本開示の硬化活性剤ブレンドのいずれかで制御される。適切なジョイントコンパウンドには、少なくとも1つの遅延剤を含む混合済型硬化ジョイントコンパウンドが含まれる。遅延剤は、カルシウムを含まないリン酸塩化合物を含み得る。
【0052】
さらなる態様において、本開示は、硫酸亜鉛とアルムのブレンドを用いて、幅広い温度範囲で、混合済硬化型ジョイントコンパウンド等の硬化型ジョイントコンパウンドの硬化反応を制御する方法を提供する。この方法では、硫酸亜鉛とアルムは、硫酸亜鉛対アルムの乾燥重量で3:1~2:1の範囲の比率でともにブレンドされる。次に、ブレンド剤は、水を除いて、硬化型ジョイントコンパウンドの0.5重量%~3重量%の量で使用される。この方法は、約40°F~約95°Fの範囲の温度で実行することができる。この方法は、少なくとも1つの遅延剤を含む混合済硬化型ジョイントコンパウンド等の、様々な硬化型ジョイントコンパウンドで実施することができる。遅延剤は、カルシウムを含まないリン酸塩化合物、低分子量ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせであってよい。この方法は、パーライト、発泡パーライト、バーミキュレート、またはこれらの任意の組み合わせを含む、混合済または乾燥粉末従来型、または軽量硬化型ジョイントコンパウンドで実行できる。
【0053】
「シード硬化」とは、貯蔵および輸送中、および/または乾燥成分が水と混合されるときに、他の部分では均質な混合済硬化型ジョイントコンパウンドのペースト中に石膏凝集体(以下、石膏シードと呼ぶ)が形成されることである。「硬化型ジョイントコンパウンド」とは、焼石膏を含むコンパウンドを意味することが理解されよう。さらに、「混合済硬化型ジョイントコンパウンドまたは混合済硬化型コンパウンド」とは、焼石膏、水、および焼石膏を水和して石膏にする硬化反応の少なくとも1つの遅延剤を含むジョイントコンパウンドを意味する。そのような硬化遅延剤は、カルシウムキレート剤を含み得る。硬化遅延剤は、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウムおよび/またはリン酸カリウム一塩基性等の、カルシウムを含まないリン酸塩のいずれかを含み得る。他の硬化遅延剤には、SUMA硬化遅延剤などのタンパク質性遅延剤が含まれる。硬化遅延剤はまた、アクリル酸およびアクリルアミドモノマー単位を含むコポリマー組成物、またはアクリル酸ホモポリマーとアクリルアミドホモポリマーのブレンド等の、低分子量ポリアクリレートなどの任意の低分子量ポリマーを含み得る。
【0054】
図5Aを参照すると、これは、一定期間棚に貯蔵された後の、混合済硬化型ジョイントコンパウンドの写真である。石膏シード(10)がコンパウンド内に見られる。
図5Aの右上隅には、混合済硬化型ジョイントコンパウンドから分離された2つの石膏シード(10)も示されている。石膏シードのサイズは変化し得るが、典型的には、石膏シードは、直径が約2mm~約1cmであり得る。
【0055】
硬化型ジョイントコンパウンドで石膏シードが形成されると、石膏シードは容易に溶解することができない。次に、石膏シードは、例えば、コンパウンドを基材に塗布できる前に、濾過またはふるいにかけることにより、混合済硬化型ジョイントコンパウンド混合物から除去する必要がある。この点は
図6Aに示され、石膏シードを含む混合済硬化型ジョイントコンパウンドを塗布すると、石膏シード(10)によって生じる空隙(20)を有する不均一な表面が生じることを示している。したがって、シード硬化は、貯蔵および輸送中の混合済硬化型ジョイントコンパウンドの不均一化および早過ぎる固化の原因となる可能性があるため、望ましくない。塗布により均一な表面が得られるため、石膏シードを含むコンパウンドを基材に塗布することも困難である。また、石膏シードがミキサーを詰まらせる可能性があるため、現場で、乾燥粉末硬化型ジョイントコンパウンドと水を混合している間は、シード硬化を避ける必要がある。
【0056】
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、シード硬化は、鉄、アルミニウム、亜鉛および他のいくつか等の金属イオンによって引き起こされ得ると考えられている。そのような金属イオンは、しばしば、ジョイントコンパウンドの製造に使用される水の、および/またはジョイントコンパウンドの製造に使用される他の成分の、例えば炭酸カルシウムおよび/または焼石膏の、汚染物質として存在する。
【0057】
さらなる態様において、本開示は、貯蔵中および/または乾燥粉末硬化型ジョイントコンパウンドを水と混合する間、石膏シードの形成が最小限に抑えられる、ジョイントコンパウンド配合物、特に混合済硬化型ジョイントコンパウンドを提供する。
【0058】
本混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、アミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む少なくとも1つの金属イオン制御剤を含む。これらの薬剤は、本開示ではMIC薬剤と呼ばれる。アミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む少なくとも1つのMIC剤を含む、混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、本開示ではMICジョイントコンパウンドと呼ばれる。この開示によるMICコンパウンドは、焼石膏、水、少なくとも1つの硬化遅延剤および少なくとも1つのMIC剤を含む。予期せぬことに、MICジョイントコンパウンドでは、石膏シードの形成が最小になる、遅くなる、または完全に防止されることが見出された。
【0059】
本開示によれば、MICジョイントコンパウンドで使用される1つの好ましい金属イオン制御(MIC)剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)および/またはその塩、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムまたはジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウムなどを含む。他の適切なMICアミノポリカルボン酸剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)および/またはその塩、例えばエデト酸ナトリウムカルシウムが含まれる。また、ヒドロキシ-エチル-エチレン-ジアミン三酢酸(HEDTA)およびその塩、例えば、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸三ナトリウムが含まれる。
【0060】
これらのアミノポリカルボン酸化合物のいくつかは、Dow Chemical Companyから水溶液として、VERSENEX(商標)80キレート剤(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムの水溶液を含む)、VERSENE(商標)100キレート剤(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムの水溶液を含む)、およびVERSENOL(商標)120キレート剤(N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸三ナトリウムの水溶液を含む)の商品名で、入手可能である。
【0061】
予期せぬことに、アミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む金属イオン制御剤と混合済硬化型ジョイントコンパウンドを配合すると、他のイオンキレート剤、例えば非カルシウムリン酸塩化合物などと配合された、混合済硬化型ジョイントコンパウンドで通常観察されるシード硬化反応を、防止、減少、または抑制する可能性があることが発見された。
【0062】
図5Bを参照すると、これは、MIC剤ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを含むMIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドの写真である。DTPAまたはその他のMIC剤を使用せずに配合され、石膏シード(10)が目立つ
図5Aの混合済硬化型ジョイントコンパウンドと比較すると、石膏シードの形成は検出されない。
【0063】
図6Bは、MIC剤ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを含むMIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドが基材に塗布されると、石膏シードが空隙(20)および不均一な表面を生じさせている、
図6Aに示す混合済硬化型ジョイントコンパウンドの塗布を上回る技術的利点を提供する滑らかなモノリート(monolete)表面を生成することを示す写真である。
【0064】
この開示における好ましいMIC剤には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)および/またはその塩、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムまたはジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウムなどが含まれるが、これらに限定されない。他の適切なMIC剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)および/またはその塩、例えばエデト酸ナトリウムカルシウムなど、また、ヒドロキシ-エチル-エチレン-ジアミン三酢酸(HEDTA)およびその塩、例えば、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸三ナトリウム、が含まれる。
【0065】
MIC混合済硬化型ジョイントコンパウンド混合物中のMIC剤の総量は、石膏、水および/または他の成分の供給源に応じて調整することができる。金属汚染、特に鉄によるものが多い配合剤では、MIC剤をより多く使用する必要がある。
【0066】
典型的には、乾燥焼石膏重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%のMIC剤が使用される。例えば、100gの乾燥焼石膏当たり約0.01g~約10gのMIC剤を使用することができる。好ましくは、乾燥焼石膏重量のパーセンテージとして計算して、約0.1重量%~約5重量%のMIC剤を使用することができる。
【0067】
本開示における「約」という用語は、値のプラス/マイナス10%、好ましくは値のプラス/マイナス1%を意味する。例えば、約100は100±10、好ましくは100±1を意味する。
【0068】
好ましくは、MIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、MIC剤としてDTPAおよび/またはその任意の塩を含む。より好ましくは、MIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを含む。
【0069】
好ましくは、MIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、乾燥焼石膏の重量からのパーセンテージとして、約0.01重量%~約10重量%のDTPAおよび/またはその塩、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム(本開示ではDTPA五ナトリウムと略される場合がある)を含む。いくつかの実施形態では、乾燥焼石膏の重量からのパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約1重量%のDTPAおよび/またはジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを使用してもよい。
【0070】
MIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、焼石膏または化粧漆喰とも呼ばれる硫酸カルシウム半水和物で調製される。これらのMICジョイントコンパウンドは、硬化型ジョイントコンパウンドである。好ましいMICジョイントコンパウンドには、焼石膏、水および石膏硬化遅延剤を含む混合済ジョイントコンパウンドが含まれる。
【0071】
典型的には、MICジョイントコンパウンドは、水を含むジョイントコンパウンド組成物の総重量に基づいて30重量%~90重量%の焼石膏を含む。好ましくは、MICジョイントコンパウンドは、水を含むジョイントコンパウンド組成物の総重量に基づいて、40重量%~85重量%の焼石膏を含む。より好ましくは、MICジョイントコンパウンドは、水を含むジョイントコンパウンド組成物の総重量の45%~80%の焼石膏を含む。
【0072】
水と混合される場合、MICジョイントコンパウンドは、MICジョイントコンパウンドの総重量に基づいて、約20重量%~約50重量%の水を含み得る。
【0073】
MICジョイントコンパウンドはまた、炭酸カルシウム、石灰石、パーライト、発泡パーライト、タルクおよび/または雲母のうちの1つ以上を含み得る。存在する場合、これらの成分は、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約1重量%~約40重量%の量で使用され得る。アタパルジャイト粘土などの粘土は、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約1重量%~約10重量%の量で使用することができる。
【0074】
MICジョイントコンパウンドは、ラテックス結合剤および/またはデンプンなどの1つまたは複数の結合剤を含む。典型的には、焼石膏の乾燥重量に基づいて、約1%重量~約20重量%の結合剤が使用され得る。例えば、100gの乾燥焼石膏が使用される場合、結合剤の量は、約1g~約20gの範囲であり得る。
【0075】
MICジョイントコンパウンド混合物中の他の成分は、増粘剤、pH安定剤、殺生物剤、消泡剤、防腐剤および/または湿潤剤のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、これらの成分のそれぞれは、水を除いて、ジョイントコンパウンドの約0.01重量%~約10重量%を構成する。
【0076】
MICジョイントコンパウンドは、ポリアクリレートポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、ポリアクリレート/ポリアクリルアミドコポリマーまたはそれらの任意の混合物を含む少なくとも1つの低分子量ポリマーを含み得る。低分子量ポリマーの分子量は、約1,500~約7,000、より好ましくは約1,700~約6,500の範囲である。典型的には、低分子量ポリマーは、焼石膏の乾燥重量に基づいて、約0.5重量%~約20重量%の低分子量ポリマーの量で使用される。より好ましくは、焼石膏の乾燥重量に基づいて、約0.5重量%~約10重量%の低分子量ポリマーが使用される。
【0077】
好ましくは、MICジョイントコンパウンドは、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸カリウム一塩基性またはそれらの任意の組み合わせを含み得る少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物を含む。典型的には、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の非カルシウムリン酸塩化合物を使用することができる。
【0078】
本開示のMICジョイントコンパウンドにおいて、好ましい非カルシウムリン酸塩化合物は、ピロリン酸テトラカリウム(TKPP)、ピロリン酸テトラナトリウム(TSPP)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。TKPPおよび/またはTSPPは、硬化反応を防止するのに必要な任意の量で、典型的には、乾燥焼石膏の重量に基づいて約0.01重量%~約10重量%で使用することができる。TKPPは、Innophos,Inc.,New Jerseyから60%の溶液として購入できる。
【0079】
本開示のMIC硬化型ジョイントコンパウンドは、混合済みとして製造できる。MIC剤は、石膏シードの硬化反応を防止する際に非カルシウムリン酸塩化合物と相乗的に作用することが発見された。MIC剤は、混合済硬化型ジョイントコンパウンドの貯蔵中および/または乾燥粉末硬化型ジョイントコンパウンドが水と混合されている間、石膏シードの形成を抑制または低減する。
【0080】
本開示によるMIC剤混合済硬化型ジョイントコンパウンドの1つの好ましい配合剤は、DTPAおよび/またはその塩、例えばDTPA五ナトリウム、およびTKPPを含む硬化遅延剤 を含む。これらのジョイントコンパウンドにおいて、DTPAまたはその塩は、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され得る。TKPPは、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の量で使用することができる。
【0081】
本開示によるMIC剤混合済硬化型ジョイントコンパウンドの別の好ましい配合剤は、DTPAおよび/またはその塩、例えばDTPA五ナトリウム、およびTSPPを含む硬化遅延剤を含む。これらのジョイントコンパウンドにおいて、DTPAまたはその塩は、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され得る。TSPPは、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され得る。
【0082】
本開示によるMIC剤混合済硬化型ジョイントコンパウンドのさらに別の好ましい配合剤は、DTPAおよび/またはその塩、例えば、DTPA五ナトリウム、ならびにTKPPおよびTSPPの組み合わせを含む硬化遅延剤を含む。これらのコンパウンドにおいて、DTPAまたはその塩は、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され得る。TKPPおよびTSPPの合計は、乾燥焼石膏の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%の量であり得る。TKPPとTSPPは同じ比率で使用することも、2つのうちの1つを他のものの量よりも多く使用することもできる。TKPPとTSPPの比率は、それぞれ1:100~100:1の範囲にすることができる。
【0083】
他の態様では、アミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む少なくとも1つのMIC剤を、乾燥粉末の従来型または軽量硬化型ジョイントコンパウンドと水を混合する間にミキサーに添加することができる。これにより、ミキサーでの石膏シード硬化反応が防止される。そのようなシード硬化反応は、汚染金属イオン、特に鉄イオンによって引き起こされる可能性がある。金属イオンの供給源は水、および焼石膏、炭酸カルシウム、他の成分中の汚染物質、および/または金属ミキサー自体の酸化であり得る。
【0084】
硬化型ジョイントコンパウンド混合物に添加されるMIC剤の総量は、焼石膏、水および/または他の成分の供給源に応じて調整することができる。典型的には、ミキサー中の乾燥焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%のMIC剤を使用することができる。
【0085】
本開示のMIC剤混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、表1に示す以下の成分を含み得る。成分の一般的な範囲も表1にリストされている。
【0086】
【0087】
表1に示すように、MIC混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、乾燥焼石膏100gあたり0.01g~10gの非カルシウムリン酸塩化合物、すなわちTKPP、および0.01g~10gのMIC剤、すなわちDTPAを含むことができる。このコンパウンドは、乾燥焼石膏100gあたり25g~100gの水で配合できる。
【0088】
混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、典型的には、約7.5~約10の範囲のpHを有する。この開示で提供されるMIC剤は金属イオンキレート剤であり、その機能はpHに依存する。本開示で提供されるMIC剤、特にDTPAおよびその塩は、室温(21℃)で測定したとき、約7.5~約10の範囲のpHを含む、広範囲のpHにおいて、MIC混合済硬化型ジョイントコンパウンド中での石膏シードの形成を防止することができる。
【0089】
さらなる実施形態において、本開示は、混合済硬化型ジョイントコンパウンド混合物における石膏シードの形成を防止するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は、混合済硬化型ジョイントコンパウンドの製造中に、本開示で提供される1つまたは複数のMIC剤を添加することを含む。典型的には、乾燥焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、0.01重量%~10重量%のMIC剤を加えることができる。1つ以上のMIC剤を含むこれらの混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、MIC剤を含まない混合済硬化型ジョイントコンパウンドよりも長い貯蔵寿命を有し、より少量の石膏シードしか形成しないことが発見された。
【0090】
この技術的優位は、
図5A(MIC剤を含まない混合済硬化型ジョイントコンパウンド)を
図5B(DTPA五ナトリウムなどのMIC剤を含むMIC混合済硬化型ジョイントコンパウンド)と比較することによって、またMIC剤を含まない混合済硬化型ジョイントコンパウンドの基材への塗布(
図6A)と、同じ基材へのMIC剤(DTPA五ナトリウム)を含むMICジョイントコンパウンドの塗布(
図6B)とを比較することによっても示されている。
【0091】
他の方法は、乾燥粉末硬化型ジョイントコンパウンドが水および他の成分と混合されるときに、1つ以上のMIC剤をミキサーに加えることを含む。典型的には、乾燥焼石膏の重量に基づいて、0.01重量%~10重量%のMIC剤を添加することができる。
【0092】
他の方法は、1つ以上のMIC剤を、混合済硬化型ジョイントコンパウンドに加えることを含む。この方法では、ジョイントコンパウンドが機能する使用時間が長くなる。通常、乾燥焼石膏の重量に基づいて、0.01重量%~10重量%のMIC剤を加えることができる。
【0093】
さらなる実施形態は、混合済硬化型ジョイントコンパウンドであり得る硬化型ジョイントコンパウンドにおける硬化反応を制御するための方法を提供し、この方法は、ジョイントコンパウンドを1)乾燥焼成石膏の重量に基づいて、0.01~10重量%の量の1つ以上のMIC剤と、2)乾燥焼石膏の重量に基づいて0.01重量%~10重量%の量の1つ以上の非カルシウムリン酸塩化合物と、を混合することを含む。
【0094】
次に、本開示に記載されている硫酸亜鉛とアルムの硬化活性剤ブレンドは、コンパウンドが基材に塗布されるときに、硬化型ジョイントコンパウンドと混合されてもよい。硫酸亜鉛とアルムは、硫酸亜鉛対アルムの乾燥重量で3:1~2:1の範囲の比率でともにブレンドできる。次に、ブレンドは、水を除いて、硬化型のジョイントコンパウンドの0.5重量%~3重量%の量で使用される。この方法は、約40°F~約95°Fの範囲の温度で実行することができる。
【0095】
実施例1.
2種の混合済硬化型ジョイントコンパウンドが調製された。第1の混合済ジョイントコンパウンドは、焼石膏、水、ラテックス結合剤、炭酸カルシウム、硬化遅延剤、およびTKPPを含んでいた。第2の混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、第1の混合済硬化型ジョイントコンパウンドと同じ成分で調製されたが、しかしDTPA五ナトリウム(Dow Chemical Companyから購入されたVERSENEX(商標)80キレート剤)を配合剤に加えた。
【0096】
両方の混合済硬化型ジョイントコンパウンドを棚に置いておき、両方のコンパウンドを数か月の間、石膏シードの形成について定期的に検査した。第1の混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、コンパウンドが調製されてから約1週間後に石膏シードが生じ始めた。DTPA五ナトリウムを含む第2の混合済硬化型ジョイントコンパウンドでは、石膏シードは検出されなかった。
【0097】
2つの混合済硬化型ジョイントコンパウンドが調製されてから6か月以上経過した後、両方のコンパウンドが検査され、写真が撮られた。
図5Bから分かるように、DTPA五ナトリウムを含む第2の混合済硬化型ジョイントコンパウンドでは石膏シードは検出されなかった。同時に、
図5Aに示すように、DTPA五ナトリウムや他のいずれのMIC剤も含まない、第1の混合済硬化型ジョイントコンパウンドは、石膏シードを生じた。
【0098】
図6Bから分かるように、DTPA五ナトリウムを含む第2の混合済硬化型ジョイントコンパウンドを基材に塗布すると、滑らかな表面が生成された。対照的に、
図6Aに示すように、DTPA五ナトリウムを含まない第1の混合済硬化型ジョイントコンパウンドを基板に塗布すると、空隙を含む欠陥のある表面が生成された。
[付記]
[付記1]
混合済硬化型ジョイントコンパウンドにおける硬化反応を制御し、石膏シードの形成を抑制するための方法であって、
少なくとも焼石膏、水、少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物、ならびにアミノポリカルボン酸および/またはその塩を含む少なくとも1つの金属イオン制御剤を混合し、それにより石膏シードの形成が抑制された混合済硬化ジョイントコンパウンドを得ることを含み、
前記金属イオン制御剤は、乾燥焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用され、
前記少なくとも1つの非カルシウムリン酸塩化合物は、乾燥焼石膏の重量のパーセンテージとして計算して、約0.01重量%~約10重量%の量で使用される、方法。
[付記2]
前記方法がさらに、
カドミウム化合物、鉛化合物および/または亜鉛化合物を含む第1の硬化活性剤と、第一鉄化合物、アルミニウム化合物および/またはマンガン化合物を含む第2の硬化活性剤とをともにブレンドし、それにより硬化活性剤ブレンドを得ることと、
前記硬化活性剤ブレンドを前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドと混合し、それにより前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドの前記硬化反応を開始すること、を含む、付記1に記載の方法。
[付記3]
前記第1の硬化活性剤が酸化亜鉛、水酸化亜鉛および/または亜鉛塩であり、前記第2の硬化活性剤が酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムおよび/またはアルミニウム塩である、付記2に記載の方法。
[付記4]
前記第1の硬化活性剤が硫酸亜鉛であり、前記第2の硬化活性剤がアルムであり、前記硫酸亜鉛およびアルムが、硫酸亜鉛対アルムの乾燥重量で、3:1~1:1の範囲の比率で使用され、前記硬化活性剤ブレンドが、前記混合済硬化型ジョイントコンパウンド中の乾燥成分の0.5重量%~5重量%の範囲の量で、前記混合済硬化型ジョイントコンパウンドと混合される、付記2に記載の方法。
[付記5]
前記非カルシウムリン酸塩化合物が、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸カリウム一塩基性、またはそれらの任意の組み合わせを含む、付記1~4のいずれか一つに記載の方法。
[付記6]
前記金属イオン制御剤が、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸カルシウム三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸ナトリウムカルシウム、ヒドロキシ-エチル-エチレン-ジアミン三酢酸(HEDTA)、N-(ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン三酢酸三ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む、付記1~5のいずれか一つに記載の方法。
[付記7]
前記金属イオン制御剤がジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムを含み、前記非カルシウムリン酸塩化合物がピロリン酸四カリウム(TKPP)および/またはピロリン酸四ナトリウム(TKPP)を含む、付記1~6のいずれか一つに記載の方法。
[付記8]
結合剤、炭酸カルシウム、雲母、タルク、粘土、低分子量ポリマー、またはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも1つが前記硬化型ジョイントコンパウンドとさらに混合される、付記1~7のいずれか一つに記載の方法。
[付記9]
前記第1の活性剤が硫酸亜鉛であり、前記第2の活性剤がアルムであり、硫酸亜鉛対アルムの比率が乾燥重量で3:1~1:1であり、前記ジョイントコンパウンドが炭酸カルシウムを含み、前記混合が40°F~65°Fの範囲の温度で実施され、前記硬化活性剤ブレンドが、水を除いて、0.5~5重量%の量で前記混合済硬化ジョイントコンパウンドに添加される、付記2に記載の方法。
[付記10]
付記1~9のいずれか一つに記載の方法により調製された混合済硬化型ジョイントコンパウンド。