IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライミクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-攪拌装置 図1
  • 特許-攪拌装置 図2
  • 特許-攪拌装置 図3
  • 特許-攪拌装置 図4
  • 特許-攪拌装置 図5
  • 特許-攪拌装置 図6
  • 特許-攪拌装置 図7
  • 特許-攪拌装置 図8
  • 特許-攪拌装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】攪拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/52 20220101AFI20230412BHJP
   B01F 27/808 20220101ALI20230412BHJP
   B01F 27/93 20220101ALI20230412BHJP
   B01F 27/192 20220101ALI20230412BHJP
   B01F 27/111 20220101ALI20230412BHJP
【FI】
B01F25/52
B01F27/808
B01F27/93
B01F27/192
B01F27/111
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023006922
(22)【出願日】2023-01-20
(62)【分割の表示】P 2022082675の分割
【原出願日】2022-05-20
【審査請求日】2023-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000225016
【氏名又は名称】プライミクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西川 宏
(72)【発明者】
【氏名】仁井 翔一
(72)【発明者】
【氏名】井上 結貴
(72)【発明者】
【氏名】金澤 賢次郎
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/128114(WO,A1)
【文献】特開2022-133244(JP,A)
【文献】特開2019-198813(JP,A)
【文献】特開2019-147077(JP,A)
【文献】特開2006-205071(JP,A)
【文献】特開2013-056296(JP,A)
【文献】特開2013-215733(JP,A)
【文献】特開2000-176267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 25/50 - 25/64
B01F 23/40 - 23/47
B01F 27/80 - 27/96
B01F 27/192
B01F 35/11
B01D 19/00 - 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部および側壁部を有する攪拌槽と、
前記攪拌槽内において回転する攪拌羽根と、
前記攪拌槽の下方に位置し、且つ攪拌対象を移送する連通経路を介して前記攪拌槽に接続されるポンプと、
を備える攪拌装置であって、
前記ポンプは、ポンプ槽及び当該ポンプ槽内において回転するポンプ羽根を備え、
前記ポンプ槽は、前記攪拌槽の底部に接続され、且つ前記ポンプ槽内で発生した泡を前記攪拌槽の底部から前記攪拌槽内に排出する泡排出経路を備え
前記泡排出経路は、前記攪拌槽内において、当該攪拌槽の底部から当該攪拌槽の上部に向けて突出する突出部を有する
ことを特徴とする、攪拌装置。
【請求項2】
前記ポンプは、前記ポンプ槽が円筒状であって、当該ポンプ槽の中心軸と前記ポンプ羽根の軸心とが同心状の位置関係にあることを特徴とする、請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記攪拌槽の底部おいて、当該攪拌槽の径方向外側から前記連通経路に向う攪拌対象の第1の流れ及び当該攪拌槽の径方向外側から前記攪拌羽根に向う攪拌対象の第2の流れが層状に発生しており、
前記第1の流れは前記攪拌槽の底部に隣接して発生し、前記第2の流れは前記第1の流れに隣接して発生しており、
前記突出部の先端は、前記第1の流れよりも前記攪拌槽の上部側にあることを特徴とする、請求項に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記攪拌槽の底部から前記攪拌羽根が配置された位置までの高さをHwとし、前記突出部の高さをHbとするとき、
1/3Hw<Hbの関係を満たすことを特徴とする、請求項に記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記攪拌羽根は、
前記攪拌装置の回転軸に取り付けられる基部と、
前記基部に対して放射状に取り付けられた複数の羽根部と、を備え、
前記羽根部は、前記基部に繋がる根元部と、前記根元部に対して前記基部とは反対側に繋がる先端部と、を含み、
周方向と前記根元部とがなす角度である第1角度は、周方向前方に向かうほど軸方向一方側に位置するように傾いており、
径方向と前記先端部とがなす角度である第3角度の絶対値は、60°以上100°以下であり、
軸方向視において周方向と前記先端部とがなす角度である第4角度は、周方向前方に向かうほど径方向内方に位置するように傾く場合を正とした場合に、その絶対値が0°以上25°以下であることを特徴とする、請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記攪拌羽根は、
前記攪拌装置の回転軸に取り付けられる基部と、
前記基部に対して放射状に取り付けられた複数の羽根部と、を備え、
前記羽根部は、前記基部に繋がる根元部と、前記根元部に対して前記基部とは反対側に繋がる先端部と、を有する第1羽根部を含み、
前記第1羽根部は、
周方向と前記根元部とがなす角度である第1角度が周方向前方に向かうほど軸方向一方側に位置するように傾いており、
径方向と前記先端部とがなす角度である第3角度の絶対値は、60°以上100°以下であり、
軸方向視において周方向と前記先端部とがなす角度である第4角度は、周方向前方に向かうほど径方向内方に位置するように傾く場合を正とした場合に、その絶対値が0°以上25°以下であり、
前記複数の羽根部は、隣接する2つの前記第1羽根部の間に配置された第2羽根部を含んでおり、
前記第2羽根部は、境界部を介して前記基部に繋がっており、その全体が平坦であることを特徴とする、請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項7】
前記攪拌羽根は、
正転方向および逆転方向の双方向に回転することが可能であり、
逆転方向に回転する場合、前記攪拌槽の底部の直上において、前記攪拌対象が前記攪拌羽根から前記攪拌羽根の下方かつ前記攪拌羽根から前記攪拌槽の径方向外側に向かう流れを生じさせることを特徴とする、請求項1に記載の攪拌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または粉体と液体の混合体などの対象物体を分散および混合などの攪拌をするための装置として、攪拌羽根を有する攪拌装置が用いられている。特許文献1には、従来の攪拌装置の一例が開示されている。本文献に開示された構成においては、回転駆動される回転軸の先端に攪拌羽根が取り付けられている。攪拌羽根は、対象物体を収容した攪拌容器内において回転されることにより、対象物体の分散および混合などの攪拌を行う。
【0003】
また、特許文献1の攪拌装置は、攪拌槽の底部から排出される攪拌対象を、外部配管を経由して攪拌槽の上部から攪拌槽内に還流させる機能を有しており、外部配管の途中には、ポンプからなる送液機構が設置されている。
このように外部配管を経由して攪拌対象を外部循環させると、攪拌槽内において攪拌対象が淀んでしまうこと等を防止できるというメリットがある。
また、上記外部配管の途中に設置されるポンプとしては、図9に示すようなインボリュート型のポンプが使用されることが多い。
しかしながら、インボリュート型のポンプはその構造が複雑であるため、一般に高額となる傾向があり、これを構成装置として使用すると、装置全体のコストパフォーマンスを低下させるという問題が生じる。
【0004】
この問題を解決するには、インボリュート型のポンプに代え、図8に示すように、ポンプ槽が円筒状であって、ポンプ槽の中心軸とポンプ羽根の軸心とが同心状の位置関係にあるタイプのポンプを使用することで解決できる。
このタイプのポンプは、その構造が比較的シンプルである分、低額であり、これを構成装置として使用すると、装置全体のコストパフォーマンスを向上させるというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-205071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記タイプのポンプでは、吸込み液中に含まれる泡やキャビテーションによってポンプ槽内で発生する泡の排出性能が低く、ポンプ槽内に泡が蓄積することにより、ポンプの攪拌対象移送能力を大きく低下させるという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題を解決するために、本発明では、底部および側壁部を有する攪拌槽と、前記攪拌槽内において回転する攪拌羽根と、前記攪拌槽の下方に位置し、且つ攪拌対象を移送する連通経路を介して前記攪拌槽に接続されるポンプと、を備える攪拌装置であって、前記ポンプは、ポンプ槽及び当該ポンプ槽内において回転するポンプ羽根を備え、前記ポンプ槽は、前記攪拌槽の底部に接続され、且つ前記ポンプ槽内で発生した泡を前記攪拌槽の底部から前記攪拌槽内に排出する泡排出経路を備え、前記泡排出経路は、前記攪拌槽内において、当該攪拌槽の底部から当該攪拌槽の上部に向けて突出する突出部を有している(請求項1)。
好ましくは、前記ポンプは、前記ポンプ槽が円筒状であって、当該ポンプ槽の中心軸と前記ポンプ羽根の軸心とが同心状の位置関係にある(請求項2)。
また、好ましくは、前記攪拌槽の底部おいて、当該攪拌槽の径方向外側から前記連通経路に向う攪拌対象の第1の流れ及び当該攪拌槽の径方向外側から前記攪拌羽根に向う攪拌対象の第2の流れが層状に発生しており、前記第1の流れは前記攪拌槽の底部に隣接して発生し、前記第2の流れは前記第1の流れに隣接して発生し、前記突出部の先端は、前記第1の流れよりも前記攪拌槽の上部側にある(請求項)。
さらに好ましくは、前記攪拌槽の底部から前記攪拌羽根が配置された位置までの高さをHwとし、前記突出部の高さをHbとするとき、1/3Hw<Hbの関係を満たす(請求項)。
また、好ましくは、前記攪拌羽根は、前記攪拌装置の回転軸に取り付けられる基部と、 前記基部に対して放射状に取り付けられた複数の羽根部と、を備え、前記羽根部は、前記基部に繋がる根元部と、前記根元部に対して前記基部とは反対側に繋がる先端部と、を含み、周方向と前記根元部とがなす角度である第1角度は、周方向前方に向かうほど軸方向一方側に位置するように傾いており、径方向と前記先端部とがなす角度である第3角度の絶対値は、60°以上100°以下であり、軸方向視において周方向と前記先端部とがなす角度である第4角度は、周方向前方に向かうほど径方向内方に位置するように傾く場合を正とした場合に、その絶対値が0°以上25°以下である(請求項)。
さらに好ましくは、前記攪拌羽根は、前記攪拌装置の回転軸に取り付けられる基部と、 前記基部に対して放射状に取り付けられた複数の羽根部と、を備え、前記羽根部は、前記基部に繋がる根元部と、前記根元部に対して前記基部とは反対側に繋がる先端部と、を有する第1羽根部を含み、前記第1羽根部は、 周方向と前記根元部とがなす角度である第1角度が周方向前方に向かうほど軸方向一方側に位置するように傾いており、径方向と前記先端部とがなす角度である第3角度の絶対値は、60°以上100°以下であり、軸方向視において周方向と前記先端部とがなす角度である第4角度は、周方向前方に向かうほど径方向内方に位置するように傾く場合を正とした場合に、その絶対値が0°以上25°以下であり、前記複数の羽根部は、隣接する2つの前記第1羽根部の間に配置された第2羽根部を含んでおり、前記第2羽根部は、境界部を介して前記基部に繋がっており、その全体が平坦である(請求項)。
より好ましくは、前記攪拌羽根は、正転方向および逆転方向の双方向に回転することが可能であり、逆転方向に回転する場合、前記攪拌槽の底部の直上において、前記攪拌対象が前記攪拌羽根から前記攪拌羽根の下方かつ前記攪拌羽根から前記攪拌槽の径方向外側に向かう流れを生じさせる(請求項)。
【発明の効果】
【0008】
上述のように、ポンプ槽が、攪拌槽の底部に接続され、且つポンプ槽内の泡を攪拌槽内に排出する泡排出経路を備えていると、吸込み液中の泡や、キャビテーションによってポンプ槽内で発生する泡が、泡排出経路を経由して攪拌槽に排出することができ、ポンプ槽内の泡がポンプの攪拌対象移送能力を大きく低下させるという問題を回避することができる。
【0009】
また、ポンプが、ポンプ槽の形状が円筒状であって、ポンプ槽の中心軸とポンプ羽根の軸心とが同心状の位置関係にあるタイプである場合、ポンプ槽内の泡の排出性能が低くなり、これにより、ポンプの攪拌対象移送能力を大きく低下させるという問題が特に顕著となるため、上記構成を採用する意義が特に大きくなる点において好ましい。
【0010】
さらに、泡排出経路が、攪拌槽内において、攪拌槽の底部から攪拌槽の上部に向けて突出する突出部を有していると、ポンプ槽から泡排出経路を経由して攪拌槽内に排出された泡が、攪拌槽内から連通経路を経由してポンプ槽に流れ込む攪拌対象の流れに乗って、再びポンプ槽内に流入する事態を回避できるようになる。
具体的には、攪拌槽の底部おいては、攪拌槽の径方向外側から連通経路に向う攪拌対象の第1の流れと、攪拌槽の径方向外側から攪拌羽根に向う攪拌対象の第2の流れが層状に発生しており、第1の流れは攪拌槽の底部に隣接するようにして発生し、第2の流れは第1の流れに隣接すようにして発生しているため、泡排出経路の突出部の先端が第1の流れよりも上に配置されるようにすると、当該突出部の先端から排出された泡が攪拌羽根の作用によって攪拌槽内に拡散されることにより、排出された泡がまとまってポンプ槽内に流入する事態を回避できるようになる。
このとき、攪拌槽の底部から攪拌羽根が配置された位置までの高さをHwとし、泡排出経路の突出部の高さをHbとするとき、1/3Hw<Hbの関係を満たしていると、泡排出経路の突出部の先端を、概ね第1の流れよりも上に配置できるので好ましい。

また、攪拌羽根として、攪拌装置の回転軸に取り付けられる基部と、基部に対して放射状に取り付けられた複数の羽根部と、を備え、羽根部は、基部に繋がる根元部と、根元部に対して基部とは反対側に繋がる先端部と、を含み、周方向と根元部とがなす角度である第1角度は、周方向前方に向かうほど軸方向一方側に位置するように傾いており、径方向と先端部とがなす角度である第3角度の絶対値は、60°以上100°以下であり、軸方向視において周方向と先端部とがなす角度である第4角度は、周方向前方に向かうほど径方向内方に位置するように傾く場合を正とした場合に、その絶対値が0°以上25°以下となるものを使用した場合、攪拌槽の底部の直上おいて、攪拌槽の径方向外側から連結管路に向う攪拌対象材の第1の流れが生じず、ポンプ槽から泡排出経路を経由して攪拌槽内に排出された泡が、攪拌槽内から連結管路を経由してポンプ槽に流れ込む攪拌対象材の流れに乗って、再びポンプ槽内に流入するといった事態を回避することができるようになる。
この結果、泡排出経路に突出部を設けたり、突出部の先端を第1の流れよりも上に配置されるようにするといった措置が不要となる。
さらに、攪拌羽根として、攪拌装置の回転軸に取り付けられる基部と、基部に対して放射状に取り付けられた複数の羽根部と、を備え、羽根部は、基部に繋がる根元部と、根元部に対して基部とは反対側に繋がる先端部と、を有する第1羽根部を含み、第1羽根部は、 周方向と根元部とがなす角度である第1角度が周方向前方に向かうほど軸方向一方側に位置するように傾いており、径方向と先端部とがなす角度である第3角度の絶対値は、60°以上100°以下であり、軸方向視において周方向と先端部とがなす角度である第4角度は、周方向前方に向かうほど径方向内方に位置するように傾く場合を正とした場合に、その絶対値が0°以上25°以下であり、複数の羽根部は、隣接する2つの第1羽根部の間に配置された第2羽根部を含んでおり、第2羽根部は、その全体が平坦であるものを使用した場合、第1羽根部の先端部近傍に存在する泡が、第2羽根部の通過によって第2羽根部側に引き込まれるような挙動を呈する。
これにより、先端部の近傍に泡が継続的に滞留する現象が抑制され、攪拌羽根の分散能力の低下を回避することができるようになる。
この結果、ポンプ槽から泡排出経路を経由して攪拌槽内に排出された泡が攪拌羽根に到達しても、攪拌羽根の分散能力が低下するという問題を回避できるようになる。
【0011】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る攪拌装置を示す構成図である。
図2】本発明の実施例1に係る攪拌装置の攪拌槽の底部を示す上面図である。
図3】本発明の実施例1に係る攪拌装置に装着される攪拌羽根を示す斜視図である。
図4】本発明の実施例1に係る攪拌装置の攪拌槽の底部を示す拡大図である。
図5】本発明の実施例2に係る攪拌装置を示す構成図である。
図6】本発明の実施例2に係る攪拌装置に装着される攪拌羽根を示す斜視図である。
図7】本発明の実施例1に係る攪拌装置の攪拌槽の底部を示す拡大図である。
図8】本発明に係る攪拌装置に装着されるポンプを示す概略図である。
図9】従来例に係るポンプを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係る攪拌装置B1の一実施形態を示している。
本実施形態の攪拌装置B1は、攪拌容器7、攪拌羽根A1、回転軸4およびモータ5を備えている。
攪拌容器7は、攪拌対象材(攪拌対象)8を収容し、この攪拌対象材8を攪拌するための容器である。
本実施形態においては、攪拌容器7は、攪拌槽71、蓋部72および複数のバッフル76を有する。
攪拌槽71は、攪拌対象材8を収容し、攪拌対象材8を攪拌する主要部位である。攪拌槽71は、底部711および側壁部712を有する。底部711は、攪拌槽71の下端部分であり、図示された例においては、下方に僅かに膨出する曲面形状である。ただし、底部711の形状は特に限定されず、平板状であってもよい。側壁部712は、底部711から上方に繋がっており、円筒状である。
なお、図中の軸方向zは、円筒状である側壁部712の中心軸と平行であり、本実施形態においては、鉛直方向に相当する。
蓋部72は、攪拌槽71を上方から塞いでおり、たとえば攪拌容器7の密閉性を維持するためのものである。
【0014】
複数のバッフル76は、攪拌槽71内において底部711に沿って配置されている。複数のバッフル76は、攪拌羽根A1の回転によって、攪拌対象材8中に過剰な空気吸い込み渦が発生することを防止する機能を有する。
また、バッフル76の形状は特に限定されず、曲面を有する形状のほか、平面視において直線状であってもよいし、屈曲形状であってもよい。
なお、本発明においては、複数のバッフル76は、発明の効果の発現に必須ではなく、必要に応じて配置することができる。
【0015】
攪拌羽根A1は、攪拌槽71に収容された攪拌対象材8を攪拌するためのものであり、回転することによって攪拌対象材8を攪拌しうる旋回流等の流動を生じさせる。
攪拌羽根A1は、図2に示すように、正転方向Fおよび逆転方向Rの双方向に回転する。
【0016】
図3は、本実施形態に用いられる攪拌羽根の一例である攪拌羽根A1を示している。
本実施形態の攪拌羽根A1は、基部1および複数の羽根部2A,2Bを有している。
基部1は、平坦な円盤状である。複数の羽根部2A,2Bは、基部1の外周端付近に配置されている。
複数の羽根部2Aは、基部1から軸方向zの上方に突出した略台形状の平板である。複数の羽根部2Bは、基部1から軸方向zの下方に突出した略台形状の平板である。複数の羽根部2Aと複数の羽根部2Bとは、周方向θに沿って互いに交互に配置されている。
このような攪拌羽根A1は、たとえば金属板を切断及び折り曲げ加工することによって形成可能である。
【0017】
回転軸4は、攪拌羽根A1を回転させる軸である。回転軸4は、底部711に挿通されており、攪拌羽根A1が取り付けられている。
図示された例においては、回転軸4の上端に攪拌羽根A1が固定されている。本実施形態においては、攪拌槽71の中心と回転軸4とが一致しているが、これらが一致しない構成であってもよい。
【0018】
モータ5は、回転軸4を回転させる駆動源である。モータ5は、回転軸4に直接連結されていてもよいし、ギヤ(図示略)を介して連結されていてもよい。
モータ5は、回転軸4を正転方向Fおよび逆転方向Rの双方向に回転させる。これにより、攪拌羽根A1は、正転方向Fおよび逆転方向Rの双方向に回転する。
【0019】
さらに、攪拌装置B1は、ポンプ槽73、ポンプ羽根3、連結管路(連結経路)74および還流管路75を有している。
ポンプ槽73は、攪拌槽71の下方に設けられており、ポンプ槽73の平面視中心は、攪拌槽71の平面視中心と一致している。
また、ポンプ槽73は円筒状であって、当該ポンプ槽73の中心軸とポンプ羽根3の軸心(回転軸4)とが、同心状の位置関係にある。
【0020】
連結管路74は、攪拌槽71の底部711とポンプ槽73とを繋いでいる。連結管路74は、短管状であり、平面視中心が、攪拌槽71およびポンプ槽73の平面視中心と一致している。
還流管路75は、底部711から流出した液体を攪拌槽71の外部を経由して攪拌槽71に還流させるための経路である。還流管路75は、ポンプ槽73の側方に繋がっている。
図示された例においては、還流管路75は、側方注入口751、天側注入口752、散布部753およびバルブ部754を有する。
側方注入口751は、攪拌槽71の側壁部712に繋がっており、還流された液体が攪拌槽71に側方から流入される部位である。
天側注入口752は、攪拌槽71の上方に設けられており、図示された例においては、蓋部12を貫通して設けられている。
天側注入口752は、還流された液体が攪拌槽71に上方から流入される部位である。
【0021】
散布部753は、天側注入口752に取り付けられており、天側注入口752から流入する液体を攪拌槽71内に散布することによって攪拌槽71内を洗浄する機能を有するものであり、いわゆるシャワーボール(洗浄ノズル)である。
バルブ部754は、側方注入口751および天側注入口752のいずれかに選択的に液体を還流させるためのものであり、たとえば三方弁等によって構成される。
【0022】
ポンプ羽根3は、攪拌槽71内の液体を連結管路74を通して吸引し、還流管路75へと送るためのものである。
ポンプ羽根3は、回転軸4に取り付けられており、正転方向Fおよび逆転方向Rの双方向に回転する。
【0023】
図示された例は、ポンプ羽根3として、主板31および複数の羽根板32を有する。
主板31は、たとえば円板状の部材であり、たとえばステンレス等の金属からなる。
複数の羽根板32は、たとえばステンレス等の金属からなり、主板31の上面に固定されている。
【0024】
攪拌装置B1の使用例について説明する。
まず、攪拌装置B1において通常の攪拌を行う場合を説明する。この場合、バルブ部754は、側方注入口751へと向かう経路を開状態とし、天側注入口752に向かう経路を閉状態とする。すなわち、図中の経路P1が選択された状態である。
攪拌羽根A1による攪拌と同時に、ポンプ羽根3の回転により、ポンプ羽根3の中心から攪拌対象材8が吸引され、ポンプ羽根3の径方向外方に位置する還流管路15に攪拌対象材8が吐出される。
この攪拌対象材8は、還流管路15を通じて、側方注入口751から攪拌槽71へと注入される。この攪拌対象材8の還流により、攪拌槽71内において攪拌対象材8が淀んでしまうこと等を防止することができる。
【0025】
次に、攪拌装置B1における攪拌容器7の内部の洗浄を行う場合を説明する。
この場合、バルブ部754は、側方注入口751へと向かう経路を閉状態とし、天側注入口752へと向かう経路を開状態としている。すなわち、図中の経路P2が選択された状態である。
また、攪拌対象材8に代えて、攪拌槽71には、洗浄液が収容される。洗浄液は、攪拌容器7内に付着した攪拌対象材8等を洗浄するための液体である。
この状態で、モータ5を回転することによって、攪拌羽根A1およびポンプ羽根3を回転させる。これにより、攪拌羽根A1によって、攪拌槽71内に貯留された洗浄液に旋回流を生じさせるとともに、ポンプ羽根3によって、洗浄液が還流管路75を通じて天側注入口752に送液され、その先端に配置された散布部(シャワーボール)753から攪拌容器7内全体に向けて噴霧され、攪拌容器7の内部が洗浄される。
【0026】
次に、ポンプ槽73内においてキャビテーションによって発生する泡や、連絡管路74よりポンプ槽73流入した泡が、ポンプ槽73から排出される機構について説明する。
図1及び図4に示すように、ポンプ槽73の上部には、ポンプ槽内の泡を攪拌槽71内に排出する泡排出経路731の一端が接続されており、泡排出経路731の他端が攪拌槽71の底部711に接続されている。
さらに、泡排出経路731は、攪拌槽71内にまで延伸しており、攪拌槽71の底部711から攪拌槽71の上部に向けて突出する突出部732を形成している。
これにより、ポンプ槽73内の泡が、ポンプ槽73及び攪拌槽71間の差圧によって泡排出経路731を通じて攪拌槽71に移送され、攪拌槽71内の突出部732の先端に設けられた開口から攪拌槽71内に放出される。
これにより、ポンプ槽73内に泡が溜まりポンプの攪拌対象移送能力を大きく低下させるという問題を回避することができる。
【0027】
また、上述のように、泡排出経路731が、攪拌槽71内において、攪拌槽71の底部711から攪拌槽71の上部に向けて突出する突出部732を有しているので、ポンプ槽73から泡排出経路731を経由して攪拌槽71内に排出された泡が、攪拌槽71内から連結管路74を経由してポンプ73槽に流れ込む攪拌対象材8の流れに乗って、再びポンプ槽73内に流入する事態を回避することができる。
具体的には、図4に示すように、攪拌槽71の底部711の直上おいては、攪拌槽71の径方向外側から連結管路74に向う攪拌対象材8の第1の流れと、攪拌槽71の径方向外側から攪拌羽根A1に向う攪拌対象材8の第2の流れが層状に発生しており、第1の流れは攪拌槽71の底部に接するように発生し、第2の流れは第1の流れに接するように発生している。
このため、泡排出経路731の突出部732の先端が第1の流れよりも上に配置されるようにすると、突出部732の先端から攪拌槽71内に排出された泡が、攪拌羽根A1の作用によって攪拌槽71内に拡散され、攪拌槽71内に排出された泡がまとまってポンプ槽73内に流入する事態を回避できる。
【0028】
このとき、攪拌槽71の底部711から攪拌羽根A1が配置された位置までの高さをHwとし、突出部732の高さをHbとするとき、1/3Hw<Hbの関係を満たしていると、泡排出経路731の突出部732の先端を、概ね第1の流れよりも上に配置できるので好ましい。
【0029】
(実施例2)
図5は、本発明の実施例2に係る攪拌装置B2の一実施形態を示している。
本実施形態の攪拌装置B2は、攪拌羽根A2を備えており、また、攪拌槽71の底部711から攪拌槽71の上部に向けて突出する突出部732を備えていない点を除いて、実施例1に係る攪拌装置B1と同じである。
【0030】
図6は、本実施形態に用いられる攪拌羽根の一例である攪拌羽根A2を示している。
本実施形態の攪拌羽根A2は、攪拌羽根A2を回転軸4に取り付けるための構造として、基部200に取付孔201が設けられている。
本実施形態の基部200は、径方向rおよび周方向θに沿った形状であって軸方向zに対して直角である平板状である。
基部200には、第1羽根部2Cと第2羽根部2Dがそれぞれ2枚づつ、同一形状のものが放射状に取り付けられており、各々が周方向θに交互に配列されている。
第1羽根部2Cと第2羽根部2Dの個数は、なんら限定されず、必要に応じて増減することができる。
【0031】
第1羽根部2Cは、根元部202および先端部203を有する。根元部202は基部200に繋がっており、基部200に対して軸方向z上方に向けて斜めに延びている。
先端部203は、根元部202に対して基部200とは反対側に繋がっており、図示された例においては、根元部202から軸方向z上方に延びている。
なお、基部200、根元部202および先端部203は、単一の材料から一体的に形成されても良いし、互いを差し込み等の係合(嵌合)や溶接等の接合手法を用いて結合されていてもよい。
攪拌羽根A2においては、基部200および第1羽根部2Cと第2羽根部2Dが一体的な金属板材料に切断加工および折り曲げ加工を施すことによって形成されている。
これにより、基部200と根元部202との境界には、第1境界部204が設けられており、根元部202と先端部203との境界には、第2境界部205が設けられている。
また、第1羽根部2Cは、周方向θと根元部202とがなす角度(第1角度)の絶対値が5°以上50°、径方向rと根元部202(根元部202の中心線)とがなす角度(第2角度)の絶対値が0°以上50°以下、根元部202(根元部202の中心線)と先端部203(先端部203の中心線)とがなす角度(第3角度)の絶対値が60°以上100°以下、軸方向z視において周方向θと先端部203とがなす角度(第4角度)の絶対値が0°以上25°以下となるように設定されている。
ここで、第1角度は、周方向θにおける回転前方に向かうほど軸方向z一方側(図中上側)に位置するように傾く場合を正とし、第2角度は、径方向外側に位置するほど軸方向z一方側(図中上側)に位置するように傾く場合を正とし、第3角度は、径方向外側に位置するほど軸方向z一方側(図中上側)に位置するように傾く場合を正とし、第4角度は、周方向θにおける回転前方に向かうほど径方向r内方に位置するように傾く場合を正とする。
さらに、第1羽根部2Cは、軸方向z視において径方向rと第1境界部204(第1境界部204の中心線)とがなす角度(第1副角度)の絶対値が、20°以上80°以下、軸方向z視において径方向rと第2境界部205(第2境界部205の中心線)とがなす角度(第2副角度)の絶対値が第1副角度よりも大きくなるように設定されている。
ここで、第1副角度および第2副角度は、軸方向z視において第1境界部204および第2境界部205が軸方向z(回転方向)後方に向かうほど径方向r外方に位置するように傾いている場合を正の値をとし、逆の場合を負とする。第1副角度および第2副角度は、軸方向z視において第1境界部23および第2境界部24が軸方向z(回転方向)後方に向かうほど径方向r外方に位置するように傾いている場合に正の値をとり、逆の場合に負の値をとる。第1副角度β1および第2副角度β2は、軸方向z視において第1境界部23および第2境界部24が軸方向z(回転方向)後方に向かうほど径方向r外方に位置するように傾いている場合に正の値をとり、逆の場合に負の値をとる
【0032】
一方、第2羽根部2Dは、境界部206を介して基部1に繋がっており、全体が平坦な形状である。
また、第2羽根部2Dは、全体形状に基づく平均的な中心線と径方向rとがなす角度(第5角度)の絶対値が0°以上50°以下、軸方向z視において基部200と第2羽根部2Dとの第3境界部206が径方向rとなす角度(第3副角度)の絶対値が、20°以上80°以下に設定されている。
ここで、第5角度は、径方向外側に位置するほど軸方向z一方側(図中上側)に位置するように傾く場合を正とし、第3副角度は、軸方向z視において第1境界部204および第2境界部205が軸方向z(回転方向)後方に向かうほど径方向r外方に位置するように傾いている場合を正の値をとし、逆の場合を負とする。
なお、第1~第5角度、及び第1~第3副角度の定義については、特願2020-133639の記載に従う。
【0033】
攪拌羽根A2は、図6に示すように、正転方向Fおよび逆転方向Rの双方向に回転することが可能であり、逆転方向Rに回転する場合、図7に示すように、攪拌槽71の底部711の直上おいて、攪拌対象材8を攪拌羽根A2から攪拌羽根A2の下方かつ攪拌羽根A2から攪拌槽71の径方向外側に向かう流れを生じさせる。
これにより、攪拌槽71の底部711の直上おいては、攪拌槽71の径方向外側から連結管路74に向う攪拌対象材8の第1の流れが生じず、ポンプ槽73から泡排出経路731を経由して攪拌槽71内に排出された泡が、攪拌槽71内から連結管路74を経由してポンプ73槽に流れ込む攪拌対象材8の流れに乗って、再びポンプ槽73内に流入するといった事態を回避することができるようになる。
この結果、本発明の実施例2に係る攪拌装置B2においては、実施例1に係る攪拌装置B1のように泡排出経路731に突出部732を設けたり、図4に示すように、突出部732の先端を第1の流れよりも上に配置されるようにするといった措置が不要となる。
【0034】
また、攪拌羽根A2は、第1羽根部2Cの先端部203の近傍に存在する泡が、第2羽根部2Dの通過によって第2羽根部2D側に引き込まれるような挙動を呈する。これにより、先端部203の近傍に泡が継続的に滞留する現象を抑制し、攪拌羽根A2の分散能力の低下を回避することができる。
この結果、ポンプ槽73から泡排出経路731を経由して攪拌槽71内に排出された泡が攪拌羽根A2に到達しても、攪拌羽根A2の分散能力が低下するという問題が回避される。
【0035】
本発明に係る攪拌装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る攪拌装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0036】
A1,A2:攪拌羽根
B1,B2:攪拌装置
1 :基部
2A,2B:羽根部
2C: 第1羽根部
2D: 第2羽根部
3 :ポンプ羽根
4 :回転軸
5 :モータ
7 :攪拌容器
8 :攪拌対象材
31 :主板
32 :羽根板
71 :攪拌槽
72 :蓋部
73 :ポンプ槽
74 :連結管路
75 :還流管路
76 :バッフル
200 :基部
201 :取付孔
202 :根元部
203 :先端部
204 :第1境界部
205 :第2境界部
206 :第3境界部
731 :泡排出経路
732 :突出部
751 :側方注入口
752 :天側注入口
753 :散布部
754 :バルブ部
711 :底部
712 :側壁部
P1,P2:経路
F :正転方向
R :逆転方向
r :径方向
θ :周方向
z :軸方向
【要約】
【課題】
攪拌対象移送能力に優れるポンプを備えた攪拌装置を提供する。
【解決手段】
底部および側壁部を有する攪拌槽と、攪拌槽内において回転する攪拌羽根と、攪拌槽の下方に位置し、且つ攪拌対象を移送する連通経路を介して攪拌槽に接続されるポンプと、を備える攪拌装置であって、ポンプは、ポンプ槽及び当該ポンプ槽内において回転するポンプ羽根を備え、ポンプ槽は、攪拌槽の底部に接続され、且つポンプ槽内で発生した泡を攪拌槽の底部から攪拌槽内に排出する泡排出経路を備えることを特徴とする。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9