IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンファ トータル ペトロケミカル カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7261348太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池
<>
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図1
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図2
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図3
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図4
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図5
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図6
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図7
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図8
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図9
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図10
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図11
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図12
  • 特許-太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及びこれを含む太陽電池
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230412BHJP
   H01L 31/055 20140101ALI20230412BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20230412BHJP
【FI】
G02B5/20
H01L31/04 622
H01L31/04 560
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022502186
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 KR2020009280
(87)【国際公開番号】W WO2021010736
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0085176
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0093942
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0093929
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515253049
【氏名又は名称】ハンファ トタルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム キ セ
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】イ ド フン
(72)【発明者】
【氏名】キム チョン キ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン レ
(72)【発明者】
【氏名】パイク テ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン ヒェ
(72)【発明者】
【氏名】シン ヒョ ジュ
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-015346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0090527(US,A1)
【文献】国際公開第2020/040417(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01L 31/055
H01L 31/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の吸収及び可視光線の発光特性を有する発光性水酸化アルミニウムであって、内部の欠陥により形成された、基底状態と励起状態との間のトラップ準位を有する発光性水酸化アルミニウムを含むことを特徴とする、太陽光変換素材。
【請求項2】
前記水酸化アルミニウム前駆体は、アルミニウムモノアセテート、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムジアセテート、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、アルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムクロリド、アルミニウムスルフェート、アルミニウムシアニド、アルミニウムナイトライト、アルミニウムカーボネート、アルミニウムスルフィット、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムオキシド、アルミニウムクロレート、アルミニウムスルファイド、アルミニウムクロメート、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムパークロレート、アルミニウムナイトレート、アルミニウムパーマンガネート、アルミニウムヒドロゲンカーボネート、アルミニウムホスフェート、アルミニウムオキサレート、アルミニウムヒドロゲンホスフェート、アルミニウムチオスルフェート、アルミニウムクロライト、アルミニウムヒドロゲンスルフェート、アルミニウムジクロメート、アルミニウムブロマイド、アルミニウムハイポクロライト、アルミニウムクロリドヘキサハイドレート、アルミニウムジヒドロゲンホスフェート、アルミニウムホスフィット、アルミニウムポタシウムスルフェートドデカハイドレート、アルミニウムブロメート、アルミニウムナイトライド又はこれらの誘導体のうちいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項3】
前記太陽光変換素材は、Al(OH)3、AlOOH、5Al2O3・2H2O、Al2O3の構造を含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項4】
前記発光性水酸化アルミニウムのサイズは、1nm~1000μm範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項5】
前記発光性水酸化アルミニウムは、多孔性構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項6】
ランタン系イオン又はこれを含む誘導体;をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項7】
前記ランタン系イオンが近赤外線、紫外線又は可視光線波長領域で発光が可能であることを特徴とする、請求項6に記載の太陽光変換素材。
【請求項8】
前記近赤外線発光ランタン系イオンの前駆体は、Yb(ytterbium)、Nd(neodymium)、Er(erbium)、Ho(holmium)、Tm(thulium)及びこれらを含む誘導体のうち一つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載の太陽光変換素材。
【請求項9】
前記ランタン系イオン前駆体が可視光線波長領域で発光波長を有する元素を含むことを特徴とする、請求項6に記載の太陽光変換素材。
【請求項10】
前記ランタン系イオン又はそれを含む誘導体は、前記水酸化アルミニウム前駆体100重量部に対して0.001~10重量部の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の太陽光変換素材。
【請求項11】
芳香族環化合物又はその誘導体をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項12】
前記芳香族環化合物又はその誘導体は、前記水酸化アルミニウム前駆体又はそれに由来した水酸化アルミニウムから10nm以内に位置するか又は共有結合で形成した状態であることを特徴とする、請求項11に記載の太陽光変換素材。
【請求項13】
前記芳香族環化合物は、炭素と水素のみで結合された芳香族炭化水素又は環を作る炭素原子の一部が炭素以外の酸素、窒素、硫黄原子に置換された芳香族ヘテロ環化合物又は前記芳香族炭化水素及び芳香族ヘテロ環化合物分子のうち水素の一部を作用基に置換した誘導体のうちいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項11に記載の太陽光変換素材。
【請求項14】
前記芳香族環化合物は、フラン、ベンズベンゾフラン、イソベンズベンゾフラン、ピロール、インドール、イソインドール、チオフェン、ベンズベンゾチオフェン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピラゾール、インダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾールベンズオキサゾール、オキサゾールイソオキサゾール、ベンズオキサゾールイソオキサゾール、チアゾール、ベンズベンゾチアゾール、ベンズベンゼン、ナフタリン、アントラセン、ピリジン、キノキサリン、アクリジン、ピリミジン、キナゾリン、ピリダジン、シンノリン、フタラジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン及びその誘導体のうちいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項11に記載の太陽光変換素材。
【請求項15】
前記太陽光変換素材の粒子サイズは、0.5nm以上~500μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項16】
前記太陽光変換素材の最大吸収波長は、200~500nmの間で形成されることを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項17】
前記太陽光変換素材の最大発光波長は、450nm~1100nmで形成されることを特徴とする、請求項1に記載の太陽光変換素材。
【請求項18】
太陽光変換素材が分散された樹脂を含む太陽電池用封止材であって、
前記太陽光変換素材が請求項1~請求項17のうちいずれか一項に記載の太陽光変換素材であることを特徴とする、太陽電池用封止材。
【請求項19】
前記封止材は、厚さ100μm以下のフィルム形態であることを特徴とする、請求項18に記載の太陽電池用封止材。
【請求項20】
前記封止材は、EVA(ethylene vinyl acetate)、POE(poly
olefin elastomer)、架橋されたPO(polyolefin)、TPU(thermalポリウレタン)、PVB(polyvinyl butyral)、シリコン、シリコン/ポリウレタンハイブリッド、又はアイオノマーであることを特徴とする、請求項18に記載の太陽電池用封止材。
【請求項21】
前記太陽電池用封止材の樹脂100重量部に対して前記太陽光変換素材は、0.0001~10重量部であることを特徴とする、請求項18に記載の太陽電池用封止材。
【請求項22】
太陽光が入射する太陽電池の前面部の封止材と、太陽電池の界面の間に太陽光変換素材が位置した太陽電池において、
前記太陽光変換素材が請求項1~請求項17のうちいずれか一項に記載の太陽光変換素材であることを特徴とする、太陽電池。
【請求項23】
前記太陽光変換素材が前記太陽電池の前面又は太陽電池前面部の封止材後面にコーティングされたことを特徴とする、請求項22に記載の太陽電池。
【請求項24】
前記コーティングは、スプレーコーティング又はスクリーンコーティングであることを特徴とする、請求項23に記載の太陽電池。
【請求項25】
前記太陽電池の封止材は、エチレン酢酸ビニル(EVA、ethylene vinyl acetate)、ポリオレフィンエラストマー(POE、polyolefin elastomer)、架橋ポリオレフィン(cross-linked polyolefin)、熱可塑性ポリウレタン(TPU、thermal polyurethane)、ポリビニルブチラール(PVB、polyvinyl butyral)、シリコン(silicone)、シリコン/ポリウレタンハイブリッド(silicone/polyurethane hybrid)及びアイオノマー(ionomer)のうちいずれか一つであることを特徴とする、請求項22に記載の太陽電池。
【請求項26】
請求項18に記載の太陽電池用封止材が太陽電池の前面及び後面に積層され、
前記太陽電池の前面に位置した太陽電池用封止材の前面にはガラスが積層され、
前記太陽電池の後面に位置した太陽電池用封止材の後面にはバックシートが積層されることを特徴とする、太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、効率が向上した太陽光変換素材、これを含む太陽電池用封止材及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的に常用化されている太陽電池は、シリコン単一素材で製造されたものであって、自然太陽光スペクトラムとシリコン単一物質のバンドギャップ(band gap)の不一致により約50%の光を使用できずにいる。すなわち、自然太陽光スペクトラムは、紫外線から赤外線波長領域まで広い分布(280~2500nm、0.5~4.4eV)を有する一方、それに比べてシリコン太陽電池は、紫外線及び可視光線波長領域の一部波長のみを吸収し得る。
【0003】
最近、これを補完して自然太陽光とシリコン太陽電池の光電変換効率を向上させるために太陽光変換素材(solar spectral converter)を用いる研究が提案されている(Chem.Soc.Rev.、2013、42、173)。すなわち、シリコンの太陽光吸収が足りない紫外線領域やシリコンバンドギャップより小さいエネルギーの赤外線領域の光を、シリコンがよく吸収できる可視光線又は近赤外線波長領域に変換させる太陽光変換素材をシリコン太陽電池に導入するものである。
【0004】
また、一般的に太陽電池又は太陽電池で構成された太陽光モジュールは、屋外に設置されて熱、水分、日較差及び汚染源などのような外部環境に長期間露出するので、このような外部要因から影響を受けないように長期耐久性を確保することが必須的である。封止材の耐久性は、太陽光モジュールの耐久性を決定する最も重要な要素である。
【0005】
上記問題を解決するために、機能性添加剤を封止材に分散させたりする。例えば、紫外線に対する耐久性を向上させるために紫外線安定剤、紫外線吸収剤又は吸収剤と安定剤を共に封止材に添加して長期耐久性を確保することができる。
【0006】
しかし、紫外線吸収剤の場合、紫外線領域付近の光は太陽電池に入射できないため太陽光モジュールの全体初期出力が低下する短所がある。また、絶縁性の向上又は水分捕集を誘導するためにシリカ、水酸化マグネシウムなどの無機粒子を導入する場合、封止材の一部耐久性は向上させ得るが、太陽電池の前面部に入射する太陽光を散乱又は反射させることで太陽電池の光吸収を妨害することがある。このように、上記問題点を解決するために機能性添加剤を複数で添加すると、封止材の耐久性は向上させ得るが、太陽電池又は太陽光モジュールの全体出力は低下するという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前記問題点を解決して太陽電池の光電変換効率を向上させ得る太陽光変換素材を提供することである。
【0008】
本発明のまた他の目的は、光電変換率に優れると共に耐久性が高い太陽電池用封止材及び太陽電池を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するために、本発明は、発光性水酸化アルミニウム前駆体を含む太陽光変換素材を提供する。
【0011】
一実施例によると、前記水酸化アルミニウム前駆体は、アルミニウムモノアセテート、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムジアセテート、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、アルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムクロリド、アルミニウムスルフェート、アルミニウムシアニド、アルミニウムナイトライト、アルミニウムカーボネート、アルミニウムスルフィット、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムオキシド、アルミニウムクロレート、アルミニウムスルファイド、アルミニウムクロメート、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムパークロレート、アルミニウムナイトレート、アルミニウムパーマンガネート、アルミニウムヒドロゲンカーボネート、アルミニウムホスフェート、アルミニウムオキサレート、アルミニウムヒドロゲンホスフェート、アルミニウムチオスルフェート、アルミニウムクロライト、アルミニウムヒドロゲンスルフェート、アルミニウムジクロメート、アルミニウムブロマイド、アルミニウムハイポクロライト、アルミニウムクロリドヘキサハイドレート、アルミニウムジヒドロゲンホスフェート、アルミニウムホスフィット、アルミニウムポタシウムスルフェートドデカハイドレート、アルミニウムブロメート、アルミニウムナイトライド又はこれらの誘導体のうちいずれか一つであることが好ましい。
【0012】
一実施例によると、前記太陽光変換素材は、Al(OH)、AlOOH、5Al・2HO、Alの構造を含むことが好ましい。
【0013】
一実施例によると、前記発光性水酸化アルミニウムのサイズは、1nm~1000μm範囲であることが好ましい。
【0014】
一実施例によると、前記発光性水酸化アルミニウムは、多孔性構造を有することが好ましい。
【0015】
一実施例によると、ランタン系イオン又はこれを含む誘導体;をさらに含むことが好ましい。
【0016】
一実施例によると、前記ランタン系イオンが近赤外線、紫外線又は可視光線波長領域で発光が可能であることが好ましい。
【0017】
一実施例によると、前記近赤外線発光ランタン系イオンの前駆体は、Yb(ytterbium)、Nd(neodymium)、Er(erbium)、Ho(holmium)、Tm(thulium)及びこれらを含む誘導体のうち一つ以上であることが好ましい。
【0018】
一実施例によると、前記ランタン系イオン前駆体が可視光線波長領域で発光波長を有する元素を含むことが好ましい。
【0019】
一実施例によると、前記ランタン系イオン又はそれを含む誘導体は、前記水酸化アルミニウム前駆体100重量部に対して0.001~10重量部の範囲であることが好ましい。
【0020】
一実施例によると、芳香族環化合物又はその誘導体をさらに含むことが好ましい。
【0021】
一実施例によると、前記芳香族環化合物又はその誘導体は、前記水酸化アルミニウム前駆体又はそれに由来した水酸化アルミニウムから10nm以内に位置するか又は共有結合で形成した状態であることが好ましい。
【0022】
一実施例によると、前記芳香族環化合物は、炭素と水素のみで結合された芳香族炭化水素又は環を作る炭素原子の一部が炭素以外の酸素、窒素、硫黄原子に置換された芳香族ヘテロ環化合物又は前記芳香族炭化水素及び芳香族ヘテロ環化合物分子のうち水素の一部を作用基に置換した誘導体のうちいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0023】
一実施例によると、前記芳香族環化合物は、フラン、ベンズベンゾフラン、イソベンズベンゾフラン、ピロール、インドール、イソインドール、チオフェン、ベンズベンゾチオフェン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピラゾール、インダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾールベンズオキサゾール、オキサゾールイソオキサゾール、ベンズオキサゾールイソオキサゾール、チアゾール、ベンズベンゾチアゾール、ベンズベンゼン、ナフタリン、アントラセン、ピリジン、キノキサリン、アクリジン、ピリミジン、キナゾリン、ピリダジン、シンノリン、フタラジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン及びその誘導体のうちいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0024】
一実施例によると、前記太陽光変換素材の粒子サイズは、0.5nm~500μm範囲であることが好ましい。
【0025】
一実施例によると、前記太陽光変換素材の最大吸収波長は、200~500nmの間、好ましくは、300~450nmで形成されることが好ましい。
【0026】
一実施例によると、前記太陽光変換素材の最大発光波長は、450nm~1100nmで形成されることが好ましい。
【0027】
本発明のまた他の目的を達成するために、本発明は、本発明による太陽光変換素材を含む太陽電池用封止材を提供する。
【0028】
一実施例によると、前記封止材は、厚さ100μm以下のフィルム形態であることが好ましい。
【0029】
一実施例によると、前記封止材は、EVA(ethylene vinyl acetate)、POE(polyolefin elastomer)、架橋されたPO(polyolefin)、TPU(thermalポリウレタン)、PVB(polyvinyl butyral)、シリコン、シリコン/ポリウレタンハイブリッド、又はアイオノマーであることが好ましい。
【0030】
一実施例によると、前記太陽電池用封止材の樹脂100重量部に対して前記太陽光変換素材は、0.0001~10重量部、好ましくは、1~10重量部で含まれることが好ましい。
【0031】
本発明のまた他の目的を達成するために、本発明は、本発明による太陽光変換素材又は太陽電池用封止材を含む太陽電池を提供する。
【0032】
一実施例によると、前記太陽光変換素材が前記太陽電池の前面又は太陽電池の前面部封止材の後面にコーティングされたことが好ましい。
【0033】
一実施例によると、前記コーティングは、スプレーコーティング又はスクリーンコーティングであることが好ましい。
【0034】
一実施例によると、前記太陽電池の封止材は、エチレン酢酸ビニル(EVA、ethylene vinyl acetate)、ポリオレフィンエラストマー(POE、polyolefin elastomer)、架橋ポリオレフィン(cross-linked polyolefin)、熱可塑性ポリウレタン(TPU、thermal polyurethane)、ポリビニルブチラール(PVB、polyvinyl butyral)、シリコン(silicone)、シリコン/ポリウレタンハイブリッド(silicone/polyurethane hybrid)及びアイオノマー(ionomer)のうちいずれか一つであることが好ましい。
【0035】
また、本発明は、本発明による太陽電池用封止材が太陽電池の前面及び後面に積層され、前記太陽電池の前面に位置した太陽電池用封止材の前面にはガラスが積層され、前記太陽電池の後面に位置した太陽電池用封止材の後面にはバックシートが積層されることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
紫外線の吸収及び可視光線の発光特性を有する太陽光変換素材を樹脂に均一に分散させて太陽光モジュールを製造する場合、紫外線の吸収による紫外線遮断効果とともに可視光線発光の下方変換効果を期待することができるので、耐久性とともに出力が向上した太陽光モジュールを製造することができる。
【0037】
また、水酸化アルミニウム素材固有の熱及び水分吸収特性による耐熱、耐湿効果によって追加的に封止材の耐久性を向上させ得る。
【0038】
したがって、このような発光特性を有する太陽光変換素材が分散された封止材を含む太陽光モジュールは、長期耐久性の増加によって長期間の屋外露出による出力低下を防止することができるので、太陽光の発電に役に立つ。
【0039】
また、本発明による太陽光変換素材は、太陽電池の光電変換効率が低い紫外線を太陽電池の光電変換効率が高い可視光線及び近赤外線波長領域に一つ又は二つ以上の光子を放出することができるので、太陽電池の効率が極大化される。
【0040】
さらに、本発明による太陽光変換素材は、芳香族環化合物及び/又はランタン系イオンを発光性水酸化アルミニウムの合成段階で導入することで、紫外線領域の吸収をより増加させて効果的な下方変換が可能であり、同時に紫外線遮断による太陽電池の耐久性を向上させ得るので、太陽電池の発電単価を低めて長期出力を保障することができる。
【0041】
太陽光変換素材を太陽電池の前面又は太陽電池の前面部封止材の後面にコーティングする場合、太陽電池の効能を向上させ得る。太陽電池に素材を直接コーティングする場合、下方変換を誘導して出力向上に役立つ。
【0042】
また、前記太陽光変換素材が封止材と太陽電池の界面に位する場合、非反射コーティング効果による光生成電流増加、モジュールの強化ガラスから発生するNa+イオン捕集による太陽光モジュールのanti-PID(potential induced degradation)効果、紫外線遮断及び放熱特性によるanti-LeTID(light and elevated temperature induced degradation)効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、発光性水酸化アルミニウムが分散された封止材及びこれを含む太陽電池、太陽光モジュールの断面模式図である。
図2図2は、紫外線の吸収と可視光線及び近赤外線の発光に対する水酸化アルミニウムの発光原理を示す模式図である。(a)可視光線の発光原理、(b)可視光線及び近赤外線の発光原理。
図3図3は、発光性水酸化アルミニウムの吸収及び発光スペクトラムである。(点線は吸収、実線は発光スペクトラム)
図4図4は、近赤外線発光水酸化アルミニウムの励起及び発光スペクトラムである:(a)Ybドーピング;(b)Ce、Ybドーピング;(c)Tb、Ybドーピング;(d)Yb、2-ナフトエ酸ドーピング。
図5図5は、近赤外線発光水酸化アルミニウムの2-ナフトエ酸ドーピングによる発光強さ変化を示すスペクトラムである。
図6図6は、発光性水酸化アルミニウムと芳香族環化合物及びその誘導体を含む発光性水酸化アルミニウムの吸収及び発光スペクトラムである:(a)、(d)発光性水酸化アルミニウム(AlOH)の吸収と発光スペクトラム;(b)、(e)2-ナフトエ酸を含む発光性水酸化アルミニウム(AlOH-NA)の吸収と発光スペクトラム;(c)、(f)1,2,3,4-tetrahydrocarbazole-4-oneを含む発光性水酸化アルミニウム(AlOH-CA)の吸収と発光スペクトラム。
図7図7は、発光性水酸化アルミニウムの(a)AlOHと(b)AlOH-NAの時分解蛍光スペクトラムである。
図8図8は、太陽光封止材に発光性水酸化アルミニウム及び紫外線吸収剤の導入前/後の全体透過度スペクトラムである(二点鎖線は、EVA封止材、一点鎖線は、EVA-AlOH 0.1、実線は、EVA-AlOH 0.5、点線は、EVA-C81 0.2封止材の全体透過度スペクトラム)。
図9図9は、(a)UV Aging及び(b)Damp-Heat Aging 2000時間経過後、発光性水酸化アルミニウムの導入の前後の封止材の全体透過度スペクトラムである。
図10図10は、表5及び表6の太陽電池2と実施例4のAlOH-NA-YbがコーティングされたCellの外部量子効率スペクトラムである。
図11図11は、表5及び表6の太陽電池2と実施例4のAlOH-NA-YbがコーティングされたCellの全体反射度変化を測定したスペクトラムである。
図12図12は、発光性水酸化アルミニウムのシリコン太陽電池のコーティング前/後の外部量子効率スペクトラムである。
図13図13は、発光性水酸化アルミニウムのシリコン太陽電池のコーティング前/後の反射度スペクトラムである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明をより詳細に説明するが、これは本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0045】
本発明の一実施例によると、本発明は、紫外線の吸収及び可視光線の発光特性を有する発光性水酸化アルミニウムを含む太陽光変換素材を提供する。
【0046】
太陽光変換素材は、光変換方法によって下方変換と上方変換の大きく二つに分けられる。
【0047】
まず、下方変換(down-conversion)は、シリコンバンドギャップより高いエネルギーを有する短波長(例えば、紫外線)の光子(photon)一つを吸収してシリコンがよく吸収できる低いエネルギーを有する長波長領域の一つの光子に変換させるdown-shiftingと、吸収した波長の2倍以上の長波長の低いエネルギー領域で二つ以上の光子に変換させるquantum-cuttingと、に分けられる。
【0048】
それと反対に、シリコンのバンドギャップよりエネルギーが小さいためシリコンに吸収されずに透過される赤外線領域の二つの光子を吸収してシリコンで吸収が容易である高い可視光線領域の一つの光子に変換させる技術を上方変換(up-conversion)という。
【0049】
本発明の一実施例によると、発光性水酸化アルミニウム前駆体;及びランタン系イオン又はこれを含む誘導体;を含む太陽光変換素材を提供する。
【0050】
本発明の一実施例によると、発光性水酸化アルミニウム前駆体;芳香族環化合物又はその誘導体;を含む太陽光変換素材を提供する。
【0051】
本発明は、低価の発光性水酸化アルミニウムを含む効率が向上した太陽光変換素材及びこれを含む太陽電池に関するもので、その素材を太陽電池と太陽光が入射する前面の封止材の界面に位置させるか、封止材に分散させることによって、下方変換、非反射コーティング効果及び耐久性の向上を誘導して短絡電流の増加による光電変換効率を向上させる技術に関する。
【0052】
図1は、本発明の一実施例によるシリコン太陽光モジュールの断面模式図である。
【0053】
図1によると、光が入射する前面からガラス/封止材/太陽電池/封止材/バックシート(back sheet)の順に積層した後、ラミネーション(lamination)を通じてシリコン太陽電池モジュールを製造することができる。
【0054】
<太陽光変換素材>
【0055】
本発明では、太陽光変換効率の向上及び封止材の耐久性向上が可能な太陽光変換素材を製造するために、低価の素材であるとともに優れた吸収及び発光特性、耐熱、耐湿性などの特性を有する発光性水酸化アルミニウムを用いる。
【0056】
前記発光性水酸化アルミニウムは、Al(OH)、AlOOH、5Al・2HO、Alなどの構造を含むことができ、本発明では、前記構造を以下「アルミニウムヒドロキシド」、「AlOH」又は「水酸化アルミニウム」と表記する。
【0057】
前記発光性水酸化アルミニウム前駆体は、アルミニウムモノアセテート、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムジアセテート、アルミニウムトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、アルミニウムアルコキシド、ジエチルアルミニウムクロリド、アルミニウムスルフェート、アルミニウムシアニド、アルミニウムナイトライト、アルミニウムカーボネート、アルミニウムスルフィット、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムオキシド、アルミニウムクロレート、アルミニウムスルファイド、アルミニウムクロメート、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムパークロレート、アルミニウムナイトレート、アルミニウムパーマンガネート、アルミニウムヒドロゲンカーボネート、アルミニウムホスフェート、アルミニウムオキサレート、アルミニウムヒドロゲンホスフェート、アルミニウムチオスルフェート、アルミニウムクロライト、アルミニウムヒドロゲンスルフェート、アルミニウムジクロメート、アルミニウムブロマイド、アルミニウムハイポクロライト、アルミニウムクロリドヘキサハイドレート、アルミニウムジヒドロゲンホスフェート、アルミニウムホスフィット、アルミニウムポタシウムスルフェートドデカハイドレート、アルミニウムブロメート、アルミニウムナイトライド又はこれらの誘導体のうちいずれか一つである。
【0058】
一実施例によると、前記発光性水酸化アルミニウムは、多孔性構造を有することが好ましい。前記製造された発光性水酸化アルミニウムは、前駆体、溶媒、不純物又は熱分解反応温度、時間などの変数によって多孔性を有するように合成することができるが、多孔性を有する場合、表面積が増加して封止材の耐湿、耐熱などの耐久性が向上し得る。
【0059】
本発明の一実施例によると、本発明による太陽光変換素材は、ランタン系イオン又はこれを含む誘導体をさらに含むことが好ましい。
【0060】
特に、近赤外線の発光が可能なランタン系イオンを導入すると、紫外線の吸収及び可視光線、近赤外線の同時発光が可能なので、可視光線と近赤外線波長領域で優れた発電効率を有する高効率の太陽電池に適用する場合、一層高い光電変換率を具現することができる。
【0061】
また、紫外線波長領域の高いエネルギーを水酸化アルミニウムが吸収して近赤外線の発光が可能なランタン系イオンに伝達する場合、吸収波長の2倍以上になる長波長の低いエネルギーを有する近赤外線波長領域で光子2個が放出されて太陽電池の光電変換率を極大化することができる。
【0062】
前記ランタン系イオンは、近赤外線、紫外線又は可視光線波長領域で発光が可能である。
【0063】
本発明の一実施例によると、近赤外線の発光を誘導するために、ランタン系イオンを一部導入することができる。800nm以上の長波長の近赤外線領域で発光が可能な近赤外線発光ランタン系前駆体として、Yb(ytterbium)、Nd(neodymium)、Er(erbium)、Ho(holmium)、Tm(thulium)などがあり、太陽電池の外部量子効率特性によって太陽電池の光電変換効率が高い波長で発光スペクトラムを有するイオンを選択して水酸化アルミニウムにドーピングすることができる。
【0064】
本発明の一実施例によると、近赤外線の発光が可能なランタン系イオンを選択し、例えば、Ybを選択した場合に、Ybの前駆体としてYbを含む全ての誘導体が用いられ得る。
【0065】
例えば、イッテルビウム(ytterbium)トリフルオロメタスルホネート、イッテルビウムトリフルオロメタンスルホネートハイドレート、イッテルビウムクロリド、イッテルビウムフルオライド、イッテルビウムヨージド、イッテルビウムクロリドハイドレートヘキサハイドレート、イッテルビウムオキシド、イッテルビウムナイトレートペンタハイドレート、イッテルビウムアセテートハイドレートセトラハイドレート、イッテルビウムアセテートハイドレート、イッテルビウムポリスチレンスルホネート、3-ヒドロキシ-2-ナフトイック(2-ヒドロキシベンジリデン)ヒドラジド、イッテルビウムイソプロポキシド、イッテルビウムブロマイド、tris[N,N-bis(トリメチルシリル)アミド]イッテルビウムなどがある。
【0066】
また、本発明の一実施例によると、発光性水酸化アルミニウムから近赤外線に効果的なエネルギー転移を誘導するために、可視光線波長領域で発光波長を有するCe、Tb、Euなどを含ませたランタン系イオン前駆体を共にドーピングしてもよい。
【0067】
本発明の一実施例によると、前記ランタン系イオン又はそれを含む誘導体は、前記水酸化アルミニウム前駆体100重量部に対して0.001~10重量部の範囲で含まれ得る。
【0068】
ランタン系イオンがアルミニウム前駆体100重量部に対して0.001~10重量部の範囲を脱して過量導入される場合には、ランタン系イオンの凝集現象によって消光(quenching)されて発光性能が低下し得、少量導入される場合には、発光性水酸化アルミニウムからランタン系イオンへのエネルギー転移が制限され得るので、下方変換効果を期待しにくい。
【0069】
本発明の一実施例によると、不純物又は芳香族環化合物及びそれの誘導体を適切に添加する場合、水酸化アルミニウムのtrap stateが変化され得、発光波長の位置もそれに依存して調節される。
【0070】
本発明の一実施例によると、前記芳香族環化合物又はそれを含む誘導体は、前記水酸化アルミニウム前駆体100重量部に対して0.001~10重量部の範囲で含まれ得る。
【0071】
また、芳香族環化合物及びそれの誘導体で吸収した光がtrap emissionより高いエネルギーに位置する場合には、芳香族環化合物及びそれの誘導体から水酸化アルミニウムのtrap stateへのエネルギー転移(energy transfer)が可能である。
【0072】
この場合、追加的なエネルギー転移によって近赤外線発光水酸化アルミニウムの発光強さが増幅することになる。すなわち、芳香族環化合物及びそれの誘導体が紫外線波長領域の光を捕獲して水酸化アルミニウムに伝達するアンテナの役目をすることになる。
【0073】
したがって、水酸化アルミニウム単独の場合より芳香族環化合物及びその誘導体がともにある場合に効果的な紫外線の吸収及びより強い可視光線及び近赤外線の発光を具現することができる。また、trap state位置が低くなることによって発光波長がより長波長に移動して吸収波長と発光波長の差であるStokes shiftが大きくなって素材から放出される光の再吸収(reabsorption)を減らすことができる。
【0074】
芳香族環化合物及びその誘導体から水酸化アルミニウムへの効果的なエネルギー転移のためには、二つの素材間の距離が10nm以内に位置しているか共有結合により結合を形成している必要がある。したがって、前記芳香族環化合物は、前記水酸化アルミニウム前駆体又はそれに由来した水酸化アルミニウムから10nm以内に位置するか又は共有結合で形成した状態であることが好ましい。
【0075】
本発明の一実施例によると、前記芳香族環化合物は、炭素と水素のみで結合された芳香族炭化水素又は環を作る炭素原子の一部が炭素以外の酸素、窒素、硫黄原子に置換された芳香族ヘテロ環化合物又は前記芳香族炭化水素及び芳香族ヘテロ環化合物分子のうち水素の一部を作用基に置換した誘導体のうちいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0076】
本発明の一実施例によると、前記芳香族環化合物は、フラン、ベンズベンゾフラン、イソベンズベンゾフラン、ピロール、インドール、イソインドール、チオフェン、ベンズベンゾチオフェン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、プリン、ピラゾール、インダゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾールベンズオキサゾール、オキサゾールイソオキサゾール、ベンズオキサゾールイソオキサゾール、チアゾール、ベンズベンゾチアゾール、ベンズベンゼン、ナフタリン、アントラセン、ピリジン、キノキサリン、アクリジン、ピリミジン、キナゾリン、ピリダジン、シンノリン、フタラジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン及びその誘導体のうち一つ以上から選択され得る。
【0077】
前記太陽光変換素材は、水熱(hydrothermal)、ゾル-ゲル(sol-gel)、熱分解(thermal decomposition)合成方法などを用いて製造され得る。本発明では、熱分解合成方法を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲がこれに限定されない。
【0078】
上記の熱分解合成方法で発光性水酸化アルミニウムを合成する場合には、前記アルミニウム前駆体の熱分解温度より高い沸点を有する物質を溶媒として活用することができる。
【0079】
例えば、ヘキサデシルアミン(hexadecylamine)、1-エイコセン(1-eicosene)、1-オクタデセン(1-octadecene)、ドコサン(docosane)、フェニルエーテル(phenyl ether)、ベンジルエーテル(benzyl ether)、オクチルエーテル(octyl ether)、オレイン酸(oleic acid)、オレイルアミン(oleylamine)、ポリイソブチレン(polyisobutylene)など200℃以上の高い沸点を有する物質を溶媒として活用する。
【0080】
前記溶媒は、溶媒として作用してもよく、炭素、カルボニルラジカル(carbonyl radical)、オキサリックホスホリック(oxalic phosphoric)ラジカル、硫酸(sulfuric acid)などの不純物を提供して発光特性を調節するか発光性能を追加的に改善する役目をしてもよい。また、追加的に熱分解合成段階で、アルキル(alkyl)(C~C)アセテート(acetate)などの不純物を添加して吸収及び発光特性のような光特性を調節してもよい。
【0081】
また、熱分解合成段階で、光の吸収、特に紫外線波長領域で高い吸光係数を有する芳香族環化合物及びそれの誘導体を適切に添加する場合、近赤外線発光水酸化アルミニウムの吸収、発光増加及び大きいStoke’s shiftなどを誘導することができる。したがって、熱分解合成段階で、前記芳香族環化合物を前記水酸化アルミニウム前駆体、ランタン系イオンとともに添加する。
【0082】
前記アルミニウム前駆体のうち一つ以上、前記ランタン系イオンのうち一つ以上、芳香族環化合物及びその誘導体のうち一つを前記溶媒に分散させた後、アルミニウム前駆体の熱分解温度で反応する。反応が終結すると、生成物を分離及び精製して最終発光性水酸化アルミニウム(太陽光変換素材)を得ることができる。
【0083】
熱分解合成によって生成された水酸化アルミニウムが発光特性を示す原因は、金属酸化物内の欠陥(defects)から現われるtrap emissionである。Trap emissionは、素材の欠陥が存在する際に基底状態(ground state)と励起状態(excited state)の間にさらに他のエネルギー準位であるtrap stateが形成され、外部エネルギーにより基底状態から励起状態に転移された電子は、欠陥により生成されたより低いエネルギー準位に安定化されて移動することになり、最終基底状態に転移されながら光を放出することになる(図2の(a))。このとき、近赤外線の発光が可能なランタン系イオンのうち一つ以上を少量ドーピングすると、水酸化アルミニウムからランタン系イオンにエネルギー転移が行われて水酸化アルミニウムの発光波長の2倍以上の長波長の低いエネルギーで近赤外線の発光が現われる。特に、近赤外線発光波長領域で2個以上の光子が放出されることもある。(図2の(b))。
【0084】
太陽光変換素材は、太陽電池の前面部に位置するため太陽電池に入射する太陽光の波長よりサイズが小さい粒子が有利である。もし、太陽光の波長と類似しているか大きい粒子サイズを有する場合、入射する太陽光が散乱又は反射されて全体太陽電池の効率がむしろ減少し得る。したがって、太陽光変換素材の粒子サイズは、0.5nm~500μm、好ましくは、1nm~100μm以下の範囲を有することが好ましい。
【0085】
本発明による発光性水酸化アルミニウムは、絶対量子効率(absolute quantum yield)が40%以上であることが望ましい。
【0086】
図3は、熱分解合成方法によって製造された発光性水酸化アルミニウムの吸収及び発光スペクトラムを示す。より具体的には、点線は、水酸化アルミニウムの吸収スペクトラムであって、450nmで吸収を始めて紫外線領域で強い吸収を示し、実線は、発光スペクトラムであって、526nmで最大発光ピークを示す。
【0087】
前記太陽光変換素材をシリコン太陽電池に適用するためには、紫外線波長領域で吸収が行われ、可視光線及び近赤外線波長領域で発光特性を有しなければならない。具体的に、太陽光変換素材の吸収波長領域は、200~500nmで形成されることが好ましい。また、発光波長領域は、450nm以上、好ましくは、450nm~1100nmで形成されることが好ましい。
【0088】
特に、太陽光変換素材は、吸収波長と発光波長領域が重畳しないことが好ましく、Stokes shiftが大きい素材が有利である。その理由は、吸収波長と発光波長が重畳する場合、素材から放出される光を再び吸収する再吸収が損失として作用するからである。
【0089】
前記製造された発光性水酸化アルミニウムは、前駆体、溶媒、不純物又は熱分解反応温度、時間などの変数によって多孔性を有するように合成できるが、多孔性を有する場合、表面積が増加して太陽光モジュールの耐湿、耐熱などの耐久性が向上し得る。
【0090】
太陽光変換素材、特に下方変換素材で要求される特性としては、高い発光効率、高い吸光係数、高い光安全性、紫外線の吸収、可視光線波長以下の発光及び大きいStoke’s shift(最大吸収波長と最大発光波長間の波長差(Δλ=λem-λab)などがある。
【0091】
下方変換素材を太陽電池に適用するためには、前記要求特性を適切に満たさなければならず、そうではない場合、むしろ太陽電池の効率が減少することもある。例えば、低い発光効率の素材を太陽電池の前面部に導入する場合、太陽光を吸収はするが可視光線に変換できないので、太陽電池の太陽光吸収をむしろ妨害することがある。
【0092】
また、低い吸光係数を有する素材は、発光効率が高いとしても吸収効率自体が低いため下方変換効果を期待しにくい。紫外線波長領域より低い可視光線波長領域で吸収が行われる素材の場合、常用化されたシリコン太陽電池は既に可視光線波長領域で光電変換効率が90%レベルと高いため、追加的な下方変換効果を期待することができない。なお、小さいStoke’s shiftを有する素材は、吸収波長と発光波長の重畳度が大きいため放出された光の再吸収(reabsorption)による損失があり得るので、効果的な下方変換効果を期待しにくい。
【0093】
一方、quantum-cuttingを誘導する場合、太陽電池が吸収できない短波長の光子を太陽電池の変換効率が高い長波長の光子二つ以上に放出されて太陽電池の効率を飛躍的に向上させ得る。
【0094】
一実施例によると、前記太陽光変換素材は、光透過性樹脂に分散されて製造された厚さ100μm以下のフィルム形態で用いることが好ましい。
【0095】
以下では、本発明によって製造された太陽光変換素材が太陽電池の効率を向上させ得る優れた太陽光変換素材であることを立証するために図面を参照して説明する。
【0096】
図4は、このように製造した近赤外線発光水酸化アルミニウムの励起(excitation)及び発光(emission)スペクトラムを示す。図4の(a)は、Ybのみドーピングされた近赤外線発光水酸化アルミニウムの励起及び発光スペクトラムである。Xe lampを励起光源として用いて350nmの紫外線を照射する場合、450nm付近の青色発光(二点鎖線)と1000nm付近の近赤外線発光(点線)が同時に現われる。近赤外線発光水酸化アルミニウムから放出される可視光線及び近赤外線発光がどの波長領域を吸収して発現されるかを確認するために、励起(excitation)スペクトラムを分析した。
【0097】
図4の(a)の二点鎖線は、450nm発光の励起スペクトラムであり、点線は、1000nm発光の励起スペクトラムを示す。すなわち、可視光線及び近赤外線の発光は、全て300nm~500nm範囲の紫外線領域の波長を吸収して行われることを確認した。また、図4の(b)、(c)で、Ce、Tbをそれぞれ追加導入する場合にもCeとTbの発光ピークは観察されず、水酸化アルミニウムとYbの発光ピークのみ観察されることから、水酸化アルミニウム、Ce(又はTb)、Ybの順に効果的なエネルギー転移が行われることを確認した。
【0098】
一方、図4の(d)は、芳香族環化合物及びその誘導体のうちの一つとして2-ナフトエ酸をYbとともに導入して製造した近赤外線発光水酸化アルミニウムの励起及び発光スペクトラムを示す。図4の(d)で、二点鎖線と点線は発光スペクトラムであって、それぞれ500n、1000nm付近で最大発光ピークを示す。2-ナフトエ酸を添加する場合、図4の(a)と比較して最大発光ピークが50nm程度長波長に移動することが分かるが、これは2-ナフトエ酸の導入によって上記で説明したようにtrap stateが変化したことを意味し、発光スペクトラムの長波長への移動によって再吸収損失が減少したことも意味する。また、近赤外線波長領域でYbの発光ピークが観察されることから、2-ナフトエ酸、水酸化アルミニウム、Ybの順に効果的なエネルギー転移が具現されることが分かった。図4の(a)~(c)で説明したように、励起スペクトラムの観察を通じて、500nm、1000nm付近の可視光線及び近赤外線発光は、全て300nm~500nm範囲の紫外線領域の波長を吸収して行われることを確認した(図4の(d))。
【0099】
図5は、Yb単独又はYbと2-ナフトエ酸をともに添加した近赤外線発光水酸化アルミニウムの発光スペクトラムを示す。点線は、Ybのみ単独でドーピングされた発光スペクトラムであり、実線は、Ybと2-ナフトエ酸をともに導入した発光スペクトラムであって、2-ナフトエ酸が添加される場合、紫外線吸収が増加することによって水酸化アルミニウムの発光増幅及びYbへの効果的なエネルギー転移が可能であるので、Ybの発光強さが増加することを確認した。
【0100】
図6は、発光性水酸化アルミニウム複合体の吸収及び発光スペクトラムを示す。図6の(a)と(b)は、それぞれ水酸化アルミニウム単独(AlOH)の吸収及び発光スペクトラムであって、450nmで吸収を始めて紫外線領域で吸収を示す。また、390nm、465nm、514nmで発光特性ピークを示し、最大発光波長は、465nmである。図6の(b)と(e)は、2-ナフトエ酸をアルミニウム前駆体とともに合成段階で導入して製造した発光性水酸化アルミニウム(AlOH-NA)の吸収及び発光スペクトラムを示す。
【0101】
水酸化アルミニウム単独のAlOHの場合と類似して450nmで吸収を始めて380nm波長領域で強い吸収を示す。一方、最大発光波長は、520nmであってAlOHと比較して55nm程度長波長に移動した。図の(c)と(f)は、1,2,3,4-tetrahydrocarbazole-4-oneをアルミニウム前駆体とともに合成段階で導入して製造した発光性水酸化アルミニウム(AlOH-CA)の吸収及び発光スペクトラムを示すものであって、500nm領域で吸収を始めて370nmで強い吸収を示す。一方、最大発光波長は、530nmであってAlOHと比較して65nm程度長波長に移動した。図6の結果から、熱分解の合成段階で芳香族環化合物を導入する場合、紫外線領域の吸収が向上し、最大吸収波長と発光波長間の差が一層増加することによって再吸収による損失を最小化することができる。
【0102】
芳香族環化合物及びその誘導体添加による発光性水酸化アルミニウムの発光特性変化及び芳香族環化合物及びその誘導体によるエネルギーの転移効果は、時間分解蛍光分析(time-resovled fluorescence、TRF)を通じて一層明確に理解することができる。
【0103】
図7の(a)と(b)は、AlOHとAlOH-NAのTRFスペクトラムを示し、このスペクトラムを通じて平均消滅時間(average lifetime、τave)を計算することができる。図7の(a)は、AlOHの発光波長400nm、450nm、500nmでそれぞれ観測したものであって、平均消滅時間(τave)は、それぞれ1.07ns、2.19ns、3.39nsであった。一方、図7の(b)は、AlOH-NAの発光波長400nm、450nm、500nm、520nmでそれぞれ観測したものであって、波長別AlOH-NAの平均消滅時間がAlOHの平均消滅時間より大きいことが分かるが、このグラフを基盤として計算した平均消滅時間(τave)は、それぞれ1.21ns、8.18ns、11.25ns、11.84nsであった。これは、NAにより吸収された紫外線がAlOHにエネルギー転移されてAlOHの発光による平均消滅時間が全般的に遅延されたことを意味する。すなわち、芳香族環化合物又はその誘導体を合成段階でともに導入する場合、紫外線領域の光の強い吸収及び効果的なエネルギー転移が具現されることが分かり、これを通じて紫外線波長領域の光を可視光線波長領域の光に変換する効果的な下方変換が可能であることを意味する。
【0104】
上記で合成した太陽光変換素材を太陽電池に導入する方法は、素材が導入される位置によって、シリコン太陽電池を保護する役目の封止材に分散させてシート(sheet)形状で製造する方法、シリコン太陽電池の前面に直接塗布する方法、太陽電池の前面と接合する封止材の表面に塗布する方法などがあり得る。
【0105】
<太陽電池用封止材>
【0106】
前記太陽光変換素材を樹脂に分散させてシート形状で製造して太陽光モジュールの製造に用いる。
【0107】
まず、太陽電池の封止材は、エチレン酢酸ビニル(EVA、ethylene vinyl acetate)、ポリオレフィンエラストマー(POE、polyolefin elastomer)、架橋ポリオレフィン(cross-linked polyolefin)、熱可塑性ポリウレタン(TPU、thermal polyurethane)、ポリビニルブチラール(PVB、polyvinyl butyral)、シリコン(silicone)、シリコン/ポリウレタンハイブリッド(silicone/polyurethane hybrid)、アイオノマー(ionomer)などの素材を用い、EVA又はPOEが最も多く用いられる。
【0108】
一般的に、太陽光変換素材を封止材の内部に導入して太陽電池の前面に位置させた後、熱接着(lamination)を通じて太陽電池モジュールを製造する方法が多く報告されており、商業生産に適用される事例もある。
【0109】
しかし、この場合には、封止材を構成するEVA又はPOEなどの高分子の屈折率(n~1.4)とシリコン太陽電池の表面のSiNの屈折率(n~2.5)の大きい差により封止材内部の光変換素材から放出される光が太陽電池に進行せず封止材内部の内部全反射による光導波(waveguide)現象が優勢となって封止材シートの側面に進行することになる。このような現象は、太陽電池の側面で光損失として作用し得ることになる。
【0110】
<太陽電池の表面に塗布>
【0111】
それとは反対に、太陽光変換素材が太陽電池の表面又は封止材の表面に塗布される場合には、封止材と太陽電池の界面に位置することになって数μm又は数十μmのシリコンテクスチャリング(texturing)構造により光が側面に進行せず太陽電池の内部に進行することになる。また、太陽光変換素材が封止材の屈折率(n~1.4)と太陽電池表面の屈折率(n~2.5)の間の値を有するように調節できる場合、スネルの法則(Snell's law)によって封止材、光変換素材、太陽電池の方向に光の進入が非常に有利になって太陽電池の側面で光をより活用できるようになることによって、光電変換効率を向上させ得る。すなわち、太陽光変換素材の下方変換効果とともに非反射コーティング効果を全て期待し得る。
【0112】
太陽光変換素材を溶媒に分散すると、太陽電池の表面に塗布できるが、上記の太陽電池の表面に塗布する方法としては、スピンコーティング(spin coating)、バーコーティング(bar coating)、スプレーコーティング(spray coating)、ディップコーティング(dip coating)、スクリーンプリンティング(screen printing)などがあり得る。また、封止材に塗布する場合にもスピンコーティング方法を除いて全て適用が可能である。
【0113】
<太陽電池モジュール/太陽電池>
【0114】
本発明の一実施例によると、シリコン太陽光モジュールの場合には、図1の模式図のように光が入射する前面からガラス/封止材/太陽電池/封止材/バックシート(back sheet)の順に積層した後、ラミネーション(lamination)を通じてシリコン太陽電池モジュールを製造することができるが、発光性水酸化アルミニウムは、前面部の封止材又は前面部と後面部の封止材に全て分散し得る。
【0115】
本発明の一実施例によると、太陽電池を構成する素材の種類とサイズは、これに限定されず、例えば、本発明は、有機太陽電池(organic photovoltaic cells、OPV)、セレン化銅インジウムガリウム(copper indium gallium selenide、CIGS)、CdTe(cadmium telluride)、Perovskiteなどの半導体基盤の太陽電池、シリコン基盤の太陽電池及び半導体-シリコンタンデム(tandem)構造基盤の太陽電池など素材の種類と関係なく適用が可能であり、太陽電池の光電変換効率の向上を特徴とする太陽電池に関する。
【0116】
ただし、説明のために、6インチ(inch)多結晶シリコン太陽電池を用いて説明した。
【0117】
本発明では、太陽光変換素材の商業的生産の適用を考慮して速くて均一な塗布が可能なスプレーコーティング方法を用いたが、これに限定されない。
【0118】
(発明の実施のための形態)
【0119】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて詳しく説明するが、下記の実施例は、本発明の理解を助けるために提示されるものに過ぎず、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0120】
製造例1:太陽光変換素材の製造(水酸化アルミニウム前駆体)
【0121】
アルミニウムアセテート10gを1-オクタデセン溶媒100mlに混合した後、撹拌状態で300℃で30分間熱分解反応を進行する。反応の終了後、遠心分離を通じて水酸化アルミニウムを分離、トルエン溶媒10mlに再分散する。図3は、このように製造された発光性水酸化アルミニウム溶液のUV-Vis spectrumとphotoluminescence spectrumを示し、点線は、吸収スペクトラムを意味し、実線は、発光スペクトラムを意味する。水酸化アルミニウムの各含量によってそれぞれ実施例1及び2とした。
【0122】
製造例2:太陽光変換素材の製造(水酸化アルミニウム前駆体+ランタン系イオン)
【0123】
アルミニウムアセテート10gを1-オクタデセン溶媒10mlに混合する。この混合溶液に前記提示された近赤外線発光ランタン系イオンのうちイッテルビウム(III)アセテートハイドレートをアルミニウム前駆体対比0.2wt%で追加した後、撹拌状態で300℃で30分間熱分解反応を進行する。反応の終了後、遠心分離を通じて水酸化アルミニウムを分離し、トルエン溶媒10mlに再分散する。このように合成された太陽光変換素材を実施例3に用い、イッテルビウム(III)アセテートハイドレートを添加せずに合成した太陽光変換素材を比較例5に用いた。
【0124】
製造例3:太陽光変換素材の製造(水酸化アルミニウム+芳香族環化合物)
【0125】
アルミニウムアセテート10gを1-オクタデセン溶媒100mlに混合した後、撹拌状態で300℃で30分間熱分解反応を進行する。反応の終了後、遠心分離を通じて水酸化アルミニウムを分離し、トルエン溶媒10mlに再分散した。
【0126】
発光特性を制御するために、芳香族環化合物として3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸をアルミニウム前駆体であるアルミニウムアセテート対比5wt%を追加し、撹拌状態で300℃で30分間熱分解反応を進行し、分離及び精製を進行した。
【0127】
製造例4:太陽光変換素材の製造(水酸化アルミニウム+ランタン系イオン+芳香族環)
【0128】
追加的に紫外線の吸収を強化して発光特性を制御するために、芳香族環化合物の誘導体のうち一つである3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸をアルミニウム前駆体対比0.2wt%で追加し、撹拌状態で上と同一の方法で熱分解反応を進行し、分離及び精製を進行したこと以外は、製造例2と同一の方法で太陽光変換素材を製造した。このように合成された太陽光変換素材を実施例4に用い、イッテルビウム(III)アセテートハイドレートを添加せずに合成した太陽光変換素材を比較例6に用いた。
【0129】
実施例1及び2:太陽光変換素材を含む封止材シートの製造
【0130】
前記製造例1で製造された太陽光変換素材を封止材シートの製造段階で封止材樹脂に添加し、押出を通じて太陽光変換素材が分散された封止材シートを製造する。封止材樹脂としては、溶融指数15g/10min、酢酸ビニル含量28重量%であるエチレン酢酸ビニル共重合体(ハンファトータル(株)製)を用いた。EVA100重量部にアルケマ社のLuperox TBEC(tert-ブチル-2-エチルヘキシルモノパーオキシカーボネート)1重量部、架橋助剤としてエボニック社のTAICROS(トリアリルイソシアヌレート)を0.5重量部、紫外線安定剤としてシバ社のTinuvin770(ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルセバケート)を0.1重量部、シランカップリング剤としてダウコニング社のOFS-6030(メタクリルオキシプロピルトリメトキシシロキサン)0.3重量部を混合した。その後、押出機を通じてEVAシートを製造した。押出機の温度は、100℃、T-ダイの温度は、100℃を維持し、製造されたシートの厚さは、0.5mmであった。以後、このように製造されたシートを「EVA」と表記する。
【0131】
耐久性の比較評価のために、前記シートEVAの製造方法でEVA 100重量部に発光性水酸化アルミニウムを0.1又は0.5重量部を追加で添加したこと以外は、同一の方法でシートを製造し、これらそれぞれを「EVA-AlOH 0.1」、「EVA-AlOH 0.5」と表記し、それぞれ実施例1及び2とする。
【0132】
比較評価のために、発光性水酸化アルミニウムを使わないこと以外は、実施例1と同一に製造したシート(以下、「EVAシート」という)を比較例1とし、紫外線吸収剤としてシバ社のChimassorb 81(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシ-ベンゾフェノン)0.1、0.2及び0.5重量部を追加で添加したこと以外は、同一の方法でシートを製造し、これをそれぞれ「EVA-C81 0.1」、「EVA-C81 0.2」及び「EVA-C81 0.5」と表記して比較例2~4とした。
【0133】
発光性水酸化アルミニウム(AlOH)と紫外線吸収剤(C81)の導入有無及び含量による実施例と比較例は下記表1の通りである。
【0134】
【表1】
【0135】
<発光性水酸化アルミニウムが分散された封止材を含む太陽光モジュールの製造>
【0136】
実施例1、2及び比較例1~4によって製造された封止材シートをガラス(200mm × 200mm)、封止材、GINTECH社の6インチ多結晶太陽電池、封止材、SFC社のPVDF(polyvinylidene fluoride)基盤のバックシート(back sheet)の順に積層した後、熱接着(lamination)を通じてミニモジュールを製造した。熱接着過程は、150℃で6分間真空段階を経た後、11分間ラミネータの上部圧と下部圧の差を0.4MPaに維持して架橋を進行した。
【0137】
実験例1:封止材の耐久性評価
【0138】
発光性水酸化アルミニウムの導入有無による封止材の耐久性を評価するために、前記製造されたミニ太陽光モジュールと2枚のガラスの間に封止材が位置する試験片の耐久性加速実験(accelerated weathering test)を進行した。UV Aging実験のために、温度63℃条件で紫外線ランプ(340nm、0.9W/m)に前記試験片を露出させて時間経過による全体透過度(total transmittance)特性(ガラス試験片)と太陽電池効率の変化(太陽光ミニモジュール試験片)を観察した。Damp-Heat Aging実験のためには、温度85℃、湿度85%条件で前記試験片を露出させて時間経過による透過度特性(ガラス試験片)と太陽電池効率の変化(太陽光ミニモジュール試験片)を観察した。太陽電池効率の変化分析は、WACOM社のSolar Simulator(WXS-156S-10)を用い、全体透過度の特性分析は、UltraScan PRO Spectrometer(HunterLab)を用いた。
【0139】
図8は、前記実施例1、2及び比較例1、3の封止材を2枚のガラス基板の間に位置させて熱接着を進行した試験片の全体透過度を示す。二点鎖線は、EVA試験片(比較例1)として全体波長領域で90%レベルの高い透過度を示し、EVA-AlOH 0.1、EVA-AlOH 0.5試験片(実験例1及び2)は、450nm以上の紫外線領域でAlOH(水酸化アルミニウム)による吸収ピークを示し、EVA試験片(比較例1)と類似して可視光線領域では90%レベルの高い透過度を示す。一方、EVA-C81(比較例3)は、400nm以上の紫外線領域で透過度が急激に減少することが分かる。すなわち、上記で説明したように、紫外線吸収剤であるC81を用いると、紫外線遮断効果による封止材耐久性は向上されるが、400nm以下の紫外線を太陽電池が吸収できず、電気に変換できないため初期出力が減少するという短所がある。
【0140】
図9は、UV Aging及びDamp-Heat Agingを2000時間進行した後、発光性水酸化アルミニウムの導入前後の封止材を2枚のガラス基板の間に位置させて熱接着を進行した試験片の全体透過度を示す。図9の(a)は、UV Aging Test結果として、水酸化アルミニウムが導入された実施例1(EVA-AlOH 0.1、点線)と実施例2(EVA-AlOH 0.5、二点鎖線)の封止材は、図3の加速実験前の透過度を維持しているが、EVAは、400nm以上の紫外線領域で透過度が減少することが確認できる。また、図9の(b)は、Damp-Heat Aging Test結果として、図9の(a)のUV Aging結果と類似して水酸化アルミニウムが導入された実施例1(EVA-AlOH 0.1、点線)と実施例2(EVA-AlOH 0.5、二点鎖線)の封止材は、図8の加速実験前の透過度を維持しているが、比較例1(EVA)は、400nm以上の紫外線領域で透過度が急激に減少することが確認できた。すなわち、400nm以上の紫外線領域の光が封止材を透過できず太陽電池に到逹できないことを意味し、その分の光を太陽電池が電気に変換しないことを意味する。
【0141】
表2~4は、それぞれ発光性水酸化アルミニウムの導入による耐久性評価の前後のミニ太陽光モジュールの電流-電圧曲線(I-V Curve)分析によるopen-circuit voltage(Voc)、short-circuit current density(Jsc)、fill factor(FF)及びefficiency値を示す。
【0142】
【表2】
【0143】
前記表2で、耐久性加速実験前(before weathering degradation)の発光性水酸化アルミニウムが導入された封止材実施例1(EVA-AlOH 0.1)と実施例2(EVA-AlOH 0.5)のものを用いた太陽光モジュールは、EVA単独封止材を用いたモジュールに比べて相対効率が2.33、2.68%向上した値を示す。すなわち、発光性水酸化アルミニウムを導入することによって紫外線吸収及び可視光線発光の下方変換によってshort-circuit current densityの増加による太陽光モジュールの初期効率が増加することが分かる。
【0144】
【表3】
【0145】
また、前記表3によると、UV Aging Testで前記試験片を2000時間露出させた後の効率変化を見ると、発光性水酸化アルミニウムが導入された封止材である実施例1(EVA-AlOH 0.1)と実施例2(EVA-AlOH 0.5)のものを用いた太陽光モジュールは、EVA単独封止材を用いたモジュールに比べて相対効率が3.35、3.59%向上した値を示す。すなわち、図9で説明したように、EVA単独封止材(比較例1)の場合、UV AgingによってEVA封止材層の透過度が減少して封止材下部の太陽電池の光電変換効率が減少するが、EVA-AlOH 0.1、EVA-AlOH 0.5封止材の場合には、透過度を維持することによって太陽電池の出力低下を防止できることを意味する。また、比較例2~4は、それぞれEVAに紫外線吸収剤としてシバ社のChimassorb 81(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシ-ベンゾフェノン)を添加したものであるが、EVA単独封止材(比較例1)に比べて0.1、0.2、0.5重量比のそれぞれ0.12%、-0.18%、-1.43%となり、実施例に比べて好ましくない結果を示している。本発明の実施例1及び2への発光性水酸化アルミニウムと同一の含量を含む比較例2及び4の封止材を用いた場合にも好ましくない結果を示すことが分かる。
【0146】
【表4】
【0147】
また、前記表4から分かるように、Damp-Heat Aging Testで前記試験片を2000時間露出させた後の効率変化を見ると、水酸化アルミニウムが導入された封止材である実施例1(EVA-AlOH 0.1)と実施例2(EVA-AlOH 0.5)のものを用いた太陽光モジュールは、EVA単独封止材を用いたモジュールに比べて相対効率が5.43、5.87%向上した値を示す。UV Aging結果より発光性水酸化アルミニウムの導入による相対効率が一層大きい差を示すことは、EVA封止材がUV AgingよりDamp-Heat Agingで一層大きい劣化を示すからであり、発光性水酸化アルミニウムを導入すると、劣化を防止して封止材層の透過度を維持することができるからである。上述したように、本発明は、発光性水酸化アルミニウムを太陽光用封止材に分散させて太陽電池及び太陽光モジュールを構成する場合、封止材の耐久性を向上させて封止材層の透過性を維持することよって、太陽電池及び太陽光モジュールの長期耐久性の向上及び時間経過による出力低下を最小化して発電量を保障する技術を提供する。
【0148】
実施例3~6:太陽光変換素材を含む太陽電池の製造
【0149】
前記製造例2及び4(実施例3及び4)と、製造例1及び3(実施例5及び6)によって製造された水酸化アルミニウム溶液それぞれをシリコンセルと封止材の界面に位置させるために、スプレーコーティング方法を用いて6インチシリコンセルの表面に塗布した。光が入射する前面からガラス/封止材/水酸化アルミニウム/太陽電池/封止材/バックシート(back sheet)の順に積層した後、ラミネーション(lamination)を通じてシリコン太陽電池モジュールを製造した。このように製造された太陽電池モジュールで、近赤外線発光水酸化アルミニウムは、封止材と太陽電池の界面に位置することになる。太陽電池を構成する太陽光変換素材の構成は、下記表5の通りであり、それぞれ50mgが含まれる。
【0150】
比較例5:発光性水酸化アルミニウムを含む太陽電池の製造
【0151】
比較のために、水酸化アルミニウム前駆体単独で製造された発光性水酸化アルミニウム50mgとランタン系イオンのイッテルビウム(III)アセテートハイドレート0.1mgが単純混合された溶液をシリコンセルの表面にスプレーコーティングした。発光性水酸化アルミニウムとイッテルビウム(III)アセテートハイドレートの単純混合溶液を製造すること以外は、実施例3と同一に太陽電池を製造した。
【0152】
【表5】
【0153】
実験例2:太陽光変換素材を含む太陽電池性能の評価
【0154】
発光性水酸化アルミニウムの導入による太陽電池の効率変化を分析するために、WACOM社のSolar Simulator(WXS-156S-10)を用いた。また、水酸化アルミニウムのコーティングによる全体反射度(total reflectance)の測定のために、Shimadzu社のUV-3600 NIR(with MPC-3100)を用い、コーティング前後の変化を分析した。
【0155】
表6は、発光性水酸化アルミニウムが塗布された6インチ多結晶シリコン太陽電池の効率測定結果を示す。効率測定の精密度を高めるために、水酸化アルミニウムの塗布前に太陽電池の効率を全て測定して塗布後の結果と比較した。下記太陽電池1~5は、それぞれ太陽光変換素材を含まずに対応する実験例及び比較例の太陽電池と同一条件で製造した太陽電池である。
【0156】
【表6】
【0157】
表6で、発光性水酸化アルミニウムのAlOH、AlOH-NA、AlOH-Yb、AlOH-NA-Ybが塗布される場合、塗布されないシリコン太陽電池より短絡電流(short-circuit current)と効率(efficiency)が全て増加した。相対効率変化は、AlOH、AlOH-NA、AlOH-Yb、AlOH-NA-Ybがそれぞれ1.33%、2.27%、3.51%、5.04%であって、Ybがドーピングされて近赤外線の発光が可能である場合、可視光線の発光のみ可能であるAlOH、AlOH-NAより優れていた。特に、Ybとともに2-ナフトエ酸がともにドーピングされる場合、Ybのみドーピングされる場合より相対効率が一層大きく増加することを確認した。
【0158】
また、比較例5によると、単一水酸化アルミニウム前駆体で合成された発光性水酸化アルミニウム(AlOH)とランタン系イオンのイッテルビウム(III)アセテートハイドレートの混合溶液をシリコンセルの表面にスプレーコーティングして太陽電池を製造する場合には、発光性水酸化アルミニウムのみコーティングされた比較例5の結果と類似して相対効率が1.29%増加することを確認した。これは、発光性水酸化アルミニウムからYbイオンへの効果的なエネルギー転移が発生しないため発光性水酸化アルミニウムの下方変換効果のみ具現されたものである。これは、本発明による発光性水酸化アルミニウムの光変換転換効果を明らかに立証するものである。
【0159】
このような効率増加を検証するために、発光性水酸化アルミニウムのコーティング前後の光電変換効率(又は外部量子効率)を測定した。図10は、表6の太陽電池2と実施例4のAlOH-NA-YbがコーティングされたCellの外部量子効率変化を測定した結果を示す。
【0160】
図10で、点線は、表6の太陽電池2の外部量子効率スペクトラムであり、実線は、実施例4のAlOH-NA-Ybがコーティングされたセルの外部量子効率スペクトラムであって、下方変換によって300nmから500nm付近に至るまでAlOH-NA-Ybをコーティングした後に変換効率が大きく増加することが分かる。
【0161】
図11は、表6の太陽電池2と実施例4のAlOH-NA-YbがコーティングされたCellの全体反射度変化を測定した結果であって、点線は、近赤外線発光水酸化アルミニウムのコーティング前の全体反射度であり、実線は、AlOH-NA-Ybコーティング後の反射度スペクトラムである。塗布後に300~500nmと800~1100nm領域で反射度が一層減少することが分かり、反射度が低いため太陽電池により有利である。すなわち、近赤外線発光水酸化アルミニウムをシリコン太陽電池の表面にコーティングすることによって、紫外線光の吸収及び可視光線、近赤外線の発光による下方変換効果と近赤外線発光水酸化アルミニウムの屈折率がシリコン太陽電池表面の屈折率と封止材の屈折率の間の値(1.5<nアルミニウムヒドロキシド<2.5)を有することによって、シリコン太陽電池の内部への光の進入が容易になる非反射コーティング効果によってシリコン太陽電池の短絡電流の増加及びそれによる全体効率が増加したものである。
【0162】
本発明は、発光性水酸化アルミニウムを太陽光用封止材に分散させて太陽電池及び太陽光モジュールを構成する場合、封止材の耐久性を向上させて封止材層の透過性を維持させることによって太陽電池及び太陽光モジュールの長期耐久性の向上及び時間経過による出力低下を最小化して発電量を保障する技術を提供する。
【0163】
実施例7~12:太陽光変換素材を含む太陽電池の製造
【0164】
6インチ(inch)多結晶シリコン太陽電池を用いた。
【0165】
製造例3によって製造された太陽光変換素材溶液を表7のようにその含量のみを異にしてシリコンセルと封止材の界面に位置させるためにスプレーコーティング方法を用いて6インチシリコンセルの表面に塗布する。
【0166】
光が入射する前面からガラス/封止材/太陽光変換素材/太陽電池/封止材/バックシート(back sheet)の順に積層した後、ラミネーション(lamination)を通じてシリコン太陽電池モジュールを製造した。このように製造された太陽電池モジュールで発光性水酸化アルミニウムは、封止材と太陽電池の界面に位置することになる。太陽電池を構成する太陽光変換素材の構成は、前記方法により製造された発光性水酸化アルミニウムを用いたが、ただし、実施例は、芳香族環化合物を添加して製造した太陽光変換素材を用い、実施例10~12は、芳香族環化合物を含まない発光性水酸化アルミニウムのみを用いたこと以外は、それぞれ実施例7~9と同一に太陽電池を製造した。含量は、下記表7の通りである。
【0167】
【表7】
【0168】
比較例6
【0169】
実施例7と同量の水酸化アルミニウム前駆体(20mg/ml)及び芳香族環化合物の3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(2mg/ml)を単純混合し分散させてコーティング組成物を製造した後、太陽電池素材の受光側面に配置して太陽電池を製造したこと以外は、実施例7と同一に太陽電池を製造した。
【0170】
実験例3:太陽光変換素材を含む太陽電池の性能評価
【0171】
太陽光変換素材の導入による太陽電池の効率変化を分析するために、WACOM社のSolar Simulator(WXS-156S-10)を用い、水酸化アルミニウムのコーティング前後と熱接着前後の効率変化を全て測定した。また、波長別外部量子効率を分析するために、PV Measurement社のIPCE(QEX10)装備を用い、水酸化アルミニウムのコーティング前後の変換効率変化を観察した。追加的に、水酸化アルミニウムのコーティングによる全体反射度(total reflectance)の測定のために、Shimadzu社のUV-3600 NIR(with MPC-3100)を用い、コーティング前後の変化を分析した。
【0172】
表8は、発光性水酸化アルミニウムが塗布された6インチ多結晶シリコン太陽電池の効率測定結果を示す。効率測定の精密度を高めるために、水酸化アルミニウムの塗布前に太陽電池の効率を全て測定して塗布後の結果と比較した。下記太陽電池5~11は、それぞれ太陽光変換素材を含まずに対応する実施例及び比較例の太陽電池と同一条件で製造した太陽電池である。
【0173】
【表8】
【0174】
表8で、発光性水酸化アルミニウムのAlOH又はAlOH-NAが塗布される場合、塗布されないシリコン太陽電池より短絡電流(short-circuit current)と効率(efficiency)が全て増加し、特に、AlOH-NAが塗布される場合、AlOHより優れていた。
【0175】
また、AlOHとNAをそれぞれ別に添加して混合した後にコーティングして太陽電池を製造した場合(比較例6)には、NAからAlOHに効果的なエネルギー転移が不可能となることによって所望する好ましい結果を得ることができなかった。
【0176】
このような効率増加を検証するために、水酸化アルミニウムのコーティング前後の光電変換効率(IPCE、incident photon-to-current efficiency)を測定した。図12は、IPCE測定結果であって、波長による光電変換効率、すなわち、外部量子効率(EQE、external quantum efficiency)スペクトラムを示す。
【0177】
図12は、表8の太陽電池10(実施例12)と7(実施例9)の結果を示したものであって、点線は、コーティング前のEQEスペクトラムであり、二点鎖線は、AlOHコーティング(実施例12)、実線は、AlOH-NAーティング後(実施例9)のEQEスペクトラムである。図12の結果から、発光性水酸化アルミニウムがコーティングされる場合、下方変換によって300nmから500nm付近に至るまで変換効率が増加することが分かり、AlOHよりAlOH-NAをコーティングする場合に一層効果的な下方変換が可能であることが分かる。
【0178】
また、図13は、表のsolar cell 10(実施例12)と7(実施例9)の発光性水酸化アルミニウムのコーティングによる反射度変化を測定した結果であって、実線は、水酸化アルミニウムのコーティング前の全体反射度であり、二点鎖線は、AlOHコーティング、点線は、AlOH-NAコーティング後の反射度スペクトラムである。塗布後に300~500nmと800~1100nm領域で反射度がより減少することが分かり、EQEスペクトラムと類似してAlOH-NAがAlOHより紫外線波長領域で反射度が一層低いため太陽電池により有利である。すなわち、発光性水酸化アルミニウムをシリコン太陽電池の表面にコーティングすることによって、紫外線光の吸収及び可視光線の発光による下方変換効果と水酸化アルミニウムの屈折率がシリコン太陽電池の表面の屈折率と封止材の屈折率の間の値(1.5<naluminum hydroxide<2.5)を有するためシリコン太陽電池の内部への光の進入が容易になる非反射コーティング効果によってシリコン太陽電池の短絡電流の増加及びそれによる全体効率が増加したものである。
【0179】
本発明は、発光性水酸化アルミニウムを太陽光用封止材に分散させて太陽電池及び太陽光モジュールを構成する場合、封止材の耐久性を向上させて封止材層の透過性を維持させることによって太陽電池及び太陽光モジュールの長期耐久性の向上及び時間経過による出力低下を最小化して発電量を保障する技術を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13