(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】電気手術装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20230413BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61B18/18 100
A61B18/12
(21)【出願番号】P 2020523262
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2018086234
(87)【国際公開番号】W WO2019129647
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-02
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-505572(JP,A)
【文献】国際公開第2016/195941(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B13/00-18/18
H03F 1/00- 3/45
H03F 3/54- 3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波電
磁放射を生成するためのマイクロ波信号発生器と、
前記マイクロ波
電磁放射をパルス出力するように構成された変調器と、
前記変調器に接続され、前記変調器から受け取られるマイクロ波
電磁放射のパルスの電力を増加させるように構成された増幅器モジュールであって、前記増幅器モジュールは、並列に接続された増幅器のアレイを備え、前記増幅器のアレイからの出力信号が、出力マイクロ波信号を生成するように結合される、前記増幅器モジュールと、
前記出力マイクロ波信号をプローブに伝えるための供給構造とを備えた増幅器配列を備える電気手術用ジェネレータであって、
前記変調器は、前記出力マイクロ波信号が20%以下のデューティサイクルを有する一連のマイクロ波パルスを含むように構成され、各マイクロ波パルスが、0.1s以下の持続時間を有
し、
前記増幅器モジュールは、
前記変調器から前記マイクロ波電磁放射のパルスを受け取り、次に前記増幅器のアレイの入力信号に分けるように構成された電力分割器ユニットと、
前記増幅器のアレイからの前記出力信号を結合するように構成された電力結合器ユニットとを備える、電気手術用ジェネレータ。
【請求項2】
前記変調器と前記増幅器モジュールとの間に接続された駆動増幅器を備える、請求項
1に記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項3】
前記一連のマイクロ波パルスはそれぞれ400W以上の電力を有する
、請求項
1または2に記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項4】
前記一連のマイクロ波パルスはそれぞれ2kW以上の電力を有する
、請求項
1~3のいずれかに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項5】
各マイクロ波パルスは、1ms以下の持続時間を有する
、請求項
1~4のいずれかに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項6】
前記増幅器のアレイは、8つの増幅器を備える
、請求項
1~5のいずれかに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項7】
前記増幅器のアレイの各増幅器は、高電子移動度トランジスタを備える
、請求項
1~6のいずれかに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項8】
前記
高電子移動度トランジスタは窒化ガリウムトランジスタである、請求項
7に記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項9】
前記増幅器のアレイ内の各増幅器は、10dBm以上の利得を有する
、請求項
1~8のいずれかに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項10】
各増幅器からの前記出力信号は、400Wの電力を有する
、請求項
1~9のいずれかに記載の電気手術用ジェネレータ。
【請求項11】
前記供給構造は、3mm以下の直径を有する同軸ケーブルを備える
、請求項
1~10のいずれかに記載の電気手術用ジェネレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を治療するためにマイクロ波周波数エネルギーが使用される電気手術装置に関する。特に、本発明は、生体組織を凝固させるため、または焼灼するための高出力マイクロ波周波数パルスを生成可能である電気手術用ジェネレータ向けの増幅器配列に関する。
【背景技術】
【0002】
肺及びその他の体組織における様々な状態を治療するために、マイクロ波放射プローブを使用することが知られている。例えば、肺では、喘息の治療、及び腫瘍または病変の焼灼にマイクロ波放射を用いる場合がある。
【0003】
GB2486343は、生体組織の治療のためにRF及びマイクロ波の両方のエネルギーを送出する電気手術装置の制御システムを開示する。プローブに送達されるRFエネルギーとマイクロ波エネルギーの両方のエネルギー送達プロファイルは、プローブに伝えられるRFエネルギーのサンプリングされた電圧及び電流の情報、ならびにプローブに伝えられるマイクロ波エネルギー、及びプローブから伝えられるマイクロ波エネルギーのサンプリングされた順方向電力及び反射電力の情報に基づいて設定される。
【発明の概要】
【0004】
最も一般的には、本発明は、電気手術デバイスに用いる高出力マイクロ波周波数パルスを生成可能である装置を提供する。本装置は、生体組織の治療、例えば、凝固または焼灼のために使用し得る。
【0005】
本発明によれば、電気手術用ジェネレータのための増幅器配列が提供され、本増幅器配列は、マイクロ波電磁(EM)放射を生成するためのマイクロ波信号発生器と、マイクロ波EM放射をパルス出力するように構成された変調器と、変調器に接続され、変調器から受け取られるマイクロ波EM放射のパルスの電力を増加させるように構成された増幅器モジュールであって、増幅器モジュールは、並列に接続された増幅器のアレイを備え、増幅器のアレイからの出力信号が、出力マイクロ波信号を生成するように結合される、増幅器モジュールと、出力マイクロ波信号をプローブに伝えるための供給構造とを備える。増幅器モジュールは、入力信号を分割してから出力信号を結合する構成要素で生じる合計損失よりも大きな利得を示す一連の増幅器を提供することによって機能する。例えば、アレイ内の各増幅器が10dBmの利得を有する場合、従来の電力分割器及び電力結合器を使用して、従来の電気手術用ジェネレータによって提供されるものよりも実質的に高い電力を有する出力マイクロ波信号を得ることが可能である。
【0006】
本発明は、所与のエネルギーペイロードを、一連の短持続期間の高電力パルスとして送達する増幅器配列を提案する。標的組織は、エネルギーペイロードを受け取り、したがって、所望の焼灼効果を示す。例えば、2kJのエネルギーペイロードは、生体組織に直径約3.5cmの損傷を来し得る。ただし、パルスの持続時間及び大きさは、供給構造に関連する影響(例えば、熱損失)を最小限にしながらも、比較的短い全体の治療時間を確実にするように、両方が選択され得る。
【0007】
患者の快適さのためと、組織内の灌流に関連する望まれない熱的影響を避けるためとの両方のためには、全体の治療時間を短くすることが望ましい。標的エネルギーペイロードが2kJの場合、これを100s間、20Wの連続波信号として、または例えば10s間以下の非常に短い期間に広がる2kWの一連の短いパルスとして送出することが考えられる。100秒間のエネルギーの連続的な送出は、患者の不快感と灌流による標的部位からのエネルギーの移動とにつながり得る。これらの影響は、本明細書で提案されているパルス技法を使用することにより軽減される。さらに、人体は、受け取ったエネルギー、特に熱エネルギーを検出し、それに応答する際にゼロでない反応時間を示すため、短いバースト(例えば、身体の反応時間以下の持続時間を持つ)で高レベルのエネルギーを印加するときに、身体は、その自然の熱補償メカニズムを実行するのに十分な時間を持てない可能性がある。これらのメカニズム(例えば、皮膚表面への血流の増加など)は、熱エネルギーを加熱領域から遠ざけるように作用するので、それらを迂回する作用により、本発明は、送達エネルギーのより正確な標的化または局在化を提供し得る。
【0008】
同様の効果がエネルギーを伝えるための構造にも適用される。例えば、20Wの連続波信号を運ぶケーブルは、100s間の治療期間でかなり加熱されることになる。本明細書で提案されるパルス技法を利用することにより、ケーブルの熱応答よりも速い持続時間を有するパルスでエネルギーを送出することによって、それらの熱効果を低減し得る。簡単に言えば、ケーブルで実際に電力が伝達される時間を短縮し、全体の治療時間を短縮することにより、望まれない熱影響を低減しまたは回避し得る。
【0009】
治療時間を短縮することのさらなる利点は、より小さな直径の同軸ケーブル(通常、より高い損失を示す)を使用できることである。これにより、プローブをより小さな生物学的構造または空洞に挿入することが可能になる。
【0010】
増幅器モジュールは、変調器からマイクロ波EM放射のパルスを受け取り、次に増幅器のアレイの入力信号に分けるように構成された電力分割器ユニットを備え得る。同様に、増幅器モジュールは、増幅器のアレイからの出力信号を結合するように構成された電力結合器ユニットを備え得る。電力分割器ユニット及び電力結合器ユニットは、対称的に配置され得る。電力分割器ユニットは、単一の1対多段、または複数のカスケード段を有し得る。
【0011】
本配列は、例えば、増幅器モジュールに供給されるマイクロ波EM放射が、適切な電力を有することを確実にするために、変調器と増幅器モジュールとの間に接続された駆動増幅器を備え得る。
【0012】
入力パルスは、増幅された出力信号が加算的に結合するように、増幅器モジュールを経て、同期されたままである。出力マイクロ波信号(すなわち、結合された信号)は、それぞれ400W以上、好ましくは2kW以上の電力を有する一連のマイクロ波パルスを含み得る。マイクロ波パルスは、それぞれ、0.1s以下、好ましくは1ms以下の持続時間を有し得る。出力マイクロ波信号は、50%以下、好ましくは20%以下のデューティサイクルを有し得る。
【0013】
出力マイクロ波信号の大きさ(電力)、持続時間、及びデューティサイクルは、総治療時間が閾値未満であることを確実にするように、例えば、標的エネルギーペイロードに基づいて選択可能である。この閾値は、20秒以下にしてもよい。このようにして、高出力マイクロ波EMパルスは、電気手術装置を構成する構成要素を著しく加熱することなく、組織に送達され得る。これにより、冷却システムの必要性が減少し、また、装置の有効な動作時間及び寿命の延長にも役立ち得る。
【0014】
増幅器のアレイは、8つの増幅器を含んでもよい。好ましくは、増幅器は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含んでもよい。そのようなトランジスタを使用することにより、装置は、最小の損失を伴うマイクロ波周波数で、効率的かつ効果的に動作することができ、トランジスタは、増幅回路がより少ない増幅器を必要とし得るような、大きな利得を提供することができる。例えば、トランジスタは、窒化ガリウムHEMTであってもよい。各トランジスタは、少なくとも10dBmの利得を有してもよく、少なくとも56dBmまたは400Wの出力電力を有してもよい。
【0015】
供給構造は、3mm以下、好ましくは2.2mm以下の直径を有する同軸ケーブルを備えてもよい。
【0016】
特定の実施形態では、増幅器配列は、RF EM放射を生成するための無線周波数(RF)信号ジェネレータをも備える電気手術用ジェネレータに使用されてもよい。このような実施形態では、装置は、RF EM放射をプローブに伝えるためのRF供給構造を備えてもよく、これは、RF EM放射を送出するように構成することもできる。
【0017】
増幅器配列は、供給構造の遠位端に接続可能なプローブを含む電気外科システムの一部を形成してもよい。プローブは、内視鏡または気管支鏡などの外科用スコープデバイスの器具チャネルを通して挿入可能である。このようにして、装置を、内視鏡的処置に使用してもよい。「外科用スコープデバイス」という用語は、本明細書では、侵襲的手技中に患者の体内に導入される剛性または可撓性の(例えば、操向可能な)導管である挿入管が備わっている任意の外科用デバイスを意味するのに使用され得る。挿入管は、器具チャネル及び(例えば、挿入管の遠位端の治療部位を照らし、及び/または治療部位の映像を捕捉するために光を伝達するための)光学チャネルを含む場合がある。器具チャネルは、侵襲性の外科手術用ツールを受け入れるのに適した直径を有し得る。器具チャネルの直径は5mm以下にしてもよい。
【0018】
本明細書において、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を指定するために大まかに用いられてもよいが、好ましくは1GHz~60GHzの範囲である。検討されている特定の周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzである。デバイスは、これらのマイクロ波周波数のうちの複数においてエネルギーを送達し得る。対照的に、本明細書では、「無線周波数」または「RF」は、少なくとも3桁低い、例えば、300MHzまでの、好ましくは10kHz~1MHzの周波数範囲を指定するために使用する。
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】知られている電気手術装置の全体的な概略システム図である。
【
図2】本発明の実施形態であるマイクロ波増幅器配列を示す概略図である。
【
図3】本発明の実施形態である増幅モジュールの概略システム図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
さらなる選択肢及び好適例
背景技術
図1は、本発明を理解するのに有用である、GB2486343に開示されているような電気手術装置400の概略図を示す。本装置は、RFチャネル及びマイクロ波チャネルを備える。RFチャネルは、生体組織の治療(例えば、切開または乾燥)に適した電力レベルでRF周波数電磁信号を生成し制御するための構成要素を含む。マイクロ波チャネルは、生体組織の治療(例えば、凝固または焼灼)に適した電力レベルでマイクロ波周波数電磁信号を生成し制御するための構成要素を含む。
【0022】
マイクロ波チャネルは、マイクロ波周波数源402と、それに続くパワースプリッタ424(例えば、3dBパワースプリッタ)とを有し、パワースプリッタ424は、周波数源402からの信号を2つに分岐する。パワースプリッタ424からの一方の分岐は、マイクロ波チャネルを形成する。このマイクロ波チャネルは、電力制御モジュール、及び増幅器モジュールを有する。この電力制御モジュールは、制御信号V10を介してコントローラ406によって制御される可変減衰器404と、制御信号V11を介してコントローラ406によって制御される信号変調器408とを備える。増幅器モジュールは、治療に適した電力レベルでプローブ420から送出すべき順方向マイクロ波周波数EM放射を生成するための駆動増幅器410及び電力増幅器412を備える。増幅器モジュールの後に、マイクロ波チャネルは、(マイクロ波信号検出器の一部を形成する)マイクロ波信号結合モジュールに続く。このマイクロ波信号結合モジュールは、サーキュレータ416であって、その第1のポートと第2のポートとの間の経路に沿って、周波数源からプローブにマイクロ波周波数EMエネルギーを送達するように接続されているサーキュレータ416、サーキュレータ416の第1のポートにある順方向結合器414、ならびにサーキュレータ416の第3のポートにある反射方向結合器418を備える。第3のポートからのマイクロ波周波数EMエネルギーは、反射方向結合器を通過した後、パワーダンプ負荷422に吸収される。また、マイクロ波信号結合モジュールは、順方向結合信号または反射結合信号のいずれかを、検出する目的で、ヘテロダイン受信機に接続するために、制御信号V12を介してコントローラ406によって作動されるスイッチ415を含む。
【0023】
パワースプリッタ424からの他方の分岐は、測定チャネルを形成する。測定チャネルは、マイクロ波チャネル上の増幅列をバイパスするので、プローブから低電力信号を送出するように構成される。制御信号V13を介してコントローラ406によって制御される一次チャネル選択スイッチ426は、マイクロ波チャネルまたは測定チャネルのいずれかからの信号を選択してプローブに送達するよう機能する。マイクロ波信号発生器を低周波RF信号から保護するために、一次チャネル選択スイッチ426とプローブ420との間に高域通過フィルタ427が接続される。
【0024】
測定チャネルは、プローブから反射される電力の位相及び大きさを検出するように構成された構成要素を含み、例えば、プローブの遠位端に存在する生体組織などの物質についての情報をもたらし得る。測定チャネルは、サーキュレータ428であって、その第1のポートと第2のポートとの間の経路に沿って、周波数源402からプローブにマイクロ波周波数EMエネルギーを送達するように接続されたサーキュレータ428を備える。サーキュレータ428の第3のポートに、プローブから戻ってきた反射信号が導かれる。サーキュレータ428は、順方向信号と反射信号とを分離して、正確な測定を行い易くするために用いられる。ただし、サーキュレータは、その第1のポートと第3のポートとを完全には分離しないため、すなわち、順方向信号の一部が第3のポートに漏出して反射信号に干渉する可能性があるため、(順方向結合器430からの)順方向信号の一部を(注入結合器432を介して)第3のポートから出てくる信号に注入し戻す搬送波相殺回路を使用してもよい。搬送波相殺回路は、注入部分が、第1のポートから第3のポートに漏出するいかなる信号とも、その信号を相殺するために180°位相を異にしていることを保証する位相調節器434を含む。また、搬送波相殺回路は、注入部分の大きさが、いかなる漏出信号とも同じであることを保証する信号減衰器436を含む。
【0025】
順方向信号のドリフトを補償するために、測定チャネル上に順方向結合器438が設けられる。順方向結合器438の結合出力と、サーキュレータ428の第3のポートからの反射信号とは、スイッチ440のそれぞれの入力端子に接続される。このスイッチ440は、結合された順方向信号、または反射信号のいずれかを、検出する目的で、ヘテロダイン受信機に接続するために、制御信号V14を介してコントローラ406によって作動される。
【0026】
スイッチ440の出力(すなわち、測定チャネルからの出力)及びスイッチ415の出力(すなわち、マイクロ波チャネルからの出力)は、二次チャネル選択スイッチ442のそれぞれの入力端子に接続される。この二次チャネル選択スイッチ442は、測定チャネルがプローブにエネルギーを供給しているときに、測定チャネルの出力がヘテロダイン受信機に接続され、マイクロ波チャネルがプローブにエネルギーを供給しているときに、測定チャネルの出力がヘテロダイン受信機に接続されるのを確実にするように、一次チャネル選択スイッチと連動して、制御信号V15を介してコントローラ406によって作動可能である。
【0027】
ヘテロダイン受信機は、二次チャネル選択スイッチ442によって出力される信号から、位相及び大きさの情報を抽出するのに使用される。このシステムでは、シングルヘテロダイン受信機を示しているが、必要ならば、信号がコントローラに入る前にソース周波数を2度ミックスダウンするダブルヘテロダイン受信機(2つの局部発振器及び混合器を含む)を使用してもよい。ヘテロダイン受信機は、局部発振器444と、二次チャネル選択スイッチ442によって出力される信号をミックスダウンするための混合器448とを備える。局部発振器信号の周波数は、混合器448からの出力が、コントローラ406で受け取られるのに適した中間周波数になるように選択される。局部発振器444及びコントローラ406を高周波マイクロ波信号から保護するために、帯域通過フィルタ446、450が設けられる。
【0028】
コントローラ406は、ヘテロダイン受信機の出力を受け取り、この出力から、マイクロ波チャネル上または測定チャネル上の順方向信号及び/または反射信号の位相及び大きさを示す情報を求める(例えば、抽出する)。この情報を使用して、マイクロ波チャネル上の高出力マイクロ波周波数EM放射、またはRFチャネル上の高出力RF EM放射の送達を制御してもよい。上記のように、ユーザは、ユーザインタフェース452を介してコントローラ406と対話してもよい。
【0029】
図1に示すRFチャネルは、制御信号V16を介してコントローラ406によって制御されるゲートドライバ456に接続されたRF周波数源454を備える。ゲートドライバ456は、ハーフブリッジ構成であるRF増幅器458に動作信号を供給する。このハーフブリッジ構成のドレイン電圧は、可変DC電源460によって制御可能である。出力変圧器462が、生成されたRF信号を、プローブ420に送達するためのライン上に転送する。そのライン上には、高周波マイクロ波信号からRF信号発生器を保護するために、低域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、帯域消去フィルタ、またはノッチフィルタ464が接続されている。
【0030】
組織負荷に送達される電流を測定するために、変流器466がRFチャネル上に接続される。電圧を測定するために、分圧器468(出力変圧器から一部が取り出され得る)が用いられる。分圧器468及び変流器466からの出力信号(すなわち、電圧及び電流を示す電圧出力)は、それぞれの緩衝増幅器470、472及び電圧クランプ用ツェナーダイオード474、476、478、480によって調整された後、コントローラ406に直接接続される(
図1に信号B及びCとして示す)。
【0031】
位相情報を得るために、電圧信号及び電流信号(B及びC)はまた、位相比較器482(例えばEXORゲート)にも接続される。この位相比較器482の出力電圧は、RC回路484によって積分されて、電圧波形と電流波形との間の位相差に比例する電圧出力(
図1にAとして示す)を生成する。この電圧出力(信号A)は、コントローラ406に直接接続される。
【0032】
マイクロ波/測定チャネル及びRFチャネルは、信号結合器114に接続される。この信号結合器114は、ケーブルアセンブリ116に沿って、両種類の信号を別々にまたは同時にプローブ420に伝える。信号はプローブ420から患者の生体組織に送達される(例えば放射される)。
【0033】
本発明は、上記の装置におけるマイクロ波チャネルの改造または改良に関する。
図2は、本発明の実施形態によるマイクロ波増幅器配列100の概略システム図を示す。本増幅器配列100は、例えばマイクロ波エネルギーのみが必要とされる状況のために、独立型ジェネレータとして使用し得る。あるいは、増幅器配列100は、上記の種類のジェネレータに組み込まれてもよい。増幅器配列100は、電気手術器具から送出すべきマイクロ波周波数電磁(EM)エネルギーの高出力パルスを生成するように構成される。
【0034】
増幅器配列100は、マイクロ波周波数EM放射を生成するためのマイクロ波周波数源102と、それに続く、ソース信号(図示せず)を介して外部コントローラによって制御され得る信号変調器104とを有する。変調器104は、マイクロ波源102の連続波出力を、次いで減衰器106に渡される一連のマイクロ波パルスに変調する。減衰器106は、やはり制御信号を介してコントローラによって制御される可変減衰器であってもよい。
【0035】
マイクロ波源102は、例えば、15dBmまたは32mWの電力を有する、5.2GHz~5.9GHzの、好ましくは5.8GHzの周波数で信号を出力し得る。このマイクロ波信号は、変調器104及び減衰器106を通過した後、少なくとも10%、例えば20%または最大で50%までのデューティサイクルを有する、100μsなどの所定の長さのパルス列として出現する。減衰器106は、例えば、器具自体での電力出力を制御するためのフィードバックループに基づいて、マイクロ波パルスの電力を10dBmまたは10mWに低減し得る。いくつかの実施形態では、減衰器106が存在しない場合がある。
【0036】
電力を増加させて、生体組織の効果的な治療を可能にするために、マイクロ波パルスに対して、いくつかの増幅ステップが行われる。マイクロ波パルス電力を、増幅器モジュール200(本明細書では増幅回路または高出力増幅器ユニットとも呼ばれる)への入力として適切なレベルまで増加させるために、駆動増幅器108及び電力増幅器110が用いられる。増幅器モジュール200は、
図3に関しては、以下で、より詳細に説明する。好ましい実施形態では、増幅回路200への入力電力は、約56.5dBmまたは450Wであってもよい。駆動増幅器108及び電力増幅器110を、出力電力がこのレベルに達するように選択してもよい。例えば、駆動増幅器108は約30dBmの利得を有し、電力増幅器は約16.5dBmの利得を有してもよい。あるいは、増幅回路200に送達されるマイクロ波周波数エネルギーの電力を低くしてもよく、低電力マイクロ波信号の増幅の実質的に全てが、増幅器モジュール200によってもたらされるようにする。
【0037】
図2は、駆動増幅器108及び電力増幅器110を示すが、増幅回路200への入力として適切なレベルまで電力を増加させるために、構成要素の他のあらゆる組み合わせを用いることもできる。例えば、いくつかの実施形態では、ジェネレータ100は、直列接続された4つの前置増幅器を備えてもよい。
【0038】
マイクロ波パルスは、増幅器モジュール200を通過した後、約63.5dBmまたは2.2kWの電力を有することが好ましい。増幅回路200の出力は、組織の治療のためにマイクロ波パルスを電気手術器具またはプローブに送るための同軸ケーブル(図示せず)にマイクロ波エネルギーを送達するように接続されたサーキュレータ112に接続される。サーキュレータ112は、約0.5dBmの挿入損失をもたらし、したがって器具に送達されるマイクロ波エネルギーの電力は約63dBmまたは2kWである。
【0039】
ジェネレータ100での使用に好適な増幅器モジュール200の概略図を
図3に示す。一般的水準では、増幅回路200は、マイクロ波エネルギーを多数の増幅器208A~208nに供給する一連の電力分割器202、204、206を備え、それらの出力が結合されて、同軸ケーブルを介して電気手術器具に提供される単一の高出力パルス状マイクロ波信号が生成される。
【0040】
電力増幅器110からのマイクロ波パルスは、第1の電力分割器202によって2つの信号に分けられる。例えば、第1の電力分割器202、及び増幅回路200で使用される各電力分割器は、入力信号を2つの等しい出力信号に分割するウィルキンソン電力分割器であってもよい。
【0041】
第1の電力分割器202からの各出力信号は、この実施形態ではさらに2つの電力分割器を含む後続の第1の電力分割器の列204中の電力分割器への入力として用いられる。第1の列204の各電力分割器の出力信号は、さらなる電力分割器の列中の各電力分割器に入力を提供し得る。必要な電力分割器及び電力分割器列の数は、選択される増幅器208A~208nの数によって決まる。いくつかの実施形態では、電力分割器は、入力信号を3つ以上の出力に分けてもよく、例えば、電力分割器の少なくとも1つは、四方向電力分割器であってもよい。
【0042】
電力分割器の最終列206は、複数の増幅器208A~208nに入力信号を提供する。例えば、好ましい実施形態では、8つの増幅器208A~208nがあってもよいが、増幅器208A~208nの数は、電気手術器具向けの所望の電力に応じて選択してもよい。
【0043】
各増幅器208は、Cree(RTM)によって製造されたCGHV9350トランジスタなどの窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)を備え得る。5.2GHz~5.9GHzの範囲の好ましいマイクロ波周波数では、各増幅器208は、約10dBmの利得を提供し得る。また一方、必要な利得を提供する任意好適な増幅器またはトランジスタを考慮に入れることができる。
【0044】
次に、各増幅器208A~208nの出力信号は、一連の電力結合器の列210、212、214を通って結合される。例えば、電力結合器の列は、上記の電力分割器を反映してもよい。列210、212、及び214の各電力結合器は、ウィルキンソン電力結合器であってもよく、好ましくは、双方向電力結合器であり得るが、4方向電力結合器を使用することもできる。各増幅器208A~208nの出力信号を結合することにより、一連の高出力マイクロ波パルスが増幅回路200によって生成される。これらの高出力パルスは、生体組織の治療のために、例えば同軸ケーブルを介して、電気手術器具またはプローブに供給される。
【0045】
ここで、増幅器モジュール200の特に好ましい実施形態を、56.5dBmまたは450Wの入力マイクロ波電力を想定して、
図3を参照しながら説明する。本発明の好ましい実施形態は、8つの増幅器208A~208nを含み、それぞれが約10dBmの利得を有する。本明細書で説明する各電力分割器は、入力信号を、それぞれ入力信号の電力よりも3dBm低い電力を有する2つの出力信号に分け、約0.5dBmの追加の挿入損失をもたらすことが想定される。
【0046】
第1の電力分割器202は、56.5dBmの電力を有する入力マイクロ波信号を取り込み、この信号を、それぞれ53dBmのマイクロ波電力を有する2つの分岐に分ける。第1の電力分割器の列204は、2つの電力分割器を含み、その結果、第1の電力分割器の列204の出力は、それぞれ49.5dBmのマイクロ波エネルギーを有する4つの信号である。最終列206は、4つの電力分割器を含み、その出力は、それぞれ46dBmのマイクロ波エネルギーを有する8つの信号である。これらの8つの信号のそれぞれは、それぞれ増幅器208A~208nへの入力として提供され、各増幅器は、受け取ったマイクロ波信号を56dBm、または約400Wの電力に増幅する。したがって、8つの増幅器208A~208nの総電力出力は、約3.2kWである。
【0047】
次に、8つの増幅器208A~208nの出力信号は、一連の電力結合器を通って結合される。本明細書で説明する各電力結合器は、約0.5dBmの挿入損失を前にして、2つの入力信号を、入力信号の電力よりも3dBm高い電力を有する1つの出力信号に結合する。
【0048】
8つの増幅器208A~208nの出力は、4つの電力結合器を含む第1の電力結合器210の列に送られる。第1の列210の出力は、それぞれ58.5dBmのマイクロ波エネルギーを有する4つの信号である。これらの4つの信号は、2つの電力結合器を含む第2の電力結合器の列212への入力として提供され、結果として61dBmのマイクロ波エネルギーを有する2つの信号をもたらす。最終の電力結合器214は、約63.5dBmまたは2.2kWのマイクロ波電力を有する、増幅回路200の単一出力を与える。
【0049】
上記で概説したように、利得がスプリッタ損失を上回る増幅器のカスケード接続を提供することによって、マイクロ波EMエネルギーの高出力、短持続時間パルス列の形のマイクロ波信号を取得し得る。
【0050】
このようにして電気手術装置に増幅器モジュール200を提供することによって、既知のジェネレータを用いた場合よりも実質的に短い時間で電気外科治療を行い得る。例えば、効果的な焼灼治療のためには、生体組織に約2kJのエネルギーを送達する必要がある。2kWの電力で動作するパルス状マイクロ波周波数エネルギーでは、エネルギーの各パルスが100μsの持続時間を有し、装置が50%のデューティサイクルで動作する場合、生体組織を約2秒で焼灼し得る。デューティサイクルが20%に減少すると、焼灼には約5秒かかる。また、10%のデューティサイクルでは、焼灼には約10秒かかり得る。
【0051】
一般に、治療時間を短縮することにより、エネルギー損失によって、例えば、マイクロ波信号を治療部位に運ぶケーブルの長さに沿って引き起こされる望まれない加熱効果を最小限に抑え得る。本発明は、必要なエネルギーを短パルスで送達することによって、ケーブルの熱応答がパルス持続時間の時間枠内で電力の大きさに反応できないため、同軸ケーブルの加熱をさらに減らし得る。その結果、ケーブルによって伝えられる所定量のエネルギーについては、そのエネルギーが一連の短い高出力パルスとして伝達される場合には、低出力の連続波形として伝達される場合よりも熱損失が少なくなり得る。
【0052】
本明細書にあるエネルギー送達技法の結果として、より小さな直径の同軸ケーブルを使用して、所与のエネルギーペイロードを送達することができ、それによって、電気手術のために、より小さな直径の体腔への挿入が可能になる。
【0053】
また、信号のパルス状の性質は、焼灼または他の治療によって引き起こされた加熱に対する患者の身体反応として生じる灌流及び他の自然的なメカニズムの問題を回避するのにも役立ち得る。