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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】炊飯システム
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230412BHJP
   A47J 27/16 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A23L7/10 D
A47J27/16 G
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023501519
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2022026043
【審査請求日】2023-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116699
【氏名又は名称】株式会社アイホー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】今泉 唯晴
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-011415(JP,A)
【文献】特開2022-066738(JP,A)
【文献】実開平07-030923(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/10
A47J 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯システムであって、
蒸気が上方に透過する構造を有する搬送体を備え、前記搬送体上に載置された米を前記搬送体の移動により搬送するように構成されるコンベヤと、
前記搬送体の下方に設けられ、前記搬送体上の前記米に前記搬送体の下方から蒸気を供給するように構成される蒸気口と、
前記コンベヤによる前記米の搬送経路における所定のほぐし領域で、前記搬送体上の前記米をほぐすように構成されるほぐし装置と
前記搬送体上の前記米に上方から水を供給するように構成される給水部と、
前記搬送体の下方に設けられ、前記搬送経路における前記給水部に対応する位置に、前記搬送体を通過して落下する前記給水部からの水を受ける排水領域を形成する箱状の排水部と、
を備え、
前記蒸気口が、前記ほぐし領域から前記搬送経路の上流又は下流側にずれた位置に、前記搬送体上の前記米に対する蒸気供給領域であって、前記排水領域とは重ならない蒸気供給領域を形成する炊飯システム。
【請求項2】
前記蒸気供給領域は、前記排水領域よりも上流に形成される請求項1記載の炊飯システム。
【請求項3】
前記給水部は、前記ほぐし装置よりも前記搬送経路の上流において、前記搬送体上の前記米に上方から水を供給する請求項1記載の炊飯システム。
【請求項4】
前記ほぐし領域には、前記ほぐし装置による前記米をほぐすための動作によって前記米の積厚が薄くなる地点が含まれ、
前記蒸気口は、前記ほぐし領域からずれた位置として、前記地点の直下とは重ならない位置に配置される請求項1記載の炊飯システム。
【請求項5】
前記ほぐし装置は、前記搬送体上の前記米を前記搬送体から一時的に掬い上げることによって、前記米をほぐすように動作し、
前記ほぐし領域には、前記米の掬い上げによって周囲よりも前記米の積厚が薄くなる地点が含まれ、
前記蒸気口は、前記ほぐし領域からずれた位置として、前記地点の直下とは重ならない位置に配置される請求項1記載の炊飯システム。
【請求項6】
前記ほぐし装置は、前記搬送体の上方で、前記搬送体の表面に沿って設けられた回転軸と、前記回転軸の周りに設けられた複数の羽根であって前記搬送体上の前記米を掬い上げるように構成された複数の羽根と、を備える回転羽根装置であり、
前記蒸気口は、前記ほぐし領域からずれた位置として、前記回転軸の直下とは重ならない位置に配置される請求項1記載の炊飯システム。
【請求項7】
前記ほぐし領域は、前記ほぐし装置によって前記米が掬い上げられる領域に対応し、
前記蒸気口は、前記ほぐし領域の全体に重ならない位置に配置される請求項記載の炊飯システム。
【請求項8】
前記蒸気口は、前記給水部よりも前記搬送経路の上流に配置される請求項記載の炊飯システム。
【請求項9】
前記排水部の前記搬送経路の下流側の端部に、前記搬送体に付着した水を回収するための水切りを備える請求項1記載の炊飯システム。
【請求項10】
炊飯システムであって、
蒸気が上方に透過する構造を有する搬送体を備え、前記搬送体上に載置された米を前記搬送体の移動により搬送するように構成されるコンベヤと、
前記搬送体の下方に設けられ、前記搬送体上の前記米に前記搬送体の下方から蒸気を供給するように構成される蒸気口と、
前記コンベヤによる前記米の搬送経路における所定のほぐし領域で、前記搬送体上の前記米をほぐすように構成されるほぐし装置と、
前記ほぐし装置よりも前記搬送経路の上流において、前記搬送体上の前記米に上方から水を供給するように構成される給水部と、
前記コンベヤの上方を覆うカバーと、
を備え、
前記蒸気口が、前記ほぐし領域から前記搬送経路の上流又は下流側にずれた位置に配置され、
前記カバーが前記蒸気の上方への拡散を抑制することにより、前記カバーより下方の空間が高温の炊飯空間として機能し、前記カバーより上方の空間が前記炊飯空間よりも低温の非炊飯空間として機能し、
前記給水部は、前記カバーより上方の前記非炊飯空間に設けられて、前記カバーに設けられた孔を通じて前記炊飯空間に位置する前記搬送体上の前記米に水を供給する炊飯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炊飯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトコンベヤにより搬送される米に対する蒸気加熱及び散水により米を炊き上げる炊飯システムが知られている(例えば特許文献1参照)。この炊飯システムによれば、ベルトコンベヤによる米の搬送経路の全体に蒸気が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-149223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米を均一に炊き上げるには、炊飯の過程において、米をほぐすのが好ましい。しかしながら、ベルトにより搬送される米をほぐす際には、そのほぐし動作のために、ベルトに載置された米の積厚が変化する。
【0005】
蒸気を、ベルトの下方から上方に通り抜けるように供給する場合には、米の積厚が、蒸気の通り抜けの容易さに影響を与える。このことから、ほぐし動作によりベルト上の米の積厚が変化する環境では、積厚が薄い場所を通じて蒸気が下方から上方に抜けやすい。このような蒸気の不均一な通過は、米の炊き上がりに好ましくない影響を与える。
【0006】
そこで、本開示の一側面によれば、炊飯システムにおいて、米に対する蒸気の適用にムラが生じるのを抑え、良好な炊き上がりを実現するための新規技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面によれば、炊飯システムが提供される。炊飯システムは、コンベヤと、蒸気口と、ほぐし装置と、を備える。コンベヤは、蒸気が上方に透過する構造を有する搬送体を備え、搬送体上に載置された米を搬送体の移動により搬送するように構成される。
【0008】
蒸気口は、搬送体の下方に設けられ、搬送体上の米に搬送体の下方から蒸気を供給するように構成される。ほぐし装置は、コンベヤによる米の搬送経路における所定のほぐし領域で、搬送体上の米をほぐすように構成される。蒸気口が、ほぐし領域から搬送経路の上流又は下流側にずれた位置に配置される。
【0009】
ほぐし動作によれば、一時的に搬送体上の米の積厚が変化し、不均一になる可能性がある。積厚が均一ではない領域を蒸気が下方から上方に通過する場合には、積厚が薄い場所を通じて蒸気が下方から上方に抜けやすい。このことは、米の炊き上がりに好ましくない影響を与え得る。
【0010】
蒸気口が、ほぐし領域の真下で、ほぐし領域に対して下方向にまっすぐ並ぶように配置されている場合には、蒸気口からの蒸気の通り道の中心に、ほぐし領域の中心が存在することになり、積厚の不均一性が炊飯に好ましくない与える可能性が高い。
【0011】
一方、蒸気口が、ほぐし領域から搬送経路の上流又は下流側にずれた位置に配置される場合には、ほぐし領域を通過する蒸気の量を抑えることができ、積厚の不均一性が炊き上がりに与える好ましくない影響を抑えることができる。
【0012】
従って、本開示の一側面によれば、米に下方から蒸気を供給する炊飯システムにおいて、米に対する蒸気の適用にムラが生じるのを抑えて、良好な炊き上がりを実現することができる。
【0013】
本開示の一側面によれば、ほぐし領域には、ほぐし装置による米をほぐすための動作によって米の積厚が薄くなる第一の地点が含まれ得る。この場合、蒸気口は、ほぐし領域からずれた位置として、第一の地点の直下とは重ならない位置に配置され得る。本開示の一側面によれば、蒸気口は、第一の地点を通る鉛直線とは重ならない位置に配置され得る。
【0014】
本開示の一側面によれば、ほぐし装置は、搬送体上の米を搬送体から一時的に掬い上げることによって、米をほぐすように動作し得る。この場合、ほぐし領域には、米の掬い上げによって周囲よりも米の積厚が薄くなる第二の地点が含まれ得る。
【0015】
蒸気口は、ほぐし領域からずれた位置として、第二の地点の直下とは重ならない位置に配置され得る。本開示の一側面によれば、蒸気口は、第二の地点を通る鉛直線とは重ならない位置に配置され得る。このような配置によれば、米に対する蒸気の適用にムラが生じるのを抑えることができる。
【0016】
本開示の一側面によれば、ほぐし装置は、回転軸と、回転軸の周りに設けられた複数の羽根と、を備える回転羽根装置であり得る。回転軸は、搬送体の上方で、搬送体の表面に沿って設けられ得る。複数の羽根は、搬送体上の米を掬い上げるように構成された複数の羽根を含み得る。
【0017】
本開示の一側面によれば、蒸気口は、ほぐし領域からずれた位置として、ほぐし装置が備える回転軸の直下とは重ならない位置に配置され得る。本開示の一側面によれば、蒸気口は、回転軸を通る鉛直線とは重ならない位置に配置され得る。
【0018】
回転羽根装置により米が掬い上げられる場合には、回転軸の直下において、最も米の積厚が薄くなる。回転軸の直下とは重ならないように蒸気口を配置することは、米に対する蒸気の適用ムラを抑える点で有意義である。
【0019】
本開示の一側面によれば、ほぐし領域は、ほぐし装置によって米が掬い上げられる領域に対応し得る。本開示の一側面によれば、蒸気口は、ほぐし領域の全体に重ならない位置に配置され得る。本開示の一側面によれば、蒸気口は、ほぐし装置によって米が掬い上げられる領域の全体に重ならない位置に配置され得る。
【0020】
本開示の一側面によれば、炊飯システムは、給水部を備えてもよい。給水部は、搬送体上の米に上方から水を供給するように構成され得る。給水部は、ほぐし装置よりも搬送経路の上流に配置され得る。
【0021】
給水部が、ほぐし装置よりも搬送経路の上流に配置されることによれば、給水後のほぐし動作により、米に対する給水のムラを解消し、炊き上がりを改善することができる。
【0022】
本開示の一側面によれば、蒸気口は、給水部よりも搬送経路の上流に配置され得る。給水によっては搬送体に水膜が形成され得る。それにより、搬送体における水膜が形成された部位の蒸気の透過性が低下し、米に対する蒸気の透過に不均一性が生じ得る。給水部より上流に蒸気口を配置することによれば、このような水膜の影響による蒸気透過の不均一性を抑制することが可能である。
【0023】
本開示の一側面によれば、炊飯システムは、排水部を備え得る。排水部は、搬送体の下方において、給水部に対応する位置に設けられ得る。排水部は、搬送体を通過して落下する、給水部からの水を受けるように配置され得る。排水部を設けることによれば、米に吸収されない給水部からの余剰な水を、適切に排水処理することができる。
【0024】
本開示の一側面によれば、炊飯システムは、コンベヤの上方を覆うカバーを備えてもよい。カバーが蒸気の上方への拡散を抑制することにより、カバーより下方の空間が高温の炊飯空間として機能し、カバーより上方の空間が炊飯空間よりも低温の非炊飯空間として機能し得る。給水部は、カバーより上方の非炊飯空間に設けられ得る。給水部は、カバーに設けられた孔を通じて炊飯空間に位置する搬送体上の米に水を供給し得る。
【0025】
給水に適した水の温度が、炊飯に適した温度よりも低い場合がある。カバーによりコンベヤ上方を、炊飯空間より低い温度の非炊飯空間に設定し、非炊飯空間に給水部を配置することによれば、高温な炊飯空間の温度の影響を抑えて、給水部から適切な温度の水を供給することができ、より良好な米の炊き上がりを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】炊飯システムの概略構成を表すブロック図である。
図2】炊飯システムが備える米の搬送機構及びほぐし機構の断面図である。
図3】蒸気口の第一の配置を説明する搬送機構及びほぐし機構の拡大断面図である。
図4】蒸気口の第二の配置を説明する搬送機構及びほぐし機構の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…炊飯システム、10…搬送機構、20…搬送コンベヤ、20A…第一の搬送コンベヤ、20B…第二の搬送コンベヤ、21,23,24,25…プーリ、29…搬送ベルト、29A,29B…ベルト、31…米供給口、33…接続構造、35…取出口、37…シャッター、39…カバー、39H…孔、40…ほぐし機構、41,42,43,44,45…ほぐし装置、51…回転軸、55…羽根、60…給水機構、62,63,64,65…給水部、69…噴射口、72,73,74,75…排水部、72a,73a,74a,75a…水切り、72b,73b,74b,75b…排水管、80…蒸気供給機構、81,82,83,84,85…蒸気口、81a,82a,83a,84a,85a…蒸気供給管、81b,82b,83b,84b,85b…排水管、90…蒸らし部、91…蒸気供給管、99…排気ダクト、100…制御システム、110…操作パネル。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1に示す本実施形態の炊飯システム1は、米を搬送しつつ、米に水蒸気を当て、米を炊き上げる蒸気炊飯システムである。この炊飯システム1では、米を炊き上げるために、例えば飽和水蒸気又は過熱水蒸気が熱源として用いられる。
【0030】
以下では、水蒸気のことを単に「蒸気」と表現する。炊飯システム1は、制御システム100によって制御される。制御システム100は、操作パネル110を通じて入力される作業員からの指示に従って、炊飯システム1を作動させる。
【0031】
炊飯システム1は、搬送機構10と、ほぐし機構40と、給水機構60と、蒸気供給機構80と、を備える。搬送機構10は、供給される米を搬送するように構成される。ほぐし機構40は、搬送機構10により搬送される米をほぐすように構成される。給水機構60は、搬送される米に対して散水するように構成される。蒸気供給機構80は、搬送される米に対して下方から蒸気を供給するように構成される。
【0032】
図2に示すように、搬送機構10は、搬送コンベヤ20と、米供給口31と、接続構造33と、取出口35と、シャッター37と、カバー39と、を備える。
【0033】
搬送コンベヤ20は、搬送体としての搬送ベルト29の回転により、搬送ベルト29上に載置された米を搬送するように構成される。具体的に、搬送コンベヤ20は、第一の搬送コンベヤ20Aと、第二の搬送コンベヤ20Bと、を備える。第一の搬送コンベヤ20A及び第二の搬送コンベヤ20Bは、ベルトコンベヤとして構成される。
【0034】
第一の搬送コンベヤ20Aは、複数のプーリ21,23と、プーリ21,23の周りに巻き回わされたベルト29Aと、を備える。ベルト29Aは、プーリ21,23の回転を受けて、同方向に回転移動する。
【0035】
ベルト29Aは、無端ベルトである。ベルト29Aは、下方から上方への蒸気が透過可能であるメッシュ構造を有する。メッシュサイズは、米の一粒より小さいサイズに設定される。
【0036】
第一の搬送コンベヤ20Aは、米供給口31から供給される米を、上方を向くベルト29Aの表面で受け、ベルト29Aの回転により米を搬送経路の下流に搬送する。供給される米は、水又は調味液に浸された浸漬米である。
【0037】
第一の搬送コンベヤ20Aは、米を、搬送経路の下流に位置する接続構造33の入口まで搬送する。第一の搬送コンベヤ20Aにより搬送される米は、接続構造33の入口に到達するまでに、少し中心に芯が残る状態まで調理される。
【0038】
接続構造33は、第一の搬送コンベヤ20Aから第二の搬送コンベヤ20Bに向けて下方に傾斜した傾斜面を有する。第一の搬送コンベヤ20Aから接続構造33の入口に供給される米は、重力により、傾斜面を滑るように移動し、接続構造33の出口まで移動する。
【0039】
第二の搬送コンベヤ20Bは、第一の搬送コンベヤ20Aよりも低い位置で、接続構造33の出口に設置される。第一の搬送コンベヤ20Aからの米は、接続構造33を通じて、第二の搬送コンベヤ20Bに供給される。
【0040】
第二の搬送コンベヤ20Bは、第一の搬送コンベヤ20Aと同様に、複数のプーリ24,25と、プーリ24,25の周りに巻き回わされた無端ベルト(以下単に「ベルト」と表現する。)29Bと、を備える。
【0041】
ベルト29Bは、プーリ24,25の回転を受けて、同方向に回転移動する。ベルト29Bは、メッシュ構造を有し、下方から上方への蒸気が透過可能であるように構成される。メッシュサイズは、米の一粒より小さいサイズに設定される。
【0042】
ベルト29B上の米のサイズは、吸水によりベルト29Aの米のサイズよりも大きい。このため、ベルト29Bは、水及び蒸気の透過性を考慮して、ベルト29Aより大きいメッシュサイズに設定される。
【0043】
第二の搬送コンベヤ20Bは、接続構造33の出口から供給される米を、上方を向くベルト29Bの表面で受け、ベルト29Bの回転により米を搬送経路の下流に搬送する。第二の搬送コンベヤ20Bに対する、搬送経路の下流末端に、取出口35が設置される。
【0044】
第二の搬送コンベヤ20Bにより搬送される米は、取出口35に到達するまでに炊き上げられる。炊き上げられた米は、取出口35から排出され、取出口35の下方に設置される図示しない受皿で受け取られる。このように、米供給口31から供給される米は、蒸されながら、搬送コンベヤ20が備える搬送ベルト29、具体的にはベルト29A,29Bの回転を通じて、取出口35まで搬送される。
【0045】
シャッター37は、米供給口31より米の搬送経路下流に設けられる。シャッター37は、米を均すための構造を有する。シャッター37は、搬送経路の下流に移動する米が、搬送ベルト29上において、およそ一定の積厚を有するように、米を均す。米は、搬送ベルト29表面からおよそ一定の厚みを有するように積み重なった状態で、搬送ベルト29の回転に伴って移動する。
【0046】
付言すれば、吸水による米の膨張によって、米の一粒のサイズは大きくなる方向に変化する。このため、本実施形態では、第二の搬送コンベヤ20Bによるベルト29Bの回転速度が、第一の搬送コンベヤ20Aによるベルト29Aの回転速度よりも高く設定されている。
【0047】
この速度設定は、米の粒サイズの変化に起因して、搬送ベルト29上の米の積厚が変化するのを抑制するためである。速度設定により、本実施形態では、米の粒サイズの変化によらず、搬送ベルト29上の米の積厚が、第一の搬送コンベヤ20Aと、第二の搬送コンベヤ20Bとの間で、およそ同じ厚みに保持される。
【0048】
カバー39は、搬送コンベヤ20の下方から供給される蒸気の上方への拡散を抑制するために、米供給口31と取出口35との間の米の搬送経路において、搬送コンベヤ20の上方に設けられる。具体的にカバー39は、搬送コンベヤ20及び米の搬送経路の上方を覆うように配置される。
【0049】
このカバー39による蒸気の拡散抑制により、カバー39より下方の空間が蒸気で熱せられた高温の炊飯空間として機能し、カバー39より上方の空間が炊飯空間よりも低温の非炊飯空間として機能する。カバー39には、炊飯空間への給水用の複数の孔39Hが設けられる。
【0050】
ほぐし機構40は、図2に示すように、米の搬送経路において、米の搬送方向に離散的に配置された複数のほぐし装置41,42,43,44,45を備える。各ほぐし装置41,42,43,44,45は、回転羽根装置として構成される。各ほぐし装置41,42,43,44,45は、回転軸51と、回転軸51の周りに設けられた複数の羽根55とを備える。
【0051】
回転軸51は、水平面に平行な搬送ベルト29の表面に沿って設けられる。具体的には、回転軸51は、搬送ベルト29の表面に平行に配置される。更に、回転軸51は、搬送ベルト29の回転方向に直交するように配置される。搬送ベルト29の回転方向は、米の搬送方向に対応する。
【0052】
複数の羽根55は、回転軸51の周りに設けられる。具体的に、複数の羽根55は、回転軸51に対して放射状に配置され、米をほぐすために、米を掬い上げ可能に形作られる。各羽根55は、回転軸51の軸方向及び径方向に沿って配置される表面を有する棒状部材により構成される。棒状部材は、柔軟であり得る。棒状部材は、弾性を有し得る。
【0053】
回転軸51の中心から各羽根55の径方向先端まで径方向長さは、回転軸51の中心から搬送ベルト29の表面までの距離と略同じである。すなわち、各羽根55は、図3及び図4に示すように、各羽根55が回転軸51の直下に位置するときに、その羽根55の先端が搬送ベルト29の表面に僅かに接触しない又は僅かに接触する位置に配置されるように、回転軸51上に取り付けられる。
【0054】
回転軸51は、直下の羽根55が、米の搬送方向と同方向に移動するように回転する。各羽根55は、回転軸51の周りを一回転する間に、搬送ベルト29の表面の回転軸51の直下を中心とした所定範囲において、搬送ベルト29の表面上の米を一時的に掬い上げ、掬い上げた米を搬送ベルト29の上に戻すように動作する。
【0055】
図3及び図4における破線L1,L2は、搬送ベルト29上に積層される米の最上面を概略的に表し、間接的には、米の積厚を概略的に表す。搬送ベルト29の表面の回転軸51の直下を中心とした所定範囲がほぐし領域Rに対応する。
【0056】
「回転軸51の直下」は、回転軸51を通る鉛直線上における回転軸51の下を意味する。ほぐし領域Rは、米が掬い上げられる領域に対応する。ほぐし領域Rでは、米が掬い上げられることにより、米の積厚がほぐし領域Rに隣接する領域と比較して薄くなる。
【0057】
特に、ほぐし領域Rの中心、換言すれば、回転軸51の直下に対応する搬送ベルト29表面の地点P0は、周囲と比較して積厚が最も薄い地点に対応する。この最も薄い地点は、蒸気の下方から上方への透過に対する抵抗が最も低い地点に対応し、蒸気が最も下方から上方に抜けやすい地点に対応する。
【0058】
給水機構60は、米の搬送経路において、米の搬送方向に離散的に配置された複数の給水部62,63,64,65を備える。各給水部62,63,64,65は、カバー39よりも上方の非炊飯空間に配置される。
【0059】
給水機構60は、カバー39に形成された孔39Hを通じた、各給水部62,63,64,65からの搬送ベルト29上の米に対する散水により、米に対して水を供給するように構成される。
【0060】
米に対して供給される水は、約75℃の温水である。これに対して搬送ベルト29上の米は、蒸気を受けて約98℃の温度で調理される。給水部62,63,64,65がカバー39の上方に配置されることにより、高温の炊飯空間からの給水部62,63,64,65への熱伝達が抑えられ、適切な温度の温水が給水部62,63,64,65から米に供給される。
【0061】
各給水部62,63,64,65は、搬送ベルト29を、その回転方向とは直交する方向に横切るように配置される配管に形成された複数の噴射口69を備える。各給水部62,63,64,65は、複数の噴射口69から搬送ベルト29上の米に対して水を供給する。
【0062】
各給水部62,63,64,65からは、米が吸収できない量の水が供給される。米に吸収されずに搬送ベルト29表面に到達した水は、搬送ベルト29を通過し、搬送ベルト29の下方に流れ落ちる。
【0063】
複数の給水部62,63,64,65は、図2に示されるように、複数のほぐし装置41,42,43,44,45のうちの、搬送経路の最上流に位置するほぐし装置41を除く残りのほぐし装置42,43,44,45に関連して設けられる。
【0064】
すなわち、米の搬送経路において、複数の給水部62,63,64,65は、それぞれ、対応するほぐし装置42,43,44,45の搬送経路上流に設けられて、対応するほぐし装置42,43,44,45によりほぐされる前の米に対して散水する。
【0065】
これにより、各給水部62,63,64,65による水の散水ムラは、直後のほぐし動作により解消される。例えば、搬送ベルト29上に積層される米を、水が上から下に流れることによる積層方向における水の分布のムラが、ほぐし動作により解消される。
【0066】
給水機構60は更に、複数の給水部62,63,64,65に関連して、複数の排水部72,73,74,75を備える。排水部72,73,74,75は、米に吸収されない給水部62,63,64,65からの余剰な水を、適切に排水処理するために、搬送ベルト29の下方において、それぞれ、給水部62,63,64,65に対応する位置に設けられる。
【0067】
排水部72,73,74,75の下流側の端部には、排水部72,73,74,75に落下せず搬送ベルト29に付着した水を回収するために、水切り72a,73a,74a,75aが設けられる。この回収は、水の残留が次の工程に影響するのを抑えるために行われる。
【0068】
各排水部72,73,74,75は、それぞれ、搬送ベルト29を通過して落下する、対応する給水部62,63,64,65からの水を受け、各排水管72b,73b,74b,75bへ排水する。複数の排水部72,73,74,75のうち、上流から二番目の排水部73によって回収される水は、でんぷん質が少なく比較的綺麗な水であることから、運転コストを低減するために、給水部63からの給水に再利用される。
【0069】
一方、排水部72によって回収される水は、異物混入の可能性が高いことから、循環による再利用には不向きである。排水部74,75によって回収される水は、でんぶんの含有量が多いことから、循環による再利用には不向きである。
【0070】
蒸気供給機構80は、米の搬送経路において、米の搬送方向に離散的に配置された複数の蒸気口81,82,83,84,85と、それぞれ対応する蒸気供給管81a,82a,83a,84a,85a及び排水管81b,82b,83b,84b,85bと、を備える。複数の蒸気口81,82,83,84,85は、搬送ベルト29の下方に設けられ、搬送ベルト29上の米に、搬送ベルト29の下方から蒸気を供給するように構成される。
【0071】
これら蒸気口81,82,83,84,85は、それぞれ、ほぐし装置41,42,43,44,45に関連して設けられる。ベルト29Aの下方に設けられた蒸気口81,82,83から供給される蒸気は、外部ボイラ(図示省略)の蒸気を再度加熱した湿った蒸気であり、蒸気口84,85から供給される蒸気は、外部ボイラから直接供給される乾いた蒸気である。蒸気口81,82,83,84,85は、それぞれ、対応するほぐし装置41,42,43,44,45のほぐし領域Rからずれた位置に配置される。
【0072】
具体的に、蒸気口81,82,83,84,85は、それぞれ、対応するほぐし装置41,42,43,44,45のほぐし領域Rから搬送経路の上流にずれた位置に配置される。
【0073】
蒸気口81,82,83,84,85がほぐし領域Rからずれた位置に配置されることは、蒸気口81,82,83,84,85の中心とほぐし領域Rの中心とが、上下方向において一列に並ぶようには、蒸気口81,82,83,84,85が、ほぐし領域Rに対して上下方向に整列していないことを意味すると理解されてもよい。
【0074】
蒸気口81は、掬い上げ動作によって周囲よりも米の積厚が薄くなる地点P0に対応するほぐし装置41の回転軸51の直下とは重ならない位置に配置される。上述の通り、ほぐし領域Rでは、掬い上げ動作によって米がほぐされる。この掬い上げ動作によってほぐし領域Rでは、隣接領域よりも米の積厚が薄くなるが、回転軸51の直下では、米の積厚が最も薄くなる。
【0075】
蒸気口81が、上述のように配置されることにより、蒸気口81の真上には、蒸気が最も抜けやすい米の積厚が最も薄い部位がない。従って、本実施形態によれば、図3において一点鎖線で示すように蒸気口81から上方に移動する蒸気が、回転軸51の直下の積厚が最も薄い部位から抜けてしまうのを抑制することができる。
【0076】
従って、本実施形態によれば、蒸気口81から供給される蒸気が搬送ベルト29の下方から、搬送ベルト29上の米を通じて上方に移動する際に、蒸気の移動に偏りが生じるのを抑制することができる。
【0077】
また、蒸気口82は、図2に示すように、ほぐし装置41の回転軸51の直下よりも搬送経路下流に位置する。このように蒸気口82は、ほぐし装置41のほぐし領域Rから搬送経路の下流にずれた位置に配置される。
【0078】
更に、蒸気口82は、ほぐし装置42のほぐし領域Rから搬送経路の上流にずれた位置に配置される。具体的には、蒸気口82は、ほぐし装置42の回転軸51の直下とは重ならない位置に、更には、ほぐし装置42のほぐし領域Rの全体に重ならない位置に配置される。このため、本実施形態によれば、蒸気口82から供給される蒸気が、ほぐし装置41,42の回転軸51の直下の積厚が最も薄い部位から抜けてしまうのを抑制することができる。
【0079】
更に言えば、蒸気口82は、ほぐし装置42より搬送経路上流に位置する給水部62及び排水部72よりも更に上流に位置する。給水部62からの給水によっては搬送ベルト29のメッシュ構造に水膜が一時的に形成され得る。
【0080】
この水膜が蒸気の搬送ベルト29の下方から上方への透過を一時的に阻害し得る。これにより、搬送ベルト29における蒸気の透過性が低下し、米に対する蒸気の適用に不均一性が生じ得る。本実施形態のように、蒸気口82を、給水部62より上流に配置することによれば、水膜の影響による米に対する蒸気適用の不均一性を抑制することが可能である。
【0081】
この他、蒸気口83は、ほぐし装置42,43のほぐし領域Rの全体に対して重ならないように、ほぐし装置42のほぐし領域Rから搬送経路の下流にずれた位置であって、ほぐし装置43のほぐし領域Rから搬送経路の上流にずれた位置に配置される。
【0082】
蒸気口83は、ほぐし装置43より搬送経路上流に位置する給水部63及び排水部73よりも上流に配置される。従って、本実施形態によれば、水膜及び積厚の不均一性の影響を抑えて、蒸気口83からの蒸気を、上方の米におよそ均一に適用することができる。
【0083】
蒸気口84は、ほぐし装置44のほぐし領域Rの全体に対して重ならないように、ほぐし装置44のほぐし領域Rから搬送経路の上流にずれた位置に配置される。蒸気口84は、ほぐし装置44より搬送経路上流に位置する給水部64及び排水部74よりも上流に配置される。蒸気口84からの蒸気の適用及び給水部64による給水によって、炊き上がり時の米の固さが調整される。
【0084】
蒸気口85は、ほぐし装置44,45のほぐし領域Rの全体に対して重ならないように、ほぐし装置44のほぐし領域Rから搬送経路の下流にずれた位置であって、ほぐし装置45のほぐし領域Rから搬送経路の上流にずれた位置に配置される。
【0085】
蒸気口85は、ほぐし装置45より搬送経路上流に位置する給水部65及び排水部75よりも上流に配置される。蒸気口85からの蒸気の適用及び給水部65による給水によって、炊き上がりの品質に関する微調整が行われる。
【0086】
炊飯システム1は、更に、ほぐし装置45より搬送経路下流に蒸らし部90を備える。ほぐし装置45によってほぐされた米は、蒸らし部90の蒸気供給管91から供給される外部ボイラ(図示省略)からの蒸気により最終的な蒸らしが行われ、取出口35から取り出される。炊飯システム1においては、蒸らし部90の上部に排気ダクト99が設けられる。
【0087】
以上に説明した本実施形態の炊飯システム1は、上述の通り、蒸気口81,82,83,84,85、給水部62,63,64,65、及び、ほぐし装置41,42,43,44,45の配置に関して、上述した特徴を有する。
【0088】
この特徴により、炊飯システム1は、搬送ベルト29による米供給口31から取出口35までの米の搬送経路において、搬送ベルト29の下方から上方への適切な蒸気の流れを形成することができ、搬送ベルト29上の米に比較的均一に蒸気を当てることができる。従って、この炊飯システム1によれば、米の炊き上がりを良好にすることができる。
【0089】
[その他の実施形態]
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、蒸気口81,82,83,84,85、給水部62,63,64,65、及び、ほぐし装置41,42,43,44,45の数は、上記の例に限定されない。
【0090】
蒸気口81は、ほぐし装置41によるほぐし領域Rの全体に重ならないように、更に搬送経路上流に設けられてもよい。この場合には、米供給口31の位置も更に上流の位置に変更することができる。
【0091】
蒸気口82,83,84,85は、ほぐし装置42,43,44,45のほぐし領域Rの縁には重なるがほぐし領域の中央部には重ならないように配置されてもよい。例えば、積厚がほぐし領域Rに隣接する領域の30%未満である薄い中央部には重ならないように、蒸気口82,83,84,85は、配置されてもよい。
【0092】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【要約】
炊飯システムは、コンベヤと、蒸気口と、ほぐし装置と、を備える。コンベヤは、蒸気が上方に透過する構造を有する搬送体を備え、搬送体上に載置された米を搬送体の移動により搬送するように構成される。蒸気口は、搬送体の下方に設けられ、搬送体上の米に搬送体の下方から蒸気を供給するように構成される。ほぐし装置は、コンベヤによる米の搬送経路における所定のほぐし領域で、搬送体上の米をほぐすように構成される。蒸気口が、ほぐし領域から搬送経路の上流又は下流側にずれた位置に配置される。
図1
図2
図3
図4