(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】スラグ除去装置及びめっき設備
(51)【国際特許分類】
C23C 2/00 20060101AFI20230412BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C23C2/00
C23C2/40
(21)【出願番号】P 2021179104
(22)【出願日】2021-11-02
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】314017543
【氏名又は名称】Primetals Technologies Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永井 孝典
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/148417(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2148459(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属めっき浴に浸漬される下端部を有するスナウト内のスラグを除去するためのスラグ除去装置であって、
スナウトの下端部における前記スナウトの内壁面に面するように一周に亘り設けられる内側壁と、
前記スナウトの前記下端部における前記スナウトの外壁面に面するように一周に亘り設けられ、前記内側壁の上端よりも高所に位置する上端を有する外側壁と、
を含み、前記スナウトの前記下端部を受け入れ可能な受け皿部と、
前記内側壁と前記外側壁との間にて前記受け皿部の底面から上方に向かって延び、前記内側壁の前記上端よりも低所に位置する上端を有する中間壁と、
を備え、
前記内側壁、前記中間壁及び前記底面の少なくとも一部は、溶融金属を貯留するための貯留部を画定し、
前記中間壁の上端を介して前記貯留部から溢れた溶融金属を、前記底面よりも下方に向けて排出するための排出口
を備える
スラグ除去装置。
【請求項2】
前記中間壁は、前記外側壁にそれぞれ接続される両端を有する
請求項1に記載のスラグ除去装置。
【請求項3】
前記中間壁は、前記内側壁と前記外側壁の間を一周に亘り形成された
請求項1に記載のスラグ除去装置。
【請求項4】
前記排出口は、前記受け皿部の前記底面に設けられる
請求項1乃至3の何れか一項に記載のスラグ除去装置。
【請求項5】
前記中間壁は、管状形を有する管部を含み、
前記管部は、前記排出口を形成する上端開口を有する
請求項
1に記載のスラグ除去装置。
【請求項6】
前記スナウトの前記下端部の少なくとも一部が、前記内側壁と前記中間壁との間に受け入れられるように構成された
請求項1乃至5の何れか一項に記載のスラグ除去装置。
【請求項7】
前記スナウトの前記下端部の少なくとも一部が、前記外側壁と前記中間壁との間に受け入れられるように構成された
請求項3に記載のスラグ除去装置。
【請求項8】
前記排出口を介して前記受け皿部から排出される前記溶融金属の排出流路に設けられるスクリュー型又は押し出しパドル型のポンプと、
前記排出口よりも上方に設けられ、前記ポンプを駆動するためのモータと、
を備える請求項1乃至7の何れか一項に記載のスラグ除去装置。
【請求項9】
前記排出口を介して前記受け皿部から排出される前記溶融金属の排出流路内の前記溶融金属を吸引するように構成された吸引ポンプを備える
請求項1乃至7の何れか一項に記載のスラグ除去装置。
【請求項10】
前記排出口を介して前記受け皿部から排出される前記溶融金属の排出流路内に不活性ガスを供給するように構成された不活性ガス供給部を備える
請求項1乃至9の何れか一項に記載のスラグ除去装置。
【請求項11】
溶融金属を貯留するためのめっき槽と、
前記めっき槽内の前記溶融金属に浸漬される下端部を有するスナウトと、
前記スナウト内のスラグを除去するように構成された請求項1乃至10の何れか一項に記載のスラグ除去装置と、
を備えるめっき設備。
【請求項12】
前記受け皿部を少なくとも上下方向に移動させるための駆動部を備える
請求項11に記載のめっき設備。
【請求項13】
前記受け皿部を少なくとも前記スナウトの前後方向に移動させるための駆動部を備える
請求項11又は12に記載のめっき設備。
【請求項14】
前記受け皿部を少なくとも前記スナウトの幅方向に移動させるための駆動部を備える
請求項11乃至13の何れか一項に記載のめっき設備。
【請求項15】
前記めっき槽内の前記溶融金属の液位を検出するための液位検出部と、
前記液位検出部で検出された前記液位に基づいて、前記内側壁の上端と、前記めっき槽内の溶融金属の液面との上下方向における距離が規定範囲内となるように、前記駆動部を制御するように構成された制御部と、
を備える
請求項1
2に記載のめっき設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラグ除去装置及びめっき設備に関する。
【背景技術】
【0002】
金属帯板(鋼帯等)を溶融金属でめっき処理するためのめっき設備では、帯板を熱処理するための熱処理炉の出口と、溶融金属が貯留されるめっき槽との間に、帯板を囲う筒状のスナウトが設けられる。スナウトは、その先端部(下端部)がめっき槽内の溶融金属に浸漬するように設けられ、これにより、スナウト内部への空気の侵入や、スナウト内部の雰囲気ガスの外部への漏れが抑制される。
【0003】
スナウトの内部は、通常、還元性ガス又は非酸化性ガス等の雰囲気ガスで満たされており、スナウト内部を通過する帯板やめっき浴の溶融金属の酸化が抑制されているが、実際には、微量の酸素が存在する場合がある。このため、スナウト内部において、めっき浴の溶融金属と酸素とが反応してめっき浴の表面に金属酸化物のスラグが形成されることがある。めっき浴に浮遊するスラグが帯板に付着すると、めっきの欠陥の要因となり得、帯板の品質を損なうことがある。このため、スナウトの内部で生じたスラグをスナウトの外に排出する必要がある。
【0004】
特許文献1には、スナウト内部のスラグをスナウトの外に排出するための機構をスナウトの下端部に設けためっき装置が開示されている。この装置では、スナウト下端部のスナウト壁と、該スナウト壁に接続される床及びオーバーフロー壁とで流出室が形成され、流出室に導入されたスラグ及び溶融金属が、吸引ポンプで吸引されることにより、スナウト及び流出室の外に排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の装置は、スナウト内部のスラグを排出するためのスラグ排出機構がスナウトと一体的に設けられており、構造が複雑である。また、スラグ排出機構がスナウトと一体的に設けられるため、スラグの排出状況を確認するのが難しく、あるいは、点検や清掃がし難く、このため、スラグの排出を効率的に行うことが難しい。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、スナウト内のスラグを簡素な構成で効率的に排出可能なスラグ除去装置及びめっき設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係るスラグ除去装置は、
溶融金属めっき浴に浸漬される下端部を有するスナウト内のスラグを除去するためのスラグ除去装置であって、
スナウトの下端部における前記スナウトの内壁面に面するように一周に亘り設けられる内側壁と、
前記スナウトの前記下端部における前記スナウトの外壁面に面するように一周に亘り設けられ、前記内側壁の上端よりも高所に位置する上端を有する外側壁と、
を含み、前記スナウトの前記下端部を受け入れ可能な受け皿部と、
前記内側壁と前記外側壁との間にて前記受け皿部の底面から上方に向かって延び、前記内側壁の前記上端よりも低所に位置する上端を有する中間壁と、
を備え、
前記内側壁、前記中間壁及び前記底面の少なくとも一部は、溶融金属を貯留するための貯留部を画定し、
前記中間壁の上端を介して前記貯留部から溢れた溶融金属を、前記底面よりも下方に向けて排出するための排出口と、
を備える。
【0009】
また、本発明の少なくとも一実施形態に係るめっき設備は、
溶融金属を貯留するためのめっき槽と、
前記めっき槽内の前記溶融金属に浸漬される下端部を有するスナウトと、
前記スナウト内のスラグを除去するように構成された上述のスラグ除去装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、スナウト内のスラグを簡素な構成で効率的に排出可能なスラグ除去装置及びめっき設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るめっき設備の概略的な構成図である。
【
図2A】一実施形態に係るスラグ除去装置の水平面に沿った断面図である。
【
図2B】
図2Aに示すスラグ除去装置のB-B断面を示す図である。
【
図2C】
図2Aに示すスラグ除去装置のC-C断面を示す図である。
【
図3A】一実施形態に係るスラグ除去装置の水平面に沿った断面図である。
【
図3B】
図3Aに示すスラグ除去装置のB-B断面を示す図である。
【
図3C】
図3Aに示すスラグ除去装置のC-C断面を示す図である。
【
図4A】一実施形態に係るスラグ除去装置の水平面に沿った断面図である。
【
図4B】
図4Aに示すスラグ除去装置のB-B断面を示す図である。
【
図5A】一実施形態に係るスラグ除去装置の水平面に沿った断面図である。
【
図5B】
図5Aに示すスラグ除去装置のB-B断面を示す図である。
【
図6A】一実施形態に係るスラグ除去装置の水平面に沿った断面図である。
【
図6B】
図6Aに示すスラグ除去装置のB-B断面を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るスラグ除去装置の概略図である。
【
図8】一実施形態に係るスラグ除去装置の概略図である。
【
図9】一実施形態に係るスラグ除去装置の概略図である。
【
図10】一実施形態に係るスラグ除去装置の概略図である。
【
図11】一実施形態に係るめっき設備の概略図である。
【
図12】一実施形態に係るめっき設備の概略図である。
【
図13】一実施形態に係るめっき設備の概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
(めっき設備の構成)
図1は、一実施形態に係るスラグ除去装置が適用されるめっき設備の概略的な構成図である。
図1に示すように、めっき設備100は、金属の帯板S(例えば鋼帯)を連続的にめっき処理するための設備であって、帯板Sを熱処理するための熱処理炉2と、熱処理炉2の外部に設けられ、溶融金属8のめっき浴を形成するめっき槽6(溶融金属ポット)を備える。
【0014】
熱処理炉2は、該熱処理炉2の内部を通過する帯板Sを熱処理するための装置であり、例えば、帯板Sを連続的に焼鈍処理するように構成されていてもよい。熱処理炉2の内部には、複数のロール4が設けられている。これらのロール4で帯板Sに張力を与えたり、帯板Sの方向転換をしたりすることで帯板Sを搬送するようになっており、これにより帯板Sを連続的に処理することが可能となっている。なお、
図1中の矢印は、帯板Sの搬送方向を表す。熱処理炉2の内部には、還元性又は非酸化性のガスが供給されるようになっていてもよい。
【0015】
熱処理炉2の出口部とめっき槽6の間にはスナウト12が設けられる。スナウト12は、帯板Sの通路を形成する筒状の形状を有する。スナウト12の下端部12a(即ち先端部)は、めっき槽6に貯留された溶融金属8(めっき浴)に浸漬するように設けられる。これにより、熱処理炉2及びスナウト12の内部から外部へのガスの流出、あるいは、熱処理炉2及びスナウト12の外部から内部へのガス(例えば空気)の流入が防止されるようになっている。
【0016】
めっき槽6にはめっき液としての溶融金属8が貯留され、めっき浴が形成される。めっき槽6内に貯留される溶融金属の種類は特に限定されないが、例えば帯板Sが鋼板である場合、亜鉛又はアルミニウム、又は、これらを含む合金であってもよい。
【0017】
また、めっき槽6内には、シンクロール10が設けられている。熱処理炉2の内部からスナウト12を通って溶融金属8のめっき浴に導入された帯板Sは、シンクロール10によって上向きに方向転換され、表面に溶融金属が付着した帯板Sがめっき槽6の上方へと進行するようになっている。
【0018】
シンクロール10よりも帯板Sの搬送方向における下流側には、搬送される帯板Sに向かってガスを吹き付けて、帯板Sに付着しためっき液(溶融金属)の厚さを調節するためのワイピングノズル(不図示)が設けられていてもよい。
【0019】
めっき設備100は、スナウト12内の溶融金属8に浮かぶスラグを除去するためのスラグ除去装置20をさらに備える。
【0020】
(スラグ除去装置の構成)
図2A、3A,4A,5A,6Aは、それぞれ、一実施形態に係るスラグ除去装置の水平面に沿った断面図である。
図2B,3B,4B,5B,6Bは、それぞれ、
図2A、3A,4A,5A,6Aに示すスラグ除去装置のB-B断面を示す図である。
図2C及び
図3Cは、それぞれ、
図2A及び
図3Aに示すスラグ除去装置のC-C断面を示す図である。
【0021】
図2A~
図6Bに示すように、幾つかの実施形態に係るスラグ除去装置20は、スナウト12の下端部12aを受け入れるように、スナウト12の下方に配置される受け皿部22を含む。受け皿部22は、不図示の指示手段を介して静止部(例えばめっき槽6)に支持されるようになっている。
【0022】
受け皿部22は、スナウト12の内側に設けられる内側壁26と、スナウト12の外側に設けられる外側壁28と、内側壁26と外側壁28との間に設けられ、受け皿部22の底面24を形成する底板部23と、を含む。内側壁26は、スナウト12の下端部12aにおけるスナウト12の内壁面14に面するように一周に亘り設けられる。外側壁28は、スナウト12の下端部12aにおけるスナウト12の外壁面16に面するように一周に亘り設けられる。外側壁28の上端29は、内側壁26の上端27よりも高所に位置する。即ち、外側壁28の上端29の高さ方向における位置は、内側壁26の上端27の高さ方向における位置よりも高い。
【0023】
また、受け皿部22は、内側壁26と外側壁28との間にて受け皿部22の底面24から上方に向かって延びる中間壁30を含む。中間壁30の上端31は、内側壁26の上端27よりも低所に位置する。即ち、外側壁28の上端29の高さ方向における位置、内側壁26の上端27の高さ方向における位置、及び、中間壁30の上端31の高さ方向における位置は、この順に高い。
【0024】
内側壁26、中間壁30及び底面24の少なくとも一部により、溶融金属を貯留するための貯留部32が画定される。
【0025】
また、スラグ除去装置20は、中間壁30の上端31を介して貯留部32から溢れた溶融金属を、底面24よりも下方に向けて排出するための排出口34を有する。排出口34は、高さ方向において、中間壁30の上端31と同じかそれよりも低い位置に位置する。
【0026】
スラグ除去装置20は、排出口34に導かれた溶融金属を、受け皿部22の外に排出するための排出管36を含んでもよい。排出管36は、排出口34に連通するように設けられる。排出口34は、排出口34よりも下方の位置にて受け皿部22に接続されていてもよい。
【0027】
スラグ除去装置20の使用時には、受け皿部22は、内側壁26の上端27の高さ方向における位置が、めっき槽6内の溶融金属8の液面Mと同じか液面Mよりも若干低くなるように設置される。また、スラグ除去装置20の使用時には、受け皿部22は、内側壁26と外側壁28との間にスナウト12の下端部12aが位置するように(即ち、スナウト12の下端部12aを受け入れるように)、かつ、高さ方向において中間壁30の上端31と受け皿部22の底面24との間にスナウト12の下端が位置するように設置される。
【0028】
上述したように、受け皿部22を構成する外側壁28の上端29、内側壁26の上端27及び中間壁30の上端31は、この順に高さ方向の位置が高い。このため、スラグ除去装置20の使用時に、受け皿部22を上述のように設置することで、めっき槽6内のスラグが浮かぶ溶融金属が内側壁26の上端27を介して貯留部32に流入する。該貯留部32に貯留された溶融金属及びスラグは、中間壁30の上端31を介して貯留部32から溢出する。また、貯留部32から溢出した溶融金属及びスラグは、排出口34を介して受け皿部22の下方に向けて排出される。
【0029】
したがって、上述の構成によれば、受け皿部22をスナウト12の下方に配置する簡素な構成で、スナウト12内部のスラグをスナウト12の外に排出することができる。また、受け皿部22を含むスラグ除去装置20はスナウト12と別体であるので、例えばスナウト12を持ち上げるだけで、容易にスナウト12内部のスラグの除去状況を確認したり、受け皿部22の清掃をしたりすることができる。よって、上述の構成によれば、スナウト12内のスラグを簡素な構成で効率的に排出することができる。
【0030】
なお、排出口34を介して受け皿部22の下方に向けて排出された溶融金属及びスラグは、上述の排出管36等を介してめっき浴に戻されるようになっていてもよい。
【0031】
幾つかの実施形態では、例えば
図2A~2C及び
図4A~4Bに示すように、中間壁30は、外側壁28にそれぞれ接続される両端を有する。
図2A~2C及び
図4A~4Bに示す例示的な実施形態では、貯留部32は、内側壁26、中間壁30、外側壁28及び底面24によって画定される。
【0032】
上述の構成によれば、中間壁30の両端を外側壁28に接続した簡素な構成で、貯留部32を形成することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、例えば
図3A~
図3Cに示すように、中間壁30は、内側壁26と外側壁28の間を一周に亘り形成される。
図3A~3Cに示す例示的な実施形態では、貯留部32は、内側壁26、中間壁30及び底面24によって画定される。
【0034】
上述の構成によれば、中間壁30は、内側壁26と外側壁28の間を一周に亘り形成されるため、中間壁30と内側壁26の間に形成される貯留部32も、一周に亘り形成される。このため、貯留部32の容量を大きくすることができ、スナウト12内に多量のスラグが存在する場合であっても、スラグをスナウト12の外に排出しやすい。
【0035】
幾つかの実施形態では、排出口34は、受け皿部22の底面24に設けられる。
図2A~2C、
図3A~3C及び
図4A~4Bに示す例示的な実施形態では、排出口34は、底板部23に設けられた開口を有する。
【0036】
上述の構成によれば、排出口34を受け皿部22の底面24に設けた簡素な構成で、貯留部32を形成することができる。
【0037】
幾つかの実施形態では、例えば
図5A~5B及び
図6A~6Bに示すように、中間壁30は、管状形を有する管部40を含む。該管部40は、排出口34を形成する上端開口42を有する。
図5A~5B及び
図6A~6Bに示す例示的な実施形態では、貯留部32は、内側壁26、中間壁30、外側壁28及び底面24によって画定される。
【0038】
上述の構成によれば、受け皿部22の底面24から上方に延びる管部40を設けた簡素な構成で、貯留部32及び排出口34を形成することができる。
【0039】
幾つかの実施形態では、例えば
図2A~2C、
図3A~3C、
図4A~3B及び
図5A~5Bに示すように、スナウト12の下端部12aの少なくとも一部が、内側壁26と中間壁30との間に受け入れられるようになっている。
【0040】
上述の構成によれば、スナウト12の下端部12aが内側壁26と中間壁30との間に受け入れられるので、貯留部32の一部はスナウト12の外側に位置する。よって、スナウト12を持ち上げなくても、スラグの排出状況を目視で確認することができる。このため、スナウト12内のスラグをより効率的に排出することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、例えば
図6A~6Bに示すように、スナウト12の下端部12aの少なくとも一部が、外側壁28と中間壁30との間に受け入れられるようになっている。
【0042】
上述の構成によれば、スナウト12の下端部12aが外側壁28と中間壁30との間に受け入れられるので、貯留部32に貯留された溶融金属に浮かぶスラグが、中間壁30の上端31を介して溢出しやすい。よって、スナウト12内のスラグをより効率的に排出することができる。
【0043】
図7~
図10は、それぞれ、一実施形態に係るスラグ除去装置の概略図である。以下に説明するように、幾つかの実施形態では、スラグ除去装置20は、受け皿部22からの溶融金属及びスラグの排出を促進するためのポンプ、吸引ポンプ又は不活性ガス供給部を含んでもよい。
【0044】
例えば幾つかの実施形態では、例えば
図7~
図9に示すように、スラグ除去装置20は、排出口34を介して受け皿部22から排出される溶融金属の排出流路に設けられるスクリュー型又は押し出しパドル型のポンプ50と、ポンプ50を駆動するためのモータ54と、を備える。
図7~
図9に示す実施形態では、ポンプ50は、排出管36内の溶融金属及びスラグを、排出管36の出口37に向けて押し出すまたは吸い出すように構成される。
【0045】
上述の構成では、排出口34を介して受け皿部22から排出される溶融金属の排出経路にスクリュー型又は押し出しパドル型のポンプ50を設けたので、排出経路の溶融金属及びスラグを、ポンプ50により押し出すことで、スラグを円滑に排出することができる。
【0046】
ここで、
図7に示す実施形態では、
図2A~
図5Bに示す実施形態と同様、中間壁30はスナウト12の外側に設けられ、排出口34はスナウト12の外側に位置する。
図7に示す排出管36は、排出口34から下方に向けて上下方向に沿って延びる第1部分36aと、該第1部分36aに接続され、めっき浴内にて水平方向に沿って延びる第2部分36bと、を含む。排出管36の第2部分36bは、側方を向く出口37を有する。
【0047】
また、
図8及び
図9に示す実施形態では、
図6A~
図6Bに示す実施形態と同様、中間壁30はスナウト12の内側に設けられ、排出口34はスナウト12の内側に位置する。
【0048】
図8に示す排出管36は、排出口34から下方に向けて上下方向に沿って延びる第1部分36aと、該第1部分36aに接続され、めっき浴内にて水平方向に沿って延びる第2部分36bと、第2部分36bに接続され、上方に向けて上下方向に沿って延びる第3部分36cと、を含む。排出管36の第3部分36cは、上方を向く出口37を有する。
【0049】
図9に示す排出管36は、排出口34から下方に向けて上下方向に沿って延びる第1部分36aと、該第1部分36aに接続され、めっき浴内にて水平方向に沿って延びる第2部分36bと、第2部分36bに接続され、上方に向けて上下方向に沿って延びる第3部分36cと、第3部分の上端部に接続され、水平方向に沿って延びる第4部分36dを含む。排出管36の第4部分36dは、側方を向く出口37を有する。
【0050】
図7及び
図8に示すポンプ50は、スクリュー型のポンプである。該ポンプ50は、回転シャフト51と、回転シャフト51とともに回転するように構成されたスクリュー羽根52と、を含む。回転シャフト51は、モータ54の出力シャフトに接続される。
【0051】
図7に示す例示的な実施形態では、ポンプ50の回転シャフト51は、排出口34を通過するように設けられる。また、スクリュー羽根52は、排出管36の第1部分36aに設けられる。
図7に示す例示的な実施形態では、ポンプ50には、回転シャフト51を回転可能に支持する筒状ケース71がある。筒状ケース71の側面下側にはスラグや溶融金蔵が流れ込む開口が適宜設けられている。ポンプ50が大気(空気)を巻き込んでスラグや溶融金属とともに送り出すことがないように、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部68を備えている。不活性ガス供給部68は供給配管69を介して不活性ガスを筒状ケース内に供給する。供給配管69には開閉弁70が設けられて、必要により不活性ガスを供給したり、止めたりすることができる。
【0052】
図8に示す例示的な実施形態では、ポンプ50の回転シャフト51は、排出管36の出口37の開口を通過するように設けられる。また、スクリュー羽根52は、排出管36の第3部分36cに設けられる。
【0053】
図9に示すポンプ50は、パドル型のポンプである。該ポンプ50は、回転シャフト51と、回転シャフト51とともに回転するように構成されたパドル羽根56と、を含む。回転シャフト51は、モータ54の出力シャフトに接続される。
【0054】
図9に示す例示的な実施形態では、ポンプ50の回転シャフト51は、排出管36の第4部分36dの管壁を貫通するように設けられる。また、パドル羽根56は、排出管36の第4部分36dに設けられる。なお、パドル型のポンプを採用する場合、パドル羽根56によって遠心力を付与された流体を排出管36から円滑に排出するように、排出管36や出口37の向きを設定してもよい。
【0055】
なお、スナウト12の外側に排出口34が設けられる実施形態では(例えば
図2A~
図5B)、
図7に示すように、受け皿部22の中に、少なくとも部分的にポンプ50が設置されていてもよいし、あるいは、
図8~9に示すように、排出管36の出口部にポンプ50が設置されてもよい。また、スナウト12の内側に排出口34が設けられる実施形態では(例えば
図6)、
図8~
図9に示すように、排出管36の出口部にポンプ50が設置されてもよい。
【0056】
図7~
図9に示すように、ポンプ50を駆動するためのモータ54は、排出口34の上方に設けられてもよい。あるいは、
図7に示すように、モータ54と排出口34とが平面視において少なくとも部分的に重なるように設けられていてもよい。
【0057】
上述の構成では、排出口34の上方にポンプ50を駆動するためのモータ54を設けたので、コンパクトな構成でありながら、スラグを円滑に排出することができる。
【0058】
幾つかの実施形態では、スラグ除去装置20は、排出口34を介して受け皿部22から排出される溶融金属の排出流路(例えば排出管36)内の溶融金属を吸引するように構成された吸引ポンプ(不図示)を備えてもよい。吸引ポンプは、めっき槽6の中に設置してもよいし、あるいは、めっき槽6の外に設置してもよい。
【0059】
上述の構成によれば、排出口34を介して受け皿部22から排出される溶融金属の排出経路に吸引ポンプを設けたので、排出経路の溶融金属及びスラグを、吸引ポンプにより吸引することで、スラグを円滑に排出することができる。また、吸引ポンプは、置き場所の選択肢が広いので、吸引ポンプで排出されるスラグ等の処理の自由度がある。例えば、吸引ポンプで吸引した溶融液体を、そのままめっき浴に戻すこともできるし、あるいは、フィルタ等でスラグを除去してからめっき浴に戻すこともできる。
【0060】
幾つかの実施形態では、例えば
図10に示すように、スラグ除去装置20は、排出口34を介して受け皿部22から排出される溶融金属の排出流路内に不活性ガス(例えば窒素ガス等)を供給するように構成された不活性ガス供給部58を備える。
【0061】
図10に示す例示的な実施形態では、不活性ガス供給部58は、排出管36に接続される不活性ガス供給管59を含む。不活性ガス供給源(ガスボンベ等)からの不活性ガスが、不活性ガス供給管59を介して排出管36の内部に供給されるようになっている。
【0062】
上述の構成によれば、排出口34を介して受け皿部22から排出される溶融金属の排出経路(上述の排出管36)内に不活性ガスを供給するようにしたので、排出経路内における溶融金属及びスラグの流れをガスにより促進することができる。よって、スラグを円滑に排出することができる。
【0063】
なお、不活性ガス供給部58は、排出管36のうち、排出管36における溶融金属の流れが上向きの部分に、不活性ガスを供給するように構成される。例えば
図10に示す実施形態では、排出管36は、排出口34から下方に向けて上下方向に沿って延びる第1部分36aと、該第1部分36aに接続され、めっき浴内にて水平方向に沿って延びる第2部分36bと、第2部分36bに接続され、上方に向けて上下方向に沿って延びる第3部分36cと、を含む。排出管36の第3部分36cは、上方を向く出口37を有する。不活性ガス供給部58は、溶融金属の流れが上向きとなる第3部分36cに不活性ガスを供給するように構成される。これにより、排出経路(排出管36)内における溶融金属及びスラグの流れをより効果的に促進することができる。
【0064】
(受け皿部の位置制御)
図11及び
図12は、一実施形態に係るめっき設備100の概略図である。
図13は、一実施形態に係るめっき設備100の概略的なブロック図である。
【0065】
図11~
図13に示すように、幾つかの実施形態では、めっき設備100は、スラグ除去装置20の受け皿部22を動かすための第1及び/又は第2の受け皿駆動部80,82(駆動部)を含む(
図12、
図13参照)。また、幾つかの実施形態では、めっき設備100は、めっき槽6内の溶融金属の液位を検出するための液位検出部90と、液位検出部90で検出された溶融金属の液位に基づいて、第1又は第2の受け皿駆動部80,82を制御するように構成された制御部92を備えてもよい(
図11~
図13参照)。また、幾つかの実施形態では、めっき設備100は、スナウト12を動かすための第1及び/又は第2のスナウト駆動部60,62を含んでもよい(
図11,
図13参照)。
【0066】
第1の受け皿駆動部80は、受け皿部22をスナウト12の上下方向に沿って動かすことが可能に構成される。第1の受け皿駆動部80は、例えば、電動ジャッキ又は油圧ジャッキを含んでもよい。
【0067】
第2の受け皿駆動部82は、受け皿部22をスナウト12の前後方向に沿って動かすことが可能に構成される。ここで、スナウト12の前後方向とは、平面視したときの、スナウト12内での帯板の進行方向である(
図12参照)。第2の受け皿駆動部82は、例えば、電動シリンダ又は油圧シリンダ等を含んでもよい。
【0068】
図12に示す例示的な実施形態では、第1の受け皿駆動部80は、めっき槽6の側方の2か所(
図12の紙面手前及び奥側)にあり、当該部に位置する静止部の上を転がるローラ78を備えた台板76の上に設置されるとともに、第1の受け皿駆動部80の上端部には天板72が接続される。第1の受け皿駆動部80がクランプ機構又はピストン・シリンダ等を利用した上下方向に伸縮する機構を有し、この機構により、天板72を昇降、下降させることができる。スラグ除去装置20の受け皿部22は、側方で上下方向に延びる支持部74を介して天板72に接続される。したがって、第1の受け皿駆動部80が天板72を上下方向に移動させることにより、これに応じて受け皿部22が上下方向に動くようになっている。2か所の第一の受け皿駆動部80は、互いに同期するようになっていてもよい。
【0069】
第2の受け皿駆動部82は、スナウト12の前後方向に沿って延在するように、静止部の上に設置されるとともに、第2の受け皿駆動部82の端部が支持部74に、支持部74の昇降を妨げない形態で、接続される。したがって、第2の受け皿駆動部82がスナウト12の前後方向に伸縮することにより、これに応じて受け皿部22がスナウト12の前後方向に動くようになっている。第2の受け皿駆動部82は、2か所の第1の受け皿駆動部80の支持部74にそれぞれ接続されて2か所にあり、互いに同期するようになっていてもよい。あるいは、2か所の第1の受け皿駆動部80を連結する図示しない部品に接続されて、駆動力を発揮する機構を1箇所にし、2か所の第1の受け皿駆動部80が同時に動くようになっていてもよい。
【0070】
めっき槽内の溶融金属の液位(液面高さ)は、時間の経過に伴い変動する場合がある。このような場合であっても、第1の受け皿駆動部80により、溶融金属の液位の変動に応じて受け皿部22を上下方向に動かすことにより、受け皿部22を、スラグの排出に適した位置に位置させることができる。
【0071】
また、スナウト12は、通常、上下方向(鉛直方向)に対して傾斜して設けられる。したがって、スナウト12の伸縮等により、あるいは、例えば上述の第1の受け皿駆動部80による受け皿部22の上下方向の移動により、スナウト12と受け皿部22との前後方向における相対的な位置関係が変動する場合がある。このような場合であっても、第2の受け皿駆動部82により受け皿部22を前後方向に動かすことにより、上述の位置関係の変動に応じて受け皿部22を前後方向に動かすことで、受け皿部22を、スラグの排出に適した位置に位置させることができる。
【0072】
第1及び第2のスナウト駆動部60,62を含むスナウト駆動部は、スナウト12を、スナウト12の前後方向に沿って、及び/又は、上下方向に沿って動かすように構成される。なお、
図11に示す実施形態では、以下に説明する第1及び第2のスナウト駆動部60,62の両方を用いることにより、スナウト12を、スナウト12の前後方向に沿って、及び、上下方向に沿って動かすことができる。
【0073】
第1のスナウト駆動部60は、スナウト12を、スナウト12の長さ方向に沿って動かすことが可能に構成される。なお、スナウト12は、スナウト12の長さ方向に伸縮可能な伸縮部13を含み、スナウト12の長さ方向に沿った移動が許容されるようになっている。第1のスナウト駆動部60は、スナウト12の長さ方向に沿って伸縮可能に構成された電動ジャッキ又は油圧ジャッキを含んでもよい。
図11に示すように、第1のスナウト駆動部60は、熱処理炉2に支持され、スナウト12を支持していてもよい。
【0074】
第2のスナウト駆動部62は、スナウト12の鉛直方向に対する傾斜角度θ(
図11参照)を変更するように、スナウト12を、傾斜した方向(
図11中のZ方向)に沿って動かすことが可能に構成される。第2のスナウト駆動部62は、例えば、電動シリンダ又は油圧シリンダ等を含んでもよい。
【0075】
図11に示すように、第2のスナウト駆動部62は、静止部(例えば、床面から上方に延びる柱64)に支持されてもよい。また、第2のスナウト駆動部62の端部は、スナウト12の面上を、スナウト12の長さ方向に沿って転がるローラを備えた台板66に接続される。したがって、第2のスナウト駆動部62が上述のZ方向に伸縮することにより、これに応じてスナウト12の鉛直方向に対する傾斜角度θが変更される。
【0076】
特に図示しないが、幾つかの実施形態では、めっき設備100は、受け皿部22をスナウト12の幅方向に沿って移動させるための第3の受け皿駆動部を備えていてもよい。なお、スナウト12の幅方向は、帯板Sの板幅方向に略一致する。
【0077】
上述の構成によれば、第3の受け皿駆動部により受け皿部22をスナウト12の幅方向に動かすことができる。よって、受け皿部22を、スラグの排出に適した位置に位置させやすくなる。
【0078】
液位検出部90は、該液位検出部90の位置と、めっき槽6内の溶融金属の液面Mのとの距離を検出可能なレーザあるいはレーダーレベル計を含んでもよい。
【0079】
制御部92は、液位検出部90で検出された溶融金属の液位に基づいて、受け皿部22の内側壁26の上端27と、めっき槽6内の溶融金属の液面Mとの上下方向における距離が規定範囲内となるように、第1の受け皿駆動部80、第2の受け皿駆動部82、第1のスナウト駆動部60又は第2のスナウト駆動部62の少なくとも1つを制御するように構成されてもよい。
【0080】
めっき槽6内の溶融金属の液位の検出結果に基づいて第1の受け皿駆動部80、第2の受け皿駆動部82、第1のスナウト駆動部60又は第2のスナウト駆動部62の少なくとも1つにより受け皿部22及び/又はスナウト12を動かすことにより、めっき槽6内の溶融金属の液位(液面高さ)が変動する場合であっても、該液位の変動に応じて受け皿部22を適切に動かすことで、受け皿部22を、スラグの排出に適した位置に位置させやすくなる。
【0081】
例えば、液位検出部90によって、めっき槽6内の液位がΔyだけ上昇したとする。また、このときのスナウト12の傾斜角度をθ(
図11参照)とする。
【0082】
この場合、受け皿部22及びスナウト12の上下方向の位置を、液位の上昇分と同じΔyだけ上昇させる必要がある。そこで、第1の受け皿駆動部80をΔyだけ伸ばすことで、受け皿部22をΔyだけ上昇させる。また、第1のスナウト駆動部60をΔy/cosθだけ縮めることで、スナウト12の高さ方向位置をΔyだけ上昇させる。
【0083】
この場合、スナウト12の下端の位置は、Δy/tanθだけ、紙面右手に向かって移動する。そこで、第2の受け皿駆動部82をΔy/tanθだけ縮めることで、受け皿部22をΔy/tanθだけ紙面右手に向かって移動させる。
【0084】
このようにして、液位検出部90による検出結果に基づいて、受け皿部22及びスナウト12の上下方向及び前後方向における移動量を算出することができる。よって、めっき槽6内の溶融金属の液位が変動する場合であっても、該液位の変動に応じて受け皿部22を適切に動かすことができ、受け皿部22を、スラグの排出に適した位置に位置させることができる。
【0085】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0086】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るスラグ除去装置(20)は、
溶融金属めっき浴に浸漬される下端部(12a)を有するスナウト(12)内のスラグを除去するためのスラグ除去装置であって、
スナウトの下端部における前記スナウトの内壁面(14)に面するように一周に亘り設けられる内側壁(26)と、
前記スナウトの前記下端部における前記スナウトの外壁面(16)に面するように一周に亘り設けられ、前記内側壁の上端(27)よりも高所に位置する上端(29)を有する外側壁(28)と、
を含み、前記スナウトの前記下端部を受け入れ可能な受け皿部(22)と、
前記内側壁と前記外側壁との間にて前記受け皿部の底面(24)から上方に向かって延び、前記内側壁の前記上端よりも低所に位置する上端(31)を有する中間壁(30)と、
を備え、
前記内側壁、前記中間壁及び前記底面の少なくとも一部は、溶融金属を貯留するための貯留部(32)を画定し、
前記中間壁の上端を介して前記貯留部から溢れた溶融金属を、前記底面よりも下方に向けて排出するための排出口(34)
を備える。
【0087】
上記(1)の構成では、受け皿部を構成する外側壁、内側壁及び中間壁は、この順に上端の位置が高い。このため、該受け皿部をスナウトの下端部を受け入れるように設置することで、めっき槽内のスラグが浮かぶ溶融金属が内側壁の上端を介して貯留部に流入可能であるとともに、該貯留部に貯留された溶融金属及びスラグは、中間壁の上端を介して貯留部から溢出することができる。また、このように溢出した溶融金属及びスラグを、排出口を介して受け皿部の下方に向けて排出させることができる。したがって、受け皿部をスナウトの下方に配置する簡素な構成で、スナウト内部のスラグをスナウトの外に排出することができる。また、受け皿部はスナウトと別体であるので、例えばスナウトを持ち上げるだけで、容易にスナウト内部のスラグの除去状況を確認したり、受け皿部の清掃をしたりすることができる。よって、上記(1)の構成によれば、スナウト内のスラグを簡素な構成で効率的に排出することができる。
【0088】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記中間壁は、前記外側壁にそれぞれ接続される両端を有する。
【0089】
上記(2)の構成によれば、中間壁の両端を外側壁に接続した簡素な構成で、貯留部を形成することができる。
【0090】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記中間壁は、前記内側壁と前記外側壁の間を一周に亘り形成される。
【0091】
上記(3)の構成によれば、中間壁は、前記内側壁と前記外側壁の間を一周に亘り形成されるため、中間壁と内側壁の間に形成される貯留部も、一周に亘り形成される。このため、貯留部の容量を大きくすることができ、スナウト内に多量のスラグが存在する場合であっても、スラグをスナウトの外に排出しやすい。
【0092】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記排出口は、前記受け皿部の前記底面に設けられる。
【0093】
上記(4)の構成によれば、排出口を受け皿部の底面に設けた簡素な構成で、貯留部を形成することができる。
【0094】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記中間壁は、管状形を有する管部(40)を含み、
前記管部は、前記排出口を形成する上端開口(42)を有する。
【0095】
上記(5)の構成によれば、受け皿部の底面から上方に延びる管部を設けた簡素な構成で、貯留部及び排出口を形成することができる。
【0096】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記スラグ除去装置は、
前記スナウトの前記下端部の少なくとも一部が、前記内側壁と前記中間壁との間に受け入れられるように構成される。
【0097】
上記(6)の構成によれば、スナウトの下端部が内側壁と中間壁との間に受け入れられるので、貯留部の一部はスナウトの外側に位置する。よって、スナウトを持ち上げなくても、スラグの排出状況を目視で確認することができる。このため、スナウト内のスラグをより効率的に排出することができる。
【0098】
(7)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
前記スラグ除去装置は、
前記スナウトの前記下端部の少なくとも一部が、前記外側壁と前記中間壁との間に受け入れられるように構成される。
【0099】
上記(7)の構成によれば、スナウトの下端部が外側壁と中間壁との間に受け入れられるので、貯留部に貯留された溶融金属に浮かぶスラグが、中間壁の上端を介して溢出しやすい。よって、スナウト内のスラグをより効率的に排出することができる。
【0100】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記スラグ除去装置は、
前記排出口を介して前記受け皿部から排出される前記溶融金属の排出流路に設けられるスクリュー型又は押し出しパドル型のポンプ(50)と、
前記排出口よりも上方に設けられ、前記ポンプを駆動するためのモータ(54)と、
を備える。
【0101】
上記(8)の構成によれば、排出口を介して受け皿部から排出される溶融金属の排出経路にスクリュー型又は押し出しパドル型のポンプを設けたので、排出経路の溶融金属及びスラグを、ポンプにより押し出すことで、スラグを円滑に排出することができる。また、排出口よりも上方にポンプを駆動するためのモータを設けたので、コンパクトな構成でありながら、スラグを円滑に排出することができる。
【0102】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記スラグ除去装置は、
前記排出口を介して前記受け皿部から排出される前記溶融金属の排出流路(例えば上述の排出管36)内の前記溶融金属を吸引するように構成された吸引ポンプを備える。
【0103】
上記(9)の構成によれば、排出口を介して受け皿部から排出される溶融金属の排出経路に吸引ポンプを設けたので、排出経路の溶融金属及びスラグを、吸引ポンプにより吸引することで、スラグを円滑に排出することができる。
【0104】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、
前記スラグ除去装置は、
前記排出口を介して前記受け皿部から排出される前記溶融金属の排出流路内に不活性ガスを供給するように構成された不活性ガス供給部(58)を備える。
【0105】
上記(10)の構成によれば、排出口を介して受け皿部から排出される溶融金属の排出経路内に不活性ガスを供給するようにしたので、排出経路内における溶融金属及びスラグの流れをガスにより促進することができる。よって、スラグを円滑に排出することができる。
【0106】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係るめっき設備は、
溶融金属を貯留するためのめっき槽(6)と、
前記めっき槽内の前記溶融金属に浸漬される下端部を有するスナウト(12)と、
前記スナウト内のスラグを除去するように構成された上記(1)乃至(10)の何れか一項に記載のスラグ除去装置(20)と、
を備える。
【0107】
上記(11)の構成では、受け皿部を構成する外側壁、内側壁及び中間壁は、この順に上端の位置が高い。このため、該受け皿部をスナウトの下端部を受け入れるように設置することで、めっき槽内のスラグが浮かぶ溶融金属が内側壁の上端を介して貯留部に流入可能であるとともに、該貯留部に貯留された溶融金属及びスラグは、中間壁の上端を介して貯留部から溢出することができる。また、このように溢出した溶融金属及びスラグを、排出口を介して受け皿部の下方に向けて排出させることができる。したがって、受け皿部をスナウトの下方に配置する簡素な構成で、スナウト内部のスラグをスナウトの外に排出することができる。また、受け皿部はスナウトと別体であるので、例えばスナウトを持ち上げるだけで、容易にスナウト内部のスラグの除去状況を確認したり、受け皿部の清掃をしたりすることができる。よって、上記(11)の構成によれば、スナウト内のスラグを簡素な構成で効率的に排出することができる。
【0108】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記めっき設備は、
前記受け皿部を少なくとも上下方向に移動させるための駆動部(例えば上述の第1の受け皿駆動部80)を備える。
【0109】
上記(12)の構成によれば、駆動部により受け皿部を上下方向に動かすことができる。よって、めっき槽内の溶融金属の液位(液面高さ)が変動する場合であっても、該液位の変動に応じて受け皿部を上下方向に動かすことで、受け皿部を、スラグの排出に適した位置に位置させることができる。
【0110】
(13)幾つかの実施形態では、上記(11)又は(12)の構成において、
前記めっき設備は、
前記受け皿部を少なくとも前記スナウトの前後方向に移動させるための駆動部(例えば上述の第2の受け皿駆動部82)を備える。
【0111】
上記(13)の構成によれば、駆動部により受け皿部を前後方向(平面視したときの、スナウト内での帯板の進行方向)に動かすことができる。よって、スナウトの熱伸縮等により、スナウトと受け皿部との前後方向における相対的な位置関係が変動した場合であっても、該位置関係の変動に応じて受け皿部を前後方向に動かすことで、受け皿部を、スラグの排出に適した位置に位置させることができる。
【0112】
(14)幾つかの実施形態では、上記(11)乃至(13)の何れかの構成において、
前記めっき設備は、
前記受け皿部を少なくとも前記スナウトの幅方向に移動させるための駆動部を備える。
【0113】
上記(14)の構成によれば、駆動部により受け皿部をスナウトの幅方向に動かすことができる。よって、受け皿部を、スラグの排出に適した位置に位置させやすくなる。
【0114】
(15)幾つかの実施形態では、上記(12)乃至(14)の何れかの構成において、
前記めっき設備は、
前記めっき槽内の前記溶融金属の液位を検出するための液位検出部(90)と、
前記液位検出部で検出された前記液位に基づいて、前記内側壁の上端と、前記めっき槽内の溶融金属の液面との上下方向における距離が規定範囲内となるように、前記駆動部を制御するように構成された制御部(92)と、を備える。
【0115】
上記(15)の構成によれば、めっき槽内の溶融金属の液位の検出結果に基づいて駆動部により受け皿部を動かすようにしたので、めっき槽内の溶融金属の液位(液面高さ)が変動する場合であっても、該液位の変動に応じて受け皿部を適切に動かすことで、受け皿部を、スラグの排出に適した位置に位置させやすくなる。
【0116】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0117】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0118】
2 熱処理炉
4 ロール
6 めっき槽
8 溶融金属
10 シンクロール
12 スナウト
12a 下端部
13 伸縮部
14 内壁面
16 外壁面
20 スラグ除去装置
22 受け皿部
23 底板部
24 底面
26 内側壁
27 上端
28 外側壁
29 上端
30 中間壁
31 上端
32 貯留部
34 排出口
36 排出管
36a 第1部分
36b 第2部分
36c 第3部分
36d 第4部分
37 出口
40 管部
42 上端開口
50 ポンプ
51 回転シャフト
52 スクリュー羽根
54 モータ
56 パドル羽根
58 不活性ガス供給部
59 不活性ガス供給管
60 第1のスナウト駆動部
62 第2のスナウト駆動部
64 柱
66 台板
68 不活性ガス供給部
69 供給配管
70 開閉弁
71 筒状ケース
72 天板
74 支持部
76 台板
78 ローラ
80 第1の受け皿駆動部
82 第2の受け皿駆動部
90 液位検出部
92 制御部
100 めっき設備
M 液面
S 帯板
【要約】
【課題】スナウト内のスラグを簡素な構成で効率的に排出可能なスラグ除去装置及びめっき設備を提供する。
【解決手段】溶融金属めっき浴に浸漬される下端部を有するスナウト内のスラグを除去するためのスラグ除去装置は、スナウトの下端部における前記スナウトの内壁面に面するように一周に亘り設けられる内側壁と、前記スナウトの前記下端部における前記スナウトの外壁面に面するように一周に亘り設けられ、前記内側壁の上端よりも高所に位置する上端を有する外側壁と、を含み、前記スナウトの前記下端部を受け入れ可能な受け皿部と、前記内側壁と前記外側壁との間にて前記受け皿部の底面から上方に向かって延び、前記内側壁の前記上端よりも低所に位置する上端を有する中間壁と、を備え、前記内側壁、前記中間壁及び前記底面の少なくとも一部は、溶融金属を貯留するための貯留部を画定し、前記中間壁の上端を介して前記貯留部から溢れた溶融金属を、前記底面よりも下方に向けて排出するための排出口を備える。
【選択図】
図2B