(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ソナー、超音波振動子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20230413BHJP
G01S 7/521 20060101ALI20230413BHJP
G01S 15/96 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
G01S7/521 A
G01S15/96
H04R17/00 330J
(21)【出願番号】P 2019035191
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】流田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐野 修一
(72)【発明者】
【氏名】大窪 良延
(72)【発明者】
【氏名】山本 重雄
(72)【発明者】
【氏名】舞田 雄一
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-035388(JP,A)
【文献】特表平11-512887(JP,A)
【文献】特開昭62-232299(JP,A)
【文献】特開2000-022474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
G01S 7/521
G01S 15/96
H01L 41/08-41/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する超音波振動子と、前記超音波振動子の中心軸を傾斜及び回転させる機構とを有するソナーであって、
前記超音波振動子は、音響整合層を兼ねる基材と、分割された複数の振動部により構成され、かつ前記基材に対して接合された前面及びその反対側にある背面を有するセラミックス製板状物からなる圧電素子とを備え、
前記圧電素子の前記背面上に、導電メッシュが前記背面の全域に亘って配置されるとともに、
前記導電メッシュは、縦横のワイヤが編み込まれることにより網目を構成するとともに、厚さ方向に起伏した形状を有し、
前記
縦横のワイヤ同士の交差部と前
記振動部の端面
とが接触した状態で
、前記導電メッシュが接合材を介して
前記圧電素子に接合されている
ことを特徴とするソナー。
【請求項2】
前記導電メッシュは、平織りの金網であることを特徴とする請求項1に記載のソナー。
【請求項3】
前記接合材は、前記導電メッシュにおける
前記網目の隙間及び前記複数の振動部間の空隙の双方に入り込んだ状態で固化することにより、前記導電メッシュを前記複数の振動部の端面に接合させていることを特徴とする請求項1または2に記載のソナー。
【請求項4】
前記複数の振動部は、前記圧電素子の厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のソナー。
【請求項5】
前記複数の振動部が、前記圧電素子の前記前面側の端部において互いに繋がっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のソナー。
【請求項6】
前記導電メッシュの
前記網目の寸法は、前記振動部を前記圧電素子の厚さ方向から見たときの最大寸法よりも細かいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のソナー。
【請求項7】
前記圧電素子の前記前面が前面側電極層を介して前記基材に接合され、前記前面側電極層は、均一な厚さのプレーン電極層であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のソナー。
【請求項8】
超音波を送受信する超音波振動子であって、
音響整合層を兼ねる基材と、
分割された複数の振動部により構成され、かつ前記基材に対して接合された前面及びその反対側にある背面を有するセラミックス製板状物からなる圧電素子と
を備え、
前記圧電素子の前記背面上に、導電メッシュが前記背面の全域に亘って配置されるとともに、
前記導電メッシュは、縦横のワイヤが編み込まれることにより網目を構成するとともに、厚さ方向に起伏した形状を有し、
前記
縦横のワイヤ同士の交差部と前
記振動部の端面
とが接触した状態で
、前記導電メッシュが接合材を介して
前記圧電素子に接合されている
ことを特徴とする超音波振動子。
【請求項9】
請求項8に記載の超音波振動子の製造方法であって、
前記基材の片面に、前記圧電素子となるべきセラミックス製板状物を接合する接合工程と、
前記接合工程後、前記セラミックス製板状物における前記背面側に複数の切り込みを形成することにより、前記前面側の端部において互いに繋がった状態で前記セラミックス製板状物を前記複数の振動部に分割する振動部形成工程と、
前記振動部形成工程後、前記圧電素子の前記背面上に導電メッシュを前記複数の振動部の端面に接触させるようにして配置し、この状態で接合材を介して前記導電メッシュを接合するメッシュ設置工程と
を含むことを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して魚群などの被探知物を探知するソナー、ソナーに好適な超音波振動子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波の送受信によって魚群などの被探知物を探知するソナーが知られている(例えば、特許文献1参照)。ソナーは、超音波を送受信する超音波振動子と、超音波振動子の中心軸を傾斜及び回転させる機構とを有しており、超音波振動子を回転させながら超音波の送受信を行うことにより、水中を探知するようになっている。そして、水中を探知した探知結果は、探知画像として画面に表示される。なお、超音波振動子は、一般的に、円板状の圧電素子と、圧電素子の照射面に接合された音響整合層とを備えている。
【0003】
ところで、ソナーにおいて、より遠い距離の被探知物を探知したいという需要がある。このためには、超音波振動子を高感度にすることが必要である。また、超音波振動子を高電圧で駆動することにより、送波音圧を高める必要もある。なお、超音波振動子を高感度にする手法としては、
図21,
図22に示されるように、超音波振動子101を構成する圧電素子102を、分割された複数の柱部103により構成し、かつ隣接する柱部103間に樹脂材料104を充填したコンポジット構造にすることが提案されている(例えば、特許文献2~4参照)。このようにすれば、振動部である各柱部103のそれぞれが変形しやすくなるため、圧電素子102が各部位において変形しやすくなる。つまり、圧電素子102が振動しやすくなるため、超音波振動子101の感度が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5979537号公報(請求項1、
図4等)
【文献】特開2018-113279号公報(
図1,
図4等)
【文献】WO2011/083611号公報(
図3等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波振動子101から超音波を送受信するためには、圧電素子102の両面側に電極105を形成し、両電極105間に電圧を印加することが必要である。ところが、特許文献2~4のようなコンポジット構造の超音波振動子101を用いたとしても、水深500m以上といった距離にいる魚群からの反射を捉えるためには、超音波振動子101を1.5kV程度の高電圧で駆動する必要がある。しかし、特許文献2~4のような従来の構造では、超音波振動子101を1.5kVで長期間に亘って連続駆動させると、電極105が損傷して圧電素子102から剥離してしまい、感度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電素子と電極部分との接合強度を高めることにより、感度低下を防止することができるソナー及び超音波振動子を提供することにある。また、別の目的は、作りやすく、歩留まりが高い超音波振動子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、超音波を送受信する超音波振動子と、前記超音波振動子の中心軸を傾斜及び回転させる機構とを有するソナーであって、前記超音波振動子は、音響整合層を兼ねる基材と、分割された複数の振動部により構成され、かつ前記基材に対して接合された前面及びその反対側にある背面を有するセラミックス製板状物からなる圧電素子とを備え、前記圧電素子の前記背面上に、導電メッシュが前記背面の全域に亘って配置されるとともに、前記導電メッシュは、縦横のワイヤが編み込まれることにより網目を構成するとともに、厚さ方向に起伏した形状を有し、前記縦横のワイヤ同士の交差部と前記振動部の端面とが接触した状態で、前記導電メッシュが接合材を介して前記圧電素子に接合されていることを特徴とするソナーをその要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に記載の発明によると、電極部分である導電メッシュと圧電素子との間に接合材が介在するのに加えて、接合材が導電メッシュの孔部にも入り込むことにより、導電メッシュが圧電素子に接合される。その結果、圧電素子と導電メッシュとの接合強度が高くなるため、たとえ超音波振動子を長期間に亘って連続駆動させたとしても、圧電素子から導電メッシュが剥離しにくくなる。よって、超音波振動子の感度低下を防止することができる。
【0009】
なお、接合材としては、接合力が比較的強固なエポキシ系接着剤等の接着剤を用いることができる。なお、接着剤を用いる代わりに、はんだ等のロウ材を用いてもよい。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記導電メッシュは、平織りの金網であることをその要旨とする。
【0011】
従って、請求項2に記載の発明によると、導電メッシュの網目を構成する縦横のワイヤが編み込まれることにより、ワイヤが上下に起伏した形状となる。その結果、縦横のワイヤ同士の交差部と振動部の端面との接触圧が大きくなるため、導電メッシュを確実に電極として機能させることができる。また、導電メッシュには、細かい網目が密集しているため、網目の隙間に接合材が入り込みやすい。従って、圧電素子と導電メッシュとの接合強度がよりいっそう高くなる。なお、導電メッシュの形成材料としては、銅や銀などの電気抵抗が小さい金属線材を挙げることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記接合材は、前記導電メッシュにおける前記網目の隙間及び前記複数の振動部間の空隙の双方に入り込んだ状態で固化することにより、前記導電メッシュを前記複数の振動部の端面に接合させていることをその要旨とする。
【0013】
従って、請求項3に記載の発明によると、接合材が、導電メッシュにおける網目の隙間及び複数の振動部間の空隙の双方に入り込むことによって得られるアンカー効果により、圧電素子と導電メッシュとの接合強度がよりいっそう高くなる。その結果、圧電素子からの導電メッシュの剥離が確実に防止されるため、超音波振動子の信頼性が飛躍的に向上する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記複数の振動部は、前記圧電素子の厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部であることをその要旨とする。
【0015】
従って、請求項4に記載の発明によると、複数の振動部が、圧電素子の厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部であるため、各柱部のそれぞれが高さ方向に変形しやすくなる。その結果、圧電素子が各部位において厚さ方向に変形しやすくなり、圧電素子が振動しやすくなるため、圧電素子の背面上に導電メッシュを配置したとしても、導電メッシュが剥離しやすくなる。そこで、導電メッシュを接合材を介して圧電素子の背面に接合することにより、導電メッシュの剥離を確実に防止することができる。なお、本明細書では、「柱部」を、振動部を圧電素子の厚さ方向から見たときの最大寸法が振動部の高さ以下となるものと定義する。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4において、前記複数の振動部が、前記圧電素子の前記前面側の端部において互いに繋がっていることをその要旨とする。
【0017】
従って、請求項5に記載の発明によると、圧電素子を複数の振動部に分割した構成であっても、圧電素子の前面側の端部において振動部同士が繋がる部分の厚さが確保される。従って、圧電素子の強度を確保することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5において、前記導電メッシュの前記網目の寸法は、前記振動部を前記圧電素子の厚さ方向から見たときの最大寸法よりも細かいことをその要旨とする。
【0019】
従って、請求項6に記載の発明によると、導電メッシュの網目を構成するワイヤが、各振動部の端面の1つ1つに確実に接触する。つまり、個々の端面内に、接触点が複数存在することとなる。従って、導電メッシュを圧電素子に接合させることにより、導電メッシュが、確実に各振動部の端面の共通電極となる。
【0020】
ここで、振動部の端面の形状としては、平面視多角形状や平面視円形状などを挙げることができる。振動部が、例えば平面視四角形状や平面視六角形状に代表される平面視多角形状をなす場合、振動部を厚さ方向から見たときの最大寸法は、振動部の端面(背面)の対角線の長さとなる。また、振動部が平面視円形状をなす場合、振動部を厚さ方向から見たときの最大寸法は、振動部の端面の直径の大きさとなる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項において、前記圧電素子の前記前面が前面側電極層を介して前記基材に接合され、前記前面側電極層は、均一な厚さのプレーン電極層であることをその要旨とする。
【0022】
従って、請求項7に記載の発明によると、前面側電極層がプレーン電極層であるため、圧電素子と前面側電極層との接触面積が大きくなるとともに、前面側電極層と基材との接触面積が大きくなる。よって、圧電素子と基材との接合強度が向上する。
【0023】
なお、基材は、固有音響インピーダンス、超音波の周波数、機械的強度等を考慮して適宜選択することができる。基材の好適な形成材料としては、例えば、ガラスエポキシ(FR-4)、ガラスエポキシ(CEM-3)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ジュラトロン(QUADRANTグループの登録商標)、フルオロシント(QUADRANTグループの登録商標)、アルミナの多孔体などを挙げることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、超音波を送受信する超音波振動子であって、音響整合層を兼ねる基材と、分割された複数の振動部により構成され、かつ前記基材に対して接合された前面及びその反対側にある背面を有するセラミックス製板状物からなる圧電素子とを備え、前記圧電素子の前記背面上に、導電メッシュが前記背面の全域に亘って配置されるとともに、前記導電メッシュは、縦横のワイヤが編み込まれることにより網目を構成するとともに、厚さ方向に起伏した形状を有し、前記縦横のワイヤ同士の交差部と前記振動部の端面とが接触した状態で、前記導電メッシュが接合材を介して前記圧電素子に接合されていることを特徴とする超音波振動子をその要旨とする。
【0025】
従って、請求項8に記載の発明によると、電極部分である導電メッシュと圧電素子との間に接合材が介在するのに加えて、接合材が導電メッシュの孔部にも入り込むことにより、導電メッシュが圧電素子に接合される。その結果、圧電素子と導電メッシュとの接合強度が高くなるため、たとえ超音波振動子を長期間に亘って連続駆動させたとしても、圧電素子から導電メッシュが剥離しにくくなる。よって、超音波振動子の感度低下を防止することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の超音波振動子の製造方法であって、前記基材の片面に、前記圧電素子となるべきセラミックス製板状物を接合する接合工程と、前記接合工程後、前記セラミックス製板状物における前記背面側に複数の切り込みを形成することにより、前記前面側の端部において互いに繋がった状態で前記セラミックス製板状物を前記複数の振動部に分割する振動部形成工程と、前記振動部形成工程後、前記圧電素子の前記背面上に導電メッシュを前記複数の振動部の端面に接触させるようにして配置し、この状態で接合材を介して前記導電メッシュを接合するメッシュ設置工程とを含むことを特徴とする超音波振動子の製造方法をその要旨とする。
【0027】
従って、請求項9に記載の発明によると、セラミックス製板状物に切り込みを形成する前に、セラミックス製板状物を基材に接合するため、振動部形成工程を行う際には基材がセラミックス製板状物の「支持体」となる。その結果、切り込みを形成したとしてもセラミックス製板状物が破損しにくくなる。また、セラミックス製板状物のかなり深い位置まで切り込みを形成することができる。さらに、切り込みを形成することによってセラミックス製板状物の背面が分割された後に、導電メッシュを各振動部の端面に接触させるように配置するメッシュ設置工程を行うため、導電メッシュを配置するだけで、複数の端面と容易にコンタクトをとることができる。さらに、メッシュ設置工程において、接合材を介して導電メッシュを圧電素子に接合する際には、接合材が、導電メッシュにおける網目の隙間及び複数の振動部間の空隙の双方に入り込みやすくなるため、圧電素子と導電メッシュの接合強度が高くなる。しかも、接合材が各振動部間の空隙に入り込むことにより、振動部同士が接合材によって破損しにくくなるように支持される。つまり、切り込みを形成しやすくなるとともに導電メッシュを接合しやすくなるため、超音波振動子を作りやすくなる。また、超音波振動子を作りやすくなるとともに破損しにくくなることで不良品の発生率が低下するため、超音波振動子の歩留まりも高くなる。
【発明の効果】
【0028】
以上詳述したように、請求項1~8に記載の発明によると、圧電素子と電極部分との接合強度を高めることにより、超音波振動子の感度低下を防止することができる。また、請求項9に記載の発明によると、作りやすく、歩留まりが高い超音波振動子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態のソナーが搭載された船舶を示す説明図。
【
図2】ソナー、昇降装置及び液晶モニターを示す概略構成図。
【
図5】ケースに収容した状態の超音波振動子を示す概略断面図。
【
図11】(a)は伸長時の柱部を示す断面図、(b)は収縮時の柱部を示す断面図。
【
図12】超音波振動子の連続駆動による静電容量の変化を示すグラフ。
【
図13】超音波振動子の連続駆動による送受感度積の変化を示すグラフ。
【
図14】比較例1において、ランニング試験による感度変化を示すグラフ。
【
図15】1-3コンポジット構造の圧電素子を示す概略斜視図。
【
図16】2-2コンポジット構造の圧電素子を示す概略斜視図。
【
図17】他の実施形態における超音波振動子を示す要部断面図。
【
図19】他の実施形態における超音波振動子を示す概略平面図。
【
図20】他の実施形態において、ケースに収容した状態の超音波振動子を示す概略断面図。
【
図21】従来技術における圧電素子を示す要部平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0031】
図1に示されるように、本実施形態のソナー11は、船舶10の船底部に搭載されて使用される。ソナー11は、水中に超音波W1を照射することにより、水中に存在する魚群などの被探知物S1を探知する装置である。また、
図2に示されるように、ソナー11は昇降装置12に取り付けられている。昇降装置12は、ソナー11を昇降させることにより、船底から水中に対してソナー11を出没させる装置である。さらに、ソナー11及び昇降装置12には、液晶モニター13が電気的に接続されている。液晶モニター13は、船舶10の操舵室内に設置されており、操作部14及び表示部15を有している。
【0032】
図3,
図4に示されるように、ソナー11はソナードーム20を備えている。ソナードーム20は、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)などの樹脂材料を用いて形成されており、上ケース21、下ケース22及び蓋体23によって構成されている。上ケース21は、下端にて開口する有底円筒状のケースであり、下ケース22は、上端にて開口する有底円筒状のケースである。なお、下ケース22の下端部はドーム状(半球状)をなしている。また、蓋体23は、円板状をなし、上ケース21の下端側開口及び下ケース22の上端側開口を閉塞するためのものである。なお、蓋体23と上ケース21とによって上側収容空間24が形成されるとともに、蓋体23と下ケース22とによって下側収容空間25が形成される。
【0033】
また、ソナードーム20には、超音波W1を送受信する超音波振動子41と、超音波振動子41の中心軸O1を傾斜及び回転させる傾斜回転機構30とが収容されている。傾斜回転機構30は、スキャンモータ31、チルトモータ32、及び、超音波振動子41を収容するケース40等を備えている。スキャンモータ31は、上側収容空間24内において蓋体23の中央部に設置されている。本実施形態のスキャンモータ31としては、ステッピングモータが用いられている。そして、スキャンモータ31の出力軸31aは、蓋体23の中央部に設けられた貫通孔33を挿通し、下側収容空間25内に突出している。さらに、出力軸31aの先端は、円板状をなす支持板34の中央部に接続され、支持板34の下面には支持フレーム35が取り付けられている。支持フレーム35は、一対の腕部35aを有するコ字状をなしている。
【0034】
また、
図3,
図4に示されるように、ケース40は、ABS樹脂などの樹脂材料を用いて一端が開口する有底円筒状に形成されており、支持フレーム35の両腕部35a間を繋ぐ回転軸36に取り付けられている。よって、スキャンモータ31の出力軸31aが回転すると、支持板34、支持フレーム35、ケース40及び超音波振動子41(の中心軸O1)は、出力軸31aを中心として回転する。これに伴い、超音波振動子41から出力される超音波W1の照射方向は、出力軸31aの周方向に沿って変化する。
【0035】
また、チルトモータ32は、支持フレーム35の上端部に取り付けられている。本実施形態のチルトモータ32としては、ステッピングモータが用いられている。チルトモータ32の出力軸32aは、回転軸36と平行に配置されており、その先端部にはピニオンギヤ32bが取り付けられている。ピニオンギヤ32bは、ケース40に取り付けられた略半円状のチルト歯車37に噛合している。よって、チルトモータ32の出力軸32aが回転すると、ピニオンギヤ32b及びチルト歯車37が回動するのに伴い、ケース40及び超音波振動子41(の中心軸O1)が回転軸36を中心として傾斜(回転)する。これに伴い、超音波振動子41から出力される超音波W1の照射角度も、超音波振動子41の回転に伴って変化する。
【0036】
図5~
図7に示されるように、超音波振動子41は、基材42及び圧電素子43を備えている。基材42は、音響整合層を兼ねる材料であるガラスエポキシ(FR-4)を用いて形成された樹脂製板状物であり、厚さt2(
図7参照)が3.0mmの円板状をなしている。また、基材42の固有音響インピーダンスは、2.3×10
6(Pa・s/m)以上14×10
6(Pa・s/m)以下、好ましくは3×10
6(Pa・s/m)以上9×10
6(Pa・s/m)以下となっている。このようにすれば、基材42と圧電素子43との境界部分での超音波W1の透過率が高まるため、超音波振動子41の送受感度がより高くなる。
【0037】
そして、
図6,
図7に示されるように、基材42の外周部には4つの張出部44が設けられ、各張出部44にはそれぞれネジ孔45が設けられている。各ネジ孔45は、超音波振動子41の中心軸O1を基準として等角度間隔で配置されている。そして、各ネジ孔45にネジ(図示略)を挿通させ、挿通したネジの先端部をケース40に螺着させる。その結果、超音波振動子41がケース40に固定される(
図5参照)。
【0038】
また、圧電素子43は、例えば、圧電セラミックスであるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いて形成されたセラミックス製板状物であり、固有音響インピーダンスが32×10
6(Pa・s/m)となっている。この圧電素子43は、厚さt1(
図7参照)が7.2mmの円板状をなしている。なお、圧電素子43の外径は基材42の外径よりも小さいため、圧電素子43の面積は基材42の面積よりも小さくなる。また、圧電素子43は、基材42に対して接合された前面51と、前面51の反対側にある背面52と、前面51及び背面52に直交する外周面53とを有している。さらに、
図5,
図8に示されるように、圧電素子43の前面51には前面側電極層54が形成され、圧電素子43の背面52には背面側電極層55が形成されている。なお、本実施形態では、圧電素子43の前面51の全体が、前面側電極層54及び接着層56(
図8参照)を介して基材42に接合されており、前面側電極層54は、均一な厚さのプレーン電極層である。
【0039】
図5~
図9に示されるように、圧電素子43は、同圧電素子43の厚さ方向に沿って延びるように分割された複数の柱部57(振動部)により構成されている。各柱部57は、複数の第1切り込みK1と、各第1切り込みK1に直交する複数の第2切り込みK2とを、圧電素子43における背面52に形成することにより構成される。本実施形態では、各第1切り込みK1が互いに平行に配置されるとともに、各第2切り込みK2も互いに平行に配置されている。よって、各柱部57のうち、外周面53を構成しない柱部57は、正四角柱状に形成される。また、各柱部57は、X方向(
図6参照)に沿って一直線上に配置されるとともに、Y方向(
図6参照)に沿っても一直線上に配置されている。
【0040】
また、各柱部57は、圧電素子43の前面51側の端部において互いに繋がっている。柱部57の高さH1(厚さ)は、切り込みK1,K2の深さと等しくなっている。ここで、高さH1は、6.7mmであり、圧電素子43の厚さt1(7.2mm)の約93%(≒6.7/7.2×100)である。よって、上述した基材42の厚さt2(3.0mm)は、柱部57の高さH1よりも小さくなっている。さらに、圧電素子43において柱部57同士が繋がる部分の厚さH2は、t1-H1の式から算出される値であり、基材42の厚さt2よりも小さくなっている。
【0041】
図6~
図9に示されるように、柱部57の先端面58(背面52)は、平面視正方形状をなしており、先端面58を構成する各辺の長さL1,L2は、互いに等しく、それぞれ2.4mmとなっている。なお、上述した切り込みK1,K2の幅は、互いに等しく、長さL1,L2の100%以下、好ましくは17%以上30%以下となる。また、先端面58の対角線の長さは約3.39mmとなり、この対角線の長さが、柱部57を厚さ方向から見たときの最大寸法L3(
図9参照)となる。なお、最大寸法L3は、柱部57の高さH1の80%以下、好ましくは60%以下(本実施形態では約51%(≒3.39/6.7×100))となる。この場合、柱部57の撓み振動が小さくなるため、各柱部57を、圧電素子43の厚さ方向に沿って振動させやすくなる。さらに、各柱部57の先端面58の面積の合計は、圧電素子43の前面51(背面52)の面積の25%以上80%以下、60%以上80%以下となっている。
【0042】
さらに、本実施形態の圧電素子43は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって形成されており、感度が最大となる超音波W1の中心周波数が160kHz以上200kHz以下、周波数帯域幅と中心周波数との比(比帯域)が27%以上52%以下となっている。そして、本実施形態では、圧電素子43内を伝搬する縦波(超音波W1)の音速c1(4160m/s)、基材42内を伝搬する縦波(超音波W1)の音速c2(2460m/s)、圧電素子43の厚さt1(7.2mm)、基材42の厚さt2(3.0mm)が、(c2×t1)/(c1×t2)=0.8以上1.7以下の関係を満たしている。このようにすれば、超音波W1の比帯域を広くすることができ、超音波振動子41の感度も高くなる。
【0043】
図5,
図6,
図8,
図9に示されるように、圧電素子43の背面52上には、銅メッシュ91(導電メッシュ)が背面52の全域に亘って配置されている。本実施形態の銅メッシュ91は、平織りの金網であり、複数の網目92により構成されている。各網目92は、平面視正方形状をなしており、一対の第1ワイヤ93と、両第1ワイヤ93に直交する一対の第2ワイヤ94とによって構成されている。各第1ワイヤ93は、X方向(
図6参照)に沿って延びる銅線であり、互いに平行に配置されている。また、隣接する第1ワイヤ93間のピッチp1(
図9参照)は、隣接する第1切り込みK1間のピッチP1の3分の1以下であって、先端面58を構成する辺の長さL1(2.4mm)の5分の1程度である。同様に、各第2ワイヤ94も、Y方向(
図6参照)に沿って延びる銅線であり、互いに平行に配置されている。また、隣接する第2ワイヤ94間のピッチp2(
図9参照)は、隣接する第2切り込みK2間のピッチP2の3分の1以下であって、先端面58を構成する辺の長さL2(2.4mm)の5分の1程度である。よって、網目92の寸法(ピッチp1,p2)は、互いに等しく、かつ柱部57を厚さ方向から見たときの最大寸法L3(約3.39mm)よりも細かくなっている。また、各網目92の隙間の面積の合計は、圧電素子43の背面52(前面51)の面積の10%以上30%以下となっている。
【0044】
図8に示されるように、銅メッシュ91は、縦横のワイヤ93,94が編み込まれることにより、ワイヤ93,94が上下に起伏した形状となっている。よって、銅メッシュ91は、第1ワイヤ93と第2ワイヤ94との交差部A1(
図9参照)が各柱部57の先端面58に接触した状態で、接合材90(本実施形態ではエポキシ系接着剤)を介して背面52上の背面側電極層55に接合されている。また、接合材90は、銅メッシュ91における網目92の隙間と、各柱部57間の空隙K0(切り込みK1,K2)の一部(圧電素子43の背面52側開口部)との双方に入り込んだ状態で固化することにより、銅メッシュ91を各柱部57の先端面58に接合させている。その結果、各柱部57の先端面58にある背面側電極層55の1つ1つに対して、複数(本実施形態では36個)の交差部A1が確実に接触するため、銅メッシュ91の接合により、銅メッシュ91は、各柱部57の先端面58の共通電極となる。
【0045】
そして、
図5に示されるように、前面側電極層54には第1のリード線62が接続され、銅メッシュ91には第2のリード線63が接続されている。第1のリード線62は、前面電極層54から外側に延出された側面端子(図示略)に対してはんだ付けなどにより接続されている。第2のリード線63は、銅メッシュ91の外周部に対してはんだ付けなどにより接続されている。そして、第1のリード線62及び第2のリード線63は、配線チューブ64によって結束され、ケース40外に引き出される。なお、第1のリード線62は側面端子に接続されているが、前面側電極層54上または基材42の表面42aに銅箔等の金属箔(図示略)を貼付し、金属箔に対して第1のリード線62をはんだ付けなどにより接続してもよい。また、銅メッシュ91の上には、シート状の防音材65(バッキング材)が貼付されている。防音材65は、残響を抑えるためのものであり、ケース40の内周面にも貼付されている。なお、防音材65としては、樹脂材料やゴムに対して、金属やセラミックスからなる粒子または繊維を含有させたものや、樹脂材料に対して空孔を分散的に設けたもの(スポンジなど)を用いることができる。
【0046】
そして、
図3,
図4に示されるソナードーム20内には、超音波W1を伝搬させる超音波伝搬液体(図示略)が充填されている。また、超音波伝搬液体の一部は、ケース40に設けられた液体通路(図示略)を介してケース40内に流入し、圧電素子43において隣接する柱部57間の空隙K0(切り込みK1,K2)に流入し、空隙K0を満たしている。なお、本実施形態の超音波伝搬液体は、流動パラフィンであり、固有音響インピーダンスが1.2×10
6(Pa・s/m)となっている。よって、上述した基材42の固有音響インピーダンス(2.3~14×10
6(Pa・s/m))は、圧電素子43の固有音響インピーダンス(32×10
6(Pa・s/m))よりも小さく、かつ超音波伝搬液体の固有音響インピーダンスや水の固有音響インピーダンス(1.5×10
6(Pa・s/m))よりも大きくなっている。
【0047】
次に、ソナー11の電気的構成について説明する。
【0048】
図10に示されるように、ソナー11の液晶モニター13は、装置全体を統括的に制御する制御装置70を備えている。制御装置70は、CPU71、ROM72、RAM73等からなる周知のコンピュータにより構成されている。
【0049】
CPU71は、モータドライバ81を介してスキャンモータ31及びチルトモータ32に電気的に接続されており、各種の駆動信号によってそれらを制御する。また、CPU71は、送受信回路82を介して超音波振動子41に電気的に接続されている。送受信回路82は、超音波振動子41に対して発振信号を出力して、超音波振動子41を駆動させるようになっている。その結果、超音波振動子41は、超音波W1を水中に向けて照射(送信)する。また、送受信回路82には、超音波振動子41で受信した超音波W1(反射波W2)を示す電気信号が入力されるようになっている。さらに、CPU71は、昇降装置12、操作部14、表示部15及びGPS(Global Positioning System )受信部83に対してそれぞれ電気的に接続されている。
【0050】
そして、
図10に示されるCPU71は、送受信回路82に対して超音波振動子41から超音波W1を照射させる制御を行うとともに、昇降装置12を駆動させる制御を行う。CPU71は、モータドライバ81に対してスキャンモータ31及びチルトモータ32をそれぞれ駆動させる制御を行う。CPU71には、GPS受信部83によって受信された船舶10の位置情報が入力される。
【0051】
また、CPU71は、超音波振動子41が反射波W2を受信したことを契機として生成される受信信号を、送受信回路82を介して受信する。そして、CPU71は、受信した受信信号に基づいて探知画像データを生成し、生成した探知画像データをRAM73に記憶させる。CPU71は、RAM73に記憶された探知画像データに基づいて、探知画像を表示部15に表示させる制御を行う。
【0052】
次に、ソナー11を用いて被探知物S1を探知する方法を説明する。
【0053】
まず、ソナー11、昇降装置12及び液晶モニター13の電源(図示略)をオンする。このとき、制御装置70のCPU71には、GPS受信部83から船舶10の位置を示す位置情報が入力される。次に、CPU71は、送受信回路82から超音波振動子41に対して発振信号を出力させる制御を行い、超音波振動子41を駆動させる。このとき、圧電素子43の各柱部57は、収縮(
図11(b)参照)と伸長(
図11(a)参照)とを繰り返す。なお、柱部57が高さ方向に収縮した際には、柱部57が幅方向、具体的には、柱部57の外周側(
図11(b)の矢印F1参照)に逃げるように変形する。そして、柱部57が高さ方向に伸長すると、柱部57が幅方向、具体的には、柱部57の中央部側(
図11(a)の矢印F2参照)に変形する。その結果、圧電素子43が振動し、超音波振動子41から水中に対して超音波W1が照射(送信)される。そして、超音波W1が被探知物S1(
図1参照)に到達すると、超音波W1は、被探知物S1で反射して反射波W2となり、ソナー11に向かって伝搬して超音波振動子41に入力(受信)される。その後、超音波振動子41が受信した超音波W1(反射波W2)は、受信信号に変換され、送受信回路82を介してCPU71に入力される。この時点で、被探知物S1が探知される。
【0054】
また、CPU71は、モータドライバ81を介してスキャンモータ31を駆動させる制御を行い、超音波振動子41の中心軸O1を回転させる。その結果、超音波W1の照射方向が徐々に変化し、これに伴って探知範囲も徐々に変化する。その後、作業者が電源をオフすると、制御装置70により送受信回路82が停止し、超音波W1の照射及び反射波W2の受信が終了する。
【0055】
次に、超音波振動子41の製造方法を説明する。
【0056】
まず、基材42を準備する。具体的には、ガラスエポキシ(FR-4)からなる樹脂製板状物を円形状に切削加工する。また、圧電素子43となるべきセラミックス製板状物を準備する。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる円板状のセラミックス製焼結体を作製した後、表面研磨を行うことにより、セラミックス製板状物を得る。次に、電極層形成工程を行い、セラミックス製板状物の前面51に前面側電極層54を形成するとともに、セラミックス製板状物の背面52に背面側電極層55を形成する。具体的には、セラミックス製板状物の前面51及び背面52にそれぞれ銀ペーストを塗布し、塗布した銀ペーストを焼成することにより、電極層54,55を形成する。そして、電極層形成工程の後、分極処理工程をさらに行う。分極処理工程では、前面側電極層54及び背面側電極層55の間に電圧を印加することにより、セラミック製板状物を厚さ方向に分極させる。
【0057】
続く接合工程では、基材42の片面に対して、セラミックス製板状物を前面側電極層54を介して接合する。具体的には、前面側電極層54の表面及び基材42の表面42aのいずれか一方に対して、接着層56となる接着剤(エポキシ系接着剤など)を塗布し、基材42に対して圧電素子43を接着固定する。なお、接着剤を塗布する代わりに、はんだ等を用いたロウ付けを行ってもよい。
【0058】
接合工程後の柱部形成工程(振動部形成工程)では、切削加工等を行うことにより、セラミックス製板状物における背面側に複数の切り込みK1,K2を形成する。このとき、セラミックス製板状物の厚さt1(7.2mm)の80%以上100%未満の深さとなるように、各切り込みK1,K2を形成する。その結果、セラミックス製板状物が複数の柱部57に分割されるとともに、圧電素子43の背面52に形成された背面側電極層55も複数(柱部57と同数)に分割される。この時点で、圧電素子43が完成する。なお、各柱部57は、圧電素子43の前面51側の端部において互いに繋がった状態で分割されるため、前面51に形成された前面側電極層54までが分割されることはない。
【0059】
柱部形成工程後のメッシュ設置工程では、圧電素子43の背面52上に銅メッシュ91を配置し、銅メッシュ91に押圧力を加えることにより、銅メッシュ91を各柱部57の先端面58に接触させる。そして、接合材90を、銅メッシュ91における網目92の隙間と、各柱部57間の空隙K0(切り込みK1,K2)の一部との双方に入り込ませた状態で固化する。その結果、銅メッシュ91が背面側電極層55に接合し、銅メッシュ91が各柱部57の先端面58の共通電極となる。この時点で、超音波振動子41が完成する。
【0060】
なお、超音波振動子41が完成した後、前面側電極層54に対して側面端子(図示略)を介して第1のリード線62をはんだ付けなどにより接続するとともに、銅メッシュ91に対して第2のリード線63をはんだ付けなどにより接続する。次に、圧電素子43の背面52側に、残響を抑えるための防音材65を貼付する。また、ケース40の内側面にも防音材65を貼付する。その後、超音波振動子41の圧電素子43をケース40に収容する。そして、この状態で、基材42に設けられた複数のネジ孔45にネジ(図示略)を挿通させ、挿通したネジの先端部をケース40に螺着させる。その結果、超音波振動子41がケース40に固定される(
図5参照)。さらに、超音波振動子41が固定されたケース40を、ソナードーム20内の回転軸36に取り付ける。そして、ソナードーム20内に超音波伝搬液体(図示略)を充填する。このとき、超音波伝搬液体の一部は、ケース40に設けられた液体通路(図示略)を介してケース40内に流入し、圧電素子43において隣接する柱部57間の空隙K0に流入する。この時点で、超音波振動子41がソナードーム20に組み込まれ、ソナー11が完成する。
【0061】
次に、超音波振動子の評価方法及びその結果を説明する。
【0062】
本発明者らは、超音波振動子の好適な構造について、試作により確認した。まず、測定用サンプルを次のように準備した。圧電素子の背面(各柱部の先端面)上に銅メッシュ(共通電極)をエポキシ系接着剤(接合材)を介して接合することにより作製した超音波振動子(即ち、本実施形態の超音波振動子41と同じ超音波振動子)を3つ準備し、これらを実施例1A,1B,1C(実施例1)とした。一方、圧電素子の背面上に銅箔テープ(共通電極)を導電テープ(接合材)を介して接合することにより作製した超音波振動子を3つ準備し、これらを比較例1A,1B,1C(比較例1)とした。また、圧電素子の背面上に銅箔(共通電極)をエポキシ系接着剤(接合材)を介して接合することにより作製した超音波振動子を3つ準備し、これらを比較例2A,2B,2C(比較例2)とした。
【0063】
次に、各測定用サンプル(実施例1A~1C及び比較例1A~1C,2A~2C)に対してランニング試験を行った。具体的には、まず、実施例1A~1C及び比較例1A~1C,2A~2Cの超音波振動子に対して1.5kVppの電圧を印加し、超音波振動子から160kHzの超音波(バースト波)を連続的に照射(送信)した。そして、0日(照射開始時)、1日、6日、12日、26日、50日、80日が経過する度に、圧電素子の静電容量を測定した。具体的に言うと、圧電素子に接続された2つのリード線62,63の端部において、LCRメータを用いて静電容量を測定した。実施例1A~1C及び比較例1A~1C,2A~2Cにおける静電容量の値を表1に示す(表の数値の単位は(pF))。また、
図12のグラフは、実施例1(「●」参照)、比較例1(「▲」参照)及び比較例2(「■」参照)における静電容量の変化を示している。
【表1】
【0064】
その結果、比較例1A~1Cでは、超音波の照射開始直後から静電容量が急激に低下し、照射開始から6日が経過した時点では、静電容量が大きく低下し、静電容量の低下率も大きくなることが確認された。また、比較例2A~2Cでは、超音波の照射開始から10日程度経過するまでは、静電容量は殆ど低下しないものの、その後大きく低下し、照射開始から50日が経過した時点では、静電容量が大きく低下し、静電容量の低下率も大きくなることが確認された。なお、静電容量の低下は、共通電極の剥離により電極面積が減少していることを示している。また、電極が剥離した状態で超音波振動子を連続的に駆動し続けると、剥離部分から放電が発生し、黒焦げになることが確認された。
【0065】
一方、実施例1A~1Cでは、超音波の照射開始から80日が経過した時点であっても、静電容量は殆ど低下せず、静電容量の低下率は極めて小さいことが確認された。従って、圧電素子に対して銅メッシュをエポキシ系接着剤を介して接合した実施例1A~1Cを採用すれば、静電容量の低下、即ち、共通電極の剥離に起因する電極面積の減少を抑えられることが確認された。
【0066】
また、0日、1日、6日、12日、26日、50日、80日が経過する度に、超音波振動子の送受感度積を算出した。具体的には、超音波振動子から0.5m離れた位置にある直径57mmのフェノリック樹脂球に対して超音波を照射した。なお、フェノリック樹脂球で反射した超音波(反射波)は、送信から約670μs後に超音波振動子で受信され、超音波振動子の両端に電圧信号を生じる。このとき、超音波振動子の送信時及び受信時の電圧振幅をオシロスコープにより測定し、測定結果に基づいて演算を行うことにより、送受感度積を算出した。なお、送受感度積は、送信電圧振幅V
1に対する受信電圧振幅V
2の比であり、20×log(V
2/V
1) の式から算出されるものである。実施例1A~1C及び比較例1A~1C,2A~2Cにおける送受感度積の値を表2に示す(表の数値の単位は(dB))。また、
図13のグラフは、実施例1及び比較例1,2における送受感度積の変化を示している。
【表2】
【0067】
その結果、比較例1A~1Cでは、超音波の照射開始直後から送受感度積が急激に低下し、照射開始から6日または12日が経過した時点では、送受感度積が大きく低下することが確認された。また、比較例2A~2Cでは、超音波の照射開始から10日程度経過するまでは、送受感度積は殆ど低下しないものの、その後大きく低下し、照射開始から50日が経過した時点では、送受感度積が大きく低下することが確認された。
【0068】
一方、実施例1A~1Cでは、超音波の照射開始から80日が経過した時点であっても、送受感度積は殆ど低下しないことが確認された。従って、圧電素子に対して銅メッシュをエポキシ系接着剤を介して接合した実施例1A~1Cを採用すれば、共通電極の電極面積の減少を抑えられるだけでなく、送受感度積の低下も抑えられることが確認された。
【0069】
また、比較例1において、130kHz~251kHzの間で周波数を複数段階に切り替え、切り替えたそれぞれの周波数において超音波を照射した。そして、オシロスコープを用いた上記の手法を用いて、超音波振動子の送受感度積を算出した。なお、0日(初期段階)、1日、6日、12日が経過する度に、それぞれの周波数において送受感度積の算出を行った。
図14のグラフは、比較例1における送受感度積の変化を示している。
【0070】
その結果、比較例1では、初期段階(
図14の「◆」参照)→1日後(
図14の「△」参照)→6日後(
図14の「▼」参照)→12日後(
図14の「□」参照)の順番、即ち、超音波の照射開始からの時間が経過するのに従って、130kHz~251kHz間の送受感度積を示すグラフが全体的に低くなることが確認された。なお、実施例1(実施例1A~1C)のグラフは省略したが、実施例1では、超音波の照射開始からの時間が経過したとしても、送受感度積は殆ど低下せず(表2参照)、130kHz~251kHz間の送受感度積を示すグラフも殆ど変化しないことが確認された。
【0071】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0072】
(1)本実施形態のソナー11では、電極部分である銅メッシュ91と圧電素子43との間に接合材90が介在するのに加えて、接合材90が銅メッシュ91における網目92の隙間及び複数の柱部57間の空隙K0の双方にも入り込むことにより、銅メッシュ91が圧電素子43に接合される。その結果、圧電素子43と銅メッシュ91との接合強度が高くなるため、たとえ超音波振動子41を長期間に亘って連続駆動させたとしても、圧電素子43から銅メッシュ91が剥離しにくくなる。よって、超音波振動子41の感度低下を防止することができる。
【0073】
(2)本実施形態では、銅メッシュ91の網目92を構成する縦横のワイヤ93,94が編み込まれることにより、ワイヤ93,94が上下に起伏した形状となる。その結果、縦横のワイヤ93,94同士の交差部A1と柱部57の先端面58との接触圧が大きくなるため、銅メッシュ91を確実に電極として機能させることができる。また、銅メッシュ91には、細かい網目92が密集しているため、網目92の隙間に接合材90が入り込みやすい。従って、圧電素子43と銅メッシュ91との接合強度がよりいっそう高くなる。
【0074】
(3)例えば、銅メッシュ91を、圧電素子43の前面51の全域に亘って配置することも考えられる。しかしながら、超音波W1は、圧電素子43の前面51から照射されて音響整合層を兼ねる基材42を通過するため、前面51側に銅メッシュ91が存在すると、超音波W1が銅メッシュ91を透過する際に散乱してしまい、超音波W1が被探知物S1に到達できない可能性がある。一方、本実施形態では、銅メッシュ91を、照射面である前面51の反対側(即ち、超音波W1が照射されない側)にある圧電素子43の背面52の全域に亘って配置している。その結果、超音波振動子41から超音波W1を散乱することなく照射させることができる。また、超音波W1が圧電素子43の背面52側に漏れたとしても、超音波W1が背面52側にある銅メッシュ91を透過するため、超音波W1が分散及び減衰する。よって、銅メッシュ91を、好適なバッキング材としても機能させることができる。
【0075】
(4)特開2005-323630公報に記載の従来技術には、フレキシブル基板に網目状の電極パターンを形成する技術が提案されている。しかしながら、電極パターンは、基板の表面上に形成された厚さ数十μm程度の網目状パターンであって、ワイヤを編み込んだ金網ではない。この場合、接合材を網目の隙間に入り込ませることができないため、アンカー効果が得られることはなく、他部材との接合強度を高くすることはできない。一方、本実施形態では、接合材90が、厚さ数百μm程度の銅メッシュ91における網目92の隙間に入り込むことによってアンカー効果が得られるため、圧電素子43と銅メッシュ91との接合強度を高くすることができる。
【0076】
なお、上記実施形態を以下のように変更してもよい。
【0077】
・上記実施形態では、圧電素子43の背面52上に、1枚の銅メッシュ91が背面52の全域に亘って配置されていた。しかし、銅メッシュ91を複数の銅メッシュ片に分割し、分割したそれぞれの銅メッシュ片を背面52のエリアごとに配置し、全ての銅メッシュ片で背面52の全域を覆うようにしてもよい。このようにすれば、それぞれのエリアごとに、圧電素子43を個別に駆動することができる。
【0078】
・上記実施形態の銅メッシュ91では、隣接する第1ワイヤ93間のピッチp1と隣接する第2ワイヤ94間のピッチp2とが互いに等しくなっていたが、ピッチp1,p2は互いに異なっていてもよい。
【0079】
・上記実施形態の超音波振動子41では、隣接する柱部57間の空隙K0の一部に接合材90が入り込んでいたが、空隙K0全体に接合材90が入り込んでいてもよいし、接合材90が入り込んでいなくてもよい。なお、接合材90が入り込んでいない場合には、空隙K0に超音波伝搬液体が流入可能となる。また、超音波伝搬液体が流入しない場合には、圧電素子43内の熱を空隙K0を介して外部に放出することができる。
【0080】
・上記実施形態の圧電素子43は、分割された複数の柱部57が前面51側の端部において互いに繋がった構造を有し、背面52側に銅メッシュ91が接合されていた。しかし、
図15に示されるように、複数の柱部111(振動部)に完全に分割され、かつ隣接する柱部111間に樹脂材料112が充填された1-3コンポジット構造の圧電素子113を形成し、圧電素子113の背面114側に銅メッシュを接合してもよい。また、
図16に示されるように、壁状をなす複数の振動部121に完全に分割され、かつ隣接する振動部121間に樹脂材料122が充填された2-2コンポジット構造の圧電素子123を形成し、圧電素子123の背面124側に銅メッシュを接合してもよい。
【0081】
・上記実施形態では、圧電素子43の背面52全体に対して、導電メッシュである銅メッシュ91が接合されていた。しかし、銅メッシュ91を背面52全体に接合する代わりに、銅箔に複数の孔部132を設けた構造を有するパンチングメッシュ131などの他の導電メッシュを背面52全体に接合してもよい(
図17,
図18参照)。なお、パンチングメッシュ131は、各柱部57の先端面58に接触し、かつ、各孔部132が各柱部57間の空隙K0に連通した状態で、接合材133を介して圧電素子43に接合されている。そして、接合材133は、パンチングメッシュ131の表面(上面)上に塗布されるとともに、孔部132と空隙K0との双方に入り込んでいる。
【0082】
・上記実施形態の振動部は、先端面58が平面視正方形状をなす柱部57であったが、先端面が平面視矩形状、平面視三角形状、平面視円形状等の他の形状をなす柱部であってもよい。また、上記実施形態の圧電素子43は、先端面58が平面視正方形状をなす複数の柱部57に分割されていたが、先端面が平面視半円状をなす2つの振動部141(
図19参照)に分割されていてもよいし、先端面が平面視扇形状をなす3つ以上の振動部に分割されていてもよい。つまり、振動部は、同振動部を圧電素子の厚さ方向から見たときの最大寸法が振動部の高さ以下となるものでなくてもよい。
【0083】
・上記実施形態の超音波振動子41では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電素子43を用いたが、圧電素子43の形成材料は特に限定されるものではない。例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム系(ニオブ酸アルカリ系)、チタン酸バリウム系、PMN-PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3)単結晶、PZNT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3-PbTiO3)単結晶、LiNbO3単結晶の圧電セラミックスからなる圧電素子を用いてもよい。
【0084】
・上記実施形態の防音材56は、圧電素子43の背面52側とケース40の内周面とに貼付されていたが、防音材65は、さらに圧電素子43の外周面53に貼付されていてもよい。
【0085】
・上記実施形態の超音波振動子41は、超音波W1の照射方向を機械的に変更するソナー11に用いられていたが、超音波W1の照射方向を電気的に変更するソナーに用いてもよい。また、超音波振動子を、超音波W1の照射方向を変更しない、即ち、傾斜回転機構30を有しない魚群探知機に用いてもよい。さらに、超音波振動子を、例えば、水の深さを計測する測深機や、空気中で距離を計測する空中センサなどの計測機器に用いてもよい。
【0086】
・上記実施形態では、圧電素子43をケース40に収容した状態で、基材42側のネジ孔45を挿通したネジの先端部をケース40に螺着させることにより、超音波振動子41がケース40に固定されていたが、他の方法によって固定するようにしてもよい。例えば、接着剤を用いて超音波振動子41をケース40に固定してもよいし、ケース40内にエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの充填剤を流し込んで硬化させることにより、超音波振動子41をケース40に固定してもよい。さらに、ケース40を用いずに超音波振動子41を固定してもよい。例えば、基材42上において圧電素子43を覆うように金型を配置し、金型内に樹脂材料(エポキシ樹脂やウレタン樹脂など)を流し込んで硬化させることにより、超音波振動子41と樹脂材料とを一体化するモールド成形を行ってもよい。
【0087】
・上記実施形態では、基材42が露出した状態で、超音波振動子41がケース40に固定されていた。しかし、
図20に示されるように、一端が開口する有底円筒状に形成されたケース部151と、円板状に形成された蓋部152とによってケース150を構成し、超音波振動子41全体をケース部151に収容した状態で、ケース部151の開口部を蓋部152で塞いてもよい。このようにすれば、超音波振動子41全体がケース150によって密封されるため、超音波振動子41が収容されたケース150をそのまま水中に入れることが可能となる。よって、この
図20の構造を、魚群探知機として用いることができる。なお、蓋部152は、クロロプレンゴムやポリウレタン樹脂などを用いて形成されており、基材42の裏面42b全体に接触している。蓋部152の固有音響インピーダンスは、基材42の固有音響インピーダンス(2.3~14×10
6(Pa・s/m))よりも小さく、かつ水の固有音響インピーダンス(1.5×10
6(Pa・s/m))よりも大きいことが好ましい。また、蓋部152を基材42に対して接着してもよい。
【0088】
・上記実施形態では、電極層形成工程後かつ接合工程前に、前面側電極層54及び背面側電極層55の間に電圧を印加することにより、セラミックス製板状物を厚さ方向に分極させる分極処理工程を行っていた。しかし、分極処理工程を、接合工程後かつ柱部形成工程前に行ってもよいし、柱部形成工程後かつメッシュ設置工程前に行ってもよいし、メッシュ設置工程後に行ってもよい。
【0089】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0090】
(1)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記柱部を前記厚さ方向から見たときの最大寸法は、前記柱部の高さの80%以下であることを特徴とするソナー。
【0091】
(2)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記基材の固有音響インピーダンスは、前記圧電素子の固有音響インピーダンスよりも小さく、かつ水の固有音響インピーダンスよりも大きいことを特徴とするソナー。
【0092】
(3)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記基材の固有音響インピーダンスは、2.3×106(Pa・s/m)以上14×106(Pa・s/m)以下であることを特徴とするソナー。
【0093】
(4)請求項1乃至7のいずれか1項において、前記圧電素子内を伝搬する縦波の音速をc1とし、前記圧電素子の厚さをt1とし、前記基材内を伝搬する縦波の音速をc2とし、前記基材の厚さをt2としたとき、(c2×t1)/(c1×t2)=0.8以上1.7以下の関係を満たすことを特徴とするソナー。
【0094】
(5)請求項9において、前記セラミックス製板状物の前記前面に前面側電極層を形成するとともに前記セラミックス製板状物の前記背面に背面側電極層を形成する電極層形成工程と、前記電極層形成工程後かつ前記接合工程前に、前記前面側電極層及び前記背面側電極層の間に電圧を印加することにより、前記セラミックス製板状物を厚さ方向に分極させる分極処理工程とをさらに含むことを特徴とする超音波振動子の製造方法。
【符号の説明】
【0095】
11…ソナー
30…機構としての傾斜回転機構
41…超音波振動子
42…基材
43,113,123…圧電素子
51…セラミックス製板状物(圧電素子)の前面
52,114,124…セラミックス製板状物(圧電素子)の背面
54…前面側電極層
57,111…振動部としての柱部
58…振動部の端面としての先端面
90,133…接合材
91…導電メッシュとしての銅メッシュ
92…網目
121,141…振動部
131…導電メッシュとしてのパンチングメッシュ
K0…複数の振動部間の空隙
K1…切り込みとしての第1切り込み
K2…切り込みとしての第2切り込み
L3…振動部を厚さ方向から見たときの最大寸法
O1…中心軸
W1…超音波