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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】指股隔壁内蔵シューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 7/26 20060101AFI20230413BHJP
   A43B 3/00 20220101ALI20230413BHJP
【FI】
A43B7/26
A43B3/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018241044
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020099578
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】500071407
【氏名又は名称】株式会社丸五
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】内田 吉昭
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】実公昭31-005549(JP,Y1)
【文献】特開平11-318505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 7/26
A43B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指股隔壁をつま先内部に設けた指股隔壁内蔵シューズにおいて、
指股隔壁は、つま先側内布から下方へ延びるように設けられており、
前記つま先側内布は、
親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片の成形用前縁部と内布本体の側縁とを接合することにより、親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片からなる指股隔壁を下方に延びて設けると共に、つま先側内布全体を立体的な曲面に形成し、
甲被の内側に宛がった状態で前記指股隔壁の後方で甲被に固着し、
前記指股隔壁は、前記甲被と周縁部で接合する中底のつま先側切れ込みから下方に突出させた下側の側縁部を、前記中底の下面に接合したことを特徴とする指股隔壁内蔵シューズ。
【請求項2】
甲被は、左右に連続して足の甲を覆う伸縮性生地から構成された請求項1記載の指股隔壁内蔵シューズ。
【請求項3】
つま先側内布は、親指側内布及び人差し指側内布からなり、
親指側内布の一部である親指側隔壁片と人差し指側内布の一部である人差し指側隔壁片とを少なくとも後縁で接合した請求項1又は2いずれか記載の指股隔壁内蔵シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にランニング時に好適な指股隔壁内蔵シューズに関する。
【背景技術】
【0002】
足の親指と人差し指とに挟まれる指股隔壁を有する足袋は、指股隔壁の存在が足指(特にメカノレセプター(感覚受容器:身体の姿勢を制御する脳に対し、外部の物理的刺激を検知して信号を送る器官)の多い親指)を動かす契機となり、足指の神経や筋肉を鍛える効用がある。近年、こうした指股隔壁をつま先内部に設けた指股隔壁内蔵シューズが提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1が開示する指股隔壁内蔵シューズ(靴)は、二つ折りにした指股隔壁(趾指隔壁部材)の上側の側縁部を、甲被の内面に接着する甲被裏部材に縫着し、前記指股隔壁の下側の側縁部を合中底に固着している(特許文献1・[0009]~[0012])。特許文献1が開示する指股隔壁内蔵シューズは、特にカリフォルニアタイプの靴を対象としている(特許文献1・[請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-238701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する指股隔壁内蔵シューズは、特にカリフォルニアタイプ の靴を対象としている。カリフォルニアタイプ の靴は、例えばブーツに見られるように堅い甲被である場合が多い。このことから、特許文献1が開示する指股隔壁内蔵シューズは、シューズ内で足指を大きく動かさないことを想定していると思われる。このため、指股隔壁は、上側の側縁部が甲被裏部材に縫着され、下側の側縁部が合中底に固着されて、前後又は左右に動かないようにして、親指と人差し指とでしっかり挟めるようになっている。
【0006】
ここで、指股隔壁内蔵シューズを運動用に考えた場合、特許文献1が開示する構成のように、指股隔壁の上側及び下側の側縁部が位置固定されていると、シューズ内で足指の動きが制約を受け、好ましくない。しかし、指股隔壁の上側及び下側の側縁部がいずれも自由状態にあると、指股隔壁が自由に動きすぎて、効用を発揮しづらくなる。
【0007】
運動の種類も多様であり、それぞれ足の動き方も異なる。そこで、特にランニングに際して履いても、シューズ内の足の動きを過度に制約することなく、しかし指股隔壁の効用(足指の神経や筋肉を鍛える効用)が発揮される指股隔壁内蔵シューズを開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、指股隔壁をつま先内部に設けた指股隔壁内蔵シューズにおいて、指股隔壁は、つま先側内布から下方へ延びるように設けられており、前記つま先側内布は、甲被の内側に宛がった状態で前記指股隔壁の後方で甲被に固着し、前記指股隔壁は、前記甲被と周縁部で接合する中底のつま先側切れ込みから下方に突出させた下側の側縁部を、前記中底の下面に接合したことを特徴とする指股隔壁内蔵シューズである。
【0009】
本発明の指股隔壁内蔵シューズは、指股隔壁を設けたつま先側内布を甲被の内側に固着し、前記つま先側内布を介して指股隔壁の上側の側縁部を間接的に固定する。つま先側内布は、前記指股隔壁の後方で甲被に固着しているのみなので、甲皮に対して若干動くことができる。これにより、指股隔壁は、上半分の自由度を確保する。指股隔壁は、下側の側縁部を中底の下面に接合しているから、下半分の自由度が制限され、上半分が無制限に動くことを抑制又は防止している。
【0010】
つま先側内布は、指股隔壁の後方で甲被の内側に接合できれば、接合手段を限定しない。つま先側内布は、甲被の内側に接着又は溶着すれば、存在を隠すことができる。また、つま先側内布は、縫着ラインを甲被の外側に露出させて縫着すれば、存在を示すことができる。つま先側内布は、甲被及び中底と共に周縁部で接合してもよい。この場合、つま先側内布は、甲皮及び中底に接合されながら指股隔壁の上側の側縁部を固定しないので、前記指股隔壁の上半分の自由度が確保される。
【0011】
指股隔壁は、中底のつま先側切れ込みから突出させた下側の側縁部を折り曲げて前記中底の下面に宛てがい、接合する。中底に対する前記下側の側縁部の接合手段は、限定されない。接合手段が接着又は溶着であると、中底の上面に接合部分(例えば縫着ライン)が表れず、中底の上面に接触する足の裏に違和感を与えなくて都合がよい。また、甲被と中底とが周縁部で接合されている場合、指股隔壁の下側の側縁部を中底の下面に接着又は溶着するだけであると、中底の下方で接合作業が完了する利点もある。
【0012】
指股隔壁の下側の側縁部を中底の下面に接合する接合作業に際し、甲被及び中底が周縁部で予め接合されているか否かを問わない。例えば、甲被及び中底の周縁部をつま先以外で予め接合しておき、残したつま先部分で甲被と中底とを開いた状態で、指股隔壁の下側の側縁部を中底のつま先側切れ込みから下方に引き出し、前記中底の下面に前記下側の側縁部を接合した後、甲被及び中底の周縁部の残るつま先部分を接合してもよい。
【0013】
指股隔壁の自由度は、甲被に対するつま先側内布の自由度に依存する。これから、甲被は、左右に連続して足の甲を覆う伸縮性生地から構成すると、甲被の伸縮に応じてつま先側内布の自由度を高め、結果として指股隔壁の自由度を高める。足に対する甲被の密着性を高めるため、甲被は、足の甲を挟む位置関係で左右一対の鳩目座を設け、前記鳩目座を靴紐で縛ることにより、締め付けてもよい。甲被は、つま先側内布を接合する足の甲を覆う部分に伸縮性を有すればよく、甲被のその他の部分が非伸縮性生地で構成されてもよい。
【0014】
指股隔壁は、つま先側内布に上側の側縁部が接続された別部材でもよい。しかし、つま先側内布に別体の指股隔壁の上側の側縁部を接続すると、つま先側内布の内面に前記上側の側縁部が段差を形成し、足の甲に違和感を与える。そこで、指股隔壁は、つま先側内布から連続して一体に設けられることが望ましい。例えばつま先側内布は、親指側内布及び人差し指側内布からなり、親指側内布の一部である親指側隔壁片と人差し指側内布の一部である人差し指側隔壁片とを少なくとも後縁で接合した構成とする。
【0015】
親指側内布及び人差し指側内布からなるつま先側内布は、前記親指側内布及び人差し指側内布それぞれの一部である親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片を重ねて指股隔壁を構成する。親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片を重ねて構成される指股隔壁は、1枚生地より厚くでき、親指及び人差し指で挟んだ際の触感を良好にする。また、重ねる親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片の間に別の厚手の生地や緩衝材(クッション材)を挟むと、親指及び人差し指で挟んだ際の触感を更に良好にできる。
【0016】
指股隔壁は、親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片の少なくとも後縁を接合するので、親指及び人差し指の股が擦れやすい後縁の一体性が確保される。親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片の一体性を高めるため、後縁以外の前縁や中間部で接合してもよい。親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片の接合手段は、限定されない。接合手段が接着又は溶着であると、親指及び人差し指で挟んだ際の触感を損ねない。接合手段が縫着でも、例えば後縁を前方に折り返して縫着すれば、縫着ラインが親指側隔壁片及び人差し指側隔壁片に挟まれて隠れ、親指及び人差し指で挟んだ際の触感を損ねない。
【発明の効果】
【0017】
本発明の指股隔壁内蔵シューズは、内蔵される指股隔壁の上半分の自由度が確保されるため、シューズ内の足の動きを過度に制約することなく、しかし指股隔壁の効用が発揮される。指股隔壁は、主に左右の動きが許与される。このため、前後方向より左右方向に足の動きがあるランニングに際して、シューズ内の足の動きを過度に制約せずに指股隔壁の効用が発揮される指股隔壁内蔵シューズの提供が可能になる。
【0018】
左右に連続して足の甲を覆う伸縮性生地から構成された甲被の内側に、指股隔壁を設けたつま先側内布を固着すると、指股隔壁の自由度が高められ、シューズ内の足の動きがより自由になる。伸縮性生地から構成された甲被は、足の甲を挟む位置関係で設けた左右一対の鳩目座を靴紐で縛ることにより、足との一体性を高め、足が自由に動いても指股隔壁内蔵シューズとの一体性を失わないようにできる。こうして、指股隔壁の自由度を高めながら、運動、特にランニングに適した指股隔壁内蔵シューズの提供を可能にする。
【0019】
親指側内布及び人差し指側内布からなるつま先側内布は、指股隔壁をつま先内布と指股隔壁から連続して一体に構成し、指股隔壁の上側の側縁部による足に対する違和感をなくす。また、指股隔壁を厚くしたり、緩衝材等を挟んだりして、親指及び人差し指で指股隔壁を挟んだ際の触感を改善する。こうして、本発明の指股隔壁内蔵シューズは、長時間の使用や運動に際しての使用によっても、指股部材で足を傷める機会を減らし、使用感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明を適用した指股隔壁内蔵シューズの一例を表す斜視図である。
図2】本例の指股隔壁内蔵シューズにおいて、接合した甲被及び中底を上方から見た斜視図である。
図3】本例の指股隔壁内蔵シューズにおいて、接合した甲被及び中底を下方から見た斜視図である。
図4】本例の指股隔壁内蔵シューズにおいて、甲被、つま先側内布、そして中底を分解して表す斜視図である。
図5】つま先側内布を構成する親指側内布及び人差し指側内布の展開図である。
図6】親指側内布及び人差し指側内布を接合したつま先側内布を表す正面図である。
図7】つま先側内布を甲被の内側に接合した状態を表す正面図である。
図8】甲被と中底とを接合した状態を表す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の指股隔壁内蔵シューズ1は、例えば図1に見られるように、ランニングに際して履く運動シューズとして構成される。本例の指股隔壁内蔵シューズ1は、内部に設けた指股隔壁35を甲被2が隠して存在を分からないようにし、見栄えを良くしている。しかし、指股隔壁35が一定程度動くように、例えばゴム製で一定の厚みのある外底5は、指股隔壁35に沿って切れ目や変形容易な溝を設けるとよい。本例の指股隔壁内蔵シューズ1は、左足用であり、右足用は本例と左右逆の部材構成となる。
【0022】
本例の指股隔壁35は、甲被2のつま先内部に固着されたつま先側内布3の一部である。本例の甲被2は、左右に連続して足の甲を覆う伸縮性生地で構成され、固着されたつま先側内布3、そして指股隔壁35の自由度を高めている。甲被2の伸縮性は、通常、左右方向にあればよくい。本例の甲被2は、主な伸縮性が左右方向に発揮される編物からなる伸縮性生地を用いている。編物からなる甲被2は、通気性も備える。
【0023】
また、本例の甲被2は、足の甲を挟む位置関係で左右一対の鳩目座21を設け、前記鳩目座21を靴紐211で縛ることにより締め付け、足に対する密着性を高めている。本例の鳩目座21は、伸縮性のない樹脂シート(例えば熱可塑性ポリウレタンシート)からなり、甲被2に縫着される。伸縮性のない鳩目座21は、伸縮性のため柔らかい甲被2を保形したり、補強したりする働きがある。鳩目座21は、甲被2と一体化できれば、甲被2に接着又は溶着してもよい。
【0024】
甲被2は、つま先側内布3を接合する足の甲を覆う部分に伸縮性があればよい。本例の甲被2は、踵部分を左右にわたって覆う踵補強部材22を設けている。本例の踵補強部材22は、樹脂芯材(例えば熱可塑性樹脂)を内蔵した合成皮革で、鳩目座21の後端に被せ、甲被2に縫着される。本例の踵補強部材22は、鳩目座21に連続して甲被2に縫着されることにより、前記鳩目座21と共に股隔壁内蔵シューズ1の後ろ半分を保形及び補強する。踵補強部材22も、甲被2と一体化できれば、甲被2に接着又は溶着してもよい。
【0025】
このほか、本例の股隔壁内蔵シューズ1は、従来の運動シューズ同様、甲被2とつま先側内布3との間につま先側内面に、内側面補強材(例えばポリエステル布)やつま先保形材(例えば熱溶着フィルムで被覆した合成皮革)を内蔵している(いずれも図示略)。内側面補強材は、甲被2のつま先の強度を高める。つま先保形材は、甲被2のつま先を保形する。内側面補強材及びつま先保形材は、あくまで甲被2の補強及び保形を担うもので、つま先側内布3の自由度を制限しない。
【0026】
つま先側内布3は、図2図4に見られるように、甲被2の内側に宛がった状態で、指股隔壁35の後方に位置する後縁を左右に横断して甲被2に縫着し、前記指股隔壁35の下側の側縁部321,341を、前記甲被2と周縁部で縫着する中底4のつま先側切れ込み41から下方に突出させて、前記中底4の下面に接着している。本例の中底4は、上から順に不織布、樹脂シート(EVAシート)、そして合成繊維生地(例えばポリエステル布)を積層した三層構造である。
【0027】
側縁部321,341は、例えば中底4のつま先側切れ込み41から側縁部321,341を突出させた状態で甲被2と中底4とを周縁部で縫着した後、指股隔壁35に対応した溝を有するラストを内部に挿入して甲被2の形状を整えた状態で左右に開き、接着する手順で中底4の下面に接合する。これにより、側縁部321,341は、製品状態で起立する指股隔壁35を構成する適切な位置で中底4の下面に固定できる。また、この手順は、ラストを用いた甲被2の吊り込み作業を不要として作業能率を改善し、吊り込み作業が不得手な非熟練者による股隔壁内蔵シューズ1の製造を可能にする。
【0028】
本例のつま先側内布3は、図5に見られるように、左右対称な親指側内布31及び人差し指側内布33から構成される。親指側内布31は、平面視略1/4円形状である内布本体311から、親指側隔壁片32及び下側の側縁部321を左方に突出させている。親指側隔壁片32は、折り返し代となる直線状の連結用後縁部322を後縁に、立体形状を作り出す成形用前縁部323を前縁に有する。図5に表わされる破線は、説明の便宜上、各部の境界を示すもので、親指側内布31は一様の生地(例えばポリウレタン布)である。
【0029】
人差し指側内布33は、上記親指側内布31同様、平面視略1/4円形状である内布本体331から、人差し指側隔壁片34及び下側の側縁部341を左方に突出させている。人差し指側隔壁片34は、折り返し代となる直線状の連結用後縁部342を後縁に、立体形状を作り出す成形用前縁部343を前縁に有する。図5に表わされる破線は、説明の便宜上、各部の境界を示すもので、親指側内布31は一様の生地(例えばポリウレタン布)である。本例の親指側内布31及び人差し指側内布33は、左右対称であるため、例えば親指側内布31を左右反転させて人差し指側内布33として用いてもよい。
【0030】
親指側内布31及び人差し指側内布33は、略水平にした内布本体311,331から親指側隔壁片32及び下側の側縁部321や人差し指側隔壁片34及び下側の側縁部341をそれぞれ下方に折り曲げる。親指側内布31及び人差し指側内布33は、接近する内布本体311,331の側縁と親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34の成形用前縁部323,343とを縫着し、全体を立体的な曲面を有する部材に成形する。接合状態を維持できれば、内布本体311,331の側縁と親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34の成形用前縁部323,343とは、接着又は溶着してもよい。
【0031】
親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34は、重なる連結用後縁部322及び連結用後縁部342を縫着する。そして、親指側内布31及び人差し指側内布33は、前記連結用後縁部322及び連結用後縁部342の縫着部分を前方に向けた状態で、全体を前方に折り返す。こうして、指股隔壁35は、図6に見られるように、親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34を重ねて構成され、前記縫着部分を前記親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34の間に挟んで外部から隠す。重ねる親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34は、緩衝材(例えばウレタンフォーム)を挟んでもよい。
【0032】
親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34を接合し、指股隔壁35を構成して作られたつま先側内布3は、図7に見られるように、甲被2のつま先側の内側に宛てがわれ、親指側内布31及び人差し指側内布33の内布本体311,331の後縁に沿って、左右に横断するように縫着され、甲被2と一体化される。この時点で、つま先側内布3は、前記親指側内布31及び人差し指側内布33の内布本体311,331の後縁以外で甲被2に接合しておらず、特に親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34は自由状態にある。
【0033】
つま先側内布3の接合を終えた甲被2は、中底4と周縁部で縫着により接合する。このとき、つま先側内布3から下方へ延びるように設けられた親指側隔壁片32及び人差し指側隔壁片34に続く下側の側縁部321,341は、中底4のつま先側切れ込み41から突出させる。そして、図8に見られるように、甲被2の内部にラスト(図示略)を挿入した状態で、親指側隔壁片32に続く下側の側縁部321と人差し指側隔壁片34に続く下側の側縁部341とを左右に開いて中底4の下面に接面させ、接着により接合する。
【0034】
指股隔壁35は、甲被2の内側に固着されたつま先側内布3を介して上側の側縁部を間接的に固定されるだけなので、甲皮2に対して若干動くことができる。これに対して、指股隔壁35は、下側の側縁部321を中底4の下面にしっかりと接合しているから、下半分の自由度が制限され、上半分の無制限な動きが抑制又は防止される。こうして、運動に際して親指及び人差し指の左右への動きを許容しながら、前記親指及び人差し指に適度な刺激を与える指股隔壁35を有する指股隔壁内蔵シューズ1の提供が実現される。
【符号の説明】
【0035】
1 指股隔壁内蔵シューズ
2 甲被
21 鳩目座
211 靴紐
22 踵補強部材
3 つま先側内布
31 親指側内布
32 親指側隔壁片
321 下側の側縁部
322 連結用後縁部
323 成形用前縁部
33 人差し指側内布
34 人差し指側隔壁片
341 下側の側縁部
342 連結用後縁部
343 成形用前縁部
35 指股隔壁
4 中底
41 つま先側切れ込み
5 外底

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8