(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】冷蔵庫およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F25D 23/06 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
F25D23/06 W
(21)【出願番号】P 2019039375
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】青木 均史
(72)【発明者】
【氏名】山川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】土田 俊之
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-276310(JP,A)
【文献】特開2005-055086(JP,A)
【文献】特開2012-021665(JP,A)
【文献】特開2015-087099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯蔵室が形成される断熱箱体と、前記貯蔵室に送風される空気を冷却する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルの冷媒が流通する冷媒配管と、を備え、
前記断熱箱体は、前記断熱箱体の外面を形成する外箱と、前記外箱の内部に配設される内箱と、前記外箱と前記内箱との間の断熱用空間に配設される断熱材と、を有し、
前記断熱材は、少なくとも前記断熱箱体の横幅方向の両側の前記断熱用空間にそれぞれ配設され、前記断熱箱体の高さ方向にその長手方向を有する真空断熱材と、前記真空断熱材の配設領域を含む前記断熱用空間に発泡充填される発泡断熱材と、を有し、
前記断熱箱体の奥行方向の前方側に位置する前記真空断熱材の一端側には、少なくともその一部が、前記外箱と前記真空断熱材との間に配置される複数のスペーサが取り付けられ、
前記断熱箱体の奥行方向の後方側に位置する前記真空断熱材の他端側には、前記外箱と前記真空断熱材との間に配置され、前記断熱箱体の奥行方向にその長手方向を有する複数の断熱性矯正部材が配置され
、
前記真空断熱材は、前記断熱箱体の高さ方向において、前記内箱の天面近傍まで配設され、
前記断熱性矯正部材は、前記内箱の前記天面近傍の前記真空断熱材を前記内箱側へと押し付けた状態にて前記断熱用空間に固定されていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
少なくとも前記断熱箱体の横幅方向の両側の前記断熱用空間には、前記外箱に固定された前記冷媒配管が配設され、
前記断熱性矯正部材は、弾性部材から成ると共に、その長手方向の端部に面取り加工された切り欠き部を有し、
前記断熱性矯正部材は、その長手方向において、少なくとも前記冷媒配管が2本以上食い込んだ状態にて前記断熱用空間に固定されていると共に、前記切り欠き部が、前記冷媒配管側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記断熱性矯正部材は、発泡樹脂材から成ることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
断熱箱体を構成する外箱と、前記外箱の内部に配設される内箱と、前記外箱と前記内箱との間の断熱用空間に配設され、前記断熱箱体の高さ方向にその長手方向を有する真空断熱材と、前記真空断熱材を前記断熱用空間内に固定するスペーサ及び断熱性矯正部材と、を準備する工程と、
前記外箱の内部に前記内箱を配置し、前記断熱箱体の奥行方向の前方側の前記真空断熱材に前記スペーサを取り付けた後、少なくとも前記断熱箱体の横幅方向の両側の前記断熱用空間に前記真空断熱材をそれぞれ挿入する工程と、
前記真空断熱材が配置された前記断熱用空間に、その長手方向が前記断熱箱体の奥行方向となるように前記断熱性矯正部材を挿入し、前記断熱箱体の奥行方向の後方側から少なくとも中央にかけて前記真空断熱材を前記内箱へと押し付ける工程と、
前記断熱用空間に液状の発泡材を注入して発泡させ、前記真空断熱材の配設領域を含む前記断熱用空間に発泡断熱材を形成する工程と、を具備することを特徴とする冷蔵庫の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫およびその製造方法に関し、特に、断熱材として真空断熱材を備え、断熱性矯正部材により真空断熱材を内箱へと固定し、発泡断熱材の未充填領域の発生を防止する冷蔵庫およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な冷蔵庫では、断熱箱体の内部に貯蔵室を形成し、この貯蔵室の前方開口を断熱扉で開閉可能に塞いでいる。断熱箱体は、鋼板から成る外箱と、外箱の内側に配置される合成樹脂板から成る内箱と、外箱と内箱との間に充填された断熱材とから成る。
【0003】
冷蔵庫の断熱箱体に充填される断熱材としては、一般的に発泡ウレタンが採用される。しかしながら、冷蔵庫の更なる省エネルギ化に対処するためには発泡ウレタンよりも断熱性が高い断熱材が好ましい。
【0004】
そこで、断熱箱体に内蔵される断熱材として真空断熱材が採用される場合がある。真空断熱材はガラスウール等の繊維状無機材料を真空包装したものであり、発泡ウレタンの十数倍以上の断熱効果を有する。係る構成とすることで、真空断熱材により貯蔵室と外部とを良好に断熱でき、冷蔵庫の冷却運転に要するエネルギを低減することができる。
【0005】
図12を参照して、真空断熱材が採用された従来の冷蔵庫100の構成を説明する。
図12は、従来の冷蔵庫100を示す断面図である。
【0006】
図12に示す如く、冷蔵庫100は、外箱101および内箱102を有し、内箱102の内部に貯蔵室107が形成されている。また、外箱101と内箱102との間には、断熱材として発泡断熱材103および真空断熱材104が配設されている。真空断熱材104は、外箱101の内面に貼着されている。また、外箱101の内面には、冷媒が流通するパイプ106が配設されている。よって、真空断熱材104の外面には、パイプ106に則して溝105が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図12に示す冷蔵庫100では、冷蔵庫100の断熱の観点からも、冷蔵庫100の製造方法の観点からも改善の余地があった。
【0009】
冷蔵庫100では、真空断熱材104は、外箱101側に配置されている。そして、外箱101の4隅では、真空断熱材104が配設されていない領域があり、その領域から貯蔵室107内へと熱侵入があり、断熱効果を十分に発揮し難いという課題がある。
【0010】
また、冷蔵庫100の製造工程に於いて、接着剤を用いて外箱101の内面に真空断熱材104を貼着する必要があるが、接着工程を行うことで、冷蔵庫100の製造コストが上昇する課題がある。
【0011】
また、外箱101の内面には、冷媒が流通するパイプ106が配設されるため、真空断熱材104にパイプ106を設置するための溝105を形成し、パイプ106からの放熱性を高める必要がある。そのため、真空断熱材104には、パイプ106の配管経路に合わせて溝105を形成する必要があり、冷蔵庫100の製造コストが上昇する課題がある。
【0012】
上記課題を解決するために、真空断熱材104を内箱102に沿って配設する構造が考えられる。そして、上記製造コストの観点から接着工程を省略する場合、真空断熱材104の長手方向の両端部の湾曲した領域にて、真空断熱材104と内箱102との間に隙間が発生する恐れがある。そして、発泡断熱材103が、上記隙間内に浸入し、真空断熱材104と内箱102との間に立ち上がることで、真空断熱材104と外箱101との間に、発泡断熱材103の未充填領域が発生し、その未充填領域に起因する外箱101の外観不良により、歩留りが悪化する恐れがある。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、断熱材として真空断熱材を備え、断熱性矯正部材により真空断熱材を内箱へと固定し、発泡断熱材の未充填領域の発生を防止する冷蔵庫およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の冷蔵庫では、内部に貯蔵室が形成される断熱箱体と、前記貯蔵室に送風される空気を冷却する冷凍サイクルと、前記冷凍サイクルの冷媒が流通する冷媒配管と、を備え、前記断熱箱体は、前記断熱箱体の外面を形成する外箱と、前記外箱の内部に配設される内箱と、前記外箱と前記内箱との間の断熱用空間に配設される断熱材と、を有し、前記断熱材は、少なくとも前記断熱箱体の横幅方向の両側の前記断熱用空間にそれぞれ配設され、前記断熱箱体の高さ方向にその長手方向を有する真空断熱材と、前記真空断熱材の配設領域を含む前記断熱用空間に発泡充填される発泡断熱材と、を有し、前記断熱箱体の奥行方向の前方側に位置する前記真空断熱材の一端側には、少なくともその一部が、前記外箱と前記真空断熱材との間に配置される複数のスペーサが取り付けられ、前記断熱箱体の奥行方向の後方側に位置する前記真空断熱材の他端側には、前記外箱と前記真空断熱材との間に配置され、前記断熱箱体の奥行方向にその長手方向を有する複数の断熱性矯正部材が配置され、前記真空断熱材は、前記断熱箱体の高さ方向において、前記内箱の天面近傍まで配設され、前記断熱性矯正部材は、前記内箱の前記天面近傍の前記真空断熱材を前記内箱側へと押し付けた状態にて前記断熱用空間に固定されていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の冷蔵庫では、少なくとも前記断熱箱体の横幅方向の両側の前記断熱用空間には、前記外箱に固定された前記冷媒配管が配設され、前記断熱性矯正部材は、弾性部材から成ると共に、その長手方向の端部に面取り加工された切り欠き部を有し、前記断熱性矯正部材は、その長手方向において、少なくとも前記冷媒配管が2本以上食い込んだ状態にて前記断熱用空間に固定されていると共に、前記切り欠き部が、前記冷媒配管側に位置していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の冷蔵庫では、前記断熱性矯正部材は、発泡樹脂材から成ることを特徴とする。
【0018】
本発明の冷蔵庫の製造方法では、断熱箱体を構成する外箱と、前記外箱の内部に配設される内箱と、前記外箱と前記内箱との間の断熱用空間に配設され、前記断熱箱体の高さ方向にその長手方向を有する真空断熱材と、前記真空断熱材を前記断熱用空間内に固定するスペーサ及び断熱性矯正部材と、を準備する工程と、前記外箱の内部に前記内箱を配置し、前記断熱箱体の奥行方向の前方側の前記真空断熱材に前記スペーサを取り付けた後、少なくとも前記断熱箱体の横幅方向の両側の前記断熱用空間に前記真空断熱材をそれぞれ挿入する工程と、前記真空断熱材が配置された前記断熱用空間に、その長手方向が前記断熱箱体の奥行方向となるように前記断熱性矯正部材を挿入し、前記断熱箱体の奥行方向の後方側から少なくとも中央にかけて前記真空断熱材を前記内箱へと押し付ける工程と、前記断熱用空間に液状の発泡材を注入して発泡させ、前記真空断熱材の配設領域を含む前記断熱用空間に発泡断熱材を形成する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の冷蔵庫では、断熱箱体は、断熱箱体の外面を形成する外箱と、外箱の内部に配設される内箱と、外箱と内箱との間の断熱用空間に配設される断熱材と、を有している。断熱材は、少なくとも断熱箱体の横幅方向の両側の断熱用空間にそれぞれ配設され、断熱箱体の高さ方向にその長手方向を有する真空断熱材と、真空断熱材の配設領域を含む断熱用空間に発泡充填される発泡断熱材と、を有している。そして、断熱箱体の奥行方向において、真空断熱材の前方側には、少なくともその一部が、外箱と真空断熱材との間に配置されるスペーサが取り付けられ、真空断熱材の後方側には、外箱と真空断熱材との間に配置され、断熱箱体の奥行方向にその長手方向を有する断熱性矯正部材が配置されている。この構造により、上記断熱用空間において、真空断熱材は、断熱用矯正部材及びスペーサにて内箱側へと押し付けられ、しっかりと固定されていることで、発泡断熱材は、真空断熱材と外箱との間に未充填領域を有することなく形成されている。その結果、上記未充填領域に起因する外観不良により、冷蔵庫が破棄されることが防止される。
【0020】
また、本発明の冷蔵庫では、断熱箱体の横幅方向の両側の断熱用空間には、外箱に固定された冷媒配管が配設されている。断熱性矯正部材は、弾性部材から成ると共に、その長手方向の端部に面取り加工された切り欠き部を有している。そして、断熱性矯正部材は、その長手方向において、少なくとも冷媒配管が2本以上食い込んだ状態にて断熱用空間に固定され、切り欠き部が、冷媒配管側に位置している。この構造により、真空断熱材は、断熱性矯正部材により内箱側へと押し付けられ、内箱と密着した状態となる。更には、断熱性矯正部材は、切り欠き面を利用して上記断熱用空間内へと挿入されることで、作業性が大幅に向上する。
【0021】
また、本発明の冷蔵庫では、真空断熱材は、断熱箱体の高さ方向において、内箱の天面近傍まで配設され、断熱性矯正部材は、内箱の天面近傍の真空断熱材を内箱側へと押し付けた状態にて断熱用空間に固定されている。この構造により、真空断熱材には、その長手方向の両端部側が湾曲形状となっているものもあるが、真空断熱材は、断熱性矯正部材により、上記湾曲形状が矯正されて断熱用空間内へと配設されることで、発泡断熱材の未充填領域の発生が防止される。
【0022】
また、本発明の冷蔵庫では、断熱性矯正部材は、発泡樹脂材から成る。この構造により、断熱性矯正部材は、狭小領域である断熱性空間内へと配設されるが、その作業性を向上させると共に、真空断熱材を内箱側へとしっかりと固定することができる。
【0023】
本発明の冷蔵庫の製造方法では、断熱箱体を構成する外箱と、外箱の内部に配設される内箱と、外箱と内箱との間の断熱用空間に配設され、断熱箱体の高さ方向にその長手方向を有する真空断熱材と、真空断熱材を断熱用空間内に固定するスペーサ及び断熱性矯正部材と、を準備する工程と、外箱の内部に内箱を配置し、断熱箱体の奥行方向の前方側の真空断熱材にスペーサを取り付けた後、少なくとも断熱箱体の横幅方向の両側の断熱用空間に真空断熱材をそれぞれ挿入する工程と、真空断熱材が配置された断熱用空間に、その長手方向が断熱箱体の奥行方向となるように断熱性矯正部材を挿入し、断熱箱体の奥行方向の後方側から少なくとも中央にかけて真空断熱材を内箱へと押し付ける工程と、断熱用空間に液状の発泡材を注入して発泡させ、真空断熱材の配設領域を含む断熱用空間に発泡断熱材を形成する工程と、を具備する。この製造方法により、上記断熱用空間において、断熱用矯正部材及びスペーサにて真空断熱材を内箱側へと押し付け、しっかりと固定した状態にて、発泡断熱材を形成することができる。そして、発泡断熱材が、真空断熱材と内箱との間に形成されることを防止し、真空断熱材と外箱との間に発泡断熱材の未充填領域が発生することを防止し、上記未充填領域に起因する外観不良により、冷蔵庫が破棄されることを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫を説明する図であり、(A)は冷蔵庫を前方から見た斜視図であり、(B)は冷蔵庫の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷蔵庫を説明する図であり、(A)は外箱を前方から見た斜視図であり、(B)は内箱を前方から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る断熱性矯正部材を説明する斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るスペーサを示す図であり、(A)はスペーサを示す斜視図であり、(B)はスペーサが真空断熱材に組み付けられる構成を示す断面図であり、(C)はスペーサが真空断熱材に組み付けられる構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る冷蔵庫を説明する図であり、(A)は断熱性矯正部材を後方から見た背面図であり、(B)は冷蔵庫の断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る冷蔵庫を説明する図であり、(A)は冷蔵庫の断面図であり、(B)は冷蔵庫の断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る冷蔵庫を説明する図であり、(A)は冷蔵庫の断面図であり、(B)は冷蔵庫の断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の製造方法を説明する斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の製造方法を説明する図であり、(A)から(C)は冷蔵庫の断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の製造方法を説明する断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の製造方法を説明する図であり、(A)から(C)は冷蔵庫の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態の冷蔵庫10を図面に基づき詳細に説明する。尚、以下の説明では、上下方向は冷蔵庫10の高さ方向を示し、左右方向は冷蔵庫10を前方から見た横幅方向を示し、前後方向は冷蔵庫10の奥行方向を示している。また、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0026】
図1を参照して、本実施形態の冷蔵庫10の概略構成を説明する。
図1(A)は、本実施形態の冷蔵庫10を前方から見た斜視図である。
図1(B)は、本実施形態の冷蔵庫10の側方断面図である。尚、
図1(B)では、冷気の流れを矢印にて示している。
【0027】
図1(A)及び
図1(B)に示す如く、冷蔵庫10は、断熱箱体11の内部に貯蔵室としての冷蔵室12及び冷凍室13が形成されている。冷蔵室12の前面開口は断熱扉34にて開閉自在に塞がれ、冷凍室13の前面開口は断熱扉35にて開閉自在に塞がれている。断熱扉34,35は、右方側の端部が断熱箱体11に回転可能に軸支された回転式の扉である。尚、断熱扉34,35としては、引出式の扉が採用されても良い。
【0028】
図1(B)に示す如く、冷凍室13の後方には冷却室27が区画形成され、冷却室27には蒸発器26が配設されている。また、断熱箱体11の最下部後方には機械室14が区画形成され、機械室14には圧縮機29が配設されている。蒸発器26及び圧縮機29は、図示しない膨張手段および凝縮器と冷媒配管18(
図2(A)参照)を経由して接続され、蒸気圧縮冷凍サイクルを形成している。尚、蒸発器26の下方には、蒸発器26の着霜を溶融するための除霜ヒータ20が配設されている。
【0029】
冷却室27の上部には送風機28が配設され、蒸発器26が冷却した冷却室27の内部の冷気は、送風機28を介して冷蔵室12及ぶ冷凍室13へと送風される。冷蔵室12への風路には、ダンパ19が介装されている。ここで、制御装置(図示せず)は、冷蔵室12の庫内温度をセンサー(図示せず)にて検知し、ダンパ19の開閉を制御する。そして、冷蔵室12への冷気の流量を調整し、冷蔵室12の庫内温度を一定に保つ。
【0030】
制御装置による上記制御により、冷蔵室12は冷蔵温度帯域に冷却され、冷凍室13は冷凍温度帯域に冷却される。そして、冷蔵室12及び冷凍室13を冷却した冷気は、帰還風路を介して冷却室27に帰還する。
【0031】
図示したように、断熱箱体11は、主に、冷蔵庫10の外形を形成する鋼板から成る外箱15と、外箱15の内側に形成された箱形の合成樹脂板から成る内箱16と、外箱15と内箱16との間の断熱用空間50に配設された断熱材17と、を有している。
【0032】
断熱材17としては、発泡断熱材17Aと、真空断熱材17Bとが用いられる。発泡断熱材17Aとしては、例えば、発泡ウレタンが採用される。真空断熱材17Bとしては、例えば、ガラス等の繊維の集合体を袋に収納し、その袋の内部を真空状態にしたものが採用される。
【0033】
図2を参照して、本実施形態の外箱15及び内箱16の構成を説明する。
図2(A)は、本実施形態の外箱15を前側下方から見た斜視図である。
図2(B)は、本実施形態の内箱16を前側下方から見た斜視図である。尚、外箱15の説明では、適宜、
図6(A)を参照する。
【0034】
図2(A)に示す如く、外箱15は、厚みが0.5mm程度の薄い鋼板を曲折加工して成形される。そして、外箱15は、主に、外箱背面板15A(
図6(A)参照)と、外箱背面板15Aの左右方向端部から前方に向かって形成される外箱側面板15Bと、外箱背面板15Aの上方端部から前方に向かって形成される外箱天面板15Cと、を有している。
【0035】
外箱側面板15Bと外箱天面板15Cとは、一枚の鋼板をUの字状に曲げて一体に形成されている。そして、外箱側面板15B及び外箱天面板15Cの内面には、蒸気圧縮冷凍サイクルで用いられる冷媒が流通する冷媒配管18が、アルミテープ32により貼着されている。
【0036】
図2(B)に示す如く、内箱16は、所定形状に真空成形された合成樹脂製の成形体である。内箱16は、主に、内箱背面板16Aと、内箱背面板16Aの左右方向端部から前方に向かって形成される内箱側面板16Bと、内箱背面板16Aの上方端部から前方に向かって形成される内箱天面板16Cと、内箱背面板16Aの下方端部から前方に向かって形成される内箱底面板16Dと、を有している。また、内箱背面板16Aの上下方向に於ける中間部には、冷蔵室12と冷凍室13とを区画する断熱区画壁33が形成されている。
【0037】
内箱16を構成する樹脂の厚みは、0.5mm以上2.0mm以下が好ましく、更には0.7mm以上1.5mm以下が好ましい。内箱16の厚みをこの範囲とすることで、内箱16の強度を十分に確保でき、製造工程の発泡断熱材17A(
図1(B)参照)を充填する工程において、内箱16が変形することが防止される。
【0038】
図3を参照して、本実施形態の断熱性矯正部材40を説明する。
図3は、本実施形態の断熱性矯正部材40を示す斜視図である。尚、断熱性矯正部材40の説明では、適宜、
図6(A)を参照する。
【0039】
図3に示す如く、断熱性矯正部材40は、略直方体形状である。断熱性矯正部材40の長手方向の長さL1は、250mm以上350mm以下が好適である。そして、断熱性矯正部材40は、少なくとも断熱箱体11(
図1(B)参照)の奥行方向において内箱16(
図2(B)参照)の半分以上の長さを有することが好ましく、更には、上記奥行方向において、内箱16の2/3程度の長さを有することが好ましい。一方、断熱性矯正部材40の短手方向の長さL2は、50mm程度が好適である。そして、断熱性矯正部材40の長手方向の両端面41,42には、それぞれC面加工が施された切り欠き面43が形成されている。
【0040】
また、
図6(A)に示す如く、断熱性矯正部材40は、真空断熱材17Bと外箱側面板15Bとの間の断熱用空間50に配設される。断熱性矯正部材40は、その厚みT2として、25mm程度有することで、真空断熱材17Bを内箱側面板16Bへと押し付けながら固定し、真空断熱材17Bの湾曲形状を矯正する部材である。そして、断熱性矯正部材40は、弾性部材であり、例えば、発泡ポリエチレン等の発泡樹脂材、ポリエチレン樹脂やポリエチレンフォームから成形され、上記断熱用空間50に配設されても冷蔵庫10の断熱効率を悪化させることはない。更には、断熱性矯正部材40は、冷媒配管18との当接箇所では、冷媒配管18の形状に沿って圧縮変形する。そして、冷媒配管18の配設領域にて、外箱15の意匠面に凹凸が発生し、外観不良を招くことが防止される。
【0041】
尚、断熱性矯正部材40では、図示したように、切り欠き面43は、両端面41,42のそれぞれに形成され、切り欠き面43は、その長手方向の対角位置に形成されている場合について説明したが、必ずしもこの構造に限定するものではない。例えば、切り欠き面43は、断熱性矯正部材40の両端面41,42のどちらか一方に形成されていれば良い。
【0042】
図4を参照して、本実施形態のスペーサ30を説明する。
図4(A)は、本実施形態のスペーサ30を示す斜視図である。
図4(B)は、本実施形態の真空断熱材17Bにスペーサ30が取り付けられた状態を示す断面図である。
図4(C)は、本実施形態の真空断熱材17Bにスペーサ30が取り付けられた状態の全体構成を示す斜視図である。尚、スペーサ30の説明では、適宜、
図7(A)を参照する。
【0043】
図4(A)に示す如く、スペーサ30は、各角部が面取り加工された略直方体形状である。
図4(A)の紙面前方からスペーサ30を見た場合、スペーサ30は、紙面左側上方の部分を切り欠いた断面形状である。スペーサ30は、主に、紙面左方を向く平坦面の第1接着面30Aと、第1接着面30Aと垂直に交差し、紙面上方を向く平坦面の第2接着面30Bと、を有している。そして、スペーサ30の高さL3は、10mm以上50mm未満が好適である。
【0044】
スペーサ30は、発泡ポリエチレン等の発泡樹脂材から成る。スペーサ30として発泡樹脂材を採用することで、
図7(A)に示すように、断熱用空間50にスペーサ30を挿入する際に、スペーサ30が適度に圧縮変形する。そして、スペーサ30から発生する反発力を利用することで、真空断熱材17Bが、内箱側面板16Bに押し付けられ、しっかりと所望の位置に固定される。
【0045】
図4(B)に示す如く、スペーサ30は、紙面下方側の真空断熱材17Bの端部に取り付けられる。スペーサ30の第1接着面30Aは、紙面右方の真空断熱材17Bの底面近傍の側面に接着される。一方、スペーサ30の第2接着面30Bは、紙面下方の真空断熱材17Bの底面に接着される。尚、真空断熱材17Bとスペーサ30との接着には、接着テープまたは接着剤が用いられる。
【0046】
図4(C)に示す如く、真空断熱材17Bは、紙面上下方向に長く形成された略矩形形状であり、紙面前方の側辺に複数のスペーサ30が取り付けられる。本実施形態では、真空断熱材17Bの長手方向の上記側辺の中央部近傍および下方端部近傍に2つのスペーサ30が取り付けられている。そして、真空断熱材17Bに複数のスペーサ30が取り付けられることで、真空断熱材17Bが、より安定的に、断熱箱体11に位置決めして組み込まれる。
【0047】
図5を参照して、冷蔵庫10の外箱15と内箱16との間の断熱用空間50の構造について説明する。
図5(A)は、本実施形態の真空断熱材17Bを冷蔵庫10の背面側から見た背面図である。
図5(B)は、本実施形態の冷蔵庫10の断面図であり、冷蔵庫10を奥行方向の中間部にて、冷蔵庫10の上下方向に沿って切断している。
【0048】
図5(A)では、その一例として3パターンの真空断熱材17Bの形状を示している。冷蔵庫10の横幅方向の側方であり、冷蔵庫10の上下方向に沿って配設される真空断熱材17Bは、その長手方向の長さとして、内箱16の高さ方向の長さと略同一の長さを有している。また、真空断熱材17Bの厚みT1は、15mm±1mmの範囲内にて製造されている。そして、真空断熱材17Bの形状としては、
図5(A)の真ん中に示すように、真空断熱材17Bの長手方向に渡り一直線状となっていることが好ましいが、
図5(A)の両側に示すように、真空断熱材17Bの長手方向の両端部側が、紙面左右方向に湾曲した状態であるものも市場に流通している。
【0049】
図5(B)に示す如く、外箱15の内面には、冷媒配管18が固定されている。そして、冷蔵庫10の左右両側の断熱用空間50では、冷蔵室12側において、真空断熱材17Bは、内箱16の内箱側面板16Bに略密着して配設されている。一方、冷凍室13側において、真空断熱材17Bは、収納容器をガイドするレール部49またはその補強板と略密着して配設されている。尚、レール部49が形成されていない領域では、発泡断熱材17Aが、内箱側面板16Bと真空断熱材17Bとの間に充填されている。同様に、発泡断熱材17Aが、冷蔵室12と冷凍室13とを区画する断熱区画壁33内にも充填されている。
【0050】
ここで、
図5(A)を用いて上述したように、真空断熱材17Bは、その長手方向の両端部側が紙面左右方向に湾曲した状態のものも市場に流通している。そして、真空断熱材17Bが、内箱側面板16Bに対して貼着される工程を有する場合には、上記湾曲形状の真空断熱材17Bも問題とならないが、上記真空断熱材17Bの貼着工程を有することで、製造コストが増大してしまう。
【0051】
そこで、本実施形態では、冷蔵庫10の横幅方向の左右両側の断熱用空間50に、真空断熱材17Bと共に、断熱性矯正部材40及びスペーサ30をそれぞれ各2個ずつ配設する。そして、上記真空断熱材17Bの貼着工程を省略し、製造コストを低減すると共に、真空断熱材17Bの湾曲形状を矯正し、真空断熱材17Bと内箱側面板16Bとの密着性を実現している。
【0052】
具体的には、断熱性矯正部材40は、内箱16の内箱天面板16Cより少し下方の位置に、それぞれ冷蔵庫10の背面側から配設されている。また、断熱性矯正部材40は、冷凍室13の上段位置にも、それぞれ冷蔵庫10の背面側から配設されている。一方、スペーサ30が、内箱16の内箱底面板16Dより少し上方の位置に、それぞれ冷蔵庫10の前面側に配設されている。また、スペーサ30が、冷蔵室12の中段位置にも、それぞれ冷蔵庫10の前面側に配設されている。つまり、冷蔵庫10の上下方向において、断熱性矯正部材40とスペーサ30とが、所望の間隔にて交互に配設されることで、真空断熱材17Bと内箱側面板16Bとの密着性を実現している。
【0053】
図6を参照して、本実施形態の冷蔵庫10の断面構造を説明する。
図6(A)は、本実施形態の冷蔵庫10の断面図であり、断熱性矯正部材40の配設領域にて、冷蔵庫10の奥行方向に沿って切断している。
図6(B)は、
図6(A)に示す丸印51の領域の拡大断面図である。
【0054】
図6(A)に示す如く、先ず、冷蔵庫10の左右両側であり、内箱側面板16Bと外箱側面板15Bとの間の断熱用空間50には、断熱性矯正部材40及び真空断熱材17Bが配設されている。そして、真空断熱材17Bは、冷蔵庫10の奥行方向において、内箱側面板16Bの前方端部近傍から内箱側面板16Bの後方端部近傍まで連続して、内箱側面板16Bに略密着している。
【0055】
一方、断熱性矯正部材40は、冷蔵庫10の背面側から断熱用空間50内へと挿入され、冷媒配管18及び真空断熱材17Bと当接するように配設されている。そして、断熱性矯正部材40は、冷蔵庫10の奥行方向において、少なくとも内箱側面板16Bの後方端部近傍からその中央領域まで配設されている。図示したように、断熱性矯正部材40は、2本の冷媒配管18と当接している。
【0056】
具体的には、上記断熱用空間50の幅W1として、40mm確保されている。上述したように、真空断熱材17Bの厚みT1は15mmであり、断熱性矯正部材40の厚みT2は25mmであり、冷媒配管18の厚みT3は4mmである。この構造により、冷媒配管18の配設領域では、上記部材の合計厚みが44mmとなり、上記断熱用空間50の幅W1よりも厚くなっている。
【0057】
図6(B)に示す如く、断熱性矯正部材40は、発泡ポリエチレン等の発泡樹脂材から形成され、冷媒配管18との当接箇所では、冷媒配管18の形状に沿って、4mm程度内側へと圧縮変形する。この構造により、圧縮された断熱性矯正部材40から内箱側面板16B側へと向かう反発力が発生し、断熱性矯正部材40は、真空断熱材17Bを内箱側面板16B側へと押し付ける。そして、真空断熱材17Bと内箱側面板16Bとの密着性が向上することで、製造工程時において、発泡断熱材17Aを形成する際に、真空断熱材17Bが不用意に移動してしまうことが防止される。
【0058】
図示したように、冷蔵庫10の奥行方向において、3列の冷媒配管18は、略平行に配列され、その中間に位置する冷媒配管18は、内箱側面板16Bの略中央部に位置している。そして、断熱性矯正部材40は、内箱16の後方側から2列の冷媒配管18によりバランス良く支持されることで、出来る限り内箱側面板16B及び外箱側面板15Bに対して平行となる様に配設されている。この構造により、断熱性矯正部材40は、真空断熱材17Bとの当接領域を均一な力にて押すことで、断熱性矯正部材40と当接していない真空断熱材17Bの前方側においても、真空断熱材17Bと内箱側面板16Bとの密着性を向上させることができる。
【0059】
更には、断熱性矯正部材40の前方側の端面41に形成される切り欠き面43は、外箱側面板15B側に配置されている。上述したように、断熱性矯正部材40は、冷媒配管18により内側へと圧縮変形しながら、狭小領域である断熱用空間50内へと挿入される。このとき、断熱性矯正部材40は、その前方側の切り欠き面43を利用して冷媒配管18を乗り越えながら、狭小領域である断熱用空間50へと挿入されることで、作業性を大幅に向上することができる。
【0060】
次に、内箱背面板16Aと外箱背面板15Aとの間の断熱用空間50では、真空断熱材17Bは、外箱背面板15Aの内面に貼着され、内箱背面板16Aとは離間している。真空断熱材17Bと内箱背面板16Aとの間には、発泡断熱材17Aが形成されている。そして、真空断熱材17Bの両端面52は、内箱側面板16Bと略密着する真空断熱材17Bの端面53よりも外側に配置されている。この構造により、各真空断熱材17B間の隙間が小さくなり、熱の漏洩を少なくし、冷蔵庫10の冷却効率を向上することができる。
【0061】
図7を参照して、本実施形態の冷蔵庫10の断面構造を説明する。
図7(A)は、本実施形態の冷蔵庫10の断面図であり、スペーサ30の配設領域にて、冷蔵庫10の奥行方向に沿って切断している。
図7(B)は、
図7(A)に示す丸印54の領域の拡大断面図である。
【0062】
図7(A)に示す如く、冷蔵庫10の左右両側であり、内箱側面板16Bと外箱側面板15Bとの間の断熱用空間50には、真空断熱材17B及びスペーサ30が配設されている。そして、真空断熱材17Bは、冷蔵庫10の奥行方向において、内箱側面板16Bの前方端部近傍から内箱側面板16Bの後方端部近傍まで連続して、内箱側面板16Bに略密着している。
【0063】
また、内箱背面板16Aと外箱背面板15Aとの間の断熱用空間50では、真空断熱材17Bは、外箱背面板15Aの内面に貼着され、内箱背面板16Aとは離間している。真空断熱材17Bと内箱背面板16Aとの間には、発泡断熱材17Aが充填されている。そして、真空断熱材17Bの両端面52は、内箱側面板16Bと略密着する真空断熱材17Bの端面53よりも外側に配置されている。この構造により、各真空断熱材17B間の隙間が小さくなり、熱の漏洩を少なくし、冷蔵庫10の冷却効率を向上することができる。
【0064】
図7(B)に示す如く、真空断熱材17Bの前方側の端面55にはスペーサ30が接着固定され、スペーサ30は、真空断熱材17Bと外箱側面板15Bとの間で圧縮されている。この構造により、圧縮されたスペーサ30から内箱側面板16B側へと向かう反発力が発生し、スペーサ30は、真空断熱材17Bの端面55周辺を内箱側面板16Bへと押し付ける。そして、製造工程時において、発泡断熱材17Aを形成する際に、真空断熱材17Bが不用意に移動してしまうことが防止される。
【0065】
また、外箱側面板15Bの先端部を曲折加工することで外箱接合部44が形成され、内箱側面板16Bの先端部を曲折加工することで内箱接合部45が形成されている。そして、外箱接合部44に内箱接合部45を嵌合することで、外箱側面板15Bの先端部と内箱側面板16Bの先端部とが接合されている。
【0066】
図示したように、外箱接合部44の端部には、内箱接合部45との嵌合を容易にするために、後方に向かって広がる端部46が形成されている。端部46は鋼板の端面であるため、端部46が真空断熱材17Bに押しつけられると、真空断熱材17Bの外皮が破れてしまう恐れがある。
【0067】
そこで、本実施形態では、真空断熱材17Bの端面55にスペーサ30を配設することで、スペーサ30が端部46と接する構造となり、端部46が真空断熱材17Bと接することはない。この構造により、真空断熱材17Bが、端部46により破れてしまうことが防止される。
【0068】
更には、スペーサ30が、端部46に接することから、真空断熱材17Bの前方に空間47が形成される。この構造により、冷蔵庫10の製造工程において、断熱用空間50に発泡断熱材17Aを発泡充填する際に、空間47を利用して、後述する液状発泡材63,64(
図10参照)を良好に流動させることが出来る。
【0069】
図6から
図7を用いて上述したように、冷蔵庫10の左右方向の上記断熱用空間50には、真空断熱材17Bが内箱側面板16B側に配設され、発泡断熱材17Aが外箱側面板15B側に配設されている。そして、真空断熱材17Bと発泡断熱材17Aとは、熱膨張率が異なるため、真空断熱材17Bが、外箱側面板15Bに貼り付けられることで、真空断熱材17Bと発泡断熱材17Aとの境界が、外箱側面板15Bの外面に段差の如く現れてしまう恐れがある。しかしながら、本実施形態では、真空断熱材17Bと発泡断熱材17Aとの境界は、外箱側面板15Bから離れて形成されるので、上記境界が外箱側面板15Bに現れることはなく、冷蔵庫10の側面の外観意匠性の低下が防止される。
【0070】
仮に、真空断熱材17Bが外箱側面板15Bに対して略密着させて配設される場合には、冷媒配管18の近傍に空気溜りができないような対策が必要になる。例えば、真空断熱材17Bの側面に、冷媒配管18に対応した凹部を形成する対策が必要になる。しかしながら、本実施形態では、冷媒配管18は、発泡断熱材17Aに埋設されるか、あるいは、断熱性矯正部材40内へと入り込むので、上記凹部加工の対策が不要となり、冷蔵庫10の構成を簡素化し、製造コストの低減が実現される。
【0071】
更に、本実施形態によれば、
図5(A)を参照して、真空断熱材17Bが、冷媒配管18と離間して配設されることで、真空断熱材17Bの側面には、冷媒配管18を避けるための溝が形成される必要がない。更には、冷媒配管18と当接する断熱性矯正部材40は、冷媒配管18の形状に沿って圧縮変形する。この構造により、真空断熱材17Bとして、その側面が単純な平板状態のものを採用することができ、製造コストの低減が実現される。また、冷媒配管18が、比較的自由に配設されることでも製造コストの低減が実現される。
【0072】
次に、
図8から
図11を参照して、上述した冷蔵庫10の製造方法を説明する。
図8は、本実施形態の冷蔵庫10の外箱15に内箱16を組み込む工程を説明する斜視図である。
図9(A)、
図9(B)及び
図9(C)は、本実施形態の冷蔵庫10の真空断熱材17Bを断熱用空間50に組み込む工程を説明する断面図である。
図10は、本実施形態の冷蔵庫10の発泡断熱材17Aを断熱用空間50に発泡充填する工程を説明する側方断面図である。
図11(A)、
図11(B)及び
図11(C)は、本実施形態の冷蔵庫10の発泡断熱材17Aを断熱用空間50に発泡充填する工程を説明する断面図である。
【0073】
尚、以下の説明の際では、
図1から
図7及びその説明を適宜参照し、
図1から
図7を用いて説明した冷蔵庫10と同じ構成部材には、同じ付番を付し、繰り返しの説明は省略する。また、
図11(A)から
図11(C)に示す断面図は、内箱天面板16C近傍に配設された断熱性矯正部材40の配設領域にて切断し、その切断位置から下方側を見た断面図である。
【0074】
先ず、
図8に示す如く、鋼板を所定形状に成形して形成される外箱15及び所定形状に真空成形された合成樹脂製の内箱16を準備する。そして、
図2(A)に示すように、外箱の外箱側面板15B及び外箱天面板15Cの内面に、蒸気圧縮冷凍サイクルで用いられる冷媒が流通する冷媒配管18をアルミテープ32により貼着する。その後、外箱15の内部に内箱16を組み込む。尚、この組み込み工程では、
図6(A)に示した外箱背面板15Aが装着されていない状態である。
【0075】
次に、
図9(A)に示す如く、真空断熱材17Bを準備し、冷蔵庫10の左右両側であり、内箱側面板16Bと外箱側面板15Bとの間の断熱用空間50に真空断熱材17Bを挿入する。そして、断熱用空間50の幅W1は、冷蔵庫10の左右方向において、冷蔵庫10の奥行方向の前方に向かって狭くなるテーパ形状である。
【0076】
このとき、
図4(C)に示すように、真空断熱材17Bは、紙面上下方向に長く形成された略矩形形状であり、真空断熱材17Bの冷蔵庫10の奥行方向の前方側の側辺には、中央部近傍および下方端部近傍に2つのスペーサ30が取り付けられている。
【0077】
次に、スペーサ30が設置された側辺を下方にして、真空断熱材17Bを断熱用空間50内へと挿入する。そして、真空断熱材17Bの下端側が、断熱用空間50の下端まで挿入されると、スペーサ30は、真空断熱材17Bと外箱側面板15Bとの間で圧縮される。その結果、上述したように、スペーサ30から発生する反発力を利用し、真空断熱材17Bが、内箱側面板16Bに押し付けられることで、真空断熱材17Bが、より安定的に、断熱箱体11に位置決めして組み込まれる。
【0078】
次に、
図9(B)に示す如く、断熱性矯正部材40を準備し、真空断熱材17Bが挿入された上記断熱用空間50に断熱性矯正部材40を挿入する。
図6(A)及び
図6(B)を用いて上述したように、冷蔵庫10の左右両側の断熱用空間50の幅W1(
図9(A)参照)は40mmであり、真空断熱材17Bの厚みT1は15mmであり、冷媒配管18の厚みT3は4mmである。尚、断熱用空間50の幅W1は、冷蔵庫10の奥行方向の前方に向かって狭くなるテーパ形状である。
【0079】
この構造により、真空断熱材17Bを挿入した後の断熱用空間50の幅W2は、冷媒配管18の無い領域では25mmであり、冷媒配管18の配設領域では21mmである。そして、断熱性矯正部材40の厚みT2は25mmであり、断熱性矯正部材40を断熱用空間50に挿入する作業では、外箱側面板15Bを外側へと引っ張ったり、あるいは、真空断熱材17Bを押し潰したりする必要があり、非常に手間の掛かる作業となる。
【0080】
そこで、本実施形態では、断熱性矯正部材40の端面41の切り欠き面43が、外箱側面板15B側に位置する状態にて、断熱性矯正部材40を断熱用空間50へと挿入する。そして、断熱用空間50の中でも特に狭小領域となる冷媒配管18の配設領域では、切り欠き面43を利用することで冷媒配管18を乗り越え易くなり、断熱性矯正部材40の挿入作業性を大幅に向上することができる。
【0081】
次に、
図9(C)に示す如く、断熱性矯正部材40は、冷蔵庫10の奥行方向において、少なくとも内箱側面板16Bの後方端部近傍からその中央領域まで配設されている。尚、好ましくは、断熱性矯正部材40は、内箱側面板16Bの後方端部近傍からその2/3程度の領域まで配設されている。そして、本実施形態では、断熱性矯正部材40は、その側面にて2本の冷媒配管18と当接している。その後、真空断熱材17Bが貼着された外箱背面板15Aを準備し、外箱背面板15Aを外箱側面板15Bの上端へと組み込む。この作業により、発泡断熱材17Aが充填される断熱用空間50が略密閉空間として形成されると共に、真空断熱材17Bが、断熱用空間50の所定の位置へしっかりと固定される。
【0082】
次に、
図10に示す如く、外箱背面板15Aには、注入孔61,62が形成されている。注入孔61は、液状発泡材63を注入するための孔部であり、注入孔62は、液状発泡材64を注入するための孔部である。ここでは、冷蔵庫10の前方側が下方を向くように、内箱16および外箱15を横臥させた状態にて、上記液状発泡材63,64が注入孔61,62を介して断熱用空間50内へと注入される。
【0083】
ここで、真空断熱材17Bは、断熱性矯正部材40により、冷蔵庫10の奥行方向の後方側から2箇所固定されると共に、スペーサ30により、冷蔵庫10の奥行方向の前方側を2箇所固定される。図示したように、断熱性矯正部材40とスペーサ30とは、冷蔵庫10の上下方向に交互に配設されている。
【0084】
特に、注入孔61は、真空断熱材17Bの上端側の近傍に形成されている。
図5(A)を用いて上述したように、真空断熱材17Bは、その長手方向の両端部側が、紙面左右方向に湾曲した状態であっても、製品品質上問題なく市場に流通している。そして、本実施形態では、断熱性矯正部材40が、注入孔61から水平距離L7として、例えば、100mmのところに配設されている。
【0085】
その結果、
図11(A)に示す如く、真空断熱材17Bの上端側は、断熱性矯正部材40によりその湾曲形状が矯正される共に、断熱性矯正部材40により内箱側面板16B側へと押し付けられている。上述したように、断熱性矯正部材40は、狭小領域の断熱用空間50に押し込まれると共に、冷蔵庫10の奥行方向において、少なくとも内箱側面板16Bの後方端部近傍からその中央領域まで配設されている。この構造により、真空断熱材17Bは、その略全面にて内箱側面板16Bへと密着している。
【0086】
次に、
図10に示す如く、注入孔61から液状発泡材63を注入し、同時に、注入孔62からも液状発泡材64を注入する。そして、注入孔61から注入された液状発泡材63は、真空断熱材17Bと外箱側面板15Bとの間の断熱用空間50を経由して、注入孔61直下の断熱用空間50の前方側の端部まで到達する。その後、液状発泡材63は、冷蔵庫10の中央部に配設されたスペーサ30に向けて、発泡しながら流動する。
【0087】
このとき、
図11(B)に示す如く、スペーサ30の手前側である断熱性矯正部材40の配設領域及びその周辺領域では、液状発泡材63は、紙面上方側へと向けても発泡しながら流動する。上述したように、注入孔61(
図10参照)近傍の真空断熱材17Bの上端側は、断熱性矯正部材40によりその湾曲形状が矯正され、内箱側面板16B側へと密着している。その結果、液状発泡材63の発泡充填時に、液状発泡材63が、真空断熱材17Bと内箱側面板16Bとの間に浸入し、立ち上がりながら発泡することを防止し、真空断熱材17Bと内箱側面板16Bとの間に発泡断熱材17Aが形成されることが防止される。
【0088】
そして、
図11(C)に示す如く、液状発泡材63は、真空断熱材17Bと外箱側面板15Bとの間の断熱用空間50から立ち上がることで、真空断熱材17Bと外箱側面板15Bとの間の断熱用空間50に未充填領域が発生することが防止される。そして、液状発泡材63は、内箱背面板16Aと外箱背面板15Aとの間の断熱用空間50及び内箱背面板16Aと外箱背面板15Aに貼着された真空断熱材17Bとの間の断熱用空間50に廻り込みながら発泡し、発泡断熱材17Aが、内箱16の背面側にも形成される。
【0089】
その後、矢印65,66にて示すように、注入孔61,62から注入された液状発泡材63,64は、冷蔵庫10の前方側の端部の断熱用空間50を流動しながら発泡し、最終的には中央の領域67まで充填が行われる。その結果、
図5(A)等に示したように、注入孔61,62から注入された液状発泡材63,64が、外箱15と内箱16との間の断熱用空間50を発泡充填し、発泡断熱材17Aが形成される。そして、冷蔵庫10の外箱側面板15Bにおいて、上記発泡断熱材17Aの未充填領域に起因する外観不良により、冷蔵庫10が破棄されることが防止される。
【0090】
更には、本実施形態では、注入孔61と冷蔵庫10の上下方向の中央部に位置するスペーサ30との水平距離L4は200mm以上が好適である。ここで、水平距離L4とは、外箱15および内箱16が横臥している状態において、注入孔61とスペーサ30とが水平方向に於いて離間する距離である。この構造により、液状発泡材63がある程度液状の状態で広がり発泡しながらスペーサ30に到達するので、液状発泡材63は容易にスペーサ30を乗り越えて、紙面右方に向かって良好に流動することができる。尚、水平距離L4を十分に確保しないと、液状発泡材63がスペーサ30により堰き止められてしまう。
【0091】
また、スペーサ30の高さL5は、50mm以下が好適であり、40mm以下が更に好適である。このようにすることで、液状発泡材63がスペーサ30を乗り越えて、領域67に向けて容易に流動することができる。
【0092】
一方、冷蔵庫10の上下方向の下端側に位置するスペーサ30は、注入孔62よりも、上記冷蔵庫10の下端側に配設されている。この構造により、注入孔62から注入された液状発泡材64はスペーサ30で堰き止められ、領域67に向かって流動する。そして、領域67に十分に液状発泡材64を行き渡らせることができる。尚、スペーサ30の高さL6は、スペーサ30の高さL5と同様に、50mm以下が好適であり、40mm以下が更に好適である。
【0093】
その後、
図1(A)に示すように、断熱扉34,断熱扉35および各構成機器を断熱箱体11に取り付けることで、冷蔵庫10が完成する。
【符号の説明】
【0094】
10 冷蔵庫
11 断熱箱体
12 冷蔵室
13 冷凍室
15 外箱
15A 外箱背面板
15B 外箱側面板
15C 外箱天面板
16 内箱
16A 内箱背面板
16B 内箱側面板
16C 内箱天面板
16D 内箱底面板
17 断熱材
17A 発泡断熱材
17B 真空断熱材
18 冷媒配管
30 スペーサ
40 断熱性矯正部材
41,42 端面
43 切り欠き面
50 断熱用空間
61,62 注入孔
63,64 液状発泡材