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特許7261352アミロイドベータ蓄積及び/又は凝集抑制組成物及び抑制方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】アミロイドベータ蓄積及び/又は凝集抑制組成物及び抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20230412BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20230412BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230412BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230412BHJP
   C12N 15/85 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K35/30
A61P25/28
A61P43/00 105
C12N5/10
C12N15/85 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022508743
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2020003439
(87)【国際公開番号】W WO2020117031
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0060883
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0006861
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521460387
【氏名又は名称】イノピューティクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】サンフン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ジェジン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ユンソン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】テギュン・キム
【審査官】菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0354688(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0003098(KR,A)
【文献】Journal of Alzheimer's Disease, 2016, vol. 52, no. 2, pp. 483-495,IOS Press [online], 2016.05.10, [retrieved on 2022.09.28], Internet:<URL:https://content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad151090>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 35/30
A61P 25/00
A61P 25/28
A61P 43/00
C12N 5/10
C12N 15/85
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクター;
Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(neurons);
Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経幹細胞(neuronal stem cells);又は
Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された膠細胞(glia)
を含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制用組成物。
【請求項2】
前記ベクターは、ウイルス性ベクター又は非ウイルス性ベクターである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ベクターは、遺伝子編集技術によってNurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
神経細胞(neurons)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、及び膠細胞(glia)は、ウイルス性ベクター、非ウイルス性ベクター、又は遺伝子編集によってNurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記膠細胞(glia)は、星状細胞(astrocyte)、又は小膠細胞(microglia)である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集(accumulation and/or aggregation)抑制剤に関し、より詳細には、哺乳類にNurr1及びFoxa2遺伝子を同時に導入して発現を誘導することにより、アミロイドベータ蓄積及び/又は凝集を抑制する組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)は、記憶力減退、言語、及び認知障害などを症状とする慢性神経退行性疾患である。
【0003】
アルツハイマー病は、神経病理学的に脳細胞、神経組織、及び血管内沈着物(plaque)の存在、神経線維濃縮剤(neurofibrillary tangles,NFT)、アミロイドプラークを形成するアミロイドベータ(amyloid β)ペプチドの存在、シナプス損傷などを特徴とする。アルツハイマー病の原因は、完全に知られておらず、その治癒法も現在のところ存在しない。アルツハイマー病は、痴呆の通常の形態であり、心血管系疾患及び癌と共に死亡の主要原因である。人間の平均寿命が増加するにつれ、アルツハイマー病の頻度も増加すると予想される。
【0004】
また、アルツハイマー病を管理し治療するためには莫大な費用がかかり、患者の精神的苦痛も非常に大きい。したがって、効果的なアルツハイマー病の予防及び治療方法が望まれる状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、Nurr1及びFoxa2遺伝子が脳細胞に導入されて発現する時にアミロイドベータ(amyloid β)の蓄積及び/又は凝集を抑制することを実験的に究明し、本発明を完成するに至った。特に、Nurr1遺伝子単独発現効果よりはFoxa2遺伝子が共に発現した時に、これら両遺伝子の相乗効果による強力なアミロイドベータ蓄積及び/又は凝集抑制効果があることを確認した。
【0006】
したがって、本発明の一実施例は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制剤を提供する。
【0007】
本発明の他の実施例は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(neurons)、神経幹細胞(neuronal stem cells,neuronal precursor cells)、又は膠細胞(glia)を含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制剤を提供する。
【0008】
本発明の更に他の実施例は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、炎症調節複合体(inflammasome)、補体(complement)、ケモカイン(CCL3及びCCL4)、炎症性サイトカイン(IL-1β及びTNF-α)、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E,ApoE)、核受容体カッパB(NFκB)、又はアスパラギンエンドペプチダーゼ(asparaginyl endopeptidase,AEP)の発現抑制剤を提供する。
【0009】
本発明の更に他の実施例は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(neurons)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、又は膠細胞(glia)を含む、炎症調節複合体(inflammasome)、補体(complement)、ケモカイン(CCL3及びCCL4)、炎症性サイトカイン(IL-1β及びTNF-α)、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E,ApoE)、核受容体カッパB(NFκB)、又はアスパラギンエンドペプチダーゼ(asparaginyl endopeptidase,AEP)の発現抑制剤を提供する。
【0010】
本発明の更に他の実施例は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集によって発病する疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
【0011】
本発明の更に他の実施例は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(neurons)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、又は膠細胞(glia)を含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集によって発病する疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
【0012】
本発明の更に他の実施例は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集による細胞老化抑制用組成物を提供する。
【0013】
本発明の更に他の実施例は、次の段階を含む、アルツハイマー病に悩んでいる患者を治療する方法である:
Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む組成物の治療学的有効量を患者に投与する段階。
【0014】
本発明の更に他の実施例は、次の段階を含む、アルツハイマー病に悩んでいる患者を治療する方法である:
Nurr1遺伝子が導入されたベクター及びFoxa2遺伝子が導入された2番目のベクターを含む組成物の治療有効量を患者に投与する段階。
【課題を解決するための手段】
【0015】
核受容体関連因子1(Nuclear receptor-related factor,Nurr1;NR4A2とも知られている。)は、初期に中脳ドパミン(midbrain dopamine,mDA)ニューロンの発生、成熟、及び軸索突起方向設定を含むmDAニューロン発達に重要な転写因子として特徴付けられる孤児核受容体である。Nurr1は、成熟したmDAニューロン内で続けて発現し、成熟期に発生する当該タンパク質の削除は、mDAニューロンの進行性損失につながる。異質接合されたNurr1マウスにおいて、mDAニューロンはDA神経毒素に対してより脆弱である。mDAニューロン内のNurr1数値は、老人及びアルツハイマー病患者において減少する。これらの発見は、Nurr1が細胞自発的な方式で成熟したmDAニューロンを保護する効果を奏するという研究結果を裏付ける。
【0016】
実際に、Nurr1を媒介とした細胞生存に関連した種々の内因性基剤が確認されてきた。特に、神経組織において膠細胞(glia)は、星状細胞(astrocyte)と小膠細胞(microglia)を含み、これは神経細胞の機能と生存を助ける補助細胞である。
【0017】
そこで、本発明者は、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)の主要原因として知られたアミロイドベータの蓄積及び/又は凝集抑制のための方法について鋭意研究してきた。その結果、Nurr1及びFoxa2遺伝子が同時に発現した場合に、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制効果、炎症調節複合体(inflammasome)、補体(complement)、ケモカイン(CCL3及びCCL4)、炎症性サイトカイン(IL-1β及びTNF-α)、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E,ApoE)、又はアスパラギンエンドペプチダーゼ(asparaginyl endopeptidase,AEP)の発現抑制効果、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積による細胞老化抑制効果があることを明らかにした。
【0018】
本発明の一態様によれば、本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制剤を提供する。
【0019】
本発明の一具現例によれば、前記ベクターは、ウイルス性ベクター又は非ウイルス性ベクターである。
【0020】
本発明の一具現例によれば、前記哺乳類への遺伝子の導入は、遺伝子編集技術によってなされる。
【0021】
本発明の他の態様によれば、本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入され、Nurr1及びFoxa2タンパク質を発現する神経細胞(neurons)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、又は膠細胞(glia)を含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制剤を提供する。
【0022】
本発明の一具現例において、前記導入は、ウイルス性ベクター、非ウイルス性ベクター、又は遺伝子編集によってなされる。
【0023】
本発明の一具現例において、前記膠細胞(glia)は、星状細胞(astrocyte)又は小膠細胞(microglia)である。
【0024】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクター及び薬剤学的に許容される担体を含む、炎症誘発複合体(inflammasome)、補体(complement)、ケモカイン(CCL3及びCCL4)、炎症性サイトカイン(IL-1β及びTNF-α)、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E,ApoE)、核受容体カッパB(NFκB)、又はアスパラギンエンドペプチダーゼ(asparaginyl endopeptidase,AEP)の発現抑制剤を提供する。
【0025】
本発明の一具現例において、前記ベクターは、ウイルス性ベクター又は非ウイルス性ベクターである。
【0026】
本発明の一具現例において、前記遺伝子の導入は、遺伝子編集技術によってなされる。
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(neurons)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、又は膠細胞(glia)を含む、炎症誘発複合体(inflammasome)、補体(complement)、ケモカイン(CCL3及びCCL4)、炎症性サイトカイン(IL-1β及びTNF-α)、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E,ApoE)、核受容体カッパB(NFκB)、又はアスパラギンエンドペプチダーゼ(asparaginyl endopeptidase,AEP)の発現抑制剤を提供する。
【0027】
本発明の一具現例において、前記遺伝子の導入は、ウイルス性ベクター、非ウイルス性ベクター、又は遺伝子編集によってなされる。
【0028】
本発明の一具現例において、前記膠細胞(glia)は、星状細胞(astrocyte)又は小膠細胞(microglia)である。
【0029】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集によって発病する疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
【0030】
本発明の一具現例において、前記ベクターは、ウイルス性ベクター又は非ウイルス性ベクターである。
【0031】
本発明の一具現例において、前記遺伝子の導入は、遺伝子編集技術によってなされる。
【0032】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(neurons)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、又は膠細胞(glia)を含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集によって発病する疾患の予防又は治療用薬剤学的組成物を提供する。
【0033】
本発明の一具現例において、前記導入は、ウイルス性ベクター、非ウイルス性ベクター、又は遺伝子編集によってなされる。
【0034】
本発明の一具現例において、前記膠細胞(glia)は、星状細胞(astrocyte)又は小膠細胞である。
【0035】
本発明の更に他の態様によれば、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集による細胞老化抑制用組成物を提供する。
【0036】
本発明の一具現例において、前記細胞は膠細胞(glia)である。
【0037】
本発明の一具体例において、前記膠細胞(glia)は、星状細胞(astrocyte)又は小膠細胞(microglia)である。
【0038】
本発明は、Nurr1遺伝子及びFoxa2遺伝子を発現させることにより、これら両遺伝子の相乗作用によってアルツハイマー病の予防及び治療に用いることができる。Nurr1及びFoxa2の発現は、(1)アミロイドベータ蓄積、(2)脳細胞老化、(3)シナプス損失のようなアルツハイマー病の病理的症状を緩和させる。また、Nurr1及びFox2の発現は、脳細胞を損傷させる炎症調節複合体(inflammasome)の発現を顕著に減らし、末梢免疫細胞又は補体(complement)の蓄積を抑制して、アルツハイマー病の予防及び治療の効果を奏する。Nurr1及びFoxa2が共に発現する時、脳細胞においてNurr1又はFoxa2を単独で発現させる時に比べて劇的に、相乗作用を起こし、アルツハイマー病の病理的症状を緩和させ、アルツハイマー病の予防及び治療の効果を奏する。
【0039】
一方、本発明の方法において“Nurr1及びFoxa2を導入(形質導入)する”とは、両遺伝子を暗号化する核酸を脳細胞に導入することをいう。両遺伝子はそれぞれ別に又は同時に導入されてよい。脳細胞に、Nurr1及びFoxa2をコードする遺伝子を導入するために、DNA-カルシウム沈殿法、リポソームを用いる方法、ポリアミン系列を用いる方法、電気穿孔法(electroporation)、レトロウイルスを用いる方法、アデノウイルスを用いる方法、アデノ関連ウイルス(AAV)などを用いる方法など、当分野に公知された遺伝子の細胞内導入技術方法が用いられてよい。
【0040】
Nurr1及びFoxa2を導入する時、ウイルス性又は非ウイルス性ベクターを使用することができ、ウイルス性ベクターは、アデノ関連ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レトロウイルス、及び/又はレンチウイルスなどがあり、非ウイルス性ベクターは、RNA分子、プラスミド、リポソーム複合体、分子結合体(molecular conjugates)、及び/又は遺伝子はさみタンパク質(CRISPR,例えばCas9)などがある。
【0041】
したがって、本発明に係るNurr1及びFoxa2導入は、一具体例として、Nurr1及びFoxa2を暗号化する核酸をそれぞれ個別の発現ベクター又は単一の発現ベクターに挿入させた後、それを脳細胞に導入することを含む。
【0042】
Nurr1及びFoxa2を導入する時に、遺伝子編集技術を用いることができ、遺伝子編集技術とは、生命体の遺伝情報を自由に矯正し、目的とする遺伝形質を表させるものであり、遺伝子編集技術に利用可能なシステムには、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及び周期的に間隔を帯びて分布する短い回文構造の反復配列(Clustered regularly interspaced short palindromic repeat)/CRISR関連システム(CRISPR/Cas9)などがある。
【0043】
本発明において、用語“RNA-ガイドヌクレアーゼ”とは、目的とする遺伝体上の特定位置を認識して切断できるヌクレアーゼで、特にガイドRNAによって標的特異性を有するヌクレアーゼのことを指す。前記RNA-ガイドヌクレアーゼは、これに制限されるものではないが、具体的に、微生物兔疫体系であるCRISPRに由来したCasタンパク質でよく、より具体的に、Cas9(CRISPR-Associated Protein 9)ヌクレアーゼ(nuclease)及びその変異体であるCas9ニッカーゼ(nickase)を含むことができる。
【0044】
本発明において、用語“Casタンパク質”は、CRISPR/Casシステムの主要タンパク質構成要素であって、活性化されたエンドヌクレアーゼとして作用可能なタンパク質である。前記Casタンパク質は、crRNA(CRISPR RNA)及びtracrRNA(trans-activating crRNA)と複合体を形成してその活性を示すことができる。
【0045】
前記Cas9ヌクレアーゼは、ヒト細胞をはじめとする動植物細胞の遺伝体において特定塩基配列を認識し、二本鎖切断(double strand break,DSB)を起こす。前記二本鎖切断は、DNAの二本鎖を切って鈍端(blunt end)又は粘着末端(cohesive end)を作るいずれをも含む。DSBは、細胞内で相同組換え(homologous recombination)又は非相同再接合(non-homologous end-joining,NHEJ)機序により効率的に修繕されるが、この過程で研究者が所望の変異を標的位置に導入することができる。前記RNA-ガイドヌクレアーゼは、人工的な、或いは操作された非自然的に発生した(non-naturally occurring)ものであってよい。
【0046】
前記Cas9ニッカーゼは、Cas9ヌクレアーゼの触媒的ドメインのいずれか1個に1個以上の突然変異を含むが、ここで、前記1個以上の突然変異は、RuvCドメイン内D10A、E762A、及びD986Aからなる群から選ばれるか、又は前記1個以上の突然変異は、HNHドメイン内H840A、N854A、及びN863Aからなる群から選ばれる。前記Cas9ニッカーゼは、Cas9ヌクレアーゼとは違い、一本鎖切断(single strand break)を起こす。したがって、Cas9ニッカーゼが作動するためには、2個のガイドRNAを必要とし、対(pair)として機能する。前記2個のガイドRNAは、それぞれの標的配列に対してCRISPR複合体の配列特異的結合を指示し、各標的配列近傍のDNAデュプレックスの1本の鎖の切断を指示し、異なるDNA鎖に2個のニック(nick)を誘導することができる。
【0047】
Casタンパク質又は遺伝子情報は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のGenBankのような公知のデータベースから得ることができる。具体的に、前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質であってよい。また、前記Casタンパク質は、これに制限されるものではないが、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ナイセリア(Neisseria)属、パスツレラ(Pasteurella)属、フランシセラ(Francisella)属、カンピロバクター(Campylobacter)属由来のCasタンパク質でよく、より具体的には、スタフィロコッカス属のCas9タンパク質でよい。しかし、上述の例に本発明が制限されるものではない。本発明において、前記Casタンパク質は組換えタンパク質であってよい。
【0048】
前記Nurr1及びFoxa2を暗号化する各核酸は、当業界に公知のNurr1及びFoxa2を暗号化する塩基配列を有するものであれば、いずれも使用可能である。また、前記核酸はNurr1及びFoxa2の各機能的同等物を暗号化する塩基配列を有することができる。前記機能的同等物とは、Nurr1及びFoxa2のアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の配列相同性(すなわち、同一性)を有するポリペプチドのことを指す。例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列相同性を有するポリペプチドを含む。前記機能的同等物は、アミノ酸配列の一部が付加、置換又は欠失した結果として生成されるものでよい。アミノ酸の欠失又は置換は、好ましくは、本発明のポリペプチドの生理活性に直接関連しない領域に位置している。
【0049】
また、前記Nurr1及びFoxa2を暗号化する核酸は、当業界に公知の遺伝子組換え方法によって製造されてよい(Sambrook,Fritsch and Maniatis,‘Molecular Cloning,A laboratory Manual,Cold Spring Harbor laboratory press,1989;Short Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,1992)。例えば、ゲノムから核酸を増幅させるためのPCR増幅、化学的合成法又はcDNA配列を製造する技術がある。
【0050】
前記Nurr1及びFoxa2を暗号化する核酸は、発現調節配列に作動可能に連結されて発現ベクター内に挿入されてよい。‘作動可能に連結される(operably linked)’とは、一つの核酸断片が他の核酸断片と結合し、それの機能又は発現が他の核酸断片に影響を受けることを指す。また、発現調節配列(expression control sequence)とは、特定の宿主細胞において作動可能に連結された核酸配列の発現を調節するDNA配列を意味する。このような調節配列は、転写を開始するためのプロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解読の終結を調節する配列を含む。それらを総じて‘Nurr1及びFoxa2を暗号化する核酸を含むDNA構造物’と表現することができる。
【0051】
‘発現ベクター’とは、構造遺伝子を暗号化する核酸が挿入可能であり、宿主細胞内で前記核酸を発現可能な当業界に公知のプラスミド、ウイルスベクター、又はその他媒介体を意味する。一つの好ましいベクターは、ウイルスベクターであってよい。前記ウイルスベクターには、これに制限されないが、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、アビポックスウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどがある。
【0052】
前記アデノ関連ウイルス(AAV)ベクターは、特定細胞にウイルスを生産可能な材料を導入して作製されたものであり、レンチウイルスベクターも、特定細胞株にウイルスを生産可能に諸段階を経て作製されたものである。遺伝子療法のためのアデノ関連ウイルス(AAV)又はレンチウイルスベクターの長所は、効率性と安全性である。
【0053】
本発明に係る核酸を含む発現ベクターは、当業界に公知の方法、例えば、これに限定されないが、一時的形質感染(transient transfection)、微細注射、形質導入(transduction)、細胞融合、リン酸カルシウム沈殿法、リポソーム媒介の形質感染(liposome-mediated transfection)、DEAEデキストラン媒介の形質感染(DEAE Dextran- mediated transfection)、ポリブレン媒介の形質感染(polybrene-mediated transfection)、電気穿孔法(electroporation)、遺伝子銃(gene gun)、及び細胞内に核酸を取り込むための他の公知の種々の方法によって脳細胞内に導入することができる。例えば、Nurr1及びFoxa2をAAV又はレンチウイルスベクターに挿入して発現ベクターを作製した後、このベクターを包装(packaging)細胞に形質導入し、形質導入された包装細胞を培養後に濾過してAAV又はレンチウイルス溶液を得、これを用いて脳細胞、神経細胞及び/又は神経幹細胞(neuronal stem cells)を感染させることにより、脳細胞にNurr1及びFoxa2遺伝子を導入することができる。次いで、前記AAV又はレンチウイルスベクターに含まれた選別マーカーを用いてNurr1及びFoxa2を同時発現させることを確認後に、所望の脳細胞を得ることができる。
【0054】
一具体例として、本発明に係るNurr1及びFoxa2を発現させた脳細胞は、次の段階を含む製造方法によって製造されてよい:
(a)Nurr1及びFoxa2を暗号化する核酸を含むDNA構造物(construct)を含む組換えウイルスベクターを製造する段階;
(b)前記組換えウイルスベクターをウイルス生産細胞株に形質感染させてNurr1及びFoxa2発現組換えウイルスを製造する段階;及び
(c)前記Nurr1及びFoxa2発現組換えウイルスで脳細胞を感染させる段階。
【0055】
まず、Nurr1及びFoxa2を暗号化する核酸を含むDNA構造物(construct)については、上述した通りである。
【0056】
前記DNA構造物を発現調節配列、例えばプロモーターに作動可能に連結し、当業界に公知のウイルスベクターに挿入させて組換えウイルスベクターを製造する。その後、Nurr1及びFoxa2を暗号化する核酸を含む組換えウイルスベクターをウイルス生産細胞株に導入し、Nurr1及びFoxa2を発現させる組換えウイルスを製造する。前記ウイルス生産細胞株は、使用したウイルスベクターに該当するウイルスを生産する細胞株を使用することができる。その後、Nurr1及びFoxa2を発現させる組換えAAV又はレンチウイルスを脳細胞に感染させる。これは、当業界に公知の方法で行うことができる。
【0057】
本発明に係るNurr1及びFoxa2を発現させる脳細胞は、当業界に公知の方法によって増殖及び培養されてよい。
【0058】
本発明の一具現例において、本発明の脳細胞は、目的細胞タイプの生存又は増殖を手伝う培養液内で培養される。しばしば、血清に替えて、自由アミノ酸に栄養を供給する培養液を使用することが好ましい。脳細胞の持続培養のために開発された添加剤を培養液に補充することが好ましい。例えば、Gibco社から市販しているN2培地及びB27添加剤、ウシ血清などがある。一具体例において、培養時に、培地と細胞の状態を観察しながら培地を交換することができる。この時、脳細胞が継続増殖して固まり合って神経球(neurospheres)を形成すると、継代培養を実施することが好ましい。継代培養は、状況によって、細胞成長を管理するための特定プロトコルにしたがって約7~8日間ごとに実施することができる。
【0059】
一方、Nurr1及びFoxa2が脳細胞に発現すれば、(1)アミロイドベータ蓄積(2)脳細胞老化、(3)シナプス損失のようなアルツハイマー病の病理的症状を緩和させ、また脳細胞を神経栄養化してアルツハイマー病の予防及び治療を助ける。Nurr1及びFoxa2が共に発現する時、脳細胞においてNurr1やFoxa2を単独で発現させる時に比べて劇的に、相乗作用を起こして、アルツハイマー病の病理的症状を緩和させ、アルツハイマー病の予防及び治療の効果を奏する。
【0060】
また、本発明は、他の観点において、Nurr1及びFoxa2が導入された脳細胞のアルツハイマー病の治療のための用途を提供する。
【0061】
例えば、それらの細胞は、治療しようとする疾患又は状態によって、中脳(midbrain)部位にNurr1及びFoxa2が導入された哺乳類の脳細胞を直接導入することによって治療的に使用することができる。また、Nurr1及びFoxa2が導入された脳細胞を治療学的有効量で含有する組成物の形態で投与又は移植することによって治療的に使用することができる。そして、本発明は、Nurr1及びFoxa2を発現させる細胞をアルツハイマー病に病んでいる患者に導入することによるアルツハイマー病の治療方法も含む。
【0062】
本発明の一態様において、Foxa2及びNurr1が導入された脳細胞を有効成分として含有する、アミロイドベータ蓄積及び/又は凝集によって発病する疾患(例えば、アルツハイマー病など)の予防又は治療用組成物、細胞治療剤又は遺伝子治療剤に関する。
【0063】
本発明の遺伝子治療剤又は細胞治療剤は、ベータアミロイド蓄積を防ぎ、神経細胞及び膠細胞を含む脳細胞を損傷から保護することにより、記憶関連神経細胞が補充(再生)されたり、再び構築(復元)されたりするようにする。
【0064】
本発明の細胞治療剤は、脳の損傷された神経細胞を補充(再生)したり、或いは再び構築(復元)したりする。“再生(regeneration)”とは、形成された器官又は個体の一部が喪失されたとき、その部分が補充される現象であり、“復元”は“再構成(reconstitution)”とも呼ぶことができ、これは、組織の再構築を意味するもので、一旦解離した細胞又は組織から組織又は器官を再び構築することを指す。
【0065】
本発明の組成物又は細胞治療剤は、投与方式によって許容可能な担体を含んで適切な製剤とすることができる。投与方式に適合する製剤は公知されており、典型的に、膜を通過する、移動を容易にさせる製剤を含むことができる。
【0066】
また、本発明の組成物は、一般的な医薬品製剤の形態で使用されてよい。非経口用製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、又は凍結乾燥製剤、経口投与時には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、又はウエハーなどの形態で製造でき、注射剤の場合は、単位投薬アンプル又は多回投薬形態で製造できる。また、本発明の治療用組成物は、薬学的に許容される担体と共に投与されてよい。例えば、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、又は香料などを使用することができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。
【0067】
また、本発明の治療用組成物を用いてアルツハイマー病を治療する方法は、適切な方法で対象体又は患者に所定の物質が導入される一般の経路を通じて投与することを含むことができる。前記投与方法には、脳内投与、脳室内投与、脊髄腔投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、血内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、及び直腸内投与があるが、これに制限されない。ただし、経口投与時に細胞が消化されることがあるので、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、胃で分解されることから保護するために剤形化することが好ましい。
【0068】
また、製薬組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与されてよい。好ましい投与方式及び製剤は、定位固定機(Stereotactic System)を用いた海馬(hippocampus)注射剤、脳室注射剤、中脳(midbrain)注射剤、脳脊髄液注射剤、静脈注射剤、皮下注射剤、血内注射剤、筋肉注射剤、又は点滴注射剤などである。注射剤は、生理食塩液又はリンゲル液などの水性溶剤、植物油、高級脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール又はグリセリンなど)などの非水性溶剤などを用いて製造でき、変質防止のための安定化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなど)、乳化剤、pH調整のための緩衝剤、微生物発育を阻止するための保存剤(例えば、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、ベンジルアルコールなど)などの薬剤学的担体を含むことができる。好ましくは、本発明の治療用組成物を用いてアルツハイマー病を治療する方法は、本発明の治療用組成物を薬学的有効量で投与することを含む。前記薬学的有効量は、疾患の種類、対象体(患者)の年齢、体重、健康、性別、対象体(患者)の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合又は同時使用される薬物などの、医学分野によく知られた要素によって、当業者が容易に決定できる。
【0069】
また、本発明の他の態様において、前述したFoxa2及びNurr1が導入された脳細胞を含有する組成物の形態で、治療学的有効量で病変部位に直接移植することを含む、アミロイドベータ蓄積及び/又は凝集によって発病する疾患(例えば、アルツハイマー病など)の治療方法に関する。移植及び細胞培養の方法は、当業者に広く知られた公知の方法を用いることができる。
【0070】
前記細胞の“治療学的有効量”は、アルツハイマー病によって誘発される対象体又は患者の生理学的効果を中止又は軽減させるのに十分な量である。使用された細胞の治療学的有効量は、対象体(患者)の必要性、対象体(患者)の年齢、生理学的状態及び健康、所定の治療効果、治療標的である組織の大きさ及び面積、病変の程度及び選択された伝達経路に依存するであろう。また、細胞は、低細胞投与量の多重小型移植片であり、所定の標的組織内の1以上の部位に投与できる。本発明の細胞は移植前に完全に分離され、例えば単一細胞の懸濁液を形成したり、又は移植前に略完全に分離され、例えば細胞の小型凝集物を形成できる。細胞は、それらを所定の組織部位に移植又は移動させ、機能的に欠乏している領域を再構成又は再生する方式で投与できる。
【0071】
治療学的に有効達成可能に投与できる細胞の適当な範囲は、当業者の通常の知識内で、対象体又は患者に応じて適切に使用することができる。例えば、約100~100,000,000細胞、或いはそれ以上であってもよいが、低容量では効果がなく、高容量では副作用の発生可能性があることを排除できないことから、100,000~50,000,000個程度が好ましいだろう。
【0072】
ただし、投与量はそれに限定されず、剤形の種類、投与方法、対象体(患者)の年齢や体重、患者の症状などを考慮し、最終には医師の判断によって適切に決定されてよい。
【0073】
本発明の組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、対象体(患者)の年齢、体重、性別、疾病症状の程度、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって様々であり、熟練した通常の医師は、目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定及び処方できる。一般に、本発明の薬剤学的組成物は、1×10~1×1013vg/μlのウイルスベクター、又はウイルス遺伝子を含み、通常、1×10~1×1016vg/doseを患者に1回~5回注射し、効果の持続のために数ヶ月又は数年後に再び類似の方法で注射できる。
【0074】
本発明において、前記組成物は、上述の医薬品製剤の形態で使用できる。
【0075】
本発明において、“遺伝子治療剤”は、疾病治療などを目的に遺伝物質又は遺伝物質を移入した運搬体を人体に投与する医薬品を意味する。
【0076】
遺伝子治療剤として適用可能な本発明の組成物に対して薬学的に許容可能な担体は、滅菌及び生体に適合するものとして、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びそれら成分の1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの別の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を更に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤として製剤化でき、標的器官に特異的に作用できるように標的器官特異的抗体又はその他リガンドを前記担体と結合させて使用することができる。
【0077】
前記組成物は、Nurr1及びFoxa2を発現させる脳細胞ではなく、Nurr1及びFoxa2を発現させるベクターを直接使用する以外は、前述した内容を適用又は準用することができる。
【0078】
本発明は、また、Nurr1及びFoxa2が導入された脳細胞を含む組成物を治療学的有効量で対象体に投与することを含む、アルツハイマー病予防又は治療方法を提供する。
【0079】
その他、アルツハイマー病予防又は治療用組成物に関して上述した全ての内容が、アルツハイマー病予防又は治療方法にも制限なく適用又は準用されてよい。
【発明の効果】
【0080】
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである。
(a)本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制剤を提供する。
(b)本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(nerous)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、又は膠細胞(glia)を含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制剤を提供する。
(c)本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、炎症調節複合体(inflammasome)、補体(complement)、ケモカイン(CCL3及びCCL4)、炎症性サイトカイン(IL-1β及びTNF-α)、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E,ApoE)、核受容体カッパB(NFκB)、又はアスパラギンエンドペプチダーゼ(asparaginyl endopeptidase,AEP)の発現抑制剤を提供する。
(d)本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(neurons)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、又は膠細胞(glia)を含む、炎症調節複合体(inflammasome)、補体(complement)、ケモカイン(CCL3及びCCL4)、炎症性サイトカイン(IL-1β及びTNF-α)、アポリポタンパク質E(apolipoprotein E,ApoE)、核受容体カッパB(NFκB)、又はアスパラギンエンドペプチダーゼ(asparaginyl endopeptidase,AEP)の発現抑制剤を提供する。
(e)本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集によって発病する疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
(f)本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入された神経細胞(nerous)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、又は膠細胞(glia)を含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集によって発病する疾患の予防又は治療用組成物を提供する。
(g)本発明は、Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集による細胞老化抑制用組成物を提供する。
(h)本発明の組成物を用いる場合、アルツハイマー病のようなアミロイドベータの蓄積及び/又は凝集によって発病する脳神経疾患の予防又は治療に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】AAV9ウイルスを用いた遺伝子伝達テスト実験過程を示す。
図2】AAV9ウイルスを用いた遺伝子伝達テスト実験結果(海馬体と脳室でのGFP発現程度)を示す
図3】Nurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標と対照群ウイルス(GFP-AAV9)を注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標とを比較した結果を示す
図4】明示的記憶能力検査により、Nurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標と対照群ウイルス(GFP-AAV9)を注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標とを比較した結果を示す
図5】新しい事物認知(Novel object Recognition)試験により、Nurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標と対照群ウイルス(GFP-AAV9)を注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標とを比較した結果を示す
図6】膠細胞にNurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入したアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位におけるアミロイドベータとタンパク質凝集体(Thioflavin S)の蛍光を免疫染色方法で確認した結果を示す
図7】膠細胞にNurr1遺伝子又はNurr1+Foxa2遺伝子を導入したアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位におけるアミロイドベータの蛍光を免疫染色方法で確認した結果を示す
図8】膠細胞にNurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入したアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位におけるアミロイドベータをコンゴレッド染色法で確認した結果を示す
図9】膠細胞にNurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入したアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位におけるアミロイドベータの量をウェスタンブロット分析(タンパク質電気泳動法)で分析した結果を示す
図10A】チオフラビンT試験を用いてアミロイドベータ線維(Aβ fibrils)の量を測定するアミロイドベータ分解実験過程を示す。
図10B】チオフラビンT試験を用いてNurr1及びFoxa2を同時に発現した群のシナジー効果を証明するために、アミロイドベータ線維(Aβ fibrils)の量を測定したアミロイドベータ分解実験結果を示す折れ線グラフである。
図10C】チオフラビンT試験を用いてNurr1及びFoxa2を同時に発現した群のシナジー効果を証明するために、アミロイドベータ線維(Aβ fibrils)の量を測定したアミロイドベータ分解実験結果を示す棒グラフである。
図11A】マウスの1次星状細胞にNurr1+Foxa2遺伝子を発現後に、アミロイドベータ凝集体の分解に関連したタンパク質に対するRNA-Seq分析を行った結果であり、Nurr1+Foxa2発現した膠細胞における当該酵素の遺伝子発現程度と対照群膠細胞における遺伝子発現程度との比率を示す。
図11B】マウスの1次星状細胞にNurr1+Foxa2遺伝子を発現後に、アミロイドベータ凝集体の分解に関連したタンパク質に対するRNA-Seq分析を行った結果であり、Nurr1+Foxa2発現した膠細胞におけるCD11bとCD18の遺伝子発現程度と対照群膠細胞における遺伝子発現程度との比率を示す。
図11C】マウスの1次星状細胞にNurr1+Foxa2遺伝子を発現後に、アミロイドベータ凝集体の分解に関連したタンパク質に対する実時間PCR分析を行った結果であり、対照群膠細胞、Nurr1単独で発現した膠細胞、Foxa2単独で発現した膠細胞、Nurr1及びFoxa2が同時に発現した膠細胞における、アミロイドベータ分解酵素(例えば、NEP、MMP14、IDE、ECE2)の遺伝子発現程度を示す。
図12A】チオフラビンT試験(ThT assays)を用いてアミロイドベータ単量体(Aβ monomer)の量を測定するアミロイドベータ凝集実験過程を示す。
図12B】チオフラビンT試験(ThT assays)を用いてNurr1及びFoxa2を同時に発現した群のシナジー効果を証明するために、アミロイドベータ単量体(Aβ monomer)の量を測定したアミロイドベータ凝集実験結果を示す折れ線グラフである。
図12C】チオフラビンT試験(ThT assays)を用いてNurr1及びFoxa2を同時に発現した群のシナジー効果を証明するために、アミロイドベータ単量体(Aβ monomer)の量を測定したアミロイドベータ凝集実験結果を示す棒グラフである。
図13】膠細胞でNurr1+Foxa2遺伝子を発現後に、C1qa,C3に対するRT-PCR分析を行った結果を示す。
図14】膠細胞でNurr1+Foxa2遺伝子を発現後に、CCL3とCCL4に対するRNA-Seq分析を行った結果を示す。
図15】アミロイドベータアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位にNurr1+Foxa2遺伝子導入後に、海馬部位で炎症調節複合体タンパク質(NLRP3、ASC、CASP1)を対象にRT-PCRした結果を示す。
図16】マウスの海馬及び脳室の膠細胞において特異的にNurr1+Foxa2遺伝子を導入し、2ヶ月後にウェスタンブロットを用いて海馬部における炎症調節複合体マーカーのタンパク質レベルを確認した結果を示す。
図17】アミロイドベータアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位にNurr1+Foxa2遺伝子導入後に、海馬部位で炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)を対象にRT-PCRした結果を示す。
図18】アミロイドベータアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位にNurr1+Foxa2遺伝子導入後に、海馬部位で神経栄養性因子(SHH、BDNF、Arg1)を対象にRT-PCRした結果を示す。
図19A】大脳皮質星状細胞をCMVプロモーター対照群、Nurr1、Foxa2、Nurr1+Foxa2の4群に分けて発現させた後、ベータアミロイド凝集剤を処理してNF-kB信号伝達因子の発現程度をウェスタンブロットで確認した結果を示す。
図19B】大脳皮質星状細胞をCMVプロモーター対照群、Nurr1、Foxa2、Nurr1+Foxa2の4群に分けて発現させた後、ベータアミロイド凝集剤を処理してNF-kB信号伝達因子の発現程度をウェスタンブロットで確認し、定量的に分析した結果を示す。
図19C】海馬部位の星状細胞をベータアミロイド凝集剤で処理又は非処理し、ベータアミロイド凝集剤処理された細胞は、CMVプロモーターコントロール、Nurr1、Nurr1+Foxa2の3群に分けて発現させた後、NF-kB信号伝達因子の発現程度をウェスタンブロットで確認した結果を示す。
図19D】海馬部位の星状細胞をベータアミロイド凝集剤で処理又は非処理し、ベータアミロイド凝集剤処理された細胞は、CMVプロモーターコントロール、Nurr1、Nurr1+Foxa2の3群に分けて過発現させた後、NF-kB信号伝達因子の発現程度をウェスタンブロットで確認し、定量的に分析した結果を示す。
図20A】マウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1+Foxa2遺伝子導入して2ヶ月後にウェスタンブロットを用いて海馬部でシナプス形成(Synaptogenesis)マーカーのタンパク質レベルを確認した結果を示す。
図20B】マウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1+Foxa2遺伝子導入して2ヶ月後にウェスタンブロットを用いて海馬部でシナプス形成マーカーのタンパク質レベルを確認し、定量的に分析した結果を示す。
図21A】膠細胞でNurr1+Foxa2遺伝子を発現後に、老化誘発因子であるIL6、MMP1a、MMP1b、及びMMP10に対するRNA-Seq分析を行った結果を示す。
図21B】対照群培養膠細胞とNurr1+Foxa2導入された培養膠細胞のベータガラクトシダーゼ(細胞老化マーカー)染色結果を示す。
図21C】コントロール培養膠細胞とNurr1+Foxa2導入された培養膠細胞のベータガラクトシダーゼ(細胞老化マーカー)染色結果からベータガラクトシダーゼ陽性細胞の数を測定し、棒グラフで示す結果である。
図22】膠細胞にNurr1+Foxa2遺伝子を導入したアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位におけるSox2、UGT1A1及びGFAPの蛍光を免疫染色方法で確認した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
Nurr1及びFoxa2遺伝子が導入されたベクターを含む、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集抑制剤。
【0083】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者には明らかであろう。
【0084】
本明細書で使われる用語に対する定義は、次の通りである。
【0085】
“脳細胞(brain cells)”は、脳に位置している細胞を意味し、神経細胞(neurons,neuron cells)、神経幹細胞(neuronal stem cells)、及び膠細胞(glia,glial cells)などで構成されている。
【0086】
“神経細胞”は、神経系の細胞であり、用語“ニューロン”又は“ニューロン細胞”と同じ意味で使用可能である。
【0087】
“膠細胞”は、脳に存在する細胞のうち最も多い部分を占める細胞であり、星状細胞(astrocyte)又は小膠(microglia)細胞を含む。
【0088】
前記星状細胞は、神経細胞の保護及び栄養供給、炎症に関与し、前記小膠細胞は、脳で炎症を担当する細胞であって、アルツハイマー病のような脳疾患において重要な役割を担う細胞群として知られている。
【0089】
“形質導入(transduction)”は、バクテリオファージを媒介にして遺伝的形質が一つの細胞から他の細胞に移って遺伝形質が導入される現象であり、バクテリオファージがいずれかのタイプの細菌に感染されるとファージDNAが宿主DNAと結合し、溶菌現象によってファージが出る時、自分のDNAを一部失う代わりに宿主DNAの一部を持ち出す場合がある。このようなファージが他の細菌に感染されると、前宿主の遺伝子を新しく導入することになり、新しい形質が現れる。生物学的研究において“形質導入”という用語は、一般に、ウイルスベクターを用いて標的細胞において特定外因性遺伝子過発現をすることを意味する。
【0090】
“蓄積及び/又は凝集抑制”は、アミロイドベータ(amyloid β)の生成を抑制して凝集(aggregation)を抑制する場合と、既に生成されたアミロイドベータを分解して蓄積(accumulation)を抑制する場合のいずれをも含む概念である。
【0091】
“対象体”は、治療、観察又は実験の対象である脊椎動物、好ましくは哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、ギニアピッグ(モルモット)、ヒトなどであってよい。
【0092】
“組織又は細胞サンプル”は、対象体又は患者の組織から得た類似の細胞の集合体を意味する。組織又は細胞サンプルの供給源は、新鮮な、凍結した及び/又は保存された臓器又は組織サンプル若しくは生検又は吸引物からの固形組織;血液又は任意の血液構成分;対象の妊娠又は発生の任意の時点における細胞であってよい。組織サンプルは、また、1次又は培養細胞又は細胞株であってよい。
【0093】
“治療”は、有益な或いは好ましい臨床的結果を得るための接近を意味する。本発明の目的のために、有益な或いは好ましい臨床的結果は、非制限的に、症状の緩和、疾病範囲の減少、疾病状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾病進行の遅延又は速度の減少、疾病状態の改善又は一時的緩和及び軽減(部分的に又は全体的に)、検出可能か又は検出されないことを含む。また、“治療”は、治療を受けない時に予想される生存率と比較して生存率を上げることを意味することもできる。“治療”は、治療学的治療及び予防的又は予防措置方法のいずれをも指す。前記治療は、予防される障害の他に既に発生した障害においても要求される治療を含む。疾病を“緩和(Palliating)”させることは、治療をしない場合と比較して、疾病状態の範囲及び/又は好ましくない臨床的徴候が減少し及び/又は進行の時間的推移(time course)が遅延されたり、延びたりすることを意味する。
【0094】
“細胞治療剤”は、ヒトから分離、培養及び特殊な操作によって製造された細胞及び組織に治療、診断及び予防の目的で使用される医薬品(米国FDA規定)であり、細胞或いは組織の機能を復元させるために、生きている自家、同種、又は異種細胞を体外で増殖、選別したり、他の方法で細胞の生物学的特性を変化させたりするなどの一連の行為によって治療、診断及び予防の目的で使用される医薬品のことを指す。細胞治療剤は、細胞の分化程度によって、概ね、体細胞治療剤、幹細胞治療剤に分類される。
治療目的のための“哺乳類”は、ヒト、家畜、農場家畜、及びイヌ、ウマ、ネコ、ウシ、サルのような動物園、スポーツ或いは愛玩用の動物を含め、哺乳類として分類されるいかなる動物も可能である。好ましくは、前記哺乳類はヒトである。
【0095】
“遺伝子治療剤”は、疾病治療などを目的に遺伝物質又は遺伝物質を移入した運搬体を人体に投与する医薬品を意味する。
【0096】
“投与”は、いずれか適切な方法で対象体又は患者に本発明の組成物を導入することを意味し、本発明の組成物の投与経路は、目的組織に到達できる限り、経口又は非経口の様々な経路を通じて投与されてよい。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、血内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与されてよいが、それに制限されない。
【0097】
“有効量”は、目的とする治療すべき特定疾患の発病又は進行を遅延させたり、或いは全的に中止させるために必要な量を意味する。本発明において、組成物は、薬学的有効量で投与されてよい。適度な総1日使用量は、正確な医学的判断範囲内で処置医によって決定され得るということは、当業者にとって明らかである。
【0098】
本発明の目的上、特定対象体又は患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によって、他の製剤が使用されるか否かをはじめとする具体的な組成物、対象体(患者)の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に使用されたり、或いは同時使用される薬物を含む様々な因子と医薬分野によく知られた類似因子によって異なるように適用することが好ましい。
【0099】
本発明で使われる技術用語はいずれも、特に断りのない限り、本発明の関連分野における通常の当業者が一般的に理解するのと同じ意味で使われる。また、本明細書には好ましい方法や試料が記載されるが、これと類似又は同等なものも本発明の範疇に含まれる。本明細書に参考文献として記載される全ての刊行物の内容は、本発明に組み込まれる。
【実施例
【0100】
実施例1.材料及び方法
(1)細胞培養
1)膠細胞の培養
星状細胞及び小膠細胞の混合物のための一次培養物は、以前に公表された論文に開示の方法に基づき、生後1日目の仔マウス(ICR)の腹側中脳(ventral midbrain,VM)から由来した(Saura J(2007)Microglial cells in astroglial cultures:a cautionary note.J Neuroinflammation 4:26)。簡単にいうと、VMが除去され、10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum,FBS;HyClone社、Logan,UT)を含有したダルベッコ変形イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium,DMEM;Life Technologies社)内で粉砕し、75cm Tフラスコに細胞を塗抹(plate)した。細胞密集度(confluence)が80~90%に達した時、膠細胞は0.1%トリプシンで採集し、培養表面上に塗抹して使用可能に準備された。
【0101】
純粋星状細胞は、生後5~7日目のマウスVMから分離され、アストロ培地内で培養された(Heinrich C,Gascon S,Masserdotti G,Lepier A,Sanchez R,Simon-Ebert T,Schroeder T,Gotz M,Berninger B(2011) Generation of subtype-specific neurons from postnatal astroglia of the mouse cerebral cortex.Nat Protoc 6:214-228)。小膠細胞を丁寧に振って除去した後、細胞を採集し、PDL(poly-d-lysine)でコートされた培養皿に再塗抹した。BV2小膠細胞は、10% FBSを含有したDMEMで培養された(Blasi E,Barluzzi R,Bocchini V,Mazzolla R,Bistoni F(1990) Immortalization of murine microglial cells by a v-raf/v-myc carrying retrovirus.J Neuroimmunol 27:229-237)。
【0102】
2)NPC(Neuronal Progenitor Cell)の培養
神経原性電位(Neurogenic potential)を持つNPCは、10.5日目のマウス胚或いは12日目のSprague-Dawleyラット胚のVM(ventral midbrain)(imprinting control region [ICR])から培養された。VM-NPCは、bFGF(mitogens basic FGF)(20ng/ml;R&D Systems)及びEGF(epithelial growth factor)(20ng/ml;R&D Systems、マウス培養細胞に対してのみ)で補充された無血清N2培養液において細胞密集度が70%以上(通常、3~4日間)になるまで培養された後、継代培養した(passaged)。更に、NPC培養をした後、細胞は共同培養及びその他実験のために採取されるか(CM治療実験において)、或いはミトゲン(mitogen)を減少させることによって分化を直接誘導した。
【0103】
3)星状細胞培養
星状細胞(astrocyte)は、生後5~7日目のマウス又はラットVM又はCtxから分離され、アストロ培地で培養された。VMは、分離後に、10% FBS(HyClone)を含むDMEM(Life Technologies)で砕けられ、75-cm Tフラスコにプレートされた。細胞密集度(confluence)が80%~90%に達した時、細胞は、0.1%トリプシンで採取された後、PDL(poly-d-lysine)でコートされた培養表面(MilliporeSigma)に継代培養された。4~6日間後、オービタルシェーカーを用いて、2gの強度で振って小膠細胞を除去した。7日間培養後に、星状細胞は共同培養実験のために採取されるか、N2で更に8日間培養され、CM(conditioned medicum)を準備した。小膠細胞除去過程後にも小膠細胞は少し残っていることがある。小膠細胞を少し含んでいる培養星状細胞を、下の実験に使用した。小膠細胞汚染による影響を測定するために、小膠細胞のない培養星状細胞も作った。これは、振る過程後に20~30分間培養星状細胞をDMEM/F12溶液の0.06%トリプシンで処理し、浮遊している細胞を捨てることによって作ることができる。
【0104】
4)共同培養(co-culture)
神経原性電位を持つVM-NPCsを採取した後、Ctx-Ast又はVM-Astと2:1(VM-NPC:星状細胞)の比率で混ぜた。混ぜられた細胞はプレートされ、無血清N2培養液内でVM-NPCの分化が直接促進された。
【0105】
(2)ウイルス生成
CMV促進遺伝子(promoter)の統制下に、Nurr1又はFoxa2を発現させるレンチウイルス性ベクターを、それぞれのcDNAをpCDH(System Biosciences社、Mountain View,CA)の多重クローニング部位に挿入することによって生成した。pGIPZ-shNurr1とpGIPZ-shFoxa2レンチウイルス性ベクターをOpen Biosystems社(Rockford,IL)から購入した。空(empty)バックボーンベクター(pCDH又はpGIPZ)が陰性対照群として用いられた。レンチウイルスを、前述のように、生体外培養を形質導入するために製造して使用した(Yi SH,He XB,Rhee YH,Park CH,Takizawa T,Nakashima K,Lee SH(2014)Foxa2 acts as a co-activator potentiating expression of the Nurr1-induced DA phenotype via epigenetic regulation.Development 141:761-772)。レンチウイルスの力価は、QuickTiterTM HIVレンチウイルス定量キット(Cell Biolabs社、San Diego,CA)を用いて測定され、10個の形質導入ユニット(transducing unit,TU)/ml(60~70ng/ml)を含む200μl/ウェル(24ウェル皿)又は2ml/6cm皿がそれぞれの形質導入反応に使用された。
【0106】
定位注射(stereotaxic injection)によって生体内発現を誘導するために、CMVプロモーターの統制下に、Nurr1又はFoxa2[赤血球凝集素(hemagglutinin,HA)でタグされる。]を発現させるAAVを、それぞれのcDNAをpAAV-MCSベクター(Addgene社、Cambridge,MA)にサブクローニングすることによって生成した。転移遺伝子発現の効率を評価するために、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein,GFP)を発現させるAAVも生成した。AAV(血清型2)の包装及び生成は、韓国科学技術研究院(KIST、大韓民国ソウル)で行った。AAV力価は、QuickTiterTM AAV定量キット(Cell Biolabs社)で測定された。共同発現研究は、個別ウイルス製剤の混合物(1:1,ウイルス遺伝子コピー(genome copy,gc):ウイルスgc)で細胞を感染させて行った。
【0107】
(3)膠細胞調節培地の製造
Nurr1+Foxa2、Nurr1及びFoxa2をそれぞれ単独で発現し、空の対照(control)集団を発現させる一次膠細胞培養物(星状細胞+小膠細胞)をレンチウイルス性形質導入によって製造した。
【0108】
対照群は、Nurr1+Foxa2の共同発現のために、各転移遺伝子を個別に発現させるレンチウイルスを1:1(v:v)に混合して培養物に追加した。ウイルスの総体積及びNurr1又はFoxa2を単独で発現する培養物内におけるウイルスの力価を、コントロールウイルスを追加することにより、共同形質導入された培養物のそれと同一となるように調節した。新鮮な培地は、形質導入後3日目に追加し、培地形質導入された膠細胞内で調節された培地を3日間隔で2回採集した。調節された培地(conditioned media,CM)を0.45μMで濾過し、使用するまで-80℃で保管した。
【0109】
(4)免疫染色
培養された細胞及び低温切断された脳切片を、次のような一次抗体で染色した:Nurr1(1:500、ウサギ、胎芽20日目、Santa Cruz Biotechnology社、Dallas,TX、及び1:1,000、マウス、R&D Systems社);Foxa2(1:500、ヤギ、Santa Cruz Biotechnology社);GFP(1:2,000、ウサギ、Life Technologies社);GFAP(1:200、マウス、MP Biomedicals社、Santa Ana,CA);Iba-1(1:200、ウサギ、Wako)、NeuN(1:100、マウス、EMD Milipore);アミロイドベータ(6E10)(1:1,000、マウス、Biolegend);アミロイドベータ(D54D2)(1:500、ウサギ、Cell signaling technology);sox2(1:500、ウサギ、Invitrogen.);UGT1A1(1:1000、ウサギ、Abcam);Gal C(1:500、ウサギ、Abcam)。
【0110】
培養された細胞は、PBS溶液の4%パラホルムアルデヒド(PFA)によって固定され、0.3%トリプトンX-100及び1% BSAによって40分間ブロックされた。そして、4℃で一晩、一次抗体と共に培養された。視角化のための2次抗体は、次の通りである。Cy3(1:200,Jackson Immunoresearch Laboratories社)又はAlexa Fluor488(1:200,Life Technologies社)。染色された細胞は、VECTASHIELDとDAPIマウント液(Vector Laboratories社)と共にマウントされ、写真は、落射蛍光顕微鏡(epifluorescence microscope,Leica社)及び共焦点顕微鏡(Leica PCS SP5)によって得られた。
【0111】
チオフラビンS(1mg/mL,Sigma)の染色法は、次のようになされた。まずマウス犠牲と脳抽出をする。脳をガラススライドに載せて完全に乾燥させる。1分間70%エタノールでスライドを洗浄する。その後、1分間80%エタノールでスライドを洗浄する。15分間フィルタリング(0.2μmのフィルター)されたチオフラビンS溶液(エタノール80%で1%)にスライドを染色する。この時、光からチオフラビンSを保護し、光から染色スライドを保護する。1分間80%エタノールでスライドを洗浄する。その後、1分間70%エタノールでスライドを洗浄する。蒸留水で2回洗浄する。カバースリップを水性マウント培地のスライド上にマウントし、少なくとも2時間暗所で乾燥させた後、透明マニキュアで密封する。このスライドを4℃の暗所に保管した。
【0112】
(5)コンゴレッド染色
コンゴレッド染色は、組織にアミロイドが沈着されたか否かを確認するために用いる染色方法である。
【0113】
コンゴレッド染色法は次の方法で行われた。脱パラフィン化した脳組織切片を、コンゴレッド水溶液に30分間~60分間染色する。蒸留水で洗浄した後、アルカリ性アルコール溶液に迅速に2~3回軽く入れて出す。その後、水道水で洗浄し、ヘマトキシリンを用いて対照染色する。その後、水道水で洗浄し、アンモニア水(水道水に水酸化アンモニウムを数滴添加したもの)に30秒間漬す。水道水で5分間洗浄した後、アルコールを用いて脱水する。その後、顕微鏡で観察する。
【0114】
(6)転写RNA発現分析
総RNAの製造、cDNAの合成及びRT-PCRを通常の方法で行った。総RNAの製造は、通常のRNA分離プロトコルに従い、トリゾール試薬(Trizol Reagent,Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を用いて行った。cDNA合成は、Superscriptキット(Invitrogen)を用いて行った。実時間PCRをiQTM SYBRグリーンスーパーミックス(Bio-Rad社、Hercules,CA)を用いるCFX96TM実時間システムで行った。遺伝子発現値をGAPDHのそれらに正規化した。プライマーに関する情報は、次表1に示される。酸化ストレス遺伝子のための高処理量遺伝子発現プロファイリングは、RT2 Profiler PCR ArrayR(Qiagen社、Gaithersburg,MD)を用いるマウス酸化ストレスRT2 ProfilerTM PCR Array(cat.330231PAMM-065ZA)を用いて完了した。
【0115】
【表1】
【0116】
(7)免疫沈降法(IP)及びタンパク質ウェスタンブロット(WB)分析
Nurr1及びFoxa2(生後10週マウスのVM組織内に存在)との相互作用を免疫沈降法(immunoprecipitation,IP)で分析した。組織は、プロテアーゼ抑制剤で補充されたIP溶解緩衝剤(Thermo Scientific社、Waltham,MA)内で溶解された。溶解物は、抗Nurr1(1:1,000、マウス、R&D Systems社)又は抗Foxa2(1:1,000、ヤギ、Santa Cruz Biotechnology社)抗体で、4℃にて18~24時間培養した。混合物を、磁石ビーズ(Life Technologies社)を用いて室温で1~2時間振った。洗浄後、免疫沈殿されたタンパク質は、サンプル溶解剤内に溶出させ、抗Foxa2(1:1,000、ヤギ、Cell Signaling Technology社)又は抗Nurr1(1:500、マウス、R&D Systems社)を用いてウェスタンブロット(Western blot,WB)分析を実施した:Caspase-1(1:1,000、マウス、Santa Cruz Biotechnology)、ASC(1:1,500、マウス、Santa Cruz Biotechnology)、β-アクチン(1:2,000、マウス、Invitrogen)、p-IKKα/β(1:1,000、ウサギ、Cell signaling)、p-IkBα(1:1,500、ウサギ、Cell signaling)、p-p65(1:1,000、ウサギ、Cell signaling)、NFkB(1:2,000、ウサギ、Cell signaling)、PSD95(1:2,000、ウサギ、Abcam)、Syn1(1:1,500、ウサギ、Sigma)、SYPT(1:2,000、マウス、Invitrogen)。
【0117】
(8)動物管理及び実験
3xFAD動物モデル実験に関する全ての手続は、承認番号2018-0047A下にハンヤング医学専門大学院動物実験倫理議員会(Institutional Animal Care and Use Committee,IACUC)の承認を受けた。また、3xFAD動物モデル実験に関する全ての手続は、ハンヤング大学校実験動物使用に関するガイドラインに従ってなされた。動物を12時間、明/暗サイクルを用いた特定の無菌障壁施設に収容し、標準食物(5053 PicoLab Rodent Diet 20)を提供した。本実験のための動物の大きさは、本実験の生体外分析及び予備試験によって、事前統計的演算無しで決定された。実験は、NIHガイドラインに従って実施された。偏向を最小化するために、挙動的分析は、概ね、2名の実験者によって盲検方式で行われた。18ヶ月及び15ヶ月アルツハイマー病遺伝子導入(3xTg-AD)マウス(Jackson Laboratory,Maine,USA)が実験に使用された。
【0118】
また、5xFAD動物モデル実験に関する全ての手続は、承認番号KIST-2019-057下に、韓国科学技術院動物実験倫理委員会の承認を受けた。
【0119】
(9)アルツハイマー病モデルマウスに対する正位方法のAAV注射
18ヶ月及び15ヶ月アルツハイマー病遺伝子導入(3xTg-AD)マウス(Jackson Laboratory,Maine,USA)に、Nurr1-AAV9(1μl)+Foxa2-AAV9(1μl)(2μl,1010vg/μl,Nurr1+Foxa2群)又は対照群-AAV9(2μl,1010vg/μl、対照群のみで構成)を、Rompum(93.28μg/kg)と混合されたZoletil50(0.1mg/kg)によって誘導された麻酔状態で、10分間にわたって海馬(ブレグマの後方に1.5mm;ミッドラインの側方に±1mm;硬膜の前方に-2mm)及び脳室(Intracerebroventricle,ICV)(ブレグマの後方に0.9mm;ミッドラインの側方に±1.7mm;硬膜の前方に-2.2mm)に注射した。毎注射完了後、針(26ゲージ)は、注射部位に刺された状態で5~10分間置いた後、徐々に除去した。海馬(Hippocampus)及び脳室(Intracerebroventricle,ICV)部位での注射に誤りがあったと判明される場合、それらのマウスは分析から除外した。
【0120】
(10)挙動検査
1)水迷路(Water Maze)法
水迷路法は、モーリスウォーター迷路とも呼ばれ、空間記憶と学習を研究する上で広く用いられている。動物は、粉状の無脂肪牛乳や無毒性ペイントで不透明に染めた水溜まりに置かれるが、そこから彼らは、隠された脱出プラットホームまで泳いで行かなければならない。動物は不透明な水中にいるため、プラットホームを見ることができず、脱出路を探すには臭いに依存するしかない。代わりに、動物は外部或いは迷路外の端緒に依存しなければならない。動物が脱出プラットホームを探すことに熟練するにつれ、そのプラットホームをより速く探すことができる。1984年にリチャードG.モーリスによって開発されたこのパラダイムは、行動神経科学の“ゴールドスタンダード”の一つとなった。
【0121】
2)Y迷路(Y-Maze)法
Y迷路(Y-Maze)法は、空間学習と記憶を研究するための事前臨床研究において行動を評価するために広く用いられている。動物は、Y迷路法において、Y状の迷路で3個の腕(arm)のいずれか一方の腕の端に置かれるが、ここで、彼らは、別れ道から左側又は右側のどこへ移動するかを決定する。このようなテストは同一動物に数回反復されてよい。観察者は、Y迷路内で動物の一連の選択(例えば、特定腕を訪問した回数、3個の腕を訪問した総回数、動物基準で左側の腕を選択した回数、動物基準で右側の腕を選択した回数)を記録する。Y迷路テストの使用は、自発的交代テスト(spontaneous alternation test)と認識記憶力テストを含む。自発的交代テストにおいて、観察者は、動物が最近に訪問しなかった腕に訪問する傾向を示すかを観察して記録する(例えば、自発的交代数字を測定)。これらの検査は、海馬損傷、遺伝子操作、そして記憶喪失薬物に敏感であることが明らかにされた。
【0122】
3)明示的記憶能力検査(Passive avoidance test)
明示的記憶能力検査(Passive avoidance test)は、電気衝撃発生器と回避装置とから構成されている。回避装置は、黒いアクリルでできた暗い箱(30×30×30cm)であり、底にはアルミニューム棒が一定の間隔で敷かれており、これを通じて動物の足の裏に電気衝撃を加えることができる。箱の前面外側の壁には、1匹の動物をやっと載せておくことが可能な程度の大きさ(5×15cm)の欄干が設置されている。欄干上方45cmの地点には、ハロゲン電球(AC12V-50W)が設置されている。欄干と回避箱との間には小さい扉(5×5cm)が装置されている。動物に電気衝撃をかける装置は、Coulboum社で生産したスクランブルショック発生器(scramble shock generator)であった。
【0123】
実験過程は、まず、箱の外側に設置されている欄干に、動物を頭が外側に向くようにして乗せると同時に箱に通じる扉を開けた。扉が開くと否や、欄干上の45cm地点に設置された照明装置から50Wの光を動物に照らした。このような条件で動物は明るい所を避けて暗い箱に入り、回避反応を見せた。動物が箱に入ると、10秒間の試行間隔をあけて2番目の試行を行った。このような試行が3回反復され、3回目の試行では、動物が暗い箱に入る瞬間、箱の底に敷かれているアルミニューム格子を通じて電気衝撃(0.4mA、5秒)がかかった。四肢が全て箱中に入る場合のみを、反応したものと見なした。これで訓練試行を終了した。24時間が経った翌日、同じ手順で記憶検査試行(retention test)を行った。検査試行では、動物が箱に入ると電気衝撃がかからず、直ちに試行が終了した。訓練試行、検査試行両方とも、動物が嫌悪状況である欄干から暗い箱に入るまでかかった反応潜在期(response latency)が訓練又は記憶成績として測定された。動物が嫌う明るい所から暗い所に入った時に電気衝撃を経験した記憶をよく形成すれば、記憶検査試行では暗い所に入らずに明るい所で長く留まることから、反応潜在期がまさに記憶成績となった。
【0124】
4)新しい事物認知(Novel Object Recognition)(NOR)試験
新しい事物認知(Novel Object Recognition)(NOR)試験は、CNS障害の齧歯類モデルにおいて認知、特に認識記憶を評価するために用いられる。この試験は、齧歯類動物が見慣れた事物よりも新しい事物を探索するのに、より多い時間を消費する自発的な行動に基づく。動物モデルにおいて、新しい対象を探索するための選択は、学習及び認識記憶の使用を反映する。
【0125】
新しい事物認知試験を、2種の個体がある公開的な場所で行った。2つの物体は、概ね高さと体積が一定であるが、形状が異なるようにした。習慣を維持する間、動物は空ボックスを探険することができた。療法完了後に24時間が経つと、同じ距離に2つの同一物体がある見慣れたボックスに動物が露出された。翌日、マウスは、見慣れた対象と長期認識メモリーをテストするための新しい客体とがある状態で、開放されたボックスを探索することができた。各対象を探索するのにかかった時間と差別指数百分率を記録した。
【0126】
この試験は、アルツハイマー病遺伝子変形マウスにおける認知機能損傷を評価し、認知に及ぶ影響に対する新しい化学物質を評価するのに有用である。
【0127】
(11)細胞数集計及び統計分析
免疫染色及びDAPI-染色された細胞は、200倍又は400倍の倍率でアイピースグリッド(eyepiece grid)を用いて、各培養カバースリップ内の無作為領域で計算された。全ての数値に対してデータは平均±SEMと表示され、統計テストは適切に立証される。統計学的比較は、Student’s t-test(unpaired)、2-tailed、又はone-way ANOVA、SPSS(登録商標)(Statistics 21;IBM Inc.Bentonville,AR,USA)を用いたBonferroni post hoc分析で行われた。n、P-値及び統計分析方法は、図面凡例に表示されている。0.05未満のP値は有意のものと見なされた。
【0128】
(12)RNA-SEQ分析
RNAシーケンシンク分析(RNA-seq分析)は、マクロジェン(Macrogen、大韓民国、ソウル)で行われた。20未満の品質点数(quality score)を持つリード(reads)を、FastQCを用いて整え、Bowtieを用いて不整合率(mismatch ratio)を点検した後、全てのRNA-seqデータを、STARを用いてマウス基準ゲノム(GRCm38/mm10)にマップした。(NCBI RefSeq annotations Release 105:February 2015に基づく)マウスゲノムの全46,432個の注釈付き遺伝子(annotated genes)、107,631個のトランスクリプト(transcripts)、及び76,131個のタンパク質-コーディング(mRNA)レコードの発現レベルを測定するために、遺伝子のエクソン(exons)にマップされたリード(reads)を、Htseq-countを用いて数え、FPKM(Fragments Per Kilobase of exon per Million fragments mapped)数字を計算した。グループ間の技術全般的な発現偏向(technical global bias of expression)を減らすために、クオンタイル正規化(quantile normalization)を行った。全データはGEOデータベース(GEO:GSE106216)に寄託された。
【0129】
(13)RT-PCR分析
RNA分離プロトコルに従ってトリゾール試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を使用して総RNAを準備した。Superscriptキット(Invitrogen)を用いてcDNA合成を行った。実時間PCRは、iQTM SYBRグリーンスーパーミックス(Bio-Rad,Hercules,CA,USA)を用いてCFX96TM実時間システムで行われ、遺伝子発現レベルは、GAPDHレベルによって決定された。RT Profiler PCR Array(Qiagen,Gaithersburg,MD,USA)を用いて酸化ストレスに関連した84個の遺伝子発現をプロファイリングするために、マウス酸化ストレスRT2ProfilerTM PCR Array(カタログ330231 PAMM-065ZA)を使用した。プライマー情報は、前記表1に示されている。
【0130】
実施例2.結果
(1)アルツハイマー病(AD)マウスモデルにおいてAAVを用いた星状細胞へのNurr1及びFoxa2遺伝子伝達結果確認
ヒトで免疫原性のないアデノ関連ウイルス(AAV)を用いて、脳において膠細胞に主に感染される性向のAAV9血清型を用いて膠細胞に特異的にターゲッティングするNurr1及びFoxa2遺伝子伝達システムを構築した。Nurr1及びFoxa2遺伝子発現のためにCMV又はGFAPプロモーターが使用された。Nurr1+Foxa2-AAV9ウイルスの注入は、アルツハイマー病の病変部位である海馬体(Hippocampus)と脳室(Intracerebroventricle,ICV)に行われた。
【0131】
AAV9ウイルスを用いた遺伝子伝達テストを行うために、星状細胞(astrocytes)に特異的なGFAPプロモーター下でGFP(green fluorescent protein)を発現させるAAV9ウイルスをマウスの海馬体と脳室(ICV)に注入した。GFP-AAV9ウイルス注入3週後にGFP発現を測定した(図1)。GFP-AAV9を海馬体と脳室に注入した結果、GFPが海馬体の全領域に発現し、GFAP+星状細胞に特異的に発現した(図2)。GFAPは星状細胞マーカー、NeuNは成熟神経細胞(mature neuron)マーカー、Iba1は小膠細胞(microglia)マーカーとしてGFAPとGFPは共発現し、NeuNとIba1はGFPと共発現しないことから、ウイルスの発現する細胞が星状細胞において特異的に発現することがわかった。
【0132】
(2)水迷路とY迷路行動実験を用いたアルツハイマー病(AD)マウスモデルにおいてNurr1及びFoxa2遺伝子伝達による認知欠損症(学習と記憶力)改善確認
アルツハイマー病において、膠細胞にNurr1及びFoxa2発現によるアルツハイマー病の治療効果を調べるために、3種の遺伝子であるAPP、PS1、及びtauを突然変異させてアルツハイマー病を誘発した15~18月齢の3xFADマウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1及びFoxa2発現を起こした。15~18月齢は、マウスの平均寿命が約24ヶ月であることからして、相当な年齢である。アルツハイマー病モデルマウスにNurr1及びFoxa2遺伝子を伝達し、遺伝子伝達2~3ヶ月後に、当該マウスの認知能力分析を行った。
【0133】
アルツハイマー病は、患者の記憶力及び認知力の低下が徐々に進む退行性脳神経系疾患であり、これを代弁するための動物実験として水迷路とY迷路実験を行った。水迷路とY迷路実験は、記憶力及び認知力に対する効能実験の代表的な公認実験方法であり、アルツハイマー病の進行及び治療効果を判断するための行動実験指標として用いられる。
【0134】
15~18月齢のマウスにNurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入して約2週後から2週間隔で2ヶ月間、水迷路とY迷路行動実験を行い、Nurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標とコントロールウイルス(GFP-AAV9)を注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標とを比較した。実験の結果、Nurr1+Foxa2が発現したマウスは、コントロールマウスに比べてより良い行動指標及びより速い反応速度を示した。このことから、膠細胞にNurr1及びFoxa2の発現が学習及び記憶部分の認知活動の有意な改善をもたらし、これにより、アルツハイマー病治療効果を奏することを確認した。すなわち、脳細胞におけるNurr1及びFoxa2の発現を用いたアルツハイマー病の臨床遺伝子治療効果を確認した(図3)。
【0135】
(3)明示的記憶能力検査及び新しい事物認知試験を用いたアルツハイマー病(AD)マウスモデルにおいてNurr1及びFoxa2遺伝子伝達による認知欠損症(学習と記憶力)改善確認
【0136】
アルツハイマー病において、膠細胞にNurr1及びFoxa2発現によるアルツハイマー病の治療効果を調べるために、5種の遺伝子APP、PS1、NCT、PEN2、及びAPH1を突然変異させてアルツハイマー病を誘発した6~8月齢の5xFADマウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1及びFoxa2発現を起こした。アルツハイマー病モデルマウスにNurr1及びFoxa2遺伝子を伝達し、遺伝子伝達1週後に当該マウスの認知能力分析を行った。
【0137】
アルツハイマー病は、患者の記憶力及び認知力の低下が徐々に進む退行性脳神経系疾患であり、これを代弁するための動物実験として明示的記憶能力検査及び新しい事物認知試験を行った。明示的記憶能力検査及び新しい事物認知試験は、記憶力及び認知力に対する効能実験の代表的な公認実験方法であり、アルツハイマー病の進行及び治療効果を判断するための行動実験指標として用いられる。
【0138】
6~8月齢のマウスにNurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入して約2週後に新しい事物認知実験を行い、11週後に明示的記憶能力検査を行い、Nurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標とコントロールウイルス(GFP-AAV9)を注入したアルツハイマー病モデルマウスの行動指標とを比較した。実験の結果、Nurr1+Foxa2の発現したマウスは、明示的記憶能力検査においてコントロールマウスに比べて、すぐに暗い所に入らずに明るい所に留まり、進入潜在期(entry latency)が増加した結果を示した(図4)。また、Nurr1+Foxa2の発現したマウスは、新しい事物認知試験においてコントロールマウスに比べて記憶能力が回復された様子を示した(図5)。このことから、膠細胞へのNurr1及びFoxa2の発現が、学習及び記憶部分の認知活動の有意な改善をもたらし、これにより、アルツハイマー病治療効果を奏することを確認した。すなわち、脳細胞におけるNurr1及びFoxa2の発現によるアルツハイマー病の臨床的な遺伝子治療の効果を確認した(図4図5
【0139】
(4)アルツハイマー病(AD)マウスモデルにおいてNurr1及びFoxa2遺伝子伝達を用いたアミロイドベータ蓄積低減効果
アルツハイマー病では、アミロイドベータ(Amyloid β,Aβ)ペプチドでできた老人性プラーク(senile plaque,Aβ plaque)のようなタンパク質が主成分である神経線維塊(Neurofibrillary tangles,NFT)が発見される。したがって、このような神経線維塊の形成を抑制し、塊を分解することが、アルツハイマー病の治療の効果の指標として用いられてよい。
【0140】
15月齢、18月齢の3xFADマウス(APP、PS1、及びtauを突然変異させてアルツハイマー病を誘発したマウス)の海馬及び脳室に位置している膠細胞に、Nurr1+Foxa2-AAV9ウイルスを用いて特異的にNurr1+Foxa2遺伝子を導入した。遺伝子導入2ヶ月後に、海馬部位において免疫染色方法によってアミロイドベータとタンパク質凝集体に対する蛍光(Thioflavin S)を確認した。
【0141】
その結果、上のNurr1+Foxa2処理群において約2ヶ月後に、海馬において免疫染色方法により上のマーカーを確認した。また、上のNurr1+Foxa2処理群において、アミロイドベータ(Amyloid β,Aβ)とタンパク質凝集体(Thioflavin S)タンパク質の有意な減少を、(アミロイドベータに特異的な抗体及びチオフラビンS染色を用いた)免疫染色法で確認した(図6)。
【0142】
なお、Nurr1を単独で処理した群に比べてNurr1+ Foxa2同時処理群が、アミロイドベータ(Amyloid β,Aβ)タンパク質蓄積(accumulation)が有意に減少することを免疫染色法で確認した(図7)。
【0143】
免疫染色法以外の方法として、アミロイドベータの凝集を確認するためにコンゴレッド染色及びウェスタンブロット分析を用いた。
【0144】
その結果、コンゴレッド染色法により、Nurr1+ Foxa2処理群においてアミロイドベータ(Amyloid β,Aβ)の有意な減少を確認した(図8)。
【0145】
また、ウェスタンブロット分析(タンパク質電気泳動法)により、Nurr1+Foxa2処理群においてアミロイドベータ(D54D2)の有意な減少を確認した(図9)。
【0146】
(5)チオフラビンT試験(チオフラビンT assays)を用いたアミロイドベータ線維化(fibril)量測定
膠細胞におけるNurr1+Foxa2発現がアミロイドベータの分解を促進するかどうか確認するために、チオフラビンT試験(チオフラビンT assay)を行った。アミロイドベータ線維の量測定のために、濁度分析及びチオフラビンT試験(ThT assays)が用いられた。
【0147】
図10Aは、アミロイドベータ分解試験過程を説明している。サンプルを37℃、1000rpmで10分間遠心分離機に処理した後、遠心分離して得たペレット及びCMにアミロイドベータ線維を混ぜると、アミロイドベータ線維の一部が単量体として分解(degradation)される。その後、ThT試験溶液を混ぜると、アミロイドベータ線維にThTが付着し、ThTの蛍光度に基づいてアミロイドベータ線維の量を測定することができる。
【0148】
Nurr1+Foxa2の発現した膠細胞が培養された培地及び粉砕された細胞の上澄み液(Nurr1+Foxa2)50μl、Nurr1の発現した膠細胞が培養された培地及び粉砕された細胞の上澄み液(Nurr1)50μl、コントロール膠細胞が培養された培地及び粉砕された細胞の上澄み液(Cont)50μl、及び何ら添加されていない培地(Media)のそれぞれを前記方法で処理後に、200μlのThT試験溶液に混ぜた。ここで、ThT試験溶液は、25μM ThT(cat.no.T3516,Sigma-Aldrich)が10mMグリシンバッファ(pH9.0)に溶解された溶液である。その後、アミロイドベータ線維の量は、482nmにて蛍光分光光度計で測定(440nmで励起(excitation))されたThT蛍光度に基づいて測定された。
【0149】
in vitroアミロイドベータ試験の結果、Nurr1+Foxa2の発現した膠細胞が処理された培養液(Nurr1+Foxa2)サンプルは、他のサンプル(Nurr1単独発現群、コントロールベクター群、培地処理群)と比較して、増加したアミロイドベータ分解を示した(図10B図10C)。
【0150】
Nurr1+Foxa2の発現した膠細胞が培養された培養液が処理されたサンプルのアミロイドベータ線維分解程度は、他の培養液(Nurr1単独発現群、コントロールベクター群、培地処理群)が処理されたサンプルのアミロイドベータ線維分解程度に比べて有意に高かった。したがって、Nurr1+Foxa2を発現させる膠細胞によって処理された培養液は、コントロール膠細胞によって処理された培養液と比較した時、アミロイドベータ分解促進効果を有するといえ、特に、Nurr1を単独で発現する膠細胞によって処理された培養液果と比較した時、Nurr1+Foxa2同時に発現することによって相乗効果があることが分かった。
【0151】
(6)Nurr1+Foxa2発現がアミロイドベータの分解に及ぼす影響
マウスの1次星状細胞(rodent primary astrocyte)に、レンチウイルス(Lenti virus)を用いてNurr1+Foxa2遺伝子を発現後にRNA-Seq及びRT-PCRを行って、関連した遺伝子のそれぞれのmRNAレベルを確認した。
【0152】
培養された膠細胞にNurr1+Foxa2遺伝子を発現させた時、(a)MMp14、(b)MME、(c)MMP2、(d)FOLH1、(e)ECE1、(f)ACEなど(Yang,C.N.,Wu,M.F.,Liu,C.C.,Jung,W.H.,Chang,Y.C.,Lee,W.P.,...Chan,C.C.(2017).Differential protective effects of connective tissue growth factor against Abeta neurotoxicity on neurons and glia.Hum Mol Genet,26(20)、3909-3921.doi:10.1093/hmg/ddx278 and Ries,M.,& Sastre,M.(2016).Mechanisms of Abeta Clearance and Degradation by Glial Cells.Front Aging Neurosci,8,160.doi:10.3389/fnagi.2016.00160)アミロイドベータ凝集体の分解に関連した酵素の発現が増加することを確認した(図11A図11B)。
【0153】
図11Aは、RNA-seqデータで示した、Nurr1+Foxa2発現した膠細胞における当該酵素の遺伝子発現程度とコントロール膠細胞における遺伝子発現程度との比率を示している。図11Bは、実時間PCRデータで示した、コントロール膠細胞、Nurr1単独で発現した膠細胞、Foxa2単独で発現した膠細胞、Nurr1及びFoxa2が同時に発現した膠細胞におけるアミロイドベータ分解酵素(例えば、NEP、MMP14、IDE、ECE2)の遺伝子発現程度を示す。
【0154】
Nurr1又はFoxa2のそれぞれを単独で発現した膠細胞と比較したとき、Nurr1及びFoxa2を共に発現した場合が、アミロイドベータ凝集体分解に関連したNEP、MMP14、IDE、ECE2の各遺伝子の発現が相乗効果を起こし、より大きいことを確認した。これは、Nurr1及びFoxa2遺伝子の両者が共に発現する場合が、各遺伝子単独発現する場合に比べてアミロイドベータ凝集の抑制を相乗的に(synergistically)より大きくすることを確認した。
【0155】
Nurr1+Foxa2の発現した膠細胞において補体受容体3(CR3,heterodimer of CD11b/CD18)の発現が減ることを確認した(図11C)。図11Cは、Nurr1+Foxa2発現した膠細胞におけるCD11bとCD18の遺伝子発現程度とコントロール膠細胞における遺伝子発現程度との比率を示している。CR3は、上述したアミロイドベータ分解に関与する酵素生成を妨害するものと知られている(Czirr,E.,et al.(2017).“Microglial complement receptor 3 regulates brain Abeta levels through secreted proteolytic activity.” J Exp Med 214(4):1081-1092)。したがって、Nurr1+Foxa2発現がCR3発現を減少させ、その影響により、アミロイドベータ分解を促進させる種々の酵素の発現が高くなったと解析できる。
【0156】
(7)チオフラビンT試験(Thioflavin T assays)を用いてアミロイドベータ単量体量測定
チオフラビンT試験(ThT assays)を用いてアミロイドベータ単量体(Aβ monomer)の量を測定した。図12Aは、アミロイドベータ凝集体(aggregate)生成試験過程を説明している。サンプルを37℃、1000rpmで10分間遠心分離機に処理した後、遠心分離して得たペレット及びCMにアミロイドベータ単量体を混ぜると、単量体が互いに凝集してアミロイドベータ線維(Aβ fibril)に線維化(fibrillization)する。その後、ThT試験溶液を混ぜると(すなわち、チオフラビンT試験を行うと)、アミロイドベータ線維にThTが付着し、ThTの蛍光度に基づいてアミロイドベータ線維の量が測定できる。
【0157】
Nurr1+Foxa2の発現した膠細胞が培養された培地(培養液)(Nurr1+Foxa2)50μl、Nurr1が発現した膠細胞が培養された培地(培養液)(Nurr1)50μl、コントロール膠細胞が培養された培地(培養液)(Cont)50μl、及び何ら添加されていない培地(Media)のそれぞれを前記方法で処理後に200μlのThT試験溶液に混ぜた。ここで、ThT試験溶液は、25μM ThT(cat.no.T3516,Sigma-Aldrich)が10mMグリシンバッファ(pH9.0)に溶解された溶液である。その後、アミロイドベータの凝集程度は、482nmにて蛍光分光光度計で測定(440nmで励起)されたThT蛍光度に基づいて測定された。
【0158】
その結果、in-vitroアミロイドベータ凝集体(aggregate)生成試験において、Nurr1+Foxa2の発現した膠細胞が処理された培養液(Nurr1+Foxa2)サンプルは、他のサンプル(Nurr1、Cont、Media)と比較して減少したアミロイドベータ凝集を示した(図12B図12C)。
【0159】
Nurr1+Foxa2の発現した膠細胞が処理された培養液サンプルのアミロイドベータ凝集程度が、コントロール膠細胞が培養された培地(培養液)サンプルのアミロイドベータ凝集程度に比べて有意に低かった。
【0160】
また、アミロイドベータ凝集において、Nurr1を単独で発現した場合に比べて、Nurr1及びFoxa2を共に発現した場合、凝集程度がより低く示される結果から、Nurr1及びFoxa2を共に発現させた場合に相乗効果があるという事実がわかった。
この実験結果に基づき、Nurr1+Foxa2を発現させる膠細胞によって処理された培養液は、コントロール膠細胞によって処理された培養液又はNurr1を単独で発現する膠細胞によって処理された培養液に比べて改善されたアミロイドベータ凝集抑制効果を有すると考えられる。
【0161】
(8)Nurr1+Foxa2発現がC3及びC1q発現に及ぼす影響
補体(complement)C3及びC1qは、アルツハイマー病においてシナプス損失(synaptic loss)及び認知能力減退(cognitive deficit)を誘発するものと知られている(Hong,S.,et al.(2016).“Complement and microglia mediate early synapse loss in Alzheimer mouse models.” Science 352(6286):712-716)(Shi,Q.,et al.(2017)。“Complement C3 deficiency protects against neurodegeneration in aged plaque-rich APP/PS1mice.” Sci Transl Med 9(392))。膠細胞においてNurr1+Foxa2発現によるアルツハイマー病の治療効果を調べるために、APP、PS1、及びtauの3つの遺伝子を突然変異させてアルツハイマー病を誘発した15月齢、18月齢の3xFADマウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1+Foxa2を発現させて2ヶ月後に、海馬部位を粉砕し、RT-PCRを行った。
【0162】
上述した実験方法でRT-PCRを行ったとき、Nurr1+Foxa2-AAV9を導入したアルツハイマー病モデルマウスにおいてコントロール-AAV9を導入したマウスと比較して、C1qa、C3のmRNAレベルの有意な減少を確認し、RNA-Seqにおいてもそれを確認した。このことから、アルツハイマー病においてNurr1+Foxa2の発現がシナプス損失(synaptic loss)及び認知能力減退(cognitive deficit)を抑えるということを確認した(図13)。
【0163】
(9)Nurr1+Foxa2発現がCCL3及びCCL4遺伝子発現に及ぼす影響
アルツハイマー病にかかった脳は、ケモカイン(chemokine)であるCCL3及びCCL4を分泌し、これは、好中球(neutrophil)、単核球(monocyte)、大食細胞(macrophage)のような末梢免疫細胞(peripheral immune cell)の増加を誘導する。CCL3及びCCL4が媒介する末梢免疫細胞の増加は、アルツハイマー病の主要病理的症状の一つと知られている(Kang,S.S.,et al.(2018).“Microglial translational profiling reveals a convergent APOE pathway from aging,amyloid,and tau.” J Exp Med 215(9):2235-2245)。
【0164】
膠細胞においてNurr1+Foxa2発現によるアルツハイマー病の治療効果を調べるために、APP、PS1、及びtauの3つの遺伝子を突然変異させてアルツハイマー病を誘発した15月齢、18月齢の3xFADマウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1+Foxa2を発現させて2ヶ月後に海馬部位を粉砕し、RNA-Seqを行った。その結果、Nurr1+Foxa2の発現した培養膠細胞において、コントロール培養膠細胞に比べてCCL3とCCL4遺伝子の発現が有意に減少した(図14)。これは、Nurr1+Foxa2の発現が少なくともアルツハイマー病の病理的症状を緩和するのに効果があることを示している。
【0165】
(10)アミロイドベータアルツハイマー病モデルにおいてNurr1及びFoxa2の相乗的反応による炎症因子、炎症調節複合体減少及び神経栄養因子増加
アルツハイマー病において、アミロイドベータ凝集に関与する重要な機序として炎症調節複合体(inflammasome)を提示できるが、炎症調節複合体は、ASC、NLRP3、Caspase1で構成される多重タンパク質オリゴマー(multiprotein oligomer)であり、炎症反応(inflammatory response)を活性化させる。
【0166】
脳内においてアミロイドベータの凝集(deposition)は、先天性免疫システム(innate immune system)を伴い、小膠細胞では炎症調節複合体依存的ASC粒子(specks)が作られる。小膠細胞において分泌されるASC粒子は、アミロイドベータに素早く付着してアミロイドベータオリゴマー、凝集体が形成される。すなわち、炎症調節複合体活性化がアミロイドベータ病理のシーディングとスプレッディングに関連する(Venegas,C.,et al.(2017).Microglia-derived ASC specks cross-seed amyloid-beta in Alzheimer’s disease.Nature,552(7685)、355-361.doi:10.1038/nature25158)。
【0167】
更に他の炎症調節複合体の構成要素であるNLRP3/Caspase1を媒介とする炎症(inflammation)も同様、アルツハイマー病において行動的、認知的欠損(dysfunction)に重要な役割を担う。例えば、アミロイドベータによってNLRP3炎症調節複合体が活性化(activation)されると、慢性的な炎症組織反応(inflammatory tissue response)が起き、アルツハイマー病の進行が促進される。したがって、NLRP3炎症調節複合体の活性を防ぐか、炎症調節複合体由来サイトカインの活性を阻害させることが、アルツハイマー病の進行を防ぐ治療的概念となり得る(Heneka,M.T.,et al.(2013).NLRP3 is activated in Alzheimer’s disease and contributes to pathology in APP/PS1mice.Nature,493(7434)、674-678.doi:10.1038/nature11729)。
【0168】
アルツハイマー病において、膠細胞にNurr1+Foxa2発現によるアルツハイマー病の治療効果を調べるために、前記10週齢のICRマウスの脳室にアミロイドベータ凝集体(amyloid beta aggregate)を注入し、海馬部位にはAAV-9(遺伝子発現のためのプロモーターは、CMV又はGFAPプロモーターを使用した。)によりNurr1+Foxa2遺伝子を導入した。そして、海馬部位を粉砕(homogenize)し、RT-PCRを行った。
【0169】
図15は、アミロイドベータアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位にAAV-9(CMV or GFAP promoter)によりNurr1+Foxa2遺伝子導入後に、海馬部位をRT-PCRした結果を示している。アミロイドベータアルツハイマー病モデルにおいて、Nurr1又はFoxa2をそれぞれ単独で処理した組織部位と比較して、Nurr1及びFoxa2を共に処理した組織部位の炎症及び炎症調節複合体の減少が相乗的に(synergistically)より大きいことを確認した。
【0170】
また、上述したように、アルツハイマー病の誘発に密接な関連を有する炎症調節複合体関連タンパク質を電気泳動で確認し、アルツハイマー病モデルマウスの海馬部位においてNurr1及びFoxa2の発現によって炎症調節複合体が減少するか否か確認した。
【0171】
図16は、15月齢の3xFADマウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1+Foxa2遺伝子を導入して2ヶ月後に、ウェスタンブロットを用いて海馬部位で炎症調節複合体マーカーのタンパク質レベルを確認した結果を示す。その結果、炎症調節複合体マーカーであるpro-caspase1とcleavage caspase1タンパク質の減少を確認し、ASCタンパク質も概ね減少を確認した。
【0172】
図17は、アミロイドベータアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位にNurr1+Foxa2遺伝子導入後に、海馬部位で炎症性サイトカイン(IL-1β、TNF-α)を対象にRT-PCRした結果を示す。その結果、Nurr1及びFoxa2遺伝子の発現による、炎症性サイトカインであるIL-1β、TNF-αの減少を確認し、特に、Nurr1及びFoxa2遺伝子を共に発現した場合、炎症性サイトカインの発現が大きく減少することを確認した。
【0173】
図18は、アミロイドベータアルツハイマー病モデルマウスの海馬部位にNurr1+Foxa2遺伝子導入後に、海馬部位で神経栄養因子(SHH、BDNF、Arg1)を対象にRT-PCRした結果を示す。その結果、Nurr1又はFoxa2遺伝子の発現を通じて神経栄養因子の増加を確認し、特に、Nurr1及びFoxa2遺伝子を共に発現した場合、神経栄養因子も同様に相乗的に(synergistically)より増加することを確認した。
【0174】
このことから、Nurr1及びFoxa2の相乗的な反応により脳細胞の炎症減少、炎症調節複合体の減少、神経栄養因子増加の効果が得られると考えられる。
【0175】
(11)アミロイドベータアルツハイマー病モデルにおいてNurr1及びFoxa2の相乗的反応によるNFkB信号伝達因子の活性減少
NK(nuclear factor)-kBは転写因子であって、様々な生理作用を示すが、特に、免疫と炎症反応において中心的な役割を担うと知られている。また、NK-kBは、p50とp65(RelA)タンパク質のヘテロ二量体であって、主にDNAに結合する。親炎症性遺伝子発現においてNF-kBが中心的役割を担うことから、慢性炎症治療では、この経路の抑制剤を開発するために多くの研究が行われている。
【0176】
上述したように、Nurr1及びFoxa2が星状細胞において相乗作用を起こしながら炎症反応を調節するということを確認した。したがって、炎症調節反応がNF-kBによって調節されるかを確認するために実験を行った。
【0177】
生後1日のマウスの大脳皮質星状細胞を一次培養(primary culture)した後、レンチウイルスを用いてCMVプロモーターコントロール、Nurr1、Foxa2、Nurr1+Foxa2の4群に分けて各遺伝子を細胞に発現させた。その後、ベータアミロイド凝集体を処理し、NF-kB信号伝達要因をウェスタンブロットで確認した。
【0178】
その結果、マウス大脳皮質星状細胞においてレンチウイルスを用いてコントロール、Nurr1、Foxa2、Nurr1+Foxa2をそれぞれ発現させた時、細胞質においてNFKB信号伝達(signal)の主要因子であるIKKα/β、Ikβα、NFkBのリン酸化(activated)が主にNurr1+Foxa2群において減少することを確認し、核におけるNFkBのタンパク質量も減少することを確認した(図19A図19B)。このような減少が、Nurr1、foxa2単独群に比べてNurr1+Foxa2群においてより多く減少することから、Nurr1とfoxa2が相乗作用によってNFkBを調節することを確認した。
【0179】
生後1日目のマウスの海馬の星状細胞を一次培養(primary culture)し、ベータアミロイド凝集体を処理又は非処理した。ベータアミロイド凝集体を処理した細胞は、CMVプロモーターコントロール、Nurr1、Nurr1+Foxa2の3群に分けた。全ての星状細胞はレンチウイルスにより該当の遺伝子を発現させるようにした。その後、NFkB信号伝達経路に含まれる因子をウェスタンブロットで確認した。
【0180】
その結果、マウス海馬星状細胞においてレンチウイルスを用いてコントロール、Nurr1、Nurr1+Foxa2をそれぞれ発現させた時、細胞質においてNFKB信号伝達の主要因子であるNFkBのリン酸化(activated)が主にNurr1+Foxa2群において減少することを確認した(図19C図19D)。このような減少が、Nurr1単独群に比べてNurr1+Foxa2群においてより多く減少することから、Nurr1とfoxa2が相乗作用によってNFkBを調節することを確認した。
【0181】
(12)アミロイドベータアルツハイマー病モデルにおいてNurr1及びFoxa2の相乗的反応によるシナプス消失の保護作用
アルツハイマー病において、シナプスの消失は認知能力の減退と密接な関連があるが、このようなシナプスの消失は、小膠細胞(microglia)と補体(complement)による神経炎症(neuroinflammation)によって誘発され、これはアルツハイマー病においてシナプスの消失を招く(Hong,S.,Beja-Glasser,V.F.,Nfonoyim,B.M.,Frouin,A.,Li,S.,Ramakrishnan,S.,Merry K.M.,Shi Q.,Rosenthal A.,Barres B.A.,Lemere C.A.,Selkoe D.J.,Stevens,B.(2016).Complement and microglia mediate early synapse loss in Alzheimer mouse models.Science,352(6286)、712-716.doi:10.1126/science.aad8373)。
【0182】
したがって、成熟したシナプスにおいて発現するシナプス形成タンパク質を電気泳動で確認し、アルツハイマー病モデルマウスの海馬部位においてNurr1及びFoxa2によるシナプスの消失の保護作用を確認した。
【0183】
アルツハイマー病において、膠細胞にNurr1+Foxa2発現によるアルツハイマー病の治療効果を調べるために、3つの遺伝子APP、PS1、及びtauを突然変異させてアルツハイマー病を誘発した15月齢の3xFADマウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にAAV9血清型ウイルスを用いてNurr1+Foxa2を発現させた。そして約2ヶ月後に海馬部位を抽出し、シナプス形成と炎症調節複合体タンパク質電気泳動を行った。
【0184】
15月齢の3xFADマウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1+Foxa2遺伝子導入2ヶ月後に、海馬部位においてシナプス形成と炎症調節複合体のタンパク質を、ウェスタンブロット実験で分析した。
【0185】
図20は、15月齢の3xFADマウスの海馬及び脳室の膠細胞に特異的にNurr1+Foxa2遺伝子導入して2ヶ月後に、ウェスタンブロットを用いて海馬部位においてシナプス形成マーカーのタンパク質レベルの確認及びその結果を定量的に分析した結果である。その結果、Nurr1+Foxa2処理群において対照群に比べてシナプス形成マーカーであるsynapsin1とsynaptophsinタンパク質が増加していることを確認した。
【0186】
(13)Nurr1+Foxa2遺伝子導入が膠細胞老化(glial cell senescence)防止に及ぼす影響
膠細胞老化(glial cell senescence)は、アルツハイマー病の代表的な症状として知られている(Bussian,T.J.,et al.(2018).“Clearance of senescent glial cells prevents tau-dependent pathology and cognitive decline.” Nature 562(7728):578-582)(Chinta,S.J.,et al.(2018)。“Cellular Senescence Is Induced by the Environmental Neurotoxin Paraquat and Contributes to Neuropathology Linked to Parkinson’s Disease.” Cell Rep 22(4):930-940)(Bhat,R.,et al.(2012).Astrocyte senescence as a component of Alzheimer’s disease.PLoS One,7(9)、e45069.doi:10.1371/journal.pone.0045)。アミロイドベータは老化を誘発し、老化された星状細胞(senescent astrocytes)はインターロイキン-6(IL-6)のような炎症性サイトカイン(inflammatory cytokines)を生産して、アルツハイマー病を誘発する機序が知られた(Bhat et al.,2012)。培養された膠細胞にNurr1+Foxa2遺伝子を発現させた時、膠細胞老化症状にいかなる影響を及ぼすかを実験した。
【0187】
図21Aは、Nurr1+Foxa2遺伝子含有ウイルスが導入された培養膠細胞と、コントロールウイルスが導入された培養膠細胞において、細胞老化に関係する遺伝子の発現を示す実時間PCRデータを示している。膠細胞においてNurr1+Foxa2発現によるRNA-Seq結果において、コントロール膠細胞と比較して、老化誘発因子であるIL6、MMP1及びMMP10のmRNAレベルの減少を確認した(図21A)。
【0188】
また、膠細胞においてNurr1+Foxa2発現が老化の減少を誘発するかを調べるために、老化関連ベータガラクトシダーゼ染色法(Senescence-associated beta-galactosidase staining,SA-β-gal staining)(Abcam)を行った(Dimri et al.,1995)。細胞は、密度4.0×10細胞/cm(又は、4.0×10細胞/12mm径ウェル)の時にプレートされ、少なくとも4,000個の細胞をシーディングし、12~18時間後に老化関連ベータガラクトシダーゼ活性(SA-β-gal activity)を測定した。マウスの海馬部分膠細胞にNurr1+Foxa2遺伝子をレンチウイルス(レンチウイルス)を用いて導入した後、老化のマーカーであるベータガラクトシダーゼの染色を確認した。
【0189】
図21Bは、コントロール培養膠細胞とNurr1+Foxa2導入された培養膠細胞のベータガラクトシダーゼ(細胞老化マーカー)染色結果を示している。コントロール培養膠細胞とNurr1+Foxa2発現培養膠細胞の両方において、マーカーであるベータガラクトシダーゼの染色を確認し、コントロール細胞に比べて、Nurr1+Foxa2処理群において、染色された細胞数が減少したことを確認した。
【0190】
図21Cは、青色で染色された陽性(positive)細胞数字(β-galactosidase+膠細胞)を全体細胞数字の割合で示したグラフである。コントロール膠細胞と比較し、Nurr1+Foxa2遺伝子を導入した膠細胞において、青色で染色された陽性細胞数字が有意に減少したことを確認した。このような結果から、老化星状細胞(senescent astrocytes)においてNurr1+Foxa2発現によって老化の減少を誘導し、このことから、炎症反応の減少する機序が老化に関連していると結論付けることができる。
【0191】
(14)アミロイドベータアルツハイマー病モデルにおいてNurr1及びFoxa2の相乗的反応がSox2、UGT1A1、及びGFAPに及ぼす影響
Sox2は、幹細胞の自己複製又は多分化能に必須の転写因子であり、幹細胞においてベータアミロイドフリーカーソルタンパク質(βAPP)と共局在化(colocalize)する。また、Sox2は、アルツハイマー病患者の脳で減少する様相を示す。
【0192】
GFAPは星状細胞マーカーであり、神経GFAP(neuronal GFAP)は主にアルツハイマー病患者、ダウン症候群患者及び老人の海馬のピラミッドニューロンから観察されるものと知られている。
【0193】
15月齢の5xFADマウスの海馬及び脳室に位置している膠細胞に、Nurr1-AAV9+Foxa2-AAV9ウイルスを用いて特異的にNurr1+Foxa2遺伝子を導入した。遺伝子導入2ヶ月後に、海馬部位において免疫染色方法によりSox2、UGT1A1及びGFAPの蛍光を確認した。
【0194】
その結果、前記Nurr1+Foxa2処理群において、約2ヶ月後に海馬において免疫染色方法で測定した時、Sox2は増加、UGT1A1及びGFAPは減少することを確認した(図23)。
【0195】
前記結果は、Nurr1+Foxa2処理がアルツハイマー病疾患と関連した因子の発現に影響を与えるということを示す。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、アミロイドベータ(amyloid β)蓄積及び/又は凝集(accumulation and/or aggregation)抑制剤に関し、より詳細には、哺乳類にNurr1及びFoxa2遺伝子を同時に導入して発現を誘導することによってアミロイドベータ蓄積及び/又は凝集を抑制する組成物及び方法に関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図22
【配列表】
0007261352000001.app