IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ライフライン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-先端偏向操作可能カテーテル 図1
  • 特許-先端偏向操作可能カテーテル 図2
  • 特許-先端偏向操作可能カテーテル 図3
  • 特許-先端偏向操作可能カテーテル 図4
  • 特許-先端偏向操作可能カテーテル 図5
  • 特許-先端偏向操作可能カテーテル 図6
  • 特許-先端偏向操作可能カテーテル 図7
  • 特許-先端偏向操作可能カテーテル 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】先端偏向操作可能カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/092 20060101AFI20230412BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61M25/092 500
A61M25/00 620
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021506854
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011217
(87)【国際公開番号】W WO2020188704
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中神 一樹
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-023952(JP,A)
【文献】特開2012-034971(JP,A)
【文献】米国特許第05507725(US,A)
【文献】特開2008-245766(JP,A)
【文献】特開昭62-265612(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296167(US,A1)
【文献】国際公開第2000/006242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する先端シャフト部を備えたカテーテルシャフトと、前記先端シャフト部を第1方向に撓ませるために、前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その後端を引張操作できる第1操作用ワイヤと、前記先端シャフト部を、前記第1方向とは反対方向の第2方向に撓ませるために、前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その後端を引張操作できる第2操作用ワイヤと、前記先端シャフト部の内部に延在し、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された一対の棒バネとを有し、
前記カテーテルシャフトは、少なくとも前記先端シャフト部において、マルチルーメン構造を有し、
前記先端シャフト部に形成されている複数のルーメンのうち、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された2つのワイヤルーメンに、それぞれ、前記第1操作用ワイヤおよび前記第2操作用ワイヤが軸方向にスライド可能に挿通され、
前記ワイヤルーメンの各々の中心軸を含む第1仮想平面に対して直交する第2仮想平面上に各々の中心軸を有し、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された2つのルーメンに、それぞれ、第1棒バネおよび第2棒バネが軸方向にスライド可能に挿通され、前記第1棒バネおよび前記第2棒バネの各基端または各先端が、前記先端シャフト部の基端または先端に固定されていることを特徴とする先端偏向操作可能カテーテル。
【請求項2】
前記第1棒バネおよび前記第2棒バネの基端どうしが連結されるとともに、その連結部が前記先端シャフト部の基端に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の先端偏向操作可能カテーテル。
【請求項3】
前記第1棒バネと、前記第2棒バネと、これらの基端どうしを連結する前記連結部とが、1本の高剛性部材から形成されていることを特徴とする請求項2に記載の先端偏向操作可能カテーテル。
【請求項4】
前記先端シャフト部が直線状態にあるときに、
前記第1棒バネの先端および前記第2棒バネの先端は、それぞれが挿通されている前記ルーメンの先端開口から所定距離基端側に位置していることを特徴とする請求項2または3に記載の先端偏向操作可能カテーテル。
【請求項5】
前記第1棒バネおよび前記第2棒バネの先端どうしが連結されるとともに、その連結部が前記先端シャフト部の先端に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の先端偏向操作可能カテーテル。
【請求項6】
前記第1棒バネと、前記第2棒バネと、これらの先端どうしを連結する前記連結部とが、1本の高剛性部材から形成されていることを特徴とする請求項5に記載の先端偏向操作可能カテーテル。
【請求項7】
前記先端シャフト部が直線状態にあるときに、
前記第1棒バネの基端および前記第2棒バネの基端は、それぞれが挿通されている前記ルーメンの基端開口から所定距離先端側に位置していることを特徴とする請求項5または6に記載の先端偏向操作可能カテーテル。
【請求項8】
可撓性のある先端シャフト部および可撓性のない基端シャフト部を備えたカテーテルシャフトと、前記先端シャフト部を第1方向に撓ませるために、前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その後端を引張操作できる第1操作用ワイヤと、前記先端シャフト部を、前記第1方向とは反対方向の第2方向に撓ませるために、前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その後端を引張操作できる第2操作用ワイヤと、前記先端シャフト部の内部に
延在し、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された一対の棒バネとを有し、
前記カテーテルシャフトは、少なくとも前記先端シャフト部において、マルチルーメン構造を有し、
前記先端シャフト部に形成されている複数のルーメンのうち、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された2つのワイヤルーメンに、それぞれ、前記第1操作用ワイヤおよび前記第2操作用ワイヤが軸方向にスライド可能に挿通され、
前記ワイヤルーメンの各々の中心軸を含む第1仮想平面に対して直交する第2仮想平面上に各々の中心軸を有し、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された2つのルーメンに、それぞれ、第1棒バネおよび第2棒バネが軸方向にスライド可能に挿通され、前記第1棒バネおよび前記第2棒バネの各基端または各先端が、前記カテーテルシャフトに固定されていることを特徴とする先端偏向操作可能カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は先端偏向操作可能カテーテルに関し、さらに詳しくは、体外に配置した操作部を操作することにより、体腔内に挿入されているカテーテルの先端部分を撓ませて、その先端の向きを変化させることができる先端偏向操作可能カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、動脈血管を通して心臓の内部まで挿入される電極カテーテルなどでは、心臓内に挿入されたカテーテルの先端(遠位端)の向きを、体外に配置されるカテーテルの後端(近位端または手元側)に装着された操作部を操作して変化(偏向)させる必要性がある。
【0003】
カテーテルの先端を手元側で操作して偏向させるための機構として、下記の特許文献1に示す機構が知られている。特許文献1に示す機構では、カテーテルの先端部分の内部にスプリング力のある板バネを配置し、この板バネの片面または両面に操作用ワイヤの先端を接続固定している。そして、操作用ワイヤの後端を引張操作することによって板バネを撓ませ、カテーテルの先端部分を板バネの平面と垂直方向に曲げて、カテーテルの先端の向きを変化させる。
このように、カテーテルの先端部分の内部に板バネを配置することにより、操作用ワイヤを引張操作すると、板バネの面と垂直方向に先端部分を曲げること(曲げ方向の平面性を確保すること)ができる。
【0004】
近年、カテーテルの多機能化や高性能化を目的として、カテーテルの先端に設ける電極数を増やしたり、カテーテルの先端に各種センサを設けたり、カテーテルの先端から所望の液体を吐出させたいという要望がある。この場合、カテーテル内に挿通されるリード線や導管等の数を増やす必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような従来のカテーテルでは、板バネなどの偏向操作機構で占拠されてルーメンの断面積が狭められ、ルーメンの内部に、電極のリード線などを挿通するスペースを十分に確保することができないという問題がある。
【0006】
このような問題に対して本出願人は、カテーテルシャフトと、このカテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された一対の棒バネと、一対の棒バネの中心軸を通る仮想平面の両側に配置されている一対のルーメン(操作用ワイヤ挿通通路)のそれぞれにスライド可能に挿通された一対の操作用ワイヤとを備えたカテーテルを提案している(下記特許文献2参照)。
【0007】
このようなカテーテルによれば、カテーテルの先端部分の曲げ方向の平面性を、板バネを配置した場合と同等に保ったまま、カテーテル内に挿通されるリード線や導管等の数を増やすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3232308号公報
【文献】特開2012-34971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の特許文献1、2に記載されているようなカテーテルにおいては、先端部分の曲げ方向の平面性が強すぎるためにトルク伝達性が劣るという問題がある。
このため、カテーテルを目的部位に導入するためのシースの屈曲部分に当該カテーテルの先端部分(板バネや棒バネが配置されている先端可撓部分)が位置しているような場合、手元側で与えた回転トルクがカテーテルの先端に伝達されず、この結果、例えば、アブレーションカテーテルにおいて、電極の押し当て荷重が不足して十分に焼灼できないことがある。
【0010】
特許文献2に記載のカテーテルの先端部分が、シースの屈曲部分またはその先端側に位置しているような場合に、手元側で回転トルクを与えると、カテーテルの先端部分の少なくとも一部には、一対の棒バネの中心軸を通る前記仮想平面に沿って曲げようとする力が掛かる。
【0011】
一方、特許文献2に記載のカテーテルでは、その先端部分に対向配置されている一対の棒バネがカテーテルシャフトを構成する樹脂により固定されているので、一対の棒バネの各々がカテーテルシャフトの軸方向にスライドすることは不可能である。
【0012】
このため、特許文献2に記載のカテーテルの先端部分を前記仮想平面に沿って曲げようとしても、曲げたときに内側に位置することになる一方の棒バネが、この棒バネに掛かる圧縮方向の力に対して抵抗し、曲げたときに外側に位置することになる他方の棒バネが、この棒バネに掛かる引張方向の力に対して抵抗するために、先端部分を曲げることができない。この結果、手元側で与えた回転トルクをカテーテルの先端に伝達することができなくなる。
【0013】
また、強引に曲げようとすると、前記一方の棒バネが先端方向にずれて、カテーテルの先端部が変形したり、カテーテルシャフトの先端から延び出した前記一方の棒バネにより先端電極などが押し出されたりすることが考えられる。
【0014】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、一対の棒バネの中心軸を含む仮想平面に沿って先端部分を容易に曲げることができ、トルク伝達性に優れた先端偏向操作可能カテーテルを提供することにある。
本発明の他の目的は、先端部分の復帰性(直線形状への復元性)にも優れた先端偏向操作可能カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明の先端偏向操作可能カテーテルは、可撓性を有する先端シャフト部を備えたカテーテルシャフトと、前記先端シャフト部を第1方向に撓ませるために、前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その後端を引張操作できる第1操作用ワイヤと、前記先端シャフト部を、前記第1方向とは反対方向の第2方向に撓ませるために、前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その後端を引張操作できる第2操作用ワイヤと、前記先端シャフト部の内部に延在し、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された一対の棒バネとを有し、
前記カテーテルシャフトは、少なくとも前記先端シャフト部において、マルチルーメン構造を有し、
前記先端シャフト部に形成されている複数のルーメンのうち、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された2つのワイヤルーメンに、それぞれ、前記第1操作用ワイヤおよび前記第2操作用ワイヤが軸方向にスライド可能に挿通され、
前記ワイヤルーメンの各々の中心軸を含む第1仮想平面に対して直交する第2仮想平面上に各々の中心軸を有し、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された2つ
のルーメン(以下、「棒バネルーメン」という。)に、それぞれ、第1棒バネおよび第2棒バネが軸方向にスライド可能に挿通され、前記第1棒バネおよび前記第2棒バネの各基端または各先端が、前記先端シャフト部の基端または先端に固定されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成の先端偏向操作可能カテーテルによれば、第1棒バネおよび第2棒バネが、棒バネルーメンに対して軸方向にスライド可能に挿通されているので、第2仮想平面に沿って先端シャフト部を曲げようとする力を受けたときには、第1棒バネおよび第2棒バネが、互いに軸方向の反対側にスライドすることで、先端シャフト部を曲げようとする力に対する棒バネの抵抗力を吸収(キャンセル)することができ、これにより、先端シャフト部を容易に曲げる(撓ませる)ことができる。
【0017】
また、第1棒バネおよび第2棒バネの各基端/各先端が、先端シャフト部の基端/先端に固定されていることにより、第2仮想平面に沿って撓んでいる先端シャフト部を直線形状へ容易に復元させることができる。
【0018】
さらに、第1棒バネおよび第2棒バネの各基端/各先端が、先端シャフト部の基端/先端に固定されていることにより、先端偏向操作を繰り返しても、第1棒バネおよび第2棒バネが先端方向/基端方向にずれてしまうようなことはない。
【0019】
(2)本発明の先端偏向操作可能カテーテルにおいて、前記第1棒バネおよび前記第2棒バネの基端どうしが連結されるとともに、その連結部が前記先端シャフト部の基端に固定されていることが好ましい。
【0020】
このような構成の先端偏向操作可能カテーテルによれば、第1棒バネおよび第2棒バネの基端を先端シャフト部の基端に確実に固定することができる。
そして、第2仮想平面に沿って先端シャフト部を曲げようとする力を受けたときには、曲げたときに内側に位置することになる一方の棒バネが先端方向にスライドするとともに、曲げたときに外側に位置することになる他方の棒バネが基端方向にスライドすることにより、先端シャフト部を曲げようとする力に対する棒バネの抵抗力を吸収(キャンセル)することができ、これにより、先端シャフト部を容易に曲げる(撓ませる)ことができる。
【0021】
また、第2仮想平面に沿って先端シャフト部が曲げられている状態において、曲げの内側に位置する一方の棒バネが基端方向にスライドするとともに、曲げの外側に位置する他方の棒バネが先端方向にスライドすることにより、先端シャフト部を直線形状に復元することができる。
【0022】
(3)上記(2)の先端偏向操作可能カテーテルにおいて、前記第1棒バネと、前記第2棒バネと、これらの基端どうしを連結する前記連結部とが、1本の高剛性部材から形成されていることが好ましい。
【0023】
このような構成の先端偏向操作可能カテーテルによれば、第1棒バネおよび第2棒バネの各々を挿通すべき棒バネルーメンに容易に挿入することができるとともに、第1棒バネおよび第2棒バネの基端を先端シャフト部の基端に確実に固定することができる。
【0024】
(4)上記(2)または(3)の先端偏向操作可能カテーテルにおいて、前記先端シャフト部が直線状態にあるときに、前記第1棒バネの先端および前記第2棒バネの先端は、それぞれが挿通されている棒バネルーメンの先端開口から所定距離基端側に位置していることが好ましい。
【0025】
このような構成の先端偏向操作可能カテーテルによれば、先端シャフト部が第2仮想平面に沿って曲げられている状態においても、曲げの内側に位置する何れかの棒バネの先端部が、棒バネルーメンの先端開口から延び出したりすることを防止することができる。
【0026】
(5)本発明の先端偏向操作可能カテーテルにおいて、前記第1棒バネおよび前記第2棒バネの先端どうしが連結されるとともに、その連結部が前記先端シャフト部の先端に固定されていてもよい。
【0027】
このような構成の先端偏向操作可能カテーテルによれば、第1棒バネおよび第2棒バネの先端を先端シャフト部の先端に確実に固定することができる。
そして、第2仮想平面に沿って先端シャフト部を曲げようとする力を受けたときには、曲げたときに内側に位置することになる一方の棒バネが基端方向にスライドするとともに、曲げたときに外側に位置することになる他方の棒バネが先端方向にスライドすることにより、先端シャフト部を曲げようとする力に対する棒バネの抵抗力を吸収(キャンセル)することができ、これにより、先端シャフト部を容易に曲げる(撓ませる)ことができる。
【0028】
また、第2仮想平面に沿って先端シャフト部が曲げられている状態において、曲げの内側に位置する一方の棒バネが先端方向にスライドするとともに、曲げの外側に位置する他方の棒バネが基端方向にスライドすることにより、先端シャフト部を直線形状に復元することができる。
【0029】
(6)上記(5)の先端偏向操作可能カテーテルにおいて、前記第1棒バネと、前記第2棒バネと、これらの先端どうしを連結する前記連結部とが、1本の高剛性部材から形成されていることが好ましい。
このような構成の先端偏向操作可能カテーテルによれば、第1棒バネおよび第2棒バネの各々を挿通すべき棒バネルーメンに容易に挿入することができるとともに、第1棒バネおよび第2棒バネの先端を先端シャフト部の先端に確実に固定することができる。
【0030】
(7)上記(5)または(6)の先端偏向操作可能カテーテルにおいて、前記先端シャフト部が直線状態にあるときに、前記第1棒バネの基端および前記第2棒バネの基端は、それぞれが挿通されている棒バネルーメンの基端開口から所定距離先端側に位置していることが好ましい。
このような構成の先端偏向操作可能カテーテルによれば、先端シャフト部が第2仮想平面に沿って曲げられている状態においても、曲げの内側に位置する何れかの棒バネの基端部が、棒バネルーメンの基端開口から延び出したりすることを防止することができる。
【0031】
(8)本発明の先端偏向操作可能カテーテルは、可撓性のある先端シャフト部および可撓性のない基端シャフト部を備えたカテーテルシャフトと、前記先端シャフト部を第1方向に撓ませるために、前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その後端を引張操作できる第1操作用ワイヤと、前記先端シャフト部を、前記第1方向とは反対方向の第2方向に撓ませるために、前記カテーテルシャフトの内部に延在し、その後端を引張操作できる第2操作用ワイヤと、前記先端シャフト部の内部に延在し、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された一対の棒バネとを有し、
前記カテーテルシャフトは、少なくとも前記先端シャフト部において、マルチルーメン構造を有し、
前記先端シャフト部に形成されている複数のルーメンのうち、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された2つのワイヤルーメンに、それぞれ、前記第1操作用ワイヤおよび前記第2操作用ワイヤが軸方向にスライド可能に挿通され、
前記ワイヤルーメンの各々の中心軸を含む第1仮想平面に対して直交する第2仮想平面上に各々の中心軸を有し、前記カテーテルシャフトの中心軸を挟んで対向配置された2つの棒バネルーメンに、それぞれ、第1棒バネおよび第2棒バネが軸方向にスライド可能に挿通され、前記第1棒バネおよび前記第2棒バネの各基端または各先端が、前記カテーテルシャフトに固定されていることを特徴とする。
【0032】
このように、第1棒バネおよび第2棒バネの各々の基端が、先端シャフト部の基端以外の部分(例えば、基端シャフト部の先端部分)においてカテーテルシャフトに固定されている場合、第1棒バネおよび第2棒バネの各々の先端が、先端シャフト部の先端以外の部分においてカテーテルシャフトに固定されている場合も本発明に含まれる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の先端偏向操作可能カテーテルによれば、カテーテルシャフトの先端シャフト部を第2仮想平面に沿って容易に曲げることができ、優れたトルク伝達性を発揮することができる。
また、本発明の先端偏向操作可能カテーテルは、先端シャフト部の復帰性(曲げられている状態から直線状態への復元性)にも優れている。
さらに、本発明の先端偏向操作可能カテーテルによれば、先端偏向操を繰り返しても、第1棒バネおよび第2棒バネが先端方向または基端方向にずれてしまうようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1実施形態に係る電極カテーテルの正面図である。
図2】第1実施形態に係る電極カテーテルの先端部分を示す部分拡大図(図1のII部詳細図)である。
図3】第1実施形態に係る電極カテーテルを構成するカテーテルシャフト(先端シャフト部)の横断面図(図2のIII-III断面図)である。
図4】第1実施形態に係る電極カテーテルを構成するカテーテルシャフト(基端シャフト部)横断面図(図1のIV-IV断面図)である。
図5】第1実施形態に係る電極カテーテルの縦断面図(図3のV-V断面図)である。
図6】第1実施形態に係る電極カテーテルを構成する高剛性部材を示す側面図である。
図7】第1実施形態に係る電極カテーテルを構成するカテーテルシャフトが第2仮想平面に沿って曲げられたときの第1棒バネおよび第2棒バネの状態を示す模式図である。
図8】第2実施形態に係る電極カテーテルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<第1実施形態>
本発明の先端偏向操作可能カテーテルの第1実施形態である電極カテーテル100は、例えば、心臓における不整脈の診断または治療に用いられるものである。
【0036】
図1図5に示す本実施形態の電極カテーテル100は、可撓性を有する先端シャフト部11を備えたカテーテルシャフト10と、カテーテルシャフト10の先端側に配置された先端電極30と、カテーテルシャフト10の先端部分の外周面に装着されたリング状電極41~43と、先端シャフト部11を第1方向に撓ませるために、カテーテルシャフト10の内部に延在し、その後端を引張操作できる第1操作用ワイヤ51と、先端シャフト部11を第2方向に撓ませるために、カテーテルシャフト10の内部に延在し、その後端を引張操作できる第2操作用ワイヤ52と、先端シャフト部11の撓み方向の平面性を付
与するために、当該先端シャフト部11の内部に延在する一対の棒バネ(第1棒バネ61および第2棒バネ62)の基端どうしを連結してなる高剛性部材60と、カテーテルシャフト10と先端電極30との間に配置されて第1操作用ワイヤ51および第2操作用ワイヤ52の先端を固定するアンカー部材70と、カテーテルシャフト10の基端に装着されたハンドル80とを備えてなる。
カテーテルシャフト10はマルチルーメン構造を有し、先端シャフト部11に形成されている10個のルーメンのうち、カテーテルシャフト10の中心軸を挟んで対向配置された2つのワイヤルーメン111,112に、それぞれ、第1操作用ワイヤ51および第2操作用ワイヤ52が軸方向にスライド可能に挿通され、ワイヤルーメン111,112の各々の中心軸を含む第1仮想平面P1に対して直交する第2仮想平面P2上に各々の中心軸を有し、カテーテルシャフト10の中心軸を挟んで対向配置された2つの棒バネルーメン113,114に、それぞれ、第1棒バネ61および第2棒バネ62が軸方向にスライド可能に挿通されている。第1棒バネ61および第2棒バネ62の基端どうしが連結部63によって連結され、この連結部63が先端シャフト部11の基端に固定されていることにより、第1棒バネ61および第2棒バネ62の各基端が、先端シャフト部11の基端に固定されている。
【0037】
本実施形態の電極カテーテル100は、カテーテルシャフト10と、先端電極30と、リング状電極41~43と、第1操作用ワイヤ51と、第2操作用ワイヤ52と、第1棒バネ61および第2棒バネ62の基端どうしを連結してなる高剛性部材60と、アンカー部材70と、ハンドル80とを備えている。
【0038】
図1において、12はカテーテルシャフト10の基端シャフト部、85は、カテーテルシャフト10の先端偏向操作を行うためにハンドル80に装着された摘みである。
図3および図4において、30Lは先端電極30の導線、41L~43Lは、リング状電極41~43の導線、45は熱電対である。
【0039】
カテーテルシャフト10は、先端シャフト部11と、この先端シャフト部11の基端側に接合された基端シャフト部12と、先端シャフト部11の先端側に接合されたチューブ部材13とにより構成されている。
【0040】
先端シャフト部11は、可撓性を有し、第1操作用ワイヤ51第2操作用ワイヤ52を引張操作することによって撓む(曲がる)ことのできる先端可撓部分である。
【0041】
先端シャフト部11は、マルチルーメン構造を有する絶縁性のチューブ部材であり、図3に示すように、先端シャフト部11には、ワイヤルーメン111,112および棒バネルーメン113,114を含む10個のルーメン(111~118,119Aおよび119B)が形成されている。
【0042】
ワイヤルーメン111とワイヤルーメン112とは、第1仮想平面P1上に各々の中心軸を有し、カテーテルシャフト10の中心軸を挟んで対向配置されている。
棒バネルーメン113と棒バネルーメン114とは、第1仮想平面P1に対して直交する第2仮想平面P2上に各々の中心軸を有し、カテーテルシャフト10の中心軸を挟んで対向配置されている。
【0043】
図3において、1101は樹脂からなるインナー部、1103は、インナー部1101よりも硬度の高い樹脂からなるアウター部、1102は、インナー部1101とアウター部1103との間に介在する樹脂ブレード層である。
【0044】
基端シャフト部12は、先端シャフト部11と比較して高い剛性を有している。
基端シャフト部12はマルチルーメン構造を有する絶縁性のチューブ部材であり、図4に示すように、基端シャフト部12には、先端シャフト部11のルーメン(111~112、115~118,119Aおよび119B)に連通する8個のルーメン(121~122、125~128,129Aおよび129B)が形成されている。
但し、基端シャフト部12には、先端シャフト部11の棒バネルーメン113および棒バネルーメン114に連通するルーメンは形成されていない。
【0045】
図4において、1201は樹脂からなるインナー部、1203は、インナー部1201よりも硬度の高い樹脂からなるアウター部、1202は、インナー部1201とアウター部1203との間に介在する樹脂ブレード層である。
【0046】
カテーテルシャフト10(先端シャフト部11、基端シャフト部12、チューブ部材13)の構成材料としては、例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルブロックポリアミド、ポリウレタンなどの合成樹脂を挙げることができる。
【0047】
カテーテルシャフト10の外径は、通常2Fr(0.65mm)~8Fr(2.7mm)とされ、好適な一例を示せば6Fr(2mm)とされる。
【0048】
先端シャフト部11の長さは、通常10~150mmとされ、好適な一例を示せば75mmとされる。
【0049】
カテーテルシャフト10の先端には、第1極である先端電極30が接続されている。
先端電極30は、X線不透過性金属によって一体的に形成され、それぞれの中心が同一直線上に存在する3個の球面と、隣り合う球面の間に、これら球面に接続した1つの縮径部を備えた曲面とを有しており、当該曲面により、先端電極30には、隣り合う球面の間において括れが形成されている。
先端電極30の外径(球面における最大径)は、カテーテルシャフト10の外径と同程度である。
【0050】
先端電極30を構成するX線不透過性金属としてはX線に対する良好な造影性を有する金属であれば特に限定されるものではないが、好適な具体例として、白金、金、銀およびこれらを主成分とする合金などを挙げることができる。
【0051】
カテーテルシャフト10の先端部分の外周面には、X線不透過性金属からなるリング状電極41~43が装着されている。なお、リング状電極の数は3個に限定されないことは勿論である。
リング状電極41~43の幅(カテーテルシャフト10の軸方向における長さ)としては、例えば1.2~5.0mmとされる。
リング状電極41~43を構成するX線不透過性金属としては先端電極30を構成するものと同様の金属を挙げることができる。
【0052】
電極カテーテル100を構成する第1操作用ワイヤ51は、カテーテルシャフト10の内部(先端シャフト部11のルーメン111および基端シャフト部12のルーメン129A)において軸方向にスライド可能に挿通されている。
また、第2操作用ワイヤ52は、カテーテルシャフト10の内部(先端シャフト部11のルーメン112および基端シャフト部12のルーメン129B)において軸方向にスライド可能に挿通されている。
【0053】
第1操作用ワイヤ51および第2操作用ワイヤ52の基端は、それぞれ、ハンドル80の摘み85に接続され、これにより、引張操作可能となっている。
第1操作用ワイヤ51および第2操作用ワイヤ52の先端は、それぞれ、カテーテルシャフト10の中心軸を挟んで対向するようにアンカー部材70に固定されている。
【0054】
ハンドル80の摘み85を操作することにより、第1操作用ワイヤ51または第2操作用ワイヤ52が基端方向に引っ張られて、電極カテーテル100の先端シャフト部11が撓み、電極カテーテル100の遠位端は、矢印AまたはBで示す方向に偏向が可能になる。例えば、図1に示す摘み85をA1方向に回転させることにより、第1操作用ワイヤ51が基端方向に引っ張られて、電極カテーテル100の先端が、矢印Aで示す方向に偏向する。また、摘み85をB1方向に回転させることにより、第2操作用ワイヤ52が基端方向に引っ張られて、電極カテーテル100の先端が、矢印Bで示す方向に偏向する。
【0055】
第1操作用ワイヤ51および第2操作用ワイヤ52の構成材料としては特に限定されるものではなく、従来公知の先端偏向操作可能カテーテルの操作用ワイヤの構成材料と同一のものをすべて使用することができる。
操作用ワイヤ50の直径としては、例えば0.05~0.5mmとされ、好適な一例を示せば0.25mmとされる。
【0056】
図5に示すように、アンカー部材70は、その先端部分が、先端電極30の内部空間に挿入された状態で、当該先端電極30に固定されている。
また、アンカー部材70は、その基端部分が、チューブ部材13に内包された状態で、カテーテルシャフト10に固定されている。
【0057】
先端シャフト部11の先端と、アンカー部材70の基端との間には、クリアランスCが確保されている。
ここに、クリアランスCとしては、例えば0.05~30mmとされ、好適な一例を示せば0.5mmとされる。
【0058】
アンカー部材70の構成材料としては、はんだに対する濡れ性の良好な金属材料であることが好ましい。かかる観点から、アンカー部材70の好適な構成材料として銅または銅合金を挙げることができ、特に、熱伝導性が良好である黄銅(真鍮)が好ましい。
【0059】
図3および図4に示すように、先端電極30の導線30Lおよび熱電対45は、カテーテルシャフト10の内部(先端シャフト部11のルーメン115および基端シャフト部12のルーメン125)を延在している。
また、リング電極41~43の導線41L~43Lは、カテーテルシャフト10の内部(先端シャフト部11のルーメン116および基端シャフト部12のルーメン126)を延在している。
【0060】
カテーテルシャフト10の内部を延在している導線30Lおよび導線41L~43Lは、それぞれ、ハンドル80の内部を通ってハンドル80から引き出され、例えば、高周波発生装置に接続される。
【0061】
図6は、本実施形態の電極カテーテル100を構成する高剛性部材60を示す側面図である。この高剛性部材60は、第1棒バネ61の形成部分と、第2棒バネ62の形成部分と、第1棒バネ61および第2棒バネ62の一端(この実施形態では基端となる)どうしを連結する連結部63とからなる。
【0062】
高剛性部材60において、第1棒バネ61の形成部分と第2棒バネ62の形成部分とは互いに平行に延びており、各々の一端どうしが連結部63により連結されることにより、高剛性部材60の一端側は「コ」の字状に折り返された形状となっている。
【0063】
高剛性部材60の構成材料としては、ステンレススチール、Ni-Ti合金などの金属材料を挙げることができる。
高剛性部材60の直径としては、例えば0.1~1mmとされ、好適な一例を示せば0.2mmとされる。
【0064】
高剛性部材60において、第1棒バネ61の形成部分および第2棒バネ62の形成部分の長さは、先端シャフト部11の長さよりも短く、好適な一例を示せば72mmとされる。
【0065】
図5に示すように、第1棒バネ61(高剛性部材60における第1棒バネの形成部分)は、先端シャフト部11の棒バネルーメン113において、軸方向にスライド可能に挿通されている。また、第2棒バネ62(高剛性部材60における第2棒バネの形成部分)は、先端シャフト部11の棒バネルーメン114において軸方向にスライド可能に挿通されている。
【0066】
このように、棒バネルーメン113に対して第1棒バネ61が軸方向にスライド可能に挿通され、棒バネルーメン114に対して第2棒バネ62が軸方向にスライド可能に挿通されていることにより、電極カテーテル100の先端部分が、第2仮想平面P2に沿って先端シャフト部11を曲げようとする力を受けたときには、曲げるときに内側に位置する棒バネ(第1棒バネ61または第2棒バネ62)が先端方向にスライドするとともに、曲げるときに外側に位置する棒バネ(第2棒バネ62または第1棒バネ61)が基端方向にスライドすること、すなわち、第1棒バネ61および第2棒バネ62が、互いに軸方向の反対側にスライドすることにより、先端シャフト部11を曲げようとする力に抗する第1棒バネ61および第2棒バネ62の抵抗力をキャンセルすることができ、これにより、先端シャフト部11を容易に曲げる(撓ませる)ことが可能となる。
【0067】
ここに、棒バネルーメン113および棒バネルーメン114は、第1棒バネ61および第2棒バネ62が軸方向にスライドできるように、高剛性部材60の直径より僅かに大きな径を有している。好適な一例を示せば、高剛性部材60の直径が0.2mmである場合に、棒バネルーメン113および114の径は0.25mmとされる。
【0068】
図5に示すように、先端シャフト部11の基端面と、基端シャフト部12の先端面とが接合(固着)されることにより、高剛性部材60の連結部63(第1棒バネ61および第2棒バネ62の各基端)が、先端シャフト部11の基端に固定されている。
【0069】
このように、第1棒バネ61の基端および第2棒バネ62の基端が先端シャフト部11の基端に固定されている電極カテーテル100によれば、第2仮想平面P2に沿って先端シャフト部11が曲げられている状態において、曲げの内側に位置している棒バネ(第1棒バネ61または第2棒バネ62)が基端方向にスライドするとともに、曲げの外側に位置している棒バネ(第1棒バネ62または第1棒バネ61)が先端方向にスライドすることにより、先端シャフト部11を直線形状に復元することができる。
【0070】
また、第1棒バネ61の基端および第2棒バネ62の基端が先端シャフト部11の基端に固定されていることにより、先端偏向操作を繰り返しても、第1棒バネ61および第2棒バネ62が先端方向にずれてしまうようなことを防止することができる。
【0071】
図5に示すように、先端シャフト部11が直線状態にあるときにおいて、第1棒バネ61の先端611は、棒バネルーメン113の先端開口(先端シャフト部11の先端)から所定の距離Dだけ基端側に位置しており、第2棒バネ62の先端621は、棒バネルーメ
ン114の先端開口(先端シャフト部11の先端)から同じ距離Dだけ基端側に位置している。
【0072】
このような構成によれば、先端シャフト部11が第2仮想平面P2に沿って曲げられている状態においても、曲げの内側に位置している棒バネ(第1棒バネ61または第2棒バネ62)の先端部分が棒バネルーメン(棒バネルーメン113または棒バネルーメン114)の先端開口から延び出すことを有効に防止することができる。
【0073】
ここに、距離Dは、先端シャフト部11が第2仮想平面P2に沿って最大限曲げられている状態においても、曲げの内側に位置する棒バネが棒バネルーメンの先端開口から延び出ないように適宜調整することができ、好適な一例を示せば、3mm(75mm-72mm)とされる。
【0074】
図7は、先端シャフト部11が第2仮想平面に沿って曲げられたときの第1棒バネ61および第2棒バネ62の状態を示している。
先端シャフト部11を、同図に示す右方向に撓ませるときには、曲げたときに内側に位置する第2棒バネ62が先端方向にスライドするが、先端シャフト部11の先端(棒バネルーメンの先端開口)から第2棒バネ62の先端621が延び出ることはない。
また、先端シャフト部11を、同図に示す左方向に撓ませるときには、曲げたときに内側に位置する第1棒バネ61が先端方向にスライドするが、先端シャフト部11の先端(棒バネルーメンの先端開口)から第1棒バネ61の先端611が延び出ることはない。
【0075】
本実施形態の電極カテーテル100によれば、2つの棒バネルーメン113,114に、それぞれ、第1棒バネ61および第2棒バネ62が軸方向にスライド可能に挿通されていることにより、カテーテルシャフト10の先端シャフト部11を第2仮想平面P2に沿って容易に曲げることができ、これにより、優れたトルク伝達性を発揮することができる。
また、第1棒バネ61および第2棒バネ62の基端どうしを連結する連結部63が先端シャフト部11の基端に固定されていることにより、先端シャフト部11の復帰性にも優れている。
さらに、先端偏向操を繰り返しても、第1棒バネ61および第2棒バネ62が先端方向にずれてしまうようなことはない。
【0076】
<第2実施形態>
図8は、この実施形態に係る電極カテーテルの縦断面図であり、同図において、第1実施形態に係る電極カテーテル100と同一の構成要素には、同一の符号を用いている。
また、第1実施形態の説明に使用した図1図4および図6は、そのまま本実施形態において使用することができる。
【0077】
本実施形態の電極カテーテル200は、可撓性を有する先端シャフト部11を備えたカテーテルシャフト10と、カテーテルシャフト10の先端側に配置された先端電極30と、カテーテルシャフト10の先端部分の外周面に装着されたリング状電極41~43と、先端シャフト部11を第1方向に撓ませるために、カテーテルシャフト10の内部に延在し、その後端を引張操作できる第1操作用ワイヤ51と、先端シャフト部11を第2方向に撓ませるために、カテーテルシャフト10の内部に延在し、その後端を引張操作できる第2操作用ワイヤ52と、先端シャフト部11の撓み方向の平面性を付与するために、当該先端シャフト部11の内部に延在する一対の棒バネ(第1棒バネ61および第2棒バネ62)の基端どうしを連結してなる高剛性部材60と、カテーテルシャフト10と先端電極30との間に配置されて第1操作用ワイヤ51および第2操作用ワイヤ52の先端を固定するアンカー部材70と、カテーテルシャフト10の基端に装着されたハンドル80と
を備えてなる。
カテーテルシャフト10はマルチルーメン構造を有し、先端シャフト部11に形成されている10個のルーメンのうち、カテーテルシャフト10の中心軸を挟んで対向配置された2つのワイヤルーメン111,112に、それぞれ、第1操作用ワイヤ51および第2操作用ワイヤ52が軸方向にスライド可能に挿通され、ワイヤルーメン111,112の各々の中心軸を含む第1仮想平面P1に対して直交する第2仮想平面P2上に各々の中心軸を有し、カテーテルシャフト10の中心軸を挟んで対向配置された2つの棒バネルーメン113,114に、それぞれ、第1棒バネ61および第2棒バネ62が軸方向にスライド可能に挿通されている。第1棒バネ61および第2棒バネ62の先端どうしが連結部63によって連結され、この連結部63が先端シャフト部11の先端に固定されていることにより、第1棒バネ61および第2棒バネ62の各先端が、先端シャフト部11の先端に固定されている。
【0078】
本実施形態の電極カテーテル200は、第1棒バネ61および第2棒バネ62の先端どうしが連結部63によって連結され、この連結部63が先端シャフト部11の先端に固定されていること以外は第1実施形態と同様の構成である。
【0079】
すなわち、第1実施形態の電極カテーテル100では、高剛性部材60における第1棒バネ61の形成部分および第2棒バネ62の形成部分が、それぞれ、先端シャフト部11の基端側から、棒バネルーメン113および棒バネルーメン114に挿入され、高剛性部材60の連結部63(第1棒バネ61および第2棒バネ62の基端)が、先端シャフト部11の基端に固定されているのに対して、本実施形態の電極カテーテル200では、高剛性部材60における第1棒バネ61の形成部分および第2棒バネ62の形成部分が、それぞれ、先端シャフト部11の先端側から、棒バネルーメン113および棒バネルーメン114に挿入され、高剛性部材60の連結部63(第1棒バネ61および第2棒バネ62の先端)が先端シャフト部11の先端に固定されている。
【0080】
図8に示すように、第1棒バネ61(高剛性部材60における第1棒バネの形成部分)は、先端シャフト部11の棒バネルーメン113において、軸方向にスライド可能に挿通されている。また、第2棒バネ62(高剛性部材60における第2棒バネの形成部分)は、先端シャフト部11の棒バネルーメン114において軸方向にスライド可能に挿通されている。
【0081】
このように、棒バネルーメン113に対して第1棒バネ61が軸方向にスライド可能に挿通され、棒バネルーメン114に対して第2棒バネ62が軸方向にスライド可能に挿通されていることにより、電極カテーテル200の先端部分が、第2仮想平面P2に沿って先端シャフト部11を曲げようとする力を受けたときには、曲げるときに内側に位置する棒バネ(第1棒バネ61または第2棒バネ62)が基端方向にスライドするとともに、曲げるときに外側に位置する棒バネ(第2棒バネ62または第1棒バネ61)が先端方向にスライドすること、すなわち、第1棒バネ61および第2棒バネ62が、互いに軸方向の反対側にスライドすることにより、先端シャフト部11を曲げようとする力に抗する第1棒バネ61および第2棒バネ62の抵抗力をキャンセルすることができ、これにより、先端シャフト部11を容易に曲げる(撓ませる)ことが可能となる。
【0082】
図8に示すように、高剛性部材60の連結部63は、先端シャフト部11とアンカー部材70との間のクリアランスに充填された接着剤90により、当該先端シャフト部11の先端に固定されている。
【0083】
このように、第1棒バネ61の先端および第2棒バネ62の先端が先端シャフト部11の先端に固定されている電極カテーテル200によれば、第2仮想平面P2に沿って先端
シャフト部11が曲げられている状態において、曲げの内側に位置している棒バネ(第1棒バネ61または第2棒バネ62)が先端方向にスライドするとともに、曲げの外側に位置している棒バネ(第1棒バネ62または第1棒バネ61)が基端方向にスライドすることにより、先端シャフト部11を直線形状に復元することができる。
【0084】
また、第1棒バネ61の先端および第2棒バネ62の先端が先端シャフト部11の先端に固定されていることにより、先端偏向操作を繰り返しても、第1棒バネ61および第2棒バネ62が基端方向にずれてしまうようなことを防止することができる。
【0085】
図8に示すように、先端シャフト部11が直線状態にあるときにおいて、第1棒バネ61の基端612は、棒バネルーメン113の基端開口(先端シャフト部11の基端)から所定の距離Dだけ先端側に位置しており、第2棒バネ62の基端622は、棒バネルーメン114の基端開口(先端シャフト部11の基端)から同じ距離Dだけ先端側に位置している。
【0086】
このような構成によれば、先端シャフト部11が第2仮想平面P2に沿って曲げられている状態においても、曲げの内側に位置している棒バネ(第1棒バネ61または第2棒バネ62)の基端が、基端シャフト部12の先端面に当接することを有効に防止することができる。
【0087】
本実施形態の電極カテーテル200によれば、2つの棒バネルーメン113,114に、それぞれ、第1棒バネ61および第2棒バネ62が軸方向にスライド可能に挿通されていることにより、カテーテルシャフト10の先端シャフト部11を第2仮想平面P2に沿って容易に曲げることができ、これにより、優れたトルク伝達性を発揮することができる。
また、第1棒バネ61および第2棒バネ62の先端どうしを連結する連結部63が先端シャフト部11の先端に固定されていることにより、先端シャフト部11の復帰性にも優れている。
さらに、先端偏向操を繰り返しても、第1棒バネ61および第2棒バネ62が基端方向にずれてしまうようなこともない。
【符号の説明】
【0088】
100 電極カテーテル
10 カテーテルシャフト
11 先端シャフト部
111,112 ワイヤルーメン
113,114 棒バネルーメン
115~118 ルーメン
119A,119B ルーメン
12 基端シャフト部
121,122 ルーメン
125~128 ルーメン
129A,129B ルーメン
30 先端電極
41~43 リング状電極
30L,41L~43L 導線
45 熱電対
51 第1操作用ワイヤ
52 第2操作用ワイヤ
61 第1棒バネ
611 第1棒バネの先端
612 第1棒バネの基端
62 第2棒バネ
621 第2棒バネの先端
622 第2棒バネの基端
70 アンカー部材
80 ハンドル
85 摘み
90 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8