(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】中子及び構造体の成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/76 20060101AFI20230412BHJP
B29C 43/02 20060101ALI20230412BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20230412BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B29C33/76
B29C43/02
B29C70/06
B29C70/42
(21)【出願番号】P 2022515396
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015316
(87)【国際公開番号】W WO2021210579
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-04-20
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 謙士郎
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼本 貴也
(72)【発明者】
【氏名】佐名 俊一
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0207840(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0230552(US,A1)
【文献】特表2012-525279(JP,A)
【文献】特開2015-142993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 43/00-43/58
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂製のスキンと前記スキン側に開口する断面ハット型のストリンガとを一体成形する工程において、前記スキンと前記ストリンガとの間の空間に挿入される中子であって、
前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記スキンに接する第1型材と、
前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記第1型材に隣接して前記スキンに接する第2型材と、
前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記第1型材及び前記第2型材を挟んで前記スキンと反対側に位置し、前記第1型材及び前記第2型材の両方に接する第3型材と、を備え
、
前記ストリンガの長手方向に対して垂直な断面視において、前記第1型材と前記第2型材の境界は、前記スキンの垂線方向に対して傾斜している、中子。
【請求項2】
前記第1型材、前記第2型材、及び、前記第3型材は、いずれも長手方向に分割されている、
請求項1に記載の中子。
【請求項3】
前記第3型材には、前記ストリンガの長手方向に対して垂直なスリットが形成されている、
請求項1又は2に記載の中子。
【請求項4】
前記第3型材は、長手方向の一端側から他端側に向かうに従って断面積が小さくなるように形成されている、
請求項1乃至3のうちいずれか一の項に記載の中子。
【請求項5】
前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記第3型材を挟んで前記第1型材及び第2型材と反対側に位置する第4型材をさらに備えている、
請求項4に記載の中子。
【請求項6】
前記スキンと前記ストリンガとの間の空間に
請求項1乃至5のうちいずれか一の項に記載の中子を挿入し、
前記スキンと前記ストリンガとの間の空間に前記中子を挿入した状態で前記スキンと前記ストリンガとを一体成形した後、前記空間から前記中子を抜き取る、構造体の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維強化樹脂を含む構造体の成形工程で用いる中子、及び、当該中子を用いた構造体の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂製のスキンと梁状のストリンガとを一体成形してなる構造体が考案されている。上記のストリンガとして、スキン側に開口する断面ハット型のものを用いることができる。断面ハット型のストリンガは、構造体の断面変化に追従しやすく、重量に比して強度が高いという利点がある。ただし、断面ハット型のストリンガは、スキンと一体成形する工程において、スキンとの間の空間に中子を挿入する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スキンとストリンガとを一体成形する工程では、スキンの外面に大きな力が部分的に加えられる場合がある。そのため、中子のスキンを支持する面、つまり中子のスキンに接する面は部分的に変形しないことが望ましい。ただし、硬い材料で形成された中子は、柔軟性が乏しく、成形後における中子の抜き取りが容易ではない。
【0005】
本開示は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、スキンに接する面が部分的に変形しにくく、かつ、成形後の抜き取りが容易である中子及び構造体の成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る中子は、繊維強化樹脂製のスキンと前記スキン側に開口する断面ハット型のストリンガとを一体成形する工程において、前記スキンと前記ストリンガとの間の空間に挿入される中子であって、前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記スキンに接する第1型材と、前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記第1型材に隣接して前記スキンに接する第2型材と、前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記第1型材及び前記第2型材を挟んで前記スキンと反対側に位置し、前記第1型材及び前記第2型材の両方に接する第3型材と、を備えている。
【0007】
この構成によれば、スキンに接する面が部分的に変形しないように中子を比較的硬い材料で形成した場合であっても、第3型材が下になる状態で第3型材を抜き取れば、第1型材及び第2型材が崩れ落ちて、第1型材及び第2型材が抜き取りやすくなる。
【0008】
本開示の一態様に係る構造体の成形方法は、前記スキンと前記ストリンガとの間の空間に記載の中子を挿入し、その状態で前記スキンと前記ストリンガとを一体成形した後、前記空間から前記中子を抜き取る。
【0009】
この成形方法によれば、スキンに接する面が部分的に変形しないように中子を比較的硬い材料で形成した場合であっても、第3型材が下になる状態で第3型材を抜き取れば、第1型材及び第2型材が崩れ落ちて、第1型材及び第2型材が抜き取りやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成によれば、スキンに接する面が部分的に変形しにくく、かつ、成形後の抜き取りが容易である中子及び構造体の成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、中子を用いて成形する構造体の正面図である。
【
図2】
図2(a)乃至(g)は、構造体の成形工程を示した図である。
【
図3】
図3(a)乃至(c)は、それぞれ第1実施形態に係る中子の正面図、I-I矢視断面図、及び、背面図である。
【
図4】
図4(a)乃至(c)は、それぞれ第2実施形態に係る中子の正面図、II-II矢視断面図、及び、背面図である。
【
図5】
図5(a)乃至(c)は、それぞれ第3実施形態に係る中子の正面図、III-III矢視断面図、及び、背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
はじめに、第1実施形態に係る中子100について説明する。
【0013】
<構造体>
まず、中子100を用いて成形される構造体101について説明する。
図1は、構造体101の正面図であって、構造体101の一部を示している。構造体101は、一例として航空機の機体である。構造体101は、スキン102と、複数のストリンガ103とを備えている。
図1では、複数のストリンガ103のうちの1つを示している。なお、構造体101の形状は限定されず、平板状であってもよく、円筒状であってもよい。
【0014】
スキン102は、構造体101の表面にあたる部分である。本実施形態では、スキン102の厚みは一定であるものとする。スキン102は、カーボンなどの繊維に樹脂を含侵させたシート状のプリプレグを積層し、これらを硬化することで形成されている。つまり、スキン102は繊維強化樹脂製である。スキン102の厚みは、プリプレグの積層数で調整することができる。本実施形態のスキン102を構成する樹脂は熱可塑性樹脂であるが、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0015】
ストリンガ103は、スキン102の内側に位置し、スキン102と一体に形成される部分である。ストリンガ103は梁の役割を果たし、所定の方向(
図1の紙面に垂直な方向)に延びている。構造体101が筒状である場合は、ストリンガ103は構造体101の軸方向に沿って延びる。本実施形態のストリンガ103は、スキン102と同じ材料(つまり、繊維強化樹脂)で形成されている。ただし、ストリンガ103は、スキン102と異なる材料で形成されていてもよい。例えば、ストリンガ103は、インバー合金で形成されていてもよい。
【0016】
ここで、以下では、ストリンガ103が延びる方向を「長手方向」と称し、長手方向に対して垂直な断面を単に「断面」と称し、断面視においてスキン102が延びる方向を「幅方向」と称し、断面視においてスキン102の垂線方向を「縦方向」と称する。なお、縦方向は、鉛直方向と一致しない場合もある。
【0017】
ストリンガ103は、スキン102側に開口する断面ハット型である。具体的には、ストリンガ103は、スキン102から最も遠くに位置する底面部104と、底面部104の幅方向両端からスキン102に向かって延びる2つの側面部105と、各側面部105からスキン102に接しながら幅方向外側に延びる2つのフランジ部106と、を有している。なお、2つの側面部105は、互いに幅方向に離れるようにして、縦方向に対して傾斜している。
【0018】
スキン102及びストリンガ103は上記のように構成されているため、スキン102とストリンガ103との間には空間107が形成される。この空間107は、長手方向に延びており、断面視において台形状の形状を有している。スキン102とストリンガ103とを一体成形する工程では、この空間107に中子100が挿入される。
【0019】
<構造体の成形工程>
次に、上述した構造体101の成形工程、つまりスキン102とストリンガ103とを一体成形する工程について説明する。
図2(a)乃至(g)は、構造体101の成形工程を示した図である。なお、以下で説明する構造体101の成形工程は、スキン102が熱可塑性樹脂で形成される場合の一例であり、例えばスキン102が熱硬化性樹脂で形成される場合は異なる工程が実施される。
【0020】
本実施形態の成形工程では、まず、
図2(a)及び(b)に示すように、予め用意した基礎型108の溝109にストリンガ103を設置する。基礎型108は、完成後の構造体101の形状に応じた形状を有しており、例えば板状や断面半円状の形状を有している。続いて、
図2(c)に示すように、ストリンガ103の内部に中子100を挿入する。中子100の詳細は後述する。
【0021】
続いて、
図2(d)に示すように、基礎型108及び中子100の表面に沿ってスキン102を形成する。前述のとおり、スキン102はプリプレグを積層することにより形成される。このとき、スキン102は硬化しておらず、ストリンガ103とも結合していない。
【0022】
続いて、
図2(e)に示すように、スキン102に熱を加えるとともに、加圧装置110を用いてスキン102の表面に力を加える。このとき、スキン102には部分的な力が加わる。また、スキン102の温度は例えば350度といった高温となる。このように、熱を加えながら加圧成形することにより、スキン102が硬化して、ストリンガ103と結合する。つまり、スキン102とストリンガ103とは一体成形される。
【0023】
続いて、
図2(f)に示すように、スキン102とストリンガ103との間の空間107から中子100を抜き取る。最後に、
図2(g)に示すように、スキン102とストリンガ103とが一体化した構造体101を基礎型108から取り外す。以上が、構造体101の成形工程である。
【0024】
<中子>
次に、本実施形態に係る中子100について説明する。ここで、
図3(a)は中子100の正面図、
図3(b)は
図3(a)におけるI-I矢視断面図、
図3(c)は中子100の背面図である。なお、
図3(a)乃至(c)は、中子100がスキン102とストリンガ103との間の空間107に挿入された状態を示している。この点は、後述する
図4(a)乃至(c)及び
図5(a)乃至(c)も同様である。
【0025】
図3(a)に示すように、本実施形態に係る中子100は、互いに分離可能な第1型材10と、第2型材20と、第3型材30と、を備えている。
【0026】
第1型材10は、スキン102に接する部材である。第1型材10は、第2型材20と幅方向に隣り合うようにして、長手方向に沿って延びている。本実施形態の第1型材10は、長手方向位置にかかわらず、同じ断面形状を有している。
【0027】
より詳細には、本実施形態の第1型材10は、スキン102に接する上面11と、ストリンガ103の側面部105に接する外側面12と、上面11の反対側に位置し第3型材30と接する下面13と、第2型材20と接する内側面14と、下面13と内側面14との間に位置し第3型材30と接する断面L字状の窪み面15と、を有している。
【0028】
第2型材20は、第1型材10と同様にスキン102に接する部材である。第2型材20は、第1型材10と幅方向に隣り合うようにして、長手方向に沿って延びている。本実施形態の第2型材20は、長手方向位置にかかわらず、同じ断面形状を有している。
【0029】
より詳細には、本実施形態の第2型材20は、スキン102に接する上面21と、ストリンガ103の側面部105に接する外側面22と、上面21の反対側に位置し第3型材30と接する下面23と、第1型材10と接する内側面24と、下面23と内側面24との間に位置し第3型材30と接する断面L字状の窪み面25と、を有している。
【0030】
また、第2型材20の窪み面25は、第1型材10の窪み面15と一体となって挿入溝26を形成している。挿入溝26は、第1型材10と第2型材20の境界部分に位置しており、長手方向に延びている。また、挿入溝26は、断面視において矩形状の形状を有している。
【0031】
さらに、上述した第1型材10の内側面14と第2型材20の内側面24は、互いに接しており、縦方向に対して傾斜している。具体的には、第1型材10の内側面14は、断面視において上面11とのなす角が鈍角となるように傾斜している。また、第2型材20の内側面24は、断面視において上面21とのなす角が鋭角となるように傾斜している。
【0032】
第3型材30は、第1型材10及び第2型材20を挟んでスキン102と反対側に位置する部材である。第3型材30は、長手方向に沿って延びている。本実施形態の第3型材30は、長手方向位置にかかわらず、同じ断面形状を有している。より詳細には、第3型材30は、本体部31と、突起部32と、を有している。
【0033】
本体部31は、断面視において矩形状の形状を有している。本体部31の下面33は、ストリンガ103の底面部104に接している。また、本体部31の突起部32の幅方向両側に位置するショルダ面34は、第1型材10の下面13及び第2型材20の下面23の両方に接している。なお、上記のとおり本実施形態の本体部31は断面視において矩形状の形状を有しているが、本体部31はストリンガ103の断面形状に沿って台形状の形状を有していてもよい。
【0034】
突起部32は、第3型材30の幅方向中央からスキン102側に向かって突出する部分である。突起部32は、断面視において矩形状の形状を有しており、第1型材10の窪み面15と第2型材20の窪み面25が一体となって形成された挿入溝26に挿入されている。したがって、突起部32は、第1型材10の窪み面15及び第2型材20の窪み面25の両方に接している。
【0035】
中子100を構成する各型材10、20、30は、以上のように形成されている。そのため、第1型材10及び第2型材20は、ストリンガ103の側面部105及び第3型材30に支持される。その結果、中子100は全体として崩れることなくスキン102を介して加えられる縦方向の力に耐えることができる。
【0036】
一方、第1型材10及び第2型材20は、いずれも第3型材30に支持されているため、第3型材30に支持されなければ、第1型材10及び第2型材20は崩れ落ちる。したがって、スキン102とストリンガ103とを一体成形する工程中の中子100を抜き取る作業(
図2(e)から
図2(f)への作業)において、はじめに第3型材30を抜き取れば、第1型材10及び第2型材20も崩れ落ちて容易に抜き取ることができる。
【0037】
しかも、本実施形態では、断面視において、第1型材10と第2型材20の境界は、縦方向に対して傾斜している。そのため、第3型材30を抜き取ったときに、第1型材10が先に落ち、その際に第1型材10と第2型材20が互いに引っ掛かることも無いため、第1型材10及び第2型材20は一層崩れ落ちやすい。
【0038】
なお、各型材10、20、30は、構造体101の成形工程で加えられる熱に耐えられる材料で形成する必要がある。さらに、各型材10、20、30は、抜き取る際にスキン102やストリンガ103との摩擦が大きくならないように、表面が滑らであることが望ましい。以上を踏まえると、各型材10、20、30を金属で形成することができる。また、製造コストを考慮すると、各型材10、20、30をアルミニウムで形成することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る中子200について説明する。ここで、
図4(a)は中子200の正面図、
図4(b)は
図4(a)におけるII-II矢視断面図、
図4(c)は中子200の背面図である。なお、本実施形態に係る中子200の構成要素のうち、第1実施形態に係る中子100の構成要素と同じ又は対応するものには、同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0040】
図4(b)に示すように、本実施形態では、スキン102の厚みが一定でなく、スキン102の厚みは長手方向位置によって異なる。その結果、スキン102とストリンガ103との間の空間107は、長手方向に進につれて変位する。本実施形態に係る中子200は、このような構造体101の成形に対応できるよう構成されている。
【0041】
まず、本実施形態に係る中子200は、第1型材10、第2型材20、及び、第3型材30が、いずれも長手方向に分割されている。
図4(b)に示す例では、各型材10、20、30は、長手方向に3分割されている。ただし、各型材10、20、30の分割数はこれに限定されない。このように、各型材10、20、30が長手方向に分割されているため、分割された部分が相対的に変位することができる。その結果、本実施形態に係る中子200は、スキン102とストリンガ103との間の空間107の変位に追従しやすく、抜き取りも容易となる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る中子200には、第3型材30に長手方向に対して垂直なスリット35が複数形成されている。これにより、スリット35を境界にして隣り合う部分が相対的に変位することができる。その結果、本実施形態に係る中子200は、スキン102とストリンガ103との間の空間107の変位に追従しやすく、抜き取りも容易となる。また、第3型材30に形成されるスリット35の数は限定されない。
【0043】
なお、本実施形態では、スリット35は、第3型材30の下面33側に開口し、下面33からスキン102側に向かって延びている。ただし、スリット35は、第3型材30の上面側に開口し、ストリンガ103の底面部104側に向かって延びていてもよい。また、本実施形態では、第3型材30にスリット35が形成されているが、第1型材10及び第2型材20にもスリットを形成してもよい。さらに、スリット35の縦方向寸法は限定されず、例えば第3型材30の縦方向寸法の50%以上であってもよい。
【0044】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る中子300について説明する。ここで、
図5(a)は中子300の正面図、
図5(b)は
図5(a)におけるIII-III矢視断面図、
図5(c)は中子300の背面図である。なお、本実施形態に係る中子300の構成要素のうち、第1実施形態に係る中子100の構成要素と同じ又は対応するものには、同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0045】
図5(a)に示すように、本実施形態に係る中子300は、第1型材10、第2型材20、及び、第3型材30に加え、第4型材40を備えている。
【0046】
本実施形態の第3型材30は、本体部31を有するものの突起部32(
図3(a)参照)を有しておらず、断面視において全体が矩形状の形状を有している。第3型材30の正面側の端面には、雌ねじ36が形成されている。第3型材30を抜き取る際には、この雌ねじ36に治具を取り付け、取り付けた治具を介して第3型材30を引き抜いてもよい。
【0047】
また、本実施形態における第1型材10の窪み面15と第2型材20の窪み面25が一体となって形成された挿入溝26は、第1実施形態の挿入溝26よりも幅方向寸法が大きい。そのため、本実施形態の挿入溝26に第3型材30(本体部31)を挿入することができる。
【0048】
第4型材40は、長手方向に沿って延び、第3型材30を挟んで第1型材10及び第2型材20と反対側に位置している。第4型材40の下面41がストリンガ103の底面部104に接しており、第4型材40の上面には第3型材30を受ける受け溝42が形成されている。
【0049】
ここで、
図5(b)に示すように、第3型材30の縦方向における寸法は、正面側から背面側に向かうに従って(
図5(b)の紙面左から右へ向かうに従って)小さくなっている。そのため、
図5(a)と
図5(c)とを比較してわかるように、第3型材30は、長手方向の正面側から背面側に向かうに従って断面積が小さくなるように形成されている。つまり、第3型材30は楔状に形成されている。したがって、本実施形態によれば、第3型材30を正面側から引っ張ることで、第3型材30を容易に抜き取ることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、挿入溝26の深さ寸法(縦方向寸法)は長手方向の正面側から背面側に向かうに従って小さくなっており、第4型材40の縦方向寸法及び断面積は長手方向の正面側から背面側に向かうに従って大きくなっている。このように第1型材10、第2型材20、及び、第4型材40を構成することにより、第3型材30の断面積が変化するにもかかわらず中心位置はほとんど変化しない。その結果、第3型材30を長手方向に沿ってまっすぐに引き抜くことができる。
【0051】
(まとめ)
以上のとおり、第1乃至第3実施形態に係る中子は、繊維強化樹脂製のスキンと前記スキン側に開口する断面ハット型のストリンガとを一体成形する工程において、前記スキンと前記ストリンガとの間の空間に挿入される中子であって、前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記スキンに接する第1型材と、前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記第1型材に隣接して前記スキンに接する第2型材と、前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記第1型材及び前記第2型材を挟んで前記スキンと反対側に位置し、前記第1型材及び前記第2型材の両方に接する第3型材と、を備えている。
【0052】
この構成によれば、スキンに接する面が部分的に変形しないように中子を比較的硬い材料で形成した場合であっても、第3型材が下になる状態で第3型材を抜き取れば、第1型材及び第2型材が崩れ落ちて、第1型材及び第2型材が抜き取りやすくなる。
【0053】
また、第1乃至第3実施形態に係る中子では、前記ストリンガの長手方向に対して垂直な断面視において、前記第1型材と前記第2型材の境界は、前記スキンの垂線方向に対して傾斜している。
【0054】
この構成によれば、第3型材を抜き取ったときに、第1型材又は第2型材が先に落ち、その際に第1型材と第2型材が互いに引っ掛かることもなく崩れ落ちるため、第1型材及び第2型材の抜き取りが一層容易となる。
【0055】
また、第2実施形態に係る中子では、前記第1型材、前記第2型材、及び、前記第3型材は、いずれも長手方向に分割されている。
【0056】
この構成によれば、長手方向に分割された部分が相対的に変位することができるため、スキンとストリンガとの間の空間の変位に追従しやすく、抜き取りも容易となる。
【0057】
また、第2実施形態に係る中子では、前記第3型材には、前記ストリンガの長手方向に対して垂直なスリットが形成されている。
【0058】
この構成によれば、スリットを境界にして隣り合う部分が相対的に変位することができるため、スキンとストリンガとの間の空間の変位に追従しやすく、抜き取りも容易となる。
【0059】
また、第3実施形態に係る中子では、前記第3型材は、長手方向の一端側から他端側に向かうに従って断面積が小さくなるように形成されている。
【0060】
この構成によれば、第3型材を一端側に引っ張ることで、第3型材を容易に抜き取ることができる。
【0061】
また、第3実施形態に係る中子では、前記ストリンガの長手方向に沿って延び、前記第3型材を挟んで前記第1型材及び第2型材と反対側に位置する第4型材をさらに備えている。
【0062】
この構成によれば、第1型材、第2型材、及び、第4型材の形状を調整することで、第3型材の中心位置が長手方向位置にかかわらず一定にすることができるため、第3型材を長手方向に沿ってまっすぐに引き抜くことができる。
【0063】
また、第1乃至第3実施形態に係る構造体の成形方法は、前記スキンと前記ストリンガとの間の空間に請求項1乃至6のうちいずれか一の項に記載の中子を挿入し、その状態で前記スキンと前記ストリンガとを一体成形した後、前記空間から前記中子を抜き取る。
【0064】
この成形方法によれば、スキンに接する面が部分的に変形しないように中子を比較的硬い材料で形成した場合であっても、第3型材が下になる状態で第3型材を抜き取れば、第1型材及び第2型材が崩れ落ちて、第1型材及び第2型材が抜き取りやすくなる。
【符号の説明】
【0065】
10 第1型材
20 第2型材
30 第3型材
35 スリット
40 第4型材
100 中子
101 構造体
102 スキン
103 ストリンガ
107 空間
200 中子
300 中子