IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トーメーコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特許-眼科装置 図1
  • 特許-眼科装置 図2
  • 特許-眼科装置 図3
  • 特許-眼科装置 図4
  • 特許-眼科装置 図5
  • 特許-眼科装置 図6
  • 特許-眼科装置 図7
  • 特許-眼科装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018247624
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103785
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 有司
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 貴司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千比呂
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-077666(JP,A)
【文献】特開2015-198757(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引型の光源と、
前記光源からの光を被検眼に照射すると共に、前記被検眼からの反射光を導く測定光学系と、
前記光源からの光を導いて参照光とする参照光学系と、
前記測定光学系により導かれた前記反射光と前記参照光学系により導かれた前記参照光とを合波した干渉光を受光する受光素子と、
前記光源からの光から等周波数間隔で周期的に変化するサンプルクロック信号を生成するサンプルクロック信号生成部と、
前記サンプルクロック信号生成部から入力される前記サンプルクロック信号に基づいて、前記受光素子が前記干渉光を受光したときに前記受光素子から入力される干渉信号をサンプリングする信号処理部と、
演算部と、を備えており、
前記演算部は、
前記サンプルクロック信号生成部で生成された前記サンプルクロック信号に基づいて、前記サンプルクロック信号の周期と時間との関係を示す周期データを生成する周期データ生成処理と、
前記周期データ生成処理によって生成された前記周期データに基づいて、前記信号処理部でサンプリングされる前記干渉信号の処理期間を決定する決定処理と、を実行可能に構成されている、眼科装置。
【請求項2】
前記光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を掃引し、
前記演算部は、前記周期データにおいて前記周期が少なくとも最大及び最小のいずれかとなる基準時間を検出する基準時間検出処理をさらに実行可能に構成されており、
前記決定処理は、前記基準時間検出処理によって検出された前記基準時間に基づいて前記処理期間を設定する、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を掃引し、
前記光源からの光の波長の波形は正弦波であり、
前記演算部は、
前記周期データにおいて所定の周期となる時間を検出する所定周期時間検出処理と、
前記所定周期時間検出処理によって検出された前記所定の周期となる時間に基づいて、前記周期データにおいて前記周期が少なくとも最大及び最小のいずれかとなる基準時間を特定する特定処理と、をさらに実行可能に構成されており、
前記決定処理は、前記基準時間に基づいて前記処理期間を決定する、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を掃引し、
前記光源からの光の波長の波形はのこぎり波であり、
前記演算部は、前記周期データにおいて前記周期が一定値から変化するときの時間である基準時間を検出する基準時間検出処理をさらに実行可能に構成されており、
前記決定処理は、前記基準時間検出処理によって検出された前記基準時間に基づいて前記処理期間を設定する、請求項1に記載の眼科装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記決定処理によって決定された前記処理期間に基づいて、前記干渉信号をサンプリングする、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、少なくとも前記処理期間に亘って前記干渉信号をサンプリングし、
前記演算部は、前記決定処理によって決定された前記処理期間に対応する干渉信号を、前記信号処理部でサンプリングされた前記干渉信号から抽出する、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、眼科装置に関する。詳細には、光干渉を用いて被検眼を測定する眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉を用いて被検眼の内部の断層画像を撮影する眼科装置が開発されている。この種の眼科装置の中には、波長掃引型の光源を用いたフーリエドメイン方式(いわゆる、SS-OCT方式)のものがある。SS-OCT方式では、光源から出射される光の波長が周期的に変化しており、光源からの光の波長が1周期変化する毎に同じ波長領域においてサンプリングすることが好ましい。例えば、特許文献1に開示する装置では、FBG(ファイバブラッググレーティング)を用いて、波長掃引型の光源からの光のうち特定の波長の光を検出する。検出された特定の波長の光から検出信号を生成し、この検出信号に基づいてサンプリング開始のタイミングを規定するトリガー信号を生成する。このように生成されたトリガー信号に基づいて干渉信号のサンプリングを開始することによって、光の波長が1周期変化する毎に同じ波長領域において干渉信号がサンプリングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-200283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、トリガー信号を生成するために光源からの光のうち特定の波長を検出する必要があり、装置内にFBG等のコストの高い部材を搭載しなければならなかった。本明細書は、SS-OCT方式において、コストの高い部材を用いることなくサンプリングされる干渉信号の処理期間を設定する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する眼科装置は、波長掃引型の光源と、光源からの光を被検眼に照射すると共に、被検眼からの反射光を導く測定光学系と、光源からの光を導いて参照光とする参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合波した干渉光を受光する受光素子と、光源からの光から等周波数間隔で周期的に変化するサンプルクロック信号を生成するサンプルクロック信号生成部と、サンプルクロック信号生成部から入力されるサンプルクロック信号に基づいて、受光素子から入力される干渉信号をサンプリングする信号処理部と、演算部と、を備えている。演算部は、サンプルクロック信号生成部で生成されたサンプルクロック信号に基づいて、サンプルクロック信号の周期と時間との関係を示す周期データを生成する周期データ生成処理と、周期データ生成処理によって生成された周期データに基づいて、信号処理部でサンプリングされる干渉信号の処理期間を決定する決定処理と、を実行可能に構成されている。
【0006】
上記の眼科装置では、サンプルクロック信号生成部は、等周波数間隔で周期的に変化するサンプルクロック信号を生成する。演算部は、生成されたサンプルクロック信号に基づいて、サンプルクロック信号の周期と時間との関係を示す周期データを生成する。サンプルクロック信号の周期-時間の関係が分かるため、サンプルクロック信号の周波数-時間の関係が特定でき、光源からの光の波長-時間の関係も特定できる。このため、周期データに基づいて信号処理部でサンプリングされた干渉信号の処理期間(例えば、信号処理部でサンプリングする期間)を設定することによって、光源からの光の波長が1周期変化する毎に同じ波長領域においてサンプリングした干渉信号を取得することができる。したがって、特定の波長の光を検出するための別個の部材を搭載することなく、干渉信号をサンプリングするためのサンプルクロック信号を用いてサンプリングされる干渉信号の処理期間を適切に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例に係る眼科装置の光学系の概略構成を示す図。
図2】実施例に係る眼科装置の制御系を示すブロック図。
図3】0点調整機構の機能を説明するための図。
図4】干渉信号波形を処理する手順を説明するための図。
図5】トリガー信号を生成する処理の一例を示すフローチャート。
図6】光源装置から出射される光の波長の波形が正弦波であるときの光源装置から出射される光とK-clock信号との関係を示す図であり、(a)は光源装置から出射される光の波長と時間との関係を示し、(b)はK-clock信号の信号強度と時間との関係を示し、(c)はK-clock信号の周期と時間との関係を示し、(d)はK-clock信号の周波数と時間との関係を示す。
図7】光源装置から出射される光の波長の波形がのこぎり波であるときの光源装置から出射される光とK-clock信号との関係を示す図であり、(a)は光源装置から出射される光の波長と時間との関係を示し、(b)はK-clock信号の信号強度と時間との関係を示し、(c)はK-clock信号の周期と時間との関係を示す。
図8】光源装置から出射される光の波長の波形が三角波であるときの光源装置から出射される光とK-clock信号との関係を示す図であり、(a)は光源装置から出射される光の波長と時間との関係を示し、(b)はK-clock信号の信号強度と時間との関係を示し、(c)はK-clock信号の周期と時間との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0009】
(特徴1)本明細書が開示する眼科装置では、光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を掃引してもよい。演算部は、周期データにおいて周期が少なくとも最大及び最小となる基準時間を検出する基準時間検出処理をさらに実行可能に構成されていてもよい。決定処理は、基準時間検出処理によって検出された基準時間に基づいて処理期間を設定してもよい。このような構成によると、波長掃引型の光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を周期的に掃引する。このため、波長掃引型の光源から出力される光から生成されるサンプルクロック信号の周期データも周期的に変動する。したがって、周期データにおいて周期が最大又は最小のいずれかとなる時間が周期的に現れ、この時間を基準としてサンプリングされる干渉信号の処理期間を設定することによって、光の波長が1周期変化する毎に同じタイミングでサンプリングされた干渉信号をデータ処理に用いることができる。
【0010】
(特徴2)本明細書が開示する眼科装置では、光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を掃引してもよい。光源からの光の波長の波形は正弦波であってもよい。演算部は、周期データにおいて所定の周期となる時間を検出する所定周期時間検出処理と、所定周期時間検出処理によって検出された所定の周期となる時間に基づいて、周期データにおいて周期が少なくとも最大及び最小のいずれかとなる基準時間を特定する特定処理と、をさらに実行可能に構成されていてもよい。決定処理は、基準時間に基づいて処理期間を決定してもよい。このような構成によると、波長掃引型の光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を周期的に掃引し、光源からの光の波形は正弦波となる。このため、光源からの光から生成されるサンプルクロック信号の周期データは正弦波に対応して周期的に変動する。したがって、周期データにおいて所定の周期となる時間を検出すると、その検出した時間から周期が最大又は最小となる基準時間を特定することができる。特定された基準時間に基づいてサンプリングされる干渉信号の処理期間を決定することで、光の波長が1周期変化する毎に同じタイミングでサンプリングされた干渉信号をデータ処理に用いることができる。
【0011】
(特徴3)本明細書が開示する眼科装置では、光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を掃引してもよい。光源からの光の波長の波形はのこぎり波であってもよい。演算部は、周期データにおいて周期が一定値から変化するときの時間である基準時間を検出する基準時間検出処理をさらに実行可能に構成されていてもよい。決定処理は、基準時間検出処理によって検出された基準時間に基づいて処理期間を設定してもよい。このような構成によると、波長掃引型の光源は、第1波長から第2波長までの波長領域で光の波長を周期的に掃引し、光源からの光の波形はのこぎり波となる。このため、光源からの光から生成されるサンプルクロック信号の周期データは、光源からの光の波長が増加又は減少する間、それぞれ異なる値で一定となる。したがって、周期データにおいて一定値から変化するときの時間を基準としてサンプリングされる干渉信号の処理期間を設定することによって、光の波長が1周期変化する毎に同じタイミングでサンプリングされた干渉信号をデータ処理に用いることができる。
【0012】
(特徴4)本明細書が開示する眼科装置では、信号処理部は、決定処理によって決定された処理期間に基づいて、干渉信号をサンプリングしてもよい。このような構成によると、信号処理部は、周期データに基づいて決定した処理時間の間、干渉信号をサンプリングすることができる。このため、光の波長が1周期変化する毎に同じタイミングで干渉信号をサンプリングすることができる。
【0013】
(特徴5)本明細書が開示する眼科装置では、信号処理部は、少なくとも処理期間に亘って干渉信号をサンプリングしてもよい。演算部は、決定処理によって決定された処理期間に対応する干渉信号を、信号処理部でサンプリングされた干渉信号から抽出してもよい。このような構成によると、信号処理部でサンプリングされた干渉信号の中から、周期データに基づいて決定した処理時間に対応する干渉信号が抽出される。このため、光の波長が1周期変化する毎に同じタイミングでサンプリングされた干渉信号をデータ処理に用いることができる。
【実施例
【0014】
(実施例1)
以下、実施例に係る眼科装置1について説明する。図1に示すように、眼科装置1は、光源装置12と、被検眼100を検査するための測定部10と、K-clock発生装置80を備えている。光源装置12から出射される光は、ビームスプリッタ18に照射され、ビームスプリッタ18で測定部10に導かれる光とK-clock発生装置80に導かれる光に分岐される。
【0015】
測定部10は、被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対して測定部10を所定の位置関係にアライメントするためのアライメント光学系(図示省略)を有している。アライメント光学系は、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0016】
干渉光学系14は、光源装置12からの光を被検眼100の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源装置12からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を受光する受光素子26によって構成されている。
【0017】
光源装置12は、波長掃引型の光源装置であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。本実施例では、光源装置12は、光の波長の波形が正弦波となるように、光の波長を変化させて出射している(図6(a)参照)。光源装置12から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼100の深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼100の深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼100の内部の各部位(すなわち、水晶体104や網膜106)の位置を特定することが可能となる。
【0018】
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ミラー28と、0点調整機構30と、ミラー34と、焦点調整機構40と、ガルバノスキャナ46と、ホットミラー48によって構成されている。光源装置12から出射された光は、ビームスプリッタ18を介して測定部10に導かれる。測定部10に導かれた光は、ビームスプリッタ24、ミラー28、0点調整機構30、ミラー34、焦点調整機構40、ガルバノスキャナ46、及びホットミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ホットミラー48、ガルバノスキャナ46、焦点調整機構40、ミラー34、0点調整機構30、ミラー28、及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。
【0019】
0点調整機構30は、コーナキューブ32と、コーナキューブ32をミラー28、34に対して進退動させる第2駆動装置56(図2に図示)を備えている。第2駆動装置56がコーナキューブ32を図1の矢印Aの方向に駆動することで、光源装置12から被検眼100までの光路長(すなわち、測定光学系の物体光路長)が変化する。図3に示すように、光源装置12から被検眼100の検出面(図3では角膜表面)までの物体光路長(詳細には、光源装置12~検出面+検出面~受光素子26)と、光源装置12から参照ミラー22までの参照光路長(詳細には、光源12~参照ミラー22+参照ミラー22~受光素子26)とに光路差ΔZが存在する場合、光路差ΔZが大きくなるほど、検出面から反射される反射光と参照光とを合成した干渉光の強度は弱くなる。逆に、光路差ΔZが小さいほど、干渉光の強度は強くなる。このため、本実施例では、0点調整機構30により物体光路長を変化させることで、参照光路長と物体光路長とが一致する位置(いわゆる、0点)を角膜102の表面から網膜106の表面まで変化させることができる。
【0020】
焦点調整機構40は、光源装置12側に配置される凸レンズ42と、被検眼100側に配置される凸レンズ44と、凸レンズ42に対して凸レンズ44を光軸方向に進退動させる第3駆動装置58(図2に図示)を備えている。凸レンズ42と凸レンズ44は、光軸上に配置され、入射する平行光の焦点の位置を変化させる。第3駆動装置58が凸レンズ44を図1の矢印Bの方向に駆動することで、被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の深さ方向に変化し、被検眼100に照射される光の焦点の位置が調整される。
【0021】
ガルバノスキャナ46は、ガルバノミラー46aと、ガルバノミラー46aを傾動させる第4駆動装置60(図2参照)を備えている。第4駆動装置60がガルバノミラー46aを傾動することで、被検眼100への測定光の照射位置が走査される。
【0022】
参照光学系は、ビームスプリッタ24と、参照ミラー22によって構成されている。ビームスプリッタ18で測定部10に導かれる光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22に照射され、参照ミラー22によって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22とビームスプリッタ24と受光素子26は、干渉計20内に配置され、その位置が固定されている。このため、本実施例の眼科装置1では、参照光学系の参照光路長は一定で変化しない。
【0023】
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した干渉光を検出する。受光素子26は、干渉光を受光すると、それに応じた干渉信号を出力する。干渉信号は、サンプリング回路66を介して演算装置64に入力される。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
【0024】
観察光学系50は、被検眼100にホットミラー48を介して観察光を照射すると共に、被検眼100から反射される反射光(すなわち、照射された観察光の反射光)を撮影する。ここで、ホットミラー48は、干渉光学系14の光源装置12からの光を反射する一方で、観察光学系50の光源装置からの光を透過する。このため、本実施例の眼科装置1では、干渉光学系14による測定と、観察光学系50による前眼部の観察を同時に行うことができる。なお、観察光学系50には、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な構成については説明を省略する。
【0025】
K-clock発生装置80は、等周波数間隔(光の周波数の変化に対して均等な間隔)にて干渉信号のサンプリングを行うために、ビームスプリッタ18から分岐された光からサンプルクロック(K-clock)信号を光学的に生成する。そして、生成されたK-clock信号は、サンプリング回路66に向けて出力される。サンプリング回路66がK-clock信号に基づいて干渉信号をサンプリングすることで、干渉信号の歪みが抑えられ、分解能が悪化することが防止される。また、K-clock発生装置80は、生成したK-clock信号をK-clock用サンプリング回路82を介して演算装置64にも出力する。なお、K-clock発生装置80は、「サンプルクロック信号生成部」の一例である。
【0026】
サンプリング回路66は、干渉信号とK-clock信号が入力され、K-clock信号で規定されるタイミングで干渉信号をサンプリングする。サンプリング回路66には、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。サンプリング回路66は、被検眼100内部のAスキャン情報(被検眼100の内部構造について、測定光軸に沿った深さ方向の位置と信号強度との関係を示す情報)を取得するために、干渉信号をサンプリングする。
【0027】
また、本実施例の眼科装置1では、被検眼100に対して測定部10(詳細には、測定部10のうち干渉計20を除いた部分の光学系)の位置を調整するための位置調整機構16(図2に図示)と、その位置調整機構16を駆動する第1駆動装置54(図2に図示)を備えている。第1駆動装置54が、検査者の操作部材の操作に応じて位置調整機構16を駆動することで、被検眼100に対する測定部10のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。
【0028】
次に、本実施例の眼科装置1の制御系の構成を説明する。図2に示すように、眼科装置1は演算装置64によって制御される。演算装置64は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置64には、光源装置12と、第1~第4駆動装置54~60と、モニタ62と、観察光学系50が接続されている。演算装置64は、光源装置12のオン/オフを制御し、第1~第4駆動装置54~60を制御することで位置調整機構16、0点調整機構30、焦点調整機構40、ガルバノスキャナ46を駆動し、また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される前眼部像をモニタ62に表示する。
【0029】
また、演算装置64には、サンプリング回路66とK-clock用サンプリング回路82が接続されている。演算装置64は、K-clock発生装置80で生成されたK-clock信号がK-clock用サンプリング回路82を介して入力され、K-clock信号に基づいてサンプリング開始を規定するトリガー信号を生成する。なお、演算装置64におけるトリガー信号の生成については、後に詳述する。演算装置64は、生成したトリガー信号をサンプリング回路66に出力する。サンプリング回路66は、トリガー信号が入力すると、予め設定された時間のあいだK-clock信号で規定されるタイミングで干渉信号を取得する。演算装置64には、サンプリング回路66においてサンプリングされた干渉信号が入力される。上述したように、受光素子26から出力される干渉信号は、図4に示すように、信号強度が時間によって変化する信号となり、この信号には被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波による信号が含まれている。演算装置64は、サンプリングされた干渉信号をフーリエ変換して、その干渉信号から被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)による干渉信号成分を分離する(図4の下段のグラフ参照)。これにより、演算装置64は、被検眼100の各部の位置を特定することができる。
【0030】
次に、本実施例の眼科装置1において、トリガー信号を生成する処理について説明する。本実施例の眼科装置1では、波長掃引型の光源装置12を用いており、光源装置12から出射する光の波長が周期的に変化する。このような光源装置12を用いる場合には、光源装置12から出射される光の波長が1周期変化する毎に同じ波長領域においてサンプリングすると、干渉信号の歪みを抑制できる。また、上述したように、サンプリング回路66で干渉信号をサンプリングする際には、演算装置64からトリガー信号を入力し、トリガー信号で規定するタイミングでサンプリングを開始する。したがって、演算装置64は、トリガー信号を、光源装置12から出射される光の波長が1周期変化する毎に同じ波長となるタイミングを規定するように生成する。一般的に、トリガー信号を生成する際には、特定の波長の光を検出し、検出した波長の光からトリガー信号を生成する。特定の波長の光の検出には、FBG(ファイバブラッググレーティング)やエタロン等が用いられる。本実施例の眼科装置1は、FBGやエタロン等のコストの高い部材を用いることなく、干渉信号をサンプリングするためのK-clock信号を用いてトリガー信号を生成する。以下、図5及び図6を参照して、トリガー信号を生成する処理について説明する。
【0031】
図5に示すように、まず、演算装置64は、K-clock発生装置80で生成され、K-clock用サンプリング回路82でサンプリングされたK-clock信号を取得する(S12)。上述したように、K-clock発生装置80は、光源装置12から出射された光から等周波数間隔で周期的に変化するK-clock信号を生成する。K-clock発生装置80は、生成したK-clock信号をK-clock用サンプリング回路82に出力し、K-clock用サンプリング回路82は、K-clock信号をサンプリングする。演算装置64は、サンプリングされたK-clock信号を入力する。
【0032】
ここで、図6(a)~図6(d)を参照して、光源装置12から出射される光と、K-clock信号との関係について説明する。図6(a)は、光源装置12から出射される光の波長と時間との関係を示しており、図6(b)は、K-clock信号の信号強度と時間との関係を示しており、図6(c)は、K-clock信号の周期データを示しており、図6(b)は、K-clock信号の周波数と時間との関係を示している。
【0033】
光源装置12は、光の波長を所定の周期で変化させた光を出射している。本実施例では、図6(a)に示すように、光源装置12から出射される光の波長の波形は正弦波であり、K-clock信号は、等周波数間隔で周期的に変動する。図6(b)及び図6(d)に示すように、K-clock信号の信号強度の波形は、K-clock信号の周波数が小さいとき間隔が広くなり、K-clock信号の周波数が大きいとき間隔が狭くなる。また、K-clock信号の信号強度と光源装置12から出射される光の波長との関係で説明すると、図6(a)及び図6(b)に示すように、K-clock信号の信号強度の波形は、光源装置12から出射される光の波長の変化(波形の傾き)が小さいときに間隔が広くなり、光源装置12から出射される光の波長の変化(波形の傾き)が大きいときに間隔が狭くなる。
【0034】
次に、演算装置64は、ステップS12で取得したK-clock信号から、K-clock信号の周期と時間との関係を示す周期データを生成する(S14)。演算装置64は、K-clock信号の信号強度と時間との関係(図6(b)参照)からK-clock信号の周期を算出し、K-clock信号の周期と周期データ番号との関係を示すデータを生成する。このデータでは、周期データ番号と時間が対応している。このため、以下では、K-clock信号の周期と時間との関係を示すデータを「K-clock信号の周期データ」と称する。図6(c)は、K-clock信号の周期データを示している。図6(b)及び図6(c)に示すように、K-clock信号の周期は、K-clock信号の信号強度の波形の間隔が広いときに大きくなり、K-clock信号の信号強度の波形の間隔が狭いときに小さくなる。また、K-clock信号の周期と光源装置12から出射される光の波長との関係で説明すると、図6(a)及び図6(c)に示すように、K-clock信号の周期は、光源装置12から出射される光の波長の変化(波形の傾き)が小さいときに大きくなり、光源装置12から出射される光の波長の変化(波形の傾き)が大きいときに小さくなる。また、光の波長の変化(波形の傾き)が増加から減少に切替わるときや、減少から増加に切替わるときは、波形の傾きが0となるため、K-clock信号の周期は無限大となる。
【0035】
次に、演算装置64は、ステップS14で生成した周期データから基準時間を特定する(S16)。基準時間は、トリガー信号を生成する際の基準となる時間であり、本実施例では、K-clock信号の周期が最小となる時間を基準時間とする。
【0036】
基準時間は、以下の手順で特定する。図6(c)に示すように、演算装置64は、K-clock信号の周期データにおいて、所定の周期Tとなる時間t1、t2を検出する。そして、演算装置64は、検出された時間t1とt2との中間(すなわち、(t1+t2)/2)の時間t3を算出する。図6(c)及び図6(d)に示すように、所定の周期Tとなる時間t1、t2は、所定の周波数Sとなる時間に対応し、時間t1とt2との中間の時間t3は、周波数が最大となる時間に対応する。したがって、光源装置12から出射される光の周波数が最大となる時間(時間t3)に、K-clock信号の周期は最小になる。このようにして、K-clock信号の周期が最小となる基準時間を検出する。上記の手順で基準時間を特定すると、K-clock信号の周期が最小となる時間を正確に検出できない場合であっても、基準時間を特定することができる。なお、本実施例では、所定の周期Tとなる時間t1、t2から基準時間を検出したが、このような構成に限定されない。例えば、K-clock信号の周期が最小となる時間を正確に検出可能な場合には、K-clock信号の周期が最小となる時間を直接検出してもよい。すなわち、K-clock信号の信号強度の測定精度が十分に高い場合には、周期データが減少から増加に変化する変曲点が精度良く特定できるため、K-clock信号の周期が最小となる時間を直接特定してもよい。
【0037】
次に、演算装置64は、ステップS16で検出した基準時間に基づいて、トリガー信号を生成する(S18)。本実施例では、基準時間は、K-clock信号の周期が最小となる時間t3であり、光源装置12から出射される光の波長の変化(波形の傾き)が最大になる時間である(図6(a)及び図6(c)参照)。光源装置12から出射される光の波長の波形が正弦波である場合、干渉信号のサンプリングは、光源装置12から出射される光の波長の変化が大きい波長領域で実行することが好ましい。すなわち、K-clock信号の周期が最小となる時間の前後で干渉信号をサンプリングすることが好ましい。演算装置64は、基準時間t3が検出された周期の次の周期においてK-clock信号の周期が最小となる時間の前後で干渉信号をサンプリングするように、基準時間t3から所定時間経過した時間を規定するトリガー信号を生成する。このように生成されたトリガー信号に基づいてサンプリングすることによって、FGBやエタロン等のコストの高い部材を用いて特定の波長を検出することなく、光源装置12から出射される光の波長が1周期変化する毎に同じ波長領域において干渉信号をサンプリングすることができる。
【0038】
なお、本実施例では、K-clock信号の周期が最小となる時間を基準時間としていたが、このような構成に限定されない。基準時間は、光源装置12から出射される光の波長が特定の波長となる時間に対応していればよく、例えば、K-clock信号の周期が最大となる時間を基準時間としてもよい。このような基準時間では、光源装置12から出射される光の波長は最大又は最小となる(図6(a)及び図6(c)参照)。この場合にも、所定の周期となる2つの時間に基づいて基準時間を特定してもよいし、K-clock信号の周期が最大となる時間(基準時間)を直接検出してもよい。また、このように基準時間を設定する場合には、演算装置64は、基準時間を検出した周期において、基準時間から所定時間経過した時間を規定するトリガー信号を生成してもよい。このようにトリガー信号を生成しても、光源装置12から出射される光の波長が1周期変化する毎に同じ波長領域において干渉信号をサンプリングすることができる。
【0039】
(実施例2)
上記の実施例1では、光源装置12から出射される光の波長の波形は正弦波であったが、このような構成に限定されない。光源装置から出射される光の波長は所定の周期で変化していればよく、例えば、光源装置から出射される光の波長の波形は、のこぎり波であってもよい。以下に、図7を参照して、光源装置から出射される光の波長の波形がのこぎり波である場合に、演算装置64がトリガー信号を生成する処理について説明する。図7(a)は、光源装置12から出射される光の波長と時間との関係を示しており、図7(b)は、K-clock信号の信号強度と時間との関係を示しており、図7(c)は、K-clock信号の周期データを示している。
【0040】
まず、演算装置64は、図5のステップS12の処理を実行する。すなわち、演算装置64は、K-clock発生装置80からK-clock信号を取得する。図7(a)に示すように、光源装置から出射される光の波長の波形がのこぎり波である場合、光の波長は、一定の割合で比較的緩やかに増加し、波長が最大になると波長が最小となるまで一定の割合で比較的急激に減少する。上述したように、K-clock信号の信号強度の波形は、光源装置12から出射される光の波長の変化(波形の傾き)が小さいときに間隔が広くなり、光源装置12から出射される光の波長の変化(波形の傾き)が大きいときに間隔が狭くなる。このため、図7(b)に示すように、K-clock信号の信号強度の波形は、光源装置から出射される光の波長が急激に減少する間、間隔が狭くなると共に、一定の割合で減少するためその間隔は略一定となる。また、K-clock信号の信号強度の波形は、光源装置から出射される光の波長が緩やかに増加する間、間隔が広くなると共に、一定の割合で増加するためその間隔は略一定となる。
【0041】
次に、演算装置64は、図5のステップS14の処理を実行する。すなわち、演算装置64は、ステップS12で取得したK-clock信号から、K-clock信号の周期と時間との関係を示す周期データを生成する。演算装置64は、K-clock信号の信号強度と時間との関係(図7(b)参照)からK-clock信号の周期を算出し、K-clock信号の周期データを生成する。上述したように、K-clock信号の周期は、K-clock信号の信号強度の波形の間隔が広いときに大きくなり、K-clock信号の信号強度の波形の間隔が狭いときに小さくなる。このため、図7(a)~図7(c)に示すように、K-clock信号の周期は、光源装置から出射される光の波長が急激に減少する間、小さい値で一定となる。また、K-clock信号の周期は、光源装置から出射される光の波長が緩やかに増加する間、大きい値で一定となる。
【0042】
次に、演算装置64は、図5のステップS16の処理を実行する。すなわち、演算装置64は、ステップS14で生成した周期データから基準時間を検出する。本実施例では、基準時間は、K-clock信号の周期の値が変化するときの時間とする。これによって、光源装置から出射される光の波長が増加する期間の開始時間(例えば、図7(c)の時間t4)と終了時間(例えば、図7(c)の時間t5)を検出することができる。
【0043】
次に、演算装置64は、図5のステップS18の処理を実行する。すなわち、演算装置64は、ステップS16で検出した基準時間に基づいて、トリガー信号を生成する。図7(a)に示すように、本実施例では、光源装置から出射される光の波長は最小値から最大値まで緩やかに増加するため、光源装置から出射される光の波長が増加する間の時間が長くなっている。このため、演算装置64は、光源装置から出射される光の波長が増加する間に干渉信号をサンプリングするようにトリガー信号を生成する。具体的には、演算装置64は、光源装置から出射される光の波長が増加する期間の開始時間t4から所定時間が経過した時間を規定するトリガー信号を生成する。これによって、光源装置から出射される光の波長の波形がのこぎり波である場合であっても、演算装置64は、光源装置から出射される光の波長が1周期変化する毎に同じ波長となる時間を規定するトリガー信号を生成することができる。
【0044】
なお、本実施例では、光源装置から出射される光の波長の波形は、一定の割合で比較的緩やかに増加し、波長が最大になると波長が最小となるまで一定の割合で比較的急激に減少していたが、このような構成に限定されない。例えば、光の波長の波形は、一定の割合で比較的緩やかに減少し、波長が最小になると波長が最大となるまで一定の割合で比較的急激に増加していてもよい。
【0045】
(実施例3)
上記の実施例2では、光源装置から出射される光の波長の波形はのこぎり波であったが、光源装置から出射される光の波長の波形は三角波であってもよい。以下に、図8を参照して、光源装置から出射される光の波長の波形が三角波である場合に、演算装置64がトリガー信号を生成する処理について説明する。図8(a)は、光源装置12から出射される光の波長と時間との関係を示しており、図8(b)は、K-clock信号の信号強度と時間との関係を示しており、図8(c)は、K-clock信号の周期データを示している。
【0046】
まず、演算装置64は、K-clock発生装置80からK-clock信号を取得する(図5のステップS12)。図8(a)に示すように、光源装置から出射される光の波長の波形が三角波である場合、光の波長は、波長の最大値と最小値との間で、一定の割合で増加すると共に、一定の割合で減少する。このため、K-clock信号の信号強度の波形は、光源装置から出射される光の波長が増加する間、間隔は略一定となると共に、光源装置から出射される光の波長が減少する間も、間隔は略一定となる。また、光源装置から出射される光の波長は、増加するときと減少するときで同じ割合で変化する。このため、図8(b)に示すように、K-clock信号の信号強度の波形は、全ての時間に亘って略一定の間隔となる。しかしながら、光源装置から出射される光の波長が増加と減少との間で変位するとき、すなわち、光の波長が増加から減少に切り替わるときや減少から増加に切り替わるとき、光源装置から出射される光の波長の変化が不連続となり、K-clock信号の信号強度の波形に乱れが生じる。

【0047】
次に、演算装置64は、ステップS12で取得したK-clock信号から、K-clock信号の周期と時間との関係を示す周期データを生成する(図5のステップS14)。演算装置64は、K-clock信号の信号強度と時間との関係(図8(b)参照)からK-clock信号の周期を算出し、K-clock信号の周期データを生成する。上述したように、図8(b)に示すK-clock信号の信号強度の波形は、全ての時間に亘って略一定の間隔であるため、K-clock信号の周期は略一定となる。しかしながら、光源装置から出射される光の波長が増加と減少との間で変位するとき、K-clock信号の信号強度の波形に乱れが生じるため、この時間において、K-clock信号の周期は異なる値として検出される。
【0048】
次に、演算装置64は、ステップS14で生成した周期データから、基準時間を検出する(図5のステップS16)。本実施例では、基準時間は、K-clock信号の周期の値が変化するときの時間とする。これによって、光源装置から出射される光の波長が増加する期間と減少する期間との間で変位する時間を検出することができる。例えば、光源装置から出射される光の波長の増加と減少との間の変位が短い時間で実行されるとき(図8(c)においてAで示す状態のとき)、K-clock信号の周期が異なる値として検出される時間も短くなる。このような場合には、K-clock信号の周期の値が変化するときの時間(例えば、図8(c)の時間t6)を基準時間として検出する。また、光源装置から出射される光の波長の増加と減少との間の変位が短い時間で実行されないとき(図8(c)においてBで示す状態のとき)、K-clock信号の周期が異なる値として検出される時間は比較的長くなる。このような場合には、K-clock信号の周期データを微分することによって、K-clock信号の周期の値が変化する期間(例えば、図8(c)の時間t7~t8)を検出し、その中間の時間を基準時間としてもよい。
【0049】
次に、演算装置64は、ステップS16で検出した基準時間に基づいて、トリガー信号を生成する(図5のステップS18)。図8(a)に示すように、本実施例では、光源装置から出射される光の波長は、波長の最大値と最小値との間で、一定の割合で増加すると共に、一定の割合で減少する。このため、演算装置64は、光源装置から出射される光の波長が増加している間と減少している間の両方で干渉信号をサンプリングするようにトリガー信号を生成する。具体的には、演算装置64は、ステップS16で検出した基準時間から所定時間が経過した時間を規定するトリガー信号を生成する。これによって、光源装置から出射される光の波長の波形が三角波である場合であっても、演算装置64は、光源装置から出射される光の波長が1周期変化する毎に同じ波長となる時間を規定するトリガー信号を生成することができる。
【0050】
なお、上記の実施例1~3では、K-clock信号の周期データに基づいてトリガー信号を生成し、生成したトリガー信号に基づいてサンプリング回路66において干渉信号をサンプリングしていたが、このような構成に限定されない。K-clock信号の周期データに基づいて、所定の波長領域においてサンプリングされた干渉信号を取得できればよく、例えば、演算装置64は、先に干渉信号を取得し、取得した干渉信号から、K-clock信号の周期データに基づいて決定した期間に対応する干渉信号を抽出してもよい。具体的には、演算装置64は、K-clock信号が規定する等周波数間隔でサンプリングした干渉信号をサンプリング回路66から入力する。このとき、サンプリング回路66では、データ処理に必要な所定の波長領域となる期間(以下、処理期間ともいう)を含むように、当該処理期間より長い期間において、干渉信号をサンプリングする。次いで、演算装置64は、上記の実施例1~3のいずれかの処理(具体的には、図5のステップS12~ステップS16の処理)により、基準時間を特定する。次いで、演算装置64は、特定した基準時間に基づき処理期間を決定し、決定した処理期間に対応する干渉信号を、取得した干渉信号から抽出する。この場合にも、光源装置12から出射される光の波長が1周期変化する毎に同じ波長領域においてサンプリングされた干渉信号を取得することができる。
【0051】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0052】
1:眼科装置
10:測定部
12:光源装置
14:干渉光学系
16:位置調整機構
22:参照ミラー
26:受光素子
40:焦点調整機構
46:ガルバノスキャナ
50:観察光学系
64:演算装置
66:サンプリング回路
80:K-clock発生装置
82:K-clock用サンプリング回路
100:被検眼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8