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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ピロロピリミジン類化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20230413BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230413BHJP
   A61K 31/5365 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230413BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
C07D519/00 311
A61K31/519
A61K31/5365
A61P19/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P43/00 111
C07D519/00 CSP
C07D519/00 301
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021571814
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 CN2020094534
(87)【国際公開番号】W WO2020244614
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】201910487056.7
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520175190
【氏名又は名称】クワンチョウ ジョーヨー ファーマテック カンパニー,リミティド
(73)【特許権者】
【識別番号】516304780
【氏名又は名称】メッドシャイン ディスカバリー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チエン、ウェンユアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ、チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】フー、クオピン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チエン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シューホイ
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107805259(CN,A)
【文献】特表2003-516405(JP,A)
【文献】特表2018-516264(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107652308(CN,A)
【文献】特開2018-199623(JP,A)
【文献】国際公開第2013/088257(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/085802(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/137022(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 519/00
A61K 31/519
A61K 31/5365
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【化1】


(ただし、
はCHであり、
はO又はCHであり、
はH又はC1-3アルキル基であり、ただし、前記C1-3アルキル基は1、2又は3つのRにより任意に置換され、
はH又はC1-3アルキル基であり、ただし、前記C1-3アルキル基は1、2又は3つのRにより任意に置換され、
はH、F、Cl、Br、I、CN及びC1-3アルキル基から選択され、ただし、前記C1-3アルキル基は1、2又は3つのRにより任意に置換され、
、R及びRはそれぞれ独立してF、Cl、Br、I及びNHから選択される。)
【請求項2】
はH又はCHである請求項1に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項3】
はH又はCHである請求項1に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項4】
はH、F、Cl、Br、I及びCNから選択される請求項1に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項5】
はCNから選択される請求項4に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項6】
化合物が下記式から選択される請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【化2】



(ただし、R、R及びRは請求項1~5のいずれか一項に定義される通りである。)
【請求項7】
下記から選択される化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【化3】
【請求項8】
下記から選択される請求項7に記載の化合物、その立体異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【化4】
【請求項9】
炎症性疾患を治療する薬物の調製における、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用。
【請求項10】
前記薬物はリウマチ性関節炎を治療する薬物であることを特徴とする請求項9に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は以下の優先権を主張する。
CN201910487056.7、出願日:2019.06.05
【0002】
本発明は、JAK阻害剤としてのピロロピリミジン類化合物、及びJAK1又は/及びJAK2関連疾患を治療する薬物の調製における使用に関する。具体的に、式(I)で表される化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩に関する。
【背景技術】
【0003】
Janusキナーゼ(JAKs)は、細胞質チロシンキナーゼであり、膜受容体からSTAT転写因子まで、サイトカインシグナルを伝達することができる。JAKファミリーには、JAK1、JAK2、JAK3及びTYK2の4つのメンバーがある。JAK-STAT経路は、様々なサイトカイン、成長因子、及びホルモンからの細胞外シグナルを細胞核に伝達し、且つ数千個のタンパク質コード遺伝子の発現を担当する。JAK-STAT経路が細胞外シグナルを転写応答に変換するには幾つかのステップが関わっている。1)細胞表面のサイトカイン受容体がその各自のサイトカイン配体と結合した後に配置が変化して受容体分子の二量化を引き起こし、これにより受容体に結合されたJAKキナーゼを互いに近接させて交互的なチロシンリン酸化作用により活性化する。2)JAKが活性化された後、受容体におけるチロシン残基のリン酸化修飾を触媒し、さらにこれらのリン酸化されたチロシン部位は周囲のアミノ酸配列と「ドッキング部位」(docking site)を形成し、同時にSH2ドメインを含むSTATタンパクはこの「ドッキング部位」に招かれる。3)最後に、キナーゼJAKは受容体に結合されたSTATタンパクのリン酸化修飾を触媒し、活性化されたSTATタンパクは受容体から離れて二量体になった後、細胞核内に転移して特定の遺伝子を転写調節する。JAK-STAT細胞内のシグナル伝達は、インターフェロン、ほとんどのインターロイキン、及び様々なサイトカインと内分泌因子、例えばEPO、TPO、GH、OSM、LIF、CNTF、GM-CSF及びPRL(Vainchenker W.E T al.(2008)に役立つ。
【0004】
JAK-1、JAK-2及びTYK-2は人体の各組織細胞に発現され、JAK-3は主に各造血組織細胞に発現され、主に骨髓細胞、胸腺細胞、NK細胞及び活性化されたBリンパ球、Tリンパ球に存在する。JAK1は、IL-10、IL-19、IL-20、IL-22、IL-26、IL-28、IFN-α、IFN-γ、gp130ファミリーのIL-6及びγcを含む他の受容体等と結合できる。JAK1は免疫、炎症、癌等の疾病分野の新しい標的となっている。JAK2は、EPO、GH、PRL、IFN-γ及びβcファミリーにおけるIL-3、IL-5、GM-CSF等を含む様々な受容体シグナルの調節過程で重要な役割を果たす。人体におけるJAK2遺伝子の1つの塩基突然変異JAK2V617Fは、骨髓増殖性疾患における真性赤血球増加症(PV)、特発性血小板増加症(ET)、特発性骨髓繊維症(IMF)、慢性顆粒球性白血病(CML)等の発生と密接に関係している。JAK3は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21等のサイトカイン受容体複合物におけるγ鎖(γc)と会合することで、細胞シグナル伝達を調節する。JAK3又はγc突然変異はいずれも重症複合免疫不全を引き起こすことが可能である。JAK3の活性異常は、T細胞とNK細胞の大量減少、B細胞機能の喪失として現れ、免疫システム等の正常な生物学的機能に深刻な影響を与える。その機能特徴及び特殊な組織分布に基づいて、JAK3は免疫システム関連疾患に対して極めて魅力的な薬物標的となっている。TYK2はJAKファミリーにおける1番目のメンバーであり、IFNs、IL-10、IL-6、IL-12、IL-23、IL-27等の様々な受容体により活性化される。マウスにおいて、TYK2の機能欠失によって、様々なサイトカイン受容体のシグナル経路に欠陥が発生し、さらにウイルス感染し、抗菌免疫機能が低下し、肺部感染の可能性等を増加させる(John J.O’Shea,2004,Nature Reviews Drug Discovery 3,555-564)。異なるJAKファミリーメンバは選択的に異なるサイトカイン受容体に結合し、シグナル伝導特異性を与えることで、異なる生理学的作用を発揮し、このような選択的な作用方式により、JAK阻害剤が疾病治療に相対的に特異的に使用することができるようになる。例えば、IL-2又はIL-4受容体は共通のγ鎖と共にJAK1及びJAK3に結合されるが、同じβ鎖を有するI型受容体はJAK2に結合される。gp130(糖タンパク130)を用いるI型受容体及びヘテロ二量体サイトカインで活性化されたI型受容体はJAK1/2及びTYK2を優先的に結合する。ホルモン様のサイトカインにより活性化されたI型受容体はJAK2キナーゼを結合して活性化する。インターフェロンのII型受容体はJAK1及びTYK2に結合するが、IL-10サイトカインファミリーの受容体はJAK1/2及びTYK2に結合する。前記サイトカイン及びその受容体はJAKファミリーメンバーとの様々な特異結合により異なる生理学的作用を引き起こし、異なる疾患の治療に可能性を提供する。JAK1は他のJAKsとヘテロ二量化してサイトカインにより駆動された炎症促進シグナル伝達を転導する。したがって、JAK1及び/又は他のJAKの阻害は一連の炎症性疾患及び他のJAK媒介のシグナル伝達により駆動される疾患に治療効果があると予期される(Daniella M. Schwartz、2017、Nature Reviews Drug Discovery 16,843-862。)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(I)で表される化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩を提供し、
【化1】

ただし、
はCH又はNであり、
は単結合、O又はCHであり、
はH又はC1-3アルキル基であり、ただし、前記C1-3アルキル基は1、2又は3つのRにより任意に置換され、
はH又はC1-3アルキル基であり、ただし、前記C1-3アルキル基は1、2又は3つのRでにより任意に置換され、
はH、F、Cl、Br、I、CN及びC1-3アルキル基から選択され、ただし、前記C1-3アルキル基は1、2又は3つのRにより任意に置換され、
、R及びRはそれぞれ独立してF、Cl、Br、I及びNHから選択される。
【0006】
本発明の幾つかの形態において、前記RはH又はCHであり、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0007】
本発明の幾つかの形態において、前記RはH又はCHであり、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0008】
本発明の幾つかの形態において、前記RはH、F、Cl、Br、I及びCNから選択され、他の変量は本発明に定義される通りである。
【0009】
本発明の幾つかの形態において、前記RはCNから選択される。
【0010】
本発明の幾つかの形態において、前記化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩において、化合物は、
【化2】

から選択され、
ただし、R、R及びRは本発明に定義される通りである。
【0011】
本発明の幾つかの実施の態様は前記各変数の任意の組み合わせからなるものである。
【0012】
本発明はさらに、下記の化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩を提供する。
【化3】

本発明の幾つかの形態において、前記化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩は、
【化4】

から選択される。
本発明はさらに、JAK1和/又はJAK2関連疾患を治療する薬物の調製における、前記化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用を提供する。
【0013】
本発明の幾つかの形態において、前記薬物はリウマチ性関節炎を治療する薬物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物は、キナーゼの4つのサブタイプJAK1、JAK2、JAk3及びTYK2の体外活性測定において、JAK1及び/又はJAK2に対する良好な選択性阻害を示す。本発明の化合物が有する高浸透性は、良好な標的組織濃度と経口生物学的利用能の実現に有利である。本発明の化合物はマウスにおいて良好な経口生物学的利用能、高い暴露量を有し、良好な体内薬効の生成に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
別途に説明しない限り、本明細書で用いられる以下の用語及び連語は以下の意味を有する。一つの特定の用語又は連語は、特別に定義されていない限り、不確定又は不明瞭ではなく、普通の定義として理解されるべきである。本明細書で商品名が出た場合、相応の商品又はその有効成分を指す。
【0016】
本明細書で用いられる用語「薬学的に許容される」は、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形に対するもので、これらは信頼できる医学的判断の範囲内にあり、ヒト及び動物の組織と接触して使用することに適し、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応又は他の問題又は合併症があまりなく、合理的な利益/リスク比に合う。
【0017】
用語「薬学的に許容される塩」とは、本発明の化合物の塩を指し、本発明で発見された特定の置換基を有する化合物と比較的に無毒の酸又は塩基とで製造される。本発明の化合物に比較的に酸性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の塩基でこれらの化合物と接触することで塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミン又はマグネシウムの塩又は類似の塩を含む。本発明の化合物に比較的に塩基性の官能基が含まれる場合、単独の溶液又は適切な不活性溶媒において十分な量の酸でこれらの化合物と接触することで酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、無機酸塩及び有機酸塩、更にアミノ酸(例えばアルギニン等)の塩、及びグルクロン酸のような有機酸の塩を含み、前記無機酸は、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素イオン、リン酸、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、硫酸、硫酸水素イオン、ヨウ化水素酸、亜リン酸等を含み、前記有機酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸やメタンスルホン酸等の類似の酸を含む。本発明の一部の特定の化合物は、塩基性及び酸性の官能基を含有するため、任意の塩基付加塩又は酸付加塩に転換することができる。
【0018】
本発明の薬学的に許容される塩は、酸基又は塩基性基を含む母体化合物から通常の方法で合成することができる。通常の場合、このような塩の製造方法は、水又は有機溶媒或いは両者の混合物において、遊離酸又は塩基の形態のこれらの化合物を化学量論の適切な塩基又は酸と反応させて製造する。
【0019】
本発明の化合物は、特定の幾何又は立体異性体の形態が存在してもよい。本発明は、全てのこのような化合物を想定し、シス及びトランス異性体、(-)-及び(+)-エナンチオマー、(R)-及び(S)-エナンチオマー、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、及びそのラセミ混合物並びに他の混合物、例えばエナンチオマー又はジアステレオマーを多く含有する混合物を含み、全てのこれらの混合物は本発明の範囲内に含まれる。アルキル等の置換基に他の不斉炭素原子が存在してもよい。全てのこれらの異性体及びこれらの混合物はいずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0020】
別途に説明しない限り、用語「エナンチオマー」又は「光学異性体」とは互いに鏡像の関係にある立体異性体である。
【0021】
別途に説明しない限り、用語「シス及びトランス異性体」又は「幾何異性体」は二重結合又は環形成炭素原子単結合が自由に回転できないことにより引き起こされる。
【0022】
別途に説明しない限り、用語「ジアステレオマー」とは分子が二つ又は複数のキラル中心を有し、且つ分子同士は非鏡像の関係にある立体異性体である。
【0023】
別途に説明しない限り、「(+)」は右旋を、「(-)」は左旋を、「(±)」はラセミを表す。
【化5】
【0024】
別途に説明しない限り、化合物に二重結合構造、例えば、炭素炭素二重結合、炭素窒素二重結合、及び窒素窒素二重結合が存在し、且つ二重結合における各原子はいずれも2つの異なる置換基が連結されている場合(窒素原子を含む二重結合において、窒素原子上の1対の孤立電子はそれに連結されるいつの置換基とみなされる)、該化合物において二重結合における原子とその置換基との間が波線
【化6】

で連結されると、該化合物の(Z)型異性体、(E)型異性体、又はこの2種類の異性体の混合物を表す。例えば、下記の式(A)は、該化合物が式(A-1)又は式(A-2)の単一異性体として存在するか、式(A-1)及び式(A-2)の2種類の異性体の混合物として存在することを表す。下記の式(B)は、該化合物が式(B-1)又は式(B-2)の単一異性体として存在するか、式(B-1)及び式(B-2)の2種類の異性体の混合物として存在することを表す。下記の式(C)は、該化合物が式(C-1)又は式(C-2)の単一異性体として存在するか、式(C-1)及び式(C-2)の2種類の異性体の混合物として存在することを表す。
【化7】
【0025】
別途に説明しない限り、用語「互変異性体」又は「互変異性体の形態」とは、室温において、異なる官能基の異性体が動的平衡にあり、且つ快速に互いに変換できることを指す。互変異性体は可能であれば(例えば、溶液において)、互変異性体の化学平衡を達することが可能である。例えば、プロトン互変異性体(proton tautomer)(プロトトロピー互変異性体(prototropic tautomer)とも呼ばれる)は、プロトンの移動による相互変換、例えばケトン-エノール異性化やイミン-エナミン異性化を含む。原子価互変異性体(valence tautomer)は、一部の結合電子の再構成による相互変換を含む。中では、ケトン-エノール互変異性化の具体的な実例は、ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシ-3-ペンテン-2-オンの二つの互変異性体の間の相互変換である。
【0026】
別途に説明しない限り、用語「一つの異性体を豊富に含む」、「異性体が豊富に含まれる」、「一つのエナンチオマーを豊富に含む」又は「エナンチオマーが豊富に含まれる」とは、それにおける一つの異性体又はエナンチオマーの含有量が100%未満で、且つ当該異性体又はエナンチオマーの含有量は60%以上、又は70%以上、又は80%以上、又は90%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上、又は99.5%以上、又は99.6%以上、又は99.7%以上、又は99.8%以上、又は99.9%以上である。
【0027】
別途に説明しない限り、用語「異性体の過剰量」又は「エナンチオマーの過剰量」とは、二つの異性体又は二つのエナンチオマーの間の相対百分率の差の値である。例えば、その一方の異性体又はエナンチオマーの含有量が90%で、もう一方の異性体又はエナンチオマーの含有量が10%である場合、異性体又はエナンチオマーの過剰量(ee値)は80%である。
【0028】
光学活性な(R)-及び(S)-異性体並びにD及びL異性体は、キラル合成又はキラル試薬又は他の通常の技術を用いて調製することができる。本発明のある化合物の一つのエナンチオマーを得るには、不斉合成又はキラル補助剤を有する誘導作用によって調製することができるが、その中で、得られたジアステレオマー混合物を分離し、且つ補助基を分解させて純粋な所要のエナンチオマーを提供する。或いは、分子に塩基性官能基(例えばアミノ基)又は酸性官能基(例えばカルボキシ基)が含まれる場合、適切な光学活性な酸又は塩基とジアステレオマーの塩を形成させ、更に本分野で公知の通常の方法によってジアステレオマーの分割を行った後、回収して単離されたエナンチオマーを得る。また、エナンチオマーとジアステレオマーの分離は、通常、クロマトグラフィー法によって行われ、前記クロマトグラフィー法はキラル固定相を使用し、且つ任意に化学誘導法(例えばアミンからカルバミン酸塩を生成させる)と併用する。
【0029】
本発明の化合物は、当該化合物を構成する一つ又は複数の原子に、非天然の比率の原子同位元素が含まれてもよい。例えば、三重水素(H)、ヨウ素-125(125I)又はC-14(14C)のような放射性同位元素で化合物を標識することができる。また、例えば、水素を重水素で置換して重水素化薬物を形成することができ、重水素と炭素からなる結合は水素と炭素からなる結合よりも強固で、未重水素化薬物と比べ、重水素化薬物は毒性・副作用の低下、薬物の安定性の増加、治療効果の増強、薬物の生物半減期の延長等のメリットがある。本発明の化合物の全ての同位元素の構成の変換は、放射性の有無を問わず、いずれも本発明の範囲内に含まれる。「任意」又は「任意に」とは、後述する事象又は状況は可能であるが、必ずしも発生しないことを意味し、その説明は前記事象又は状況が発生する場合及び前記事件又は状況が発生しない場合を含む。
【0030】
用語「置換される」とは、特定の原子における任意の一つ又は複数の水素原子が置換基で置換されることで、特定の原子の原子価状態が正常で且つ置換後の化合物が安定していれば、重水素及び水素の変形体を含んでもよい。置換基がオキソ(即ち=O)である場合、2つの水素原子が置換されたことを意味する。酸素置換は、芳香族基に生じない。用語「任意に置換される」とは、置換されていてもよく、置換されていなくてもよいことを指し、別途に定義しない限り、置換基の種類と数は化学的実現できれば任意である。
【0031】
変量(例えばR)のいずれかが化合物の組成又は構造で1回以上現れる場合、その定義はいずれの場合においても独立である。そのため、例えば、一つの基が0~2個のRで置換された場合、前記基は任意に2個以下のRで置換され、且ついずれの場合においてもRが独立な選択肢を有する。また、置換基及び/又はその変形体の組み合わせは、このような組み合わせのみに安定した化合物になる場合だけ許容される。
【0032】
連結基の数が0の場合、例えば-(CRR)-は、当該連結基が単結合であることを意味する。
【0033】
そのうち1つの変量が単結合から選択される場合、それに連結される2つの基が直接連結していることを示し、例えば、A-L-ZにおいてLが単結合を表す場合、この構造は実際にA-Zであることを示す。
【0034】
一つの置換基がない場合、当該置換基が存在しないことを表し、例えばA-XにおけるXがない場合、当該構造が実際にAとなることを表す。挙げられた置換基に対してその中のどの原子が置換された基に連結されたかを明示しない場合、その置換基はいずれかの原子を通じて結合され、例えば、ピリジルを置換基とする場合、ピリジル上のいずれかの炭素原子を通じて置換された基に連結されることができる。
【0035】
別途に説明しない限り、ある基が1つの又は複数の連結可能な部位を有する場合、この基の任意の1つ又は複数の部位は化学結合により他の基と連結することができる。この化学結合の連結方式が位置決めされず、且つ連結可能な部位にH原子が存在する場合、化学結合を連結するとき、この部位のH原子の数は連結される化学結合の数とともに減少して対応する価数の基になる。前記部位と他の基とが連結された化学結合は
【化8】

で表すことができる。例えば、-OCHにおける直線実線結合は、この基における酸素原子を介して他の基と連結することを表す。
【化9】

における直線点線結合は、この基における窒素原子の両端を介して他の基と連結することを表す。
【化10】

の波線は、このフェニル基における1と2位の炭素原子を介して他の基と連結することを表す。
【化11】

は、このピペリジニル基における任意の連結可能な部位は1つの化学結合を介して他の基と連結できることを示し、少なくとも
【化12】

の4種類の連結方法を含み、たとえ-N-にH原子が描かれても、
【化13】

の連結方法の基を含み、ただ、1つの化学結合を連結するとき、この部位のHは1つ減少して対応する一価のピペリジニル基になる。
【0036】
別途に定義しない限り、「C1-3アルキル」という用語は、1~3個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。前記C1-3アルキルはC1-2及びC2-3アルキルなどを含み、一価(例えば、メチル)、二価(例えば、メチレン)、又は多価(例えば、メチン)であり得る。C1-3アルキルの例には、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル及びイソプロピルを含む)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
別途に定義しない限り、「ハロゲン化」又は「ハロゲン」という用語自身又は他の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子を指す。
【0038】
別途に定義しない限り、Cn-n+m又はC-Cn+mはn~n+m個の炭素の任意の一つの具体的な様態を含み、例えば、C1-12はC、C、C、C、C、C、C、C、C、C10、C11、及びC12を含み、n~n+mのうちの任意の一つの範囲も含み、例えば、C1-12はC1-3、C1-6、C1-9、C3-6、C3-9、C3-12、C6-9、C6-12、及びC9-12等を含む。同様に、n員~n+m員は環における原子数がn~n+m個であることを表し、例えば、3~12員環は3員環、4員環、5員環、6員環、7員環、8員環、9員環、10員環、11員環、及び12員環を含み、n~n+mのうちの任意の一つの範囲も含み、例えば、3~12員環は3~6員環、3~9員環、5~6員環、5~7員環、6~7員環、6~8員環、及び6~10員環等を含む。
【0039】
用語「脱離基」とは別の官能基又は原子で置換反応(例えば求核置換反応)を通じて置換された官能基又は原子を指す。例えば、代表的な脱離基は、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、塩素、臭素、ヨウ素、例えばメタンスルホン酸エステル、トルエンスルホン酸エステル、p-ブロモベンゼンスルホン酸エステル、p-トルエンスルホン酸エステル等のスルホン酸エステル、例えばアセチルオキシ、トリフルオロアセチルオキシ等のアシルオキシを含む。
【0040】
用語「保護基」は「アミノ保護基」、「ヒドロキシ保護基」又は「メルカプト保護基」を含むが、これらに限定されない。用語「アミノ保護基」とはアミノ基の窒素の位置における副反応の防止に適する保護基を指す。代表的なアミノ保護基は、ホルミル、アルカノイル(例えば、アセチル、トリクロロアセチル又はトリフルオロアセチル)ようなアシル、t-ブトキシカルボニル(Boc)のようなアルコキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)及び9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)のようなアリールメトキシカルボニル、ベンジル(Bn)、トリフェニルメチル(Tr)、1、1-ビス(4’-メトキシフェニル)メチルのようなアリールメチル、トリメチルシリル(TMS)及びt-ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリル等を含むが、これらに限定されない。用語「ヒドロキシ保護基」とはヒドロキシ基の副反応の防止に適する保護基を指す。代表的なヒドロキシ保護基は、メチル、エチル及びt-ブチルのようなアルキル、アルカノイル(例えばアセチル)のようなアシル、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、9-フルオレニルメチル(Fm)及びジフェニルメチル(DPM)のようなアリールメチル、トリメチルシリル(TMS)及びt-ブチルジメチルシリル(TBS)のようなシリル等を含むが、これらに限定されない。
【0041】
本発明の化合物は当業者に熟知の様々な合成方法によって製造することができ、以下に挙げられた具体的な実施形態、それと他の化学合成方法と合わせた実施形態及び当業者に熟知の同等の代替方法を含み、好適な実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
本発明に使用される溶媒は市販品として入手可能である。本発明は下記略号を使用する:aqは水を表し;DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表す。
【実施例
【0042】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明を限定するものではない。本明細書は本発明を詳細に説明し、その具体的な実施例も開示し、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、本発明の具体的な実施例に様々な変更及び改善を加えることができることは、当業者には明らかである。
<実施例1>化合物1-13の合成
【0043】
【化14】
【0044】
ステップ1:0℃で、水素化ナトリウム(15.92g、398.08mmol、60%純度、1.1eq)のDMF(500mL)懸濁液に、(4-メトキシフェニル)メタノール(50g、361.89mmol、45.05mL、1eq)を加え、0.5時間攪拌した後、3-ブロモ-1-プロピン(59.19g、398.08mmol、42.89mL、1.1eq)を徐々に反応系に加え、得られた溶液を0℃で2.5時間攪拌し、25℃で16時間攪拌し、TLC(PE:EA=10:1)は、反応が完全で且つ1つの新しい主生成物を生成したことを示し、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(500mL)を加え、水相を酢酸エチル(500mL×3)で抽出し、合わせた有機相を順に水(200mL×2)と食塩水(200mL×1)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮させ、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/0~1/1)により精製し、化合物1-2を得た。H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=7.27-7.22(m,2H),6.93-6.89(m,2H),4.44(s,1H),4.46-4.41(m,1H),4.12(d,J=2.4 Hz,2H),3.74(s,2H),3.77-3.72(m,1H),3.46(t,J=2.4 Hz,1H),3.48-3.45(m,1H),3.48-3.45(m,1H),3.48-3.45(m,1H),3.48-3.44(m,1H)。
【0045】
ステップ2:25℃で、5-ブロモ-2-ヨード-ピリジン(50g、176.12mmol、1eq)のTHF(500mL)溶液に、化合物1-2(34.14g、193.74mmol、25.00mL、1.1eq)、ヨウ化第一銅(3.35g、17.61mmol、0.1eq)、ピペリジン(44.99g、528.37mmol、52.18mL、3eq)及びジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(6.18g、8.81mmol、0.05eq)を加え、反応系を窒素ガスで3回置換し、得られた溶液を25℃で16時間攪拌した。TLC(PE:EA =10:1)は、反応が完全で且つ1つの新しい主生成物を生成したことを示し、反応液を珪藻土でろ過してろ液を得て、減圧濃縮させた後、残留物を800mL酢酸エチルで溶解した後、順に300mL水と300mL食塩水で洗浄し、そして有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮させ、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=1/0-30/1)により、化合物1-3を得た。H NMR(400MHz,CDCl-d)δ=8.61(d,J=1.8 Hz,1H),7.75(dd,J=2.4,8.4 Hz,1H),7.32-7.28(m,1H),7.32-7.26(m,1H),7.27(s,1H),6.89-6.84(m,2H),4.58(s,2H),4.35(s,2H),3.79-3.76(m,1H),3.77(s,2H)。
【0046】
ステップ3:0℃で、化合物1-3(1g、3.01mmol、1eq)に、得られた溶液を25℃で16時間攪拌した。TLC(PE:EA=2:1)は、反応原料が少し残り且つ1つの新しい主な生成物を生成したことを示す。そして、0℃で攪拌しながら、反応系に32mLのt-ブチルメチルエーテルを徐々に加え、大量の灰白色固体が徐々に析出し、ろ過して乾燥させ、化合物1-4を得た。H NMR(400MHz,CHLOROFORM-d)δ=9.68-9.61(m,1H),7.87-7.79(m,1H),7.45-7.40(m,1H),7.22-7.19(m,2H),6.85-6.77(m,2H),6.76-6.69(m,2H),4.51-4.44(m,2H),4.40-4.32(m,2H),3.78-3.71(m,3H),2.64-2.58(m,6H),2.18-2.13(m,3H)。
【0047】
ステップ4:25℃で、化合物1-4(10g、18.27mmol、1eq)のDMF(160mL)溶液に炭酸銀(10.07g、36.53mmol、1.66mL、2eq)を加え、得られた溶液を40℃で16時間攪拌した。LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、反応液を珪藻土でろ過してろ液を得て、減圧濃縮させた後、残留物を200mL酢酸エチルで溶解した後、順に100mL水と100mL食塩水で洗浄し、そして有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮させ、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=1/0-5/1)により、化合物1-5を得た。H NMR(400MHz,CDCl-d)δ=8.50-8.46(m,1H),8.50-8.46(m,1H),7.34-7.27(m,1H),7.26-7.21(m,2H),7.10-7.06(m,1H),6.84-6.78(m,2H),6.50-6.46(m,1H),4.67-4.60(m,2H),4.51-4.46(m,2H),3.75-3.71(m,3H)。
【0048】
ステップ5:25℃で、化合物1-5(4.7g、13.54mmol、1eq)とtert-ブチル-N-メチルカルバメート(5.33g、40.61mmol、3eq)のDME(30mL)溶液に、炭酸セシウム(8.82g、27.07mmol、2eq)、4,5-ビスジフェニルホスフィン-9,9-ジメチルオキサキサントン(783.26mg、1.35mmol、0.1eq)、及びトリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(619.79mg、676.83μmol、0.05eq)を順に加え、反応系を窒素ガスで3回置換し、得られた溶液を100℃で16時間攪拌し、LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、反応液を珪藻土でろ過してろ液を得て、濾過ケーキを100mL酢酸エチルで洗浄し、合わせた有機相を順に100mL水と100mL食塩水で洗浄し、そして有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮させ、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(シリカ、石油エーテル/酢酸エチル=1/0-20/1)、化合物1-6を得た。MS(ESI)計算値C2227 397、測定値398[M+H]
【0049】
ステップ6:25℃で、窒素の保護下で、化合物1-6(4g、10.06mmol、1eq)のEtOH(60mL)溶液に二酸化白金(933.33mg、4.11mmol、4.08e-1eq)を加え、反応系をHで3回置換し、得られた溶液をH(3MPa)70℃で72時間攪拌した。LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、反応液を珪藻土でろ過してろ液を得て、減圧濃縮させた後、化合物1-7を得た。MS(ESI)計算値C2231 401、測定値402[M+H]H NMR(400MHz,CDCl-d)δ=7.32-7.27(m,2H),6.91-6.85(m,2H),6.07-5.98(m,1H),4.53-4.50(m,2H),4.49-4.46(m,2H),4.32-4.24(m,1H),4.00-3.90(m,1H),3.82-3.79(m,3H),3.82-3.78(m,3H),3.84-3.78(m,3H),3.04-2.93(m,1H),2.88-2.82(m,3H),2.82-2.74(m,1H),2.05-1.89(m,2H),1.52-1.46(m,9H),1.50-1.45(m,9H),1.43-1.35(m,1H)。
【0050】
ステップ7:0℃で、化合物1-7(4g、9.96mmol、1eq)のDCM(40mL)溶液にトリフルオロ酢酸(12.33g、108.10mmol、8.00mL、10.85eq)を加え、得られた溶液を25℃で2時間攪拌し、LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、減圧濃縮させた後、化合物1-8を得た。MS(ESI)計算値C15O 181、測定値182[M+H]
【0051】
ステップ8:25℃で、4-クロロ-7-(p-トルエンスルホニル)ピロロ[2,3-d]ピリミジン(2.9g、9.42mmol、1eq)及び化合物1-8(1.81g、9.99mmol、1.06eq)のDMSO(10mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(9.56g、74.00mmol、12.89mL、7.85eq)を加え、得られた溶液を110℃で16時間攪拌し、LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、反応液を徐々に50mL水に加え、淡褐色の固体が徐々に析出し、ろ過して乾燥させ、化合物1-9を得た。MS(ESI)計算値C2224S 452 、測定値453[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=8.30-8.24(m,1H),8.01-7.95(m,2H),7.66-7.62(m,1H),7.47-7.40(m,2H),6.99-6.93(m,1H),5.99-5.94(m,1H),5.33-5.17(m,1H),4.96-4.89(m,1H),4.37-4.31(m,2H),4.19-4.11(m,1H),4.10-3.99(m,1H),3.27-3.22(m,3H),3.00-2.90(m,1H),2.87-2.75(m,1H),2.39-2.34(m,3H),2.21-2.10(m,1H),2.00-1.90(m,1H)。
【0052】
ステップ9:25℃で、化合物1-9(2g、4.42mmol、1eq)のDCM(20mL)及びMeOH(2mL)の混合溶媒に、二酸化マンガン(5.76g、66.29mmol、15eq)を加え、得られた溶液を65℃で16時間攪拌し、LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、反応液を珪藻土でろ過してろ液を得て、減圧濃縮させた後、化合物1-10を得た。MS(ESI)計算値C2222S 450、測定値451[M+H]
【0053】
ステップ10:25℃で、化合物1-10(2g、4.44mmol、1eq)のEtOH(15mL)溶液に、塩酸ヒドロキシルアミン(370.19mg、5.33mmol、1.2eq)と酢酸ナトリウム(509.83mg、6.22mmol、1.4eq)のHO(5mL)溶液を加え、得られた溶液を25℃で0.5時間攪拌した後、80℃で1.5h攪拌した。LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、反応液を減圧濃縮させた後に残留物を得て、残留物を50mLで希釈し、DCM(50mL×3)で抽出し、合わせた有機相を100mL食塩水で洗浄し、そして有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮させ、化合物1-11を得た。MS(ESI)計算値C2223S 465、測定値466[M+H]
【0054】
ステップ11:25℃で、化合物1-11(1.4g、3.01mmol、1eq)のTHF(15mL)溶液に、2,4,6-トリプロピル-1,3,5,2,4,6-トリオキサトリホスフィン2,4,6-トリオキシド(9.57g、15.04mmol、8.94mL、50%純度、5eq)を加えた。10分間攪拌した後、反応系にトリエチルアミン(4.56g、45.11mmol、6.28mL、15eq)を加えた。得られた溶液を70℃で16時間攪拌し、LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(50mL)を加え、水相をジクロロメタン(100mL×3)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮させ、得られた残留物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=1/0-1/1)により精製し、化合物1-12を得た。H NMR(400MHz,CDCl-d)δ=8.41-8.35(m,1H),8.09-8.04(m,2H),7.53-7.49(m,1H),7.53-7.48(m,1H),7.32-7.28(m,2H),6.71-6.65(m,1H),6.45-6.40(m,1H),5.59-5.48(m,1H),4.53-4.46(m,1H),4.09-4.00(m,1H),3.32-3.28(m,3H),3.13-3.06(m,1H),2.97-2.85(m,1H),2.41-2.37(m,3H),2.19-2.10(m,2H)。
【0055】
ステップ12:25℃で、化合物1-12(2.7g、6.03mmol、1eq)のTHF(20mL)溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリドのテトラヒドロフラン溶液(1M、19.31mL、3.2eq)を加え、得られた溶液を65℃で16時間攪拌し、LCMSは、原料の反応が完全で生成物を生成したことを示し、反応混合物を減圧濃縮させて溶媒を除去した。残留物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性に調節し、ろ過し、そしてキラル分割(キラルカラム:Chiralcel OJ-3 50×4.6mmI.D.,3μm;移動相:A相は超臨界COであり、B相はMEOH(0.05%DEA)である;勾配:B in A from 5%to40%;流速:3mL/min;波長:220nm;カラム温度:35C;背圧:100Bar)により、(R又はS)化合物1-13(保持時間:1.656分間)を得た。MS(ESI)計算値C1515 293、測定値294[M+H]H NMR(400MHz,DMSO-d)δ=12.80-12.56(m,1H),8.43-8.32(m,1H),7.49-7.38(m,1H),7.01-6.88(m,1H),6.88-6.74(m,1H),5.31-5.17(m,1H),4.52-4.36(m,2H),3.45-3.41(m,3H),3.13-3.04(m,1H),3.01-2.91(m,1H),2.38-2.29(m,1H),2.17-2.09(m,1H)。
【0056】
生物活性測定
実験例1:Jak1、Jak2、Jak3、Tyk2 キナーゼの体外活性測定
実験材料
組換えヒト由来JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2プロテアーゼ、主な装置及び試薬はいずれもイギリスのEurofins社より提供される。
実験方法
【0057】
JAK2、JAK3及びTYK2の希釈:20mM 3-(N-モルホリン)プロパンスルホン酸(MOPS)、1mM EDTA、0.01% Brij-35.5%グリセリン、0.1% β-メルカプトエタノール、1mg/mLBSA;JAK1の希釈:20mM TRIS、0.2mM EDTA、0.1% β-メルカプトエタノール、0.01% Brij-35.5%グリセリン。すべての化合物を100%のDMSO溶液に調製して最終測定濃度50倍に達する。測定化合物を3倍の濃度勾配で希釈し、終濃度は10μMから0.001μMまでの計9個の濃度であり、DMSOの検出反応における含有量は2%である。該化合物の作動原液を反応の第一成分として測定孔に添加し、そして以下の詳しい測定形態に従って他の成分を加えた。
JAK1(h)酵素反応
【0058】
JAK1(h)を20mM Tris / HCl pH7.5、0.2mM EDTA、500μM MGEEPLYWSFPAKKK、10mM酢酸マグネシウム及び[γ-33P] -ATP(必要に応じて活性と濃度を決める)とともにインキュベートした。Mg/ATP混合物を添加して反応を開始し、室温で40分間インキュベートした後、0.5%濃度のリン酸を加えて反応を終了した。そして10μL反応物をP30濾過パッドに滴下して4分間以内に0.425%リン酸で3回及びメタノールで1回洗浄し、乾燥させ、シンチレーション計数した。
JAK2(h)酵素反応
【0059】
JAK2(h)を8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、100μM KTFCGTPEYLAPEVRREPRILSEEEQEMFRDFDYIADWC、10mM酢酸マグネシウム及び[γ-33P]-ATP(必要に応じて活性と濃度を決める)とともにインキュベートした。Mg/ATP混合物を添加して反応を開始し、室温で40分間インキュベートした後、0.5%濃度のリン酸を加えて反応を終了した。そして10μL反応物をP30濾過パッドに滴下して4分間以内に0.425%リン酸で3回及びメタノールで1回洗浄し、乾燥させ、シンチレーション計数した。
JAK3(h)酵素反応
【0060】
JAK3(h)を8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、500μM GGEEEEYFELVKKKK、10mM酢酸マグネシウム及び[γ-33P]-ATP(必要に応じて活性と濃度を決める)とともにインキュベートした。Mg/ATP混合物を添加して反応を開始し、室温で40分間インキュベートした後、0.5%濃度のリン酸を加えて反応を終了した。そして10μL反応物をP30濾過パッドに滴下して4分間以内に0.425%リン酸で3回及びメタノールで1回洗浄し、乾燥させ、シンチレーション計数した。
TYK2(h)酵素反応
【0061】
TYK2(h)を8mM MOPS pH 7.0,0.2mM EDTA、250μM GGMEDIYFEFMGGKKK、10mM酢酸マグネシウム及び[γ-33P]-ATP(必要に応じて活性と濃度を決める)とともにインキュベートした。Mg/ATP混合物を添加して反応を開始し、室温で40分間インキュベートした後、0.5%濃度のリン酸を加えて反応を終了した。そして10μL反応物をP30濾過パッドに滴下して4分間以内に0.425%リン酸で3回及びメタノールで1回洗浄し、乾燥させ、シンチレーション計数した。
データ分析
IC50結果はIDBS社のXLFIT5(205公式)により分析したものであり、具体的に表1に示された。
【0062】
【表1】
【0063】
結論:本発明の化合物はキナーゼの4つのサブタイプJAK1、JAK2、JAk3及びTYK2の体外活性測定において、JAK1及び/又はJAK2に対する良好な選択性阻害を示す。
【0064】
実験例2:浸透性試験
実験材料
転送緩衝液はHBSS(Hank’s平衡塩溶液)と10mm HEPES[N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N′-(2-エタンスルホン酸)溶液]であり、pH値は7.40±0.05である;Caco-2細胞はATCCから購入される。
実験方法
【0065】
Caco-2細胞を1×10細胞/cmでポリエチレン膜(PET)の96孔BD挿入板に接種し、21~28日目まで、4~5日毎に1回培地を更新し、融合細胞単層を形成した。試験化合物は2μMで双方向試験を行い、二重孔を設けた。ジゴキシン双方向10μM、ナドロール及びメトプロロール双方向2μM。最終DMSO濃度を1%未満に調整した。培養プレートを37±1℃のCO培養箱で2時間培養し、飽和湿度で5%濃度のCOで培養し、揺れないようにした。すべてのサンプルを内部標準を含むアセトニトリルと混合した後、4000回転/分で10分間遠心し、そして100μLの蒸留水で100μLの上澄み液を希釈してLC/MS/MS分析を行った。LC/MS/MS方法により、分析物/内部標準物のピーク面積比で、供試品の初期溶液、供試品溶液及び供試品溶液における供試品と対照品の濃度を定量した。転送試験後、蛍光素黄反発反応法でCaco-2細胞の単層完全性を測定し、見かけ浸透係数及び排出率を計算した。
実験結果
実験結果は表2-1に示された。
【0066】
【表2-1】

結論:本発明の化合物は特徴的な高浸透性を有し、良好な標的組織濃度及び経口生物学的利用能の実現に有利である。
注:ND:検出されず。
【0067】
実験例3:薬物動態学(PK)試験
【0068】
試験化合物を溶解した後に得られた清澄溶液をそれぞれ尾静脈注射及び胃内投与により雄マウス(C57BL/6)又はラット(SD)体内(一晩断食、7~8週齢)に投与した。被験化合物を投与した後、静脈注射群(1mg/kg)を0.117、0.333、1,2、4、7及び24時間に、胃内投与群(3mg/kg)を0.25、0.5、1、2、4、8及び24時間に、それぞれ下顎静脈から採血して遠心した後に血漿を得た。LC-MS/MS法で薬の血中濃度を測定し、WinNonlin(商標) Version 6.3薬物動態学ソフトで、非房室モデル線形対数台形法で関連薬物動態学パラメーターを計算した。測定結果は以下の通りである。
【0069】
【表3-1】

注:T1/2:半減期;Cmax:ピーク濃度;
AUC0-inf:0時間から無限大まで推定するときの血漿濃度-時間曲線下面積;
Bioavailability:生物学的利用能。
結論:本発明の化合物はマウスにおいて良好な経口生物学的利用能、高い暴露量を有し、良好な体内薬効の発生に有利である。
【0070】
実験例4:ラットアジュバントに誘導される関節炎(AIA)の体内薬効研究
実験過程:
ラットアジュバント関節炎モデルを用いて本発明の化合物の関節炎治療作用を検証した。雌、体重160~180グラムのLewisラットをイソフルランで麻酔した後、左後足に0.1mlの結核マイコバクテリア懸濁液を皮下注射した。モデリング13日後にグループに分けて対応する被験化合物を投与し、例えば、ラットにそれぞれ異なる投与量を投与し(具体的な投与量は表4-2に示され、被験化合物1~13を[5%DMSO、95%(12% SBE-β-CD)、0.5%MC)]混合溶媒に溶解し、一日2回、雌Lewisラット(各投与量群の被験動物数は8である)に経口投与した。2週間連続投与し、その間にラットの状態を観察し、足体積の腫脹状況を記録して採点し、採点基準は表4-1に示された。
【0071】
【表4-1】

実験結果:
【0072】
化合物1-13の2つの投与量治療群は、動物の発病による体重低下傾向に対して有意な緩和効果を有し、且つ低、中の投与量群(3mg/kgと10mg/kg)は20日から溶媒対照群と比較して有意な差異が現れ、良好な体重回復効果を示した。化合物1-13は、関節炎の臨床点数と足体積の上昇を抑制し、且つこの抑制効果は用量依存性を呈する。化合物1-13 10mg/kgの効果は最も有意である(15日から、溶媒対照群と比較して有意な差異がある)。この群の平均関節炎の臨床点数は13日目のピーク値6点から、実験終点である27日目の1.4点まで低下し、且つ溶媒対照群と比較して有意な差異がある。
【0073】
【表4-2】
【0074】
結論:本発明の化合物1-13は投与量(3mg/kgと10mg/kg)において有意な治療効果を示し(阻害率は溶媒対照群に比べてP<0.0001である)、且つ本発明の化合物1-13は良好な投与量(3mg/kgと10mg/kg)効果の正の相関性を示した。
本開示は以下の態様<1>~<10>も含む。
<1>
式(I)で表される化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【化15】


(ただし、
はCH又はNであり、
は単結合、O又はCH であり、
はH又はC 1-3 アルキル基であり、ただし、前記C 1-3 アルキル基は1、2又は3つのR により任意に置換され、
はH又はC 1-3 アルキル基であり、ただし、前記C 1-3 アルキル基は1、2又は3つのR により任意に置換され、
はH、F、Cl、Br、I、CN及びC 1-3 アルキル基から選択され、ただし、前記C 1-3 アルキル基は1、2又は3つのR により任意に置換され、
、R 及びR はそれぞれ独立してF、Cl、Br、I及びNH から選択される。)
<2>
はH又はCH である<1>に記載の化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩。
<3>
はH又はCH である<1>に記載の化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩。
<4>
はH、F、Cl、Br、I及びCNから選択される<1>に記載の化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩。
<5>
はCNから選択される<4>に記載の化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩。
<6>
化合物が下記式から選択される<1>~<5>のいずれか一つに記載の化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【化16】



(ただし、R 、R 及びR は<1>~<5>のいずれか一つに定義される通りである。)
<7>
下記の化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【化17】

<8>
下記から選択される<7>に記載の化合物、その異性体又はその薬学的に許容できる塩。
【化18】

<9>
JAK1及び/又はJAK2関連疾患を治療する薬物の調製における、<1>~<8>のいずれか一つに記載の化合物又はその薬学的に許容できる塩の使用。
<10>
前記薬物はリウマチ性関節炎を治療する薬物であることを特徴とする<9>に記載の使用。