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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】歯内治療用の装置、方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/40 20170101AFI20230413BHJP
   A61C 5/46 20170101ALI20230413BHJP
【FI】
A61C5/40
A61C5/46
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2019168258
(22)【出願日】2019-09-17
(62)【分割の表示】P 2017213732の分割
【原出願日】2011-10-21
(65)【公開番号】P2020006220
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2019-10-17
(31)【優先権主張番号】12/945,791
(32)【優先日】2010-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/485,089
(32)【優先日】2011-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/405,616
(32)【優先日】2010-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512125116
【氏名又は名称】ソネンド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】ベルクハイム,ビャーネ
(72)【発明者】
【氏名】ハクプール,メールザド
(72)【発明者】
【氏名】ファン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ガリブ,モルテザ
(72)【発明者】
【氏名】テッブス,リチャード エス.
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0248932(US,A1)
【文献】米国特許第06162202(US,A)
【文献】特表2008-501520(JP,A)
【文献】米国特許第06290502(US,B1)
【文献】国際公開第2009/047670(WO,A2)
【文献】特開2005-080802(JP,A)
【文献】特表2009-517119(JP,A)
【文献】国際公開第01/026735(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/40
A61C 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯を治療する装置であって、
前記歯に対向して配置される流体プラットフォームであって、前記流体プラットフォームと前記歯の一部とによって少なくとも部分的に画定される空洞を形成する流体プラットフォームと、
前記空洞と連通し、前記空洞内の流体中に、前記歯の治療領域を洗浄するために十分であり、かつ、複数の周波数からなる広帯域音響出力スペクトルの音響出力を有する圧力波を生成する圧力波発生器と、
を備え、
前記広帯域音響出力スペクトルの総音響出力の10%よりも多くが、100kHzを超える広帯域音響出力スペクトルに含まれる、
装置。
【請求項2】
前記広帯域音響出力スペクトルは、50kHzよりも大きな帯域を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体プラットフォームは開口部を備え、前記圧力波発生器は前記開口部に挿入されるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記圧力波発生器は、流体ジェットを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記圧力波発生器は衝突面を有し、前記圧力波発生器は前記衝突面に衝突するように構成された液体ジェットを形成するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記液体ジェットに液体を提供するように構成された脱気液源をさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記流体プラットフォームは、流体保持器をさらに備え、
前記流体保持器は、前記圧力波発生器の周囲に配置され、前記歯へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記流体保持器は、前記空洞内へ空気が流れるのを実質的に阻止するように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記流体保持器はスポンジを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記流体プラットフォームは、前記空洞内の流体圧力を調整するための孔を備える、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
前記流体プラットフォームは、前記空洞から流体を除去するための流体出口ポートを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記流体プラットフォームは、前記流体出口ポートと流体連通している孔をさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記孔は、空気が、前記流体出口ポートを介した前記空洞から除去される流体の流れに伴って移動することを可能にするように構成され、前記孔は、空気の流れが前記空洞に入るのを阻止するように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
総音響出力の25%よりも多くが、100kHzを超える広帯域音響出力スペクトルに含まれる、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記広帯域音響出力スペクトルは、周波数の3デシベル帯域基準で測定される帯域幅が50kHzより大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
歯の治療領域を治療するための装置であって、
内側空洞を備える流体保持器であって、前記内側空洞内に流体を実質的に保持するように前記歯の一部に当接されるように構成された流体保持器と、
前記流体保持器の前記内側空洞に露出しているエネルギー出口を有する圧力発生器であって、前記歯の治療領域を洗浄するために十分であり、かつ、複数の周波数からなる広帯域音響出力スペクトルの音響出力を有する圧力波を前記保持された流体内で生成する圧力波発生器と、
を備え、
前記広帯域音響出力スペクトルの総音響出力の10%よりも多くが、100kHzを超える広帯域音響出力スペクトルに含まれ、
前記流体保持器が前記歯に適用された場合に、前記歯の前記治療領域と流体連通するように前記内側空洞が配置され、前記圧力波発生器の前記エネルギー出口は前記歯の外側に配置される、
装置。
【請求項17】
本体をさらに備え、前記本体は、前記流体保持器と、空気が前記内側空洞に入るのを阻止しつつ前記流体の少なくとも一部が前記内側空洞から出ることを可能にするように構成された1つまたは複数の孔と、を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記1つまたは複数の孔は、少なくともいくらかの空気の流れが、前記内側空洞から出る流体に伴って移動することを可能に構成される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記本体は、前記内側空洞から流体が流れることを可能にする流体出口をさらに備える、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記流体保持器は、前記圧力波が前記流体内を伝搬するのに十分な量の流体を前記内側
空洞に保持するように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項21】
前記圧力波発生器によって生成される実質的な量の音響圧力波は、前記内側空洞内に少なくともいくらかの流体キャビテーションを生成するのに十分なエネルギーを保持する、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記流体保持器は流れ制限器を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項23】
前記流れ制限器はスポンジを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記流れ制限器は孔を含む、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記流体保持器は、空気が前記内側空洞に入るのを阻止するように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項26】
前記流体保持器は、少なくとも一つの出口を含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記流体保持器は、流体、有機物質、またはこれら両方の前記内側空洞からの漏れを阻止するように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記流体保持器は、流体の少なくとも一部が前記内側空洞から出るのを可能にするとともに、空気が前記内側空洞に入るのを阻止するように、構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項29】
前記流体保持器はキャップを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項30】
前記キャップは、前記キャップが前記内側空洞へのアクセス開口部を閉鎖するように、前記内側空洞の周りに配置される、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記キャップは、前記歯の歯シール領域に配置されるように構成される、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記キャップは、平面を有する歯シールに一致する平面を含む、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記流体保持器は、前記内側空洞の周囲にかつ前記キャップ内に配置されるように構成された流れ制限器を有する、請求項30に記載の装置。
【請求項34】
前記キャップは、流体の制限された進入および排出を可能にするように前記内側空洞を封止する、請求項30に記載の装置。
【請求項35】
前記流体保持器は、前記歯内の流体圧力を、安全なレベルを維持できる所定圧力レベル未満の圧力に維持するように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項36】
前記圧力波発生器は、流体ジェットを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項37】
総音響出力の25%よりも多くが、100kHzを超える広帯域音響出力スペクトルに含まれる、請求項16に記載の装置。
【請求項38】
前記広帯域音響出力スペクトルは、周波数の3デシベル帯域基準で測定される帯域幅が
50kHzより大きい、請求項16に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「APPARATUS AND METHODS FOR ROOT CANAL TREATMENTS」と題する2010年10月21日に出願された米国仮特許出願第61/405,616号明細書と、「APPARATUS AND METHODS FOR ROOT CANAL TREATMENTS」と題する2011年5月11日に出願された米国仮特許出願第61/485,089号明細書の利益を主張し、それらの各々は、全体として参照により本明細書に組み込まれる。本出願はまた、全体として参照により本明細書に組み込まれる、「LIQUID JET APPARATUS AND METHODS FOR DENTAL TREATMENTS」と題する2010年11月12日に出願された米国特許出願第12/945,791号明細書に対する優先権も主張する。
【0002】
(技術分野)
本開示は、概して、歯科学および歯内治療学と、歯を治療する装置、方法および組成物とに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
従来の根管処置では、罹患した歯の歯冠にドリルで開口部を開け、根管系内に歯内治療用ファイルを挿入して、根管空間を開放してその中の有機物質を除去する。そして、根管を、ガッタパーチャまたは流動性充填物質等の固形物で充填し、歯を復元する。しかしながら、この処置は、根管空間からすべての有機物質を除去せず、感染症等の処置後合併症に至る可能性がある。さらに、歯内治療用ファイルの動きにより、有機物質が、根尖孔を通って根尖周囲組織内に押し込まれる可能性がある。場合によっては、歯内治療用ファイル自体の端部が根尖孔を貫通する可能性がある。こうした事象により、根尖孔の近くの軟組織に外傷がもたらされ、処置後合併症に至る可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
[概要]
ここで、開示する装置、方法および組成物の特徴を例示するために、本開示のさまざまな非限定的態様を提供する。歯内治療用の装置、方法および組成物の例を提供する。
【0005】
一態様では、本装置は、治療中に歯空洞内に流体を実質的に保持するように構成された流体プラットフォームを備えることができる。流体プラットフォームは、流体が歯空洞内外に流れる際に歯空洞内の流体循環を維持するのに役立つことができる。歯プラットフォームは、歯内の歯空洞内の圧力を調整することができる。流体プラットフォームは、(たとえば、歯空洞の過加圧または加圧不足を阻止するように)流体が歯から出るのを可能にし、かつ/または空気が歯空洞内に流れ込むのを阻止することができる(それにより、歯空洞内の流体内の圧力波または音響キャビテーションの発生を阻止することができる)1つまたは複数の通気孔を備えることができる。流体プラットフォームは、歯空洞内に流体(および流体運動量)を保持することにより、歯空洞内の液体循環を促進することができる。
【0006】
別の態様では、本装置は、根管および歯空洞内の歯表面を清掃するために使用することができる音波を発生させるように構成された圧力波発生器を備えることができる。圧力波発生器としては、液体噴射装置、光エネルギーを歯空洞内に伝播させる導波管、超音波装
置または機械的撹拌器のうちの1つまたは複数を挙げることができる。
【0007】
別の態様では、流体は、歯の清掃に役立つように防腐剤溶液または抗菌性溶液を含むことができる。流体を、(歯内治療に使用される非脱気流体に比較して)溶存気体含有量が低減するように脱気することができ、それにより圧力波発生または清掃の有効性を向上させることができる。
【0008】
本明細書に記載する態様および実施形態のすべてのあり得るコンビネーションおよびサブコンビネーションが企図される。たとえば、1つの実施形態は、流体プラットフォームおよび圧力波発生器を含むことができる。別の実施形態は、1つまたは複数の通気孔を備えた流体プラットフォームを含むことができる。いくつかの実施形態は、歯空洞に流体を供給するための流体入口および/または歯空洞から流体を除去するための流体出口を備えた流体プラットフォームを含むことができる。いくつかのこうした実施形態では、流体出口に通気孔を設けることができ、それは、歯空洞内の圧力を調整するのに役立つことができる。別の実施形態は、歯空洞に脱気流体を供給する流体プラットフォームを含むことができる。別の実施形態は、液体噴射装置を備える圧力波発生器を含むことができ、液体ジェットは脱気液を含む。装置の組合せの他の例を本明細書に記載する。
【0009】
この概要の目的のために、いくつかの開示する発明のいくつかの態様、利点および新規の特徴が要約されている。本発明のいかなる特定の実施形態によっても、こうした利点のすべてを必ずしも達成することができるとは限らないことが理解されるべきである。したがって、たとえば、当業者は、本明細書に教示されているような1つの利点または利点の集まりを、本明細書において教示されまたは示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく達成する方法で、本明細書に開示する発明を具現化するかまたは実施することができることを理解するであろう。さらに、上述したことは、いくつかの開示する発明を要約するように意図されており、本明細書に開示する発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】歯の根管系を概略的に示す断面図である。
図2A】圧力波発生器によって歯を治療するシステムの例を概略的に示す。
図2B-1】圧力波発生器の異なる実施形態によって発生させることができる音響出力のあり得る例を概略的に示すグラフである。
図2B-2】圧力波発生器の異なる実施形態によって発生させることができる音響出力のあり得る例を概略的に示すグラフである。
図3A】歯内治療処置に使用することができる流体プラットフォームの例を概略的に示す。
図3B】歯内治療処置に使用することができる流体プラットフォームの例を概略的に示す。
図3C】歯内治療処置に使用することができる流体プラットフォームの例を概略的に示す。
図4A】歯内治療処置用のシステムの例を概略的に示す。
図4B】歯内治療処置用のシステムの例を概略的に示す。
図4C】歯内治療処置用のシステムの例を概略的に示す。
図4D】歯内治療処置用のシステムの例を概略的に示す。
図5A】治療流体が、治療流体内の気泡が溶液から出て歯内の小さい通路を閉塞し得るように溶存気体を含む、歯科処置の例を概略的に示す。
図5B】治療流体が、治療流体内の気泡が溶液から出て歯内の小さい通路を閉塞し得るように溶存気体を含む、歯科処置の例を概略的に示す。
図5C】治療流体が、歯の通路に治療流体から放出された気泡が実質的にないように溶存気体含有量が(図5Aおよび図5Bの例の治療流体に比較して)低減した脱気流体を含む、歯科処置の例を概略的に示す。
図5D】治療流体が、歯の通路に治療流体から放出された気泡が実質的にないように溶存気体含有量が(図5Aおよび図5Bの例の治療流体に比較して)低減した脱気流体を含む、歯科処置の例を概略的に示す。
図6A】高速液体ジェットを生成するように(図6A)、また、流体プラットフォームに流体を提供するように(図6B)適合されたシステムの実施形態を概略的に示すブロック図である。
図6B】高速液体ジェットを生成するように(図6A)、また、流体プラットフォームに流体を提供するように(図6B)適合されたシステムの実施形態を概略的に示すブロック図である。
図7】歯の一部に液体ジェットを供給するためのガイドチューブの実施形態を備えたハンドピースの実施形態を概略的に示す側面図である。
図8】液体ジェットを供給するためのガイドチューブの実施形態を備えたハンドピースの遠位端の実施形態を概略的に示す側面図である。
図9】液体噴射置を備える圧力波発生器を備えたハンドピースの例を概略的に示す。ハンドピースは流体出口を備え、圧力波発生器は流体入口(液体ジェット)を提供する。
図10A】クランプを使用して歯に当接させることができる流体プラットフォームの例を概略的に示す断面図である。流体プラットフォームは、圧力波発生器(たとえば液体ジェット)および通気孔付き流体出口を備えている。
図10B】ラバーダムクランプによって歯に取り付けることができる流体プラットフォームの例を概略的に示す上面図である。流体入口および流体出口が示されている。
図11】治療中の歯に当接させ、患者の対向する歯によって加えられる圧力により適所に保持することができる、流体プラットフォームの代替例を概略的に示す。
図12A】たとえばスポンジおよび/または通気孔を含むことができる流れ制限器を備えたハンドピースの実施形態を概略的に示す。
図12B】ハンドピースにおける通気孔の配置例を概略的に示す上面図である。
図13A】歯に形成されたアクセス開口部を概略的に示す。
図13B図13Aの歯の歯冠の周縁に施された歯シールの実施形態を概略的に示す。歯シールの上面は、平板を当てて除去した後に実質的に平坦にすることができる。
図13C】腐食により歯冠の一部が欠けている歯に施された歯シールの実施形態を概略的に示す。歯シールを用いて歯冠のその部分を覆うかまたは増強して、歯シール(および歯冠の腐食していない部分)が流体治療用の実質的に完全な空洞を形成するようにすることができる。
図14A】例としての歯の歯髄室内に挿入された寸法測定器の例を概略的に示す。この例では、寸法測定器は、歯髄室には大きすぎる。
図14B】歯の歯髄室に挿入された寸法測定器の別の例を概略的に示す。この例では、寸法測定器は、歯髄室には正しいサイズである。寸法測定器を、歯髄室の幅を横切って横方向に移動させることができ、実線は第1位置にある寸法測定器を示し、点線は歯髄室内の異なる位置にある寸法測定器を示す。
図15A】歯の歯シールに当接されたハンドピースを概略的に示す側面図である。歯空洞内に配置された圧力波発生器を示す、図15Aは側面図であり、図15Bは部分切取図であり、図15Cは、ハンドピースおよび圧力波発生器の遠位端を示す拡大図である。
図15B】歯の歯シールに当接されたハンドピースを概略的に示す側面図である。歯空洞内に配置された圧力波発生器を示す、図15Aは側面図であり、図15Bは部分切取図であり、図15Cは、ハンドピースおよび圧力波発生器の遠位端を示す拡大図である。
図15C】歯の歯シールに当接されたハンドピースを概略的に示す側面図である。歯空洞内に配置された圧力波発生器を示す、図15Aは側面図であり、図15Bは部分切取図であり、図15Cは、ハンドピースおよび圧力波発生器の遠位端を示す拡大図である。
図16A】さまざまな歯内治療処置中に使用することができる技術の例を示すフローチャートである。
図16B】さまざまな歯内治療処置中に使用することができる技術の例を示すフローチャートである。
図16C】さまざまな歯内治療処置中に使用することができる技術の例を示すフローチャートである。
図16D】さまざまな歯内治療処置中に使用することができる技術の例を示すフローチャートである。
図17】歯内治療処置中に脱気流体を使用する方法例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を通して、参照する要素の間の全体的な対応関係を示すために、参照番号は再使用される。図面は、本明細書に記載する実施形態例を例示するために提供されており、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。
【0012】
[詳細な説明]
本開示は、たとえば歯内治療処置等の歯科処置を行うための装置、方法および組成物を記載している。開示する装置、方法および組成物を、有利には、たとえば根管清掃治療で使用して、根管系から有機物および/または無機物を効率的に除去しかつ/または根管系を消毒することができる。本装置、方法および組成物を、歯清掃、虫歯の治療、歯石および歯垢の除去等、他の歯科治療に使用することができる。有機物質(または有機物)は、生きているか、炎症を起こしているか、感染しているか、罹患しているか、壊死しているかまたは腐敗しているかに関らず、たとえば軟組織、歯髄、血管、神経、結合組織、細胞物質、膿および微生物等、健康なまたは罹患した歯または根管系で通常見られる有機物質を含む。無機物は、石灰化組織および石灰化構造体を含み、それらは根管系に頻繁に存在する。
【0013】
図1は、典型的なヒトの歯10の例を概略的に示す断面図であり、歯10は、歯肉14の上方に延在する歯冠12と、顎骨18内の槽(歯槽)内に配置された少なくとも1つの歯根16とを備えている。図1に概略的に示す歯10は臼歯であるが、本明細書に記載する装置および方法を、切歯、犬歯、両尖歯、小臼歯または臼歯等、あらゆるタイプのヒトまたは動物の歯に使用することができる。歯10の硬組織は、歯10の主構造を提供する象牙質20と、歯肉14の近くのセメントエナメル境15まで歯冠12を覆う非常に堅いエナメル層22と、セメントエナメル境15の下方の歯10の象牙質20を覆うセメント質24とを含む。
【0014】
象牙質20内に歯髄腔26が画定されている。歯髄腔26は、歯冠12内の歯髄室28と、各歯根16の根尖32に向かって延在している根管空間30とを備えている。歯髄腔26は歯髄を収容し、歯髄は、神経、血管、結合組織、象牙芽細胞ならびに他の組織および細胞の構成要素を含む軟質の脈管組織である。歯髄は、歯髄室28の上皮層および根管空間30を通して歯10に神経支配および滋養を提供する。血管および神経は、歯根16の根尖32の先端近くで、小さい開口部、すなわち根尖孔34を通って根管空間30に入り/そこから出る。
【0015】
I.歯内治療用のシステムの例の概説
A.圧力波発生器の例
図2Aは、圧力波発生器64によって歯10を治療するシステムの例を概略的に示す。歯内治療アクセス開口部を、歯10内に、たとえば咬合面、頬側面または舌側面において形成することができる。アクセス開口部は、歯10の歯髄腔26の一部へのアクセスを可能にする。本システムは、流体保持器66および圧力波発生器64を備えることができる。圧力波発生器64を、電気リード62によって電力源に電気的に接続することができる。
【0016】
流体保持器66は、キャップ70と、歯10からの流体の流れを阻止する流れ制限器68とを備えることができる。流れ制限器68はまた、歯10内への空気の流れも阻止することができる。キャップ70を、金属またはプラスチック等の十分に耐久性のある生体適合性物質から形成することができる。流れ制限器68は、スポンジ、膜(透過性または半透過性)または通気孔を含むことができる。流れ制限器68は、歯10内の流体圧力を制限することができ、それにより、流体圧力が閾値を超えて上昇した場合に、流体は流体制限器68を通って歯髄室から漏れるかまたは流れ出ることができる。流れ制限器68を使用することにより、歯空洞内における(たとえば、歯髄室28内におけるまたは歯の根尖32における)流体圧力が、望ましくないかまたは安全でないレベルまで上昇することを有利に防止することができる。本明細書に記載する流体は、概して液体を意味し、液体は、一定量の溶存気体を含む可能性がある。たとえば、流体は、(適当な温度条件および圧力条件に対してヘンリーの法則から確定することができるような通常の溶存気体(たとえば空気)含有量を有する)水か、または通常の溶存気体含有量を含む水に比較して低減した溶存気体含有量を有する脱気水を含むことができる。
【0017】
流体保持器66はハンドピース(図示せず)を含むことができ、それによって歯科医師は、治療中に歯10に対して流体保持器66を当接させるかまたは操作することができる。いくつかの実施態様では、流体保持器66を、機械的留め具またはクランプ(たとえば図10Aおよび図10Bを参照)、歯科用接着剤により、または患者が保持器を噛むことによって加えられる圧力により(たとえば図11を参照)、歯に当接させることができる。
【0018】
流体保持器66を、たとえば、保持器を歯の咬合面に(接着剤またはスポンジ等の流れ制限器があってまたはなしで)配置することにより、歯空洞へのアクセス開口部を覆うかあるいは塞ぐことにより、歯の周囲を流体保持器の一部で包むことにより等、歯に当接されるように構成することができる。たとえば、図2Aは、歯10の咬合面の上に配置された流体保持器66を示すが、他の実施形態では、流体保持器66の遠位端は、たとえばプラグとしてアクセス開口部内に適合するようなサイズまたは形状となっている。
【0019】
図2Aに概略的に示すように、圧力波発生器64の遠位端を、歯内の歯空洞65(歯空洞65を本明細書では歯腔と呼ぶ場合もある)内の流体内に配置することができる。歯空洞65は、(正常なまたは異常な象牙質および/または組織構造体によるかまたはこうした構造体の変性、悪化または損傷により)歯10内にすでに存在する空間、開口部または空洞のあらゆる部分、および/または治療中に歯科医師が形成した空間、開口部または空洞のあらゆる部分を含む、歯10のあらゆる空間、開口部または空洞の少なくとも一部を含むことができる。たとえば、歯空洞65は、歯髄室28の少なくとも一部を含む場合があり、以下のうちの1つまたは複数の少なくとも一部を含む場合もある。すなわち、歯へのアクセス開口部、根管空間30および細管である。治療によっては、歯空洞65は、根管空間30、副根管および歯10の細管のうちのいくつかまたはすべてを含むことができる。治療によっては、アクセス開口部を、歯空洞から離れてまたは別個に形成することができる。
【0020】
圧力波発生器64の遠位端を、歯空洞内に、たとえば歯髄室28内に配置することがで
きる。圧力波発生器64の遠位端を、歯空洞内に適合するようなサイズおよび形状とすることができる。たとえば、圧力波発生器の遠位端を、歯に形成された歯内治療アクセス開口部内にまたはそこを通して適合するようなサイズとすることができる。治療法によっては、圧力波発生器64の遠位端を、歯髄室28の床の数ミリメートル以内に配置することができる(たとえば図15Cを参照)。他の治療法では、圧力波発生器64の遠位端を、流体保持器66によって保持される流体内に、ただし歯髄腔26の外側に(たとえば歯の咬合面を越えて)配置することができる。いくつかの実施態様では、圧力波発生器64を治療中の所望の歯に対して位置決めするかまたは方向付けるように、(流体保持器66に加えてまたはその代りに)圧力波発生器64を、患者の口内で操作することができるハンドピースまたは携帯型ハウジングに結合することができる。
【0021】
歯内治療処置の少なくとも一部の間、圧力波発生器64の遠位端を、歯空洞内の流体に沈めることができる。たとえば、歯空洞内に液体がほとんどかまたはまったくない間に、圧力波発生器64の遠位端を歯空洞65内に配置することができる。流体水位が発生器64の遠位端を越えて上昇するように、流体を歯空洞に加えることができる。そして、圧力波発生器64を、歯内治療処置の少なくとも一部に対して起動させることができる。処置の他の部分の間、発生器64は、歯空洞65内で停止しておりかつ/または流体水位の上方にあり得る。
【0022】
さまざまな実施態様において、圧力波発生器64は、本明細書に記載するさまざまな装置の1つまたは複数の実施形態を含む。たとえば、圧力波発生器64は、液体噴射装置を含むことができる。いくつかの実施形態では、液体噴射装置は、流路または内腔を有する位置決め部材(たとえばガイドチューブ)を備え、その流路または内腔に沿ってまたはそれを通って液体ジェットが伝播することができる。位置決め部材の遠位端部は、衝突面を有することができ、そこに、液体ジェットが突き当たって、偏向されてジェットまたは噴霧になる。位置決め部材の遠位端部は、1つまたは複数の開口部を有することができ、それにより、ジェットが周囲環境における流体(たとえば歯空洞内の流体)と相互作用することができ、また、偏向された液体が位置決め部材から出て歯10内の周囲環境(たとえば歯空洞および歯空洞内の流体)と相互作用することができる。これらの相互作用の結果により、歯空洞65内に圧力波および流体循環を発生させることができ、それは、少なくとも部分的に歯を清掃することができる。治療法によっては、位置決め部材の遠位端にまたはその近くに配置された開口部は、流体保持器66によって歯10内に保持される流体内に沈められる。図3Aを参照してさらに後述するように、いくつかのこうした実施形態では、液体噴射装置は、歯空洞65に対する流体入口71として作用することができ、空洞を少なくとも部分的に充填するように流体を供給することができる。したがって、いくつかのこうした実施形態では、液体噴射装置は、圧力波発生器64として、かつ流体入口71として機能する。
【0023】
いくつかの実施形態では、圧力波発生器64は、音波装置、超音波装置またはメガソニック装置(たとえば、音波、超音波またはメガソニックパドル、ホーンまたは圧電変換器)、機械的撹拌器(たとえば、電動式プロペラあるいはパドルまたは回転/振動/脈動ディスクあるいはシリンダ)、歯空洞65に光エネルギーを提供することができる光学システム(たとえば、歯空洞内にレーザ光を伝播する光ファイバ)、または歯内にあるいは歯内の伝播媒体(たとえば、歯空洞内に保持される流体)内に圧力波を発生させることができる他の何らかの装置を含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、キャップ70は使用されない。たとえば、流れ制限器68を、歯10の咬合面のアクセス開口部の周囲または上に当接させることができ、圧力波発生器64の遠位端を、流れ制限器68(または流れ制限器の開口部)を介して歯空洞65内に挿入することができる。
【0025】
(1)圧力波発生器によって生成される音響キャビテーションの例
圧力波発生器64を、音波67を発生させるように構成することができ、音波67は、歯および/または歯空洞65内の流体を伝播することができ、歯表面から有機物質および/または無機物質を分離するかまたは溶解し、かつ/または歯髄組織を解離させることができる。歯空洞65内の流体は、音波67用の伝播媒体として作用することができ、音波67を根管空間30の根尖32に向かって、細管内に、かつ有機物が見つかる可能性がある歯の他の空間内に伝播させるのに役立つことができる。音波67は、限定されないが音響キャビテーション(たとえば、キャビテーション気泡形成および崩壊、慣性キャビテーション、マイクロジェット形成)、音響ストリーミング、マイクロエロージョン、流体撹拌、流体循環、渦度、ソノポレーション、ソノケミストリ等を含む、歯10内に発生する可能性があるさまざまな効果の有効性をもたらすかまたは増大させることができる。音響エネルギーは、歯内の有機物質および/または無機物質を周囲の象牙質から分離させるのに十分であり得る。音響エネルギーによってもたらされる(または増強される)効果は、根管壁、象牙質表面および/または細管から歯髄組織を剥離するかまたは分離する清掃作用をもたらすことができ、こうした組織をより小さい切片にさらに破断することができる。
【0026】
いかなる特定の理論または動作モードを支持することなくまたはそれによって限定されることなく、圧力波発生器64によって発生する音場は、歯空洞65内に保持されている流体内にキャビテーションクラウドを発生させることができる。キャビテーションクラウド(および/または衝突面に衝突するジェット)の生成および崩壊により、場合によっては、歯10内に実質的な水中音場を発生させることができる。この音場は、象牙質細管で充填される、歯の根管空間および/または内部象牙質表面におけるまたはその近くの圧力波、発振および/または振動を発生させることができる。細管内またはその近く(たとえば、場合によっては細管の高表面エネルギー部位)に形成されたキャビテーション気泡の成長、発振および崩壊を含む、さらなるキャビテーション効果も可能であり得る。これら(および/または他の)効果により、歯の歯髄室28の効率的な清掃をもたらすことができる。
【0027】
(2)圧力波発生器によって発生する音響出力の例
図2B-1および図2B-2は、圧力波発生器の異なる実施形態によって発生させることができる音響出力のあり得る例を概略的に示すグラフである。これらのグラフは、水平軸における音響周波数(kHz)の関数として垂直軸における音響出力(任意の単位)を概略的に示す。歯内の音響出力は、歯10内の有機物質を解離させ、歯髄腔26および/または根管空間30を有効に清掃するように作用することができる、たとえば音響キャビテーション(たとえばキャビテーション気泡形成および崩壊、マイクロジェット形成)、音響ストリーミング、マイクロエロージョン、流体撹拌、流体循環、ソノポレーション、ソノケミストリ等を含む効果に影響を与え、効果をもたらし、または効果の強度を向上させることができる。さまざまな実施形態において、圧力波発生器64は、(少なくとも)約0.5kHz、約1kHz、約10kHz、約20kHz、約50kHz、約100kHz、またはこれらを超える周波数での音響出力を含む、音波67を生成することができる。音波67は、同様に他の周波数で(たとえば、上述した周波数未満の周波数で)音響出力を有することができる。
【0028】
図2B-1のグラフは、歯空洞65内に配置された表面に衝突している液体ジェットにより、かつ液体ジェットの歯空洞内の流体との相互作用により発生する音響出力の概略例を表す。この概略例は、著しい出力が約1kHzから約1000kHzまでわたっている(たとえば帯域幅が約1000kHzであり得る)音響出力の広帯域スペクトル190を示す。音響エネルギースペクトルの帯域幅を、場合によっては、3デシベル(3-dB)
帯域幅(たとえば音響出力スペクトルの半値全幅すなわちFWHM)に関して測定することができる。さまざまな例において、広帯域音響出力スペクトルは、約1kHzから約500kHzの範囲、約10kHzから約100kHzの範囲、または周波数の他の何らかの範囲の帯域幅で著しい出力を含むことができる。いくつかの実施態様では、広帯域スペクトルは、約1MHzを超える音響出力を含むことができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器64は、ピーク出力が約10kHzであり帯域幅が約100kHzである広帯域音響出力を生成することができる。さまざまな実施形態では、広帯域音響出力スペクトルの帯域幅は、約10kHzを超えるか、約50kHzを超えるか、約100kHzを超えるか、約250kHzを超えるか、約500kHzを超えるか、約1MHzを超えるか、または他の何らかの値である。清掃方法によっては、約20kHzと200kHzとの間の音響出力が特に有効であり得る。音響出力は、約1kHzを超えるか、約10kHzを超えるか、約100kHzを超えるか、または約500kHzを超える周波数での実質的な出力を有することができる。実質的な出力は、たとえば、総音響出力(たとえば、全周波数にわたって積分される音響出力)の10%を超えるか、25%を超えるか、35%を超えるか、または50%を超える量の出力を含むことができる。
【0029】
図2B-2のグラフは、歯空洞65内に配置された超音波変換器によって発生する音響出力の概略例を表す。この概略例は、最高ピーク192aが約30kHzの基本周波数の近くにある音響出力の相対的に狭帯域のスペクトル192を示し、また、最初の数個の高調波周波数の近くのピーク192bも示す。ピークの近くの音響出力の帯域幅は約5kHzから10kHzであり、図2B-1に概略的に示す音響出力の帯域幅よりはるかに狭いことが分かる。他の実施形態では、音響出力の帯域幅は、約1kHz、約5kHz、約10kHz、約20kHz、約50kHz、約100kHzまたは他の何らかの値であり得る。例としてのスペクトル192の音響出力は、基本周波数および最初のいくつかの高調波でその出力の大部分を有し、したがって、この例の超音波変換器は、比較的狭い周波数範囲(たとえば、基本周波数および高調波周波数の近く)で音響出力を提供することができる。例としてのスペクトル190の音響出力は、比較的広帯域出力(スペクトル192に比較して相対的に高い帯域幅)を示し、液体ジェット例は、超音波変換器例より大幅に多くの周波数で音響出力を提供することができる。
【0030】
広帯域音響出力を有する音波(たとえば、図2B-1に示す例を参照)が、狭帯域音響出力スペクトル(たとえば図2B-2に示す例を参照)を有する音波によって発生するキャビテーションより、歯の清掃においてより有効であるキャビテーションを発生させることができると、要求されてはいないが、考えられている。たとえば、音響出力の広帯域スペクトルは、キャビテーションクラウドにおいて比較的広い範囲の気泡サイズを生成することができ、これらの気泡の爆縮は、サイズ範囲の狭い気泡より組織を崩壊する際に有効であり得る。比較的広帯域の音響出力はまた、音響エネルギーが、長さスケールの範囲、たとえば細胞スケールから組織スケールまで、に作用することも可能にする。したがって、広帯域音響出力スペクトルをもたらす圧力波発生器(たとえば、液体ジェットのいくつかの実施形態)は、狭帯域音響出力スペクトルを生成する圧力波発生器より、いくつかの歯内治療に対する歯の清掃において有効であり得る。いくつかの実施形態では、複数の狭帯域圧力波発生器を使用して、比較的広範囲の音響出力を生成することができる。たとえば、各々が異なるピーク周波数で音響出力を生成するように調整された複数の超音波チップを使用することができる。
【0031】
B.流体管理用の流体プラットフォームの例
本明細書に開示するいくつかの装置および方法は、治療中の歯10の歯髄腔26の少なくとも一部が、歯内治療処置中に流体(たとえば液体)で充填される場合に、より効率的に行うことができる。いくつかのこうした治療方法では、歯髄室28を、歯髄室28に空気(または気体)ポケットが実質的に残っていない液体で実質的に充填することができる
。たとえば、歯髄室28に空気が漏れることにより、環境によっては(たとえばキャビテーションの有効性を低下させ、また、圧力波を減衰させることにより)治療の有効性が低下する可能性がある。治療方法によっては、歯髄室28から口腔(たとえば口)内に流体が漏れることは望ましくなく、それは、こうした漏れが不快な味または臭いを残す可能性があり、または患者の口内の組織を損傷することになる可能性があるためである。したがって、さまざまな治療法において、実質的に液体が充填された歯髄室28を維持し、治療中に空気が歯髄室28内に漏れるのを阻止し、かつ/または治療流体、廃棄流体および/または物質が歯髄腔から患者の口内に漏れるのを阻止する、流体プラットフォームを使用することができる。
【0032】
歯内の歯空洞65内に流体を維持するために流体プラットフォーム61(たとえば流体保持器)を使用することができ、それは、根管空間30(または歯の他の部分)の清掃を有利に可能にすることができる。処置によっては、流体は歯空洞65に供給され、歯空洞65内の流体圧力が上昇する可能性がある。空洞内の流体圧力が高くなりすぎる場合、有機物質、流体等が、歯10の根尖32に押し通される可能性があり、それにより感染等の合併症がもたらされる可能性がある。また、たとえば、歯空洞内部に吸引負圧がもたらされ、かつ負圧の絶対値が十分に大きい場合は、負圧によって、患者に対して苦痛および不快等の問題がもたらされる可能性がある。したがって、さまざまな実施形態において、流体プラットフォーム61は、歯10の根尖32において(またはたとえば歯髄室28等の歯空洞の一部において)生成される圧力が、約500mmHg、約300mmHg、約200mmHg、約100mmHg、約50mmHg、約30mmHg、約20mmHgまたは他の何らかの値の上限値未満であるように構成される。(注:1mmHgは水銀の1ミリメートルであり、約133.322パスカルに等しい圧力の測度である)。流体プラットフォームの実施形態を、歯空洞65内の流体圧力が上限閾値を超えて上昇する場合に、流体圧力を安全なレベルまたは所望のレベルで維持するように、流体が空洞から流れ出るかまたは漏れ出ることができるように構成することができる。閾値を、所定圧力レベルとすることができる。いくつかの所定圧力レベルを、約500mmHg、約300mmHg、約200mmHg、約100mmHg、約50mmHg、約30mmHgまたは約20mmHgとすることができる。
【0033】
いくつかの実施態様では、根尖圧力または歯空洞圧力は、約-1000mmHg、約-500mmHg、約-300mmHg、約-200mmHg、約-100mmHg、約-50mmHg、約0mmHgまたは他の何らかの値の下限値を超えることが望ましい場合がある。たとえば、圧力が低くなり過ぎる(負になり過ぎる)場合、患者は不快になる可能性がある。流体保持器の実施形態を、歯空洞65内の流体圧力が下限閾値未満に低下した場合に、流体圧力を患者が耐えられるレベルかまたは所望のレベルで維持するように、周囲空気が流れ制限器(たとえばスポンジまたは通気孔)を通って流れるかまたは引き込まれることができるように構成することができる。下限閾値を、所定圧力レベルとすることができる。いくつかの所定圧力レベルを、約-1000mmHg、約-500mmHg、約-300mmHg、約-200mmHg、約-100mmHg、約-50mmHgまたは約0mmHgとすることができる。したがって、流体保持器のさまざまな実施形態は、歯空洞内の圧力を第1(たとえば上限)閾値未満であるようにかつ/または第2(たとえば下限)閾値を超えるように自動調整することができる。上述したように、いずれかまたは両方の閾値を所定圧力レベルとすることができる。
【0034】
流体が空洞に流れ込みかつ空洞から流れ出る際に、かつ/または圧力波発生器64が、(圧力振動を含む)音波67を発生させるように起動される際に、歯空洞65内の流体圧力が時間によって変動する可能性がある。音波67は、同様に圧力変動をもたらす可能性があるキャビテーションを誘発することができる。いくつかの実施態様では、平均圧力を使用することができる。平均圧力は、流体内に発生する圧力変動に対応する期間にわたる
(流体内の特定の箇所における)圧力の時間平均、または状況によっては、空間領域にわたる(たとえば歯空洞の幾分かまたはすべてにわたる)圧力の空間平均であり得る。所与の点(空間または時間)における圧力が、(たとえばキャビテーションが誘発する事象により)平均圧力よりはるかに大きくなる可能性があり、流体プラットフォームのいくつかの実施形態は、圧力が望ましくない閾値または安全でない閾値を超えて上昇するのを(たとえば液体が歯空洞から流れ出るのを可能にする通気孔を設けることにより)阻止する安全機能を提供することができる。
【0035】
さまざまな治療法において、流体が歯10の歯空洞65内に供給される時、歯空洞65内の流体の管理を「制御する」ことができるか、または「無制御」のままにすることができる。
【0036】
(1)無制御型流体プラットフォームの例
いくつかのタイプの無制御型流体プラットフォームでは、歯空洞65(たとえば歯髄腔の一部)は、周囲空気、流体等に実質的に開放されている可能性があり、歯空洞65内部の流体は、歯空洞65内に完全に収容されていない可能性がある。たとえば、流体は、歯科処置中に、飛散するか、溢れ出るか、または外部システム(たとえば吸引ワンド)を介して排出される可能性がある。いくつかのこうした場合、流体を、処置中に(たとえば洗浄または注入を介して)間欠的にまたは連続的に補充することができる。過剰な廃棄流体もまた、患者の口からまたはラバーダム(使用される場合)から、処置中に間欠的にまたは連続的に排出することができる。
【0037】
無制御型の流体管理方法の例は、歯内治療用洗浄シリンジを用いる根管の洗浄であり得る。この処置中、流体は、歯髄腔内に注入されかつそこから出て、口腔空間またはラバーダム(使用される場合)内に流れ込み、かつ/または歯科助手が操作する外部排出システムによって吸引される。無制御型流体管理の別の例は、根管内に挿入することができる超音波チップによる洗浄流体の起動であり得る。超音波装置の起動時、歯内の流体は、歯髄腔から飛散する可能性がある。歯髄腔内部の流体を、超音波チップのシリンジまたは水道を介して補充することができ、過剰な流体を、歯科助手が操作する外部吸引ホースを介して口腔空間またはラバーダム(使用する場合)から吸引することができる。
【0038】
(2)制御型流体プラットフォームの例
別のタイプの流体プラットフォームを、「制御型」流体プラットフォームとして分類することができる。いくつかのタイプの制御型流体プラットフォームでは、歯内治療アクセス開口部を少なくとも部分的に覆うように装置を使用することにより、流体を歯空洞65(たとえば歯髄腔)内に実質的に収容することができる。いくつかのこうした流体プラットフォームは、流体がそれぞれ歯空洞65に入りかつそこから出るための流体入口および/または出口を備えている場合もあれば備えてない場合もある。処置中に歯10に流れ込みかつ/または歯10から流れ出る流体を制御することができる。いくつかの実施形態では、歯10内に入る流体の総体積(または速度)を、歯10から出る流体の総体積(または速度)に実質的に等しいように制御することができる。2つのタイプの制御型流体プラットフォームの例について説明する。
【0039】
(i)閉鎖型流体プラットフォームの例
閉鎖型システムは、歯空洞65内に流れ込む流体の量が、歯空洞65から出る流体の量に実質的に等しい制御型システムであり得る。閉鎖型システムの例は、歯内開口部の周囲に、歯10に当接されるかまたは封止される流体キャップ70を備えている。いくつかのこうしたシステムでは、流体の推進力(たとえば圧力差)は、開口部の1つ(たとえば、入口または出口のいずれか)にのみ加えられる。他の実施態様では、推進力を、入口および出口の両方に加えることができ、その場合、以下のあり得る問題を低減するかまたは回
避するために、加えられる推進力を、実質的に大きさが等しいように調整することができる。すなわち、歯10に対して圧力(正または負)が作用することによる根尖周囲への流体/残骸の押出し(たとえば正圧)や過度の負圧による苦痛および/または出血、または、流体プラットフォームのシールの破壊による流体および有機物の口内への漏れ(たとえば正圧)、あるいは、治療効率を低下させ得る空洞内への空気の引き込み(たとえば負圧)である。
【0040】
いくつかの閉鎖型流体プラットフォームの動作は、入口流体圧力および出口流体圧力が実質的に同じであるように調整されるため、比較的敏感な可能性がある。いくつかのこうした閉鎖型システムにより、患者に対して安全性の問題がもたらされる可能性がある。たとえば、いくつかのこうした実施態様は、患者の身体が許容することができる実質的に安全な圧力(たとえば、さまざまな場合において、約-30mmHgから+15mmHg、または-100mmHgから+50mmHg、または-500mmHgから+200mmHgの範囲の根尖圧力)を保証しない可能性がある。いくつかのこうした閉鎖型システムにより、歯の内部に圧力(正または負)が作用する結果となる可能性がある。たとえば、推進力が入口における圧力に対応する場合、出口流体ラインにおける(歯空洞からの流体の流出を阻止するかまたは低減する)小さい障害物により、歯10内部の圧力が増大する結果となる可能性がある。また、廃棄流体が歯に対して排出される際の高さにより、歯10の内部の静圧がもたらされる可能性がある。
【0041】
(ii)通気孔付き流体プラットフォームの例
通気孔付き流体プラットフォームの例は、入口流体流速および出口流体流速が、必要ではないが実質的に同じであり得る、制御型システムを含む。2つの流速は、場合によっては、または期間によっては実質的に同じであり得る。流体プラットフォームは、流体圧力(たとえば根尖周囲領域における圧力)の安全でないかまたは望ましくない上昇の可能性を低減することができる、流体が歯空洞65から出るのを可能にする1つまたは複数の「通気孔」を備えることができる。いくつかの通気孔付き流体プラットフォームでは、入口流速および出口流速を、独立した推進力によって推進させることができる。たとえば、いくつかの実施態様では、流体入口を、圧力ポンプと流体連通させかつそれによって推進することができ、流体出口を、排出システム(たとえば吸引ポンプまたは真空ポンプ)と流体連通させかつそれによって制御することができる。他の実施態様では、流体入口または流体出口をシリンジポンプによって制御することができる。流体入口および流体出口の圧力は、負の正味圧力が歯空洞65内で維持されるようなものであり得る。こうした正味負圧は、治療流体を流体入口から歯空洞65内に供給するのに役立つことができる。
【0042】
本明細書に記載するさまざまな実施形態において、「通気孔」は、透過性または半透過性材料(たとえばスポンジ)、開口部、細孔または穴等の形態をとることができる。制御型流体プラットフォームにおいて通気孔を使用することにより、1つまたは複数の望ましい利点をもたらすことができる。たとえば、排出システムは、歯空洞65から廃棄流体を、存在する限りにおいて、収集することができる。治療の停止(たとえば治療サイクルの間の時間)がある場合、廃棄流体流は停止する可能性があり、排出システムは、歯空洞65を減圧するのではなく、排出システムに供給される流体がないことを少なくとも部分的に補償するように、1つまたは複数の通気孔を通って空気を引き入れ始めることができる。排出システムが何らかの理由で作動を停止する場合、廃棄流体は、1つまたは複数の通気孔を通って、患者の口内にまたはラバーダム(使用する場合)に流れ出すことができ、そこで外部排出ラインによって収集され得る。したがって、通気孔の使用は、加えられる圧力差の提供を軽減する傾向があり、したがって、歯内に負圧または正圧が蓄積するのを阻止または防止することができる。通気孔付き流体プラットフォームのいくつかの実施形態は、動作パラメータが指定されたものからそれる場合であっても、システムを歯内の安全な動作圧力を維持するように構成することができるため、安全性を向上させることがで
きる。また、歯空洞65の内部の正圧または負圧は封止材に対して幾分かの量の力を加える可能性があり、したがって、場合によってはこうした力に耐えるためにより強固なシールが必要である可能性がある。いくつかの通気孔付きシステムのあり得る利点として、通気孔が、歯の内部の圧力上昇(または低下)を緩和するのに役立ち、封止材に対して作用する力を低減または除去し、したがって、封止をより実現可能かつ有効なものとする、ということが挙げられる。
【0043】
図3Aは、歯内治療処置で使用することができる流体プラットフォーム61の例を概略的に示す。この例では、流体プラットフォーム61は、図2Aを参照し説明したものと概して類似することができる流体保持器66(たとえばキャップ70および流れ制限器68)を備えている。流体保持器66を使用して、歯10内の空洞に流体を保持することができる。流体保持器66は内部(または内側)空洞69を備えることができ、それにより、流体保持器66が歯に当接されたときに、内部空洞69および歯空洞65が合わせて流体空洞63を形成する。流体空洞63は、流体によって少なくとも部分的に充填され得る。いくつかの有利な実施形態では、流体空洞63を、治療処置中に流体で実質的にまたは完全に充填することができる。上述した通気孔として機能することができる流れ制限器68を使用して、流体が空洞63から流れ出るのを可能にし(たとえば、空洞内の流体圧力が大きくなりすぎる場合)、かつ/または空洞63内に空気が流れ込むのを阻止することができる。流れ制限器68は、歯空洞内に流体を保持するのに役立つことができ、それは、歯空洞内の流体循環を促進するのに役立つことができ、それにより、洗浄または清掃の有効性を向上させることができる。流れ制限器68は、いくつかの実施形態ではスポンジ(たとえば連続気泡または独立気泡)を含むことができる。流体プラットフォーム61に開口部またはポートを備える流れ制限器68の例については、図3Bを参照して説明する。
【0044】
流体プラットフォーム61はまた、歯10内の空洞63に流体を供給するための流体入口71も備えることができる。流体入口71は、(空洞が実質的に流体で充填された後に)空洞63内の流体に沈められるように構成することができる遠位端を有することができる。流体入口71の遠位端を、たとえば図3Aに示すように、歯10の歯髄室28に配置することができるようなサイズおよび形状とすることができる。入口71の遠位端を、歯髄室28内にかつ根管空間30への入口の上方に配置することができる。したがって、いくつかの実施態様では、流体入口71は、歯髄空間内に延在しない。他の実施態様では、入口71の遠位端を、流体保持器66によって保持される流体内であるが、歯髄腔26の外側に(たとえば歯の咬合面の上方に)配置することができる。場合によっては、流体入口71の遠位端を、根管空間30の一部に適合するようなサイズ/形状とすることができる。たとえば、入口71の遠位端は、細いチューブまたは針を備えることができる。さまざまな実施態様において、入口71は、流体を歯空洞65に供給する中空チューブ、内腔または流路を備えている。他の実施態様では、流体入口71は、歯空洞65内に向けられる液体ビーム(たとえば高速液体ジェット)であり得る。いくつかのこうした実施形態では、液体ビームは、歯空洞65に流体を供給するとともに、空洞63内の流体において圧力波67を発生させることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、流体プラットフォーム61は、液体源から歯空洞に流体を供給するように構成された流体導入器を備えることができる。流体導入器は、流体入口71の実施形態を含むことができる。いくつかの実施態様では、流体導入器はまた、流体導入器と液体源との間に流体連通をもたらす流体ライン(または配管)を含むことも可能である。流体導入器は、いくつかの実施態様では、液体噴射装置の一部を含むことができる。
【0046】
流体入口71は、入口71を介して歯に供給される流体を提供する流体貯蔵器、流体供給部または流体源と流体連通することができる。流体を、たとえば、1つまたは複数のポンプを使用することにより、または重力送りにより(たとえば、流体貯蔵器の高さを歯空
洞65の高さより上方に上昇させることにより)、圧力下で供給することができる。流体プラットフォーム61は、たとえば圧力調整器、圧力センサ、弁等を含む追加の構成要素(図3Aには示さず)を備えることができる。場合によっては、歯空洞65内に圧力センサを配置して、治療中に歯空洞65内の圧力を測定することができる。
【0047】
入口71からの流体の流れにより、歯空洞65内に流体移動をもたらすかまたはそれを増強することができる。たとえば、流体流入速度、圧力、入口径等のさまざまな条件下で、生成される流れにより、歯空洞65内の循環、撹拌、乱流等をもたらす(または増強する)ことができ、それにより、場合によっては洗浄または清掃の有効性を向上させることができる。上述したように、いくつかの実施態様では、液体噴射装置を、入口71として機能するように使用することができ、液体噴射装置は、歯空洞65に流体を供給するとともに、空洞65内に圧力波67を発生させることができる。したがって、液体噴射装置は、こうした実施態様では、圧力波発生器64および流体入口71としての役割を果たすことができる。液体ジェットからの流体(および衝突板が使用される場合は噴霧に変換されたもの)は、歯空洞65内に循環を誘発することができる。入口71からの流体の流れを、洗浄、清掃または歯の消毒等の複数のプロセスに使用することができる。
【0048】
図3Bは、歯内治療処置に使用することができる流体プラットフォーム61の別の例を概略的に示す。この例では、流体プラットフォーム61は、流体保持器66と、流体入口71と、歯空洞65から流体を除去するように構成された流体出口72とを備えている。図示する実施形態では、流体保持器66は、歯に形成された歯シールに当接させるかまたは取り付けることができるキャップ70を備えている(歯シール75については、図13Bおよび図13Cを参照して後述する)。弾性材料(たとえばスポンジまたは半透過性材料)を含む(任意選択的な)流れ制限器68を間隙内に配置して、キャップ70と歯シール75との間に実質的水密シールを提供するのに役立つことができる。実質的水密シールは、治療中に歯空洞65内に流体を保持するのに役立ち、また、治療中に歯空洞65に周囲空気が入るのを阻止することができる。
【0049】
いくつかの実施態様では、流体出口72は受動的に機能し、たとえば、流体は、毛管力、重力または歯内で生成される過圧のために出口72を通って移動する。他の実施態様では、流体出口72は能動的にポンプ動作し、流体を、ポンプ、吸引、または流出導管を通って流体を引き出す他の装置を用いて移送することができる。一例では、流体出口72は、部分真空圧下で流体を吸い出すように操作される吸引ラインを備え、歯科医院で一般に見られる吸引システム/真空ラインに接続され得る。
【0050】
図3Aを参照して上述したように、流体を流体空洞63内に少なくとも部分的に保持することができ、流体空洞63は、流体保持器66内の内部空洞69と歯空洞65とを含むことができる。流体空洞63に、少なくとも部分的に流体を充填することができる。いくつかの有利な実施形態では、治療処置中に流体空洞63に実質的にまたは完全に流体を充填することができる。治療中、流体入口71および流体出口72は、流体空洞63内に保持されている流体と流体連通することができる。図3Bに示す実施形態では、流体入口71および流体出口72は、流体空洞63内の流体と流体連通し、流体は、流体入口71から歯内に流れ込むことができ(図3Bの矢印付き実線92a)、流体出口72を介して歯から除去することができる(図3Bの矢印付き実線92b)。この実施形態では、入口71から供給される流体と出口72から除去される流体とがともに(たとえば弁、チューブ、針等を通過することなく)直接流体連通することができる、単一の流体空洞63があることに留意されたい。流体入口71を介して歯空洞65内に流体を供給することにより、歯空洞65内に循環をもたらすことができる(たとえば矢印付き線92aを参照)。
【0051】
この例では、流体プラットフォーム61は、流体出口72に沿って配置される通気孔7
3の形態を有するさらなる流れ制限器を備えている。通気孔73は、たとえば流体圧が空洞内で大きくなり過ぎる場合に、歯空洞65からの流体が通気孔73から流れ出るのを可能にすることができる。通気孔73は、歯空洞65の過加圧を阻止するように逃し弁として作用することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、通気孔73は、流体が歯空洞65を出るのを可能にするが周囲空気が歯空洞65に入るのを阻止する、方向バイアス弁を備えている。たとえば、通気孔73は、1つまたは複数の一方向(または逆止め)弁を備えることができる。一方向弁は、歯空洞65内の流体圧力が圧力閾値(たとえば場合によっては約100mmHg)を超える場合に、流体が歯空洞65から出るのを可能にするように選択された、クラッキング圧を有することができる。他の実施形態では、一方向弁を使用して、周囲状態と歯空洞65内の圧力との圧力差が十分に大きい場合に、周囲空気が歯空洞65内に流れ込むのを可能にすることができる。たとえば、こうした一方向弁のクラッキング圧を、空洞内の流体圧力が正味(負)閾値未満である(たとえば、歯空洞が加圧不足である)場合、弁が開放して周囲空気が流体保持器66に流れ込むのを可能にするように選択することができる。こうした周囲空気を、流体出口72を介して流体保持器66から吸い出すことができる(たとえば、一方向弁を流体流出ラインに沿って配置することができる)。いくつかの実施形態では、通気孔73は、流体が流体保持器66から出るのを可能にする(一方で周囲空気が入るのを阻止する)一方向弁と、周囲空気が流体保持器66に入るのを可能にする一方向弁とを備えている。これらの2つの一方向弁のクラッキング圧を、所望の圧力範囲において流体が歯空洞65内に保持され、周囲空気が歯空洞65に入るのを阻止されるように選択することができる。たとえば、歯内の圧力範囲は、約-100mmHgと+100mmHgとの間であり得る。
【0053】
他の実施形態では、通気孔73を、空気が流体出口72に入り、歯空洞65から除去された流体とともに運ばれるのを可能にするように構成することができる。たとえば、図3Bに示すように、周囲空気が出口72における流体流の方向において流体出口72内に流れ込むように、通気孔73を配置し方向付けることができる(たとえば、矢印付き破線94aを参照)。こうした実施形態では、流体出口72における流れは、歯空洞65からの流体(たとえば矢印付き実線92bを参照)と周囲空気(たとえば矢印付き破線94bを参照)とをともに含む。いくつかの実施態様では、通気孔73は、出口72への流体の入口点の近くに、たとえば数ミリメートル以内に配置され、それにより、歯空洞65内の圧力が上昇し過ぎた場合に、流体が歯空洞65から流れ出るのを容易にすることができる。さまざまな実施形態において、2つ、3つ、4つまたはそれより多くの通気孔等、複数の通気孔73を使用することができる。通気孔73を、流体が歯空洞65から流れ出るのを可能にしながら、空気が歯空洞65に入るのを阻止するようなサイズとし、形状とし、そのように位置決めしかつ/または方向付けることができる。
【0054】
図3Aおよび図3Bに示すシステム例は、流体入口71からの流体の流入および/または流体出口72(存在する場合)からの流体の除去により、歯空洞65内に流体循環を誘発するのに役立つことができる。システム例はまた、有利には、患者安全機能を有することも可能である。たとえば、流体出口72が閉塞される(たとえば、吸引チューブがよじれるかまたは吸引が機能を停止する)場合、入口71から歯空洞65内への流体の流れにより流体圧力が上昇する可能性があり、それにより流体の水位が出口72まで上昇することになる可能性がある。流れ制限器68(たとえばスポンジまたは通気孔)は、流体が歯空洞65から(たとえばスポンジ内を流れるかまたは通気孔から漏れ出ることにより)出るのを可能にすることにより、流体圧力を軽減することができる。別の例として、流体入口71が閉塞される(または機能を停止する)場合、流体出口72は、歯空洞65から流体を除去することができ、歯空洞65内の圧力を徐々に低下させることができる。流れ制限器68は、歯空洞65の減圧を少なくとも部分的に軽減するように周囲空気が流体出口
72内に流れ込むのを可能にすることにより、歯10内の圧力を安全レベルまたは望ましいレベルで維持する傾向であり得る。したがって、歯空洞65内の圧力を安全限界または望ましい限界内(たとえば、下限圧力閾値を超えかつ上限圧力閾値未満)で維持するのを可能にすることにより、いくつかのこうした実施形態は、何らかの形態の流体制限器または圧力逃し弁を含まない閉鎖した流体容器に比較して利点を提供することができる。
【0055】
したがって、流体プラットフォーム61のいくつかの実施形態は、周囲環境に対して(たとえば流れ制限器68を介して)少なくとも部分的に開放していることが可能であり、歯空洞65内の圧力が自動調整するのを実質的に可能にすることができる。いくつかのこうした実施形態のさらなる利点は、流れ制限器68の自動調整により圧力を所望のレベルまたは安全レベル内に維持することができるため、治療中の歯空洞65内の圧力を監視または調整するために、圧力調整器、圧力センサ、入口/出口制御弁等を使用する必要はない、と言うことであり得る。他の実施形態では、歯内の流体環境に対して追加の制御を可能にするために、圧力調整器、圧力センサおよび制御弁を使用することができる。たとえば、圧力センサを使用して、流体入口71または流体出口72に沿って、歯空洞65の一部において等、圧力を測定することができる。さらに他の実施形態では、温度センサまたは温度コントローラを使用して、流体入口71または流体出口72における、歯空洞65における等、流体の温度を監視または調整することができる。
【0056】
(iii)歯から出る流体を分析するシステムの例
(歯髄室を有する歯における)歯髄室および(歯髄、残骸、有機物、石灰化構造体等を含む)歯の根管から一掃された実質的にあらゆるものを監視して、歯清掃の程度または進行を確定し、または歯が実質的に清浄になった時を確定することができる。たとえば、実質的にそれ以上、歯髄、石灰化構造体、有機物、無機物および/または残骸が歯から出てこない場合、歯は実質的に清浄である可能性があり、システムは操作者に対し、処置を停止するように信号(たとえば、可聴/可視アラーム、ディスプレイモニタ上の適切な出力)を提供することができる。歯空洞65からの出力のこうした監視を、開放型流体プラットフォーム、閉鎖型流体プラットフォームまたは通気孔付き流体プラットフォームを含む、本明細書に記載する実施形態のいずれとも使用することができる。
【0057】
図3Cは、流体出口72が任意選択的な監視センサ74と流体連通している流体プラットフォーム61の例を概略的に示す。監視センサ74は、歯10から除去された流体の1つまたは複数の特性を監視または分析することができる。監視センサ74は光学センサ、電気(たとえば抵抗)センサ、化学センサおよび/または電気化学センサを含むことができる。監視センサ74は、(たとえば流体内の粒子サイズの範囲を確定するように構成された)液体粒子カウンタ、液体またはガスクロマトグラフ、水素炎イオン化検出器、光イオン化検出器、熱伝導度検出器、質量分析器等を含むことができる。監視センサ74は、元素分析技法を用いて流体の特性を確定することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、監視センサは、たとえば測光センサ、分光センサ、カラーセンサまたは屈折率センサ等の光学センサを含む。電磁スペクトルのあらゆる部分における光学特性を測定することができる(たとえば、紫外、可視、赤外等)。たとえば、光学センサは、光源(たとえばLED)と流体(たとえば流体出口72における流体)に対して配置された光検出器(たとえばフォトダイオード)とを含むことができる。光源は流体内に光を放出することができ、光検出器は、流体出口72における流体から反射されるかまたはそこを透過する光の量を測定することができる。歯内治療の初期段階では、歯からの流体は、流体が濁りかつ多くの光を透過するのではなく反映するように実質的な量の歯髄物質を含む可能性がある。治療が進むに従い、流体内の歯髄物質の量が低減し、反射率がそれに応じて低下する可能性がある(または透過率が上昇する可能性がある)。歯からの流体に相対的にほとんど追加の歯髄物質が含まれない場合、出口72における流体は実質
的に清浄である可能性があり、反射率または透過率は、歯髄物質のない流体に対して(たとえば澄んだ水に対して)適している閾値に達する可能性がある。流出流体における歯髄物質の低減を、治療が実質的に完了したことか、または歯空洞が実質的に清浄であることの指標として使用することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、流体プラットフォーム61の上流に第2監視センサ74が配置されており、それを使用して、歯空洞65に入る前の流体の特性のベースライン測定を可能とすることができる。たとえば、閾値を、少なくとも部分的にベースライン測定値に基づくことができる。したがって、いくつかの実施形態では、流体プラットフォームから出る流体特性の検知された特性が、流体プラットフォームに入る流体の検知された特性と実質的に同じである場合、歯治療が実質的に完了したと判断することができる。
【0060】
さまざまな実施形態において、監視を、治療中に連続して行うことができ、または治療中に不連続の時点で行うことができる。監視センサ74を、流体内の炭素、たとえば全有機炭素(TOC)、全無機炭素または全炭素の量を測定するように構成することができる。全無機炭素の量は、治療中の石灰化組織、歯髄石または象牙質(たとえば第三象牙質)等の硬質構造体の除去を反映することができる。監視センサ74は、軟組織(たとえば歯髄、細菌)、硬組織(たとえば歯髄石または石灰化組織)または両方の除去に関連する特性を測定することができる。
【0061】
したがって、監視センサ74によって測定される特性が閾値に達すると、システムは、操作者に対して、治療が完了した(たとえば、歯からさらなる有機物質または無機物質がほとんど除去されていない)ことを警告することができる。いくつかの実施形態では、測定された特性の変化(たとえば、2つの異なる時点の間の測定値間の変化)を監視することができ、その変化が実質的に小さい(閾値または安定期に達したことを示す)時、システムは操作者に対して、治療が完了したことを警告することができる。
【0062】
いくつかの実施態様では、監視センサ74のフィードバックを使用して、歯内治療の1つまたは複数の態様を自動的に調節し、調整し、または制御することができる。たとえば、歯洗浄装置、歯清掃装置、流体源、流体プラットフォーム、圧力波発生器等を、治療の一部またはすべてを自動化するためにフィードバックに基づいて調節することができる。一実施態様では、組織溶解剤(たとえば次亜塩素酸ナトリウム)の濃度または流体流速を、歯流出物における有機物質の監視された量に対するフィードバックに少なくとも一部基づいて調節することができる。たとえば、歯から流れ出る有機物の量が比較的高いままである場合、治療流体における組織溶解剤の濃度または治療流体の流速を増大させることができる。逆に、有機物の量が急速に低減する場合、歯清掃は略完了している可能性があり、組織溶解剤の濃度または流体流速を低減することができる。いくつかのこうした実施態様では、有機物が十分に低減した場合、システムは異なる溶質(たとえば脱灰剤)に切り替えて、治療の異なる段階を開始することができる。別の実施態様では、監視センサ74からのフィードバックを使用して、圧力波発生器を、たとえば発生器が起動される(または停止される)時間を延長するかまたは短縮することにより、調節することができる。フィードバックを使用するいくつかの実施態様では、比例-積分-微分(PID)コントローラまたはファジーロジックコントローラを使用して、歯内治療の態様を調整または制御することができる。
【0063】
(iv)いくつかの制御型流体プラットフォームのさらなる特徴
いくつかの方法では、歯10の根尖32を通して歯10の根尖周囲領域(歯の根尖32を包囲する組織)内に、治療溶液はほとんどまたは実質的にまったく注入されない。根尖周囲領域内への流体の注入を制限するために、いくつかの実施形態は、歯の内側に生成され歯10の根尖32に伝達される圧力が、患者が耐えられる歯10の根尖周囲領域におけ
る圧力以下であるように構成される。さまざまな実施形態において、流体プラットフォーム61は、歯10の根尖32において(またはたとえば歯髄室28等の歯空洞の一部において)生成される圧力が、約500mmHg、約300mmHg、約200mmHg、約100mmHg、約50mmHg、約20mmHgまたは他の何らかの値の上限値未満であるように構成される。いくつかの実施態様では、根尖圧力または歯空洞圧力が、約-1000mmHg、約-500mmHg、約-300mmHg、約-200mmHg、約-100mmHg、約-50mmHg、約0mmHgまたは他の何らかの値の下限値を超えることが望ましい場合がある。流体制限器(たとえば、スポンジ、通気孔等)のサイズ、数および/または構成を選択することにより、さまざまなシステムは、要求に応じて、上述した値または範囲に根尖圧力または歯空洞圧力を制限することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、歯10の根尖32における圧力が負である(たとえば根尖領域における圧力未満である)ことが有益である場合がある。負圧により、炎症を起こした細菌、残骸および組織(根尖周囲の病変にみられるもの等)が、歯10の根尖32を通して口から外に吸い出されること可能にすることができる。歯10の根尖32においてもたらされる負圧は患者内に苦痛をもたらす可能性があるため、そうした負圧が(大きさで)高すぎない場合に、有利であり得る。一実施形態では、歯10の根尖32においてもたらされる圧力は約-1000mmHgを超える。別の実施形態では、歯10の根尖32においてもたらされる圧力は、たとえば約-600mmHg、-500mmHg、-250mmHgまたは他の何らかの値等、他の値を超える。
【0065】
いくつかの実施形態では、処置中、治療流体、細菌、組織、残骸または化学物質は実質的にほとんどまたはまったく口内に入らず(たとえば、実質的に、処置中にハンドピースからの漏れがなく、ハンドピースと歯との間に漏れがなく)、それにより、処置中の流体管理を向上させることができる。処置中に口内に物質がほとんどまたはまったくこぼれないことにより、処置中に廃棄流体および物質を吸引して除去する必要が低減する。したがって、処置中に助手が不要である可能性があり、それにより器材を簡略化し人的資源を縮小することができる。処置中に感染した歯から除去された細菌および残骸が、患者の口内にこぼれることを回避するべきであり、そのため、こうした物質を、流体プラットフォームを介して除去することにより、処置の清浄度または衛生状態を向上させることができる。さらに、歯内治療処置中に使用される化学物質(たとえばNaOCI等)の多くは、口腔組織/歯肉組織に対して腐食性であるかまたは刺激がある可能性があり、したがって、そうした化学物質が患者の口内に入る可能性を低減することが望ましい。また、歯内治療処置中に使用される化学物質および溶液の多くは味が悪く、したがって、処置中に口内にこうした物質をこぼさないことにより、患者の快適さが大幅に向上する。
【0066】
治療溶液で化学物薬品、薬剤等の物質を供給することにより、歯内治療処置中にこうした物質を断続的に加えなければならない(たとえば根管処置中にNaOCIを断続的に加える)可能性が低減し、またはそうした必要がなくなる。流体プラットフォームの実施形態により、処置中に1つまたは複数の物質が追加されるのを可能にすることができ、いくつかの実施態様では、流体を(たとえば流体出口を介して)自動的に除去することができる。物質濃度を、処置中に制御するかまたは変更することができる。1つの物質を、別の物質を導入する前に洗い流すことができ、それにより望ましくない化学相互作用を防止することができる。流体プラットフォームが閉鎖型システムである実施形態により、患者の口腔環境内にこぼれた場合に有益でない可能性があるより腐食性の物質の使用が可能になる。物質を実質的に連続的に補充することは、化学反応が発生するのに役立つことができ、こうした化学物質を高濃度にする必要性を低減することができる。
【0067】
さまざまな実施形態において、制御型流体プラットフォームを、以下のうちの1つまたは複数に対して構成することができる。流体プラットフォームは、処置が完了した時を確
定するように、歯から出る流体の分析を可能にすることができる。流体プラットフォームは、流体入口71を流れる流体により歯空洞65を洗浄することによって、(圧力波発生器64または他の構成要素が熱を発生させる場合に)歯の過熱を防止することができる。流体プラットフォームは、空気(たとえば気体)が歯空洞65内に導入される(それにより、洗浄、圧力波またはキャビテーションの有効性が低下する場合がある)のを低減するかまたは防止することができる。制御型流体プラットフォームは、処置中に清掃作用/エネルギーをより有効にすることができ、たとえば、(本来、循環を提供することができる)歯空洞からの流体質量および流体運動量の両方を除去する、飛散等の働きによる損失をより少なくすることができる。流体プラットフォームにより、歯が空間内においてあらゆる向きで治療されるのを可能にすることができる(たとえば、患者が歯科用椅子にもたれている間に上歯または下歯を治療することができる)。流体プラットフォームは、歯内のマクロ的な循環を可能にすることにより、根管または根管空間から組織および残骸を有効に除去し、かつ/または新たな治療溶液を有効に次補充することができる。
【0068】
C.圧力波発生器および流体プラットフォームの組合せの例
さまざまな実施形態において、システムおよび方法は、図2A図3A図3Bおよび図3Cに示す装置の特徴のいくつかまたはすべてを、さまざまな組合せで利用することができる。これらの実施形態は、同様に追加の特徴または異なる特徴を含むことができる。たとえば、図4Aは、圧力波67を使用して歯を清掃するシステム例を概略的に示す。システムは、流体保持器66、圧力波発生器64および流体入口71を備えている。いくつかの実施形態では、圧力波発生器64は、流体入口71から供給される流体と組み合わせて、歯空洞65に流体(たとえば液体ジェット)を供給することができる。いくつかのこうした実施形態では、流体入口71は、液体ジェット用の流体を提供するために使用されるものとは異なる流体源から流体を供給することができる。たとえば、入口71は、組織溶解剤または防腐剤溶液あるいは抗菌溶液を供給することができ、圧力波発生器64は、蒸留水のビームを供給することができる。
【0069】
他の実施態様では、圧力波発生器64は、流体源として作用しなくてもよく、たとえば圧力波発生器64は、レーザ光エネルギーを歯空洞65に供給する光ファイバまたは機械的パドルあるいはロータを含むことができる。こうした実施態様では、流体入口71を使用して、圧力波発生器64によって発生する音波67用の流体伝播媒体を提供するように、歯空洞65に流体を供給することができる。図4Aのシステム例は、単一の流体入口71および単一の圧力波発生器63を有するものとして示されているが、これは例示する目的のためであり、他の実施形態では、複数の流体入口71および/または圧力波発生器64を使用することができる。たとえば、光エネルギーを供給する光ファイバを、流体空洞64内に圧力波67および循環を提供する機械的撹拌器とともに使用することができる。別の例では、光ファイバを液体噴射装置と使用することができる。
【0070】
圧力波発生器64の遠位端を、歯内治療処置の少なくとも一部の間に歯空洞内の流体に沈めることができる。たとえば、歯空洞内に液体がほとんどまたはまったくない間に、圧力波発生器64の遠位端を歯空洞65内に配置することができる。流体水位が発生器64の遠位端より上方に上昇するように、流体入口71を介して歯空洞に流体を加えることができる。そして、歯内治療処置の少なくとも一部に対して、圧力波発生器64を起動させることができる。処置の他の部分の間、圧力波発生器64を停止状態にし、かつ/または歯空洞65内の流体水位の上方に配置することができる。
【0071】
図4Bは、圧力波67を使用して歯10を清掃する別のシステム例を概略的に示す。この例では、システムは、流体保持器66と、圧力波発生器64と、2つの通気孔73を含む流体出口72とを備えている。複数の通気孔73を使用することは、通気孔73のうちの1つが閉塞した場合に有利であり得る。また、歯科医師は、歯空洞65からの流体の除
去に役立つように通気孔のうちの1つの吸引チューブを当接させることができ、一方で、他の通気孔は、歯空洞65の加圧不足または過加圧を阻止するように利用可能なままである。
【0072】
図4Bに示す例では、歯10の歯冠12の周囲に歯シール75が施されている。本明細書にさらに説明するように、歯シール75を、自然にまたは硬化により比較的短時間で凝固する、実質的に柔軟なまたは半可撓性の材料から形成することができる。歯シール75の上面を、上面に平板を当てかつ除去した後に実質的に平坦とすることができる(たとえば図13B図14Bを参照)。歯シール75の上面は、有利には、実質的に平坦な作用面を提供することができ、その上に、流体保持器66のキャップ70を配置するかまたは取り付けることができ、それにより、歯空洞65内の流体が漏れ出るのが阻止される。図4Bはまた、キャップ70と歯シール75との間の水密シールを増大させるのに役立つことができる、キャップ70の下に配置された(任意選択的な)エラストマー材料も示す。
【0073】
図4Cは、圧力波発生器64を使用して歯10を清掃する別のシステム例を示す。この例では、圧力波発生器64は、歯10の歯髄腔26内に延在する遠位端を備えたガイドチューブ100を有する液体噴射装置を備えている。この例では、ガイドチューブ100は流路または内腔84を備え、それに沿って、ジェット60が遠位端において衝突板110に打ち当たるまで伝播することができる。衝突板110にジェット60が衝突することにより、ガイドチューブ100の遠位端における1つまたは複数の開口部を出ることができる液体の噴霧がもたらされる。衝突板110の表面は、ジェットの衝突によって反響することができる。ガイドチューブ100の(開口部を含む)遠位端を、流体保持器66によって歯10内に保持される流体の表面の下方に沈めることができる。衝突面110上のジェット60の衝突および/または歯空洞65内の流体とのジェットまたは噴霧の相互作用により圧力波67を生成することができ、それは少なくとも、本明細書に記載するように有効な歯清掃をもたらすことができる。この例では、ガイドチューブ100の遠位端は、歯空洞65にジェット液体を供給する流体入口71として、かつ圧力波発生器64として機能する。このシステム例はまた、流体を歯空洞65から除去し、歯空洞65の加圧不足または過加圧を制限するように、通気孔73を有する流体出口72を備えている。
【0074】
図4Dは、圧力波発生器64を使用して歯10を清掃する別のシステム例を示す。この例では、システムは、歯10に形成された歯シール75に当接させるかまたは取り付けることができる遠位端58を有するハンドピース50を備えている。遠位端58は、流体保持器66(たとえばキャップ70)を備えている。ハンドピース50は、流体入口71、流体出口72および圧力波発生器64を備えている。流体入口71および圧力波発生器64の一部は、歯髄室28内に配置することができるようにキャップ70を越えて延在している。
【0075】
図4Dに示すハンドピース50はまた、流体出口72と流体連通する通気孔73も備えている。通気孔73により、周囲空気を流体出口72から引き出して、歯10から除去される流体とともに運ぶことができる。通気孔73は、歯空洞65が減圧されるのを防止するに役立つことができ(たとえば、流体の大部分が歯空洞65から引き出される場合)、それは、歯空洞65内の圧力が低下する際に、空気を歯空洞65からではなく通気孔73から引き出すことができるためである。通気孔73はまた、歯空洞65が過加圧されるのを防止するのにも役立つことができ(たとえば、流体出口72が流体を除去するのを中止した場合)、それは、歯内の流体圧力が上昇する際に、流体が歯空洞65に保持されているのではなく通気孔73から流れ出ることができるためである。通気孔73のサイズ、形状および/あるいは構造、ならびに/または歯空洞および/あるいは流体出口ライン72に対するそれらの位置を、空気が音響キャビテーションの有効性を低下させる可能性がある場合に、そうした空気が通気孔73に入り歯空洞65まで移動するのが阻止されるよう
に選択することができる。通気孔に関するさらなる詳細を、図12Aおよび図12Bを参照して提供する。さまざまな実施形態において、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くの通気孔を使用することができる。
【0076】
図2A図4Dは、歯内治療に対するさまざまな実施態様に置いて使用することができる、さまざまなシステム例ならびに構成要素および特徴の組合せを例示するように意図されている。図2図4Dに示すシステム例は、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。図2図4D(および後述する他の図)を参照して示し説明する構成要素のすべてのあり得る変形および組合せが企図される。
【0077】
(i)いくつかの流体プラットフォームおよび圧力波発生器のさらなる特徴
歯科処置によっては、器具類(たとえば歯内治療用ファイル)を根管内に挿入する必要があり、それは望ましくない可能性がある。たとえば、器具類は、根管内にスメア層を生成するか、または歯10の根尖32から有機物を押し出す可能性があり、器具類は歯を弱くする可能性がある。また、歯によっては、根管の湾曲または複雑な根管の形状のために、根管空間のすべての部分に器具類を当てることができるとは限らず、そのため、器具類がいくつかの根管内に導入されるかまたは根管の根尖に達することが阻止される。根管内部に進む器具類は、根尖を通る流体/残骸の押出しの機会を増大させる可能性がある。したがって、本明細書に記載するように、流体プラットフォームの実施形態は、歯髄腔26内に保持されている流体において圧力波67を発生させるのを可能にすることができる。治療によっては、圧力波67を使用して器具類なしに歯を清掃することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する方法およびシステムを、器具類を用いる方法で使用することができる。たとえば、歯内治療用ファイルを使用して、根管を拡大し、成形しまたは清掃することができ、その後、流体プラットフォームを歯に当接させ、歯空洞65内を、治療流体(たとえば次亜塩素酸ナトリウム溶液)を循環させるように使用することができる。圧力波発生器64を使用して、歯空洞65内にさらなる清掃を可能にすることができる。歯科医師によって使用することができるあり得る技法の多くの変形および組合せが企図される。
【0078】
開示する装置および方法の実施形態は、根管へのアクセスおよび根管の視覚化を制限するかまたは妨げる可能性がある石灰化構造体(限定されないが、歯髄石、根管口を覆う石灰化組織等)の除去を可能にすることができる。歯髄室28内のこうした石灰化構造体を清掃することにより、システムが、自動的に根管への入口を見つけることができるのを可能にすることができる。たとえば、治療法によっては、未検出の近心頬側2(MB2)根管が自然に現れる可能性がある。圧力波を根管内のみにおいて生成する(歯髄室内では生成しない)システムの実施形態では、根管を、事前に見つけるかまたはさらには拡大することが必要である場合がある。
【0079】
いくつかの実施形態では、歯髄室28内で発生した圧力波67はまた、根管内部の石灰化した組織および構造体(たとえば歯髄石、第三象牙質等)を除去することも可能である。いくつかの実施形態では、歯髄室28内で発生した圧力波67を使用して、器具類が使用された根管内のスメア層および残骸を除去することができる。いくつかの実施形態では、発生した圧力波67は、歯の内部空間すべてまたは実質的にすべてに、たとえば副根管、細管等を含む、流体と接触する実質的にすべてに達することができる。いくつかの実施形態では、圧力波67は、根管に入る必要なしに、歯髄室およびすべての根管を同時に清掃することができる。治療によっては、処置の前に根管を見つけまたは位置を特定する必要がない。圧力波清掃は、歯の根管32に達し、かつ(たとえば歯内治療用ファイルまたは超音波チップを用いる)他の治療法よりさらに根管空間および細管内に達することができる可能性がある。流体プラットフォームの実施形態は、圧力波67が管内に生成されるか、または歯髄腔内の流体を通る伝播を介して根管に達することができるのを可能にする
ことができる。たとえば小さいプローブを根管内に挿入することができる場合に、それらプローブが、流体プラットフォームの実施形態がプローブ小管を清掃することができるのを可能にすることができる。しかしながら、いくつかの実施態様では、これには、操作者が処置の前に根管を見つける必要がある可能性がある。
【0080】
D.治療流体の例
本明細書に記載するシステムおよび方法のいずれかで使用される治療流体は、滅菌水または蒸留水、医療用食塩水、防腐剤、抗生物質、脱灰液または脱灰剤、組織溶解または溶解剤等を含むことができる。治療流体は、化学物質、薬剤、塩、麻酔薬、漂白剤、洗剤、界面活性剤、洗浄剤、成長促進剤またはそれらのあらゆる組合せを含むことができる。流体は、消毒剤、酸化溶液/酸化剤(たとえば過酸化水素)、創傷清拭溶液/創傷清拭剤、キレート溶液/キレート剤、殺菌剤、脱臭剤および/または組織溶剤を含むことができる。治療流体は、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCI)等の歯内治療溶液、溶質また薬剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、陽極液、クロルヘキシジン、水酸化カルシウム、次亜塩酸カルシウム、クエン酸、ホウ酸、デーキン溶液、アルギン酸プロピレングリコール(PGA)等を含むことができる。流体を、酸性、中性または塩基性とすることができ、場合によっては、所望の清掃効果を可能にするように調節することができる。流体を、治療中、たとえば流体入口または液体噴射装置(使用する場合)に流体を供給する流体貯蔵器または流体源を変更することにより、溶液のpHを変更することができる。治療によっては、治療の清掃段階中に組織溶解剤を含む流体を使用することができ、洗浄剤を使用して、清掃された歯髄の歯空洞を洗い流すことができる。上述した(または他の)流体の組合せ、たとえば溶液の混合物または一連の異なる施された溶液を使用することができる。流体内の化学物質のタイプおよび/または濃度は、治療中に変化することができる。治療溶液の1つの例は、約0.3%から約6%のNaOCIを含む水または食塩水である。
【0081】
場合によっては、治療流体は、小粒子、研磨剤または生物活性粒子(たとえば生物粉末)等を含むことができる。流体は、ナノ粒子(たとえばナノロッドまたはナノシェル)を含むことができる。たとえば、圧力波発生器がレーザ装置を備えるいくつかのシステムでは、レーザから供給される光エネルギーが、ナノ粒子を励起して、より効率的な光誘起キャビテーションまたは圧力波発生をもたらすことができる。
【0082】
後述するように、治療流体(および/または治療流体に加えられる溶液のいずれか)を、歯科医院で使用される通常の液体に比較して脱気することができる。たとえば、(化学剤または化学溶質を加えてまたは加えずに)脱気蒸留水を使用することができる。
【0083】
(1)治療流体における溶存気体のあり得る影響の例
処置によっては、流体は溶存気体(たとえば空気)を含む場合がある。たとえば、歯科医院で使用される流体は、一般に、(たとえば、ヘンリーの法則に基づいて流体の温度および圧力から確定される)通常の溶存気体含有量を有している。図5Aおよび図5Bは、圧力波発生器64(図5A)および流体入口71(図5B)が、溶存気体を含む流体を収容している流体環境と作用するかまたはその流体環境にある、処置の例を概略的に示す。圧力波発生器64の音場および/または歯空洞65内の流体の流れあるいは循環により、図5Aおよび図5Bに概略的に示すように、溶存気体の一部が溶液から出て気泡96を形成するようにする可能性がある。
【0084】
気泡96は、歯10内の小さい通路(たとえば、小根管空間30または象牙質細管)を閉塞する可能性があり、こうした閉塞は、小さい通路に「ベーパーロック」があるかのように作用する可能性がある。いくつかのこうした処置では、気泡96の存在が、気泡96を通過する音波67の伝播を少なくとも部分的に閉塞し、妨げ、またはその方向を変える可能性があり、清掃作用がたとえば根管の根尖領域に達するのを少なくとも部分的に阻止
するかまたは妨げる可能性がある(たとえば図5Aを参照)。気泡96は、流体の流れまたは循環が根尖領域または細管に達するのを妨げる可能性があり、それにより、治療溶液が歯10のこれらの領域に達するのを妨げるかまたは阻止する可能性がある(たとえば図5Bを参照)。
【0085】
いくつかの歯内治療処置では、キャビテーションが歯を清掃する役割を果たすものと考えられる。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むことなく、キャビテーション初生の物理プロセスは、ある意味、沸騰に類似する可能性がある。キャビテーションと沸騰とのあり得る1つの相違は、流体内の蒸気の形成に先立つ熱力学経路である。沸騰は、液体の局所蒸気圧が液体内の局所周囲圧力を超えて上昇し、液体から気体への相変化をもたらすのに十分なエネルギーが存在する場合に、発生する可能性がある。キャビテーション初生は、液体における局所周囲圧力が、局所温度において液体の引張強さによって部分的に与えられる値を有する飽和蒸気圧力未満に、十分低下する場合に発生する可能性があると考えられる。したがって、必須ではないが、キャビテーション初生は、蒸気圧によって確定されるのではなく、代りに、最大核の圧力によって、または蒸気圧と最大核の圧力との差によって確定されると考えられる。したがって、流体に、蒸気圧よりわずかに低い圧力を与えることにより、一般に、キャビテーション初生はもたらされないと考えられる。しかしながら、液体内の気体の溶解度は圧力に比例し、したがって、圧力を低下させることは、流体内部の溶存気体の一部が、キャビテーション初生において形成された気泡のサイズに比較して相対的に大きい気泡の形態で放出されるようにする傾向があり得る。これらの相対的に大きい気泡を、蒸気キャビテーション気泡であるものとして誤解する場合があり、流体内にそれらが存在することを、文献のいくつかの報告では、キャビテーションが存在しなかった可能性がある場合に、キャビテーションによってもたらされているものと誤って記述されている場合がある。
【0086】
蒸気キャビテーション気泡の崩壊の最終段階において、気泡壁の速度は、音の速度さえも超える場合があり、流体内部に強度の衝撃波をもたらす可能性がある。蒸気キャビテーション気泡はまた幾分かの量の気体を含む場合もあり、それは、バッファとして作用し、崩壊の速度を低下させ、衝撃波の強度を低減する可能性がある。したがって、歯清掃のためにキャビテーション気泡を利用するいくつかの歯内治療処置では、こうした損失を防止するように、流体内の溶存気体の量を低減することが有利であり得る。
【0087】
治療流体からの溶液から出てきた気泡96の存在により、いくつかの歯内治療処置中に他の不都合がもたらされる可能性がある。たとえば、圧力波発生器64がキャビテーションを生成する場合、キャビテーションを誘発するために用いられる撹拌(たとえば圧力降下)が、水分子がキャビテーション気泡を形成する可能性がある前に、含有溶存空気の放出をもたらす可能性がある。すでに形成された気泡96は、(キャビテーション気泡を形成するように意図された)相変化中に、水分子のための核形成部位として作用する可能性がある。撹拌が終了すると、キャビテーション気泡は、崩壊して圧力波67を生成するように期待される。しかしながら、キャビテーション気泡崩壊は、効率の低下をともなって発生する可能性があり、それは、気体充填気泡が崩壊しない可能性があり、代りに、気泡として残る可能性があるためである。したがって、治療流体に気体が存在することにより、キャビテーション気泡の多くが気体充填気泡と一体化することにより無駄にされる可能性があるため、キャビテーションプロセスの有効性が低下する可能性がある。さらに、流体内の気泡96は、気泡96を含む流体の領域において伝播する圧力波67を減衰させるクッションとして作用する可能性があり、それにより、気泡96を通過する圧力波67の有効な伝播が妨害される可能性がある。いくつかの気泡96は、根管30内部で発生するか、または歯内の流体の流れまたは循環によってそこに移送される可能性がある。気泡96は、根管30内部に入ると、表面張力が比較的高いため、除去することが困難である可能性がある。これにより、根管内への化学物質および/または圧力波の移送が妨げられる
ことになる可能性があり、したがって、治療の有効性が阻害されるかまたは低減する。
【0088】
(2)脱気治療流体の例
したがって、いくつかのシステムおよび方法において脱気流体を使用することが有利である場合があり、それは、通常の(非脱気)流体を使用するシステムおよび方法に比較して、治療中に気泡96が溶液から出るのを阻止し、低減しまたは防止することができる。図5Cおよび図5Dは、治療流体の気体含有量が(図5Aおよび図5Bの例における通常の流体に比較して)低減し、それにより歯10の根管30に、溶液から出た気泡96が実質的にない、歯科処置の例を概略的に示す。図5Cおよび図5Dに概略的に示すように、圧力波発生器64によって発生する音波67は、歯10の根尖領域32に達してそれを清掃するために、脱気流体を通って伝播することができ(図5C)、流体入口71からの脱気流体は、歯10の根尖32の近くの小根管通路に達することができる(図5D)。脱気流体はまた、象牙質細管を流れるかまたはそれに浸透し、これらの達することが困難な空間から物質を清掃することも可能であり得る。処置によっては、脱気流体は、約500ミクロン、200ミクロン、100ミクロン、10ミクロン、5ミクロン、1ミクロンまたはそれより小さい程度の空間に浸透することができる可能性があり、それは、気泡が(通常の溶存気体分を含む流体の使用と比較して)溶液から出てこれらの空間を閉塞するのを阻止されるのに十分であるように、脱気流体に気体がないためである。
【0089】
たとえば、いくつかのシステムおよび方法では、脱気流体は、水の「通常」の気体含有量に比較した場合に低減する溶存気体含有量を有することができる。たとえば、ヘンリーの法則によれば、(25Cおよび1気圧での)水における溶存空気の「通常の」量は約23mg/Lであり、それは、約9mg/Lの溶存酸素と約14mg/Lの溶存窒素とを含む。いくつかの実施形態では、脱気流体は、(たとえば脱気する前に)流体源から供給される際に、その「通常の」量のおよそ10%~40%まで低減する要素気体含有量を有している。他の実施形態では、脱気流体の溶存気体含有量を、流体の通常の気体含有量のおよそ5%~50%または1%~70%まで低減することができる。治療によっては、溶存気体含有量は、通常の気体量の約70%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満または約1%未満であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、脱気流体における溶存気体の量を、(溶存空気の量ではなく)溶存酸素の量に関して測定することができ、それは、溶存酸素の量を、流体内の溶存空気の量より(たとえば滴定または光学センサあるいは電気化学センサを介して)容易に測定することができるためである。したがって、流体内の溶存酸素の測定値は、流体内の溶存空気の量に対する代用物としての役割を果たすことができる。いくつかのこうした実施形態では、脱気流体内の溶存酸素の量を、約1mg/Lから約3mg/Lの範囲、約0.5mg/Lから約7mg/Lの範囲、または他の何らかの範囲とすることができる。脱気流体内の溶存酸素の量は、約7mg/L未満、約6mg/L未満、約5mg/L未満、約4mg/L未満、約3mg/L未満、約2mg/L未満または約1mg/L未満であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、脱気流体内の溶存気体の量を、約2mg/Lから約20mg/Lの範囲、約1mg/Lから約12mg/Lの範囲または他の何らかの範囲とすることができる。脱気流体内の溶存気体の量は、約20mg/L未満、約18mg/L未満、約15mg/L未満、約12mg/L未満、約10mg/L未満、約8mg/L未満、約6mg/L未満、約4mg/L未満または約2mg/L未満であり得る。
【0092】
他の実施形態では、溶存気体の量を、空気または酸素の単位容量当りのパーセント値に関して測定することができる。たとえば、溶存酸素(または溶存空気)の量は、約5容量%未満、約1容量%未満、約0.5容量%未満または約0.1容量%未満であり得る。
【0093】
液体内の溶存気体の量を、たとえば流体粘度または表面張力等の物理特性に関して測定することができる。たとえば、水を脱気することは、その表面張力を増大させる傾向がある。非脱気水の表面張力は、20℃で約72mN/mである。いくつかの実施形態では、脱気水の表面張力を、非脱気水より約1%、5%または10%大きくすることができる。
【0094】
治療方法によっては、一次脱気流体に1種または複数種の二次流体を追加することができる(たとえば、脱気蒸留水に防腐剤溶液を追加することができる)(たとえば図6Bを参照)。いくつかのこうした方法では、二次溶液を、一次脱気流体に追加する前に脱気することができる。他の用途では、(通常の溶存気体含有量を有する可能性がある)二次流体を含めることにより、特定の歯科治療に望まれるものを超えて結合された流体の気体含有量が増大しないように、一次脱気流体を十分に脱気することができる。
【0095】
さまざまな実施態様では、治療流体を、封止バッグまたは容器内部の脱気液として提供することができる。流体を、流体貯蔵器に加えられる前に治療室において別個の設定で脱気することができる。「インライン」実施態様の例では、たとえば、流体ライン(たとえば流体入口71)に沿って取り付けられた脱気ユニットに流体を通過させることにより、流体をシステム内に流れる際に脱気することができる。さまざまな実施形態で使用することができる脱気ユニットの例としては、Membrana-Charlotte(Charlotte、North Carolina)から入手可能なLiqui-Cel(登録商標)MiniModule(登録商標)Membrane Contactor(たとえば、モデル1.7×5.5または1.7×8.75)、MedArray,Inc.(Ann Arbor、Michigan)から入手可能なPermSelect(登録商標)シリコーンメンブレンモジュール(たとえばモデルPDMSXA-2500)、Mar Cor Purification(Skippack、Pennsylvania)から入手可能なFiberFlo(登録商標)中空ファイバカートリッジフィルタ(0.03ミクロン絶対値)が挙げられる。脱気を、以下の脱気技法のいずれかまたはその組合せを用いて行うことができる。すなわち、加熱、ヘリウム散布、真空脱気、ろ過、凍結-ポンプ-解凍および超音波処理である。
【0096】
いくつかの実施形態では、流体を脱気することには、流体内に発生するかまたは存在する可能性があるあらゆる小さい気泡を除去するように流体を脱泡することを含むことができる。脱泡を、流体をろ過することによって提供することができる。いくつかの実施形態では、流体を、脱気(たとえば分子レベルで溶存する気体を除去)しなくてもよいが、流体から小さい気泡を除去するように脱泡装置に通過させることができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、脱気システム41は、治療流体が特定の歯内治療のために十分に脱気されたか否かを判断するために、溶存気体センサを備えることができる。溶存気体センサを、混合システム43の下流に配置して、溶質の混合が、ある場合に溶質の追加の後に治療流体の溶存気体含有量を増大させたか否かを判断するために使用することができる。溶質源42は、溶存気体センサを備えることができる。たとえば、溶存気体センサは、流体内の溶存気体の総量に対する代用物として、流体内の溶存酸素の量を測定することができ、それは、溶存酸素を、溶存気体(たとえば窒素またはヘリウム)より容易に測定することができるためである。溶存気体含有量を、空気内の全気体に対する酸素の比(たとえば、酸素は空気の約21容量%である)に少なくとも部分的に基づいて、溶存酸素含有量から推測することができる。溶存気体センサは、電気化学センサ、光学センサ、または溶存気体分析を行うセンサを含むことができる。本明細書に開示するさまざまなシステムの実施形態で使用することができる溶存気体センサの例としては、Pro-Oceanus Systems Inc.(Nova Scotia、Canada)から入手可能なPro-Oceanus GTD-ProまたはHGTD溶存気体センサ、および
Zebra-Tech Ltd.(Nelson、New Zealand)から入手可能なD-Opto溶存酸素センサが挙げられる。いくつかの実施態様では、治療のサンプルを得ることができ、サンプル内の気体を、真空ユニットを用いて抽出することができる。抽出された気体を、ガスクロマトグラフを用いて分析して、流体の溶存気体含有量(および場合によっては気体の組成)を確定することができる。
【0098】
したがって、図2図4Cに示すシステム例(および後に示し説明するシステム例)において、流体入口から歯に供給される流体および/または液体噴射装置においてジェットを発生させるために使用される流体は、通常の流体より少ない溶存気体含有量を有する脱気流体を含むことができる。脱気流体を使用して、たとえば、圧力波を発生させるために高速液体ビームを発生させ、歯内の空洞(たとえば歯髄腔および/または根管空間)を実質的に充填するかまたは洗浄し、音波に対する伝播媒体を提供し、歯空洞内の(たとえば根管空間または細管内の)空気(または気体)の気泡の形成を阻止し、かつ/または歯内の小さい空間(たとえば小根管、細管等)内に脱気流体の流れを供給することができる。液体ジェットを利用する実施形態では、脱気流体の使用により、液体ジェットが形成されるノズルオリフィスにおける圧力降下により、ジェットに気泡が形成されることを阻止することができる。
【0099】
したがって、歯内治療の方法の例は、歯あるいは歯の表面上にまたは歯空洞内に脱気流体を流すことを含む。脱気流体は、組織溶解剤および/または脱灰剤を含むことができる。脱気流体は、約9mg/L未満、約7mg/L未満、約5mg/L未満、約3mg/L未満、約1mg/L未満または他の何らかの値の溶存酸素含有量を有することができる。歯内治療用の流体は、溶存酸素含有量が約9mg/L未満、約7mg/L未満、約5mg/L未満、約3mg/L未満、約1mg/L未満または他の何らかの値である、脱気流体を含むことができる。流体は、組織溶解剤および/または脱灰剤を含むことができる。たとえば、脱気流体は、組織溶解剤の約6容量%未満および/または脱灰剤の約20容量%未満の水溶液を含むことができる。
【0100】
II.歯科治療の装置および方法の実施形態例
A.圧力波発生器の例
1.液体噴射装置の例
(i)高速ジェットを発生させるシステム例
図6Aは、歯科処置で使用される流体の高速ジェット60を発生させるように適合されたシステム38の実施形態を概略的に示すブロック図である。システム38は、モータ40、流体源44、ポンプ46、圧力センサ48、コントローラ51、ユーザインタフェース53、および歯科医師が患者の口内の所望の位置に向かってジェット60を向けるように操作することができるハンドピース50を備えている。ポンプ46は、流体源44から受け取られる流体を加圧することができる。ポンプ46は、ピストンがモータ40によって作動可能であるピストンポンプを含むことができる。ポンプ46からの高圧液体を、たとえば一本の高圧配管49によって、圧力センサ48に、そして、その後にハンドピース50に送ることができる。圧力センサ48を使用して、液体の圧力を検知し、圧力情報をコントローラ51に通信することができる。コントローラ51は、圧力情報を使用して、ハンドピース50に対して供給される流体に対して目標圧力を提供するように、モータ40および/またはポンプ46に対して調節を行うことができる。たとえば、ポンプ46がピストンポンプを含む実施形態では、コントローラ51は、圧力センサ48からの圧力情報に応じて、ピストンをより高速にまたはより低速に駆動するようにモータ40に信号を送信することができる。いくつかの実施形態では、ハンドピース50に供給することができる液体の圧力を、約500psiから約50,000psi(1psiは1ポンド/平方インチであり、約6895パスカル(Pa)である)の範囲内で調節することができる。いくつかの実施形態では、約2,000psiから約15,000psiの圧力範囲に
より、歯内治療に特に有効であるジェットが生成されることが分かった。いくつかの実施形態では、圧力は約10,000psiである。
【0101】
流体源44は、本明細書に記載する治療流体のいずれかを保持する流体容器(たとえば静脈注射用バッグ)を備えることができる。治療流体を、溶存気体含有量が通常の(たとえば非脱気)流体未満であるように脱気することができる。治療流体の例としては、滅菌水、医療用食塩水、防腐剤あるいは抗生物質溶液(たとえば次亜塩素酸ナトリウム)、化学物質あるいは薬剤を含む溶液、またはそれらのあらゆる組合せが挙げられる。2つ以上の流体源を使用することができる。いくつかの実施形態では、流体源44によって提供される液体に、ジェットおよび圧力波の発生の有効性を低下させる可能性がある溶存気体が実質的にない場合、ジェット形成に有利である。したがって、いくつかの実施形態では、流体源44は、たとえば脱気蒸留水等の脱気液を含む。液体内の気泡を検知し、かつ/または流体源44からの液体流が遮断されたかあるいは容器が空になったか否かを判断するように、流体源44とポンプ46との間に気泡検出器(図示せず)を配置することができる。また、上述したように、脱気流体を使用することができる。気泡検出器を用いて、流体内に、ジェット形成または音波伝播にマイナスの影響を与える可能性がある小さい気泡が存在するか否かを判断することができる。したがって、いくつかの実施形態では、フィルタまたは脱泡装置(図示せず)を使用して、液体から小さい気泡を除去することができる。流体源44における液体を、室温とするか、または異なる温度まで加熱および/または冷却することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、流体源44における液体を、システム38によって発生する高速ジェット60の温度を低下させるように冷却することができ、それにより歯10内部の流体の温度を低下させるかまたは制御することができる。治療法によっては、流体源44における液体を加熱することができ、それにより、治療中に歯10内で発生する可能性がある化学反応の速度を上昇させることができる。
【0102】
ハンドピース50を、高圧液体を受け取るように構成することができ、遠位端において、歯科処置で使用されるように液体の高速ビームまたはジェット60を発生させるように適合させることができる。いくつかの実施形態では、システム38は、液体の同位相平行ジェットを生成することができる。ジェット60を、歯10のさまざまな部分に向かうかまたはそこから離れるように向けることができるように、ハンドピース50を、患者の口内で操作可能であるようなサイズおよび形状とすることができる。いくつかの実施形態では、ハンドピース50は、歯10に結合することができるハウジングまたはキャップを備えている。
【0103】
コントローラ51は、マイクロプロセッサ、専用または汎用コンピュータ、浮動小数点ゲートアレイおよび/またはプログラマブルロジックデバイスを含むことができる。コントローラ51を使用して、たとえばシステム圧力を安全閾値未満に制限することにより、かつ/またはジェット60がハンドピース50から流れ出ることが可能な時間を制限することにより、システム38の安全性を制御することができる。システム38はまた、関連するシステムデータを出力するかまたはユーザ入力(たとえば目標圧力)を受け入れるユーザインタフェース53もまた備えることができる。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース53はタッチスクリーングラフィックスディスプレイを含む。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース53は、歯科医師が液体噴射装置を操作するためのコントロールを含むことができる。たとえば、コントロールは、ジェットを作動させるかまたは停止させるフットスイッチを含むことができる。
【0104】
システム38は、追加のコンポーネントおよび/または異なるコンポーネントを備えることができ、図6Aに示すものとは異なるように構成され得る。たとえば、システム38は、口または歯10から有機物の吸引を可能にするようにハンドピース50(または吸引カニューレ)に結合された吸引ポンプを備えることができる。他の実施形態では、システ
ム38は、高速ビームまたはジェット60を発生させるように適合された他の空気圧システムおよび/または液圧システムを備えることができる。
【0105】
(ii)流体プラットフォームを提供するシステム例
図6Bは、歯10と流体連通する流体プラットフォーム61に流体を提供するシステム38の実施形態を概略的に示すブロック図である。このシステム38における構成要素のうちのいくつかを、概して図6Aに示すシステム38に関して記載したものと同様とすることができる。システム38は、(図6Aに示す流体源44と同じであっても異なっていてもよい)溶媒源39を備えている。溶媒は水を含むことができる。溶媒は脱気システム41に流れ、そこで、溶媒を所望のレベルまで脱気することができる。システム38は、溶質源42からの溶質を混合して流体にするように構成された混合システム43を備えることができる。溶質は、溶媒に加えることができるあらゆる固体物質、液体物質または気体物質を含むことができる。たとえば、溶質は、防腐剤または抗生物質の流体または化合物(たとえばNaOCIまたはEDTA)、界面活性剤、薬剤、ナノ粒子等を含むことができる。液体溶質を、必要はないが脱気することができる。溶媒および溶質は、配管49を介して流体プラットフォーム61まで流れる。流体プラットフォーム61は、流体プラットフォーム例または本明細書に記載した他の構成要素のいずれを含むことも可能である。たとえば、流体プラットフォーム61は、歯の清掃を可能にするように歯内に音波を発生させる圧力波発生器を備えることができる。
【0106】
図示するシステム38では、配管49を、流体プラットフォーム61への流入流体に流体的に取り付けることができる。いくつかの実施形態では、流入流体における治療流体(たとえば溶媒に溶質を足したもの)の流速を、約0.4から1.2cc/秒の範囲とすることができる。他の実施形態では、流速範囲を、約0.2から2cc/秒、0.01から5cc/秒または他の値(たとえば最大約10cc/秒、20cc/秒または50cc/秒)とすることができる。一実施形態では、流体の流入を脈動させることができる。他の実施形態では、流体の流入を間欠的にすることができる。一実施形態では、流体の流入を、経時的に実質的に均一にすることができる。
【0107】
図示するシステム38では、流体プラットフォーム61は、歯から流体を除去することができる流体出口を備えることができる。この流体の少なくとも一部を監視システム45に渡すことができ、監視システム45は、治療の程度または進行を確定するように歯から流体の流れを監視することができる。たとえば、監視システム45は、図3Cに関して記載した監視センサと概して同様であり得る1つまたは複数の監視センサ74を備えることができる。監視システム45は、歯の清掃の程度または進行を監視することができ、清掃が完了した時を、ユーザインタフェース53を介して歯科医師に通知することができる。いくつかの実施態様では、コントローラ51(または監視システム45)は、治療中にシステムの構成要素を調整し、調節し、または制御するために(たとえば、監視システムによって監視される特性に基づいて)フィードバックを使用することができる。このようにフィードバックを使用することにより、有利には、歯内治療の態様を自動化することを可能にすることができる。たとえば、フィードバックを使用して、患者に対してより効率的に治療を施すように、圧力波発生器または流体源を起動させまたは停止させることができる。
【0108】
流体出口を吸引システム47に接続することができ、吸引システム47は、歯科医院で見られる吸引ユニットまたは排気ユニットと同様であり得る。たとえば、いくつかの歯科用排気ユニットは、約-6in-Hgから約-8in-Hgで動作し、チェアサイドの高容量入口毎に約7標準立方フィート/分(SCFM)の空気流速度を有するように設計されている。独立した真空システムを使用することができる。一実施形態では、排気ユニットの動作圧力は約-4から-10in-Hgである。他の実施形態では、動作圧力は、約
-0.1から-5in-Hgまたは-5から-10in-Hgまたは-10から-20in-Hgまたは他の値の範囲である。いくつかの実施形態では、排気ユニットによって提供される流れを脈動させることができる。別の実施形態では、排気ユニット流を間欠的にすることができる。一実施形態では、排気ユニット流を実質的に均一とすることができる。排気ユニットの空気流速を、5から9SCFMまたは2から13SCFMまたは0.1から7SCFMまたは7から15SCFMまたは15から30SCFMまたは30から50SCFMまたは他の値とすることができる。
【0109】
いくつかの実施態様では、流体プラットフォーム61に入る流体が一定の程度(たとえば、一例では通常の溶存気体量の約40%)まで脱気されることが望ましい場合がある。いくつかのこうした実施態様では、脱気システム41は、溶媒の溶存気体含有量が所望の程度(たとえばこの例では約35%)未満であるように、溶媒を「過脱気」することができ、それにより、混合システム43によって溶質が加えられる時、結果としての流体(溶媒に溶質を足したもの)が所望の程度未満まで脱気される(たとえば、この例では、未脱気防腐剤溶液を加えることにより、溶存気体含有量が38%まで上昇する可能性がある)。
【0110】
図6Bに示すシステム38では、溶質混合システム43は脱気システム41から下流にある。溶質によっては、脱気システム41の湿潤構成要素を化学的に劣化させる可能性があり得る(たとえば、漂白剤はガスケット、フィルタ等を侵食する可能性がある)。図6Bに示す下流配置の利点は、溶媒が脱気された後にこうした溶質を加えることができ、したがって、これらの溶質は脱気システム41を通過しない(劣化させない可能性がある)、ということである。
【0111】
いくつかの実施態様では、圧力波発生器64によって放散される熱は、蓄積する可能性があり、歯空洞65内の(かつ/または歯内の)流体に温度上昇をもたらす可能性がある。十分な温度上昇が、口腔組織に損傷を与える可能性がある。著しい温度上昇は、未制御型流体プラットフォームのいくつかの実施形態を利用するいくつかの処置中に発生する可能性がある。通気孔付き流体プラットフォームのいくつかの実施形態では、平均流体温度および平均歯温度は、口腔組織が安全に耐える温度未満のままであり得る。いくつかの実施形態では、平均温度は、約30から40℃の間のままである。他の実施形態では、平均温度は、約20から50℃、10から60℃、5から70℃等のままである。温度は、治療中に歯髄腔を通して変動し変化する可能性があり、したがって、温度の平均値は変化または変動する可能性がある。
【0112】
歯髄腔内部の流体の温度および歯の温度は、歯に供給される治療流体の温度と、圧力波発生器64の放熱速度と、(ポンプを含む)流体供給ラインの温度と、治療流体の流速とを含む要素によって、少なくとも部分的に決まる可能性がある。これらの要素(または他の要素)のうちの1つまたは複数を、治療中に、歯内の流体、歯自体、歯髄室から流れる流体等の所望の温度を維持するように調節することができる。さまざまな実施形態において、治療中に温度を監視するために、1つまたは複数の温度センサ(たとえばサーミスタ)を、ハンドピース内に、圧力波発生器64内あるいはその近くに、歯内の歯髄腔内に、または流体プラットフォームへの流入流体および/または流出流体内に、または別の場所に配置することができる。図6Aおよび図6Bに示すシステムは、図示する流体経路に沿ったあらゆる場所で流体の温度を調整する追加の構成要素(図示せず)を備えることができる。
【0113】
システム38は、追加の構成要素および/または異なる構成要素を備えることができ、図6Bに示すものと異なるように構成され得る。たとえば、混合システム43および脱気システム41を結合することができる。これらのシステムのいずれかまたは両方を、流体
流経路における流体プラットフォーム61の上流のあらゆる場所に配置することができる。また、他の実施形態は、図6Aおよび図6Bに示す構成要素のすべてを備える必要はない。たとえば、いくつかの実施形態は、脱気システム、混合システムおよび/または監視システムを備えていない。図6Aおよび図6Bは、あり得る、かつ限定するように意図されていないタイプの流体装置を例示するように意図されている。
【0114】
図6Aおよび図6Bに示すシステムの実施形態は、「METHOD AND APPARATUS FOR DENTAL TREATMENT USING HIGH PRESSURE LIQUID JET」と題する、2001年5月1日に発行された米国特許第6,224,378号明細書、「APPARATUS FOR DENTAL TREATMENT USING HIGH PRESSURE LIQUID JET」と題する、2002年12月24日に発行された米国特許第6,497,572号明細書、「APPARATUS AND METHODS FOR TREATING ROOT CANALS OF TEETH」と題する、2007年10月25日に公開された米国特許出願公開第2007/0248932号明細書、「APPARATUS AND
METHODS FOR MONITORING A TOOTH」と題する、2010年6月10日に公開された米国特許出願公開第2010/0143861号明細書、「APPARATUS AND METHODS FOR ROOT CANAL TREATMENTS」と題する、2011年5月12日に発行された米国特許出願公開第2011/11365号明細書および/または「LIQUID JET APPARATUS
AND METHODS FOR DENTAL TREATMENTS」と題する、2011年5月19日に発行された米国特許出願公開第2011/0117517号明細書に記載されている装置およびシステムの実施形態に記載されているかまたはそれらと同様に構成される構成要素を利用することができ、上記特許および特許出願公開の各々の開示全体が、それが教示または開示するすべてに対して参照により本明細書に組み込まれる。
【0115】
(iii)同位相平行ジェットの例
いくつかの実施形態では、システム38を、約0.01cmから約10cmの範囲の距離にわたって実質的に平行な(たとえば「平行にされた」)ビームを形成する液体ジェット60を生成するように構成することができる。いくつかの実施形態では、ジェットの伝播軸に対して横切る速度プロファイルは、実質的に一定である(たとえば「同位相」である)。たとえば、いくつかの実施態様では、ジェット60(あるとすれば)の外面の近くの幅の狭い境界層から離れて、ジェット速度はジェットの幅にわたって実質的に一定である。したがって、いくつかの有利な実施形態では、歯科用ハンドピース50によって供給される液体ジェット60は、同位相平行ジェット(「CCジェット」)を含むことができる。いくつかの実施態様では、CCジェットは、速度が約100m/秒から約300m/秒の範囲であり、いくつかの実施形態ではたとえば約190m/秒であり得る。いくつかの実施態様では、CCジェットは、約5ミクロンから約1000ミクロンの範囲、約10ミクロンから約100ミクロンの範囲、約100ミクロンから約500ミクロンの範囲、または約500ミクロンから約1000ミクロンの範囲の直径を有することができる。本明細書に記載するシステムおよび装置の実施形態によって生成することができるCCジェットに関するさらなる詳細は、米国特許出願公開第2007/0248932号明細書および/または米国特許出願公開第2011/0117517号明細書に見ることができ、それらは各々、それが開示または教示するすべてに対して全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
(iv)ハンドピースの例
図7は、歯10の一部に液体ジェット60を供給するように構成された位置決め部材の実施形態を備えるハンドピース50の実施形態を概略的に示す側面図である。さまざまな
実施形態では、位置決め部材はガイドチューブ100を備えている。ハンドピース50は、システム38からの配管49と係合するように適合された近位端56と、歯10に結合されるかまたは取り付けられるように適合された遠位端58とを有する細長い管状円筒部52備えている。円筒部52は、操作者の指でハンドピース50を把持するのを容易にする特徴または凹凸構造55を有することができる。ハンドピース50を手持ち型であるように構成することができる。場合によっては、ハンドピース50を、携帯型、可動式、方向付け可能、または患者に対して操作可能であるように構成することができる。いくつかの実施態様では、ハンドピース50を、位置決め装置(たとえば、操作可能なアームまたは調節可能なアーム)に結合されるように構成することができる。
【0117】
ハンドピース50の遠位端58は、歯10に結合することができるハウジングまたはキャップ70を備えることができる(たとえば図4Dを参照)。キャップ70は、患者の歯の上に適合しかつ/またはガイドチューブ100の遠位端を歯髄腔26の所望の位置に配置するようなサイズ/形状とすることができる、脱着可能な部材であり得る。歯科医師が適切なサイズのキャップを選択し、それをハンドピース50に取り付けることができるように、キャップのキットを提供することができる(たとえば後の歯の寸法測定の説明を参照)。
【0118】
ハンドピース50は、歯空洞65に治療流体を供給するための流体入口71、歯から流体(たとえば廃棄流体)を除去するための流体出口72、圧力波発生器64、(たとえば圧力波発生器にエネルギーを提供する)電源ライン、または上述したもののうちのいくつかあるいはすべての組合せを備えることができる。ハンドピース50は、たとえば歯領域を洗浄するための洗浄ライン、歯領域を照明するための光源等、他の構成要素を備えることができる。場合によっては、圧力波発生器64(たとえば液体噴射)は流体入口71(たとえば噴射)を備えている。ハンドピース50を使用して、歯10に対して圧力波発生器64を当接させることができる。ハンドピース50の遠位端58が歯10に係合する際に、実質的に閉鎖した流体回路を生成するように、ハンドピース50を歯10に当接させることができ、それにより、患者の口内に実質的にこぼれるかまたは漏れることなく、流体を歯空洞65内にかつそこから出るように供給することができる。本明細書に記載するように、(たとえば過加圧または加圧不足を阻止するために)流体の漏れの可能性を低減しかつ/または流体が歯空洞65から流れ出るのを可能にするように、ハンドピース50は流体保持部材(たとえばスポンジまたは通気孔)を備えることができる。流体保持部材を、空気が流体出口72(たとえば吸引ライン)に入るのを可能にしながら、空気が歯空洞65に入る(キャビテーションの有効性を低下させる可能性がある)のを阻止するように構成することができる。
【0119】
ハンドピース50を、図7に示すものと異なるような形状またはサイズとすることができる。たとえば、細長い管状円筒部52を使用しなくてもよく、歯科医師は、キャップ70を患者の口内の所望の位置まで操作することができる。患者は、治療中、キャップ70を適所に保持するようにキャップ70をかみしめることができる(たとえば図11を参照)。他の実施形態では、ハンドピース50は、(たとえば歯内治療処置に一般に使用されるラバーダムクランプを介して)歯10に締め付けられるかまたは取り付けられる装置を備えることができ、それにより装置は、処置中に実質的に使用者の介入を必要としない(たとえば図10Aおよび図10Bを参照)。
【0120】
ハンドピース50を、使い捨て(たとえば1回のみ使用可能)であるかまたは再使用可能とすることができる。一実施形態では、ハンドピース50は使い捨てであるが、圧力波発生器64は再使用可能である。別の実施形態では、ハンドピース50は再使用可能であり、圧力波発生器64のいくつかの構成要素(たとえばガイドチューブ)は使い捨てである。いくつかの実施形態では、ハンドピース50の遠位端58は、たとえば(エラストマ
ー材料または独立気泡であり得る)シーラまたはガスケット、(たとえばガイドチューブ100の遠位端を歯空洞内の所望の位置に配置するための)スペーサ、通気孔等の追加の構成要素を備えることができる。
【0121】
(v)ガイドチューブの例
図8は、ガイドチューブ100を備える例としてのハンドピース50の遠位端58を概略的に示す。この例では、流体保持器(たとえばキャップおよび/または流れ制限器)は、ハンドピース50の遠位端58の内部に配置されている。ガイドチューブ100の実施形態を、ガイドチューブ100の遠位端104を、歯10内、たとえば咬合面、頬側面または舌側面に形成された歯内治療アクセス開口部を通して配置することができるようなサイズまたは形状とすることができる。たとえば、ガイドチューブ100の遠位端104を、遠位端104を歯10の歯髄腔26内に、たとえば歯髄床近くに、根管空間30への開口部の近くに、または根管孔の内部に配置することができるようなサイズまたは形状とすることができる。ガイドチューブ100の遠位端104のサイズを、遠位端104が歯10のアクセス開口部を通して適合するように選択することができる。いくつかの実施形態では、ガイドチューブ100の幅を、およそ、ゲイツ-グリデンドリル、たとえばサイズ4ゲイツ-グリデンドリルの幅とすることができる。いくつかの実施形態では、ガイドチューブ100を、ゲージ18、19、20または21の皮下注射用チューブと同様のサイズとすることができる。ガイドチューブ100の幅は、約0.1mmから約5mmの範囲、約0.5mmから約2.0mmの範囲または他の何らかの範囲であり得る。ガイドチューブ100の長さを、ガイドチューブ100の遠位端104を口内の所望の位置に配置することができるように選択することができる。たとえば、近位端102と遠位端104との間のガイドチューブ100の長さは、約1mmから約50mm、約10mmから約25mまたは他の何らかの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、長さを、約13mmまたは約18mmとすることができ、それにより、ガイドチューブ100の遠位端104が広範囲の歯の歯髄床の付近に達するのを可能にすることができる。歯髄室または歯髄床を有していない可能性がある歯(たとえば前歯)の場合、ガイドチューブ100の遠位端104を、歯10の根管空間内に挿入することができる。ガイドチューブ100を、ハンドピース50に、場合によっては脱着可能あるいは取外し可能な部材に取り付けることができる。ガイドチューブ100は、1回のみ使用可能であるかまたは使い捨てであり得る。いくつかの実施態様では、ガイドチューブのキットが提供され、歯科医師は、所望の長さを有するガイドチューブを選択することができる(たとえば後の歯寸法測定の説明を参照)。
【0122】
ガイドチューブ100のいくつかの実施形態は、衝突部材110(本明細書ではデフレクタと呼ぶ場合もある)を備えることができる。ジェット60は、流路84に沿って伝播して、衝突部材110の表面に突き当たることができ、それにより、ジェット60の少なくとも一部を減速させ、乱れさせ、または偏向することができ、それにより液体の噴霧90を生成することができる。噴霧90は、さまざまな実施態様において液滴、しずく、ミスト、ジェットまたは液体のビームを含むことができる。衝突部材110を備えるガイドチューブ100の実施形態は、いくつかの歯科治療中にジェット60によってもたらされる可能性がある、あり得る損傷を低減するかまたは防止することができる。たとえば、衝突部材110を使用することにより、ジェット60が望ましくないように組織を切断するかまたは根管空間30内に伝播する(それにより、場合によっては根管空間を望ましくないように加圧する可能性がある)可能性を低減することができる。衝突部材110の設計はまた、治療中に歯髄腔26で発生する可能性がある流体循環または動圧に対してある程度の制御を可能とすることができる。
【0123】
衝突部材110を、歯10内の空洞63、65または腔内に配置することができる。方法によっては、衝突部材110は、歯10内の流体に配置され、衝突部材110が腔内に
配置されている間に、液体ジェット60が衝突部材110の衝突面に衝突する。液体ジェット60を、空気または流体内で発生させることができ、場合によっては、液体ジェット60の一部は、衝突部材110に衝突する前に歯10内の腔内の流体の少なくとも一部(および実質的な部分である可能性がある)を通過する。場合によっては、歯腔65内の流体は比較的静的である可能性があり、他の場合では、歯腔65内の流体は、循環するか、乱流であるか、高速液体ジェットの速度を下回る(または実質的に下回る)流体速度を有している可能性がある。
【0124】
いくつかの実施態様では、衝突部材110は使用されず、ジェット60は、ガイドチューブ100の一部から実質的に妨げられることなくガイドチューブ100を出ることができる。いくつかのこうした実施態様では、ジェット60を、ガイドチューブ100を出た後、象牙質表面に向けることができ、そこでジェット60は、象牙質表面に衝突するかまたは突き当たり、歯10に音響エネルギーを提供するか、歯10を表面的に清掃する等を行うことができる。
【0125】
ガイドチューブ100は、噴霧90がガイドチューブ100の遠位端104から出るのを可能にする開口部120を備えることができる。いくつかの実施形態では、複数の開口部120、たとえば2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれより多い開口部を使用することができる。開口部120は、近位端106および遠位端108を有することができる。開口部120の遠位端108を、ガイドチューブ100の遠位端104の近くに配置することができる。開口部120は、空気、液体、有機物質等を含む可能性がある周囲環境に液体ジェット60(および/または噴霧90)を露出させることができる。たとえば、治療方法によっては、ガイドチューブ100の遠位端104が歯髄腔26内に挿入されると、開口部120により、歯髄腔26内部の物質または流体がジェット60または噴霧90と相互作用することができる。衝突部材110にジェット60が突き当たること、歯10内の流体または物質のジェット60または噴霧90との相互作用、歯髄腔26内で発生する流体循環または撹拌により、またはこれらの要素(または他の要素)の組合せにより、歯10内で(たとえば歯髄腔26、根管空間30等内で)、水中音場(たとえば圧力波、音響エネルギー等)を確立することができる。水中音場は、音響周波数の比較的広い範囲にわたる(たとえば、数kHzから数百kHz以上、たとえば図2B-1を参照)音響出力を含むことができる。歯における水中音場は、たとえば音響キャビテーション(たとえばキャビテーション気泡形成および崩壊、マイクロジェット形成)、流体撹拌、流体循環、ソノポレーション、ソノケミストリ等を含む効果の強度に影響を与えるか、それをもたらすか、または増大させることができる。必要ではないが、水中音場、上記効果のうちのいくつかあるいはすべて、またはそれらの組合せは、歯内の有機物質または無機物質を崩壊するかまたは分離するように作用することができ、それにより、歯髄腔26および/または根管空間30を有効に清掃することができる。
【0126】
近位端106と遠位端108との間の開口部120の長さをXと呼ぶ(たとえば図8を参照)。さまざまな実施形態において、長さXは、約0.1mmからガイドチューブ100のおよそ全長までの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、長さXは約1mmから約10mmの範囲である。場合によっては、治療中に開口部120が歯10の歯髄腔26内の流体または物質によって沈んだままであるように、長さXは選択される。多種多様の歯に対して約3mmの長さXを使用することができる。いくつかの実施形態では、長さXは、ガイドチューブ100の全長の割合である。割合は、約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約0.9または異なる値であり得る。いくつかの実施形態では、長さXは、ガイドチューブ100または流路84の幅の倍数である。倍数は、約0.5、約1.0、約2.0、約4.0、約8.0または異なる値であり得る。倍数を、約0.5から約2.0、約2.0から約4.0、約4.0から約8.0またはそれより大きい範囲とすることができる。他の実施形態では、長さXはジェットの幅の倍数、たとえばジェットの幅
の5倍、10倍、50倍、または100倍である。倍数を、約5から約50、約50から約200、約200から約1000またはそれより大きい範囲とすることができる。いくつかの実施態様では、開口部120の長さXを、(少なくとも部分的に)、歯内に発生する水中音場が、たとえば1つまたは複数の音響周波数における歯内の所望の音響出力を含む所望の特性を有するように選択することができる。いくつかの実施態様では、Xの長さは、開口部120の近位端106および遠位端108の両方が治療中に流体内に沈んだままであるように選択される。
【0127】
したがって、ガイドチューブ100を使用して、圧力波発生器64を歯空洞65に供給することができる。ガイドチューブ100の実施形態は、必要ではないが、非ジェット式圧力波発生器とともに使用することができる。たとえば、光学構成では、ガイドチューブ100の内腔または流路84に沿って光ファイバを配置することができる。ファイバは、ファイバ内を伝播する光エネルギーを歯空洞65内の流体内に放射するように構成された先端を有することができる。先端を、放射する光エネルギーがガイドチューブ100の窓120を通って先端から出ることができるように配置することができる。他の実施形態では、ファイバの先端は、ガイドチューブ100の遠位端104を越えて延在することができる(たとえば、(後述する)衝突部材110および窓120を使用しなくてもよい)。音響構成では、ガイドチューブ100の内腔または流路84に沿って、超音波チップまたは超音波パドルを配置することができる。ガイドチューブ100は、歯10内に挿入されると、光ファイバまたは超音波チップ/変換器を損傷から保護することができる。
【0128】
(vi)流れ制限器(たとえばスポンジ、通気孔等)の例
本明細書で考察するように、歯空洞65内に流体を保持するのに役立ち、歯からの流体の逆流または飛散を阻止し、(たとえば空洞の過加圧の可能性を低減するために)流体が歯空洞から出るのを可能にし、(圧力波の有効性を低下させる可能性がある)空気が歯空洞65に入るのを阻止し、かつ/または(たとえば空洞の加圧不足の可能性を低減するために)空気が歯空洞65から除去された流体とともに運ばれるのを可能にするように、流れ制限器の実施形態を使用することができる。さまざまな実施形態では、流れ制限器68は、図12Aおよび図12Bに関して説明する、スポンジ、通気孔、透過性あるいは半透過性膜等を含むことができる。
【0129】
(1)スポンジの例
場合によっては、流れ制限器68はスポンジを含むことができる。図12Aを参照すると、スポンジを実質的に円柱状とすることができ、スポンジは、ガイドチューブ100を実質的に包囲することができる。スポンジを、ハンドピース50の遠位端58に向かって配置することができるキャップ70に加えてまたはその代りに使用することができる。いくつかの実施形態では、歯10上のキャップ70の緩衝作用および位置決めに役立つように、かつキャップ70と歯10(または使用される場合は歯シール75)との間の漏れを防止するのに役立つように、スポンジをキャップ70内に配置することができる(たとえば図3B図3C図9図10Aおよび図11を参照)。スポンジを、歯科治療中に歯10の一部と接触するように構成することができる。場合によっては、スポンジは、ガイドチューブ100の周囲に緩く配置される。場合によっては、スポンジを、ガイドチューブ100に取外し可能に取り付けることができる。スポンジを、治療中の歯10の歯冠12に沿うように構成することができる。開口部120から現れるジェットまたは噴霧(またはたとえばフローチューブ等の他の供給源からの液体)が歯髄腔26内に十分に保持され、それにより、ガイドチューブ100の遠位端104を流体内に収容するかまたは沈めることができるように、スポンジを構成することができる。スポンジを、接着剤、クリップ等を介してハンドピース50の遠位端58に取り付けることができる。スポンジを、代りに歯に直接(または使用される場合は歯シール75に)取り付けることができる。
【0130】
いくつかの治療法では、流れ制限器68は、必要ではないが、歯10の腔への開口部を実質的に封止して、腔が実質的に水密であるようにすることができる。たとえば、いくつかの治療法では、流れ制限器68は、腔から出る流体の逆流(または跳ね返り)を阻止するが、歯10からの流出流体すべてを阻止する必要はない。たとえば、治療によっては、幾分かの流体が歯10内の腔から流れ出ることができるように、歯内に(たとえばドリル加工を介して)1つまたは複数の開口部を形成することができ、制限器を使用して、他の開口部(たとえば歯冠アクセス開口部)からの流体逆流を低減するかまたは防止することができる。
【0131】
上述したように、流れ制限器68はスポンジを含むことができる。スポンジを、根管処置中に使用される、たとえば次亜塩素酸ナトリウム等の化学物質または洗浄溶液によって悪影響を受けない材料から形成することができる。スポンジは、あらゆる好適な1つの多孔性かつ/または吸収性材料(または複数の材料)を含むことができる。たとえば、スポンジは、少なくとも部分的に液体を吸収することができる多孔性材料(たとえば、エラストマー、プラスチック、ゴム、セルロース、布、発泡体等)を含むことができる。多孔性材料は、連続気泡発泡体または独立気泡発泡体を含むことができる。発泡体は、ポリビニル発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリビニルアルコール(PVA)発泡体、ウレタン発泡体、セルロース発泡体、シリコーン発泡体等を含むことができる。流れ制限器68は、透過性膜または半透過性膜を含むことができる。流れ制限器68の材料を、変形可能とすることができ、そうした材料は、歯表面の輪郭に対して変形することができる可能性がある。いくつかの実施形態では、スポンジは、密度が約1から約1000kg/mの範囲または約10から約400kg/mの範囲の材料を含む。いくつかの実施形態では、スポンジは、密度が約160kg/mまたは約176kg/mである独立気泡ビニル発泡体を含む。他の実施形態では、シリコーン発泡体を使用することができる。
【0132】
スポンジは、約1kPaから約3000kPaの範囲かまたは約50kPaから約400kPaの範囲の引張強度を有することができる。スポンジは、約5%から約800%の範囲かまたは約50%から約300%の範囲の極限伸びを有することができる。いくつかの実施形態では、スポンジはセルを備え、約1から約250/cmの範囲かまたは約10から約40/cmの範囲の視覚的なセル数を有することができる。
【0133】
(2)通気孔の例
場合によっては、流れ制限器68は1つまたは複数の通気孔、たとえば、空気または液体の幾分かの通過を可能にすることができる開口部、細孔、流路、内腔等を含むことができる。図12Aは2つのハンドピース例を概略的に示し、それらは、ハンドピース50の遠位端58に向かって通気孔73の異なる構成を有している。通気孔73は、あらゆるサイズ、形状および/または形態を有することができる。たとえば、通気孔73は、円形、長円形、楕円形、矩形、多角形等であり得る。ゼロ、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれより多い通気孔を含む、あらゆる数の通気孔を使用することができる。通気孔73を、ハンドピース50の遠位端58に、キャップ70、またはハンドピース50の他の場所に配置することができる。さまざまな実施形態において、通気孔を、流体出口および/または流体入口に沿って配置する(かつそれらと流体連通させる)ことができる。
【0134】
図12Bは、空気が歯10の歯髄室28に入るのを阻止するかまたは防止する、通気孔73の構成例を概略的に示すハンドピース50の実施形態の上部断面図である。中心には、圧力波発生器64(または流体流入ライン)がある。流出流体は、圧力波発生器(または流体流入ライン)を包囲する。圧力波発生器64(または流体流入ライン)から角度が付けられ流体出口72内の流体流の方向に向かうように角度が付けられている、2つの通気孔73が示されている(たとえば矢印94aを参照)。この例では、通気孔73は、ハンドピース50の外面の第1端部73aと流体出口72を接続する第2端部73bとを備
えた流路または内腔を備えている。周囲空気は、第1端部73aから第2端部73bに流れ、流体出口72において流れと合流するかまたは流れに混入され得る。また、本明細書に記載するように、歯空洞内の流体圧力が大きくなり過ぎた場合、歯空洞内の流体は通気孔73から流れ出ることができる(たとえば、流体は、通気孔の第2端部73bに入り、通気孔の第1端部73aにおいてハンドピースから出ることができる)。たとえば、流体出口72は、概して流体流出方向(たとえば矢印94a)に沿った出口軸を有することができ、通気孔は、概して空気流方向(たとえば矢印92b)に沿った通気孔軸を有することができる。いくつかの実施形態では、通気孔軸と出口軸との間の角度は、約90度未満、約60度未満、約45度未満、約30度未満、約15度未満または他の何らかの角度であり得る。角度が鋭角であるいくつかの実施形態の利点は、周囲空気流92bが出口72において流体流と比較的円滑に合流する(またはそれに混入する)ことができるということである。さらに、いくつかのこうした実施形態は、周囲空気が出口72において流れに反して流れ歯空洞65に入るのを阻止することができ、空洞65内では、こうした周囲空気は、治療によってはキャビテーション効果を阻止する傾向がある可能性がある。
【0135】
通気孔73は、ハンドピース50の外側(通気孔73はそこで周囲空気と連通することができる)から流体出口ライン72まで延在することができる。この例では、周囲空気は、廃棄流体を除去するためにも使用することができる排気または吸引ユニットに向かって流れることができる。治療中、したがって流出ラインは、流体92b(たとえば歯からの廃棄流体)および通気孔73からの周囲空気94bをともに含むことができる。この実施形態では、通気孔73を、圧力波発生器64(または入口71)が配置されるハンドピース50の中心から角度を付けることにより、周囲空気は、(相対的に圧力が高い)歯空洞65内に流れ込む可能性が低く、(相対的に圧力が低い)出口72に向かって流れる可能性の方が高い可能性がある。いくつかの実施形態では、ハンドピース50内に混入する空気が、廃棄流体が出てくる歯のアクセス開口部にわたって流れないように、通気孔を排気ラインに対して配置することができる。
【0136】
歯空洞65内の動作流体圧力が所望のレベルまたは安全レベルのままであるように、通気孔73を、流体プラットフォームの安全性を向上させるように設計することができる。通気孔73の使用により、開放しているが圧力および流体流が少なくとも部分的に制御される、流体プラットフォームを可能とすることができる。いくつかの閉鎖型流体プラットフォームは比較的簡単であるが、実際には、流体流入および流出を高度に制御するかまたは正確に調和させることか、またはシステムが安全弁および/あるいは遮断スイッチを備えていることが必要である可能性がある。場合によっては、システムに対するこうした追加により、システムの設計が複雑となる可能性があるだけでなく、システム内のあり得る故障点の数が増大する可能性がある。
【0137】
通気孔73を備えるように構成されるシステム実施形態は、流体プラットフォームが制御されかつ安全な方法で動作するのを可能にすることができる。さらに、いくつかの通気孔73の設計を簡略化することにより、あり得る故障点の数を低減することができる。さらに、あり得る故障点のうちのいくつかまたはすべてを、患者または医師に対して危険をほとんどまたはまったくもたらさない故障点まで低減することができる。
【0138】
通気孔73の使用により、システムの状態に応じて、空気が流体流出経路内に引き込まれるのを可能にすることができるか、または治療流体が治療領域からあふれ出るのを可能にすることができる、自動調整型流体プラットフォームを提供することができる。システムが、以下のシナリオ中に安全な根尖圧力を維持するように、通気孔73のサイズおよび位置を構成することができる。すなわち、入口71または出口72に流れまたは圧力がほとんどまたはまったくない間や、入口71または出口72に過剰な流れまたは圧力がある間や、入口71または出口72に流れまたは圧力の不足がある間、または上記シナリオの
組合せである。
【0139】
さまざまな実施形態において、特定のハンドピースに対して通気孔73を構成するために、以下の設計考慮事項のうちのいくつかまたはすべてを使用することができる。通気孔73を、流体出口経路に沿って、流体入口経路から離れるように配置することができ、それにより、歯空洞65内に空気をほとんどまたはまったく引き込むことができなくなる。たとえば、流体流出ラインに入る空気が排気ユニットに向かって流れるように通気孔73を設計することができ、それにより、歯髄室28内の空気が場合によっては治療の効用を低下させる可能性があるため、空気が歯の歯髄室28に向かって流れるのが阻止される。通気孔73を、ハンドピース50の遠位端58の比較的近くに配置することができる。治療中にまたはあらゆる故障の場合に、治療流体が、歯の内部に非常に多くの静圧(正または負)を蓄積し(たとえば、流出ラインにおける高さの相違または流れ抵抗により)悪影響をもたらさないように、通気孔73を歯から離れすぎないように配置すべきである。いくつかの実施形態では、流体出口72は流体保持器66に遠位端を有することができる。通気孔73を、流体出口72の端部から約0mmから約5mm、流体出口72の端部から約0mmから約25mm、または流体出口72の端部から約0mmから約100mm、または他のあらゆる値に配置することができる。いくつかの実施形態では、上に列挙した距離を、流体出口72の端部から測定するのではなく、歯の咬合面または歯の歯内治療アクセス開口部に関して測定することができる。
【0140】
他の実施形態では、通気孔73を、流体流路に沿うのではなく、流体流入路(たとえば流体保持器の流体入口側)に沿って配置することができる。たとえば、歯空洞内の流体圧力が(たとえば流体出口の閉塞または詰りにより)閾値に向かってまたは閾値を超えて上昇する場合、流体流入路に沿って配置される通気孔は、こうした流体が歯空洞に供給される前に流入路から流体が分流するように開放することができ、これにより、少なくとも部分的に圧力上昇を軽減することができる。いくつかの実施形態は、流体流入路および流体流出路の両方において通気孔(たとえば、流体入口に沿ってかつ流体出口に沿って配置された通気孔)を利用することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、通気孔73の形状は、比較的大きいアスペクト比を有することができる(たとえば、通気孔は、等価の面積の円に比較して細長い形状を有することができる)。アスペクト比が比較的大きい通気孔73は、空気流を吸引ラインに沿って提供しながら、通気孔73が通常動作中に(たとえば液体表面張力により)流体がこぼれるのを回避することを可能にすることができる。通気孔の高さは、約0から1mm、約0から3mm、約0から10mmまたは約0から20mmの間であり得る。通気孔の幅は、約0から2mm、約0から6mmまたは約0から20mmの間であり得る。通気孔のアスペクト比(たとえば幅対高さの比)は、約1:1、1.25:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1以上であり得る。アスペクト比は、約1.5:1を超えるか、約2:1を超えるか、約2.5:1を超えるか、または約3:1を超え得る。通気孔によっては、円形または略円形(たとえば約1:1のアスペクト比)であり得る。いくつかの実施形態では、ハンドピース50の遠位端58に近い方(たとえば治療中に歯に近い方)のいくつかの通気孔は、遠位端58から遠い方(たとえば治療中に歯から遠い方)のいくつかの通気孔より細長い。さまざまな実施形態において、各通気孔の面積は、約0.5mmから4mm、約0.1mmから3mm、約0.01mmから10mm以上(たとえば最大約100mm)の範囲であり得る。
【0142】
たとえば、2から10、2から50またはそれより多くの複数の通気孔73を使用することができる。以下のいくつかの理由または以下の理由のすべてに対して、少なくとも1つの他の通気孔から間隔を空けて配置される2つ以上の通気孔があることが有利であり得る。すなわち、通気孔73の偶発的な閉塞を阻止するため、通気孔73に当接される追加
の吸引システム(たとえば、歯科医師または助手によって操作される手持ち式歯科吸引チューブ)を介して加えられる圧力を緩和するため、各通気孔73のサイズを、(たとえば表面両直を使用して)通常治療中に廃棄流体が通気孔73からこぼれ出るのを低減するのに十分小さく維持するため、かつ/または流体出口72に沿って空気流を提供するためである。ハンドピースまたは流体プラットフォームに対して種々の位置決めシナリオ、たとえば顎の左側、顎の右側、上歯または下歯)に適応するために、複数の通気孔73を使用することも可能である。複数の通気孔73により、通気孔73のすべてより少ない通気孔73に対して内部または外部障害物がある場合に、流体プラットフォームが要求通りに機能することを確実にするのに役立つことも可能である。
【0143】
したがって、さまざまな実施形態において、通気孔73を、以下のシナリオ(または他のシナリオ)のうちのいくつかまたはすべてを可能にするように適切にサイズおよび形状を決めかつ配置することができる。これらのシナリオのうちのいくつかでは、歯髄室に圧力がほとんどまたはまったく加えられないようにシステムを構成することができる。
【0144】
(1)廃棄治療流体が流出導管を通して吸引され、外部歯科吸引がない(たとえば、歯科助手が歯の外側で外部吸引を提供しない)。処置の間に生成される廃棄治療流体が、流出導管を通して能動的に吸引される場合、通気孔は、空気がハンドピースに入り、さらに流出導管に入るのを可能にすることができる。通気孔を、流体を口内にこぼさないようにしながら、流体を歯内に保持するように適切に平衡させることができる。たとえば、通気孔の断面積が広すぎる場合、歯内に導入される治療溶液が通気孔に入る可能性があり、かつ口内にこぼれる可能性がある。通気孔の断面積が小さすぎる場合、治療溶液が歯から吸い出される可能性があり、それにより清掃の有効性が低下する可能性がある。
【0145】
(2)廃棄治療流体が流出導管を通して吸引され、外部吸引が歯科助手によって提供される。このシナリオでは、歯科助手は、歯科吸引ワンドを能動的に使用してハンドピースの外側の近くで吸引する。通気孔を、外部吸引源(たとえば歯科吸引ワンド)がハンドピース内部の治療溶液に対して比較的ほとんど影響を与えないようなサイズおよび形状とすることができる。
【0146】
(3)流出導管を通して能動的な吸引はなく、外部歯科吸引がない。このシナリオでは、操作者は、流出導管を排気ユニットに接続していない可能性があり、または流体出口は閉塞しているかまたは詰まっている可能性がある。廃棄治療流体は、患者の口内にこぼれるかまたは排気口を通って流れ込む可能性がある(歯科助手によって吸い出される可能性がある)。流体は歯内に維持される可能性がある。
【0147】
(4)流出導管を通して能動的な吸引はなく、外部吸引が歯科助手によって提供される。このシナリオでは、操作者は、流出導管を排気ユニットに接続していないが、歯科助手は、通気孔を介して口内にこぼれた流体を吸引している。流体は依然として口内に維持される可能性がある。
【0148】
他の実施態様では、通気孔73は、(歯空洞65内の圧力が低すぎない限り)周囲空気が歯空洞65に入るのを防止しながら、クラッキング圧力が歯空洞65からの流体が出るのを可能にする(たとえば、歯空洞65内の流体圧力がクラッキング圧力を超える場合)ように構成された1つまたは複数の一方向弁または逆止め弁を備えることができる。
【0149】
さまざまな実施態様では、上記設計考慮事項のうちのいくつかまたはすべてが、たとえばシステムで使用される廃棄ユニットの動作圧力および流速、治療流体流速、流体流出ラインの直径等を含むいくつかのパラメータによって決まる可能性がある。通気孔73の数、サイズ、位置、形状および/または形態は、種々の実施形態において変化する可能性が
ある。通気孔73の2つ以上のあり得る設計が、動作パラメータのいくつかのセットに対して適切に機能する可能性があり、設計を、上記設計考慮事項(または他の設計目的)のうちの1つまたは複数を達成するかまたは最適化するように選択することができる。
【0150】
(vii)液体噴出装置のさらなる例
図9は、歯空洞65内に配置することができる、ガイドチューブ100に流体を供給するように流体入口71を備えるハンドピース50の実施形態を概略的に示す。上述したように、流体は、高速ジェットビーム60として現れ、歯空洞内の周囲流体と相互作用し、ガイドチューブ100の遠位端における衝突面110に衝突し、圧力波67を発生させるように噴霧90として分散することができる。ハンドピース50はまた、歯10から流体を除去するための流体出口72も備えている。たとえば、流体出口72を、歯科医院において一般に見られる吸引ラインまたは排気システムに流体的に結合することができる。
【0151】
歯(たとえば、使用される場合は歯シール75の平坦面)に当接させることができる流体プラットフォーム61の例を概略的に示す、図10Aは断面図であり、図10Bは上面図である。この例では、流体プラットフォーム61は、圧力波発生器64(たとえば液体ジェット)を備えた流体保持器66と、2つの通気孔73を備えた流体出口72とを備えている。流体保持器66を、ラバーダムクランプ130によって歯に取り付けることができる。この例では、細長いハンドピースは使用されず、流体保持器66を、歯科医師が手動で適所まで操作することができる。流体プラットフォーム61(または圧力波発生器54)が治療に対して所望の位置にある時、ラバーダムクランプ130を、流体保持器66および治療中の歯(および/または隣接する歯)に締め付けることができる。
【0152】
図11は、歯10に当接させることができる流体プラットフォーム61の代替例を概略的に示す。この例では、流体保持器66は、治療中の歯の歯シール75(使用される場合)の上に配置され、患者が対向する歯で流体プラットフォーム61をかみしめることによって適所に保持され得る。いくつかの実施形態では、ラバーダムクランプ130をさらに使用することができる(たとえば図10Aおよび図10Bを参照)。この実施形態では、流体保持器は、圧力波発生器64(たとえば液体ジェット)と通気孔72を備えた流体出口72とを備えている。
【0153】
2.圧力波発生器のさらなる例
上述したように、圧力波発生器を、エネルギーの一形態を治療流体内で圧力波に変換するあらゆる物理的装置または現象とすることができる。本明細書に開示するシステムおよび方法の実施形態で、多くの異なるタイプの圧力波発生器(または圧力波発生器の組合せ)が使用可能である。
【0154】
(i)機械エネルギー
圧力波発生器は液体噴射装置を含むことができる。機械エネルギー波発生器はまた、回転物体、たとえば小型プロペラ、偏心的に制限された回転シリンダ、穿孔された回転ディスク等も含むことができる。これらのタイプの圧力波発生器はまた、圧電気、磁気ひずみ等を介して圧力波を生成する超音波処理装置等、物体を振動させるか、発振させるかまたは脈動させることを含むことができる。いくつかの圧力波発生器では、圧電変換器に伝達される電気エネルギーが、治療流体内の圧力波を生成することができる。場合によっては、圧電変換器を使用して、超音波周波数を有する音波を生成することができる。
【0155】
(ii)電磁エネルギー
放射線の電磁ビーム(たとえばレーザビーム)は、歯空洞内にエネルギーを伝播させることができ、電磁ビームエネルギーは、治療流体に入る際に圧力波に変換され得る。たとえば、電磁エネルギーの少なくとも一部を、歯空洞内の流体(たとえば水)によって吸収
することができ、それにより、局所加熱および流体内を伝播する圧力波を発生させることができる。電磁ビームによって発生する圧力波は、流体において光誘起キャビテーション効果または光音響キャビテーション効果を発生させることができる。放射線源(たとえばレーザ)からの電磁放射線を、光導波路(たとえば光ファイバ)によって歯空洞まで伝播させ、導波路の遠位端(たとえばファイバの成形先端、たとえば円錐形先端)において流体に分散させることができる。他の実施態様では、放射線を、ビーム走査システムによって歯空洞に向けることができる。
【0156】
電磁エネルギーの波長は、水分子によって強力に吸収される範囲であり得る。波長は、約300nmから約3000nmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、波長は、約400nmから約700nm、約700nmから約1000nmの範囲(たとえば790nm、810nm、940nmまたは980nm)であるか、約1ミクロンから約3ミクロンの範囲(たとえば約2.7ミクロンまたは2.9ミクロン)であるか、または約3ミクロンから約30ミクロンの範囲(たとえば9.4ミクロンまたは10.6ミクロン)である。電磁エネルギーは、紫外線、可視線、近赤外線、中赤外線、マイクロ波またはそれより長い波長であり得る。
【0157】
電磁エネルギーを、たとえば約1Hzから約10kHzの範囲の繰返し率で(たとえばパルス状レーザを介して)脈動させるかまたは変調することができる。パルスエネルギーは、約1mJから約1000mJの範囲であり得る。パルス幅は、約10μsから約500μs、約1msから約500msまたは他の何らかの範囲であり得る。場合によっては、ナノ秒パルス状レーザを約100nsから約500nsの範囲のパルス繰返し数で使用することができる。上述したことは、放射線パラメータの限定しない例であり、他の実施形態で、他の繰返し率、パルス幅、パルスエネルギー等を使用することができる。
【0158】
レーザは、ダイオードレーザ、固体レーザ、ファイバレーザ、Er:YAGレーザ、Er:YSGGレーザ、Er,Cr:YAGレーザ、Er,Cr:YSGGレーザ、Ho:YAGレーザ、Nd:YAGレーザ、CTE:YAGレーザ、CO2レーザまたはTi:サファイアレーザのうちの1つまたは複数を含むことができる。他の実施形態では、電磁放射線源は、1つまたは複数の発光ダイオード(LED)を含むことができる。電磁放射線を使用して、治療流体内部のナノ粒子(たとえば、光吸収性金ナノロッドまたはナノシェル)を励起することができ、それにより、流体内の光励起キャビテーションの効率を向上させることができる。治療流体は励起可能な官能基(たとえばヒドロキシ官能基)を含むことができ、それは、電磁放射線による励起の影響を受けやすい可能性があり、(たとえば放射線の吸収の増大のために)圧力波生成の効率を向上させることができる。いくつかの治療中、第1波長(水によって強力に吸収される波長)を有する放射線を使用し、次いで、第1波長とは等しくない第2波長(たとえば、水によってそれほど強力に吸収されない波長)を有する放射線を使用することができる。たとえば、いくつかのこうした治療では、第1波長は歯流路内に気泡を生成するのに役立つことができ、第2波長は組織を崩壊させるのに役立つことができる。
【0159】
電磁エネルギーを、約1秒間から数秒間、最大約1分間以上の範囲であり得る治療時間、歯空洞に施すことができる。治療処置は、歯に電磁エネルギーを施す1回から10回(またはそれより多い)サイクルを含むことができる。流体プラットフォームを使用して、治療プロセス中に歯空洞内で流体を循環させることができ、それにより、有利に、(患者に対して不快をもたらす可能性がある)歯の加熱を阻止することができる。流体プラットフォームは、歯内に流体を保持するのに役立つ流体保持器を備えることができる。流体保持器は、何らかのパルス状レーザ治療中に液圧式自動放出によって発生する可能性がある流体の跳ね返りを阻止することができる。流体プラットフォームによる治療流体(たとえば組織溶解剤を含む水)の循環により、新しい治療流体を組織および有機物にもたらすと
ともに、歯から溶存物質を洗い流すことができる。電磁放射線を使用する治療によっては、治療流体の循環により、(流体循環がほとんどまたはまったくない治療に比較して)清掃の有効性を向上させることができる。
【0160】
いくつかの実施態様では、電磁エネルギーを他の圧力波発生モダリティに加えることができる。たとえば、電磁エネルギーを歯空洞に供給することができ、その場合、音波を発生させるように機械エネルギー圧力波発生器(たとえば液体ジェット)が使用される。
【0161】
(iii)音響エネルギー
音響エネルギー(たとえば超音波)を、治療流体に圧力波をもたらす超音波変換器または超音波チップ(またはファイルあるいは針)に伝達される電気エネルギーから発生させることができる。超音波変換器は、電磁エネルギーを機械エネルギーに変換する電気信号または磁気歪み素子に応じて物理的に発振する圧電結晶を含むことができる。変換器を、治療流体内、たとえば歯髄腔内部の流体内、または流体プラットフォーム内に収容される(ただし歯髄腔の外側の)流体内に配置することができる。超音波装置によって生成することができるパワースペクトルの例は、図2B-2に示されている。超音波源は、さまざまな実施形態において約20kHzから約40kHzの周波数範囲(たとえば約30kHz)の音響出力を提供することができる。いくつかの実施形態では、音波エネルギー(たとえば約1kHから8kHz等、約20kHz未満の周波数)またはメガソニックエネルギー(たとえば約1MHzを超える周波数)を使用することができる。
【0162】
(iv)いくつかの圧力波発生器のさらなる特性
圧力波発生器64を、歯に対して所望の位置に配置することができる。圧力波発生器64は、歯内部の流体内に圧力波67を生成する(圧力波67の発生によってキャビテーションが生成され、または、もたらされる場合があり、そうでない場合もある)。圧力波67は、歯内部の流体を通して伝播し、歯内の流体は、圧力波67に対する伝播媒体としての役割を果たす。圧力波67はまた、歯材料(たとえば象牙質)を通って伝搬することも可能である。必要ではないが、十分に高強度の圧力波を施す結果として、音響キャビテーションが発生する可能性があると考えられる。キャビテーション気泡の崩壊が、たとえばソノケミストリ、組織解離、組織剥離、ソノポレーションおよび/または石灰化構造体の除去等、本明細書に記載する複数のプロセスを誘発し、もたらし、またはそれに関与することができる。根管空間内のスメア層は、根管の(たとえば歯内治療用ファイルによる)器具類の使用中に生成される象牙質の層、有機残骸および無機残骸、ならびに細菌を含む。本明細書で考察するキャビテーション効果は、スメア層を除去することに有効であり得る。いくつかの実施形態では、圧力波発生器64を、圧力波67(および/またはキャビテーション)が歯内の本来の象牙質を実質的に破壊しないように構成することができる。上述したプロセスのうちの1つまたは複数に、圧力波場を単独でまたはキャビテーションに加えて生じさせることができる。
【0163】
いくつかの実施態様では、圧力波発生器は、一次キャビテーションを発生させ、それが圧力波を生成し、それによって二次キャビテーションをもたらすことができる。二次キャビテーションは、一次キャビテーションより弱い可能性があり、非慣性キャビテーションであり得る。他の実施態様では、圧力波発生器は圧力波を直接発生させ、それにより二次キャビテーションをもたらすことができる。
【0164】
さまざまな実施態様では、圧力波発生器64を好適な位置に配置することができる。たとえば、圧力波発生器64を、患者の口内で操作することができるハンドピース50に取り付けることができる。圧力波発生器64の遠位端を、歯髄腔26内部、たとえば歯髄室28床の上の根管に隣接して配置することができる。こうした実施態様では、圧力波発生器64によって放出される所与の量のエネルギーに対して、圧力波67は、圧力波発生器
64が根管に近いほど、根管および歯髄室内のスメア層を清掃し、脱灰しかつ除去することに対する効果を増大させることができる。場合によっては、圧力波発生器64の遠位端は、歯髄室床から約1mmから約3mmの距離に配置される。所望の距離は、流体内に圧力波67を生成するのに使用されるモダリティ(たとえば、機械、電磁気、音響)によって決まる可能性がある。他の実施形態では、圧力波発生器64の遠位端を、根管30の内部に配置することができる。たとえば、ガイドチューブ100は、根管を下って根管の根尖に向かって向けることができる可撓性材料を含むことができる。一実施形態では、圧力波発生器64の遠位端は、歯髄腔26の外側に配置されるが、歯髄腔内の流体に露出している。別の実施形態では、圧力波発生器64の遠位端は、根管空間30内部に配置されている。
【0165】
圧力波発生器64(または流体入口71)により流体の流れが根管内に流れ込むいくつかの実施形態では、根管の動圧が発生する可能性があり、それにより、患者によっては根尖周囲の物質の押出しがもたらされる可能性がある。動圧に影響を与えるパラメータとしては、たとえば、根管口に対する流体の流れの方向、形状および速度とともに、歯髄腔の形状およびトポロジを挙げることができる。また、いくつかの実施態様では、圧力波発生器64が、根管口に入り、実質的に根管通路を閉塞する場合、閉塞が、根管を清掃し消毒するために使用される物理化学的現象の組を減速させるかまたはさらには停止させる可能性がある。したがって、上述したように、圧力波発生器64の遠位端が、歯の歯髄室28内の所望の位置または規定された位置にあるように、圧力波発生器64を設計することができる。
【0166】
圧力波発生器64に対してエネルギーを提供するエネルギー源を、ハンドピースの外側に配置し、ハンドピースの内側に配置し、ハンドピースと一体化し、等とすることができる。
【0167】
B.流体プラットフォームを用いる歯内治療の方法および装置の例
図13Aは、歯10に形成されたアクセス開口部25を概略的に示す。最初にドリルまたは研削器具を使用して、歯10に開口部25を作成することができる。開口部25は、エナメル22および象牙質20を通って延在し、歯髄腔26内の歯髄を露出させかつそれへのアクセスを可能にすることができる。開口部25を、歯10の歯冠12の上部にあるいは歯間12の側面等の別の部分に、セメント-エナメル境15の近くに、または歯肉14の下方の歯根16に作成することができる。開口部25を、罹患した歯髄および/または根管空間30のうちのいくつかあるいはすべてに対する好適なアクセスを可能にするように必要に応じてサイズおよび形状を決めることができる。流体プラットフォーム61またはハンドピース50を、歯における歯内治療処置を可能にするように歯に当接させるかまたは取り付けることができる。
【0168】
(1)歯シールの例
他の方法では、歯に(任意選択的な)歯シール75を形成することにより、流体プラットフォーム61またはハンドピース50を当接させることができる平坦面76を提供することができる。図13Bは、図13Aの歯10の歯冠12の周囲に施された歯シール75の実施形態を概略的に示す。記載するように、歯シール75の上面76を、平板を当てかつ除去した後に、実質的に平坦とすることができる。
【0169】
歯シール75を使用して、歯の咬合面の溝、窪みまたは欠陥部を一時的に充填するか、または流体プラットフォーム61あるいはハンドピース50のキャップ70が係合することができる実質的に平坦な面76を生成することができる。歯シール75は、液体または空気が歯髄室28内に入りかつ/またはそこから漏れ出るのを実質的に阻止する、水密および/または気密シールを容易にすることができる。歯シール75を使用して、歯髄室2
8の実質的に密閉シールを形成することができる。歯シール75は、実質的な歯冠の凹凸または他の理由による凹凸を含む歯とキャップ70が係合するのに役立つことができ、それにより、キャップ70がそれ自体で容易にふさぐことができない凹凸が封止される。
【0170】
歯10が、壁が欠けているかまたは腐食部を有しているいくつかの例では、歯シール75(または1つまたは複数の歯科複合材料)を使用して、歯冠12に歯シール75を形成する前に歯10の損傷したまたは腐食した部分を復元することができる。図13Cは、歯冠12の部分77が腐食または損傷のために欠けている、歯10に対して施された歯シール75の実施形態を概略的に示す。歯シール75を使用して、歯シール75(および歯の腐食していない部分)が後続する流体治療に対して実質的に完成した空洞を形成するように、歯冠12の部分77を覆うかまたは増強することができる。
【0171】
歯シール75は、使用後に歯から容易に取り除くことができる材料を含むことができる。材料を、歯科用バー、外科用メス等の器具を用いて再成形することができる。材料を実質的に柔軟であるかまたは半可撓性とすることができ、自然にまたは(たとえば硬化用光源を介する)硬化により、比較的短時間(たとえば約30秒間未満)で凝固する。歯シール75を形成するために単独でまたは組み合わせて使用することができる材料の例としては、シリコーン、印象材、3MImprintTMBite、Coltene Whaledent(登録商標)によるJet Blue Bite等が挙げられる。
【0172】
歯シール75を歯に施す方法例は以下の通りである。歯の歯内治療アクセス開口部25を、実質的に従来の根管処置で使用されるように、たとえば標準歯内治療アクセス準備方法を使用して作成することができる。いくつかの実施形態では、標準技法を用いて根管を準備することができる。他の実施形態では、根管を準備しない。歯の咬合面にかつ/または歯冠12の周囲に、歯シール材料を施すことができる。歯の腐食部分または罹患部分を、歯シール材料または他の複合材料を用いて増強することができる。平板を、たとえば材料の上に板を押し付けることにより歯シール材料に当てることができ、それによって板の真下に実質的に平坦な面を生成することができる。操作者は、材料が凝固するまで待機するか、または(光硬化性である場合)硬化用光源を使用して材料を硬化させることができる。歯シール材料から平板を取り除くことができる。材料のいずれかが歯髄室28に浸透するかまたは歯内治療アクセス開口部25を閉塞した場合、器具(たとえば歯科用バー)を用いて材料を除去することができる。歯材料の平坦面に、流体プラットフォーム61、ハンドピース50またはキャップ70を当接させることができ、歯内治療処置を開始することができる。
【0173】
いくつかのこうした方法では、歯内治療アクセス開口部25が形成される前に、歯に歯シール75を施すことができる。そして、象牙質および歯シール材料の両方に対して、歯内治療アクセス開口部25を形成することができる。この場合、実質的に透明な材料を使用することが、歯内治療アクセスに対する可視性を向上させるため好ましい可能性がある。
【0174】
歯シール材料は、それ自体で歯に接着されることができるか、または接着剤を使用して歯に取り付けられ得る。いくつかの方法では、歯シール材料を、ラバーダムクランプの上にかつ中に流れて、凝固/硬化時に、歯の上への歯シール材料の取付を補強するように施すことができる。いくつかのこうした方法では、材料は、ラバーダムクランプに係合しながら、少なくとも部分的に歯に接着される。
【0175】
歯シール75を歯に施す方法例は、歯シール材料を歯の表面に施すことと、歯シール材料の表面76を平坦化することとを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、歯にアクセス開口部25を形成することを含み、アクセス開口部25を、歯シール材料を施す前に
、または歯シール材料を施した後に形成することができる。いくつかの実施形態では、歯の表面を平坦化することは、歯シール材料に平坦面を施すことを含む。本方法は、歯シール材料を硬化させることを含むことができる。本方法は、歯シール材料から平坦面を除去することを含むことができる。本方法は、複合材料または歯シール材料を用いて歯の一部を増強することを含むことができる。
【0176】
(2)歯寸法測定器
方法によっては、流体入口71および/または圧力発生器64の遠位端を、遠位端が根管口から所望の距離にあるように歯髄室28内部に配置することができる。歯髄室28内の好適な位置に流体入口71の遠位端を配置することにより、たとえば根管空間30を過加圧しないことにより、患者の安全性を向上させることができる。圧力波発生器64の遠位端を歯髄室28内の好適な位置に配置することにより、キャビテーション効果および清掃効果を発生させる際の音波67の有効性を向上させることができる。さらに、歯空洞の一部における流体循環(たとえば根管空間における循環)を促進することができる。さまざまな方法において、流体分配器および/または圧力波発生器64の遠位端と歯髄床の最高部分との間の垂直距離は、約0から1mm、0から5mm、5から10mm、10から15mm、15から30mm、0から30mmの範囲、または他の何らかの範囲であり得る。
【0177】
図14Aおよび図14Bに示す例を参照すると、寸法測定器の組またはキットを使用して、咬合面において歯シール材料によって生成された実質的に平坦な面76と歯髄床における最高箇所との間の距離を測定することができる。
【0178】
図14Aは、例としての歯10の歯髄室28内に挿入された寸法測定器132の例を概略的に示す。この例では、寸法測定器132は、歯髄室28には大きすぎる。図14Bは、歯10の歯髄室28内に挿入された寸法測定器132の別の例を概略的に示す。この例では、寸法測定器132は、歯髄室28に対して所望のサイズである。寸法測定器132を、空洞の幅を横切って横方向に移動させることができ、実線は第1位置における寸法測定器132を示し、破線は、歯髄室28内に異なる位置における寸法測定器132を示す。
【0179】
図14Aおよび図14Bに示す例では、寸法測定器132は、(歯内治療用ファイルのものと同様であり得る)ハンドル134と、長さがサイズの異なる寸法測定器で異なるピン140と、ピン140からハンドル134を分離するディスク136とを有している。ハンドル134を、指で、または歯科用プライヤによって把持することができる。ディスク136の遠位面138を実質的に平坦とすることができる。寸法測定器ピン140を、歯10の歯髄室28内に挿入することができる。歯科医は、ピン長さの異なる寸法測定器132を歯髄室28内に挿入することにより、歯髄室28の深さまたはサイズを確定することができる。図14Aにおいて、ピン140の遠位端142が歯髄室床に接触するときに、寸法測定器ディスク136が歯シール75の平坦面76を越えて延在するため、寸法測定器ピン140は歯髄室28に対して長すぎる。より短い寸法測定器ピン140を選択して、歯髄室28の周囲を横方向に移動させることができる。このプロセスを、寸法測定器ピン140を歯髄室28内で移動させる際に歯髄床と接触しない寸法測定器ピン140が見つかるまで繰り返すことができる。正しいかまたは望ましい長さを有する寸法測定器132は、寸法測定器ディスク136が歯シール75の平坦面76の上に配置されかつ横方向に滑らせる時(図14Bの実線双方向矢印146によって概略的に示す)、歯髄床と接触しない最長ピン140を有することができる。図14Bは、ピン140の遠位端142が歯髄床の適切な高さ上方に配置されている(水平破線144によって示す)ため、図示する歯10に対して適切なピン長さである寸法測定器132を示す。この寸法測定器132を使用して、歯髄室28の深さを確立することができる。
【0180】
別の実施態様では、単一の寸法測定器132を使用することができる。寸法測定器ピン140を、測定しるしでマークするかまたは目盛りを付すことができ、寸法測定器ディスク136を、ピン140に対して上方または下方に移動するように調節可能とし構成することができる。歯科医は、歯髄室28内に寸法測定器132を挿入して、寸法測定器ディスク136を、それが歯シール75の上面76に接触するまで移動させることができる。そして、寸法測定器132は歯髄室28から取り除かれ、測定しるしに対するディスク136の位置が、歯髄室28の深さの測定値を提供する。圧力波発生器(または流体入口)の遠位端を、遠位端が歯髄室床の上方の高さ(たとえば床の約1mmから5mm上方)であるように、歯髄室28の測定された深さよりわずかに小さい深さに配置することができる。
【0181】
他の実施形態では、好適なしるしで目盛りされた定規または深さゲージを歯髄室28内に挿入して、上面(たとえば、使用される場合は歯シール75の平坦面76)から下面(たとえば歯髄室の床)までの距離を測定することができる。他の実施形態では、歯の放射線透過写真(たとえばX線)を撮影することができ、歯髄室28のサイズまたは深さを放射線透過写真から確定することができる。
【0182】
歯空洞65の深さを確定する方法例は、一組の寸法測定器を備えるキットを提供することを含み、組における各寸法測定器は、異なる歯空洞の深さを測定するように構成されている。本方法は、歯空洞65内に異なる寸法測定器を繰り返し挿入して、深さを確定することを含む。本方法のいくつかの実施形態では、深さは、歯髄床と接触しない最長の寸法測定器として確定される。いくつかの実施形態では、本方法は、寸法測定器を、歯空洞65の周囲を横方向に移動させることを含む。
【0183】
(3)キャップおよびシーラの例
流体保持器66は、キャップ70(および任意選択的なシーラ68)を備えることができ、それを、流体入口71または圧力波発生器64の遠位端が歯空洞65内の所望の位置にあるようなサイズとすることができる。システムによっては、各寸法測定器132を、歯に当接させることができるキャップ70に関連付けることができる。上述したように、キャップ70は、場合によっては、ハンドピース50の遠位端58に取り付けるかまたは(ハンドピースのハンドルを使用することなく)歯10に手動で施すことができる。ハンドピース50が歯シール75に当接されたときに、流体入口71または圧力波発生器64の遠位端が、(図15Cにおいて水平破線144によって示す)歯髄床の所望の高さ上方に位置するように、キャップ70を使用することができる。キャップのサイズ増分を、寸法測定器のピンのサイズ増分と実質的に等しくすることができる。歯髄室28の深さが寸法測定器132を使用して確定された後、適切なサイズのキャップを選択して、(任意選択的に)ハンドピース50または流体プラットフォーム61に取り付けることができる。キャップ70をハンドピース50に、化学的に(たとえば接着剤を使用して接着する)、機械的に(たとえばスナップ留めまたはねじ留めする)、磁気的に(たとえばキャップ70およびハンドピースの遠位端を反対の磁性にすることにより)、または上記の組合せにより取り付けることができる。別法として、キャップ70を歯に取り付ける(たとえば接着する)ことができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、キャップ70はシーラ68を備えることができ、それは、治療中に流体が歯10から漏れ出ないように、キャップ70と歯シール75との間に水密または気密結合を維持するのに役立つ可撓性ガスケット(たとえばスポンジ)であり得る。可撓性シーラ68は、歯科医師がハンドピースを適所まで操作する際に、歯の上のハンドピース50の移動に適応することができる。シーラ68を、歯70の遠位端に配置することができ(たとえば図3Aを参照)、またはキャップ70の内側に配置することができる
(たとえば図3Bを参照)。いくつかの実施形態では、シーラは、流れ制限器68として機能し、歯空洞65からの逆流または跳ね返りを阻止し、流体を歯空洞65内に保持するのに役立ち、空気が吸引ライン内に流れ込むのを可能にすることができる。
【0185】
シーラ68はスポンジ(たとえば独立気泡発泡体)を含むことができる。シーラ材料は、有利には、歯内治療中に使用される化学物質(たとえば漂白剤)に耐えることができ得る。シーラ68を、ハンドピースと歯との間を適切に封止するように弾性の材料から形成することができる。例として、スポンジ、たとえばポリビニル発泡体、ポリエチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース発泡体、シリコーン発泡体等が挙げられる。他の例としては、シリコーン、エラストマー、ゴム、ラテックス等が挙げられる。一実施形態では、音響減衰が実質的にわずかである材料が使用される。
【0186】
いくつかの方法では、歯シールは使用されず、ハンドピース50(または流体プラットフォーム61)のキャップ70を歯に直接当接させることができる。いくつかのこうした方法では、シーラ68は、治療中に歯空洞65からの治療流体および有機物の流れを阻止するように、キャップ70と歯10との間に適切な封止を提供することができる。
【0187】
キャップ70は、流体が歯空洞65から流体出口72内に流れるのを可能にする内部空洞69を有することができる。内部空洞69は開口部98を有することができ、開口部98を、圧力波発生器64の一部が開口部を通過することができるように十分広くすることができる(たとえば図12Bを参照)。開口部98を、歯髄腔26(または根管根尖)の実質的な加圧なしに廃棄流体が歯髄腔26から出るのを可能にするのに十分大きいように構成することができ、かつ、歯髄腔の封止を妨げないように十分小さく構成することができる。いくつかの実施形態では、開口部のサイズを、空洞内に分散される流体の流速に少なくとも部分的に基づいて調節することができる。いくつかの実施形態では、開口部は実質的に円形の開口部を備えている。いくつかのこうした実施形態では、ガイドチューブ100を、開口部98に(たとえば、開口部98の中央に、たとえば図12Bを参照)配置することができる。いくつかの実施形態では、開口部の有効面積は、約5mmから15mmの範囲である。開口部は、約1mmから25mmの範囲の面積を有することができる。シーラ68は、キャップ70の遠位端において開口部を実質的に包囲することができる(たとえば図11を参照)。
【0188】
キャップ70と歯10(または歯シール75)との間に生成された流体接続は、流体接続を維持しながら、歯に関連するハンドピースの移動に適応することができるように、本質的に可撓性であり得る。いくつかの実施形態では、キャップ70は耐久性のある生体適合性材料から形成され、シーラ68は、移動に適応するとともに優れた流体接続を提供するように使用される。他の実施形態では、キャップ70を、弾性、透過性および/または硬さの程度が異なる1つまたは複数の材料から作製することができる。たとえば、歯と係合するためにより軟質のより透過性の材料を使用することができ、それにより別個のシーラ68の必要性が低減する(または場合によってはなくなる)。キャップは、いずれの歯が治療されているか(たとえば臼歯、切歯、犬歯等)に応じて異なる形状を有することができる。
【0189】
場合によっては、歯10(または歯シール75)とキャップ70との間に確実なシールをもたらすために、比較的小さい力が使用される。たとえば、ハンドピース50の場合、シールを形成するためにハンドピース50に加えられる力を、処置中に操作者が快適に加えるのに十分低くすることができる。ハンドピースが手持ち式でない場合、(たとえば患者がかみしめることによる)過度の締付/保持力なしに、キャップ70を歯10(または歯シール75)に当接させることができる。キャップ70を、処置を通して使用することができ、化学物質の暴露(たとえば、処置中に導入される洗浄剤等)に耐えるように構成
することができる。
【0190】
(4)歯シールに当接されるハンドピースの例
図15A図15Bおよび図15Cは、歯10の歯シール75に当接されるハンドピース50を概略的に示す。歯空洞65内に配置された圧力波発生器64を示す、図15Aは側面図であり、図15Bは部分切取図であり、図15Cは、ハンドピース50の遠位端58および圧力波発生器64を示す拡大図である。
【0191】
ハンドピース50の遠位端58は、圧力波発生器64の遠位端を(図15Cにおいて水平破線144によって示す)歯髄室床の所望の距離上方に配置するように、上述したように選択されたキャップ70を備えている。この例では、キャップ70は、キャップ70と歯シール75の上面76との間に実質的に水密な接続を提供するのに役立つシーラ68を備えている(たとえば図15Bおよび図15Cを参照)。図15Cは、この例では、ハンドピース50が圧力波発生器64(液体ジェット)および通気孔付き流体出口72、73を備えていることを示す。この例では、治療流体は、液体ジェットを介して腔に入り、流体出口72によって除去される。
【0192】
(5)治療処置の例
図16A図16B図16Cおよび図16Dは、さまざまな歯内治療処置中に使用することができる技法の例を示すフローチャートである。これらの技法は、限定ではなく例示するように意図されている。本技法を、あらゆる好適な順序で行うことができる。それら技法のうちのいずれも、すべての歯内治療処置に必要であるか絶対必須であるとは限らない。また、技法を追加するかまたは除去することができる。
【0193】
図16Aにおいて、ブロック220では、患者内に麻酔薬を注射して、歯領域の感覚を麻痺させる。ブロック222において、歯領域にラバーダムを施すことができ、ラバーダムを消毒することができる。ブロック224において、歯科医師は歯10から腐食部を除去し、必要な場合は、たとえば複合材料または歯シール材料を用いて、歯空洞65の壁を増強することができる。たとえば、歯科医師は、歯構造体に対する腐食または損傷により壁を増強するように判断する場合がある(たとえば図13Cを参照)。ブロック226において、医師は、その後、歯空洞への開口部25を設けるように歯内治療アクセスを行うことができる。アクセスは、歯冠、頬側、舌側または他のあらゆるタイプのアクセスであり得る。処置によっては、複数の開口部25を形成することができ、たとえば、1つの開口部は流体入口または圧力波発生器のために歯空洞へのアクセスを可能にし、第2開口部は流体が歯空洞65から排出されるのを可能にする。
【0194】
図16Bにおいて、ブロック228では、歯10に歯シール75を施すことにより、流体プラットフォーム61またはハンドピース50を施すことができる実質的に平坦な面76を設けることができる。処置によっては、歯シール75を使用しない場合があり、たとえば、流体を歯空洞内に保持するために、アクセス開口部に流れ制限器(たとえばスポンジ)を施すことができる。ブロック230において、歯空洞65の深さを測定することができる。たとえば、深さを、1つまたは複数の歯寸法測定器(たとえば図14Aおよび図14Bを参照)のキットを使用して、または目盛り付きゲージあるいはファイルを使用して測定することができる。歯空洞65の所望のサイズが確定されると、ブロック232において、キャップのキットから対応するキャップを選択することができる。キャップを流体保持器に(たとえばハンドピース50の遠位端に)取り付けることができる。流体入口71の遠位端または圧力波発生器64の遠位端が歯10の所望の位置、たとえば歯髄室床の所望の距離上方にあるように、キャップ70のサイズを決めることができる。キャップ70は、キャップ70と歯シール75(または歯シールが使用されない場合は歯)との間に実質的に水密または気密接続を提供するように、シーラ68(たとえばスポンジまたは
発泡体)を備えることができる。本発明書で論じるように、キャップは必要ない。
【0195】
図16Cにおいて、ブロック234では、たとえば、根管の作業長さを測定するために根尖長測定器の使用を容易にするために、望ましい場合は、歯髄室28と根管空間の冠状部分とを清掃することができる。ブロック236において、根管空間の作業長さを、たとえば、根尖長測定器、器具(たとえばファイル)または放射線写真(たとえばX線)によって測定することができる。たとえば作業長さは、根尖狭窄部から歯10の咬合面における咬頭までの根管空間の長さの測定値であり得る。望ましい場合、ブロック238において、歯科医師は、たとえば要求に応じて根管空間を拡大するかまたは成形するように、根管を成形することができる。ブロック240において、歯空洞65を清掃することができる。たとえば、流体保持器66を歯に当接させて、歯空洞65内の清掃溶液(たとえば防腐剤または抗生物質)を循環させるように使用することができる(たとえば図3Aを参照)。歯10を伝播する音波67を発生させるように、圧力波発生器64を起動させることができる(たとえば図2Aを参照)。音波67は音響キャビテーションを発生させることができ、それにより、歯10の根管を有効に清掃することができる。処置によっては、歯10から流れる流体を監視して、清掃が完了した時を判断することができる(たとえば図3Cを参照)。
【0196】
図16Dにおいて、ブロック242では、歯空洞65を、根管空間を実質的にふさぎかつ封止するように、充填材料によって少なくとも部分的に充填することができる。処置によっては、充填は任意選択的であり、それは、その後の感染または再感染の可能性がほとんどないように清掃が完了する可能性があるためである。歯空洞65を充填しないことにより、患者に対して処置の持続時間および費用を低減することができる。ブロック244において、たとえば(歯冠アクセス開口部が使用される場合)冠状シールを用いてアクセス開口部25を封止することができる。ブロック246において、アクセス開口部にわたって歯冠を復元することができる。
【0197】
図17は、歯内治療処置中に脱気流体を使用する方法例を示すフローチャートである。この方法例では、ブロック248において、歯空洞65内に脱気流体を導入する。脱気流体を、たとえば貯蔵器(たとえば瓶)等の脱気流体源から供給することができ、または脱気ユニットからの出力として供給することができる。さまざまな実施形態において、脱気流体を、流体入口または流体導入器を使用して歯空洞内に導入することができる。脱気流体は、歯空洞内で循環することができる。脱気流体は、歯の象牙質に、寸法が約500ミクロン未満、約250ミクロン未満、約100ミクロン未満、約50ミクロン未満、約25ミクロン未満、約10ミクロン未満、約5ミクロン未満または他の何らかの値である開口部を貫通するように、十分に低い割合の溶存気体を有することができる。脱気流体を使用することにより、歯空洞内の気泡の形成を阻止することができる。
【0198】
エネルギーを脱気流体内に供給することができる。たとえば、ブロック250において、歯内の脱気流体に音波を発生させることができる。音波は、歯内の流体内に音響キャビテーションを、必要ではないが発生させることができる。音波は、脱気流体を通って歯の周囲の象牙質構造体まで伝播することができる。処置によっては、ブロック250を任意選択的とすることができ、それは、流れる脱気流体を使用して歯組織を洗浄することができるためである。また、脱気流体は、歯空洞を清掃することができる溶質(たとえば、防腐剤、抗生物質または脱灰剤)を含むことができる。脱気流体は、歯空洞内の気泡の形成を阻止することができ、脱気流体が小さい歯の空間(たとえば細管、小根管)に流れ込んでより有効な清掃を提供するのを可能にすることができる。
【0199】
いくつかの実施態様では、歯を治療する装置を使用して、図17に示す方法の実施形態を実施することができる。本装置は、脱気液源と、脱気液源から歯に形成された歯空洞ま
で流体を供給するにように構成された流体導入器とを備えることができる。
【0200】
III.圧力波組織清掃のさらなる態様例
必要ではないが、後述する効果のうちのいくつかまたはすべてが、本明細書に記載する治療方法およびシステムのさまざまな実施態様によって提供される有利な効果、利益または結果に対して、少なくとも部分的に関与し得ると考えられる。したがって、本明細書に開示するシステムのさまざまな実施形態を、これらの効果のうちのいくつかまたはすべてを提供するように構成することができる。
【0201】
以下の説明では、異なる意味が示されない限り、以下の用語はそれらの通常のかつ通例の意味を有している。たとえば、化学反応フロントは、概して、組織溶解剤等の化学物質を含む、組織と溶液との間の界面を指すものとする。組織は、細菌およびウイルスとともに、歯に存在するすべてのタイプの細胞を指すものとする。石灰化組織は、石灰化歯髄、歯髄石および第三象牙質を指すものとする。気泡は、限定されないが、化学反応によって生成された気泡、(使用される場合)脱気後に流体に残っておりかつ流体内の気泡として放出される溶存気体、および不完全な封止により歯内に導入されるあらゆる気泡を含む。
【0202】
組織清掃治療は、本明細書に記載する物理化学的効果のうちの1つまたは複数を利用して、歯空洞から組織および/または石灰化組織を清掃し除去することができる。清掃治療によっては、(1)圧力波(たとえば音響キャビテーションの発生)、(2)歯空洞内の流体の循環(たとえば巨視的な渦および流れ)および(3)化学作用(たとえば、組織溶解剤の使用、脱気流体の使用)の組合せが、非常に有効な清掃を可能にすることができる。したがって、本明細書に開示するシステムのいくつかの実施形態は、音波を発生させる圧力波発生器と、歯空洞内に治療流体を保持し治療流体の循環を可能にする流体プラットフォーム(たとえば流体保持器)と、脱気されるかまたは組織溶解剤等の化学剤を含む治療流体とを利用する。
【0203】
A.音波
圧力波発生器を使用して、歯空洞内の流体(および歯)を通って伝播する圧力波を発生させることができる。高強度圧力波(たとえば、音波周波数または超音波周波数)を含む流体の放射時、音響キャビテーションが発生する可能性がある。本明細書に記載したように、キャビテーション気泡の爆縮崩壊により、持続時間の短い強力な局所加熱および高圧を生成することができる。したがって、治療法によっては、音響キャビテーションは、化学反応、ソノケミストリ、ソノポレーション、組織解離、組織剥離を促進するとともに、根管および細管から細菌および/またはスメア層を除去する役割を担うかまたはそれに関与することができる。振動またはソノケミストリを介して化学反応を促進する効果については、化学作用に関するセクションにおいて後述する。
【0204】
ソノポレーションは、音場(たとえば場合によっては超音波周波数)を使用して細胞形質膜の透過性を変更するプロセスである。このプロセスは、化学反応を大幅に促進することができる。それは、音場が比較的広い帯域幅(たとえば数百から数千kHz)を有する場合に有利であり得る。いくつかの周波数(たとえば低周波数超音波)もまた、細胞の破裂および死(たとえば溶解)をもたらすことができる。この現象により、本来歯に対して再感染する可能性がある細菌を殺すことができる。圧力波および/または音響キャビテーションは、細胞間の結合を緩和することができ、かつ/または細胞を解離させることができる。圧力波および/または音響キャビテーションは、細胞と象牙質との間の結合を緩和しかつ/または象牙質から組織を剥離することができる。
【0205】
石灰化組織を除去するために、圧力波は、キャビテーション気泡爆縮の結果として生成される衝撃波および/またはマイクロジェットにより、石灰化構造体のソノケミストリお
よびマクロ的除去を誘発することができる。圧力波は、構造的振動を通してマクロ的な石灰化構造体を破壊することができる。この処置に化学物質(たとえばキレート剤、たとえばEDTA等)が使用される場合、圧力波は化学反応を促進することができる。
【0206】
システムのいくつかの特性を、音波の効果を向上させるように調節することができる。たとえば、流体の特性、たとえば表面張力、沸騰あるいは蒸気温度、または飽和圧力を含む、を調節することができる。溶存気体含有量が低減した脱気流体を使用することができ、それにより、流体力学キャビテーションまたは他の何らかの発生源によって発生させることができる圧力波のエネルギー損失を低減することができる。流体を脱気することができ、それは、圧力波のエネルギーを保存するのに役立つことができ、システム効率を向上させることができる。
【0207】
B.流体循環
いくつかの治療システムおよび方法は、化学反応フロントにかつそこから離れる方向に反応物質および副生成物の拡散および/または超音波強化拡散を使用する。しかしながら、反応プロセスの時間尺度が比較的短いため、「巨視的な」循環、対流、渦度または乱流等の反応物質供給のより高速な機構が、本明細書に開示する実施形態のうちのいくつかにおいて有利であり得る。たとえば、歯空洞内への流体の流入により、歯髄腔においてマクロ的な循環を誘発することができる(たとえば図3Bを参照)。液体噴射装置は、ジェットおよび/または噴霧が歯空洞に入る際に、圧力波を生成することができるだけでなく循環を誘発することもできる。他の圧力波発生器は、(たとえば、対流の流れおよび循環を誘発することができる、流体の局所加熱を介して)周囲流体とのそれらの相互作用を介して流体循環をもたらすことができる。
【0208】
化学反応の時間尺度と同等の(好ましくはそれより速い)時間尺度である流体循環は、化学反応フロントにおいて反応物質を補充するのに役立つことができ、かつ/または反応部位から反応副生成物を除去するのに役立つことができる。対流または循環プロセスの有効性に関連することができる対流時間尺度を、たとえば循環源の位置および特性に応じて調節することができる。対流時間尺度は、およそ、歯空洞の物理的サイズを歯空洞内の流体速度によって割った値である。循環の導入により、一般に、拡散プロセスはなくならず、拡散プロセスは、化学反応フロントにおいて薄いマクロ的な層内で依然として有効であり続けることができる。流体循環により、根管内部に流れが誘発する圧力振動をもたらすことができ、それが、根管からより大きい組織片を剥離し、緩ませかつ/または除去するのに役立つことができる。
【0209】
石灰化組織を除去するために流体循環は、根管内部に流れが誘発する圧力振動をもたらすことができ、それが、根管から石灰化構造のより大きい切片を除去するのに役立つことができる。
【0210】
システムのいくつかの特性を、歯内の循環の効果を向上させるよう調節することができる。たとえば、歯の内部の循環源の位置、流体流の形状(たとえば平面ジェット対円形ジェット)あるいは速度および/または方向等の供給元流体特性、ならびに流体動粘度を調節することができる。循環に対して、歯あるいは根管口の解剖学的形状または根管サイズによっても影響を与えることができる。たとえば、狭窄のある幅の狭い根管は、狭窄のない幅の広い根管より溶液補充速度が低い可能性がある。対流/循環源が歯髄室床近くに配置される場合、歯髄室が小さい方の歯が、歯髄室が大きい方の歯より強力な循環を有する可能性がある。歯の根尖周囲領域において加えられる対流誘発圧力を、治療流体が根尖周囲組織内に押し出されるのを低減するかまたは回避するように制御することができる。歯内の大きさの大きい真空または低い圧力により、患者によっては不快がもたらされる可能性がある。したがって、流体プラットフォーム(たとえば通気孔、スポンジ、流れ制限器
等)の特性を、歯空洞内に所望の動作圧力範囲を提供するように調節することができる。
【0211】
C.化学作用
組織溶解剤(たとえば次亜塩素酸ナトリウム)を、組織と反応するように治療流体に加えることができる。組織溶解は、多段かつ複雑なプロセスであり得る。水中の次亜塩素酸ナトリウムの溶解は、たとえば次亜塩素酸ナトリウム(漂白)反応、トリグリセリドとの鹸化反応、アミノ酸中和反応および/またはクロラミンを生成するクロラミン処理反応等の複数の反応を含む可能性がある。次亜塩素酸ナトリウムおよびその副生成物は、器官、脂肪およびタンパク質の溶解剤(たとえば溶剤)として作用することができ、それにより、治療によっては有機組織を分解する。
【0212】
次亜塩素酸ナトリウムは、漂白反応に基づいて可逆化学平衡状態を示すことができる。有機組織と次亜塩素酸ナトリウムとの間で化学反応が発生することができる。たとえば、水酸化ナトリウムを、次亜塩素酸ナトリウム反応から発生させることができ、水酸化ナトリウムは、鹸化反応において、有機分子および脂肪(トリグリセリド)分子と反応して石鹸(脂肪酸塩)およびグリセロール(アルコール)を生成することができる。これにより、残っている溶液の表面張力を低減することができる。水酸化ナトリウムは、アミノ酸中和反応において、アミノ酸を中和してアミノ酸塩および水を形成する。水酸化ナトリウムの消費により、残りの溶液のpHを低下させることができる。次亜塩素酸、すなわち次亜塩素酸ナトリウム溶液に存在することができる物質は、クロラミンを放出することができ、クロラミンは、タンパク質のアミノ基およびアミノ酸と反応して、さまざまなクロラミン誘導体を生成することができる。たとえば、次亜塩素酸は、組織内の遊離アミノ酸と反応してNクロロ-アミノ酸を形成することができ、それは、次亜塩素酸より高い防腐剤作用を有することができる強力な酸化剤として作用することができる。
【0213】
流体内の化学物質は、それらのタイプに応じて、溶液の表面張力に影響を与えることができ、それにより、溶液はキャビテーション現象を変更することができる。たとえば、無機化学物質、たとえば水中の次亜塩素酸ナトリウム等、の溶液は、溶液のイオン濃度を上昇させることができ、それにより溶液の表面張力を増大させることができ、結果としてより強力なキャビテーションをもたらすことができる。場合によっては、キャビテーション初生閾値の大きさは、表面張力の増大によって増大する可能性があり、キャビテーション誘発機構(たとえば圧力波発生器)は、キャビテーション気泡の初生を可能にするために閾値を越えるように十分強力であり得る。必要ではないが、キャビテーション閾値が越えられると、表面張力の増大により、より強力なキャビテーションをもたらすことができると考えられる。(たとえば脱気を介して)流体の溶存気体含有量を低減することにより、流体の表面張力を増大させることができ、また結果としてより強力なキャビテーションをもたらすことができる。化学物質、薬剤または物質(たとえばヒドロキシ官能基、ナノ粒子等)を治療に加えることにより、圧力波のキャビテーションへの変換の効率を上昇させることができ、こうした化学音響効果は治療処置によっては望ましい可能性がある。
【0214】
方法によっては、次亜塩素酸ナトリウム等の化学物質が鹸化をもたらす可能性がある。鹸化の結果として化学反応フロントにおける表面張力が局所的に低減することにより、根管(または細管)内部に生成されるかまたは閉じ込められた気泡の除去を加速させることができる。方法によっては、圧力波源における(たとえば歯髄室内部における)表面張力が比較的高いことが望ましいが、根管内部では、気泡除去を加速させるために局所的に表面張力が低減することが有利であり得る。この現象は、組織溶解剤が組織と反応する際に発生する可能性がある。たとえば、次亜塩素酸ナトリウムは、脂肪酸を分解する溶剤として作用することができ、脂肪酸を、化学反応フロントにおいて残っている溶液の表面張力を低減させることができる脂肪酸塩(石鹸)およびグリセロール(アルコール)に変換する。
【0215】
複数の変量または因子を、有効な清掃を可能にするように調節することができる。たとえば、各化学反応は、反応の速度を決める反応速度を有している。反応速度は、温度を含むいくつかのパラメータによって決まる可能性がある。反応物質の濃度は因子となることができ、反応が完了する時間に影響を与えることができる。たとえば、5%次亜塩素酸ナトリウム溶液は、一般に、0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液より攻撃性がある可能性があり、組織をより高速に溶解する傾向があり得る。
【0216】
反応物質の補充速度に対して、以下のうちのいくつかまたはすべてによって影響を与えることができる。気泡は、化学反応フロントにおいて発生し(たとえば表面張力により)留まることができ、化学反応フロントにおいて、新しい反応物質が反応フロントに達するのを妨げるかまたは防止するバリアとして作用することができる。したがって治療流体の循環が、気泡および反応副生成物を除去するのに役立つことができ、それらを、新しい治療流体および新しい反応物質に置き換えることができる。したがって、歯空洞内に流体循環をもたらすことができる流体プラットフォームの実施形態を使用することにより、有利に、清掃プロセスを改善することができる。
【0217】
熱は、化学反応速度を上昇させることができ、熱を、種々の供給源によって導入することができる。たとえば、治療溶液を、歯空洞に供給する前に予熱することができる。キャビテーション、発熱化学反応、または他の内部あるいは外部放散源が流体に熱をもたらすことができ、それが、反応速度を向上させ、維持し、または増大させることができる。
【0218】
流体の超音波処理が、化学反応速度を上昇させるかまたは有効性を向上させることができる。たとえば、高強度の圧力波(たとえば、音波あるいは超音波、または液体ジェットによって生成される広スペクトル音響出力を含む)による流体(たとえば水)の放射時に、音響キャビテーションが発生する可能性がある。キャビテーション気泡の爆縮崩壊が、持続時間の短い強力な局所加熱および高圧をもたらすことができる。実験結果により、気泡崩壊の部位において、温度および圧力がそれぞれおよそ5000Kおよび1000atmに達する可能性があることが示された。ソノケミストリとして知られるこの現象は、本来は冷液における、極度の物理的状態および化学的状態をもたらすことができる。ソノケミストリは、場合によっては、100万倍程度、化学反応を促進することが報告されている。音響キャビテーションが発生しない(または比較的低振幅で発生する)場合、圧力波による反応物質の振動が、副生成物を新しい反応物質によって置き換えるのに役立つため、化学反応を促進することができる。
【0219】
石灰化組織を除去するために、治療流体に脱灰剤(たとえば酸、たとえばEDTAまたはクエン酸等)を加えることができる。脱灰剤は、歯象牙質からカルシウムまたはカルシウム化合物を除去することができる。脱灰剤による治療の後に残っている物質は、治療の前より比較的軟質(たとえばゴム質)であり、流体循環および音波によってより容易に除去可能であり得る。
【0220】
IV.さらなる例および実施形態
装置、方法および組成物のさらなる例および実施形態について説明する。例は、本開示を限定するのではなく例示するように意図されている。したがって、後述する特徴のあり得るすべてのコンビネーションおよびサブコンビネーションを、他の実施形態に含めることができる。さらなる特徴を追加することができ、または特徴を取り除くことができる。特徴を再配置することができる。処置および方法において、動作または行為は、開示した順序に限定されず、動作または行為を異なる順序で行うことができる。
【0221】
本明細書に記載する流体は概して液体を意味し、液体は、一定量の溶存気体を含む可能
性がある。たとえば、流体は、(適切な温度条件および圧力条件に対してヘンリーの法則から確定することができる、通常の溶存気体(たとえば空気)含有量を有する)水かまたは脱気水を含むことができ、脱気水は、通常の溶存気体含有量の水と比較して低減した溶存気体含有量を有することができる。歯空洞は、(正常または異常な象牙質および/あるいは組織構造体によるか、またはこうした構造体の変性、悪化または損傷により)歯内にすでに存在する空間、開口部または腔のあらゆる部分、および/または治療中に歯科医師によって形成された空間、開口部または腔のあらゆる部分を含む、歯のあらゆる空間、開口部または腔の少なくとも一部を含むことができる。たとえば、歯空洞は、歯髄室の少なくとも一部を含むことができ、以下のうちの1つまたは複数の少なくとも一部も含むことができる。すなわち、歯へのアクセス開口部、根管空間および細管である。治療によっては、歯空洞は、根管空間、副根管および歯内の細管のうちのいくつかまたはすべてを含むことができる。治療によっては、アクセス開口部を、歯空洞から離れてまたは別個に形成することができる。
【0222】
1.流体プラットフォームおよび圧力波発生器による処置の例
一態様では、歯を治療する処置が開示されている。処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯に流体水位を提供するように歯空洞の少なくとも一部内に流体を導入することと、流体保持器を使用して歯空洞から流体の制御されない流れを阻止することとを含む。本処置は、歯空洞内にかつ少なくとも部分的に流体水位の下方に圧力波発生器を挿入することと、流体内に音響エネルギー波を生成するように歯空洞内で圧力波発生器を起動させることと、圧力波発生器が処置の少なくとも一部の間に流体水位下で沈められたままであるように、流体を歯空洞内に維持することとを含むことができる。
【0223】
いくつかの態様では、本処置は、脱気液を導入することを含む、流体を導入することをさらに含むことができる。本処置は、流体保持器を使用して流体の制御されない流れを阻止することと、歯空洞内に、音響エネルギー波が流体内で伝播するのを可能にするのに十分な流体を残すこととをさらに含むことができ、音響エネルギー波は、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを保持する。流体保持器を使用することは、歯空洞内への空気流を実質的に阻止することを含むことができ、さらに歯空洞から廃棄流体を除去することと、歯空洞からの導入された流体、廃棄流体および有機物質の漏れを実質的に阻止することとを含むことができる。別の態様では、流体保持器は、空気が空洞内に入るのを実質的に阻止しながら、流体の少なくとも一部が歯空洞から出るのを可能にすることを含むことができる。
【0224】
他の態様では、流体保持器を使用することは、歯空洞の周囲にキャップを、キャップが歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように配置することを含むことができる。本処置は、歯の歯シール領域にキャップを配置することをさらに含むことができ、歯シール領域は歯シールを含み、歯シール領域にキャップを配置することは歯シールの表面を平坦化することを含む。いくつかの実施形態では、流体保持器を使用することは、流れ制限器を歯空洞の周囲にかつキャップ内に配置することも含むことができる。本処置は、歯シール領域にキャップを配置することをさらに含むことができ、キャップは、流体の制御された進入および排出を可能にするように、歯空洞を実質的に封止することができる。流体保持器を使用することは、歯空洞内の流体圧力を調整するように弁を設けることをも含むことができる。弁を設けることは、少なくとも幾分かの空気流が、歯空洞から除去された流体とともに運ばれるのを可能にすることを含むことができる。他のいくつかの態様では、弁を設けることは、少なくとも幾分かの空気流が、歯空洞から除去された流体とともに運ばれるのを可能にすることを含み、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口を設けることをさらに含むことができる。
【0225】
流体保持器を使用することにより、歯内の流体圧力を、所定圧力レベル未満の圧力で維持することができる。本処置は、流体ジェットを起動させることを含むことができる、圧力波発生器を起動させることをさらに含むことができる。圧力波発生器を起動させることは、レーザを起動させることも含むことができ、圧力波発生器を起動させることは、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすことを含むことができる。
【0226】
2.器具表面に衝突するエネルギービームを使用する処置の例
別の態様では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯内に流体水位を提供するように歯空洞の少なくとも一部内に流体を導入することと、歯空洞内に器具表面を挿入することとを含み、器具表面は、処置の少なくとも一部の間は流体水位の下方にある。本処置は、エネルギービームを器具表面に衝突させることにより流体内に音響エネルギー波を生成することと、器具表面が処置の少なくとも一部の間に流体水位の下方に沈められたままであるように、歯空洞内における流体を維持することとをさらに含むことができる。
【0227】
他の態様では、流体を導入することは、脱気液を導入することを含む。さらに、いくつかの実施形態では、エネルギービームを器具表面に衝突させることは、音響エネルギー波が歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすために十分な音響エネルギーを生成し、歯空洞から有機物を実質的に取り除くことをさらに含むことができる。別の態様では、本処置は、エネルギービームをもたらすように圧力波発生器を起動させることを含むことができる。圧力波発生器を起動させることは、流体ジェットを起動させることを含むことができる。流体ジェットを起動させることは、歯空洞内に脱気液の高速ビームを導入することを含むことができる。他の態様では、流体ジェットを起動させることは、ジェットを器具表面に衝突させることを含む。歯空洞内に器具表面を挿入することは、歯空洞内に器具の遠位部分を挿入することを含むことができる。器具は、遠位部に開口部がある流路を備えることができる。いくつかの態様では、流体ジェットを起動させることは、流路を通して流体ジェットを伝播させることを含む。器具表面に流体ジェットを衝突させることは、器具表面から流体ジェットを偏向させることと、流路の開口部を通して流体ジェットを排出することとを含むことができる。
【0228】
別の実施形態では、圧力波発生器を起動させることはレーザを起動させることを含み、別の態様では、圧力波発生器を起動させることは、超音波装置を起動させることを含む。さらに別の態様では、圧力波発生器を起動させることは、機械的撹拌器を起動させることを含む。さらに別の実施形態では、圧力波発生器を起動させることは、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらす。
【0229】
3.流体ジェットビームを使用する処置の例
さらに別の態様では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、流体に対しオリフィスを通過させることにより流体ジェットビームを提供することと、歯空洞内に流体ジェットビームを導入することとを含み、流体ジェットビームは、器具の遠位部から排出される。本処置は、歯内の流体水位を提供することと、歯空洞内に器具の遠位部を配置することであって、器具の遠位部が処置の少なくとも一部の間は流体水位の下方にあることと、処置の少なくとも一部の間に器具の遠位部が流体水位の下方に沈められたままであるように、歯空洞内に流体を保持することとを含む。
【0230】
他の態様では、歯空洞内に流体ジェットビームを導入することは、音響エネルギー波を生成することを含むことができる。流体ジェットビームを提供することは、流体ジェットビームに音響エネルギー波を生成するために十分なエネルギーを加えることを含むことができる。本処置は、音響エネルギー波の伝播を可能にするのに十分な流体水位で流体を維
持することと、流体ジェットビームに、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを加えることとを含むことができる。本方法は、歯空洞から有機物を実質的に取り除くことをさらに含むことができる。
【0231】
他の実施形態では、流体ジェットビームを導入することは、衝突面に流体ジェットビームを衝突させて、流体内に音響エネルギー波を生成することを含むことができる。別の態様では、流体ジェットビームを導入することは、流体ジェットビームに対して器具の流路を通過させることを含み、器具の遠位部の近くに衝突面を設けることと、流体ジェットビームを衝突面に衝突させることとをさらに含むことができる。本処置は、歯空洞からの流体除去を可能にし、歯空洞の過加圧、加圧不足、または過加圧および加圧不足両方を制限するように、通気孔付き流体出口を設けることをさらに含むことができる。本処置は、歯空洞への流体供給を可能にし、歯空洞の過加圧、加圧不足、または過加圧および加圧不足両方を制限するように、通気孔付き流体入口を設けることをさらに含むことができる。いくつかの態様では、衝突面に衝突をもたらしかつ流体ジェットビームを排出することにより、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらす音響エネルギー波を生成することができる。いくつかの実施形態では、流体ジェットビームを提供することは、脱気液の高速ビームを生成することを含むことができる。
【0232】
4.広帯域周波数圧力波発生器を使用する処置の例
さらに別の態様では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯内に流体水位を提供するように歯空洞の少なくとも一部内に流体を導入することと、歯空洞内に圧力波発生器の少なくとも一部を挿入することとを含み、圧力波発生器の少なくとも一部は処置の少なくとも一部の間に流体水位の下方にある。本処置は、圧力波発生器により、流体内に広帯域スペクトルの音響エネルギー波を生成することと、圧力波発生器の一部が流体水位の下方に沈められたままであるように流体を流体空洞内に維持することとをさらに含むことができる。
【0233】
他の実施形態では、流体を導入することは、歯空洞の少なくとも一部に脱気液を導入することを含むことができる。本処置は、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分な音響エネルギーを生成することをさらに含むことができる。いくつかの態様では、歯空洞内に圧力波発生器の少なくとも一部を挿入することは、歯空洞内に流体ジェットビームを提供することを含み、流体ジェットビームを衝突面に衝突させることをさらに含むことができる。
【0234】
処置のいくつかの態様では、実質的な量の音響エネルギー波は約0.5kHzを越える周波数で伝播し、他の態様では、実質的な量の音響エネルギー波は、約1kHz、約10kHzまたは約100kHzを越える周波数で伝播する。処置のいくつかの態様では、音響エネルギー波は帯域幅が少なくとも50kHzである出力を有し、他温態様では、音響エネルギー波は帯域幅が少なくとも100kHzである出力を有する。いくつかの実施形態では、音響エネルギー波は帯域幅が少なくとも500kHzである出力を有し、他の実施形態では、音響エネルギー波は、帯域幅が約50kHzと約500kHzとの間である出力を有している。さらに、歯空洞内に圧力波発生器の少なくとも一部を挿入することは、レーザを起動させることを含むことができる。他の態様では、歯空洞内に圧力波発生器の少なくとも一部を挿入することは、超音波装置を起動させることを含むことができる。さらに他の態様では、歯空洞内に圧力波発生器の少なくとも一部を挿入することは、機械的撹拌器を起動させることを含むことができる。
【0235】
5.1kHzを超えるエネルギーの圧力波発生器を使用する処置の例
さらに別の実施形態では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯内に流体水位を提供するように歯
空洞の少なくとも一部に流体を挿入することと、圧力波発生器の少なくとも一部を歯空洞内の流体水位の下方に挿入することとを含む。本処置は、圧力波発生器音響エネルギー波により、少なくとも、周波数が1kHz以上である実質的な量の音響エネルギー波を生成することと、処置の少なくとも一部の間に、圧力波発生器の一部が流体水位の下方に沈められたままであるように、流体を歯空洞内に維持することとをさらに含むことができる。
【0236】
他の態様では、流体を導入することは、歯空洞の少なくとも一部内に脱気液を導入することを含むことができ、本処置は、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分な音響エネルギーを生成することも含むことができる。さらに、歯空洞内に圧力波発生器の少なくとも一部を挿入することは、歯空洞内に流体ジェットビームを提供することを含むことができ、流体ジェットビームを衝突面に衝突させることをさらに含むことができる。本処置のいくつかの態様では、音響エネルギー波は少なくとも約0.5kHzを超える周波数で伝播することができ、他の態様では、音響エネルギー波は、少なくとも、少なくとも約1kHz、10kHz、50kHzまたは100kHzを超える周波数で伝播することができる。圧力波発生器の少なくとも一部を歯空洞内に挿入することは、レーザを起動させることも含むことができ、他のいくつかの実施形態では、圧力波発生器の少なくとも一部を歯空洞内に挿入することは、超音波装置を起動させることを含む。さらに、圧力波発生器の少なくとも一部を歯空洞内に挿入することは、機械的撹拌器を起動させることを含むことができる。
【0237】
6.流体保持器を有する装置の例
別の態様では、歯を治療する装置が開示されている。本装置は、歯内の歯空洞内に流体を実質的に保持するように歯に当接されるように構成された流体保持器と、遠位部を有する圧力波発生器と備えている。圧力波発生器の遠位部を、歯空洞内に挿入されるように構成することができる。
【0238】
圧力波発生器の遠位部を、歯空洞内に挿入されるように流体保持器を通して挿入することができる。たとえば、遠位部を、歯空洞内に流体を保持するスポンジ状材料を通して挿入することができる。圧力波発生器の遠位部を、流体保持器の遠位部に取り付けることができ、それにより、流体保持器が歯に当接された時、圧力波発生器の遠位部が歯空洞内に挿入される。
【0239】
流体保持器を、たとえば歯の咬合面に(接着剤またはスポンジ等の流れ制限器ありでまたはなしで)保持器を配置することにより、歯空洞へのアクセス開口部を覆うかまたはふさぐことにより、歯の周囲に流体保持器の一部を巻き付けることにより、等によって当接されるように構成することができる。
【0240】
流体保持器は、歯空洞内に流体を実質的に保持することができる。たとえば、流体保持器は、保持器と歯との間に耐水性シールを設けることによって、歯空洞内に流体の大部分または実質的にすべてを保持することができる。流体保持器は、必要ではないが、歯内に流体のすべてを保持することができる。たとえば、歯空洞内に流体を実質的に保持することには、歯空洞からの流体の漏れがまったくないことは必要ではない。治療中に患者の歯内に漏れる流体の量を低減するかまたは最小限にするように、歯に流体保持器を当接させることができ、それにより、幾分かの流体が腐食性物質または不快な味の物質を含む可能性があるため、患者の安全性および体験を改善することができる。
【0241】
他の実施形態では、本装置は本体を備えることができる。本体は、流体保持器と、空気が歯空洞に入るのを阻止する一方で、流体の少なくとも一部が歯空洞から出るのを可能にするように構成された1つまたは複数の通気孔とを備えることができる。通気孔を、少なくとも幾分かの空気流が、歯空洞から出る流体とともに運ばれるのを可能にするように構
成することができる。いくつかの態様では、本体は、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口をさらに備えることができる。本体は、ハンドピースをさらに備えることができる。さらに、圧力波発生器を、音響エネルギー波を発生させるように構成することができ、流体保持器を、歯空洞内に、音響エネルギー波が流体内で伝播するのを可能にするのに十分な流体を保持するように構成することができる。圧力波発生器によって発生する実質的な量の音響エネルギー波は、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを保持することができる。流体保持器は、歯空洞内の圧力を調整する少なくとも1つの通気孔を備えることができる。少なくとも1つの通気孔を、流体入口に沿って、流体出口に沿って、または流体入口および流体出口の両方に配置することができる。
【0242】
いくつかの態様では、流体保持器は流れ制限器を備えている。いくつかの実施形態では、流れ制限器はスポンジを含むことができ、いくつかの実施形態では、流れ制限器は通気孔を含むことができる。さらに他の実施形態では、流体保持器を、歯空洞内への空気流を実質的に阻止するように構成することができる。流体保持器は、少なくとも1つの出口を備えることができる。流体保持器を、歯空洞からの流体、有機物質または両方の漏れを実質的に阻止するように構成することができる。流体保持器を、流体の少なくとも一部が歯空洞から出るのを可能にするように、かつ空気が歯空洞に入るのを実質的に阻止するように構成することも可能である。いくつかの態様では、流体保持器はキャップを備えることができ、キャップを、歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように歯空洞の周囲に配置することができる。キャップを、歯の歯シール領域に配置することも可能であり、キャップは、平面を有する歯シールに一致する平面を有することができる。
【0243】
いくつかの実施形態では、流体保持器は、歯空洞の周囲にかつキャップ内に配置される流れ制限器を備えることができ、他の態様では、キャップは、流体の制御された進入および排出を可能にするように歯空洞を実質的に封止することができる。他の態様では、流体保持器を、歯内の流体圧力を所定圧力レベル未満の圧力で維持するように構成することができる。さらに他の態様では、圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含むことができる。圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすように構成することも可能である。いくつかの実施形態では、空気が歯空洞に入るのを阻止しながら、流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にするように構成された1つまたは複数の通気孔を備えることができ、圧力を、約-300mmHgを超えかつ約+300mmHg未満であるように調整することができる。
【0244】
7.反響面を有する圧力波発生器を備えた装置の例
さらに別の実施形態では、歯を治療する装置が開示されている。本装置は、エネルギーガイドと反響面を備えた遠位部とを有する圧力波発生器を備えている。エネルギーガイドを反響面に対して、音響圧力波を生成するようにエネルギーのビームを反響面に向けるように配置することができる。遠位部を、歯内の歯空洞内に適合するようなサイズまたは形状とすることができる。
【0245】
エネルギーガイドを反響面に対して、たとえば反響面から離れて配置するかまたはそのように離れた距離で間隔を空け、エネルギーのビームが反響面を遮ることができるように向けることにより、配置することができる。
【0246】
いくつかの態様では、エネルギーのビームは流体ジェットビームを含むことができる。流体ジェットビームは脱気液を含むことができる。他の実施形態では、圧力波発生器は、流体ジェット源、レーザ、超音波装置および機械的撹拌器からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含む。さらに、エネルギーガイドはまた、ガイドチューブも含むこと
ができ、それは、その遠位部に開口部がある流路を有している。圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを出力するように構成することができる。
【0247】
8.衝突面を有する圧力波発生器を備えた装置の例
別の態様では、歯を治療する装置が開示されている。本装置は、オリフィスおよび衝突面を含む流体ビーム形成部分を有する圧力波発生器を備えている。衝突面をオリフィスから間隔を空け、オリフィスを通る軸が衝突面まで延在するように配置することができる。衝突面を、歯内の歯空洞内に挿入されるように構成することができる。
【0248】
他の態様では、流体ビーム形成部分を、衝突面に実質的に衝突する流体ジェットビームを形成するように構成することができる。流体ビーム形成部分を、流体ジェットビームが衝突面に衝突したときに、歯空洞内に少なくとも幾分かのキャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを有する流体ジェットビームを形成するように構成することができる。本装置はガイドチューブをさらに備え、ガイドチューブは、軸に沿って延在する流路を有し、流体ジェットビームがその中を流れるのを可能にするように構成されている。
【0249】
いくつかの態様では、本装置はまた流体保持器を備えることも可能であり、流体保持器は、歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように、圧力波発生器の周囲に配置されている。流体保持器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体を保持するように構成することができる。本装置は、本体をさらに備えることができる。本体は、空気が歯空洞内に入るのを実質的に阻止しながら、歯空洞内の流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にするように構成された、1つまたは複数の通気孔を備えることができる。さらに、1つまたは複数の通気孔を、少なくとも幾分かの空気流が歯空洞から出る流体とともに運ばれるのを可能にするように構成することができる。いくつかの態様では、本体は、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口をさらに備えることができる。本体はハンドピースを備えることができる。
【0250】
9.広帯域圧力波発生器を備えた装置の例
一態様では、歯を治療する装置が開示されている。本装置は、少なくとも遠位部が、歯内の歯空洞内に挿入されかつ歯空洞内の流体内に沈められるように構成されている、圧力波発生器を備えている。圧力波発生器は、広帯域スペクトルを有する音響圧力波を生成することができる。
【0251】
歯空洞内に挿入されるように構成された圧力波発生器の遠位部は、歯空洞内に適合するようなサイズまたは形状である遠位部を含むことができる。
【0252】
他の態様では、広帯域スペクトルは、少なくとも約1kHzを超える周波数の出力を含み、さらに他の態様では、広帯域スペクトルは、少なくとも約10kHzを超える周波数の出力を含むことができる。いくつかの実施形態では、広帯域スペクトルは、少なくとも約100kHzを超えるかまたは約500kHzを超える周波数の出力を含むことができる。広帯域スペクトルは、約50kHzを超える帯域幅を有することができる。広帯域スペクトルは、約100kHzを超える帯域幅を有することができる。さらに、広帯域スペクトルは、約500kHzを超える帯域幅を有することができる。
【0253】
圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含むことができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器の遠位部は衝突面を備えることができ、圧力波発生器はまた、衝突面に衝突するように構成された液体ジェットを含むことができる。本装置は、液体ジェットに対して液体を提供するように構成された脱気液源をさらに備えることができる。本装置はまた、歯
空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように圧力波発生器の周囲に配置された、流体保持器も備えることができる。流体保持器を、歯空洞内への空気の流れを実質的に阻止するように構成することができる。いくつかの態様では、流体保持器はスポンジを含むことができ、他の態様では、流体保持器は、歯空洞内の流体圧力を調整する通気孔を備えることができる。さらに他の実施形態では、流体保持器は、歯空洞からの流体の除去用の流体出口ポートを備えることができる。流体出口ポートは、流体出口ポートと流体連通する通気孔をさらに備えることができる。他の態様では、通気孔を、空気が、流体出口ポートを介して歯空洞から除去される流体の流れに混入されるのを可能にするように構成することができ、通気孔をさらに、歯空洞内への空気の流れを阻止するように構成することができる。
【0254】
10.1kHzを超える周波数を発生させる圧力波発生器を備えた装置の例
別の実施形態では、歯を治療する装置が開示されている。本装置は、少なくとも遠位部が歯内の歯空洞内に挿入されかつ歯空洞内の流体内に沈められるように構成されている、圧力波発生器を備えている。圧力波発生器は、少なくとも周波数が1kHz以上である音響圧力波を生成することができる。歯空洞内に挿入されるように構成された圧力波発生器の遠位部は、歯空洞内に適合するようなサイズまたは形状である遠位部を含むことができる。
【0255】
いくつかの実施形態では、音響圧力波は少なくとも10kHz以上の周波数を有することができ、他の実施形態では、音響圧力波は少なくとも100kHz以上の周波数を有することができる。他の実施形態では、音響圧力派は、少なくとも10kHz以上の周波数を有している。音響圧力波は、約1kHzを超えるか、約10kHzを超えるか、約100kHzを超えるか、または約500kHzを超える周波数の実質的な出力を有することができる。実質的な出力は、たとえば、総音響出力(たとえば、全周波数にわたって積分された音響出力)の10%を超えるか、25%を超えるか、35%を超えるか、または50%を超える量の出力を含むことができる。いくつかの態様では、音響圧力波は、少なくとも約10kHzの帯域幅を有する。他の態様では、音響圧力波は少なくとも約50kHzの帯域幅を有し、いくつかの態様では、音響圧力波は少なくとも約100kHzの帯域幅を有する。圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含むことができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器は、圧力波発生器の遠位部の衝突面に衝突するように構成された液体ジェットを含む。液体ジェットは脱気液を含むことができる。
【0256】
11.流体にエネルギー出口を有する圧力波発生器を使用する処置の例
別の態様では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯空洞の少なくとも一部に流体を挿入することと、処置の少なくとも一部の間に流体内に配置されるエネルギー出口を有する圧力波発生器を提供することとを含む。本処置は、出口から発生する圧力波が流体にかつ流体を通って歯空洞内に供給されるように、エネルギー出口を配置することをさらに含むことができる。さらに、本処置は、周波数が1kHz以上である少なくとも実質的な量の生成された音響圧力波を含む音響圧力波を生成するように、圧力波発生器を起動させることを含むことができる。本処置は、圧力波発生器を使用して、流体に歯内の組織を解離させるのに十分なエネルギーを供給することをさらに含むことができる。
【0257】
いくつかの態様では、流体を挿入することは、脱気液を導入することを含むことができる。さらに場合によっては、少なくとも実質的な量の生成された音響圧力波は、50kHz以上の周波数を有することができる。圧力波発生器を起動させることは、流体ジェットビームを起動させることを含むことができる。本処置は、流体ジェットビームを衝突面に衝突させることをさらに含むことができる。さらに、圧力波発生器を起動させることは、
レーザを起動させることを含むことができ、圧力波発生器を起動させることは、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらす音響圧力波を生成することも可能である。
【0258】
12.圧力波発生器を使用し根尖圧力を制限する処置の例
別の態様では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯空洞の少なくとも一部内に流体を挿入することと、処置の少なくとも一部の間に流体内に配置されたエネルギー出口を有する圧力波発生器を提供することとを含む。本処置は、出口から発生したエネルギーが流体にかつ流体を通って空洞内に供給され、エネルギーが歯の根管において約100mmHgを超える根管圧力を生成しないように、エネルギー出口を配置することをさらに含むことができる。本処置は、圧力波発生器を起動させることと、処置の少なくとも一部の間に流体内に圧力波発生器のエネルギー出口を維持することと、圧力波発生器を使用して、流体に歯内の組織を解離させるのに十分なエネルギーを供給することとをさらに含むことができる。
【0259】
いくつかの態様では、本処置は、エネルギー出口近くに配置された衝突面を設けることを含むことができる。圧力波発生器を起動させることは、エネルギービームを形成することと、エネルギービームを衝突面に衝突させることとを含むことができる。場合によっては、エネルギービームは流体ジェットビームを含むことができる。いくつかの実施形態では、本処置は、流体ジェットビームが衝突面に衝突したときに流体ジェットビームを衝突面から偏向させることをさらに含むことができる。更に本処置は、偏向された流体ジェットビームがエネルギー出口を通過するようにエネルギー出口を配置することを含むことができる。いくつかの態様では、エネルギービームを形成することは、レーザを起動させること、超音波装置を起動させること、または機械的撹拌器を起動させることを含むことができる。場合によっては、エネルギーは歯の根管を下って流体のジェットをもたらさない可能性がある。
【0260】
13.流体保持器を使用する処置の例
さらに別の態様では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯の上に流体保持器を当接させることとを含む。流体保持器は、流体保持器が歯に当接されると歯空洞と連通する、内部空洞を備えることができる。本処置はさらに、歯空洞の少なくとも一部内に、かつ流体保持器の内部空洞の少なくとも一部内に流体を供給することをさらに含むことができる。さらに、本処置は、処置の少なくとも一部の間に、圧力波発生器のエネルギー出口が内部空洞内に延在しかつ流体内に配置されるように、圧力波発生器を内部空洞内に配置することを含むことができる。さらに、本処置は、歯空洞内の流体内に音響エネルギー波を生成するように圧力波発生器を起動させることと、圧力波発生器を使用して、歯内の組織を解離させるのに流体に十分なエネルギーを供給することを含むことができる。
【0261】
いくつかの態様では、流体を供給することは、脱気液を供給することを含むことができる。本処置は、流体保持器を使用して流体の制御されない流れを阻止することをさらに含むことができる。場合によっては、流体保持器を使用して流体の制御されない流れを阻止することは、歯空洞内に、音響エネルギー波が流体内に伝播するのを可能にするのに十分な流体を保持することを含むことができる。さらに、音響エネルギー波は、少なくとも幾分かの流体キャビテーションを歯空洞内にもたらすのに十分なエネルギーを保持することができる。流体保持器を使用することは、歯空洞内への空気流を実質的に阻止することをさらに含むことができる。
【0262】
いくつかの実施形態では、本処置は、歯空洞から廃棄流体を除去することを含むことができる。場合によっては、流体保持器を使用することは、歯空洞からの供給流体、廃棄流
体または有機物質の漏れを実質的に阻止することができる。流体保持器を使用することは、空気が空洞に入るのを実質的に阻止しながら流体の少なくとも一部が歯空洞から出るのを可能にすることを含むことができる。いくつかの態様では、流体保持器を使用することは、歯空洞の周囲にキャップを、キャップが歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように配置することを含む。他の態様では、本処置は、歯の歯シール領域の上にキャップを配置することを含むことができる。歯シール領域は歯シールを含むことができ、歯シール領域の上にキャップを配置することは、歯シールの表面を平坦化することを含むことができる。
【0263】
流体保持器を使用することは、歯空洞の周囲にかつキャップ内に流れ制限器を配置することを含むことができる。歯シール領域の上にキャップを配置することは、流体の制御された進入および排出を可能にするように歯空洞を実質的に封止することも可能である。場合によっては、流体保持器を使用することは、歯空洞内の流体圧力を調整するように通気孔を提供することをさらに含むことができる。さらに、通気孔を提供することは、少なくとも幾分かの空気流が、歯空洞から除去された流体とともに運ばれるのを可能にすることを含むことができる。いくつかの実施形態では、本処置は、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口を設けることも含むことができる。流体保持器を使用することにより、歯内における流体圧力を所定圧力レベル未満の圧力で維持することができる。いくつかの実施形態では、圧力波発生器を起動させることは、流体ジェットを起動させることかまたはレーザを起動させることを含むことができる。場合によっては、圧力波発生器を起動させることは、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすことができる。
【0264】
14.補助空洞を使用する処置の例
別の実施形態では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯に隣接して配置された補助空洞を設けることとを含む。補助空洞は、流体保持器の内側空洞または内部空洞を含むことができる。本処置は、歯空洞の少なくとも一部と補助空洞の少なくとも一部とを充填する流体を提供することをさらに含むことができる。流体は、歯空洞と補助空洞との間の共通のエネルギー伝達媒体を提供することができる。本処置はまた、圧力波発生器のエネルギー出口を、補助空洞内の流体内に延在しかつそこに浸漬されるように、補助空洞内に挿入することを含むことができる。さらに、本処置は、歯空洞内の流体内に音響エネルギー波を生成するように圧力波発生器を起動させることと、圧力波発生器を使用して、歯内の組織を解離させるように歯空洞内の流体に十分なエネルギーを供給することとを含むことができる。
【0265】
いくつかの実施形態では、補助空洞を設けることは、歯空洞のアクセス開口部の周囲に流体保持器を配置することを含むことができる。流体保持器を配置することは、アクセス開口部の周囲にキャップを、キャップが歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように配置することをさらに含むことができる。いくつかの態様では、本処置は、歯の歯シール領域上にキャップを配置することを含むことができる。場合によっては、歯シール領域は歯シールを含むことができる。さらに、流体保持器を配置することは、流れ制限器をアクセス開口部の周囲にかつキャップ内に配置することを含むことができる。いくつかの実施形態では、歯シール領域にキャップを配置することは、流体の制御された進入および排出を可能にするように、歯空洞および補助空洞を実質的に封止する。
【0266】
本処置は、歯空洞内の流体圧力を調整するように通気孔を設けることをさらに含むことができる。いくつかの態様では、通気孔を設けることは、少なくとも幾分かの空気流が、歯空洞から除去された流体とともに運ばれるのを可能にすることを含む。さらに、本処置は、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口を設けることができる。圧力波発生器を起動させることは、流体ジェットを起動させることかまたはレー
ザを起動させることを含むことができる。場合によっては、圧力波発生器を起動させることは、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらす。
【0267】
15.内側空洞を有する流体保持器を備えた装置の例
別の態様では、歯を治療する装置が開示されている。本装置は、歯内の歯空洞内に流体を実質的に保持するように歯に当接されるように構成された流体保持器を備えている。流体保持器は内側空洞を備えることができる。本装置はまた、流体保持器の内側空洞内に配置されたエネルギー出口を有する圧力波発生器を備えることも可能である。場合によっては、流体保持器が歯に当接されると、内側空洞を、歯空洞と連通するように配置することができ、圧力波発生器のエネルギー出口を歯空洞の外側に配置することができる。
【0268】
いくつかの態様では、本装置は、流体保持器を備えた本体と、空気が歯空洞に入るのを阻止しながら、流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にするように構成された1つまたは複数の通気孔とを備えることができる。本体は、流体保持器を実質的に包囲する外部ハウジングを備えることができる。いくつかの態様では、流体保持器は、空気が歯空洞に入るのを阻止しながら、流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にするように構成された1つまたは複数の通気孔を備えている。1つまたは複数の通気孔を、少なくとも幾分かの空気流が歯空洞から出る流体とともに運ばれるのを可能にするように構成することができる。いくつかの実施形態では、本体は、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口を備えることができる。本体はまた、ハンドピースを備えることも可能である。場合によっては、圧力波発生器を、音響エネルギー波を発生させるように構成することができる。さらに、流体保持器を、歯空洞内に、音響エネルギー波が流体内を伝播するのを可能にするのに十分な流体を保持するように構成することができる。圧力波発生器によって発生する実質的な量の音響エネルギー波を、歯空洞に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを保持することも可能である。
【0269】
いくつかの実施形態では、流体保持器は流れ制限器を備えることができる。流れ制限器はスポンジまたは通気孔を含むことができる。さらに、流体保持器を、歯空洞内への空気流を実質的に阻止するように構成することができる。流体保持器はまた、少なくとも1つの出口を備えることができる。いくつかの実施形態では、流体保持器を、歯空洞からの流体、有機物質または両方の漏れを実質的に阻止するように構成することができる。さらに他の態様では、流体保持器を、流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にするように構成することができる。流体保持器を、空気が空洞に入るのを実質的に阻止するように構成することも可能である。
【0270】
流体保持器はキャップを備えることができる。いくつかの態様では、キャップを歯空洞の周囲に、キャップが歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように配置されるように構成することができる。さらに、キャップを、歯の歯シール領域の上に配置されるように構成することができ、キャップは、平面を有する歯シールと一致する平面を有することも可能である。いくつかの実施形態では、流体保持器は、歯空洞の周囲にかつキャップ内に配置されるように構成された流れ制限器を備えることができる。キャップはまた、流体の制御された進入および排出を可能にするように歯空洞を実質的に封止することも可能である。流体保持器を、歯内の流体圧力を所定圧力レベル未満の圧力で維持するように構成することができる。さらに、圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含むことができる。さらに、圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすことができる音響エネルギー波を生成するように構成することができる。
【0271】
16.1kHzを超える周波数を発生させる圧力波発生器を備えた装置の例
別の態様では、歯を治療する装置が開示されている。本装置は、本体を備えており、本体は、本体が歯に隣接して配置されると歯内の歯空洞と連通する開口部を備えた流体空洞を有している。本装置は、流体空洞内に配置されたエネルギー出口を有する圧力波発生器をさらに備えることができる。圧力波発生器を、音響圧力波を生成するように構成することができる。少なくとも実質的な量の生成された音響圧力波は、1kHz以上の周波数を有することができる。
【0272】
いくつかの実施形態では、エネルギー出口は、圧力波発生器に、エネルギーを周囲媒体(たとえば歯空洞内の流体)に伝達する1つの箇所または1組の箇所を含むことができる。たとえば、何らかの液体噴射装置用のエネルギー出口は、衝突面または反響面を有するガイドチューブの遠位端を含むことができる。ジェットは、衝突面または反響面に衝突して、ガイドチューブから出て1つまたは複数の窓を通って歯空洞内の流体と相互作用する噴霧を形成することができる。別の例として、電磁レーザ装置用のエネルギー出口は、光ファイバの先細り先端を含むことができる。
【0273】
他の態様では、実質的な量の生成された音響圧力波は、10kHz以上または100kHz以上の周波数を有することができる。音響圧力波は、約1kHZを超えるか、約10kHzを超えるか、約100kHzを超えるかまたは約500kHzを超える周波数の実質的な出力を有することができる。実質的な出力は、たとえば、総音響出力(たとえば、全周波数にわたって積分された音響出力)の10%を超えるか、25%を超えるか、35%を超えるか、または50%を超える量の出力を含むことができる。生成された音響圧力波はまた、少なくとも約10kHz、少なくとも約50kHzまたは少なくとも約100kHzの帯域幅を有することも可能である。
【0274】
いくつかの実施形態では、圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含むことができる。圧力波発生器はまた、液体ジェットを含むことも可能である。さらに、エネルギー出口は反響面を含むことができ、液体ジェットは、反響面の一部に衝突するように構成され得る。本装置は、液体ジェットに対する液体を提供するように構成された脱気液源をさらに備えることができる。場合によっては、本体を、歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように構成することができ、本体は、歯空洞内の流体圧力を調整するように通気孔をさらに備えることができる。本体は、アクセス開口部を実質的に閉鎖して、保持器と歯との間に耐水性シールを設けることにより、歯空洞内に流体の大部分または実質的にすべてを保持することができる。本体は、必要ではないが、歯空洞内に流体のすべてを保持することができる。たとえば、歯空洞内に流体を実質的に保持するには、歯空洞からの流体の漏れの量がまったくないことは必要ではない。治療中に患者の歯内に漏れる流体の量を低減するかまたは最小限にするように、歯に本体を当接させることができ、それにより、幾分かの流体が腐食性物質または不快な味の物質を含む可能性があるため患者の安全性および体験を改善することができる。
【0275】
さらに他の態様では、本体は、歯空洞から流体を除去するための流体出口ポートを備えることができ、本体は、流体出口ポートと流体連通する通気孔をさらに備えることができる。場合によっては、通気孔を、空気が流体出口ポートを介して歯空洞から除去された流体の流れに混入されるのを可能にするように構成することができ、通気孔を、歯空洞内への空気の流れを阻止するようにさらに構成することができる。
【0276】
17.通気孔付きポートを使用して歯を治療する処置の例
別の態様では、歯を治療する処置が開示されている。本処置は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、歯に当接された流体保持器を使用して歯空洞を閉鎖することと、流体を、進入ポートを介して歯空洞の少なくとも一部内に導入すること
とを含む。本処置は、排出ポートを介して歯空洞から流体を除去することと、歯空洞内の流体圧力が概して所定圧力レベルを超えた場合に、歯空洞から通気孔ポートを介して流体を排出することとをさらに含むことができる。さらに、本処置は、通気孔ポートを介する歯空洞内への空気流を阻止することを含むことができる。
【0277】
いくつかの態様では、歯空洞から流体を排出することは、少なくとも幾分かの空気流が、歯空洞から除去された流体とともに運ばれるのを可能にすることをさらに含むことができる。場合によっては、流体を導入することは、脱気液を導入することを含むことができる。本処置は、歯空洞内に、かつ少なくとも部分的に、導入された流体の流体水位の下方に、圧力波発生器を挿入することをさらに含むことができる。本処置はまた、流体内に音響エネルギー波を生成するように歯空洞内で圧力波発生器を起動させることを含むことも可能である。場合によっては、音響エネルギー波は、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを保持することができる。いくつかの実施形態では、本処置は、流体保持器を使用して流体の制御されない流れを阻止することを含むことができる。さらに、流体保持器を使用して制御されない流れを阻止することは、歯空洞内に、音響エネルギー波が流体内を伝播するのを可能にするのに十分な流体を保持することを含むことができる。
【0278】
いくつかの態様では、流体保持器を使用することは、キャップを歯空洞の周囲に、キャップが歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように配置することを含むことができる。本処置はまた、歯の歯シール領域の上にキャップを配置することを含むことも可能である。場合によっては、歯シール領域は歯シールを含むことができる。さらに、歯シール領域の上にキャップを配置することは、歯シールの表面を平坦化することを含むことができる。いくつかの実施形態では、流体保持器を使用することは、歯空洞の周囲にかつキャップ内に流れ制限器を配置することを含むことができる。さらに、歯シール領域の上にキャップを配置することは、流体の制御された進入および排出を可能にするように歯空洞を実質的に封止することができる。
【0279】
18.通気孔付きポートを使用して歯を治療する装置の例
別の実施形態では、歯を治療する装置は、歯内の歯空洞内に流体を実質的に保持するように歯に当接されるように構成された流体保持器を備えている。流体保持器における吸引ポートを、歯空洞から流体を除去するように構成することができる。本装置は、吸引ポートと流体連通する通気孔をさらに備えることができる。通気孔を、空気が、吸引ポートを介して歯空洞から除去された流体の流れに混入されるのを可能にするように構成することができる。さらに、通気孔は、歯空洞内への空気の流れを阻止するようにさらに構成することができる。
【0280】
いくつかの態様では、本装置は、歯空洞内に流体を供給するように構成された入口ポートを備えることができる。場合によっては、通気孔は、長さ対幅の比が約1.5:1を超える細長い形状を有することができる。通気孔を、歯の根尖における(または歯空洞内における)流体の圧力が約100mmHg未満であるように構成することも可能である。いくつかの実施形態では、通気孔を、脱気流体が歯空洞から出るのを可能にするようにさらに構成することができる。通気孔は複数の通気孔を含むことができる。いくつかの態様では、本装置は、吸引ポートと流体連通するハウジングをさらに備えることができる。
【0281】
本装置は、遠位部を有する圧力波発生器を備えることができる。圧力波発生器の遠位部を、流体保持器を介して歯空洞内に挿入されるように構成することができる。場合によっては、圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を備えることができる。圧力波発生器を、音響エネルギー波を発生させるように構成することも可能である。いくつかの実施形態では、流
体保持器を、歯空洞内に、音響エネルギー波が流体内を伝播するのを可能にするのに十分な流体を保持するように構成することができる。さらに、圧力波発生器によって発生した実質的な量の音響エネルギー波は、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを保持することができる。
【0282】
いくつかの態様では、流体保持器は流れ制限器を備えることができる。いくつかの実施形態では、流れ制限器は、スポンジまたは通気孔を含むことができる。流れ制限器を、歯空洞からの流体、有機物質または両方の漏れを実質的に阻止するように構成することも可能である。いくつかの態様では、流体保持器はキャップを備えることができる。キャップを歯空洞の周囲に、キャップが歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように配置されるように構成することができる。さらに、キャップを、歯の歯シール領域の上に配置されるように構成することができ、キャップは、平面を有する歯シールと一致する平面を有することができる。場合によっては、圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすように構成することができる。また、いくつかの実施形態では、流体保持器は、ハウジングの遠位部と流体連通することができる。いくつかの態様では、流体保持器は、歯空洞の周囲にかつキャップ内に配置されるように構成された流れ制限器を備えることができる。キャップまたは、流体の制御された進入および排出を可能にするように歯空洞を実質的に封止することも可能である。
【0283】
19.脱気流体を使用して歯を清掃する方法の例
別の実施形態では、歯を治療する方法は、歯内の歯空洞内に少なくともアクセス開口部を形成することと、脱気液源から脱気液を歯空洞内に導入することと、脱気液を使用して歯内の象牙質から有機物質を清掃することとを含む。
【0284】
他の実施形態では、本方法は、脱気液の貯蔵器から脱気液を提供することをさらに含むことができる。本方法はまた、脱気システムから脱気液を提供することを含むことも可能である。脱気液は、溶存気体の量が18mg/L未満、12mg/L未満、6mg/L未満または3mg/L未満であり得る。いくつかの態様では、脱気液を導入することは、脱気液で歯空洞を洗浄することを含むことができる。さらに他の態様では、脱気液を導入することは、高速液体ビームを歯空洞内に伝播させることを含むことができ、液体ビームは、場合によっては、脱気液を含むことができる。いくつかの実施形態では、有機物質を清掃することは、高速液体ビームを使用して圧力波を発生させることを含むことができる。脱気液を導入することは、歯空洞内で脱気液を循環させることを含むことも可能である。本方法は、脱気液を使用して歯内の象牙質から無機物質を清掃することをさらに含むことができる。脱気液は、組織溶解剤を含むことができる。脱気液は、脱灰剤を含むことができる。
【0285】
20.脱気流体内に音波を発生させる方法の例
別の態様では、歯を治療する方法は、歯内の歯空洞内に脱気流体を流すことと、歯内の脱気流体内に音波を発生させることとを含む。
【0286】
場合によっては、脱気液を流すことは、高速液体ビームを歯空洞内に伝播させることを含むことができ、液体ビームは、脱気液をさらに含むことができる。音波を発生させることは、高速液体ビームを使用して音波を発生させることを含むことができる。さらに、脱気液を流すことは、歯空洞内で脱気液を循環させることを含むことができる。本方法は、音波を使用して音響キャビテーションを発生させることをさらに含むことができる。本方法は、脱気液の貯蔵器から脱気液を提供することを含むことができ、本方法は、脱気システムから脱気液を提供することをさらに含むことができる。場合によっては、脱気液は、溶存気体の量が18mg/L未満、12mg/L未満、6mg/L未満または3mg/L未満であり得る。さらに、本方法は、歯空洞から有機物または無機物を清掃することを含
むことができる。たとえば、音波が清掃を可能にすることができ、または音波が、清掃を可能にするキャビテーション効果を誘発することができる。
【0287】
21.脱気流体を使用して液体ビームを発生させる方法の例
別の実施形態では、歯を治療する方法は、脱気液源を提供することと、脱気液源から脱気液の平行ビームを発生させることとを含む。本方法は、脱気液の平行ビームを使用して、歯内の歯空洞内に音波を生成することと、音波を使用して歯空洞内の有機物質を解離させることとをさらに含むことができる。
【0288】
いくつかの態様では、脱気液の平行ビームを発生させることは、脱気液に対してオリフィスを通過させることを含むことができる。たとえば、オリフィスは、液体噴射装置のノズルの開口部を含むことができ、高圧液体が高速ビームの形態でその開口部を通過する。場合によっては、脱気液の平行ビームを使用して音波を生成することは、少なくとも、周波数が約1kHzを超えるか、約10kHzを超えるかまたは約100kHzを超える実質的な出力を有する音響出力を発生させることを含むことができる。実質的な出力は、たとえば、総音響出力(たとえば、全周波数にわたって積分された音響出力)の10%を超えるか、25%を超えるか、35%を超えるか、または50%を超える量の出力を含むことができる。さらに、脱気液の平行ビームを使用して音波を生成することは、歯空洞内に音響キャビテーションを発生させることを含むことができる。本方法は、音波を、歯空洞内の流体を通して伝播させることをさらに含むことできる。場合によっては、脱気液は、18mg/L未満、12mg/L未満、6mg/L未満または3mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。
【0289】
22.脱気流体内に音響圧力波を伝播させる方法の例
さらに別の実施形態では、歯を治療する方法は、歯内の歯空洞内に脱気液を導入することと、脱気液内において音響圧力波を生成することを含む。本方法は、音響圧力波を、脱気液を通して歯の周囲の象牙質構造体まで伝播させることをさらに含むことができる。場合によっては、脱気液は、18mg/L未満、12mg/L未満、6mg/L未満または3mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。
いくつかの実施形態では、脱気液を導入することは、高速液体ビームを歯空洞内に伝播させることを含むことができる。液体ビームは、脱気液を含むことができる。さらに、脱気液を導入することは、歯空洞内で脱気液を循環させることを含むことができる。本方法は、歯の象牙質構造体から有機物質または無機物質を清掃することをさらに含むことができる。場合によっては、本方法は、伝播した音響圧力波を使用して音響キャビテーションを発生させることを含むことができる。
【0290】
23.脱気流体内の気泡形成を阻止する方法の例
別の態様では、歯を治療する方法は、歯内の歯空洞内に脱気液を導入することを含む。本方法は、歯の象牙質から有機物質または無機物質を清掃するように、脱気液内にエネルギーを供給することをさらに含むことができ、それにより、脱気液は歯空洞内における気泡の形成を阻止する。
いくつかの態様では、脱気液は、約18mg/L未満、約12mg/L未満、6mg/L未満または3mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。場合によっては、エネルギーを供給することは、電磁エネルギーを供給することを含むことができる。さらに他の場合では、エネルギーを供給することは音響エネルギーを供給することを含むことができる。エネルギーを、レーザまたは高速液体ジェットを使用して供給することができる。さらに、エネルギーを供給することはまた、供給されたエネルギーを使用して圧力波を発生させることを含むことも可能である。
【0291】
24.脱気流体を使用して歯の小さい開口部を貫通する方法の例
別の実施形態では、歯を治療する方法は、歯内の歯空洞内に脱気液を導入することと、歯空洞内で脱気液の循環を促進することとを含む。脱気液は、歯空洞における寸法が500ミクロン未満の開口部を貫通するように、十分に低い量の溶存気体を有することができる。
【0292】
いくつかの実施形態では、脱気液を導入することは、歯空洞を脱気液で洗浄することを含むことができる。他の場合では、脱気液を導入することは、歯空洞内に高速液体ビームを伝播させることを含むことができる。液体ビームは脱気液を含むことができる。循環を促進することは、歯空洞からの脱気液の流れを実質的に阻止することを含むことができる。場合によっては、循環を促進することは、歯空洞内の流体圧力を調整することを含むことができる。溶存気体の量は、18mg/L未満、12mg/L未満、6mg/L未満または3mg/L未満であり得る。さらに、脱気液が、歯空洞における、さまざまな実施形態において寸法が250ミクロン未満、100ミクロン未満、50ミクロン未満、25ミクロン未満、10ミクロン未満、5ミクロン未満、3ミクロン未満、2ミクロン未満または1ミクロン未満である開口部を貫通することができるように、溶存気体の量を十分低くすることができる。本方法は、音響エネルギーを、脱気流体を通って歯空洞の開口部内に伝播させることをさらに含むことができる。場合によっては、本方法は、音響エネルギーを使用して歯空洞の開口部を清掃することをさらに含むことができる。
【0293】
25.脱気液源を備えた装置の例
さらなる他の態様では、歯を治療する装置が開示されている。本装置は、脱気液源と、歯に当接されるように構成された流体保持器とを備えている。流体保持器は、歯内の歯空洞内に脱気流体を供給するように脱気液源と連通している流体入口を備えることができる。
【0294】
いくつかの態様では、脱気液源を、歯から有機物質を取り除くように脱気流体を供給するように構成することができる。場合によっては、脱気流体には、0.1%容量未満または18mg/L未満まで溶存気体がないことが可能である。さらなる実施形態では、脱気流体は、約7mg/L未満の割合の溶存酸素を有することができる。さらに、流体保持器を、歯空洞内に脱気流体を実質的に保持するように構成することができる。流体保持器を、歯空洞内への空気流を実質的に阻止するように構成することも可能である。いくつかの態様では、流体保持器は少なくとも1つの流体出口を備えることができる。流体保持器を、歯空洞からの脱気流体、有機物質または両方の漏れを実質的に阻止するように構成することも可能である。
【0295】
場合によっては、流体保持器はキャップを備えることができる。キャップを歯空洞の周囲に、キャップが歯空洞内へのアクセス開口部を実質的に閉鎖するように配置されるように構成することができる。キャップを、歯の歯シール領域の上に配置されるように構成することができる。いくつかの実施形態では、キャップは、平面を有する歯シールと一致するように平面を有することができる。いくつかの態様では、本装置はまた、歯空洞内に配置されたエネルギー出口を有する圧力波発生器も備えることができる。圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすように構成することができる。場合によっては、流体保持器は、歯空洞の周囲にかつキャップ内に配置されるように構成された流れ制限器を備えることができる。キャップはまた、脱気流体の制御された進入および排出を可能にするように歯空洞を実質的に封止することも可能である。
【0296】
さらに、流体保持器は、空気が歯空洞に入るのを阻止しながら、脱気流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にするように構成された1つまたは複数の通気孔を備えることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の通気孔を、少なくとも幾分かの空気流が歯空洞から出る脱気流体とともに運ばれるのを可能にするように構成するこ
とができる。さらに、流体保持器は、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口を備えることができる。
【0297】
いくつかの実施形態では、本装置は、歯空洞内に配置されたエネルギー出口を有する圧力波発生器を備えることができる。圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすように構成することができる。本装置は、歯空洞内に配置されたエネルギー出口を有する圧力波発生器をさらに備えることができる。いくつかの態様では、流体保持器を、歯内の流体圧力を、所定圧力レベル未満の圧力で保持するように構成することができる。いくつかの例では、圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含むことができる。圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすように構成することも可能である。
【0298】
26.流体導入器を備えた装置の例
別の態様では、歯を治療する装置は、脱気液源を備えている。本装置は、脱気液源から歯内の歯空洞に脱気流体を供給するように構成された流体導入器をさらに備えることができる。流体導入器は流体入口を備えることができる。流体入口は、歯空洞に適合するサイズまたは形状である遠位端を有することができる。
【0299】
他の態様では、脱気液源を、歯から有機物質を取り除くように脱気流体を供給するように構成することができる。場合によっては、脱気流体は、0.1容量%未満または18mg/L未満まで溶存気体がないことが可能である。他の実施形態では、脱気流体は、約7mg/L未満の割合の脱気酸素を有することができる。流体導入器を、歯空洞内で脱気流体を循環させるように構成することができる。場合によっては、脱気液源は貯蔵器を含むことができる。流体導入器の遠位部を、歯空洞内に配置されるように構成することができる。
【0300】
いくつかの実施形態では、流体導入器は、脱気流体が内部を流れるのを可能にするように構成された流路を備えることができる。脱気流体は、高速流体ジェットビームを含むことができる。流路を、流体ジェットビームを、流路の遠位部の近くに配置された衝突部材に衝突するように向けるように構成することができる。流路は、流路の遠位部に開口部を有することができ、開口部を、流体ジェットビームが衝突部材に衝突したときに流路から出ることができるように構成することができる。本装置は、歯空洞内に流体の少なくとも幾分かを実質的に保持するように構成された流体保持器をさらに備えることができる。
【0301】
流体保持器を、歯空洞内への空気流を実質的に阻止するように構成することも可能である。いくつかの態様では、流体保持器は、空気が歯空洞に入るのを阻止しながら、脱気流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にするように構成された1つまたは複数の通気孔を備えることができる。さらに、1つまたは複数の通気孔を、少なくとも幾分かの空気流が、歯空洞から出る脱気流体とともに運ばれるのを可能にするように構成することができる。いくつかの実施形態では、流体保持器は、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口をさらに備えることができる。
【0302】
さらなる実施形態では、本装置は、歯空洞内に配置されたエネルギー出口を有する圧力波発生器を備えることができる。圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすように構成することができる。場合によっては、圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含むことができる。
【0303】
27.脱気流体および圧力波発生器を備える装置の例
別の実施形態では、歯を治療する装置は、脱気液を提供する脱気液源と、脱気液源から歯内の歯空洞内に脱気液を供給するように構成された流体入口とを備えている。本装置は、歯空洞内の脱気液内に圧力波を発生させるように構成されている圧力波発生器をさらに備えることができる。
【0304】
いくつかの実施形態では、圧力波発生器は、歯空洞内に配置されたエネルギー出口を備えることができる。圧力波発生器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすように構成することも可能である。場合によっては、圧力波発生器は、流体ジェット、レーザ、機械的撹拌器および超音波装置からなる群から選択される1つまたは複数の装置を含むことができる。脱気液は、0.1容量%未満かまたは18mg/L未満まで溶存気体がないことが可能である。さらに、脱気液は、約7mg/L未満の割合の溶存酸素を有することができる。いくつかの態様では、本装置は、歯空洞内に脱気液の少なくとも幾分かを実質的に保持するように構成された流体保持器を備えることができる。流体保持器を、歯空洞内への空気流を実質的に阻止するように構成することも可能である。
【0305】
28.組織溶解剤を含む脱気流体の例
いくつかの態様では、歯を治療するための流体は、組織溶解剤を含む。流体は、18mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。流体は、12mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。流体は、6mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。流体は、3mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。流体は、1mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。気体は空気(たとえば主に窒素および酸素)を含むことができる。場合によっては、気体は酸素を含み、溶存酸素の量は7mg/L未満または3mg/L未満である。
【0306】
組織溶解剤は、6容量%未満、3容量%未満、または1容量%未満の濃度を有することができる。組織溶解剤は次亜塩素酸ナトリウムを含むことができる。流体は水または生理食塩水を含むことができる。生理食塩水は、等張性、低張性または高張性であり得る。
【0307】
流体は、ナノ粒子、生物活性粒子、またはヒドロキシ官能基を含む化学薬品をさらに含むことができる。流体は、脱灰剤をさらに含むことができる。脱灰剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むことができる。
【0308】
他の態様では、歯を治療するために、組織溶解剤を含む流体であって、18mg/L未満の量の溶存気体を有する流体を使用することについて説明する。歯を治療することは、歯を洗浄すること、歯を清掃すること、流体内で音波を発生させること、流体の平行ビームを生成すること、流体を通して音波を伝播させること、歯空洞内の気泡の形成を阻止すること、または歯空洞内で流体の循環を促進することのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0309】
29.脱灰剤を含む脱気流体の例
いくつかの態様では、歯を治療するための流体は、脱灰剤を含む。流体は、18mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。流体は、12mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。流体は、6mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。流体は、3mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。流体は、1mg/L未満の量の溶存気体を有することができる。気体は空気(たとえば主に窒素および酸素)を含むことができる。場合によっては、気体は酸素を含み、溶存酸素の量は7mg/L未満または3mg/L未満である。
【0310】
脱灰剤は、6容量%未満、3容量%未満、または1容量%未満の濃度を有することができる。脱灰剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含むことができる。流体は水ま
たは生理食塩水を含むことができる。生理食塩水は、等張性、低張性または高張性であり得る。
【0311】
流体は、ナノ粒子、生物活性粒子、またはヒドロキシ官能基を含む化学薬品をさらに含むことができる。流体は、組織溶解剤をさらに含むことができる。組織溶解剤は次亜塩素酸ナトリウム(NaOCI)を含むことができる。
【0312】
他の態様では、歯を治療するために、脱灰剤を含む流体であって、18mg/L未満の量の溶存気体を有する流体を使用することについて説明する。歯を治療することは、歯を洗浄すること、歯を清掃すること、流体内で音波を発生させること、流体の平行ビームを生成すること、流体を通して音波を伝播させること、歯空洞内の気泡の形成を阻止すること、または歯空洞内で流体の循環を促進することのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0313】
30.歯空洞内に流体を維持する処置の例
別の態様では、歯内の歯空洞内に流体を維持する処置は、歯内の歯空洞内に流体を供給することと、空気が歯空洞に入るのを阻止しながら、流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にすることとを含む。
【0314】
いくつかの態様では、流体を供給することは、脱気流体を供給することを含むことができる。流体を供給することは、歯空洞内に流体入口を配置することを含むことができる。さらに、流体入口を配置することは、チューブを配置することを含むことができ、流体は、チューブ内を流れることができる。いくつかの実施形態では、本処置はまた、歯空洞内に音響エネルギー波を生成する圧力波発生器を起動させることを含むことも可能である。本処置は、音響エネルギー波が歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを有するように、歯空洞内に十分な流体を保持する流体保持器を提供することをさらに含むことができる。場合によっては、圧力波発生器を起動させることは、流体ジェットビームを起動させることを含むことができる。
【0315】
いくつかの態様では、流体の少なくとも幾分かが空洞から出るのを可能にすることは、歯空洞内の流体圧力を調整するように1つまたは複数の通気孔を設けることを含むことができる。1つまたは複数の通気孔を設けることは、少なくとも幾分かの空気流が歯空洞から除去された流体とともに運ばれるのを可能にすることを含むことができる。いくつかの実施形態では、本処置は、流体が歯空洞から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口を設けることを含むことができる。また、本処置は、歯空洞内に音響エネルギー波を生成する圧力波発生器を起動させることを含むことができる。いくつかの態様では、本処置は、音響エネルギー波が歯空洞内の少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを有するように、歯空洞内に十分な流体を保持する流体保持器を提供することをさらに含むことができる。
【0316】
31.歯空洞内に流体を維持する装置の例
別の態様では、歯内の歯空洞内に流体を維持する装置は、歯空洞内に流体を実質的に保持するように歯に当接されるように構成された流体保持器を備えている。流体保持器は、空気が歯空洞に入るのを阻止しながら、流体の少なくとも幾分かが歯空洞から出るのを可能にするように構成された1つまたは複数の通気孔を備えることを含むことができる。本装置は、歯空洞内に流体を供給するように構成された流体入口をさらに備えることができる。
【0317】
いくつかの態様では、流体入口の一部は、圧力波発生器をさらに備えることができる。圧力波発生器を、音響エネルギー波を生成するように構成することができる。音響エネル
ギー波は、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーを保持することができる。いくつかの実施形態では、流体は、脱気流体を含むことができる。さらに、流体入口は、内部を流体が流れるのを可能にするように構成された流路を備えることができる。
【0318】
いくつかの態様では、本装置は、流体が流路から流れ出るのを可能にするように構成された流体出口を備えることができる。場合によっては、流路を、歯空洞内に配置されるように構成することができる。さらに、流体出口を、吸引を提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、流体は流体ジェットビームを含むことができる。流体入口はまた、流路の遠位部の近くに配置された衝突面を備えることも可能である。さらに、流路を、流体ジェットビームを、衝突面に衝突するように向けるように構成することができる。いくつかの態様では、流路を、流体ジェットビームが衝突面に衝突したときに音響エネルギー波が生成されるように、流体ジェットビームを向けるように構成することができる。また、流体保持器を、歯空洞内に少なくとも幾分かの流体キャビテーションをもたらすのに十分なエネルギーで音響エネルギー波が伝播することができるように、歯空洞内に十分な流体を保持するように構成することができる。
【0319】
32.歯を監視する方法の例
別の態様では、歯からの流体を監視する方法は、流体を歯内の歯空洞に供給することと、歯空洞から流体を除去することと、歯空洞から除去された流体の特性を電子的に監視することとを含む。流体を、流体プラットフォームを用いて供給するかまたは除去することができる。流体を、流体入口(または流体導入器)によって供給し、または流体出口によって除去することができる。監視センサ(たとえば、光、電気または電気化学)を使用して、電子的監視を行うことができる。
【0320】
他の態様では、本方法は、監視された特性に少なくとも部分的に基づいて圧力波発生器を起動させるかまたは停止させることをさらに含むことができる。本方法は、歯空洞内に流体を供給する供給源を起動させるかまたは停止させることをさらに含むことができる。起動または停止を、監視された測定に少なくとも部分的に基づかせることができる。特性を監視することは、光学的監視を含むことができ、特性は、歯空洞から除去された流体の反射率または透過率を含むことができる。特性を監視することは、電気的監視または電気化学的監視を含むことができる。
【0321】
他の態様では、本方法は、監視された特性に関連するかまたは監視された特性から導出された情報をユーザインタフェースに通信することをさらに含むことができる。ユーザインタフェースは、ディスプレイ(たとえばLCD)、ウェブブラウザ、携帯電話、ポータブルコンピュータまたはタブレット等を含むことができる。
【0322】
本方法は、監視された特性に少なくとも部分的に基づいては歯洗浄または清掃装置を自動的に調節することをさらに含むことができる。本方法は、歯空洞に供給された流体の特性を電子的に監視することをさらに含むことができる。本方法は、歯空洞に供給される流体の監視された特性と、歯空洞から除去された流体の監視された特性とに少なくとも部分的に基づいて、自動的に動作を行うことをさらに含むことができる。動作は、歯内治療装置を調節すること、ユーザインタフェースを介して情報を出力すること、または警告を与えることのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0323】
33.歯を監視する装置の例
別の態様では、歯からの流体を監視する装置は、歯内の歯空洞に流体を供給するように構成された流体入口(または流体導入器)と、歯空洞から流体を除去するように構成された流体出口と、歯空洞から除去された流体の特性を監視するように構成された監視システ
ムとを備えている。たとえば、流体入口または流体出口は、流体プラットフォームを介して歯空洞と流体連通することができる。
【0324】
監視システムは、光学センサを備えることができる。光学センサを、歯空洞から除去された流体の反射率または透過率を測定するように構成することができる。監視システムは電気センサまたは電気化学センサを備えることができる。
【0325】
本装置は、歯内治療装置をさらに備えることができ、本装置を、歯空洞から除去された流体の監視された特性に少なくとも部分的に基づいて歯内治療装置を調節するように構成することができる。歯内治療装置は、洗浄装置、流体供給装置、流体除去装置、歯清掃装置および流体プラットフォームからなる群から選択される1つまたは複数の装置を備えることができる。歯清掃装置は、液体噴射装置、レーザ、超音波装置または機械的撹拌器を含むことができる。
【0326】
監視システムを、歯に供給された流体の特性を監視するようにさらに構成することができる。本装置は、監視された特性に関連するかまたはそれから導出される情報を出力するように構成されたインタフェースシステムをさらに備えることができる。本装置は圧力波発生器をさらに備えることができ、監視システムを、監視された特性に少なくとも部分的に基づいて圧力波発生器を起動させるかまたは停止させるように構成することができる。
【0327】
34.歯を清掃する装置の例
一態様では、歯を清掃する装置は、歯の歯空洞内に流体を実質的に保持するように歯に当接されるように構成された流体保持器と、歯空洞内に挿入されるように構成された遠位部を有する圧力波発生器とを備えている。本装置はまた、歯空洞内の圧力を調整するように構成された通気孔を備えることも可能である。
【0328】
さまざまな実施形態において、流体保持器を、歯空洞内の流体の循環を可能にするように構成することができる。流体保持器を、圧力波発生器の遠位部が流体内に沈められたままであるように歯空洞内に十分な流体を保持するように構成することができる。流体保持器は、歯空洞に流体を供給するように構成された流体入口を備えることができる。本装置は、流体源をさらに備えることができる。流体源を、流体入口と流体連通するように構成することができる。流体源は、脱気流体を含むことができる。流体源は、組織溶解剤または脱灰剤を含む流体を含むことができる。
【0329】
流体保持器は、歯空洞から流体を除去するように構成された流体出口を備えることができる。通気孔は、流体出口と流体連通することができる。通気孔を、歯空洞内の圧力が圧力閾値を超えたときに歯空洞からの流体が通気孔から流れ出るのを可能にするように構成することができる。通気孔を、空気が歯空洞内に流れ込むのを実質的に阻止するように構成することができる。通気孔を、周囲空気が流体出口において流体とともに運ばれることができるように構成することができる。
【0330】
本装置は、流体出口における流体の特性を監視するように構成された監視センサをさらに備えることができる。本装置を、流体出口における流体の監視された特性に応じて圧力波センサを起動させるかまたは停止させるように構成することができる。監視センサは、光学センサ、電気センサまたは電気化学センサを含むことができる。
【0331】
圧力波発生器は、液体ジェット、レーザ、超音波装置、機械的撹拌器またはそれらの組合せを含むことができる。圧力波発生器を、歯に保持されている流体内に音波を発生させるように構成することができる。音波は、帯域幅が10kHZを超える広帯域出力を有することができる。
【0332】
V.結論
図のうちのいくつかに概略的に示した歯10は臼歯であるが、処置を、切歯、犬歯、両穿歯、小臼歯または臼歯等、あらゆるタイプの歯に対して行うことができる。さらに、図では歯を下(下顎)歯として示している可能性があるが、これは、例示の目的のためであり、限定するものではない。本システム、方法および組成物を、下(下顎)歯に適用することも上(上顎)歯に適用することも可能である。また、開示した装置および方法は、非常に湾曲した根管空間を含む、広範囲の形態を有する根管空間を治療することができる。さらに、開示した装置、方法および組成物を、ヒトの歯(子供の歯を含む)および/または動物の歯に適用することができる。
【0333】
本明細書を通して「いくつかの実施形態」または「実施形態」と言及する場合、それは、その実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造、要素、行為または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通してさまざま場所において「いくつかの実施形態において」または「実施形態において」という句が現れる場合、それは、必ずしもすべて同じ実施形態を指しているとは限らず、同じかまたは異なる実施形態のうちの1つまたは複数を指す可能性がある。さらに、特定の特徴、構造、要素、行為または特性を、他の実施形態においてあらゆる好適な方法で(図示するかまたは記載したものとは異なるものを含む)組み合わせることができる。さらに、さまざまな実施形態において、特徴、構造、要素、行為または特性を、組み合せ、統合し、再配置し、順序を変更し、または完全に除外することができる。したがって、各実施形態に対し、いかなる単一の特徴、構造、要素、行為あるいは特性、または特徴、構造、要素、行為あるいは特性群も、不可欠または必須ではない。すべてのあり得るコンビネーションおよびサブコンビネーションが、本開示の範囲内にあるように意図されている。
【0334】
本明細書で使用する「備える」、「含む」、「有する」等は、類義語であり、非限定的に包括的に使用されており、追加の要素、特徴、行為、動作等を排除するものではない。また、「または」という用語は、その包括的な意味で(その排他的な意味ではなく)使用されており、それにより、たとえば要素のリストを連結するために使用される場合、「または」という用語は、リスト内の要素のうちの1つ、いくつかまたはすべてを意味する。
【0335】
同様に、実施形態の上記説明において、開示を簡略化しさまざまな発明の態様のうちの1つまたは複数の理解を助けるために、さまざまな特徴が、単一の実施形態、図、またはその説明において合わせてグループ化されている場合があることが理解されるべきである。しかしながら、この開示方法は、いかなる請求項も他の請求項に明示的に列挙されているものより多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、発明の態様は、あらゆる単一の上記開示した実施形態のすべての特徴より少ない組合せにある。
【0336】
上述した説明は、本明細書に開示する発明のさまざまな実施形態例および他の例示的であるが非限定的な実施形態を示す。この説明は、本明細書を読む当業者には明らかとなるものを含む、開示した発明の組合せ、態様および使用に関する詳細を提供する。実施形態の開示する特徴および態様の他の変形、組合せ、変更、均等物、形態、使用、実施態様および/または用途もまた、本開示の範囲内にある。さらに、本明細書には、本発明のいくつかの目的および利点が記載されている。こうした目的または利点のすべてが必ずしもいかなる特定の実施形態において達成され得るとは限らないことが理解されるべきである。したがって、たとえば、当業者は、本明細書において教示されるかまたは示唆され得るように他の目的または利点を必ずしも達成することなく、本明細書において教示される1つの利点または利点群を達成するかまたは最適化する方法で、本発明を具現化するかまたは実施することができることを理解するであろう。また、本明細書に開示するいかなる方法
またはプロセスにおいても、その方法またはプロセスを構成する行為または動作を、いかなる好適な順序で行うことも可能であり、必ずしもいかなる特定の開示した順序にも限定されない。
図1
図2A
図2B-1】
図2B-2】
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図16D
図17