(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】広範囲のエリアの空域を監視するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20230412BHJP
【FI】
G01N21/3504
(21)【出願番号】P 2022515529
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2020075073
(87)【国際公開番号】W WO2021048122
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】102019124092.1
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522089239
【氏名又は名称】グランドパースペクティブ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Grandperspective GmbH
【住所又は居所原語表記】Leuschnerdamm 13,10999 Berlin,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】レネー ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ペーター マース
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-78134(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0137388(US,A1)
【文献】特表2009-505099(JP,A)
【文献】特表2019-504993(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0034868(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106338484(CN,A)
【文献】特開2011-204118(JP,A)
【文献】Rener Braun,A SIXTH SENSE ,WORLD FERTILIZER ,2020年09月
【文献】Marius Rutkauskas et al.,Autonomous multi-species environmental gas sensing using drone-based Fourier-transform infrared spectroscopy,Optics Express,2019年04月01日,Vol. 27, No.7,PP. 9578-9587
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 21/84-G01N 21/958
G01V 1/00-G01V 99/00
H04N 23/00
H04N 23/40-H04N 23/76
H04N 23/90-H04N 23/959
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリアの空域を監視するためのシステムであって、
- パッシブフーリエ変換赤外分光計を備えた少なくとも二つの光センサ(2;2a、2b、2c)を備え、
- 測定データを評価するためおよび前記少なくとも二つの光センサ(2;2a、2b、2c)を制御するためのサーバ(20、30)を備え、
- 各光センサ(2;2a、2b、2c)は調整可能な監視範囲を有し、前記少なくとも二つの光センサ(2;2a、2b、2c)の前記監視範囲は、少なくとも部分的に重なり、
- 前記サーバ(20、30)は、
- 通常の場合には、監視されるエリアの自動走査のために前記光センサ(2;2a、2b、2c)を制御し、ここで前記サーバは、測定データに対
し前記光センサ(2;2a、2b、2c)の位置データに基づいて立体角を割り当て、
- 前記光センサ(2;2a、2b、2c)の各立体角の測定データから受け取られたIR放射線のスペクトル強度分布を導出し、強度分布と既知のガススペクトルとの相関によって少なくとも一つの標的物質を特定し、
- インシデントが生じた場合には、第一光センサ(2;2a、2b、2c)が第一立体角で標的物質を特定したときに、前記第一光センサの監視エリアと前記重なるエリアを走査するように少なくとも一つのさらなる光センサ(2;2a、2b、2c)を制御し、
- 前記少なくとも一つのさらなる光センサ(2;2a、2b、2c)の測定データから前記標的物質の赤外信号のある少なくとも一つのさらなる立体角を特定し、
- 前記第一立体角および前記少なくとも一つのさらなる立体角の立体角情報から前記標的物質の濃度が増加した前記重なりエリアの座標を判断する
ようにセットアップされる、システムであって、
- 各光センサ(2;2a、2b、2c)の前記監視範囲は、立体角に応じて前記エリアの地形および/または造成に起因して遮蔽の結果異なる測定半径を有し、各光センサ(2;2a、2b、2c)の前記監視範囲は、立体角範囲と関連する測定半径とによって定義されること、
- 立体角ごとの測定半径は、エリアの既知の地形および/または造成に基づいて、光センサのためのシステムの設置の間に判断および設定されること、および、
- 測定半径が小さすぎる空間方向の前記少なくとも一つのさらなる光センサの測定信号は評価に含まれないこと
を特徴とする、システム。
【請求項2】
前記サーバ(20、30)は、評価に含まれていない前記少なくとも一つのさらなる光センサの測定信号を、空間的に隣接する測定信号の重み付け数学的補間によって置き換えるようにセットアップされることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
- 少なくとも三つの光センサ(2;2a、2b、2c)が提供されること、および
- 前記サーバ(20、30)は、インシデントが発生したときに、前記第一光センサ(2;2a、2b、2c)の前記監視範囲との監視範囲の重なりが最大である少なくとも一つのさらなる光センサ(2;2a、2b、2c)を起動のために選択するようにセットアップされること
を特徴とする、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
- 前記サーバ(20、30)は、前記光センサ(2;2a、2b、2c)の測定データから前記標的物質の柱密度を判断するようにセットアップされ、柱密度は、ガスの濃度とガス雲の空間的長さとの数学的積であること、および
- 前記サーバ(20、30)は、異なる光センサ(2;2a、2b、2c)の最も高い柱密度の重なるエリアの座標を判断するようにセットアップされること
を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
- 少なくとも一つの静止検出器(60)が提供されること、および
- 前記サーバ(20、30)は、前記少なくとも一つの静止検出器(60)の出力信号を、前記静止検出器(60)の空間エリアにおける前記光センサ(2;2a、2b、2c)の展開のためのトリガ信号として使用するようにセットアップされること
を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも一つのセンサが移動センサ(70)として設計され、前記移動センサは、光センサ(2)としてまたは検出器(60)として設計されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
エリアの空域を監視するためのシステムであって、
- パッシブフーリエ変換赤外分光計を備えた少なくとも一つの光センサ(2;2a、2b、2c)を備え、
- 測定データを評価するためおよび前記少なくとも一つの光センサ(2;2a、2b、2c)を制御するためのサーバ(20、30)を備え、
- 前記少なくとも一つの光センサ(2;2a、2b、2c)は調整可能な監視範囲を有する、
システムであって、
- 少なくとも一つの移動耐空性検出器(70)が提供されること、および
- 前記サーバ(20、30)は、
- 監視エリアを自動的に走査するように前記光センサ(2;2a、2b、2c)を制御し、ここで前記サーバは、測定データに対
し前記光センサ(2;2a、2b、2c)の位置データに基づいて空間角度を割り当て、
- 前記光センサ(2;2a、2b、2c)の測定データから各立体角の受け取られたIR放射線のスペクトル強度分布を導出し、強度分布と既知のガススペクトルとの相関によって少なくとも一つの標的物質を特定し、
- インシデントが生じた場合には、前記光センサ(2;2a、2b、2c)がある立体角で標的物質を特定したときに、前記光センサ(2;2a、2b、2c)によって特定された前記立体角に沿って前記少なくとも一つの移動
耐空性検出器(70)
で前記標的物質の濃度を検出
し、前記検出された前記標的物質の濃度は、前記標的物質の濃度を検出した位置と関連付けられる
ようにセットアップされること
を特徴とする、システム。
【請求項8】
前記サーバ(20、30)は、インシデントが発生したときに、前記標的物質の濃度が最大であ
る第一
光センサ
(2;2a、2b、2c)の監視範囲内の前記移動
耐空性検出器の位置を判断することによって、前記標的物質を探知することを特徴とする、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
エリアの空域を監視するための方法であって、
- 前記エリアを少なくとも部分的に監視するためにパッシブフーリエ変換赤外分光計を備えた少なくとも二つの光センサが使用され、
- 各光センサは監視エリア内の調整可能な立体角範囲を検出し、
- 光センサの前記監視エリアは、少なくとも一つのさらなる光センサの前記監視エリアと少なくとも部分的に重なり、
- 前記光センサは普通は、監視されるエリアを自動的に走査するようにトリガされ、
- 前記光センサの各立体角の測定データから受け取られたIR放射線のスペクトル強度分布が導出され、強度分布と既知のガススペクトルとの相関が実行され、
- インシデントが発生したときには、第一光センサによって第一立体角で標的物質の赤外信号が特定されたときに、前記第一光センサの前記監視エリアと前記重なるエリアを走査するように少なくとも一つのさらなる光センサがトリガされ、
- 前記少なくとも一つのさらなる光センサの測定データから前記標的物質の赤外信号のある少なくとも一つのさらなる立体角が特定され、
- 前記第一立体角および前記少なくとも一つのさらなる立体角の立体角情報から前記標的物質の濃度が増加した前記重なりエリアの座標が判断される、
方法であって、
- 各光センサの監視範囲は、立体角に応じてエリアの地形および/または造成に起因して遮蔽の結果異なる測定半径を有し、各光センサの監視範囲は、前記立体角範囲と関連する測定半径とによって
定義されること、
- 立体角ごとの測定半径は、前記エリアの既知の地形および/または造成に基づいて、前記光センサのためのシステムの設置の間に判断および
設定されること、および、
- 測定半径が小さすぎる空間方向の前記少なくとも一つのさらなる光センサの測定信号は評価に含まれないこと
を特徴とする、方法。
【請求項10】
評価に含まれていない前記少なくとも一つのさらなる光センサの測定信号は、隣接する測定信号の数学的補間によって置き換えられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
- 少なくとも三つの光センサが使用され、
- 前記第一
光センサによって前記第一立体角で標的物質の赤外信号が特定され、
- インシデントが発生したときには、前記第一光センサの前記監視範囲との監視範囲の重なりが最大である少なくとも前記さらなる光センサが起動のために選択される、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
- 柱密度は、ガスの濃度とガス雲の空間的長さとの数学的積として計算され、
- 異なる光センサの最も高い柱密度の重なりエリアの座標が判断される、
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用化学プラント、港湾または重要な輸送インフラ等のエリアの空域を監視するためのシステムおよび方法に関する。本発明は、特に本システムおよび本方法で使用する光センサにも関する。特に、本発明は、ガス漏れおよび潜在的に有害なガス雲の検出および位置確認のためのものである。
【背景技術】
【0002】
上記のエリアでは、漏れまたは機器の機能不良により、環境に害を及ぼすガスが漏れ出す可能性があり、広範囲にわたる影響を及ぼす事故が引き起こされる可能性があり、そのエリアにいる人々の健康と生命にリスクが及ぶ可能性がある。
【0003】
エリアの一般的な監視は、一種類のガスのみ、または同時に少数の化学ガスを感知できる化学電気センサを使用して行われる。加えて、センサは、周囲空気中にガスが存在する場所に位置しなければならない。そのため、使用されるセンサの数が多い。
【0004】
さらに、フーリエ変換赤外分光計(FTIR)の使用が知られており、エリア上方の観測される立体角内の組成を様々な化学ガスの存在について短い時間間隔で判断しうる。これを用いて、望ましくないガスの漏れ出しを検出し、三角測量によって位置を判断しうる。しかし、既知の方法では、特に地形的障害物によって可視性が損なわれるときに、良好な空間分解能を欠き、故に漏出ポイントの確実な位置確認を欠く。
【0005】
従来技術から既知のFTIR分光計は、光センサとして働く。分光計自体は静止しており、その赤外光学系は上向きの角度に合わせられる。周囲光が旋回鏡によって赤外光学系に向けられ、このようにして環境が走査される。しかし、監視範囲は小さな立体角範囲に制限される。
【0006】
特許文献1は、スペクトル分解された画像を産出するが測定されるエリアの空間分解能はない、遠隔感知のためのイメージング分光計を開示する。
特許文献2は、三つの検出器が三角測量によって放出源のすぐ上方の環境を判断する、生産施設の近くに存在するガス状材料の連続監視を開示する。
【0007】
したがって、本発明は、広範囲のエリアの空域を監視するためのシステムおよび方法を改善するという技術的問題に基づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許第2 088 409(B1)号
【文献】米国特許第4,795,253(A)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、前述の技術的問題は、以下に記載されるタイプおよび様式のシステム、方法および光センサによって解決される。
【0010】
本発明の第一の教示によれば、エリアの空域を監視するためのシステムは、パッシブフーリエ変換赤外分光計を備えた少なくとも二つの光センサと、測定データを評価するためおよび少なくとも二つの光センサを制御するためのサーバとを装備し、各光センサは調整可能な監視範囲を有し、少なくとも二つの光センサの監視範囲は、少なくとも部分的に重なり、サーバは、通常の場合には、監視されるエリアの自動走査のために光センサを制御し、ここでサーバは、測定データに対し各場合に光センサの位置データに基づいて立体角を割り当て、光センサの各立体角の測定データから受け取られたIR放射線のスペクトル強度分布を導出し、強度分布と既知のガススペクトルとの相関によって少なくとも一つの標的物質を特定し、インシデントが生じた場合には、第一光センサが第一立体角で標的物質を特定したときに、第一光センサの監視エリアと重なるエリアを走査するように少なくとも一つのさらなる光センサを制御し、少なくとも一つのさらなる光センサの測定データから標的物質の赤外信号のある少なくとも一つのさらなる立体角を特定し、第一立体角および少なくとも一つのさらなる立体角の立体角情報から標的物質の濃度が増加した重なりエリアの座標を判断するようにセットアップされる。このシステムは、各光センサの監視範囲が、立体角に応じてエリアの地形および/または造成に起因して遮蔽の結果異なる測定半径を有し、各光センサの監視範囲は、立体角範囲と関連する測定半径とによって定義されること、および、測定半径が小さすぎる空間方向の少なくとも一つのさらなる光センサの測定信号は評価に含まれないことを特徴とする。
【0011】
システムは、特に複数の光センサを備えたより大きなシステムで、しかしそれだけでなく、少なくとも二つの光センサの監視エリアが各々少なくとも部分的に重なれば十分であるように理解される。したがって、監視エリアの重なりは必然的に対で必要であるが、光センサの全ての対では必要ない。したがってシステム全体が、少なくとも二つの光センサの全ての監視エリアが少なくとも部分的に重なるいくつかのシステムの組み合わせとして理解されることもできる。
【0012】
前述のサーバは、評価ユニットまたは評価および制御ユニットとも呼称されうる。
【0013】
サーバは、好ましくは互いから分離されたいくつかのサブユニットを有することもでき、サブユニットは、好ましくは光センサに各々統合されるかまたは少なくとも隣接して設けられる。例えば、各センサは一つのサブユニットを有することができ、これらが一緒になってサーバまたは評価ユニットを形成する。さらに、サーバの様々なタスクがサブユニットにより行われうる。例えば、サーバの第一サブユニットは測定データを評価することができ、第二サブユニットは一つ以上の光センサを制御することができる。
【0014】
好ましい実施形態では、サーバは、二つ以上の光センサを制御する、および/または二つ以上の光センサからの測定データを評価する、中央制御ユニットとして設計される。中央制御ユニットは、全てのセンサを制御し、および/またはシステムの全ての光センサの測定データを評価するのが特に好ましい。サーバは、光センサから大きな空間距離に位置しうるのが好ましい。さらに、サーバはサーバネットワークの変化するサーバであることもできる。例えば、測定データの評価および/または光センサの制御は、一つ以上のサーバによって提供されるクラウドを使用して行われることもできる。
【0015】
立体角内において、測定半径は、光センサが測定信号を記録できる最大距離に対応する。測定半径は、光センサが実現できる最大測定半径でありうる。しかし、測定半径は、障害物による遮蔽に起因してその空間的伸長が制限される、すなわち、より短くなる可能性もある。したがって光センサは、この立体角において障害物の背後のエリアの測定データを生成できない。立体角ごとの測定半径は、エリアの既知の地形および/または造成に基づいて、光センサのためのシステムの設置の間に判断および設定される。
【0016】
光センサの測定半径は、立体角に応じて調整可能であるのが好ましい。光センサから最大距離まで、または遮蔽を引き起こす障害物まで、測定半径が立体角ごとに設定される。システムは、好ましくは二次元および/または三次元マップデータから、立体角の測定半径を自動的に定義するように設計されるのが好ましい。例えば、システムは、監視対象エリアのデジタルツインおよび/または単純化された三次元モデルを使用して測定半径を定義するようにセットアップされうるのが好ましい。システムは、光センサのカメラによって障害物情報を取得し、障害物情報を使用して測定半径を定義するようにセットアップされるのがさらに好ましい。障害物情報は、センサの光軸に沿って設けられるのが好ましい光学的障害物に対応するのが好ましい。システムは、複数の光センサからの障害物情報を使用して測定半径を定義するようにセットアップされるのが特に好ましい。
【0017】
立体角は、光センサが解像できる空間的立体角範囲であるとさらに理解される。立体角の立体角範囲、すなわち光センサの空間分解能は、システム内で調整可能でありうる。したがって立体角範囲の各立体角で、関連する測定半径は、光センサが測定信号を記録できる最大距離に対応する。立体角範囲の全ての立体角で、光センサが光信号を受信し、対応する測定信号を提供することができる。
【0018】
したがって、光センサからの測定信号は、その光センサの関連する測定半径が、別の光センサの監視範囲との所要の重なる範囲にまで及ぶ場合にのみ使用される。
【0019】
サーバは、サーバの一つの構成要素のみが上述の機能の一つのためにセットアップされる場合であっても、上述の機能の一つのためにセットアップされるのが好ましい。例えば、サーバは、監視エリアを自動的に走査するように光センサを制御するため、および/または光センサの位置データに基づいて測定データに立体角を割り当てるために、評価ユニットとしてセットアップされうる。したがって、第一光センサが標的物質を特定した場合に、サーバは、第一センサの監視エリアとさらなるセンサの監視エリアとの重なるエリアを走査するようにさらなるセンサを制御する。これによりシステムは、第一光センサによる標的物質の特定を検証することができるのが好ましい。
【0023】
さらに、サーバは、評価に含まれていない少なくとも一つのさらなる光センサの測定信号を、空間的に隣接する測定信号の重み付け数学的補間によって置き換えるようにセットアップされる。隣接する測定信号は、立体角範囲において測定半径が小さすぎる立体角に空間的に隣接する立体角に提供される測定信号である。
【0024】
さらに、少なくとも三つの光センサが提供され、サーバは、インシデントが発生したときに、第一光センサの監視範囲との監視範囲の重なりが最大である少なくとも一つのさらなる光センサを起動のために選択するようにセットアップされる。
【0025】
サーバは、標的物質が特定される第一光センサの立体角をさらなるセンサの監視範囲とマッチさせ、第一光センサが標的物質を特定する立体角での第一センサの監視範囲と監視範囲が重なるさらなる光センサを作動のために選択するようにセットアップされるのが好ましい。
【0026】
好ましい様式では、サーバは、選択された光センサの位置が、標的物質が検出された第一光センサの立体角範囲の方向にある場合には、選択された光センサを使用しないようにセットアップされる。そのような場合には、第一光センサの監視範囲と可能な限り大きな重なりを有する次善の光センサが選択されるのが好ましい。
【0027】
このようにして、標的物質が特定される立体角の第一センサの光軸と、重なるエリアを走査するように制御されるさらなる光センサの光軸とが、互いに対してある角度に設けられることが達成されうる。標的物質が特定される光センサの立体角からさらに標的物質の位置が、好ましくは三角測量によって判断されうる。
【0028】
さらに、サーバは、光センサの測定データから標的物質の柱密度を判断するようにセットアップされれば有利であり、柱密度は、ガスの濃度(ppm単位で測定)とガス雲の空間的長さ(m単位で測定)との数学的積であり、サーバは、異なる光センサの最も高い柱密度の重なるエリアの座標を判断するようにセットアップされる。
【0029】
好ましい実施形態では、システムおよび特にサーバは、インシデントが発生したときに第一光センサによって第一立体角における標的物質の柱密度を判断し、第一立体角に隣接する立体角における標的物質の柱密度を判断するようにセットアップされる。第一立体角に隣接する立体角は、第一立体角に連続的に接するのが好ましい。しかし、隣接する立体角が第一立体角から所定の角距離を有するのも好ましい。例えば、第一立体角の値が45°の場合、隣接する立体角は44°および46°の値を有してもよい。
【0030】
好ましいさらなる展開によれば、システムおよび特にサーバは、第一立体角および隣接する立体角から標的物質の柱密度が最も高い立体角を特定し、第一光センサによって、柱密度が最も高い立体角に隣接する立体角における標的物質の柱密度を判断するようにセットアップされる。このようにシステムは、第一ステップで判断され、立体角に割り当てられた標的物質の柱密度を比較し、標的物質の最も高い柱密度が判断される立体角を判断するようにセットアップされる。続いて、標的物質の柱密度が最も高いこの立体角に隣接する立体角について、標的物質の柱密度が再度判断される。標的物質の柱密度が未知の立体角が、隣接する立体角として選択されるのが好ましい。例えば、上述のように44°の立体角で標的物質の最も高い柱密度が判断された場合、さらに43°の値の立体角について標的物質の柱密度が判断される。
【0031】
システムおよび特にサーバは、インシデントが発生したときに標的物質の柱密度が最も高い第一光センサの監視エリアの立体角を判断するようにセットアップされるのが好ましい。この目的で、システムは、標的物質の柱密度が最大の立体角が判断されるまで上述のステップを実行するようにセットアップされる。例えば、43°および45°で44°の立体角よりも標的物質のより低い柱密度が判断される場合、44°の値の立体角が、標的物質の柱密度が最も高い監視エリアの立体角である。しかし、システムは、監視エリア内の標的物質の柱密度のいくつかの極大値を判断するように設計されることもできる。
【0032】
システムおよび特にサーバは、インシデントが発生したときに第一光センサの立体角に対応する標的物質の第一濃度勾配を判断するようにセットアップされるのが好ましい。濃度勾配は、離散立体角ステップごとの標的物質の柱密度の変化の度合である。
【0033】
好ましいさらなる展開では、システムおよび特にサーバは、インシデントが発生したときに、第一光センサの立体角に対応する第一濃度勾配およびさらなる光センサの類似のさらなる濃度勾配から、標的物質の多次元濃度勾配を判断するようにセットアップされる。濃度勾配が複数のセンサの立体角で判断され、システムによって組み合わされて多次元濃度勾配が判断されるのが好ましい。例えば、多次元濃度勾配は、第一空間方向および第一空間方向に対して直角の空間方向の標的物質の柱密度の変化の度合でありうる。
【0034】
システムおよび特にサーバは、判断された標的物質の柱密度を標的物質の限界値と比較するようにセットアップされるのが好ましい。システムおよび特にサーバは、判断された標的物質の柱密度が標的物質の限界値を好ましくは所定の期間にわたり超える場合に警報をトリガするようにセットアップされるのが特に好ましい。
【0035】
それぞれの立体角の柱密度を表す測定データの取得が、この測定データからそれぞれの柱密度を判断する前に行われることもできる。例えば、光センサがいくつかの立体角での測定データを取得することができ、その後、それぞれの立体角で存在する柱密度または標的物質の柱密度が最も高い立体角の判断が、サーバによって、評価ユニットとしてのその機能において実行される。測定データの取得と柱密度および/または最も高い柱密度の判断とは、同時にまたは一部同時に行われることもできるのが好ましい。
【0036】
好ましい様式では、サーバは、インシデントが発生したときに空間走査が増加した測定のために光センサを制御するようにさらにセットアップされる。その際には、走査スピードが低減され、必要に応じて、より良好な信号対雑音比を得るために一つの立体角での測定時間が延長される。
【0037】
サーバは、様々な光センサの最も高い柱密度の重なりエリアの座標を判断し、この座標をマップ表現とリンクしてインシデントの二次元表現を作成し、および/または、この座標をビデオカメラの画像とリンクしてインシデントの視覚的表現を作成するようにさらにセットアップされるのが好ましい。これにより、システムのオペレータのために迅速かつ明確な情報が作成される。
【0038】
さらに、少なくとも一つのアクティブ赤外放射線源が提供されることができ、光センサが定義された測定経路に沿って赤外光を拾う。これにより、これらの測定経路に沿ったシステムの測定精度が向上する。
【0039】
「サーバがセットアップされる」という語は、サーバがコンピュータ環境を備えたコンピュータとして設計され、好適なマイクロチップ、メモリチップまたは記憶媒体、ならびに外部の必要に応じて遠隔でもあるデバイスへのインタフェースが提供され、記載された機能を技術的に実現するために少なくとも一つのコンピュータプログラムが存在することを意味する。
【0040】
さらに好ましい様式では、少なくとも一つの静止検出器が前述のシステムに提供されることができ、サーバは、少なくとも一つの静止検出器の出力信号を、静止センサの空間エリアにおける光センサの展開のためのトリガ信号として使用するようにセットアップされる。したがって、インシデントが発生したときに静止測定データを使用して標的物質の特定がトリガされうる。静止検出器がシステム内の漏出のエリアに位置する場合には、静止検出器の測定信号を使用して特定の部屋エリアにおけるインシデントを判断し、それにより上述の光センサの使用を起動またはトリガすることができる。
【0041】
さらに、システムは、考えられる複数の漏出ポイントを監視するために監視エリアに複数の静止検出器を有し、このようにして異なる空間エリアでの光センサの使用をトリガすることができる。
【0042】
さらに好ましい様式では、システムは、インシデントが発生したときに複数の検出器から第一光センサの第一立体角に対応する静止検出器を選択するようにセットアップされうる。静止検出器がさらに標的物質を特定する場合には、システムは標的物質の特定の妥当性をチェックする。代わりにまたは加えて、標的物質の特定を妥当にするために、システムは外部静止検出器から静止測定データを受信するようにセットアップされるようにしてもよい。このようにして、システムは、一つ以上の静止検出器を備えた既存のガス監視システムに組み込まれうるのが有利である。したがって、外部静止検出器からの静止測定データも本発明によるシステムによって使用されうる。静止検出器の制御は、好ましくは、静止検出器の測定データの受信、静止検出器の測定データの入手、測定データの取得のための静止検出器の起動、ならびに/または静止検出器に接続された評価ユニットからの測定データの受信および/もしくは入手でありうる。
【0043】
静止検出器は、ガスセンサとも呼称される電気化学検出器、PID検出器(光イオン化検出器)、FID検出器(炎イオン化検出器)、放出熱量検出器、ガスの反応生成物の光電子検出とも呼称されるDraegerチップ測定システム(CMS)、直読式Draeger検知管、設計も異なる複数の個別の検出器を備えたマルチガス測定器、広帯域IR放射線とダブル検出器(測定および基準検出器)とを備えた小型ガス測定セルとして設計された赤外センサ、レーザ分光器検出器、フィルタ付き赤外カメラ、UVおよびVIS分光計(例えば格子分光計または光スリット付き分光計)、LIDARセンサ、光音響分光法検出器、近赤外検出器、漏れ検出のための音響検出器、質量分析計、イオン易動度分光計としてまたはガスクロマトグラフとして設計されるのが好ましい。
【0044】
前述の実施形態の光センサおよび検出器は、監視対象プラント内または監視対象敷地内の固定位置に設置され、したがって互いに固定された空間関係で設けられる。
【0045】
システムのさらに好ましい実施形態では、少なくとも一つのセンサが移動センサとして設計されることができ、この移動センサは光センサとしてまたは検出器として設計される。
【0046】
移動センサは、地上遠隔制御もしくは有人車両上で携帯され、またはドローン等の航空車両によって移動されることができる。移動センサは、移動中に測定を行うように適合されるのが好ましい。さらに、システムは、移動センサによって検出された測定データおよび/または測定信号を、移動センサの対応する位置値に割り当てるようにセットアップされるのが好ましい。
【0047】
移動センサ自体が上述のタイプの光センサである場合には、この光センサは第二センサとして第一静止光センサと一緒にシステムを形成しうる。
【0048】
移動センサが上述の検出器として設計される場合には、少なくとも二つの光センサによって検出されるインシデントの空間エリア内の少なくとも一つの検出器によって直接、単数または複数の標的物質の濃度が測定されうる。この現場測定は、システムによって判断されたデータの妥当性チェック、または現場での濃度の具体的判断に役立つ。
【0049】
したがってシステムは、第一光センサが第一立体角で標的物質を特定するインシデントにおいて、標的物質を特定するために移動センサを第一センサの監視範囲内に移動するようにセットアップされるのが好ましい。
【0050】
上記の技術的問題は、本発明のさらなる教示にしたがって、パッシブフーリエ変換赤外分光計を備えた少なくとも一つの光センサと、測定データを評価するためおよび少なくとも一つの光センサを制御するためのサーバとを備えたエリアの空域を監視するためのシステムであって、少なくとも一つの光センサは調整可能な監視範囲を有し、少なくとも一つの移動耐空性検出器が提供され、サーバは、監視エリアを自動的に走査するように光センサを制御し、ここでサーバは、測定データに対し各場合に光センサの位置データに基づいて空間角度を割り当て、光センサの測定データから各立体角の受け取られたIR放射線のスペクトル強度分布を導出し、強度分布と既知のガススペクトルとの相関によって少なくとも一つの標的物質を特定し、インシデントが生じた場合には、光センサがある立体角で標的物質を特定したときに、光センサによって特定されたその立体角に沿って少なくとも一つの移動検出器で位置に依存した様式で標的物質の濃度を検出するようにセットアップされる、システムによって解決される。
【0051】
したがって、システムおよび好ましくはサーバは、第一センサの監視エリア内の標的物質を探知するために移動検出器を移動させるようにセットアップされる。システムは、監視エリアを通る予め決定された経路に沿って移動検出器を移動させるようにセットアップされるのが好ましい。予め決定された経路は、グリッドでありうるのが好ましい。システムは、第一立体角の第一光センサの光軸に対応する軌道に沿って移動検出器を移動させるようにセットアップされるのが好ましい。システムは、標的物質の濃度が最大である第一センサの監視エリア内の移動検出器の位置を判断することによって、標的物質を探知するのが好ましい。
【0052】
上記のシステムは、標的物質の検出のためのFTIR分光計を備え、監視対象エリアの空域の部分セクションをFTIR分光計上に撮像するための赤外光学系を備えるのが好ましく、ビデオカメラを備え、FTIR分光計と赤外光学系とカメラとによって形成されるセンサユニットを位置合わせするためのポジショニングユニットを備えた、エリアの空域を監視するための光センサであって、赤外光学系およびカメラは同じ立体角を検出し、特に、赤外光学系およびカメラの光軸が互いに平行に位置合わせされる、光センサを使用する。
【0053】
これは、全体として様々な立体角に調整されうる、したがって観測方向にほとんど制約がない光センサを指定する。したがって、従来技術から知られるFTIR分光計を備えた光センサの場合よりも光センサが小さく、より簡単に設置されうる。
【0054】
特に、赤外光学系は、放物面鏡と副鏡とを備えたカセグレン望遠鏡として設計される。カセグレン望遠鏡としての設計により、監視対象空域の部分セクションの撮像が簡素化され、放物面鏡の使用により、記録される放射線の強度が増加し、ひいてはFTIR信号の強度も増加する。
【0055】
有利なやり方では、カメラは赤外光学系の横に設けられる。したがって、同じくエリアの部分セクションを撮像するカメラは、必要に応じて望遠レンズを有し、拡大画像を産出しうる。カメラはその場合、赤外光学系の光路に干渉しないが、測定結果のカメラ画像との正確な重ね合わせのために補正されねばならない視差を有する。
【0056】
あるいは、カメラは、赤外光学系の光軸内、特に副鏡の箇所またはその前に設けられることもできる。このようにして、カメラは視差ずれなしで、赤外光学系の光路に影響せずにビデオ画像を記録することができる。
【0057】
別の選択肢は、カメラが、赤外光学系の横に設けられたカメラを備え、赤外光学系の光軸内に設けられたカメラを備えたカメラシステムとして設計されることである。これにより二つのカメラの利点が組み合わされ、横のカメラは高分解能の画像を生成でき、光軸内に設けられたカメラは視差のない画像生成に役立つ。
【0058】
ポジショニングユニットは通信デバイスを含み、通信デバイスによって受信される制御コマンドに基づいてセンサユニットを位置合わせするようにセットアップされるのが好ましい。
【0059】
したがって、ポジショニングユニットは、制御信号の無線受信のために設計されるのが好ましい、遠隔制御可能ポジショニングユニットである。好ましい実施形態では、遠隔制御可能ポジショニングユニットは、制御信号を受信するため、ならびに測定データおよび/または測定信号を伝送するためのアンテナユニットを有する。このようにして、光センサの物理的接続が回避されうる。その結果、光センサ間の距離が大きくても、システムの設置が迅速かつ簡単に可能になる。遠隔制御可能ポジショニングユニットを備えた光センサは、物理的または有線電源を有することもできる。
【0060】
光センサは、信号を受信および/または伝送するための通信デバイスを有するのが好ましい。信号は、アナログおよび/またはデジタル信号でありうる。通信デバイスは、有線および/または無線でありうる。
【0061】
通信デバイスは、WLANまたは移動無線、特にGPRS、UMTS、LTE、LTE-Advanced、5Gを介して信号を受信および/または伝送するように設計されるのが好ましい。ポジショニングユニットは、受信信号を使用して別のセンサの監視エリアと重なるエリアを走査するために赤外光学系を自動的に移動させるようにセットアップされるのが好ましい。
【0062】
光センサは、さらなるセンサから標的検出信号を受信し、標的検出信号に応答して、標的を検出するためにさらなるセンサの監視エリアとの重なりエリアを自動的に走査するように適合されるのが好ましい。標的物質検出信号は、さらなるセンサが標的物質を特定しているという情報を少なくとも含む。さらに、標的物質検出信号は、さらなるセンサが標的物質を特定している立体角を含むのが好ましい。光センサは、その監視エリア内に標的物質を特定したことに応答して標的検出信号を伝送するように設けられるのが好ましい。標的検出信号の受信は、さらなる光センサからの直接受信の代わりまたは補足としての、ユニット、例えばサーバを介した間接受信であってもよい。
【0063】
本発明のさらなる教示によれば、上に概説した技術的問題は、エリアの空域を監視するための方法であって、エリアを少なくとも部分的に監視するためにパッシブフーリエ変換赤外分光計を備えた少なくとも二つの光センサが使用され、各光センサは監視エリア内の調整可能な立体角範囲を検出し、光センサの監視エリアは、少なくとも一つのさらなる光センサの監視エリアと少なくとも部分的に重なり、光センサは普通は、監視されるエリアを自動的に走査するようにトリガされ、光センサの各立体角の測定データから受け取られたIR放射線のスペクトル強度分布が導出され、強度分布と既知のガススペクトルとの相関が実行され、インシデントが発生したときには、第一光センサによって第一立体角で標的物質の赤外信号が特定されたときに、第一光センサの監視エリアと重なるエリアを走査するように少なくとも一つのさらなる光センサがトリガされ、少なくとも一つのさらなる光センサの測定データから標的物質の赤外信号のある少なくとも一つのさらなる立体角が特定され、第一立体角および少なくとも一つのさらなる立体角の立体角情報から標的物質の濃度が増加した重なりエリアの座標が判断される、方法によっても解決される。この方法は、各光センサの監視範囲が、立体角に応じてエリアの地形および/または造成に起因して遮蔽の結果異なる測定半径を有し、各光センサの監視範囲が、立体角範囲と関連する測定半径とによって判断および固定されること、および、測定半径が小さすぎる空間方向の少なくとも一つのさらなる光センサの測定信号は評価に含まれないことを特徴とする。
【0066】
この方法を実行するときには、上述の少なくとも一つの光センサが特に使用されうる。
【0067】
好ましい様式では、評価に含まれていない少なくとも一つのさらなる光センサの測定信号が、隣接する測定信号の数学的補間によって置き換えられる。
【0068】
さらに、少なくとも三つの光センサが使用されることができ、第一センサによって第一立体角で標的物質の赤外信号が特定され、インシデントが発生したときには、第一光センサの監視範囲との監視範囲の重なりが最大である少なくともさらなる光センサが起動のために選択される。
【0069】
この文脈では、選択された光センサの位置が、標的物質が検出された第一光センサの立体角範囲の方向にある場合には、選択された光センサが使用されなければ有利である。なぜなら、その場合には検出された標的物質の立体角とさらなる光センサの必要な立体角との間に三角測量のための十分な角度がないためである。そのような場合には、次に、第一光センサの監視範囲と可能な限り大きな重なりを有する次善の光センサが選択されうる。
【0070】
さらに、ガスの濃度(ppm単位で測定)とガス雲の長さ(m単位で測定)との数学的積として柱密度が計算されるのが好ましい。したがって、前述の方法により雲の長さが判断された後に検出された標的物質に濃度が割り当てられうる。
【0071】
さらに好ましい様式では、インシデントが発生したとき、空間走査が増加した測定のために光センサがトリガされ、および/または様々な光センサの最も高い柱密度の重なりエリアの座標が判断され、および/または座標がマップ表現にリンクされてインシデントの二次元表現が作成され、および/または座標がビデオカメラの画像にリンクされてインシデントの視覚的表現が作成され、および/または少なくとも一つのアクティブ赤外放射線源を用いて光センサからの赤外光が記録される。
【0072】
静止測定データ、好ましくは外部静止センサからの静止測定データが受信され、インシデントが発生したときに、静止測定データを使用して標的物質の特定の妥当性がチェックされる、方法が好ましい。
【0073】
したがって、上述のシステムおよび方法では、追加の光センサを駆動することにより、標的材料の検出の精度が大幅に向上しうることが認められている。さらに、光センサの自由な視界を損なう地形をもつエリアでは、監視エリアを判断するためにシステムを設置する際にそのエリアの地形が考慮されれば、外乱インシデントの位置確認が迅速かつ確実に実行されうることが認められている。なぜなら、空間方向だけでなく、エリアによって、建物によっておよび/または他の技術設備によって制限される関連する測定半径も、監視エリアを判断するために用いられるためである。なぜなら、光センサはクリアな視界がある範囲までしか測定できないためである。外乱インシデントの位置確認はその結果、空間範囲が実際に重なる測定データだけを用いて実行される。
【0074】
以下では、記載されたシステム、光センサ、および記載された手順を詳細に説明する。
【0075】
記載されたシステムおよび方法は、ガス漏れのほぼリアルタイムの特定および位置確認のため、およびインシデントが発生したときの緊急サービスのためのマップベースの状況評価のため、ならびに監視エリア内のまたはその周囲に沿ったガス状有害物質の連続的な放出およびイミシオン(独:Immission,英:immission)測定のために使用される。
【0076】
空域監視システムとも呼称されうるこれらのシステムは、二視点または多視点の全体的システムを形成する光センサとしての少なくとも二つであるが原則として任意の数のパッシブで自由に配置可能なFTIR遠隔感知分光計のネットワーキングに基づく。
【0077】
任意に、パッシブ赤外分光法が個々のアクティブ赤外測定セクションと組み合わせられうる。
【0078】
パッシブ測定技術により、大きな監視エリアまたは空域のエリア全体の走査が可能になる。個々のアクティブ測定セクションの追加により、所定のアクティブ測定セクションに沿った多数のガスの高精度なバックグラウンド濃度判断(放出およびイミシオン測定)、ならびに拡張された標的物質ライブラリおよびより低い検出限界が可能になる。アクティブモードおよびパッシブモードは、互いに独立して、同じ光センサを用いて動作しうる。
【0079】
システムの構造を以下に説明する。
【0080】
選択された位置、好ましくは例えば屋根、煙突またはマストの上など監視対象エリアを良好に見渡せる位置で、光センサが屋外に、固定して、しかし向きに関しては自由に配置可能に、連続監視のために設置される。パッシブ用途では、光センサが、所望の局所分解能に応じてクリアな視界を想定して最大約1~4kmの測定半径を可能にする。走査スピードと達成可能な分解能とは相互に依存し、360°走査の一般的な走査スピードは1~10分の範囲内である。したがって、この用途において走査中に光センサが横断する経路が定義される。システムの重要な部分は、より集中的に走査される、すなわち経路から完全にまたは一部除かれてもよい例えば管理棟に必要な立体角範囲よりも大きい立体角範囲で走査される。
【0081】
少なくとも二つの光センサの手順を組み合わせた評価を可能にするために、光センサのうちの少なくともいくつかの監視エリアが重なる。任意に、アクティブ赤外放射線源が、選択された測定セクションに沿って最大数百メートルの距離で永久的に設置され、それらに割り当てられた光センサと位置合わせされる。
【0082】
日常の場合には、光センサは分散的かつ自律的に働くが、測定データは、全体的システムとしての組み合わせ評価および制御を可能にする中央システムとしてのサーバに集中するのが好ましい。
【0083】
光センサは、遠隔ガス検出システムの個々の測定ポイントを表し、FTIR分光計を、分光計の視野を縮小するための赤外光学系、分光計を位置合わせするためのポジショニングユニット、ならびにビデオカメラ、ならびに好ましくは光センサまたは外部サーバに記憶される評価および制御ソフトウェアと組み合わせて、ガスの遠隔検出のために前述の実施形態の一つにおいて使用する。ポジショニングユニットは、360°の方位角および少なくとも+/-60°の仰角での自由な位置合わせを可能にする。
【0084】
FTIR分光計は、ポジショニングユニットによってトリガされず、測定データの連続ストリームを提供するのが好ましい。しかし、光センサは、インシデントが発生したときだけ測定データを連続的に提供し、走査の間に規則的な間隔の立体角の測定データを提供するようにすることもできる。例えば、測定データは2°ごとに提供されることができ、これにより連続的な測定データの取得と比較して評価能力が節約されうる。したがって、ポジショニングユニットは、FTIR分光計を赤外光学系およびカメラと一緒に一つのセンサユニットとして移動する。ポジショニングユニットの角速度を調整することにより、測定の空間サンプリングが制御される。ポジショニングユニットの位置タイムスタンプを割り当てることにより、測定データが立体角に割り当てられる。加えて、標的物質雲の時間発展を記録するために測定タイムスタンプが割り当てられうる。
【0085】
光センサの一部としてFTIR分光計と位置合わせされたビデオカメラが、FTIR分光計の視界方向のビデオ画像を連続的にまたは所定の位置で提供する。最大360°パノラマ視界の任意のサイズおよび表示形式の一貫したビデオ画像を形成するために、隣接するビデオ画像がスティッチングアルゴリズムを使用してつなぎ合わせられうる。
【0086】
化学的または分光学的情報、すなわち測定結果をビデオ画像と重ね合わせることにより、測定データから二次元の空間的に分解されたガス分布が視覚化される。測定結果のXおよびY方向のすなわち光センサによって走査された二次元画像上のバイリニア補間、およびビデオ画像との追加的または代替的重ね合わせにより、特定されたガス雲の直感的に把握可能な二次元視界が提供される。
【0087】
測定される角度範囲の設定に関わらず、測定される角度範囲内の自由に選択可能な部分範囲の結果画像の表示が、自由に選択可能な表示比率で可能である。
【0088】
経時的に、光センサは結果画像のストリームと、タイムスタンプおよび空間角度スタンプ付き測定結果のストリームとを生成する。
【0089】
赤外分光法を使用した遠隔ガス感知は、長波赤外放射線を測定し、測定された赤外スペクトルを標的物質の既知のスペクトルシグネチャの存在につき評価する。このようにして、ガス状標的物質が最大数キロメートルの長距離から特定され、定量化もされることができる。
【0090】
FTIR分光計は、赤外光学系、例えばカセグレン望遠鏡またはレンズ光学系によって受け取られ、FTIR分光計に連結され、マイケルソン干渉計に通されて検出器面上に集束される赤外放射線を受け取る。干渉計により、インターフェログラムが測定され、これがフーリエ変換によって赤外スペクトルに変換される。干渉計内の走査鏡の移動範囲は、一般に0.75~10mmの範囲内である。
【0091】
好適なFTIR分光計は、例えば低温冷却されたテルル化カドミウム水銀(MCT)単一検出器をラジオメトリック較正ユニットと組み合わせて使用する。ラジオメトリック較正に基づいて、測定された赤外スペクトルが較正された放射温度スペクトルに変換され、スペクトル評価アルゴリズムに組み込まれる。
【0092】
スペクトル評価では、標的物質ならびに水、CO2および他のガス等の大気妨害物質のスペクトルシグネチャに加え、バックグラウンドをモデル化するための数学関数が計算される。このフィッティング計算の結果、計算された標的物質シグネチャの計算された信号高さおよび相関係数が、物質固有の限界値と比較される。所定の限界値を超える場合には標的物質が特定されたものと考えられるが、これは自動的に行われ、システムによるさらなるアクションを直接引き起こしうる。
【0093】
パッシブIR遠隔感知の原理は、人工放射線源から独立して働き、日中および夜間の両方で、位置、測定方向および時期に関わらず、環境により分光計のベアリングの方向(独:Peilrichtung,英:direction of bearing)に放出される熱放射を分析することによって機能する。ガスを特定するために必要な条件は、視界またはベアリング方向の測定対象のガスすなわち標的物質の放射温度とバックグラウンドの放射温度との間の少なくとも小さな温度差の存在である。測定方向でガスがバックグラウンドより暖かい場合にはスペクトルシグネチャは放出に現れ、バックグラウンドより冷たい場合には吸収に現れる。
【0094】
パッシブ赤外遠隔感知は、例えば約700~1,400cm-1の波数範囲内の赤外放射線の長波スペクトル範囲を使用する。この大気の窓内では、大気が信号の過度の減衰を引き起こさず、最大数キロメートルの長距離で測定が可能である。最大測定範囲の制限要因は一般に、存在する障害物に起因する検出器の視野、測定対象の雲のサイズ、および大気に起因する光学測定経路に沿った信号の減衰であり、直接的見通しが常に必須要件である。一般的な用途では、最大1~5kmの測定範囲で測定が行われる。
【0095】
インシデントを検出するには、まず標的物質、すなわち望ましくないガスを特定する必要がある。この目的のために、分析される測定信号の信号対雑音比が十分である場合に、干渉計の出力で対応する出力信号が生成される。したがって、検出される立体角での標的物質の特定は、インシデントケースのトリガにつながる。
【0096】
加えて、パッシブな一回測定において、測定方向の柱密度(単位ppm-m)すなわち雲の密度と雲の長さとの積の判断の形で、ガスまたは標的物質の定量化が実行されうる。したがって柱密度は、測定経路に沿って積分された密度に対応する。
【0097】
柱密度のスペクトル定量化では、ガス温度の仮定の下、標的物質の吸収断面積を考慮して、ランベルト-ベールの法則によるアプローチが可能である。別のアプローチは、ガス温度もモデルパラメータとして計算される非線形フィッティングアルゴリズムによる定量化である。
【0098】
アクティブ測定は、パッシブ測定とは対照的に、個々の測定の信号対雑音比を高めるために一つ以上の遠隔アクティブ赤外放射線源を使用する。これにより、一方でより低い標的物質濃度の測定が可能になり、他方で測定の測定可能スペクトル範囲が拡張され、より多数の物質が測定されることができる。アクティブ測定は、遠隔に置かれた放射線源の存在によって測定経路に沿った視認方向が制限され、いつでも自由に配置されることはできない。
【0099】
アクティブ赤外放射線源は、その放射線が赤外光学系を通して向けられる、光センサと位置合わせされる広帯域エミッタであるのが好ましい。狭帯域エミッタも使用されうる。
【0100】
アクティブ測定では、光センサは、一般に数十メートル~数百メートルの距離で設置された測定経路に沿った指向性赤外放射線源と位置合わせされる。光センサは、無変調の広帯域赤外放射線を源から受け取り、赤外スペクトルを測定する。測定時に放射線源と光センサとの間の光学測定経路に沿って位置していたガスが、測定経路に沿った標的物質の濃度ならびに雲の長さに大きく依存するその物質固有のIR吸収断面積に応じて、源の赤外放射線の吸収を引き起こす。スペクトルの熱バックグラウンドが判断され、測定されるスペクトルから減算される。
【0101】
アクティブ放射線源を追加することにより、測定可能スペクトル範囲が短波のより高エネルギーの光の方向に拡張される。一般的な測定範囲は、約700~約4,500cm-1の波数範囲内である。
【0102】
スペクトル評価アルゴリズムによって、測定されたアクティブ赤外スペクトルの評価が実行される。定義されたガス濃度レベルによるシステムの較正は、定量的評価には必要ない。
【0103】
少なくとも二つの、好ましくはいくつかのパッシブFTIR分光計および任意に広帯域放出指向性赤外放射線源ならびに中央サーバを組み合わせることによって、監視システムとも呼称されうる二視点または多視点システムが実現される。これにより、ガス雲が特定および位置確認され、ガス濃度が定量化されることができる。
【0104】
このシステムは、有毒ガスまたはその他の危険なガスが生じた場合に有害エリアを探知するため、ならびに監視対象エリア内のおよび/またはその周囲に沿った放出およびイミシオンレベルの環境監視のために使用される。
【0105】
したがって、ガスの遠隔検出のためのパッシブFTIR分光計の使用により、遠距離を監視できる監視システムをセットアップすることが可能になる。一方では、これによりエリアの広い適用範囲を実現することが可能になる。他方で、光センサの監視エリアの調整がリアルタイムで状況に関連して可能である。
【0106】
遠隔ガス検出システムは、例えば光センサあたり最大4kmの半径の面積のエリアを自律的に監視する。システム全体に組み合わされる光センサの数は任意であるが、少なくとも二つのパッシブに動作する光センサが存在する。
【0107】
光センサごとに、エリアの地形に基づいて監視エリアがセットアップされる。一方では、監視対象の立体角範囲が幅および高さで定義され、他方で、全ての空間方向につき測定半径が判断される。なぜなら、各光センサの視野は、エリアの高度、建物および/または設備ならびにそれらの一部等の地形的障害物によって制限されるためである。
【0108】
加えて、各光センサについて、定期的な監視の間に監視エリア内のどの経路が走査されるべきか、すなわちどの方位角および仰角が横断されるべきかが判断される。
【0109】
FTIR分光測定法の使用により、サーバ上の物質ライブラリに特徴スペクトルが記憶された非常に多数の化学物質を検出および特定することができる。物質ライブラリの標的物質が存在する場合には、システムは空間内の標的物質のガス雲の位置、ならびに必要に応じて分散の時間発展および分散の方向も特定する。この目的のために、システムに統合された少なくとも二つの、必要に応じて全ての光センサが、状況に関連した状況評価に自動的に含められる。
【0110】
非常に広いスペクトル範囲にわたり高いスペクトル選択性で電磁放射線を測定することにより、多様な標的物質を同じ測定で明確に特定することができる。システムの標的物質データベースは、最大数百の化学物質を含みうる。典型的な化学物質は、アンモニア、メタノール、メタン、クロロホルムおよびエチレンを含むのが好ましい。
【0111】
したがって、このシステムは多様なシナリオに好適であり、生産プロセスの変化、化学倉庫の貯蔵サイクル、または憂慮される影響の変化に合わせて適合されうる。加えて、赤外スペクトルの測定データは物理的現状を表し、物質の検出および物質の非検出として有用である。
【0112】
サーバ上の評価アルゴリズム、特に評価および制御ユニットが、光センサの物質情報およびスペクトルデータならびに場合により判断された柱密度を処理し、測定プロセスを制御する。記載される光センサの制御および連係により、監視時間が最小化され、インシデントに関連した潜在的ガス検出があらゆる可能な視認方向から検証され、さらに、潜在的インシデントが外乱変数または個々の検出と区別され、潜在的に危険なガス雲の存在時には特定のはっきりした警報が発せられる。
【0113】
警報またはインシデントが発生したときには、ガス雲が2Dマップおよび/または2D視覚化において光センサの視認方向からのビデオ画像へのガス雲のオーバーレイとして表示されうる。
【0114】
広大なエリアは所定の監視エリアに分割され、これらが日常の場合にはそれぞれの個々のシステムにより自由にプログラム可能な測定経路に沿って反復的にかつ他のシステムから独立して自動的に走査される。
【0115】
インシデントが生じた場合には、すなわち少なくとも一つの光センサによる標的物質の特定後に、インシデントを検証するためならびにガス雲を位置確認および定量化するために、選択された隣接する光センサが自動的に問い合わせられる。このようにして、インシデントのほぼリアルタイムのマップベースの状況評価が生成され、例えば緊急サービスに利用可能となる。
【0116】
インシデントが生じた場合に使用される光センサの選択は、監視されるエリアの地形および光センサの位置によって、ならびにインシデントが検出された視認方向によって生じる、事前に判断された共通の監視エリアまたは視野エリアに基づく。地形的障害物の背後の視認方向には対応する光センサの測定値が一切得られないように、エリアの高度、建物および/または設備による光センサの視認エリアの遮蔽に起因する地形の影響が考慮される。この地形情報は、光センサの設置の間にそれぞれの監視エリアを判断する際に考慮されている。
【0117】
したがって、設置された光センサのそれぞれの監視エリアおよび共通の重なる監視エリアが設置時に計算および記憶されるため、インシデントが発生したときはそれらが入手され、インシデントの見通しと比較されるだけで足り、重なる監視エリアまたは視野エリアの再計算は通常は必要ない。
【0118】
既知の監視エリアまたは視野エリアに基づいて、さらなる光センサが標的を見つけるために自動的に制御される。この目的のために、少なくとも一つのさらなる光センサは、インシデントをトリガしている光センサの監視エリアを走査するように制御される。
【0119】
このように、複数の測定位置からの標的物質の共同特定により、潜在的インシデントの検証および三角測量による空間内の特定された標的物質のガス雲の位置確認が可能になる。さらに、ガス雲の空間濃度分布の計算が行われうる。測定値の品質評価ならびに空間および時間パラメータに基づく測定結果の自動解釈のための評価基準の下流適用により、確実な位置評価が可能になる。
【0120】
その結果、測定データはマップ上に色分けされた位置評価として表示される。加えて、ビデオ画像に重ね合わされた選択された光センサの測定結果の二次元表現が、時間的ビデオストリームの形でいつでも追加されうる。
【0121】
光センサまたはシステムが標的物質ライブラリからの標的物質の特定を知らせるとすぐに、システムはその日常動作を終了し、潜在的インシデントの標的特定およびその後の状況評価に切り替わる。
【0122】
ある光センサの視野から標的物質が特定されると、さらなる情報を得るために少なくとも一つのさらなる光センサまたは残りの光センサが連係させられる。この目的のために、所定の測定経路は日常モードで通常の動作が再開されるまで離れられる。
【0123】
測定信号の局所分布関数の分析により、ガス雲が存在する可能性がより高い角度範囲が提供される。これらの角度範囲が、より高い局所分解能でサンプリングされるのが好ましい。
【0124】
角度範囲は、(a)標的物質が特定される範囲、(b)特定が計量学的に不可能な角度範囲、(c)標的物質が計量学的に特定されることができ、生成された測定信号および該当する場合には標的物質の最小柱密度に関する特定アルゴリズムの評価後に標的物質が検出されない角度範囲に分類されうる。監視範囲の分類は物質固有である。
【0125】
マップで監視エリアの表現が行われうる。光センサの視野内のエリアがマップに示される。使用される標的物質ライブラリからの標的物質の特定が生じた場合には、マップにその視野がマークされる。複数の測定位置からの共同特定によるガス雲の位置確認の場合には、マップにガス雲が位置確認されたエリアがマークされる。
【0126】
測定信号の分布関数、該当する場合には計算された標的物質の柱密度、ならびに標的物質特定のための分析パラメータを分析し、各測定ポイントの検出限界を考慮することにより、標的物質を特定する各光センサが標的物質の最も高い柱密度を判断するそれぞれの立体角が判断されうる。この測定値を使用して、標的物質の濃度が最も高いガス雲の潜在的ポイントが位置確認される。
【0127】
複数の光センサの共同物質特定の場合には、最大柱密度が判断されている全ての立体角からガス雲の潜在的重心が判断されうる。この計量学的に判断されるポイントは、測定パラメータに基づいてさらに分類されうる。
【0128】
(a)少なくとも二つの測定位置からのガス雲の自由な視野の条件下で、光センサの各視野でのガス雲の潜在的重心につき判断される柱密度が監視エリアの他の測定ポイントの検出限界より大きいという条件下では、検出ポイントはガス雲の濃度が最も高い位置である。
【0129】
(b)遮蔽に起因してまたは検討されるそれぞれの立体角での低い検出限界に起因してガス雲内に少なくとも二つの測定位置から計量学的に検出できないエリアがある場合には、それぞれの立体角の判断される柱密度が最も高い共通の交差ポイントが判断されうるか否かが判断される。この交差ポイントは、判断される柱密度が最も高い立体角の周りの周辺部分エリアが少なくとも二つの測定位置から計量学的に判断されうるという条件下で、信号の勾配の妥当性基準をチェックした後に、ガス雲の濃度が最も高いポイントであるとみなされる。
【0130】
上述のシステムは、記載された手順を実行する際には、化学工業団地の生産エリアまたは港湾などの積載ポイント等の大きなエリアを完全に自動化された様式で監視する。このシステムは、例えば化学プラントの制御センターの、わずかな訓練を受けた人員により動作させられうるように設計される。加えて、システムの状況評価は、明確ではっきりした情報が一目で認識できるように準備される。この情報は、プラントドライバー(独:Anlagenfahrer,英:plant operator)、プラントオペレータ(独:Anlagenbetreiber,英:plant operator)、プラント消防隊の制御センター、および危機チームの全ての参加者に等しく解釈可能でなければならない。インシデントまたは災害が発生したときに本システムが早期警告システムとして有用であるように、情報は迅速に、はっきりと、事前の知識をもたずに読むことができなければならない。
【0131】
以下では、本発明を図面を参照して実施形態の例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【
図3】二つの光センサの標的物質の柱密度が最大の立体角の概略図である。
【
図4】標的物質の柱密度が増加した全ての立体角を追加した
図3による図である。
【
図5】監視エリアの一部遮光がある
図4による図である。
【
図6】二つの光センサを備えたシステムを備えた港の地図表現である。
【
図7】位置確認されたインシデントを含む
図6による図である。
【
図8】パッシブ光センサおよびアクティブ測定セクションのシステムを備えた化学プラントの地図表現である。
【
図9】三つの光センサの監視エリアの一部遮光がある別の化学プラントの地図表現である。
【
図10】検出される標的物質雲の位置が変化した
図9からの図である。
【
図11】標的物質雲を検出するための静止センサを備え移動センサを備えた
図8からの図である。
【
図12】光センサを備え移動非光センサを備えた実施形態の例である。
【発明を実施するための形態】
【0133】
本発明による様々な実施形態の以下の説明では、同じ機能および同じ動作モードを備えた構成要素および要素は、様々な実施形態におけるそれらの構成要素および要素の寸法または形状が異なっていても、同じ参照符号が与えられる。
【0134】
図1は、エリアの空域を監視するための本発明によるシステムの概略構造を示す。
【0135】
このシステムは、
図2A~
図2Cにさらに詳細に示される二つの光センサ2aおよび2bを有する。各光センサ2(または2aおよび2b)は基本的に、放物面鏡6と副鏡8とを備えたIR望遠鏡の形の赤外光学系4、ビデオカメラ10または11、FTIR分光計12、ならびにポジショニングユニットとしての制御可能パンチルトミミック14を有する。
【0136】
二つの光センサ2aおよび2bは、一方で光センサ2aおよび2bに例えば24ボルトの供給電圧を提供する供給およびインタフェースデバイス16に接続される。他方で、イーサネットケーブルによりローカルエリアネットワーク(LAN)にデータ伝送が行われる。したがって、デバイス16は一方で光センサ2aまたは2bに制御データを伝送し、他方で測定データを受信することができる。あるいは、インタフェースデバイス16および/またはセンサ2a、2bは、制御データを無線で受信し、および/または測定データを無線で伝送するようにされうる。
【0137】
光センサ2aおよび2bを制御するため、データを分析および表示するため、ならびに測定データを特にデータベースに記憶するためのコンピュータプログラムが記憶され実行されるサーバ20と光ファイバケーブル(LWL)を介してデータが交換される。
【0138】
インタフェースを介して、出力情報が監視されるエリアの近くに位置するプロセス制御システムおよびビデオ管理システムに送られる。したがって、インシデントが発生したときにここで警報がトリガされることもできる(ベル記号)と同時に、関連情報がユーザーに表示されることができる。
【0139】
さらに、システムは、クラウドアプリケーションへのデータの転送を可能にし、および/または外部サーバ30との直接データ接続を有することもできる。外部サーバ30はその場合、サポート機能(電話、サポート、サービス、メンテナンス)のためおよび専門家による開発チームのサポートのために使用されうる。
【0140】
図2Aは、標的物質を検出するためのFTIR分光計12を備え、監視対象エリアの空域の部分セクションをFTIR分光計12上に撮像するための赤外光学系4を備え、ビデオカメラ10を備え、FTIR分光計12と赤外光学系4とカメラ10とによって形成されるセンサユニットを位置合わせするためのポジショニングユニット14を備えた、エリアの空域を監視するための上述の光センサ2を示す。この場合、赤外光学系4およびカメラ10は基本的に同じ立体角を検出し、特に、赤外光学系の光軸O
1とカメラ10の光軸O
2とが互いに平行に位置合わせされる。
【0141】
図示される実施形態では、赤外光学系4は、放物面鏡6と副鏡8とを備えたカセグレン望遠鏡として設計される。あるいは、図示されないが、赤外光学系はレンズ光学系として設計されることもできる。
【0142】
カメラ10は赤外光学系4の横に設けられ、したがって望遠レンズを装備し、故に当該エリアの空域の監視される部分セクションの高画質を生み出すのに十分な設置スペースがある。しかし、標的雲の測定データの正確なオーバーレイのために、光軸の距離により視差が補正されねばならない。
【0143】
図2Bは、光センサ2の別の例を示す。
図2Aとは対照的に、カメラ11が、赤外光学系4の光軸内の副鏡の前端に設けられる。したがって、赤外光学系4の光軸O
2とカメラ11の光軸O
3とが一致し、視差効果が回避される。例えばスマートフォンカメラであってもよいカメラ11のサイズが小さいことに起因して、視角は普通大きく、その結果、望遠レンズを備えたカメラよりも視角が大きく、カメラ画像の空間分解能が小さくなりうる。しかし、望遠機能を備えたスマートフォンカメラが既に知られているため、カメラ10に完全に置き換えることができる。
【0144】
図2Cは、光センサ2のさらなる例を示す。
図2Aおよび
図2Bと対照的に、このカメラは、赤外光学系4の横に設けられたカメラ10を備え、赤外光学系4の光軸O
2内に設けられたカメラ11を備えたカメラシステムとして設計される。したがって、カメラ10の光軸O
1は赤外光学系4の光軸O
2から離れて走り、カメラ11の光軸O
3は光軸O
2と一致し、したがって全く離れていないかまたはわずかしか離れていない。
【0145】
図3は、二つの光センサ2aおよび2bによる監視の概略図を示す。第一光センサ2aは、破線でマークされ、約35°の幅である監視エリアを有する。光センサ2aは普通、予め決定された経路に少なくとも一部沿って監視エリアを走査する。第二光センサ2bは、同じく破線で示されるように、約90°の監視範囲を有する。第二光センサ2bも、予め設定された経路に少なくとも一部沿って監視エリアを自動的に走査する。走査は周期的に繰り返されるのが好ましい。両方の光センサの監視エリアは重なる。測定中にはデータがサーバ30に転送され、位置データ(立体角)と組み合わされる。
【0146】
強度分布を既知のガススペクトルと相関させることによって少なくとも一つの標的物質を特定するために、光センサ2aおよび2bの各立体角の測定データから受け取られたIR放射線のスペクトル強度分布が導出される。この目的のために、サーバ30上で、または該当する場合には光センサ2aまたは2b内で対応するコンピュータプログラムが実行される。
【0147】
インシデントが発生したとき、すなわち第一光センサ2aが標的物質、すなわち標的物質リストのガスを立体角Θ1内で特定したときには、第一光センサの監視エリアと重なるエリアを走査するためにさらなる光センサ2bがトリガされる。
【0148】
光センサ2bの測定データから、標的物質の赤外信号のあるさらなる立体角Θ2が特定され、その結果、第一立体角Θ1およびさらなる立体角Θ2の立体角情報から、標的物質の濃度が増加した重なるエリア(黒のエリア)の座標が判断されうる。
【0149】
図4は、光センサ2aおよび2bの監視エリアの点々エリアが少なくとも低濃度の標的物質が特定されている立体角エリアを表す、
図3の派生図を示す。
図3で既に示される立体角エリアΘ
1およびΘ
2は、柱密度を計算することによって判断された標的物質の濃度が最も高い立体角エリアを示す。柱密度の計算については、上記の一般的説明を参照されたい。
図4によれば、標的物質のガス雲の中心(黒の領域)だけでなく、雲の広がりも判断されうる。
【0150】
図5は、
図4と同様の図を示す。ここでは、第二光センサ2bの監視エリア内の監視されるエリア上に塔40が設けられ、その結果、光センサ2bによって探知されるエリアの塔40の背後は影になっている。そのため、影になったエリアは光センサ2bによって監視されることができず、このエリアの光センサ2bの測定半径は塔40までしか達せず、そのため光センサ2aの監視エリアまで達しない。そのような理由で、
図5の「影」には点々がない。
【0151】
標的材料からの雲の正確な位置確認を模索するときには、測定半径が小さすぎる空間方向の光センサ2bの測定信号は評価に含まれない。ここでは、塔40によってカバーされる立体角では測定半径が小さすぎ、塔40の背後の影ではセンサ2a、2bの監視エリアが重ならない。それにもかかわらず、標的物質雲の範囲は、ほぼ完全に検出されうる。測定半径が小さすぎる空間方向の測定データを考慮しないことにより、塔40で終わる監視エリアでは、塔40が存在しない場合(
図4参照)に言えるように測定信号が標的物質の指標とならないため、評価が歪められることはない。
【0152】
必要に応じて、サーバ20はセットアップ、すなわちコンピュータプログラムを使用することによって、評価に含まれていないさらなる光センサ2bの測定信号を、光センサ2bに隣接する測定信号の数学的補間によって置き換えるようにセットアップされうる。隣接する測定信号は、割り当てられた立体角範囲が含まれていない測定信号の立体角範囲に隣接する測定信号である。
【0153】
図6および
図7は、港エリア内の突出した位置に二つの光センサ2aおよび2bが配置された、港の波止場エリアの空域を監視するためのシステムを示す。
【0154】
図6は、二つの光センサ2aおよび2bが、破線でマークされた監視エリア内のエリア上方の空域を独立して走査する標準的な場合を示す。
【0155】
図7は、上述のインシデントケースを示す。サーバ20は、コンピュータプログラムを使用することによって、二つの光センサ2aおよび2bの柱密度が最も高い立体角エリアΘ
1およびΘ
2の重なりエリア(
図7の黒のエリア)の座標を判断し、座標をマップ表現とリンクし、インシデントの二次元表現を作成するようにセットアップされる。センサ2a、2bのカメラ11からの画像とリンクすることによって三次元表現も作成されうるのが好ましい。
【0156】
図8は、広大な化学生産エリアの空域を監視するための別のシステムを示す。ここでも、二つの光センサ2aおよび2bが突出した位置に設けられる。加えて、光センサ2aまたは2bの各々のうちの一つが赤外光を拾うように、三つのアクティブ赤外放射線源18a、18bおよび18cが設けられる。これにより、確立された測定経路(
図8の太線)に沿った大気中に含有されるガスのより正確な測定が可能になる。さらに、評価のためのスペクトル範囲も広げられうるため、より多くの標的物質が測定されることができる。とりわけ、アクティブ測定は、ガス分布のより正確なバックグラウンド判断ならびにより大きな標的物質ライブラリを可能にする。さらに、アクティブ赤外放射線源18a、18b、18cは、プラント境界等の所定の境界エリアの別々の監視を可能にする。
【0157】
図9は、三つの光センサ2a、2bおよび2cの監視エリアの一部遮光がある別の化学プラントの地図表現を示す。
【0158】
敷地内に光センサ2aの監視エリアを部分的に遮光する建物50、52および54があり、影エリアA1、A2およびA3をそれぞれ生じる。したがって、光センサ2aの監視範囲は、割り当てられた空間角度の各々で建物50、52または54までしか及ばない。
【0159】
同様に、光センサ2bには遮光エリアB1およびB2が生じ、光センサ2cには遮光エリアC1、C2およびC3が生じる。
【0160】
図9は、三つの光センサ2a、2bおよび2cを備えたシステムと標的物質雲56を示す。走査光センサ2a、2bおよび2cの通常の場合に、まずセンサ2aによって標的物質雲56が検出され、インシデントケースが判断される。
【0161】
この図に示されないサーバは、このインシデントにおいて、第一光センサ2aの監視範囲との監視範囲の重なりが最大である少なくとも一つのさらなる光センサ2bを起動のために選択するようにセットアップされる。影B1およびB2は第一光センサ2aの立体角範囲Θ1の外にあり、その結果、センサ2bの監視範囲によって最大の重なりが与えられる。次に、第二センサ2bが立体角範囲Θ2内で標的物質雲56を検出し、標的物質雲56が位置確認される。
【0162】
遮蔽エリアC3が立体角範囲Θ1の一部に重なるため、第三センサ2cはこのシナリオにおいて選択されない。標的物質雲56は完全に遮蔽エリアC3内にあるため、光センサ2cが選択された場合には標的物質雲56の確かな測定につながらなかったであろう。したがって、ここでは第三センサ2cの立体角範囲Θ3内の測定半径は小さすぎる。建物52による遮蔽によって標的物質雲56の測定が妨げられるため、潜在的立体角Θ3は破線として示されるだけである。
【0163】
図10は、検出される標的物質雲56の位置が変化した
図9からの図を示す。
【0164】
光センサ2aが標的物質雲を検出した後、サーバは、標的物質雲56の位置確認を達成するために別の光センサを探す。光センサ2bおよび2cの両方が、立体角エリアΘ1と重なる遮蔽エリアをそれぞれ有することが分かる。しかし、光センサ2bの位置は標的物質が検出された第一光センサ2aの立体角範囲Θ1の方向にあるため、光センサ2bはサーバによって選択されない。したがって、標的物質雲56を特定し、標的物質雲56の立体角エリアΘ3ひいては座標を判断するために、第一光センサ2aの測定される立体角エリアΘ1に対してより大きな角度の立体角を有する監視エリアをもつ第三光センサ2cが選択される。
【0165】
図11は、
図8による実施形態に基づく、本発明によるシステムの実施形態のさらなる例を示す。
【0166】
上述のシステムの実施形態に加えて、化学電気検出器として設計された静止検出器60がここに追加的に提供される。サーバ(ここでは図示されない)は、少なくとも一つの静止検出器60の出力信号を、静止検出器の空間エリアにおける光センサ2a、2bの使用のためのトリガ信号として使用するようにセットアップされる。複数の検出器60が示され、これらは全て光センサ2aおよび2bによって検出されうる立体角範囲内に配置される。ここではいくつかの検出器60が示されるが、一つの検出器60のみが存在すれば本発明の範囲内において十分である。
【0167】
標的物質の漏出を伴うインシデントが起き、雲62が広がると、雲62内に位置する検出器60が標的物質を検出し、対応する信号をサーバに送信しうる。続いて、二つの光センサ2aおよび2bが、インシデントをまだ検出していない場合には、ガス雲62を検出し、これを上述のように処理しうる。
【0168】
図11に見られるように、少なくとも一つの移動センサ70がドローン72に搭載されうる。移動センサ70は、光センサ2または検出器60でありうる。破線で示されるように、移動センサ70は、インシデントが発生したときに雲62に導かれ、現場で追加の測定を行うことができ、システムおよびサーバによってそれが評価されうる。
【0169】
移動センサ70が光センサ2を有する場合には、移動センサ70からの測定信号は、前述のように他の静止光センサ2aおよび2bからの測定信号と一緒に評価されうる。
【0170】
移動センサ70が検出器60を有する場合には、移動センサ70の位置の可変性により、静止検出器60からの測定値に加えて、さらなるデータが収集されることができる。
【0171】
図12は、本発明によるシステムのさらなる例を示す。このシステムは基本的に
図4のシステムに対応するが、パッシブフーリエ変換赤外分光計を備えた一つの光センサ2だけが存在する。上述のように、測定データを評価するためおよび光センサ2を制御するためにサーバ(図示せず)が提供される。光センサ2は、記載されたように調整可能な監視範囲を有する。
【0172】
上述のタイプの移動耐空性センサ70が提供され、上述のドローン72に取り付けられる。インシデントが生じた場合、すなわち光センサ2が立体角(点々で示される)内に角度Θ
1内の柱密度が最も高い標的物質を特定すると、移動センサ70は、光センサ2によって特定された立体角に沿って位置に依存した様式で標的物質の濃度を検出するようにサーバによって制御される。対応する飛行経路が、
図12に破線で示される。
【0173】
したがって、一つの光センサ2および一つの移動センサ70だけで、黒のエリアとして示される標的物質の最大濃度の位置が判断されうる。