(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】防汚組成物及びその使用法
(51)【国際特許分類】
C10G 75/04 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
C10G75/04
(21)【出願番号】P 2021572876
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 IN2020050307
(87)【国際公開番号】W WO2020255155
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】201941024435
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】519421190
【氏名又は名称】ヒンドゥスタン ペトロリアム コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エスワララオ,ドニ
(72)【発明者】
【氏名】ラガヴァ クリシュナ,カナラ
(72)【発明者】
【氏名】サイラム,マダラ
(72)【発明者】
【氏名】ラムクマール,マンガラ
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドララオ,ボッジャ
(72)【発明者】
【氏名】ベンカテスワリュ チョウダリー,ネッタム
(72)【発明者】
【氏名】スリガネシュ,ガンダム
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0218468(US,A1)
【文献】国際公開第2017/141077(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体炭化水素媒体中のファウリングを防止するための防汚組成物であって、
(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、
(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、
(c)少なくとも一つの希釈液、
(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び
(e)少なくとも一つのアルキルアミン
を含
み、
前記少なくとも一つの芳香族炭化水素はナフタレンであり、
前記ナフタレンはC
1-6
アルキル、C
1-6
ハロアルキル、C
2-6
アルケニル、C
2-6
アルキニル、C
1-6
アルコキシ、C
3-6
シクロアルキル、又はC
5-6
アリルで任意に置換可能であり、
前記少なくとも一つの希釈液は、ライトサイクルオイル、ケロシン、ディーゼル、ミネラルテレビン油(MTO)、及びそれらの組合せからなる群から選択される防汚組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の防汚組成物であって、
前記少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と前記少なくとも一つの芳香族炭化水素との重量比が1:1~10:1である防汚組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の防汚組成物であって、
前記少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と前記ポリイソブチレンコハク酸無水物との重量比が0.25:1~10:1である防汚組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の防汚組成物であって、
前記少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と前記少なくとも一つのアルキルアミンとの重量比が1:1~20:1である防汚組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の防汚組成物であって、
前記少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と前記少なくとも一つの希釈液との重量比が0.05:1~0.4:1である防汚組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の防汚組成物であって、
前記少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩は前記防汚組成物全体に対して5~20重量%であり、
前記少なくとも一つの芳香族炭化水素は前記防汚組成物全体に対して2~5重量%であり、
前記少なくとも一つの希釈液は前記防汚組成物全体に対して50~85重量%であり、
前記ポリイソブチレンコハク酸無水物は前記防汚組成物全体に対して5~20重量%であり、
前記少なくとも一つのアルキルアミンは前記防汚組成物全体に対して1~5重量%である防汚組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の防汚組成物であって、
前記少なくとも一つのアルキルアミンは、C
12アミン、C
8アミン、C
9アミン、C
10アミン、C
11アミン、C
13アミン、C
14アミン、C
16アミン、C
17アミン、C
18アミン、及びそれらの組合せからなる群から選択される防汚組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の防汚組成物を製造する方法であって、
(a)前記少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、前記少なくとも一つの芳香族炭化水素、前記少なくとも一つの希釈液、前記ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び前記少なくとも一つのアルキルアミンを接触させて第一混合物を得る工程、並びに
(b)前記第一混合物を処理して前記防汚組成物を得る工程
を有する方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の方法であって、
前記第一混合物の処理は、40~50℃の温度において50~200ppmの撹拌速度で2~4時間実施することにより、前記防汚組成物を得る方法。
【請求項10】
液体炭化水素媒体中のファウリングを防止する方法であって、
原油及びショートレジデュの前熱交換器内において請求項1から
7のいずれか一項に記載の防汚組成物と液体炭化水素媒体とを接触させる工程を含む方法。
【請求項11】
請求項
10に記載の方法であって、
前記防汚組成物と前記液体炭化水素媒体との重量比が1:500~1:200000である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は炭化水素精製の分野に関する。具体的には、本開示は熱交換器内のファウリングを低減するための防汚組成物に関する。本開示は更に、防汚組成物の製造方法及び炭化水素媒体中の汚れを防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝熱面に不要な物質が堆積することをファウリングという。これは、時間と共に変化する動的な現象であり、原油前熱交換器、炉、水素化処理交換器、反応器床、流動接触分解ユニット(FCCU)スラリー交換器、及び熱分解処理交換器等のユニットの稼働効率と共に熱的及び機械的性能に著しく悪い影響を及ぼすことがある。
【0003】
原油の種類、設備の設計、流速、温度、ユニットの作動の過酷さ、及び流体の性質を含む複数の要因がファウリングに影響を及ぼす。これら全てがエネルギーの損失、維持コストの上昇、設備寿命の減少、処理能力の低下、及び安全性の問題をもたらす。そのため、最新の精製所は、より長い連続運転時間と設備の最小限のファウリングによる信頼性及び処理の柔軟性を求めている。
【0004】
ファウリング堆積物として知られる不要な物質は、スケール(scale)、懸濁固体、及び不溶性の塩の可能性がある。一般に、ファウリング堆積物は二つの主要なタイプ、つまり無機物と有機物とに分類できる。無機物のファウリングの場合、処理設備の腐食が鉄を基にする腐食物質、例えば交換器内の主に低速の領域に堆積する硫化鉄又は酸化第二鉄を生じることがある。砂やシルト等の無機固体の混入物も交換器内に堆積して水圧又は熱の障害を引き起こすことがある。原油ユニット中の有機物のファウリングは、システム中で不溶になるアスファルテンや高分子量炭化水素などの有機化合物の沈殿から生じる。アスファルテンは、親和性の無い原油を混合することにより不安定になり、原油を高温に加熱することにより析出する。更に、アスファルテン及び他の高分子量有機分子は、高いヒータ管表面温度に晒されるとコークスに熱分解することが知られている。
【0005】
通常、有機物のファウリングは、原油中に存在するファウリング前駆体によって開始されるポリマー化反応によって引き起こされる。二つのポリマー化のメカニズム、すなわち「フリーラジカル」反応と「ノンフリーラジカル」反応が特定されている。最も一般的なメカニズムは「フリーラジカル」ポリマー化であり、オレフィンやジオレフィン等の不飽和化合物が反応してより長鎖の分子を形成する。分子の鎖長は溶解限界を超える時点まで増加し、その結果堆積が生じる。ノンフリーラジカルポリマー化のメカニズムは、主にカルボン酸や窒素化合物等の成分を含む凝集反応の結果として生じる。ファウリングを適切に制御するために、ファウリングのメカニズムを識別する際にこれら二つの分類の違いが完全に理解され、考慮されなければならない。
【0006】
精製所の処理設備のファウリングは、エネルギーロスにより深刻な経済的不利益を生じる一般的な問題であり、重要な安全上の懸念をもたらす。米国特許第2976211号明細書、米国特許第3080280号明細書、米国特許第5110997号明細書、国際公開第2017/141077号等の文献において、アルキルベンゼンスルホン酸塩に基づくイオン性界面活性剤を含有する防汚組成物を含む幾つかの防汚組成物が知られている。しかし、従来技術において、全ての種類の原油、原油の混合物、ショートレジデュ、及び他の精製所のストリーム及びユニット(例えば、ディーゼル水素化脱硫、すなわちDHDSユニット)熱交換器で機能し、ファウリングを効率的に低減する単一の防汚組成物は非常に少ない。そのため、世界中のファウリングによる多大な損失と防汚組成物の利用可能性が十分でない観点から、効率的な防汚組成物が至急求められている。
【発明の概要】
【0007】
本開示のある態様では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0008】
本開示の別の態様では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物の製造方法であって、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、少なくとも一つの芳香族炭化水素、少なくとも一つの希釈液、ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び少なくとも一つのアルキルアミンを接触させて第一混合物を得ること、及び(b)第一混合物を処理して防汚組成物を得ることを含む方法が提供される。
【0009】
本開示のさらに別の態様では、液体炭化水素媒体中のファウリングを防止する方法であって、原油及びショートレジデュの前熱交換器において、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物と液体炭化水素媒体とを接触させることを含む。
【0010】
本開示の対象のこれら及び他の特徴、形態、及び利点は以下の説明及び添付の請求項を参照することにより、より良く理解される。この概要は簡素化されたコンセプトの選択を紹介するために提供されている。この概要は請求項に記載の対象の範囲を限定するために用いることを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
詳細な説明は添付の図面に基づき記載される。図面において、参照番号の最も左のアラビア数字は、参照番号が最初に記載された図面を示す。同様の特徴及び構成を参照するために図面全体において同じ番号が用いられる。
【0012】
図1は、本開示の実施における防汚組成物に対するクルード-1の評価のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
当業者は、本開示が具体的に記載された内容以外にも変形形態や修正形態も対象とすることを認識する。本開示はそのような全ての変形形態や修正形態も含むことが理解される。また、本開示は明細書中で言及された又は示された全ての工程、特徴、組成、及び化合物を、個別に、又は集合的に、そしてそれらの工程又は特徴のあらゆる組み合わせを含む。
【0014】
定義
便宜上、本開示の更なる説明の前に、明細書及び実施例で使用される幾つかの用語をここにまとめる。これらの定義は、当業者によって開示内容の注釈の観点から読んで理解されなければならない。本明細書において使用された用語は当業者に理解される周知の意味を有しているが、便宜のため及び万全を期するために、特定の用語及びその意味を以下に示す。
【0015】
「a」、「an」及び「the」は、文法上の対象物が一つ又は一つより多く(すなわち、少なくとも一つ)を指すために用いられる。
【0016】
「含む(comprise)」及び「含んでいる(comprising)」は、追加の要素を包含し得る包含的意味、開いている意味で用いられる。本明細書全体において、文章に異なる記載が無い限り、「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」等の変形は、記載された要素若しくは工程又は要素若しくは工程の群を含み、他の要素若しくは工程又は要素若しくは工程の群を除外しないことが理解される。
【0017】
「包含する(including)」は「包含するが限定されない(including but not limited to)」意味で用いられる。「包含する(including)」及び「包含するが限定されない(including but not limited to)」は置換可能に使用される。
【0018】
「間(between)」は境界を含むことを理解されなければならない。
【0019】
「API」は、原油又は精製物の密度の指標として一般に用いられる。APIは、American Petroleum Instituteを意味し、それはこの測定基準を作成した産業組織である。
【0020】
本開示における「外気(ambient)」は25℃から37℃の温度範囲を指す。
【0021】
異なる記載が無い限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本開示が属する分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び物質と類似又は同等の方法及び物質が本開示の実施又は試験に使用可能であるものの、今回は好ましい方法及び物質を説明する。本明細書で言及した全ての文献は参照によって本明細書に援用される。
【0022】
成分の等価のモル比が範囲の形式として本明細書に示される。そのような範囲の形式は、単に便宜的で簡潔であるために使用されており、範囲の境界として明記された数値のみではなく、それぞれの数値や部分範囲が明示されている場合は当該範囲内の全ての個々の数値や部分範囲を含むよう柔軟に解釈されることが理解されなければならない。例えば、約40℃から約50℃の温度範囲は、約40℃から約50℃の明示された境界のみではなく、特定の範囲内における部分的な範囲を含む個々の値、例えば、42.2℃、40.6℃、及び49.3℃と同様に、45℃から48℃等の部分範囲も含む。
【0023】
本開示は、例示のみを目的として本明細書に記載された特定の実施形態に範囲を限定されない。機能的に同等の生成物、組成物、及び方法は、本明細書に記載の開示の範囲に明らかに属する。
【0024】
背景の欄で説明した通り、エネルギーの損失、維持コストの上昇、設備寿命の減少、処理能力の低下、及び安全上の問題を引き起こすファウリングに影響を及ぼす複数の要因が存在する。そのため、最新の精製所では、より長い連続稼働時間をもたらす効率的な防汚組成物が必要とされている。上述の問題に対処するために、本開示は、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物を提供する。この防汚組成物は、精製ファウリング処理シミュレータ(RFPS)を用いて一連の原油及び減圧蒸留残油を評価すると、防汚組成物無しのコントロール実験と比較して優れた結果を示した。
【0025】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0026】
本開示の一実施形態では、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つの芳香族炭化水素との重量比が1:1~10:1の範囲である、本明細書に記載の防汚組成物が提供される。
【0027】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物であって、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つの芳香族炭化水素との重量比が1:1~10:1の範囲である、防汚組成物が提供される。
【0028】
本開示の一実施形態では、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩とポリイソブチレンコハク酸無水物との重量比が0.25:1~10:1の範囲である、本明細書に記載の防汚組成物が提供される。本開示の別の実施形態では、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩とポリイソブチレンコハク酸無水物との重量比が0.25:1~4:1の範囲である。本開示の更に別の実施形態では、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩とポリイソブチレンコハク酸無水物との重量比が0.25:1~2.5:1の範囲である。
【0029】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物であって、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩とポリイソブチレンコハク酸無水物との重量比が0.25:1~10:1の範囲である防汚組成物が提供される。
【0030】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物であって、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩とポリイソブチレンコハク酸無水物との重量比が0.25:1~4:1の範囲である防汚組成物が提供される。
【0031】
本開示の一実施形態では、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つのアルキルアミンとの重量比が1:1~20:1の範囲である、本明細書に記載の防汚組成物が提供される。
【0032】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物であって、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つのアルキルアミンとの重量比が1:1~20:1の範囲である防汚組成物が提供される。
【0033】
本開示の一実施形態では、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つの希釈液との重量比が0.05:1~0.4:1の範囲である、本明細書に記載の防汚組成物が提供される。
【0034】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物であって、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つの希釈液との重量比が0.05:1~0.4:1の範囲である防汚組成物が提供される。
【0035】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物であって、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つの芳香族炭化水素との重量比が1:1~10:1の範囲であり、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩とポリイソブチレンコハク酸無水物との重量比が0.25:1~10:1の範囲であり、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つのアルキルアミンとの重量比が1:1~20:1の範囲であり、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つの希釈液との重量比が0.05:1~0.4:1の範囲である防汚組成物が提供される。
【0036】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物であって、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つの芳香族炭化水素との重量比が1:1~10:1の範囲であり、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩とポリイソブチレンコハク酸無水物との重量比が0.25:1~4:1の範囲であり、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つのアルキルアミンとの重量比が1:1~20:1の範囲であり、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩と少なくとも一つの希釈液との重量比が0.05:1~0.4:1の範囲である防汚組成物が提供される。
【0037】
本開示の別の実施形態では、少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩が組成物全体に対して5~20重量%であり、少なくとも一つの芳香族炭化水素が組成物全体に対して2~5重量%であり、少なくとも一つの希釈液が組成物全体に対して50~85重量%であり、ポリイソブチレンコハク酸無水物が組成物全体に対して5~20重量%であり、少なくとも一つのアルキルアミンが組成物全体に対して1~5重量%である、本明細書に記載の防汚組成物が提供される。
【0038】
本開示の一実施形態では、(a)組成物全体に対して5~20重量%である少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)組成物全体に対して2~5重量%である少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)組成物全体に対して50~85重量%である少なくとも一つの希釈液、(d)組成物全体に対して5~20重量%であるポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)組成物全体に対して1~5重量%である少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0039】
本開示の別の実施形態では、(a)組成物全体に対して10~20重量%である少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)組成物全体に対して2.5~3.5重量%である少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)組成物全体に対して60~85重量%である少なくとも一つの希釈液、(d)組成物全体に対して5~15重量%であるポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)組成物全体に対して1~3重量%である少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0040】
本開示の別の実施形態では、(a)組成物全体に対して10重量%である少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)組成物全体に対して3重量%である少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)組成物全体に対して75重量%である少なくとも一つの希釈液、(d)組成物全体に対して5重量%であるポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)組成物全体に対して3重量%である少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0041】
本開示の別の実施形態では、(a)組成物全体に対して10重量%である少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)組成物全体に対して3重量%である少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)組成物全体に対して75重量%である少なくとも一つの希釈液、(d)組成物全体に対して10重量%であるポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)組成物全体に対して3重量%である少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0042】
本開示の別の実施形態では、(a)組成物全体に対して20重量%である少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)組成物全体に対して3重量%である少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)組成物全体に対して65重量%である少なくとも一つの希釈液、(d)組成物全体に対して10重量%であるポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)組成物全体に対して2重量%である少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0043】
本開示の別の実施形態では、少なくとも一つの芳香族炭化水素がナフタレンであり、ナフタレンはC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキル、又はC5-6アリルで任意に置換可能である、本明細書に記載の防汚組成物が提供される。本開示の更に別の実施形態では、少なくとも一つの芳香族炭化水素はナフタレンである。
【0044】
本開示の別の実施形態では、少なくとも一つの希釈液が、ライトサイクルオイル、ケロシン、芳香族リッチな(aromatic-rich)炭化水素希釈液、ディーゼル、ミネラルテレビン油(MTO)、及びそれらの組合せからなる群から選択される、本明細書に記載の防汚組成物が提供される。本開示の別の実施形態では、少なくとも一つの希釈液はライトサイクルオイルである。更に別の実施形態では、少なくとも一つの希釈液はケロシンである。
【0045】
本開示の別の実施形態では、少なくとも一つのアルキルアミンが、C12アミン、C8アミン、C9アミン、C10アミン、C11アミン、C13アミン、C14アミン、C16アミン、C17アミン、C18アミン、及びそれらの組合せからなる群から選択される、本明細書に記載の防汚組成物が提供される。本開示の別の実施形態では、少なくとも一つのアルキルアミンはC12アミンである。本開示の更に別の実施形態では、少なくとも一つのアルキルアミンはラウリルアミンである。
【0046】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)ナフタレンである少なくとも一つの芳香族炭化水素、ここで、ナフタレンはC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキル、又はC5-6アリルで任意に置換可能であり、(c)ライトサイクルオイル、ケロシン、芳香族リッチな炭化水素希釈液、ディーゼル、ミネラルテレビン油(MTO)、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)C12アミン、C8アミン、C9アミン、C10アミン、C11アミン、C13アミン、C14アミン、C16アミン、C17アミン、C18アミン、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0047】
本開示の一実施形態では、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)ナフタレンである少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)ライトサイクルオイル又はケロシンから選択される少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)C12アミンである少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0048】
本開示の一実施形態では、(a)組成物全体に対して5~20重量%である少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)組成物全体に対して2~5重量%であり、ナフタレンである少なくとも一つの芳香族炭化水素、ここで、ナフタレンはC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C1-6アルコキシ、C3-6シクロアルキル、又はC5-6アリルで任意に置換可能であり、(c)組成物全体に対して50~85重量%であり、ライトサイクルオイル、ケロシン、芳香族リッチな炭化水素希釈液、ディーゼル、ミネラルテレビン油(MTO)、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも一つの希釈液、(d)組成物全体に対して5~20重量%であるポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)組成物全体に対して1~5重量%であり、C12アミン、C8アミン、C9アミン、C10アミン、C11アミン、C13アミン、C14アミン、C16アミン、C17アミン、C18アミン、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物が提供される。
【0049】
本開示の別の実施形態では、本明細書に記載の防汚組成物を製造する方法であって、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、少なくとも一つの芳香族炭化水素、少なくとも一つの希釈液、ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び少なくとも一つのアルキルアミンを接触させて第一混合物を得る工程と、(b)第一混合物を処理して防汚組成物を得る工程とを有する方法が提供される。
【0050】
本開示の別の実施形態は、本明細書に記載の防汚組成物の製造であって、第一混合物の処理が40~50℃の温度において50~200rpmの撹拌速度で2~4時間行われることにより、防汚組成物が得られる。
【0051】
本開示の別の実施形態では、本明細書に記載の防汚組成物を製造する方法であって、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、少なくとも一つの芳香族炭化水素、少なくとも一つの希釈液、ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び少なくとも一つのアルキルアミンを接触させて第一混合物を得る工程と、(b)40~50℃の温度において50~200rpmの撹拌速度で2~4時間第一混合物を処理して防汚組成物を得る工程とを有する方法が提供される。
【0052】
本開示の一実施形態では、液体炭化水素媒体中のファウリングを防止する方法であって、原油及びショートレジデュの前熱交換器において本明細書に記載の防汚組成物と液体炭化水素媒体とを接触させることを含む方法が提供される。
【0053】
本開示の一実施形態では、液体炭化水素媒体中のファウリングを防止する方法であって、本明細書に記載の防汚組成物と液体炭化水素媒体とを接触させることを含み、防汚組成物と液体炭化水素媒体との重量比が1:500~1:200000である方法が提供される。本開示の別の実施形態では、防汚組成物と液体炭化水素媒体との重量比が1:500~1:20000である。本開示の更に別の実施形態では、防汚組成物と液体炭化水素媒体との重量比が1:500~1:2000である。本開示の更なる実施形態では、防汚組成物と液体炭化水素媒体との重量比が1:500~1:1500である。本開示の更なる実施形態では、防汚組成物と液体炭化水素媒体との重量比が1:500~1:1000である。
【0054】
本開示の一実施形態では、液体炭化水素溶媒中のファウリングを防止する方法であって、(a)少なくとも一つの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、(b)少なくとも一つの芳香族炭化水素、(c)少なくとも一つの希釈液、(d)ポリイソブチレンコハク酸無水物、及び(e)少なくとも一つのアルキルアミンを含む防汚組成物と液体炭化水素媒体とを350℃~550℃、250psi~550psiで接触させることを含み、液体炭化水素媒体の温度が25℃~160℃であり、液体炭化水素媒体の流速が1~3ml/分である、方法が提供される。
【0055】
本開示の一実施形態では、液体炭化水素媒体中のファウリングを防止する方法であって、本明細書に記載の原油及び/又はショートレジデュの前熱交換器において防汚組成物と液体炭化水素媒体とを接触させることを含み、防汚組成物と液体炭化水素媒体との重量比が1:500~1:200000である方法が提供される。
【0056】
本開示の一実施形態では、液体炭化水素媒体中のファウリングを防止する方法であって、本明細書に記載の原油及び/又はショートレジデュの前熱交換器において防汚組成物と液体炭化水素媒体とを接触させることを含み、防汚組成物と液体炭化水素媒体との重量比が1:500~1:200000である方法が提供される。
【実施例】
【0057】
以下の例は本発明の説明のために示されており、本開示の範囲を限定すると解釈されてはならない。上述の一般的な説明と以下の詳細な説明の両方が例示及び解説であり、請求項に記載の対象の更なる説明を示すことを意図していることが理解される。
【0058】
例1:ファウリングスケールの解析
熱交換器から得られたファウリングスケールが解析され、その解析は、ファウリングスケールが無機物と有機物の両方を含んでいることを示した。そのため、組成物が有機物及び無機物のファウリングを抑制できる可能性が検討された。
【0059】
また、熱交換器内のファウリングは原油の種類やその成分によっても影響を受ける。そのため、幾つかの原油が、硫黄(重量%)、全塩基価(TBN)、及びアスファルテン成分の飽和分、芳香族、レジン、アスファルテン(SARA)について解析された。これらの要素は防汚組成物の開発中に考慮された。幾つかの原油の成分に関する解析結果を以下の表1に示す。
表1.クルード(Crude)-1、クルード-2、クルード-3、クルード-4、ブレンド-1、ブレンド-2の解析
【0060】
ショートレジデュのブレンドであるブレンド-3の性質の解析結果を以下の表2に示す。
表2.(540℃以上の沸点を有する)ショートレジデュの性質
【0061】
例2:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LABSA)及びアルキルアミン塩の調製
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸モルホリン塩の調製方法
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LABSA)(1ミリモル)をコンデンサ付きの2ネック丸底フラスコに添加した。フラスコを15℃に冷却した。反応物を撹拌しながら、モルホリン(1.5ミリモル)をゆっくりと添加した。モルホリンを添加している間、フラスコ内の温度が50℃を超えないように注意した。モルホリンを加え終わった後に、得られた混合物を30分間攪拌し続けてLABSA-モルホリン塩を得た。
【0062】
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸イソプロピルアミン塩の調製方法
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LABSA)(1ミリモル)をコンデンサ付きの2ネック丸底フラスコに添加した。フラスコを15℃に冷却した。反応物を撹拌しながら、イソプロピルアミン(IPA)(1.5ミリモル)をゆっくりと添加した。IPAを添加している間、フラスコ内の温度が25℃を超えないように注意した。これによりIPAの蒸発が回避される。IPAを加え終わった後に、得られた反応混合物を30分間攪拌し続けてLABSA-IPA塩を得た。
【0063】
例3:防汚組成物の調製
40~50℃で攪拌しながら、LABSA-アミン(5~20重量%)を含むフラスコに、ナフタレン(2~5重量%)、ポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA)(5~20重量%)、ラウリルアミン(2~5重量%)、及び希釈液(AF-15,AF-18,AF-19,AF-20,AF-21及びAF-24用のライトサイクルオイル、又はAF-29,AF-30及びAF-36用のケロシン)(50~85重量%)を混合した。得られた反応成分を撹拌して均一な組成物(第一混合物)を得た。第一混合物を安定化させるために、必要に応じて40~50℃において50~200rpmの撹拌速度で2~4時間かけて、ジエタノールアミン又はモノエタノールアミン(0.1~2重量%)を添加することで、防汚組成物を得た。様々な原油、原油の混合物、及び減圧蒸留残油/ショートレジデュを評価するために、化学成分と希釈液の量を変えて幾つかの組成物が作成された。
【0064】
例4:防汚組成物を含む炭化水素媒体のファウリングの防止方法及びその評価
防汚組成物を接触させることを含み、(1000~1500ppmに相当する0.1~0.15重量%の)防汚組成物と液体炭化水素媒体(クルード1-4、ブレンド1-3)との重量比が1:600~1:1000である方法が実験室で実施された。本開示の防汚組成物による炭化水素媒体のファウリングの防止を評価するために用いられた実施条件とパラメータを下記表3に示す。
【0065】
防汚組成物の評価は精製処理ファウリングシミュレータ(RPFS)を用いて行った。
表3.防汚組成物の実施条件
【0066】
本開示の防汚組成物の効果の測定は、ΔT(温度差)の観点で様々な原油及び混合物に対して行われた。様々な原油(クルード-1からクルード-3)及び混合物(ブレンド-1からブレンド-3)に対して評価されたΔT値を以下に示す。
表4.クルード-1の評価結果
【0067】
クルード-1の評価結果が上記表4に示されている。本開示の
図1には、グラフとして示されている。
【0068】
ファウリングは異なるメカニズムによる多数の要因により生じるため、効果的な防汚のためには、全ての種類のファウリングを抑制できる組成物が必要であることが認識される。本開示の防汚組成物は、有機物及び無機物のファウリングを抑制し、クルード-1のファウリングを効果的に防止している。これは表4に記載の結果から証明されている。
【0069】
ライトサイクルオイル(LCO)、又はケロシン及び/又は最高で55%の芳香族を含む非常に芳香族リッチな炭化水素が、本開示の防汚組成物の希釈液として使用された。
【0070】
防汚効果を評価するため、AF-15,AF-18,AF-19,AF-20及びAF-21等の様々な防汚組成物がクルード-1と混合された。AF-15組成物は、直鎖ベンゼンスルホン酸アンモニウム塩を15重量%、アルキルアミンを2重量%、希釈液を83重量%含有した。組成物AF-15には、芳香族炭化水素及びポリイソブチレンコハク酸無水物が含まれていなかった。組成物AF-18は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩を10重量%、ポリイソブチレンコハク酸無水物を5重量%、希釈液を85重量%含有した。組成物AF-18には、芳香族炭化水素及びアルキルアミンが含まれていなかった。つまり、組成物AF-15及びAF-18には、本開示で説明される5つの成分のうち2つが含まれていなかった。
【0071】
組成物AF-19は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩10重量%、ポリイソブチレンコハク酸無水物5重量%、アルキルアミン2重量%、及び希釈液83重量%からなる。芳香族炭化水素はAF-19には含まれていなかった。組成物AF-20は、ポリイソブチレンコハク酸無水物10重量%、芳香族炭化水素3重量%、アルキルアミン2重量%、及び希釈液85重量%からなり、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は含まれていない。つまり、組成物AF-19及びAF-20には、本開示で説明された5つの成分のうち一つが含まれていなかった。また、組成物AF-18及びAF-19では、ポリイソブチレンコハク酸無水物は特定の範囲(5~20重量%)から外れている。
【0072】
防汚組成物AF-21は、本開示で説明された5つの成分全てを含む。当該組成物は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩10重量%、ポリイソブチレンコハク酸無水物10重量%、芳香族炭化水素3重量%、アルキルアミン2重量%、及び希釈液75重量%を含む。5つの成分全てを特定の重量%で含有する防汚組成物、すなわちAF-21は、表4に示される他の組成物よりも効果が高いことが見出された。
【0073】
クルード-1に対するΔT値に基づき、全ての防汚組成物の効果が検討された。ΔT値が低いほど、効果は高くなる。5つ全ての成分を含有しない組成物AF-15、AF-18、AF-19、及びAF-20のΔT値は、5つの成分全てを含む防汚組成物AF-21と比較して高いΔT値を有することが見出された。AF-21が到達したΔT値は、本開示の防汚組成物(AF-21)無しのコントロールクルード-1と比較して最も低い-14.6℃であった。
【0074】
したがって、特定の重量%である成分は効果的な防汚組成物を得るために重要であるとの結論に達した。各成分の重量%の逸脱や非存在は、効果を落とした。
【0075】
更なる防汚組成物、AF-24、AF-29、AF-30及びAF-36が調製され、ブレンド-3に対する防汚能力が評価された。ショートレジデュ(SR)を含有するブレンド-3に対する様々な防汚組成物の効果を下記表5に示す。
【0076】
組成物AF-24(組成は下記表5に示す)は5つの成分のうち2つのみ、具体的には直鎖アルキルアンモニウム塩20重量%及び希釈液(ライトサイクルオイル)80重量%を含有した。アルキルアミン、芳香族炭化水素、及びポリイソブチレンコハク酸無水物の各成分は含まれなかった。同様に、AF-30は、5つの成分のうち3つのみ、具体的には直鎖アルキルアンモニウム塩20重量%、ポリイソブチレンコハク酸無水物5重量%、及び希釈液75重量%を含有した。アルキルアミン及び芳香族炭化水素の各成分は含まれていなかった。
【0077】
防汚組成物AF-29は5つ全ての成分、具体的には直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩20重量%、ポリイソブチレンコハク酸無水物5重量%、芳香族炭化水素3重量%、アルキルアミン2重量%、及び希釈液70重量%を含有した。同様に、AF-36は5つ全ての成分、具体的には直鎖アルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩20重量%、ポリイソブチレンコハク酸無水物10重量%、芳香族炭化水素3重量%、アルキルアミン2重量%、及び希釈液65重量%を含有した。
【0078】
表5から、全ての成分を特定の範囲で含有する本開示の防汚組成物、すなわちAF-36及びAF-29は、他の組成物よりも効果的であることが推測された。
表5.ブレンド-3の評価結果
【0079】
本開示はさらに、他の原油(クルード-2及びクルード-3)及び混合物(ブレンド-1及びブレンド-2)に対するΔT値に基づく本開示の防汚組成物の評価を示す。
表6.クルード-2、クルード-3、ブレンド-1、及びブレンド-2の評価結果
【0080】
クルード-2及びクルード-3に対する評価結果がブレンド-1及びブレンド-2に対する評価結果と共に上記表6に示されている。評価はクルード-1に関して上述したのと同様に行われた。表6に示されるように、ΔT値に基づくと、AF-29(組成は上記表5に示す)はクルード-2及びブレンド-2に対する最も良い防汚組成物であることが判明した。同様に、クルード-3及びブレンド-1に対しては、防汚組成物AF-21がΔT値に基づく最も良い結果を示した。
【0081】
上述の通り、本開示の防汚組成物はほぼすべての種類のファウリングを防止可能であることが観察されており、様々なクルード及びブレンドを試験することにより確認された効果的な防汚組成物に値した。したがって、本開示の防汚組成物は当該分野で周知の防汚組成物に対して技術的に進歩している。
【0082】
対象は実施例及び実施形態を参照してかなり詳細に説明されたが、この説明は限定的に解釈されることを意味しない。対象の代替的な実施形態と同様に、開示された実施形態の様々な変更が、対象の説明を参照した当業者にとって自明になるであろう。したがって、そのような変更は特定される対象から逸脱することなく実施可能であると考えられる。
【0083】
防汚剤の利点
本開示は、炭化水素精製処理における原油及び減圧蒸留残油の熱交換器内の微粒子誘導ファウリングを含むファウリングを低減するために、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びアミンに基づくイオン性界面活性剤と、ポリイソブチレンコハク酸無水物と、ナフタレンと、芳香族リッチな希釈液とを含有する高性能な防汚組成物を提供する。
【0084】
本開示の防汚組成物は、精製処理ファウリングシミュレータ(RPFS)を用いて一連の原油及び減圧蒸留残油に対して評価すると、防汚組成物を含まない場合と比較して優れた結果を示した。この評価解析は、原油、混合物、及びショートレジデュの熱交換器に限定されず、DHDSユニット、ビスブレーカーユニット、及び他の精製用途の熱交換器においても使用可能である。