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  • 特許-落雷抑制型避雷装置およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】落雷抑制型避雷装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05F 3/04 20060101AFI20230413BHJP
   H01T 21/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H05F3/04 F
H01T21/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021024621
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126505
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】511019144
【氏名又は名称】株式会社落雷抑制システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏男
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-004646(JP,A)
【文献】特開2016-009534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05F 3/04
H01T 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料からなる断面が略半円弧状の長尺な一対の電極体を備え、これらの一対の電極体が、その開放部の端縁が対峙するように上下に配置され、この対峙された開放部の端縁間に配置され、上下の電極体を連結するとともにこれらを電気的に絶縁する絶縁体と、下方の電極体に電気的に接続され、この下方の電極体を接地する接地具とによって構成され、
前記上方の電極体及び前記下方の電極体の内周面には、それぞれ、前記各電極体と別体に構成された放電突起が取り付けられ、
前記上方の放電突起は、下方に向かって突設され、前記下方の放電突起は、上方に向かって突設され、
前記上方の放電突起と前記下方の放電突起の先端部間の間隔が、所定距離に保持され
前記一対の電極体は、その開放部の端縁が対峙するように上下に配置されることで、全体として略円筒形状を呈することを特徴とする落雷抑制型避雷装置。
【請求項2】
前記下方の電極体に、落雷抑制型避雷装置を設置するための固定手段が導電状態で取り付けられ、この固定手段に前記接地具が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の落雷抑制型避雷装置。
【請求項3】
前記固定手段が、前記下方の電極体に一端部が固定された支持ロッドと、この支持ロッドの他端部に設けられ、固定対象物に当接させられる支持プレートと、この支持プレートを前記固定対象物に止着する止着部材とによって構成されていることを特徴とする請求項2に記載の落雷抑制型避雷装置
【請求項4】
請求項1に記載の一対の電極体を、導電性材料によって長方形状に形成された電極体素材を、プレス成形により短辺の断面形状が略半円弧となるように湾曲形成することを特徴とする落雷抑制型避雷装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落雷を抑制することで、雷害から建築物や設備機器等の被保護体を保護するための落雷抑制型避雷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
落雷は大気中で起こる放電現象であり、雷放電には雲内放電、雲間放電、雲―大地間放電等がある。雷放電で大きな被害を出すのは雲―大地間放電(以下落雷)である。落雷は雷雲(雲底)と大地または大地等に建設された構造物との間の電界強度が非常に大きくなり、その電荷が飽和状態となって大気の絶縁を破壊したときに発生する現象である。
【0003】
落雷の現象を詳細に観察すると、夏季に起こる一般的な落雷(夏季雷)の場合、雷雲が成熟すると雷雲からステップトリーダが大気の放電しやすいところを選びながら大地に近づいてくる。
ステップトリーダが大地とある程度の距離になると大地または建築物(避雷針)、木などからステップトリーダに向かって、微弱電流の上向きストリーマ(お迎え放電)が伸びてくる。
このストリーマとステップトリーダが結合すると、その経路を通って、雷雲と大地間に大電流(帰還電流)が流れる。
これが落雷現象である。
【0004】
このような落雷現象に対し、従来の雷保護概念では、落雷は防止できないものとの観点から、落雷を突針型避雷針(フランクリンロッド)に受けて大地に流す方式が大半であった。
【0005】
これに対し、本発明者等は、落雷の発生を極力抑制することによって被保護体を保護すべく、特許文献1に示される落雷抑制型避雷装置を提案した。
【0006】
この落雷抑制型避雷装置は、絶縁体を挟んで配置される上部電極体及び下部電極体を有し、下部電極体のみを接地して構成したものである。
【0007】
そして、たとえばマイナス電荷が雲底に分布した雷雲が近づくと、それとは逆の電荷(プラス電荷)が大地の表面に分布し、接地されている下部電極体にもプラス電荷が集まる。
【0008】
すると、絶縁体を介して配置されている上部電極体は、コンデンサの作用でマイナス電荷を帯びることとなる。
【0009】
この作用により、避雷装置とその周辺における上向きストリーマの発生を起こりにくくして落雷の発生を抑制するようにしている。
【0010】
また、特許文献2において、前記上部電極体に相当する第1電極体を円筒状に形成し、その内部に下部電極体に相当する第2電極体を絶縁状態で配置した構成を提案した。
【0011】
この技術は、第1の電極体を円筒状に形成することにより、電極体を長尺化し、たとえば、建築物の屋上の外縁部の全長に亘って設置することを可能にし、かつ、長尺化によるマイナス電荷の帯電領域を拡大するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第5839331号公報
【文献】特許第6028293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述した特許文献2に記載された落雷抑制型避雷装置においては、第1電極体を円筒状に形成したものであるが、電気絶縁材料を円筒状に形成するには、押し出し成形機によってシームレスな円筒を形成する方法、あるいは、ベンディング機によって円筒状に湾曲させた後、その両端縁を溶接等によって連家することにより円筒を形成する方法がある。
【0014】
しかしながら、前述した形成方法においても製造が難しく、あるいは、加工の工程数が多く、製造コストを高騰させることが想定される。
【0015】
本発明は、このような想定される問題点を解消せんとしてなされたもので、長尺化によるマイナス電荷の帯電領域拡大効果を維持しつつ、電極体の製造を容易にして、製造コストを軽減することの可能な落雷抑制型避雷装置およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の落雷抑制型避雷装置は、前述した課題を解決するために、導電性材料からなる断面が略半円弧状の長尺な一対の電極体を備え、これらの一対の電極体が、その開放部の端縁が対峙するように上下に配置され、この対峙された開放部の端縁間に配置され、上下の電極体を連結するとともにこれらを電気的に絶縁する絶縁体と、下方の電極体に電気的に接続され、この下方の電極体を接地する接地具とによって構成されていることを特徴とする。
【0017】
このような構成とすることにより、平板状の素材を半円弧状に湾曲形成することにより一対の電極体を形成する。
【0018】
長尺な素材を半円弧状に形成することは、一般的な機器を用いて比較的容易に行なうことができる。
【0019】
したがって、容易な加工により半円弧状の断面を有する長尺な電極体を得ることができるので、長尺化によるマイナス電荷領域を大きくしつつ、製造コストの高騰を抑えることができる。
【0020】
前記下方の電極体に、落雷抑制型避雷装置を設置するための固定手段を導電状態で取り付けるとともに、この固定手段に前記接地具を接続することにより、落雷抑制型避雷装置を容易に設置することができる。
【0021】
また、前記固定手段を、前記下方の電極体に一端部が固定された支持ロッドと、この支持ロッドの他端部に設けられ、固定対象物に当接させられる支持プレートと、この支持プレートを前記固定対象物に止着する止着部材とによって構成することができる。
【0022】
これによって、落雷抑制型避雷装置の設置を容易にすることができる。
【0023】
さらに、本発明の落雷抑制型避雷装置の製造方法は、一対の電極体を、導電性材料によって長方形状に形成された電極体素材を、プレス成形により短辺の断面形状が略半円弧となるように湾曲形成することを特徴とする。
【0024】
このように電極体をプセス成形によって加工することにより、一般的な機器を用いた加工により電極体を簡便に行なうことができ、製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
長尺化によるマイナス電荷の帯電領域拡大効果を維持しつつ、電極体の製造を容易にして、製造コストを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態が適用された建築物の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態を示す縦断面図である。
図3】本発明の一実施形態を示すもので、電極体の製造工程を示す正面図である。
図4】本発明の一実施形態を示すもので、電極体の製造工程を示す正面図である。
図5】本発明の一実施形態を示すもので、(a)は上部の電極体を組み上げた状態の縦断面図、(b)は下部の電極体を組み上げた状態の縦断面図である。
図6】本発明の一実施形態を示すもので、上部の電極体と下部の電極体を組み上げた状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図中符号1は本実施形態における落雷抑制型避雷装置を示す。
この落雷抑制型避雷装置1は、図1に示すように、保護対象物である建築物2の屋上に、その外縁部に沿って設置されている。
【0028】
そして、落雷抑制型避雷装置1は、半円弧状断面を有する一対の電極体3を備えており、この一対の電極体3は、その一方が上方に配置される上部電極体3aとなされ、他方が下方に配置される下部電極体3bとなされている。
【0029】
これらの上部電極3aと下部電極3bは、その開口部の端縁4・5同士を対峙させるように配置され、対峙された端縁4・5を、電気絶縁材料によって形成された絶縁体6によって所定間隔をおいて連結されていることにより、上部電極体3aと下部電極体3bによりキャパシタを構成するようになっている。
【0030】
また、両電極体3a・3bの内部には、そのキャパシタの容量を超えた雷撃が作用した際に両電極体3a・3bを導通させて、落雷のエネルギを地面に逃がして落雷抑制型避雷装置1の損傷を防止する放電突起7・8が取り付けられている。
【0031】
上部電極体3aに取り付けられる放電突起7は、上部電極体3aを貫通するビス9によって固定されている。
【0032】
また、下部電極体3bに取り付けられる放電突起8は、後述する固定手段10によって固定されている。
【0033】
前記固定手段10は、下部電極体3bを貫通し、放電突起8に螺着される支持ロッド11を備えている。
【0034】
この支持ロッド11には、図5に示すように、固定ナット12が螺着されており、この固定ナット12が下部電極体3bの外面に当接させられるようになっており、この状態において、固定ナット12と放電突起8との共働により下部電極体3bを挟持するようになっている。
【0035】
この結果、放電突起8および支持ロッド11が下部電極体3bに固定されている。
【0036】
このように固定された両放電突起7・8は、図6に示すように、それぞれの先端部間の間隔が所定距離に保持されるようになっている。
【0037】
前記支持ロッド11の下方には、電気導電性材料によって形成されたコネクタ13が取り付けられ、また、下端部には支持プレート14が取り付けられている。
【0038】
前記コネクタ13には、導電ケーブル15と接地ロッド16とからなる接地具が取り付けられており、接地ロッド16を地中に埋め込むことにより、下部電極体3bが支持ロッド11を介して接地されるようになっている。
【0039】
そして、前記支持プレート14がボルト等の止着部材17によって建築物2に止着されることにより、落雷抑制型避雷装置1が建築物2へ固定されるようになっている。
【0040】
このように構成された本実施形態の落雷抑制型避雷装置1によれば、建築物2に、下部にマイナス電荷を帯びた雷雲が近づくと、地面がプラス電荷を帯び、また、地面に接地ロッド16、導電ケーブル15、および、固定手段10を介して電気的に接続された下部電極体3bもプラス電荷に帯電する。
【0041】
そして、下部電極体3bとでキャパシタを構成する上部電極体3aがマイナス電荷に帯電する。
【0042】
これによって、上向きストリーマの発生が抑制され、建築物2への落雷が抑制され、落雷が防止される。
【0043】
このマイナス電荷を帯電する領域が、電極体3が長尺であることから大きく確保され、これによって、落雷抑制効果が大幅に向上する。
【0044】
本実施形態においては、平板状の素材を半円弧状に湾曲形成することにより一対の電極体3を形成する。
【0045】
長尺な素材を半円弧状に形成することは、一般的な機器を用いて比較的容易に行なうことができる。
【0046】
したがって、容易な加工により半円弧状の断面を有する長尺な電極体3を得ることができるので、長尺化によるマイナス電荷領域を大きくしつつ、製造コストの高騰を抑えることができる。
【0047】
図3および図4は、本実施形態における電極体3の形成方法を示す。
この形成方法は、断面が半円弧状の突起19aを備え、固定された下部金型19と、断面が半円弧状の凹部20aを備え、流体圧シリンダ21によって下部金型19へ向けて押圧・離間させられる上部金型20とからなるプレス機18を用いている。
【0048】
そして、図3に示すように、下部金型19の突起19aに帯電体素材22をセットした後に、上部金型20を流体圧シリンダ21によって下方へ移動させる。
【0049】
これによって、図4に示すように、帯電体素材22が断面半円弧状に形成される。
このように、既存の機器を用いた加工により、電極体3を簡便に形成することができ、製造コストの高騰を抑制することができる。
【0050】
なお、前記実施形態において示した各構成部材の諸形状等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 落雷抑制型避雷装置
2 建築物
3 電極体
3a 上部電極体
3b 下部電極体
4 端縁
5 端縁
6 絶縁体
7 放電突起
8 放電突起
9 ビス
10 固定手段
11 支持ロッド
12 固定ナット
13 コネクタ
14 支持プレート
15 導電ケーブル
16 接地ロッド
17 止着部材
18 プレス機
19 下部金型
19a 突起
20 上部金型
20a 凹部
21 流体圧シリンダ
22 帯電体素材

図1
図2
図3
図4
図5
図6