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特許7261368コンクリートの充填状況推定装置、及びコンクリート打設支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】コンクリートの充填状況推定装置、及びコンクリート打設支援システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20230413BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20230413BHJP
【FI】
E04G21/02 103A
E04G21/02 ESW
G06Q50/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019075129
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2020172788
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-01-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年6月15日 愛知工業大学 総合技術研究所プロジェクト共同研究 第12回(平成29年度)シンポジウム予稿集 P.3~4にて公開 平成30年9月30日 愛知工業大学総合技術研究所研究報告 第20号 P29~30 にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】304000836
【氏名又は名称】学校法人 名古屋電気学園
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】井畔 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】小島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】多葉井 宏
(72)【発明者】
【氏名】後藤 礼彦
(72)【発明者】
【氏名】梶本 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 繁喜
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035628(JP,A)
【文献】特開2012-002036(JP,A)
【文献】特開2011-006881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの打設領域内の複数箇所にコンクリートを打設するコンクリート工事において、前記コンクリートの打設領域への前記コンクリートの充填状況を推定するコンクリートの充填状況推定装置であって、
前記コンクリートの打設領域を示す構造物の構造情報を取得する構造情報取得部と、
前記コンクリートの打設中の打設位置、打設量、及び前記打設位置で前記打設量の打設をしたときの打設時刻を検出する検出部と、
前記構造情報取得部で取得された前記構造情報と、前記検出部で検出された前記打設位置、前記打設量、及び前記打設時刻と、に基づいて、前記コンクリートの打設領域への前記コンクリートの表面形状を含む前記コンクリートの充填状況を推定する充填状況推定部と、
を備えたコンクリートの充填状況推定装置。
【請求項2】
前記充填状況推定部は、前記コンクリートの水セメント比と、スランプ値とを用いて前記コンクリートが流動する流動形状を導出して前記コンクリートの表面形状を推定する
請求項1に記載のコンクリートの充填状況推定装置。
【請求項3】
前記充填状況推定部は、前記コンクリートを予め定めた多面体のブロックで細分化したブロック単位で前記コンクリートの挙動を模擬する
請求項1又は請求項2に記載のコンクリートの充填状況推定装置。
【請求項4】
コンクリートの打設領域内の複数箇所にコンクリートを打設するコンクリート工事において、打ち重ね工法を用いたコンクリートの打設を支援するコンクリート打設支援システムであって、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のコンクリートの充填状況推定装置と、
先の打設をしたコンクリートについて前記充填状況推定部で推定された前記先の打設をしたコンクリートの充填状況に基づいて、先の打設をしたコンクリートのコンクリート表面の位置、および前記コンクリート表面が形成されてからの経過時間、前記コンクリート表面を覆う、これから打設をするコンクリートのコンクリート量を導出する導出部と、
先の打設をした後に重ね打設をして打ち重ねする場合、前記導出部で導出された経過時間が予め定めた所定時間に到達する以前に、前記先の打設をした打設位置に前記導出部で導出された前記コンクリート量の前記重ね打設を開始することを示す情報を報知する報知部と、
を備えたコンクリート打設支援システム。
【請求項5】
前記コンクリートを打設する打設位置を含む打設順序を示す打設計画を取得する打設計画取得部と、
前記報知部での前記重ね打設を開始することを示す情報の報知後に、前記打設計画から離脱する場合に、離脱位置を記憶する記憶部と、
をさらに備え、
前記報知部は、前記重ね打設を開始することを示す情報の報知後に、前記重ね打設を終了した場合に、前記記憶部に記憶された前記離脱位置に戻ることを示す情報をさらに報知する
請求項4に記載のコンクリート打設支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの充填状況推定装置、及びコンクリート打設支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物にコンクリート打設する場合には、コンクリート打設場所に組み立てた型枠へコンクリートを流し込む作業が行われる。しかしながら、型枠内の同一箇所に一度でコンクリートを充填させると、コンクリートの重量により型枠に大きな荷重がかかって好ましくない。このため、打ち重ね工法を用いてコンクリートを打設することが一般的である。打ち重ね工法は、例えば、コンクリート打設場所を複数箇所設定し、順次打設して、一巡した後に最初の箇所から再度コンクリートを打設する。この打ち重ね工法では、先に打設したコンクリートと後に打設(重ね打設)するコンクリートとの継ぎ目の強度に留意する必要がある。
【0003】
また、打ち重ね工法を用いてコンクリートを打設する場合、コンクリート規格に基づいて定まる先の打設から重ね打設までの打ち重ね時間を経過すると、コンクリートが硬化して継ぎ目の強度が弱くなったり、コールドジョイントが発生したりする。
【0004】
このため、打設されたコンクリートの品質試験が必要であり、コンクリートの打設毎に行われるコンクリートの品質試験結果を一覧表示する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-267658
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンクリートの品質試験結果を一覧表示することで、コンクリートの打設毎のコンクリートの品質試験結果を確認し、打ち重ね時間の適否の確認が可能であるものの、コンクリートの打設作業における打ち重ね時間の適正化は困難である。そこで、コンクリートの供給管の種類や長さ、接続部の数などの具体的な作業の内容を反映して打ち重ね時間を適正化することが考えられる。
【0007】
例えば、打ち重ね時間を適正化するのには、コンクリート打設場所を複数の区画に分け、区画毎に徐々に順次打設し、全ての区画を一巡した後に最初の区画から再度コンクリートを打設する技術が一例として挙げられる。この場合、各区画の区切り方や各区画へのコンクリート供給管の設置経路などにより工事時間を改善する余地があるとの観点から、供給管路の組み替えのシミュレーションを行い、供給管路の組み替え時間を計算し当該作業区画のコンクリート打設時間を加算した時間と、予め設定されたコンクリート規格に基づいて計算した打ち重ね時間との比較により適否を評価すればよい。
【0008】
しかしながら、コンクリートは打設当初は、流体の挙動を示す。従って、コンクリートを打設した後には、型枠内に充填されるコンクリートの形状が時々刻々と変化する。一方、コンクリートを充填させる型枠内は、コンクリートを打設するための開口部分(例えば、型枠の上部領域)以外、外部から目視することが困難であり、型枠内におけるコンクリートの表面形状等のコンクリートの充填状況を確認することも困難である。このため、先の打設の後に行われる重ね打設は、野帳記録や作業者の経験によって行われていた。
【0009】
ところが、作業の内容を反映した打ち重ね時間を適正化した場合であっても、型枠内におけるコンクリートの形状等のコンクリートの充填状況は、型枠内で時々刻々と変化するので、適切な打設を行うことが困難であった。
【0010】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、コンクリートの打設領域にコンクリートを打設するコンクリート工事において、型枠内におけるコンクリートの表面形状等のコンクリートの充填状況を推定するコンクリートの充填状況推定装置を提供することである。
また、第2の目的は、打ち重ね工法を用いてコンクリートを打設する場合に、打設されたコンクリートの質の維持が可能なコンクリートの打設を支援するコンクリート打設支援システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、第1態様は、コンクリートの打設領域内の複数箇所にコンクリートを打設するコンクリート工事において、前記コンクリートの打設領域への前記コンクリートの充填状況を推定するコンクリートの充填状況推定装置であって、前記コンクリートの打設領域を示す構造物の構造情報を取得する構造情報取得部と、前記コンクリートの打設中の打設位置、打設量、及び前記打設位置で前記打設量の打設をしたときの打設時刻を検出する検出部と、前記構造情報取得部で取得された前記構造情報と、前記検出部で検出された前記打設位置、前記打設量、及び前記打設時刻と、に基づいて、前記コンクリートの打設領域への前記コンクリートの表面形状を含む前記コンクリートの充填状況を推定する充填状況推定部と、を備えたコンクリートの充填状況推定装置である。
【0012】
壁などを建造するために、コンクリートを打設領域である空間に充填する打設をする場合、型枠等によって、コンクリートの打設部位、例えば、一般的には上部、特に床部を除く部位は外部から見ることができず、型枠内等の空間へのコンクリートの充填状況を把握することができない。
そこで、第1態様では、検出された打設位置、時刻及び打設量から、どの位置に、どの程度のコンクリートが打設され、そのコンクリートは構造情報(例えば、壁幅、梁幅・梁成等)による構造物の打設領域に重力に従って下方から充填されることから、コンクリートの表面形状を含む、外部から不可視の打設領域へのコンクリートの充填状況を推定可能である。よって、次に打ち重ねをする打設位置を簡単に特定可能である。
【0013】
第2態様は、第1態様のコンクリートの充填状況推定装置において、前記充填状況推定部は、前記コンクリートの水セメント比と、スランプ値とを用いて前記コンクリートが流動する流動形状を導出して前記コンクリートの表面形状を推定する。
【0014】
コンクリートは、固まる前の状態では、流動状態にあり、構造物の打設領域内における形状は変化する。従って、コンクリートの表面形状も変化する。
そこで、コンクリートの水セメント比と、スランプ値とを用いてコンクリートが流動する流動形状を導出することによって、外部から不可視の打設領域内におけるコンクリートの挙動、すなわち、流動状態を推定可能であり、コンクリートの表面形状を容易に推定可能である。
【0015】
第3態様は、第1態様又は第2態様のコンクリートの充填状況推定装置において、前記充填状況推定部は、前記コンクリートを予め定めた多面体のブロックで細分化したブロック単位で前記コンクリートの挙動を模擬する。
【0016】
コンクリート等の流体の挙動を解析する場合、流体としてそのまま扱うと、演算負荷が膨大になる。また、ブロック単位とすることで、実際の打設量と充填状況推定部での数量の整合が容易になる。
そこで、コンクリートを予め定めた多面体のブロックで細分化したブロック単位でコンクリートの充填状況を推定することによって、演算負荷を抑制可能である。
【0017】
第4態様は、コンクリートの打設領域内の複数箇所にコンクリートを打設するコンクリート工事において、打ち重ね工法を用いたコンクリートの打設を支援するコンクリート打設支援システムであって、第1態様から第3態様の何れか1態様に記載のコンクリートの充填状況推定装置と、先の打設をしたコンクリートについて前記充填状況推定部で推定された前記先の打設をしたコンクリートの充填状況に基づいて、先の打設をしたコンクリートのコンクリート表面の位置、および前記コンクリート表面が形成されてからの経過時間、前記コンクリート表面を覆う、これから打設をするコンクリートのコンクリート量を導出する導出部と、先の打設をした後に重ね打設をして打ち重ねする場合、前記導出部で導出された経過時間が予め定めた所定時間に到達する以前に、前記先の打設をした打設位置に前記導出部で導出された前記コンクリート量の前記重ね打設を開始することを示す情報を報知する報知部と、を備えたコンクリート打設支援システムである。
【0018】
コンクリートを打ち重ねする場合、先の打設をした後、予め定めた所定時間に到達する以前に重ね打設をする必要がある。ところが、型枠等によって、コンクリートの打設部位(一般的には上部)を除く部位は外部から見ることができず、型枠内等の空間へのコンクリートの充填状況を把握することができない。このため、コンクリートの充填状況を予測しつつ、先の打設からの経過時間を監視しながら、コンクリートの打設作業を遂行するのには作業負荷が増大する。
そこで、時々刻々と変化する打設側のコンクリート表面の位置、コンクリート表面が形成されてからの経過時間、およびコンクリート表面を覆うコンクリート量を逐次導出し、経過時間が予め定めた所定時間に到達する以前に、先の打設をした打設位置に、導出されたコンクリート量の重ね打設を開始することを示す情報を報知する。これによって、コンクリートを打ち重ねする予め定めた時間を経過する以前に、重ね打設を必要とすることを、作業者が認識でき、コンクリートの打ち重ね時間超過により生じるコールドジョイント等の不具合を抑制可能になる。
【0019】
第5態様は、第4態様のコンクリート打設支援システムにおいて、前記コンクリートを打設する打設位置を含む打設順序を示す打設計画を取得する打設計画取得部と、前記報知部での前記重ね打設を開始することを示す情報の報知後に、前記打設計画から離脱する場合に、離脱位置を記憶する記憶部と、をさらに備え、前記報知部は、前記重ね打設を開始することを示す情報の報知後に、前記重ね打設を終了した場合に、前記記憶部に記憶された前記離脱位置に戻ることを示す情報をさらに報知する。
【0020】
コンクリートの打設を打設計画に沿って行う場合、計画遂行途中に、先に打設した箇所に重ね打設をするために移動すると、打設計画から離脱してしまう。
そこで、重ね打設を開始することを示す情報の報知後に、重ね打設を終了した場合に、記憶部に記憶された離脱位置に戻ることを示す情報をさらに報知することによって、作業者は、打設計画から外れた打設位置に打ち重ね時間内に打設するように作業を行っても、元の位置に戻り、コンクリートの打設を打設計画に沿って遂行可能になる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本開示のコンクリートの充填状況推定装置によれば、コンクリートの打設領域にコンクリートを打設するコンクリート工事において、型枠内におけるコンクリートの表面形状等のコンクリートの充填状況を推定することが可能である。
また、本開示のコンクリート打設支援システムによれば、打ち重ね工法を用いてコンクリートを打設する場合に、打設されたコンクリートの質の維持が可能なコンクリートの打設を支援することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係るコンクリート施工管理支援システム1の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】コンクリート打設支援装置における主要な機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】コンクリートを打設する打設領域の一例を示す平面図である。
図4】流動勾配の一例を示すイメージ図である。
図5】コンクリートの流動をブロック移動によりシミュレーションする場合の一例を示すイメージ図である。
図6】打設領域内における複数のコンクリートブロックの移動状態の一例を示すイメージ図である。
図7】打設領域へのコンクリートの充填状況の一例を示すイメージ図である。
図8A】窓開口を有する打設領域へのコンクリートの充填状況の一例を示すイメージ図である。
図8B】窓開口を有する打設領域へのコンクリートの充填状況の一例を示すイメージ図である。
図8C】窓開口を有する打設領域へのコンクリートの充填状況の一例を示すイメージ図である。
図8D】窓開口を有する打設領域へのコンクリートの充填状況の一例を示すイメージ図である。
図8E】窓開口を有する打設領域へのコンクリートの充填状況の一例を示すイメージ図である。
図8F】窓開口を有する打設領域へのコンクリートの充填状況の一例を示すイメージ図である。
図9】窓開口を有する打設領域に、移動条件に従ってコンクリートブロックが移動する状態の一例を示すイメージ図である。
図10】窓開口を有する打設領域に、移動条件に従ってコンクリートブロックが移動する状態の一例を示すイメージ図である。
図11】移動距離を予め設定した移動距離だけコンクリートブロックを水平方向に移動させる場合の一例を示すイメージ図である。
図12】打設計画の一例を示すイメージ図である。
図13】コンクリート打設支援装置を、コンピュータにより実現する構成の一例を示すブロック図である。
図14】コンクリート打設支援処理、及びシミュレーション処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本開示の技術を実現する実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、打設施工するコンクリートの品質管理を支援するコンクリート打設支援システムに、本開示の技術を適用した場合を一例として説明する。
【0024】
図1に、本実施形態に係るコンクリート施工管理支援システム1の概略構成の一例を示す。
図1に示すように、コンクリート施工管理支援システム1は、コンクリートを打設する現場の現場事務所に設置される現場端末3と、そのコンクリートの打設作業を支援するコンクリート打設支援装置4と、コンクリートの打設領域へのコンクリートの充填状況を推定する充填状況推定装置5と、を備えている。これらの現場端末3、コンクリート打設支援装置4、及び充填状況推定装置5は、インターネット等のネットワーク2に接続されており、現場端末3、コンクリート打設支援装置4、及び充填状況推定装置5の間で相互に情報授受が可能になっている。
【0025】
現場端末3は、コンクリートを打設する打設者に装備された打設者機器7と無線通信又は有線通信によって、打設者により打設されるコンクリートの打設位置、及び打設時間を示す情報を取得可能なっている。打設位置は、例えば、打設者にGPS(Global Positioning System)端末を装備させ、GPS端末で受信した複数衛星からの複数の信号に基づいて特定された現在位置を打設位置として特定可能である。
【0026】
また、現場端末3は、コンクリートポンプ車などに装備された、打設するコンクリートを吐出するコンクリート吐出装置6と無線通信又は有線通信によって、打設されるコンクリート量を示す情報を取得可能なっている。また、コンクリート吐出量が記録されたデータサーバ等からその数値を現場端末3に取り込むことも可能である。すなわち、コンクリート量を示す情報は、コンクリート吐出装置6と無線通信又は有線通信によって取得することに限定されるものではなく、予めコンクリート吐出量が記録されたデータサーバ等の外部装置から取得してもよい。なお、コンクリート量は、吐出されるコンクリートの容積を直接計測してもよく、流速又は吐出圧を検出し、吐出口の面積から求めてもよい。
【0027】
さらに、現場端末3は、打設するコンクリートの柔らかさや流動性などを規定する水セメント比、及びスランプ値を示すコンクリート情報を取得可能なっている。コンクリート情報は、現場端末3の図示しない入力装置で入力してもよく、コンクリート吐出装置6から取得するようにしてもよい。
【0028】
さらにまた、現場端末3は、コンクリートを打設する打設計画を示す打設計画情報を取得可能なっている。打設計画情報は、現場端末3の図示しない入力装置で入力してもよく、予め定めた構造物の打設領域に沿って予め定めた計画を他の装置から取得するようにしてもよい。
【0029】
従って、現場端末3は、打設するコンクリートに関係する打設関連情報として、打設位置、打設時刻、打設量、コンクリート情報、及び打設計画を取得できるようになっている。
充填状況推定装置5は、打設位置、打設時刻、打設量、及びコンクリート情報に基づいて、コンクリートの打設領域への前記コンクリートの充填状況を推定する(詳細は後述)。コンクリート打設支援装置4は、打設位置、打設時刻、打設量、コンクリート情報、及び打設計画に基づいて、コンクリートの打設領域内の複数箇所にコンクリートを打設するコンクリート工事において、打ち重ね工法を用いたコンクリートの打設を支援する(詳細は後述)。
【0030】
なお、図1に示す例では、錯綜を回避するために1箇所の現場事務所についてのみ図示しているが、複数の現場事務所に設置されている複数の現場端末3へも本開示の技術が適用可能であることは言うまでもない。また、図1に示す例では、現場端末3、コンクリート打設支援装置4、及び充填状況推定装置5の各々を独立した構成とした場合を示しているが、現場端末3、コンクリート打設支援装置4、及び充填状況推定装置5の各々は、組合せて構成してもよい。
【0031】
図2に、コンクリート打設支援装置4における主要な機能構成の一例をブロック図で示す。図2に示す例のコンクリート打設支援装置4は、充填状況推定装置5の機能を含んだ構成になっている。
図2に示すように、コンクリート打設支援装置4は、充填状況推定装置5の機能を実現する打設状況取得部51及び3D充填シミュレーション部52を備えている。3D充填シミュレーション部52には、構造データ記憶部53及び流動勾配データ記憶部54が接続される。3D充填シミュレーション部52は、打設状況に応じて外部から不可視の打設領域へのコンクリートの充填状況を推定する。
【0032】
また、コンクリート打設支援装置4は、コンクリート状況導出部41、打ち重ね間隔判定部、及び報知部43を備えている。これらのコンクリート状況導出部41、打ち重ね間隔判定部、及び報知部43によって、先の打設から次に重ね打設を開始することを示す情報を報知する。
【0033】
さらに、コンクリート打設支援装置4は、打設計画遂行記憶部44、打設計画遂行判定部45、及び復帰指示部46を備えている。これらの打設計画遂行記憶部44、打設計画遂行判定部45、及び復帰指示部46によって、コンクリートの打設を打設計画に沿って遂行できるように支援する。
【0034】
ここで、コンクリートの打設作業について説明する。コンクリートの打設作業は、通常、打ち重ね工法を用いて、同じ打設部位に時間を空けて複数回に分けてコンクリートを重ね打ちが行われる。例えば、1つの打設箇所を平面視して複数の区画にメッシュ状に区分すると共に、各区画毎に複数回に分けてコンクリートを重ね打ちする。これは、流し込んだコンクリートの高さが高くなるほど型枠を丈夫なものにする必要がある点、コンクリートを落下させる距離が長くなるほどコンクリートが分離してしまう可能性が高くなる点等の事実を考慮するためである。
【0035】
ところで、壁などを建造するために、コンクリートを打設領域である空間に充填する打設をする場合、型枠等によって、コンクリートの打設部位(一般的には上部(特に床部))を除く部位は外部から見ることができず、型枠内等の空間へのコンクリートの充填状況を把握することができない。このため、打設者は、コンクリートの充填状況を予測しつつ、先の打設からの経過時間を監視しながら、打設者の経験値を用いてコンクリートの打設作業を行う。このため、打設作業を遂行するのには打設者の経験に依存する等の作業負荷が発生する。
【0036】
そこで、本実施形態では、打設状況に応じて外部から不可視の打設領域へのコンクリートの充填状況を推定することで、作業負荷を軽減する。具体的には、打設位置、時刻及び打設量から、どの位置に、どの程度のコンクリートが打設され、そのコンクリートは型枠等により定まる構造情報(壁幅、梁幅・梁成等)による構造物の打設領域に重力に従って下方から充填されることから、コンクリートの流動形状を含む、外部から不可視の打設領域へのコンクリートの充填状況を推定する。よって、外部から不可視であるコンクリートの打設部位以外の部位であっても、コンクリートの充填状況を確認できる。
【0037】
このため、打設状況取得部51は、打設状況を示す情報として、打設計画31、打設位置・時刻32、打設量33、及びコンクリート情報34の各々を示す情報を取得する。
【0038】
3D充填シミュレーション部52は、打設状況取得部51で取得された情報と、構造データ記憶部53及び流動勾配データ記憶部54に記憶された情報とを用いて、コンクリートの充填状況を推定する。
【0039】
構造データ記憶部53には、構造物の打設領域であるコンクリートの打設領域、すなわち型枠等によって定まる(形成される)、壁幅、梁幅・梁成等の構造情報が記憶されている。
【0040】
図3に、コンクリートを打設する打設領域の一例を平面図で示す。なお、図3では、説明を簡単にするため、4つの柱を壁でつなぐように形成された型枠による構造を一例として示している。図3に示す例では、打設位置D1~打設位置D12に順にコンクリートを打設する場合を一例としている。本実施形態は、図3に示す構造に限定されるものではなく、実際の構造物の構造にも容易に適用可能であることは勿論である。
【0041】
流動勾配データ記憶部54には、コンクリートの流動性を示すコンクリートの流動勾配情報が記憶されている。打設されるコンクリートは、固定化又は固体化する以前には流体として扱うことが可能であり、その柔らかさに応じて水平方向への流動が収束して安定状態の流動形状となるので、流動勾配は、構造情報の部材幅毎に一定の安定角とすることができる。コンクリートの流動勾配充填状況情報は、安定角である流動勾配を示す。具体的には、固定化又は固体化する以前のコンクリートを流体として、打設領域(例えば壁幅)と、打設位置におけるコンクリートの打ち上がり高さと、打設位置から水平方向に流動したコンクリートにより形成される打設コンクリートの上面の勾配と、水セメント比及びスランプ値を示すコンクリート情報と、の関係を示す。例えば、水セメント比及びスランプ値を示すコンクリート情報と、打設領域(例えば壁幅)と、が既知であれば、コンクリートの流動勾配情報を用いることで、コンクリートの打ち上がり高さと、打設位置から水平方向に流動したコンクリートにより形成される打設コンクリートの上面の勾配と、を導出可能である。
【0042】
図4に、流動勾配の一例を示し、壁が形成されるように型枠によって形成された打設領域へ打設位置D2からコンクリートを打設する場合の一例を示す。
図4(A)は、水セメント比及びスランプ値を示すコンクリート情報が所定値のコンクリートを、打設領域の厚さが厚い、すなわち、水平の断面寸法が所定値より厚い領域に打設した場合に流動勾配θaになることを示している。図4(B)は、図4(A)と同じコンクリート情報のコンクリートを、打設領域の厚さが薄い、すなわち、水平の断面寸法が所定値より薄い領域に打設した場合に流動勾配θb(>θa)になることを示している。
【0043】
図4に示すように、同じコンクリート情報のコンクリートでは、打設領域の厚さが薄く(水平の断面寸法が薄く)なるのに従って、流動勾配θが大きくなる。
【0044】
ここで、3D充填シミュレーション部52におけるコンクリートの充填状況の推定について説明する。
3D充填シミュレーション部52は、例えば、型枠によって形成された打設領域へのコンクリートの充填状況をシミュレーションする。このシミュレーションでは、有限要素法等の解析シミュレーションを用いて打設領域内にコンクリートが充填される過程、すなわちコンクリートの流動をシミュレーションすることが可能であるが、計算負荷が膨大になる。
【0045】
そこで、本実施形態では、コンクリートの流動を、予め定めた大きさのブロックの移動として扱い、計算負荷を抑制する。すなわち、流体の流動演算を、固体(ブロック)の移動演算に置き換えて計算する。
なお、本実施形態では、計算負荷抑制のため、流体の流動演算を、固体(ブロック)の移動演算に置き換えて計算する場合を説明するが、粒子法や有限要素法等の解析シミュレーションを用いて計算してもよいことは勿論である。
【0046】
図5に、一箇所の打設位置から打設されるコンクリートの流動について、予め定めた大きさのブロックの移動によりシミュレーションする場合の複数ブロックの挙動の一例を示す。
図5に示すように、構造データ記憶部53に記憶された構造情報により定まる打設領域内にコンクリートを打込む場合、3D充填シミュレーション部52は、コンクリートの流動をコンクリートブロック62単位で扱う。3D充填シミュレーション部52は、コンクリートブロック62を、打設位置から鉛直方向(図5の矢印Z方向)に移動させ、順次コンクリートブロック62を積み重ねる。そして、3D充填シミュレーション部52は、積み重なったコンクリートブロック62を、最下面で停止させ、停止させたコンクリートブロック62上に次のコンクリートブロック62を積み重ねる。3D充填シミュレーション部52は、積み重なったコンクリートブロック62を、流動勾配データ記憶部54に記憶されたコンクリートの流動勾配情報を用いて、設定された流動勾配θになるまで、水平方向(図5の矢印XY方向を含む平面方向)に、転落させる。このようにして、3D充填シミュレーション部52は、複数のコンクリートブロック62を、打設領域内に充填させるシミュレーションを行う。
【0047】
なお、図5に示す例では、一か所の打設位置から打設されるコンクリートの流動を、ブロック移動によりシミュレーションする場合を説明したが、打設領域へのコンクリートの打込みは、一箇所に限定されるものではない。すなわち、複数の打設位置から各々打設されるコンクリートの流動についても本実施形態に係る技術が適用可能であることは勿論である。
【0048】
次に、コンクリートの流動勾配情報を用いてコンクリートブロック62を転落させることについて説明する。なお、ここでは、コンクリートブロック62を一方向に転落させる場合を一例として説明する。
【0049】
図6に、打設領域内において複数のコンクリートブロック62が移動される状態を示す。図6(A)は、最下面で停止されたコンクリートブロック62Aに向けて、次のコンクリートブロック62Bが移動される場合を示し、図6(B)は、コンクリートブロック62Bの移動後に次のコンクリートブロック62Cが移動される場合を示し、図6(C)は、コンクリートブロック62Cの移動後に次のコンクリートブロック62Dが移動される場合を示す。
【0050】
なお、図6に示す例では、安定角である流動勾配θは、流動勾配θaが設定されているものとする。すなわち、3D充填シミュレーション部52は、流動勾配データ記憶部54を参照して、取得したコンクリート情報による水セメント比及びスランプ値と、構造データ記憶部53による構造情報による打設領域の厚さ(水平の断面寸法)とに対応する流動勾配θaが設定される。
【0051】
また、図6に示す例では、コンクリートブロック62の一例として直方体を用いた場合を示すが、コンクリートブロック62の形状は直方体に限定されるものではなく、容積を有する多面体であればよい。
【0052】
図6(A)に示すように、コンクリートブロック62A上にコンクリートブロック62Bが積み重ねられた場合、最下層のコンクリートブロック62Aと、コンクリートブロック62Bとの成す角度θ1が安定角である流動勾配θaを超えるため、コンクリートブロック62Bを一方向に転落させる(図6(A)に点線で示すブロック位置)。
【0053】
次に、図6(B)に示すように、コンクリートブロック62A上にコンクリートブロック62Cが積み重ねられた場合、最下層のコンクリートブロック62A及びコンクリートブロック62Bと、コンクリートブロック62Cとは角度θ2を成す。このとき、角度θ2は流動勾配θaを超えているものとする。コンクリートブロック62Cによる角度θ2が流動勾配θaを超える場合、コンクリートブロック62Cを一方向に移動する。移動後のコンクリートブロック62Cでも流動勾配θaを超えるため、コンクリートブロック62Cを一方向に移動させ転落させる(図6(B)に点線で示すブロック位置)。
【0054】
そして、図6(C)に示すように、コンクリートブロック62A上にコンクリートブロック62Dが積み重ねられた場合、最下層のコンクリートブロック62Aからコンクリートブロック62Cに至る直線と、コンクリートブロック62Cとコンクリートブロック62Dとを結ぶ直線とは角度θ3を成す。このとき、角度θ3は流動勾配θa以下であるものとする。このため、コンクリートブロック62Dの一方向への移動を終了、すなわち、コンクリートブロック62を転落させる処理を終了する。
【0055】
以上のようにして、複数のコンクリートブロック62を水平方向に移動させることにより、順次コンクリートブロック62を、設定された流動勾配θになるまで転落させる。このように、本実施形態では、コンクリートの流動を、予め定めた大きさのブロックの移動として扱うことによって、計算負荷を抑制することが可能になる。
【0056】
また、3D充填シミュレーション部52は、打設領域へのコンクリートの充填状況をシミュレーションしたシミュレーション結果を出力する機能を有している。
【0057】
3D充填シミュレーション部52は、シミュレーション結果を、コンクリート状況導出部41及び報知部43に出力することができる。
【0058】
報知部43は、情報を報知する機能部である。例えば、報知部43は、3D充填シミュレーション部52によってシミュレーションされた、打設領域へのコンクリートの充填状況をシミュレーション結果を示す情報として報知する。具体的には、3D充填シミュレーション部52では、打設位置、時刻及び打設量から、どの位置に、どの程度のコンクリートが打設され、そのコンクリートは型枠等により定まる構造情報(壁幅、梁幅・梁成等)による構造物の打設領域に重力に従って下方から充填されることを推定可能である。従って、報知部43は、3D充填シミュレーション部52によるシミュレーション結果を、コンクリートの充填状況を示す情報として、その情報を数値情報及び画像情報として報知する。報知部43は、コンクリートの充填状況を示す情報を表示することで報知してもよいし、ネットワーク2を介して現場端末へ表示可能な情報を出力することで報知してもよい。なお、コンクリートの充填状況を示す情報は、3次元情報であってもよいし、例えば、平面図で示されるような2次元情報であってもよい。
【0059】
図7に、コンクリートを打設する打設領域内へのコンクリートの充填状況を、報知部43により報知する情報の一例を示す。図7に示す例は、打設領域内へのコンクリートの充填状況を表示装置等の画面に表示した画像情報の一例である。
【0060】
図7に示す例では、型枠等により定まる構造情報による打設領域として、壁を形成するための型枠内に、コンクリートを、複数の打設位置Da,Db,Dcの各々で打設する場合を示している。打設領域は、型枠、図7に示す例では、壁を形成するための型枠の上部からのみ内部を目視可能である。3D充填シミュレーション部52は、外部から不可視であるコンクリートの打設部位以外の部位であっても、コンクリートの充填状況を推定する。従って、図7に示すように、3D充填シミュレーション部52によって推定された、コンクリートの流動形状を含む、外部から不可視の打設領域へのコンクリートの充填状況を確認することができる。
【0061】
ところで、壁などを建造する場合、型枠等によって、窓開口や吹き出し部(段差)を形成する場合がある。これらの窓開口や吹き出し部(段差)を形成する場合であっても、3D充填シミュレーション部52は、打設領域内へのコンクリートの充填状況を推定可能である。
【0062】
図8A図8Fに、型枠等によって窓開口80を有する壁を形成するための打設領域に、コンクリートを打設する際におけるコンクリートの充填状況の一例を示す。
【0063】
図8Aに示すように、窓開口80を避けた位置(図8Aでは窓開口80の左側位置)を打設位置としてコンクリートを打設するシミュレーションを実行した場合、コンクリートは、順次積層され、コンクリート情報、すなわち、コンクリートの柔らかさや流動性などを規定する水セメント比やスランプ値に応じて定まる所定位置まで、水平方向(例えば、図8Aでは右方向)に展開する流動勾配となる。打設したコンクリートは、流動勾配を維持しつつ、展開するが、図8Bに示すように、窓開口80の下部領域に到達すると、窓開口80で制限され、窓開口80により制限された打設領域に充填され、コンクリート表面(最上部)が上昇する。この場合、コンクリートの自重によって鉛直方向に力が作用し、窓開口80の下部領域へコンクリートを押し出す。これにより、窓開口80の下部領域では、流動勾配を維持しつつ、コンクリートが展開される。この場合、自重による力と、流動勾配を維持しつつ、コンクリートが展開される力とが均等になると、コンクリートは所定位置で流動が停止する。
【0064】
この状態は、図8Cに示すように、窓開口80のない壁を形成するための打設領域に、コンクリートを打設したコンクリートの充填状況(一点鎖線で示したコンクリートの表面形状)に対応すると考えられる。そして、次の打設も同様に、図8Dに示すように、窓開口80により制限された打設領域に充填され、図8Eに示すように、コンクリートの自重によって窓開口80の下部領域へコンクリートを押し出され、図8Eに示すコンクリートの充填状況(二点鎖線で示したコンクリートの表面形状)で停止する。従って、図8Fに示すように、窓開口80を有する壁を形成するための打設領域にコンクリートを打設する場合、窓開口80の下部領域では、流動勾配が水平方向(図8Fに示す例では、右方向)に徐々に移動する流動形状のコンクリートの充填状況に近い流動形状となることが予測される。
【0065】
そこで、本実施形態では、打設領域に、コンクリートの充填が制限される窓開口などの制限領域を有する場合に、制限領域に対してコンクリートブロック62の移動条件を付与する。移動条件の一例は、制限領域の下方では、コンクリートブロック62を強制的に水平移動する、というものである。この打設領域、すなわち、コンクリートの充填が制限される窓開口などの制限領域を有する場合に、移動条件に従って、コンクリートブロック62を移動させる処理を説明する。
【0066】
図9に、窓開口80を有する打設領域に、移動条件に従ってコンクリートブロック62の移動状態の一例を示す。
図9(A)は、窓開口80を有する打設領域に、移動条件に従ってコンクリートブロック62を移動させるための付加情報の一例を示す。図9(B)は、窓開口80を有する打設領域に、コンクリートブロック62を移動させることで、コンクリートを打設する場合の一例を示す。
【0067】
図9(A)に示すように、付加情報の一例として、打設領域に窓開口80を有する場合、窓開口80の最下部で、かつ水平方向の両端部にブロック検出部82を設定し、さらに、窓開口80の最下部から下方に向って所定距離ごとにブロック検出部82を設定する。なお、ブロック検出部82は、3D充填シミュレーション部52によってコンクリートの流動状態を推定する場合に、コンクリートブロック62の到達を検出するための指標である。次に、コンクリートの打設を開始し、上記のように、コンクリートブロック62の移動(転落)を行う(図6参照)。次に、図9(B)に示すように、コンクリートブロック62がブロック検出部82に到達した場合には、図10(A)に示すように、移動条件に従って、コンクリートブロック62を移動させる、すなわち、水平方向の両端部に設定されたブロック検出部82までコンクリートブロック62を水平方向に移動させる。ブロック検出部82までコンクリートブロック62の移動が終了すると(図10(A))、上記のように、コンクリートブロック62の移動(転落)を行う(図6参照)。そして、図10(B)に示すように、コンクリートブロック62のブロック検出部82への到達毎に、コンクリートブロック62を水平方向に移動させる処理を繰り返す。
【0068】
このように、打設領域に付加情報を設定し、移動条件に従って、コンクリートブロック62を移動させることによって、打設領域に窓開口を有する場合であっても、3D充填シミュレーション部52は、打設領域内へのコンクリートの充填状況を推定可能である。
【0069】
上記では、水平方向の両端部に設定されたブロック検出部82までコンクリートブロック62を水平方向に移動させる場合を説明したが、窓開口80の水平方向の長さに拘らず、コンクリートブロック62を水平方向に移動させたのでは、コンクリートの流動状態に適合しない場合がある。このため、コンクリートブロック62を水平方向に移動させる場合には、移動距離を予め設定しておくことが好ましい。一方、コンクリートブロック62を水平方向に移動させる移動距離を予め設定した場合、窓開口80の下部の打設領域にコンクリートブロック62が到達しない領域が発生する。この場合には、窓開口80の下部の打設領域に、一方から打設した後に、他方からも打設するようにすればよい。
【0070】
図11に、移動距離を予め設定した移動距離だけコンクリートブロック62を水平方向に移動させる場合の一例を示す。図11に示す例では、窓開口80の水平方向の半分の長さ(L/2)を、コンクリートブロック62を水平方向に移動させる距離とした場合の一例を示す。
図11(A)は、窓開口80の一方側の打設領域に、移動条件に従ってコンクリートブロック62を移動させる場合の一例を示し、図11(B)は、他方側の打設領域に、移動条件に従ってコンクリートブロック62を移動させる場合の一例を示す。
【0071】
このように、コンクリートブロック62の移動距離を設定することによって、窓開口80の水平方向の長さが長い場合であっても、3D充填シミュレーション部52は、打設領域内へのコンクリートの充填状況を推定可能である。
【0072】
なお、上記では、窓開口を形成する打設領域にコンクリートを打設する際におけるコンクリートの充填について説明したが、吹き出し部(段差)を有する打設領域にコンクリートを充填させる場合にも同様に適用可能である。
【0073】
次に、コンクリート打設支援装置4におけるコンクリートの打設作業の支援について説明する。コンクリート打設支援装置4は、コンクリート状況導出部41、打ち重ね間隔判定部、及び報知部43によって、先の打設から次に重ね打設を開始することを示す情報を報知する。
【0074】
コンクリート状況導出部41は、3D充填シミュレーション部52で推定されたコンクリートの充填状況に基づいて、打設側のコンクリート表面の位置(例えば、表面形状又は流動形状)、コンクリート表面が形成されてからの経過時間、およびコンクリート表面を覆うためのコンクリート量の各々を示すコンクリート状況を導出する。
【0075】
具体的には、打設領域に充填されるコンクリートは、流動しつつ変形する流動形状である。また、その流動形状は、打設されるコンクリートが到達する表面形状を有する。打ち重ね工法により先の打設をした後に重ね打設をして打ち重ねする場合、先の打設をしてから重ね打設をするまでの経過時間が、予め定めた時間を経過すると、先の打設による表面付近で、豆板やコールドジョイントを発生させる恐れがある。そこで、コンクリート状況導出部41は、3D充填シミュレーション部52で推定されたコンクリートの充填状況により示される打設側のコンクリートの表面の位置(例えば、表面形状又は流動形状)、すなわち、打設位置を導出する。また、その打設位置におけるコンクリート表面が形成されてからの経過時間も導出する。さらに、コンクリート状況導出部41は、打設側のコンクリートの表面の位置、例えば、表面形状を導出するので、そのコンクリート表面を覆うためのコンクリート量も導出することが可能である。
【0076】
打ち重ね間隔判定部42は、コンクリート状況導出部41で導出されたコンクリート状況、例えば、コンクリート表面が形成されてから現時点までの経過時間が、所定時間に到達する打設位置が存在するか否かを判定する。この判定で用いられる所定時間は、打ち重ね工法により先の打設をした後に重ね打設をして打ち重ねする場合における予め定めた時間間隔に、移動時間及び予め定めた規定時間を加算した時間である。この移動時間は、現時点における打設位置から重ね打設をする位置までの移動時間及び現時点の打設位置から離脱(例えば打設を終了して移動を開始)するまでに要する時間を含むことが好ましい。また、規定時間は、後述する報知部43により経過時間が所定時間に到達する以前に情報を報知するために予め定められる時間である。
【0077】
報知部43は、打ち重ね間隔判定部42における判定結果に基づいて、コンクリート状況導出部41で導出された経過時間が所定時間に到達する以前に、先の打設をした打設位置にコンクリート状況導出部41で導出されたコンクリート量のコンクリートを重ね打設を開始することを示す情報を報知する。具体的には、打ち重ね間隔判定部42で、コンクリート表面が形成されてから現時点までの経過時間が、所定時間に到達する打設位置が存在すると判定された場合、報知部43は、先の打設をした打設位置にコンクリート状況導出部41で導出されたコンクリート量のコンクリートの重ね打設を開始することを示す情報を報知する。上記経過時間が所定時間に到達する以前に情報を報知する場合、予め定めた時間間隔で、例えば、10分を単位として、30分前、20分前、10分前等のように、複数回報知することが好適である。この場合の時間間隔は固定間隔に限定されず、可変の時間間隔、例えば、経過時間が所定時間に近づくに従って短くなるように、可変の時間間隔を設定することが可能である。
【0078】
これによって、コンクリートを打ち重ねする場合、重ね打設までの時間間隔が、打ち重ね工法において定められる時間を超える可能性が有る場合に、打ち重ね工法において定められる時間を超過しないように事前に注意喚起することが可能になる。
【0079】
また、報知部43は、コンクリートの重ね打設を開始することを示す情報を報知する場合、重ね打設をする打設位置を報知することが好ましい。さらに、重ね打設をする打設位置までの経路を報知することがさらに好ましい。
【0080】
また、コンクリート打設支援装置4は、打設計画遂行記憶部44、打設計画遂行判定部45、及び復帰指示部46によって、コンクリートの打設を打設計画に沿って遂行できるように支援する。
【0081】
打設計画遂行記憶部44は、打設状況取得部51で取得された打設計画31を記憶すると共に、打設位置・時刻32と打設量33とを、逐次記憶する。すなわち、打設計画遂行記憶部44は、打設領域へ打設する打設計画と、施工された打設を履歴として記憶する。打設計画遂行判定部45は、打設計画遂行記憶部44に記憶された打設計画と、施工された打設の履歴とを比較して、打設計画に沿って打設がなされたか否かを判定する。復帰指示部46は、打設計画に沿って打設がなされるように、打設位置を打設計画に沿う位置となるように案内する復帰指示を行う。
【0082】
図12に、コンクリート打設支援装置4における打設計画の一例を示す。図12に示す例では、打設位置D1~打設位置D12に順にコンクリートを打設する打設計画の一例を示す。
【0083】
例えば、打設位置D1で打設している場合、次の打設位置D2を案内する。すなわち、打設計画遂行判定部45によって、打設計画と、施工されている打設とを比較して、打設計画に沿って打設がなされたか否かを判定する。復帰指示部46は、打設計画に沿って打設がなされている場合は、打設計画に沿って次の打設がなされるように、打設位置を案内する復帰指示を行う。一方、打設計画から離脱した打設がなされている場合は、例えば、打設計画に沿う打設がなされるように、打設計画の打設位置を案内する復帰指示を行う。
【0084】
ところで、上記のように、重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が有でかつ事前に注意喚起する報知を行った打設位置は打設計画から離脱している場合がある。この場合には、打設計画から離脱して中途に打設を行った打設位置から打設計画に沿った打設位置へ復帰する指示を行うことが好ましい。
【0085】
例えば、図12に示すように、打設位置D6の打設中に、打設位置D1における重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が有る場合、打設位置D1で重ね打設を開始することを示す情報が報知される。打設者は、報知された情報に応じて打設位置D1へ向かう。この場合、打設位置D6から打設位置D1への移動経路(例えば、図12に示す経路Sc1-a)を報知することが好ましい。また、打設者が打設計画Sc1から離脱して打設位置D1へ向かう場合、打設計画遂行判定部45は、打設計画遂行記憶部44に、現在の打設位置D6を一時的に記憶する指示を行う。そして、打設位置D1における重ね打設が終了した場合、打設計画遂行判定部45は、打設計画遂行記憶部44に一時的に記憶された打設位置D6を示す情報を取得して、報知部43へ出力することで、打設位置D6への復帰を報知する指示を復帰指示部46に行う。この場合、打設位置D1から打設位置D6への移動経路(例えば、図12に示す経路Sc1-b)を報知することが好ましい選択となる。これによって、打設計画Sc1から離脱して重ね打設が行われた場合であっても、打設計画Sc1に復帰させることが可能になる。
【0086】
なお、打設位置D6における打設が完了している場合には、打設計画遂行判定部45は、打設位置D6の次の打設位置D7を示す情報を取得して、打設位置D7を報知する指示を復帰指示部46に行ってもよい。
【0087】
一方、打設位置D1への打設後、打設位置D6(または次の打設位置D7)へ復帰するよりも他の打設位置への打設が最適な場合がある。例えば、打設計画に沿って打設している場合、打設位置D1への打設後には、次の打設位置D2において重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が高い。すなわち、打設位置D1への打設後に打設位置D1に近い打設位置D2において重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が有る場合、打設位置D6へ復帰させるより、打設位置D1への打設後に打設位置D2に打設させることが効率的である。従って、打設位置D6を報知して打設計画へ復帰させることよりも、重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が高い次の打設位置D2を報知して重ね打設を遂行させることが好ましい。
【0088】
そこで、本実施形態では、打設計画遂行判定部45は、重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が高い次の打設位置を導出し、打設計画に沿って打設することの適否を判定する。例えば、打設計画遂行判定部45は、打設位置D1への打設後に重ね打設すべき打設位置D2が導出されると、打設位置D6を報知して打設計画へ復帰させるのではなく、打設位置D2への打設をなすように判定する。これによって、打設計画から離脱して重ね打設が行われた場合であっても、重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が高い次の打設位置を報知可能になるので、重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が高い打設位置への重ね打設が可能になる。
【0089】
上記のコンクリート打設支援装置4は、コンピュータにより実現可能である。
図13に、本実施形態に係るコンクリート打設支援装置4を、コンピュータにより実現する構成の一例を示す。
図13に示すように、コンクリート打設支援装置4として動作するコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)4A、RAM(Random Access Memory)4B、およびROM(Read Only Memory)4Cを備えた装置本体400を含んで構成されている。装置本体400は、入出力インタフェース(I/O)4Dを備えており、CPU4A、RAM4B、ROM4C、及びI/O4Dは各々コマンド及びデータを授受可能なようにバス4Eを介して接続されている。バス4Eには、不揮発性メモリ等の記憶部4Fが接続されている。記憶部4Fには、コンクリート打設支援プログラム4F1、シミュレーションプログラム4F2、建物の構造データベース4F3、及び流動勾配データベース4F4が記憶されている。また、I/O4Dには、通信インタフェース(I/F)4G、入力部4N、及び表示部4Hが接続されている。
【0090】
装置本体400は、コンクリート打設支援プログラム4F1、及びシミュレーションプログラム4F2が記憶部4Fから読み出されてRAM4Bに展開され、RAM4Bに展開されたコンクリート打設支援プログラム4F1、及びシミュレーションプログラム4F2がCPU4Aによって実行されることで、コンクリート打設支援装置4として動作する。
【0091】
次に、コンクリート打設支援装置4として動作するコンピュータの装置本体400の動作について説明する。
【0092】
図14には、コンピュータにより実現したコンクリート打設支援装置4におけるコンクリート打設支援処理、及びシミュレーション処理の流れの一例が示されている。装置本体400では、コンクリート打設支援プログラム4F1、及びシミュレーションプログラム4F2が記憶部4Fから読み出されてRAM4Bに展開され、RAM4Bに展開されたコンクリート打設支援プログラム4F1、及びシミュレーションプログラム4F2をCPU4Aが実行する。
【0093】
まず、ステップS100では、コンクリートの充填先の形状(構造物)及び打設計画31を取得する。次のステップS102では、コンクリートの組成、すなわち、水セメント比、及びスランプ等を含むコンクリート情報34を取得する。
【0094】
打設者は、打設計画に沿う打設位置においてコンクリートの打設を開始する。
次に、ステップS104では、コンクリートの打設開始によるコンクリートの吐出が開始されたか否かを判断する。ステップS104は、打設者によって、コンクリートの打設が開始されるまで否定判断を繰り返す。打設者によって、コンクリートの打設が開始されると、ステップS104で肯定判断し、次のステップS106で、コンクリートの打設位置・時刻32、および吐出量である打設量33を取得し、記憶する。
ステップS100、ステップS102、及びステップS106の処理は、図2に示す打設状況取得部51の動作の一例である。
【0095】
次に、ステップS108では、構造物の打設領域へのコンクリートの充填状況を導出し、次のステップS110で、導出された充填状況を表示する。ステップS108及びステップS110の処理は、シミュレーションプログラム4F2の実行により実現される。
ステップS108及びステップS110の処理は、図2に示す3D充填シミュレーション部52の動作の一例である。
【0096】
ステップS112では、吐出が終了したか否かを判別することで、打設が終了したか否かを判断する。打設途中の場合は、ステップS112で否定判断を繰り返し、打設が終了した場合はステップS112で肯定判断し、コンクリートの打設終了時刻を記憶する。次に、ステップS114では、終了した打設位置が、打設計画の最終の打設位置以外の打設位置に含まれるか否かを判別することによって、打設計画を遂行中か否かを判断する。
【0097】
打設計画を遂行中の場合、ステップS114で肯定判断し、ステップS118で、打設済みの打設領域のコンクリート表面が形成されてから、すなわち、先の打設から現時点までの経過時間が、所定時間に到達する打設位置、及びそのコンクリート表面への打設量を導出する。
【0098】
次のステップS120では、先の打設から現時点までの経過時間が、所定時間に到達する打設位置が存在するか否かを判別することにより、打設計画を遂行するか否かを判断する。すなわち、先の打設から現時点までの経過時間が、所定時間に到達する打設位置が存在する場合、打設計画から離脱した打設位置において、重ね打設を要する打設位置が存在するため、ステップS120で否定判断する。ステップS120で否定判断した場合は、ステップS122で、現在の打設位置を一時的に記憶する。例えば、図12に示すように打設者が打設計画から離脱する打設位置D1へ向かう場合、打設位置D6を一時的に記憶する。
【0099】
ステップS120の判断処理は打設計画遂行判定部45の処理の一例であり、ステップS122の処理は、打設計画遂行記憶部44に打設位置D6を一時的に記憶する指示を行う打設計画遂行判定部45の処理の一例である。
【0100】
次に、ステップS124では、重ね打設する打設位置を提示し、次の打設を促すメッセージを報知して、処理をステップS104へ戻す。
【0101】
一方、打設計画から離脱した打設位置への打設を終了した場合、ステップS114で否定判断し、ステップS115へ処理を進める。ステップS115では、重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が高い次の打設位置が有るか否かを判断する。具体的には、重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が高い次の打設位置が導出された場合、肯定判断される。ステップS115で否定判断の場合は、ステップS116において、一時的に記憶されている打設位置を提示し、打設計画Sc1への復帰を促すメッセージを報知した後に、処理をステップS104へ戻す。
【0102】
一方、ステップS115で否定判断の場合は、ステップS117において、上記導出された重ね打設までの時間間隔が所定時間を超える可能性が高い次の打設位置(例えば、D2)を提示し、次の打設位置への打設を促すメッセージを報知した後に、処理をステップS104へ戻す。これによって、打設計画から離脱して重ね打設が行われた場合であっても、適切な打設計画に則したメッセージを報知可能になる。
【0103】
ステップS120で肯定判断した場合は、終了した打設位置が、打設計画の最終の打設位置か否かを判別することによって、打設計画を終了するか否かを判断する。ステップS126de否定判断の場合は、ステップS104へ処理を戻し、肯定判断の場合は、本処理ルーチンを終了する。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係るコンクリート施工管理支援システム1によれば、打設位置・時刻32、打設量33、及びコンクリート情報により打設者から不可視であるコンクリートの打設領域内における流動状態をシミュレーションすることができる。これにより、実時間で現場における打設状況を打設者が確認可能になる。
【0105】
また、本実施形態に係るコンクリート施工管理支援システム1によれば、コンクリートを打ち重ねする場合、重ね打設までの時間間隔が、打ち重ね工法において定められる時間を超える可能性が有る場合に、打ち重ね工法において定められる時間を超過しないように事前に注意喚起することが可能になる。
【0106】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を離脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0107】
1 コンクリート施工管理支援システム
2 ネットワーク
3 現場端末
4 コンクリート打設支援装置
4F 記憶部
4H 表示部
4N 入力部
5 充填状況推定装置
6 コンクリート吐出装置
7 打設者機器
31 打設計画
32 打設位置・打設時刻
33 打設量
34 コンクリート情報
41 コンクリート状況導出部
42 打ち重ね間隔判定部
43 報知部
44 打設計画遂行記憶部
45 打設計画遂行判定部
46 復帰指示部
51 打設状況取得部
52 充填シミュレーション部
53 構造データ記憶部
54 流動勾配データ記憶部
62 コンクリートブロック
80 窓開口
82 ブロック検出部
400 装置本体
図1
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