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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/36 20060101AFI20230413BHJP
   H01H 73/50 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
H01H73/36 E
H01H73/36 A
H01H73/50 G
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021118715
(22)【出願日】2021-07-19
(62)【分割の表示】P 2019053286の分割
【原出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2021168308
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
(72)【発明者】
【氏名】今川 誠
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 亮平
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-025415(JP,A)
【文献】特開2002-025416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/36
H01H 73/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる回路と、
該回路を開閉する接点部と、
前記回路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、
前記接点部の閉状態を保持可能であり、且つ前記吸引体に対して前記吸引体側への動き代となる隙間を空けて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に動いて前記吸引体と接触した状態で、前記接点部の閉状態に対する保持を解除して前記接点部を開放可能とする解除状態とに切替可能な可動体と、
前記吸引体を、前記ケース内に取り付ける取付構造と、を備え、
前記取付構造は、前記ケースに設けられたケース側係合部と、前記吸引体に設けられ且つ前記ケース側係合部に係合する吸引側係合部とを有し、
前記吸引体と前記可動体とが対向する対向方向で前記吸引側係合部の係合位置が前記ケース側係合部に対して変化することにより、前記吸引体は、前記可動体との対向方向で移動可能に構成され、
前記可動体の前記解除状態における前記吸引体の対向方向の位置は、前記吸引側係合部の前記ケース側係合部に対する係合位置が前記対向方向における前記可動体から遠い側に位置することで、前記可動体の前記保持状態における前記吸引体の位置よりも前記可動体が配置される側と反対側に移動した位置である、
回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源側と負荷側とを接続する回路に過電流が流れた際に回路を遮断して負荷側の機器等を保護するための回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の回路遮断器には、例えば、特許文献1の図7乃至図9に図示されているように、電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる回路と、該回路上に設けられる可動接点及び固定接点と、該可動接点と固定接点の開閉状態を切り替えるための開閉機構と、磁性体であり且つ回路に流れる電流により電磁石となる第一鉄心と、磁性体であり且つ該第一鉄心との間にスペースをあけて対向配置される第二鉄心と、第一鉄心と第二鉄心との間に配置される帯板状のバイメタルと、を備えたものが知られている。
【0003】
上記構成の回路遮断器の開閉機構は、第一鉄心に対して掛止可能であり、且つ第一鉄心に対する掛止状態が切り替わることで、可動接点と固定接点との開閉状態を切り替える作動板を有する構成となっている。
【0004】
また、上記構成の回路遮断器では、可動接点と固定接点とが閉じられている状態においては、作動板が第一鉄心に掛止されているが、回路に流れる過電流によりバイメタルが発熱すると、バイメタルが第二鉄心側に撓み、これに伴い、第一鉄心が第二鉄心側に動いて第一鉄心に対する作動板の掛止が解除される。これにより、可動接点と固定接点とが開かれる(いわゆる、時延引き外しが行われる)
【0005】
さらに、上記構成の回路遮断器では、回路に流れる短絡電流のような過大電流により第一鉄心に磁力が生じ、バイメタルが撓むよりも前に該第一鉄心が第二鉄心側に動いた場合においても、第一鉄心に対する作動板の掛止が解除され、可動接点と固定接点とが開かれる(いわゆる、瞬時引き外しが行われる)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-25415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記構成の回路遮断器の第二鉄心は、器体内の軸部に取り付けられているコイルばねにより第一鉄心側に付勢された状態になっており、該軸部を中心に回動可能になっているが、時延引き外しを行った場合においても、瞬時引き外しを行った場合においても、可動接点と固定接点とが開かれた時点で第二鉄心とともに第一鉄心の動きが規制されてしまう結果、バイメタルの動きも規制されることになる。
【0008】
そのため、上記構成の回路遮断器では、可動接点と固定接点とが開かれてそれぞれの鉄心の動きが規制された状態のままバイメタルが撓み続けると、該バイメタルの一部が該バイメタル自身の発する力によって大きく曲がり、塑性変形を起こしてしまうことがあった。
【0009】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、バイメタルの塑性変形を抑制できる回路遮断器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回路遮断器は、
電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる回路と、
該回路を開閉する接点部と、
前記回路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、
前記接点部の閉状態を保持可能であり、且つ前記吸引体に対して前記吸引体側への動き代となる隙間をあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に動いて前記吸引体と接触した状態で、前記接点部の閉状態に対する保持を解除して前記接点部を開放可能とする解除状態とに切替可能な可動体と、を備え、
前記吸引体は、前記可動体との対向方向で移動可能に構成され、
前記可動体の前記解除状態における前記吸引体の対向方向の位置は、前記可動体の前記保持状態における前記吸引体の位置よりも前記可動体が配置される側と反対側に移動した位置である、
回路遮断器である。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の回路遮断器は、バイメタルの塑性変形を抑制できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る回路遮断器の斜視図である。
図2図2は、同実施形態に係る回路遮断器の分解図である。
図3図3は、同実施形態に係る回路遮断器のケースの内部の拡大図である。
図4図4は、同実施形態に係る回路遮断器の吸引体の取付構造の説明図である。
図5図5は、同実施形態に係る回路遮断器の可動体の取付構造の説明図である。
図6図6は、同実施形態に係る回路遮断器の吸引体を可動体側から見た図である。
図7図7は、同実施形態に係る回路遮断器の吸引体をケースの正面側から見た図である。
図8図8は、同実施形態に係る回路遮断器の可動体の斜視図である。
図9図9は、同実施形態に係る回路遮断器の可動体をケースの正面側から見た図である。
図10図10は、同実施形態に係る回路遮断器の動作説明図であって、接点部を閉じている状態の説明図である。
図11図11は、同実施形態に係る回路遮断器の動作説明図であって、接点部を開いている状態の説明図である。
図12図12は、同実施形態に係る回路遮断器の動作説明図であって、回路を遮断する前の吸引体と可動体の説明図である。
図13図13において、(a)は回路を遮断した後の吸引体と可動体の説明図であり、(b)は回路を遮断した後に吸引体と可動体とが動いた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る回路遮断器について添付図面を参照しつつ説明を行う。
【0014】
回路遮断器は、異常な電流が流れたときに回路を遮断して負荷側に繋がる機器等を保護するためのものである。
【0015】
回路遮断器1は、図1に示すように、ケース(筐体)2と、図2に示すように、電源側と負荷側とを電気的に接続する回路3と、前記回路3に流れる電流により電磁石となる吸引体4と、接点部31の閉状態を保持可能であり、且つ前記吸引体4に対して吸引体4側への動き代となるスペースをあけて対向配置される保持状態と、吸引体4側に動いて該吸引体4に接触することにより、接点部31の閉状態に対する保持を解除することで接点部31を開放可能とする解除状態とに切替可能な可動体5と、高温になると可動体5を吸引体4側に向けて移動させるように変形するバイメタル6と、吸引体4を可動体5に向けて付勢する付勢部材(以下、接触用付勢部材と称する)7と、接点部31を開閉操作可能な操作機構8と、を備えている。
【0016】
ケース2には、図1に示すように、回路遮断器1を分電盤に取り付けた状態において、手前側に配置される一面である正面20と、該正面20とは反対側の一面(使用時において分電盤への取り付け面に対向配置される一面)である背面21と、正面20と背面21とに連続し、且つ互いに対向配置される一対の側面22と、が含まれている。ケース2の側面22は、回路遮断器1が分電盤に設置された状態において、別の回路遮断器1のケース2の側面22と対向する面である。
【0017】
なお、本実施形態では、ケース2の正面20と背面21とが並ぶ方向を前後方向、一対の側面22が並ぶ方向を横幅方向、前後方向と横幅方向のそれぞれに直交する方向を縦幅方向、と称して以下の説明を行うこととする。
【0018】
回路3は、図2に示すように、分電盤に接続される一対の入力端子30と、該一対の入力端子30を繋ぐ電路を開閉可能な接点部31と、を有する。また、回路3では、各入力端子30に対して接点部31が一つずつ設けられている。
【0019】
以下の説明において、接点部31が前記電路(回路)を閉じている状態を閉状態、接点部31が前記電路(回路)を開いている状態を開状態と称して以下の説明を行う場合がある。
【0020】
各接点部31は、ケース2内で固定される固定側端子310と、該固定側端子310に対して接離可能な可動側端子311と、を有する。
【0021】
可動側端子311は、弾性変形可能な細長い金属板で構成されている。可動側端子311の長手方向における一端(基端)側は、ケース2内に位置決め(固定)されている。
【0022】
そして、可動側端子311の長手方向における他端(先端)側は、接点部31が前記開状態に切り替わっている状態においては、前記前後方向における手前側で固定側端子310に対して間隔をあけて配置されている。そのため、可動側端子311は、固定側端子310に向かって撓む(弾性変形する)ことで、該可動側端子311の先端部が該固定側端子310に当接する(すなわち、前記閉状態に切り替わる)ように構成されている。
【0023】
吸引体4は、回路に流れる電流の大きさに応じた磁力を発生させるように構成されている。本実施形態に係る吸引体4は、可動体5に向けて配置される吸引側対向面40を有する。吸引側対向面40には、可動体5が前記保持状態である状態において、一方側の部分(吸引体4が動く際の起点(後述する回動軸220)側に配置される部分)で可動体5(可動体5の後述する可動側対向面)に接触する接触部(以下、吸引側接触部と称する)400と、他方側の部分で可動体5(可動体5の後述する可動側対向面)に接離可能な接離部(以下、吸引側接離部と称する)401と、が含まれている。
【0024】
本実施形態に係る吸引体4は、図6に示すように、前記横幅方向において間隔をあけて対向配置される一対の側壁部41と、該一対の側壁部41のそれぞれに連設される連設壁部42とを有する。
【0025】
一対の側壁部41は、壁面を前記横幅方向に向けた状態で互いに平行となるように配置されている。そして、吸引側対向面40は、側壁部41のうちの可動体5側に向けて配置されている部分によって構成されている。
【0026】
吸引側対向面40は、平らな面であり、常態(保持状態から保持解除状態に切り替わる動作をとっていない状態)においては、前記縦幅方向において、吸引側接離部401が吸引側接触部400よりも可動体5から離れた場所に位置するように傾斜している。
【0027】
さらに、一対の側壁部41のそれぞれは、ケース2の側面22の内側に回動可能に取り付けられている。より具体的に説明すると、図4に示すように、一対の側壁部41のそれぞれは、前記横幅方向に沿って延びる軸線を中心として回動可能となるように構成されている。本実施形態では、側壁部41に貫通孔410が形成されており、この貫通孔410にケース2の側面22の内側から前記横幅方向における内側に向けて突設された回動軸220が挿通されている。
【0028】
貫通孔410は、全周に亘って孔径が均一又は略均一な丸孔である。なお、貫通孔410は、吸引側接触部400から他方側にずれた位置、すなわち、吸引側接離部401側にずれた位置に形成されている。なお、本実施形態では、前記前後方向における中央部よりも吸引側接離部401側にずれた位置に貫通孔410が形成されている。
【0029】
ここで、回動軸220について説明する。回動軸220の先端側は、少なくとも前記縦幅方向における横幅が前記貫通孔410の孔径よりも小さくなっている。
【0030】
本実施形態の回動軸220の先端側には、前記縦幅方向における一方側(可動体5側とは反対側)に位置するガイド面220aと、前記縦幅方向における他方側(可動体5側)に位置する逃面220bと、が含まれている。
【0031】
ガイド面220aは、円弧状である。また、ガイド面220aの曲率は、貫通孔410の曲率と同一又は略同一である。
【0032】
逃面220bは、ガイド面220aの延長線上よりも内側(回動軸220の中心側)に位置するように形成されている。
【0033】
また、逃面220bには、図12に示すように、前記縦幅方向において最も前方に位置する円弧状の湾曲面220baと、該湾曲面220baの両端から延出し且つ前記ガイド面220aに連続する一対の傾斜面220bbと、が含まれており、一対の傾斜面220bbは、湾曲面220ba側からガイド面220a側になるにつれて、前記前後方向における外側に向かうように傾斜している。
【0034】
そのため、回動軸220は、側壁部41における貫通孔410を画定している内周面にガイド面220aを当接させている状態においては、逃面220bと該内周面との間に隙間ができるように構成されている。
【0035】
従って、吸引体4は、貫通孔410を回動起点(中心)として回転可能であり、且つ隙間の分だけ横幅方向にも移動可能となっている。なお、吸引体4全体が回動軸220を中心として回動した際、吸引側接触部400と吸引側接離部401とは、該貫通孔410に挿通された回動軸220を中心とする周方向に沿って回動するようになっている。
【0036】
そのため、本実施形態に係る回路遮断器1では、ケース2の回動軸220で構成されるケース側係合部と、吸引体4の貫通孔410で構成され且つケース側係合部に係合する吸引側係合部とによって吸引体4をケース2に取り付けるための取付構造が構成されており、さらに、可動体5に接離する方向でケース側係合部に対して、吸引側係合部の係合位置が変化するように構成されている。
【0037】
連設壁部42は、図7に示すように、各側壁部41の可動体5側とは反対側の端部同士に連設されており、可動体5側に向けて配置される面(以下、内面と称する)も、可動体5側とは反対側に向けて配置される面(以下、外面と称する)も平らである。
【0038】
可動体5は、図8に示すように、吸引側対向面40に対向配置される可動側対向面50を有する。
【0039】
この可動側対向面50には、自身の状態が前記保持状態に切り替わっている状態において、吸引側接触部400に接触する接触部(以下、可動側接触部と称する)500と、吸引側接離部401に対して接離可能な隙間をあけて配置される接離部(以下、可動側接離
部と称する)501と、が含まれている。
【0040】
なお、吸引側接触部400と可動側接触部500とは、点接触又は略点接触していることが好ましい。
【0041】
本実施形態に係る可動体5は、細長い板状の可動体本体部51と、該可動体本体部51をケース2に対して回動可能に取り付けられる取付部52と、バイメタル6により吸引体4側に向けて押し操作される押操作部53と、を有する。
【0042】
可動体本体部51は、一方の板面が吸引体4側に向けて配置され、他方の板面が吸引体4側とは反対側に向けて配置されており、該一方の板面により可動側対向面50が構成されている。
【0043】
また、可動体本体部51は、常態においては、前記前後方向に沿って真っすぐに延びた姿勢となるように配置されており、一方の板面のうちのケース2の背面21側の領域によって可動側接触部500が構成され、可動体本体部51の一方の板面のうちのケース2の正面20側の領域によって可動側接離部501が構成されている。
【0044】
また、可動体本体部51には、接点部31の閉状態を保持する際に利用する掛止保持部54が形成されている。掛止保持部54は、可動体本体部51の一方の板面と他方の板面とに亘って貫設された孔であるが、例えば、他方の板面側のみで開口する凹部により構成されていてもよい。
【0045】
取付部52は、図5に示すように、可動体本体部51におけるケース2の背面21側に配置される端部に連設されており、前記横幅方向において、可動体本体部51の両側から外側に向かって延出している。また、取付部52は、側面22の内側に形成された凹状の受部221内に回動可能に挿入されている。
【0046】
さらに、取付部52は、吸引側接触部400と可動側接触部500との接触位置を基準としてケース2の背面21側にずれた位置に配置されている。そのため、可動体5の回動起点は、吸引体4の回動起点に対しても、前記前後方向でずれた位置(ケース2の背面21側にずれた位置)に配置されている。これにより、可動体5は、取付部52を回動起点として、可動側接離部501を吸引側接離部401に対して接離させるようにして回動できるようになっている。
【0047】
バイメタル6は、図10に示すように、回路3に流れる過電流により加熱され、該加熱に伴って撓むように形成されている。なお、本実施形態において、過電流とは、変形に伴って可動体5を吸引体4側に移動させるようにバイメタル6を加熱する電流(いわゆる、時延引外しを行う際に流れる電流)のことであり、過大電流とは、吸引体4に可動体5を引き寄せる強さの磁力を生じさせる電流(いわゆる、瞬時引外しを行う際に流れる電流)のことである。
【0048】
バイメタル6は、帯板状であり、一方の板面側の熱膨張率が他方の板面側の熱膨張率よりも高くなっている。
【0049】
バイメタル6は、吸引体4と可動体5の間に配置されている。より具体的に説明すると、バイメタル6は、吸引体4の一対の側壁部41の間に配置されており、前記一方の板面が可動体5側に対向し、前記他方の板面が連設壁部42側に対向した姿勢となっている。
【0050】
バイメタル6の長手方向における両端部のうちの一端部(以下、固定端部と称する)60のみがケース2内に固定されている。
【0051】
バイメタル6の長手方向における両端部のうちの他端部(以下、可動端部と称する)61は、前記縦幅方向において可動体5の押操作部53に対して対向配置されている。また、バイメタル6の可動端部61は、他方の板面側を押操作部53に対向させた状態で配置されている(図9参照)。
【0052】
そのため、バイメタル6は、回路3に流れた過電流によって加熱されると、前記他方の板面が凹状に凹むようにして撓み、これに伴い、可動端部61が押操作部53を吸引体4側に向けて押し操作するように構成されている。
【0053】
接触用付勢部材7は、ケース2内に位置決めされた状態で固定されており、前記吸引体4の連設壁部42を可動体5側に向けて付勢するように構成されている。
【0054】
また、接触用付勢部材7は、図3に示すように、前記前後方向において、吸引体4の回動起点から可動体5の回動起点側にずれた位置(本実施形態では、吸引体4の回動起点と可動体5の回動起点の間)で吸引体4を可動体5に向けて付勢するように構成されている。
【0055】
これにより、吸引体4は、常態においては、吸引側接触部400が吸引側接離部401に近付くようにして傾斜した姿勢になっており、また、吸引側接触部400が可動側接触部500に押されると、吸引側接触部400と可動側接触部500との接触状態を保ったまま、吸引側接離部401が可動側接離部501に接近するようにして回動する。
【0056】
また、接触用付勢部材7は、吸引側係合部の前記係合位置が、可動体5に近い側に位置し、且つ前記バイメタル6の変形時に前記係合位置が可動体5から遠い側に変位するように、吸引体4を付勢している、
【0057】
操作機構8は、図2に示すように、ケース2の外部から操作可能な操作部80と、操作部80の操作に伴って、回路遮断器1の状態を、接点部31が開いている開状態と、接点部31が閉じられている閉状態とに切り替える切替構造81と、を備えている。
【0058】
操作部80は、前記横幅方向に沿って延びる回動軸220を中心として回動可能なベース部800と、該ベース部800からケース2の外部に延出するレバー部801と、を有する。
【0059】
切替構造81は、接点部31を閉状態と開状態とに切り替える、すなわち、可動側端子311を固定側端子310に接離させる切替部材810と、該切替部材810を付勢する開放用付勢部材811と、操作部80の操作により切替部材810を作動させるための作動構造812と、を有する。
【0060】
切替部材810は、前記前後方向に沿ってスライド可能であり、前記前後方向における後方側(ケース2の正面20から背面21側に向かう方向)へのスライドに伴い、可動側端子311を固定側端子310に向けて押し付け、前記前後方向における手前側(ケース2の背面21から正面20側に向かう方向)へのスライドに伴い、可動側端子311に対する押付状態を解除するように構成されている。
【0061】
開放用付勢部材811は、切替部材810を前記前後方向における手前側に向けて付勢している。なお、開放用付勢部材811は、常に切替部材810に付勢力を与えるように構成されていてもよいし、切替部材810がケース2の正面20側から背面21側にスライドした際に、切替部材810に付勢力を与えるように構成されていてもよい。
【0062】
作動構造812は、操作部80に接続されるリンク部材812aと、該リンク部材812aに取り付けられる押込部材812bと、を有する。
【0063】
リンク部材812aは、前記横幅方向に沿って操作部80に挿通される操作部側軸部812aaと、該操作部80側挿通部に繋がり、前記横幅方向に沿って押込部材812bに挿通される押込部側軸部812abとを有する。
【0064】
また、リンク部材812aは、操作部80の一方側への回転に伴い、押込部材812bを前記前後方向における後方側に押し込み、また、操作部80の他方側への回転に伴い、押込部材812bを前記前後方向における手前側に引き寄せるように構成されている。
【0065】
押込部材812bは、押込部側軸部812abが挿通されるベース部812baと、該ベース部812baから延出し、且つ掛止保持部54内に差込可能な差込片部812bbと、該ベース部812baから差込片部812bbとは反対側に延出し、且つ切替部材810を押込操作可能な押込片部812bcと、を有する。
【0066】
ベース部812baは、前記横幅方向に沿って押込部側軸部812abが挿通されており、該押込部側軸部812abを中心として回転可能となっている。そのため、押込部側軸部812abに対するベース部812baが回転すると、差込片部812bbと押込片部812bcも、押込部側軸部812abを中心として同方向に回転する。
【0067】
差込片部812bbは、掛止保持部54内に挿通され且つリンク部材812aがベース部812baを引き上げている状態においては、該掛止保持部54の内面に対して前記前後方向における手前側で掛止され、掛止保持部54内に挿通され且つリンク部材812aがベース部812baを押し込んでいる状態においては、該掛止保持部54の内面に対して前記前後方向における後方側で掛止されるように構成されている(図10参照)。
【0068】
本実施形態に係る回路遮断器1の構成は、以上の通りである。続いて、回路遮断器1の動作説明を行う。
【0069】
回路遮断器1を使用する場合は、ケース2を分電盤に取り付けた後に、各接点部31を閉じる。本実施形態では、図10に示すように、操作部80を回動させると、リンク部材812aが押込部材812bをケース2の背面21側に向けて押し込む。
【0070】
このとき、差込片部812bbが掛止保持部54に掛止されているため、差込片部812bbに対して押込片部812bcが前記前後方向における後方側に移動する。
【0071】
さらに、切替部材810が押込部712aによって前記前後方向における後方側に押し込まれて移動し、さらに、該切替部材810によって可動側端子311が固定側端子310に向けて押し込まれる。
【0072】
そして、可動側端子311と固定側端子310とが接触することで、回路3が閉じた状態に切り替わる。
【0073】
切替部材810、押込部材812bには、開放用付勢部材811による付勢力(前記前後方向における手前側への付勢力)がかかるが、リンク部材812aの押し込みにより切替部材810、押込部材812bの前記前後方向における手前側への動きがロックされているため、可動側端子311と固定側端子310とを接触させた状態(回路3を閉じた状態)が維持される。すなわち、可動体5が保持状態に切り替わる。
【0074】
可動体5が保持状態に切り替えられた状態においては、吸引側接触部400と可動側接触部500とが接触する一方で、吸引側接離部401と可動側接離部501とは離間している。このように、吸引側対向面40(吸引側第一領域40a)と可動側対向面50(可動側第一領域50a)との間の隙間は、吸引側接触部400と可動側接触部500とが部分的に接触することによって、吸引側接触部400及び可動側接触部500側に向かうにつれて狭くなっている。そのため、可動体5の吸引体4側への動き代を確保しつつ、可動体5が保持状態であるときの前記隙間を小さく抑えることができる。
【0075】
本実施形態に係る回路遮断器1は、バイメタル6が撓むことで回路3が遮断される動作(時延引き外し)と、バイメタル6が撓む前に、可動体5が吸引体4側に引き寄せられることで回路3が遮断される動作(瞬時引き外し)とを行うように構成されている。なお、常態において、押操作部53は、バイメタル6から押し付けられていない状態になっている(図12参照)。
【0076】
時延引き外しによって回路3を遮断する場合、まず、回路3に流れる過電流によりバイメタル6が加熱される。これに伴い、バイメタル6が前記他方の板面が凹状に凹むようにして撓み、可動端部61が押操作部53を吸引体4側に向けて押し操作する(図11、13(a)参照)。これにより、可動体5が自身の回動起点を中心として吸引体4側に向かって回動する。
【0077】
可動体5が吸引体4側に回動する際、可動側接触部500が吸引側接触部400を押すため、吸引体4が回動軸220を中心として回動し、吸引側接離部401が可動側接離部501に向かって動く。そのため、吸引側接離部401と可動側接離部501とは、互いに接近する方向に動く。
【0078】
そして、掛止保持部54から差込片部812bbが外れると、ロック状態が解除されるため、開放用付勢部材811の付勢力により切替部材810と押込部材812bとが前記前後方向における手前側に引き寄せられ、可動側端子311が固定側端子310から離間し、回路3が遮断される。
【0079】
このとき、可動体5と吸引体4とは互いに接触した状態になっているが、回転軸の逃面220bと側壁部41における貫通孔410を画定する内周面との間には隙間が形成されている。そのため、吸引体4には、前記縦幅方向において可動体5側とは反対側への動き代が設定されている。
【0080】
従って、可動体5と吸引体4とが接触した状態で、バイメタル6がさらに撓むと(変形すると)、前記隙間の範囲内で可動体5と吸引体4とがバイメタル6が撓む方向へと移動する(図13(b)参照)。
【0081】
瞬時引き外しによって回路3を遮断する場合は、過大電流により吸引体4に生じた磁力によって、可動体5が吸引体4側に引き寄せられる。これに伴い、掛止保持部54から差込片部812bbが外れて可動側端子311が固定側端子310から離間し、回路3が遮断される。
【0082】
このときにおいても、可動体5と吸引体4とは互いに接触した状態になっているが、回動軸220の逃面220bと側壁部41における貫通孔410を画定する内周面との間には隙間が形成されている。そのため、吸引体4には、前記縦幅方向において可動体5側とは反対側への動き代が設定されている。
【0083】
従って、可動体5と吸引体4とが接触した状態で、バイメタル6がさらに撓むと(変形すると)、前記隙間の範囲内で可動体5と吸引体4とがバイメタル6が撓む方向へと移動する。
【0084】
以上のように、本実施形態に係る回路遮断器1によれば、回路3が遮断され且つ可動体5と吸引体4とが接触している状態であっても、ケース側係合部と吸引側係合部との間の隙間の分だけ可動体5と吸引体4に動き代が生まれる。
【0085】
そのため、可動体5が吸引体4に接触している状態でバイメタル6が変形すると、接触用付勢部材7の付勢力によりケース側係合部に対する吸引側係合部の係合位置が、可動体5に近い側から可動体5から遠い側に変位するため、吸引体4と可動体5がバイメタル6の変形方向へ移動する。
【0086】
従って、吸引側係合部の係合位置が可動体5に近い側から可動体5から遠い側に変位するまでの間は、可動体5と吸引体4の動きがロックされず、バイメタル6の一部が大きく曲がり塑性変形を起こしてしまうことを抑制できる。
【0087】
なお、本発明の回路遮断器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0088】
上記実施形態の取付構造では、ケース側係合部が回動軸220であり、吸引側係合部が貫通孔410であったが、この構成に限定されない。例えば、取付構造は、吸引側係合部が回動軸であり、ケース側係合部が該回動軸を挿し込み可能な凹部となるように構成されていてもよい。このように、取付構造のケース側係合部と吸引側係合部とは、互いに係合した状態で、可動体5に接離する方向(前記縦幅方向)における互いの係合位置が動く(変わる)ように構成されていればよい。
【0089】
上記実施形態において特に言及しなかったが、吸引体4の動き代は、前記縦幅方向に沿った方向における動き代であってもよいし、前記縦幅方向に対して傾斜する方向であってもよい。
【0090】
すなわち、吸引体4が前記縦幅方向での位置が変わるようになっていれば、吸引体4の動き代は、前記縦幅方向に沿って設定されていてもよいし、前記縦幅方向に傾斜する方向に沿って設定されていてもよい。
【0091】
上記実施形態では、接点部31が開状態に切り替えられている状態においては、吸引体4と可動体5とが部分的に接触していたが、この構成に限定されない。例えば、接点部31が開状態に切り替えられている状態において、吸引体4と可動体5とが完全に離間していてもよい。
【0092】
上記実施形態において、吸引側対向面40は、吸引体4全体を傾けることで吸引側接離部401を吸引側接触部400よりも可動体5から離れた場所に配置してもよいし、吸引側対向面40自体を傾斜した形状にしてもよい。
【0093】
上記実施形態において、可動体5は、前記横幅方向において可動体本体部51の両側から外側に向かって延出する取付部52を受部221内に挿入することで、回動可能となるように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、可動体5は、側面22の内面に突設した軸を挿通する構造とすることで回動可能となるように構成されていてもよい。
【0094】
上記実施形態において、可動体5の可動体本体部51は、板状であったが、この構成に限定されない。例えば、可動体5の可動体本体部51は、柱状や、枠状であってもよい。
【0095】
上記実施形態では、吸引側対向面40を前記前後方向に対して傾斜させ、可動側対向面50を前記前後方向に沿って真っすぐに配置していたが、この構成に限定されない。例えば、吸引側対向面40と可動側対向面50の両方を前記前後方向に対して傾斜させてもよいし、可動側対向面50のみを前記前後方向に対して傾斜させてもよい。
【0096】
上記実施形態の回路遮断器は、ケースと、電源側の端子と負荷側の端子とに繋がる回路と、該回路を開閉する接点部と、前記回路に流れる電流により電磁石となる吸引体と、前記接点部の閉状態を保持し、且つ前記吸引体に対して該吸引体側への動き代となるスペースをあけて対向配置される保持状態と、前記吸引体側に動いて該吸引体に接触することにより、前記接点部の閉状態に対する保持を解除することで前記接点部を開放可能とする解除状態とに切替可能である可動体と、高温になると前記可動体を前記吸引体側に向けて移動させるように変形するバイメタルと、前記吸引体を、前記ケース内に取り付ける取付構造と、前記吸引体を前記可動体に接近する方向に向けて付勢する付勢部材と、を備え、前記取付構造は、前記ケースに設けられたケース側係合部と、前記吸引体に設けられ且つ前記ケース側係合部に係合する吸引側係合部とを有し、前記吸引側係合部は、前記可動体に接離する方向で前記ケース側係合部に対して係合位置が動くように構成され、前記付勢部材は、前記吸引側係合部の前記係合位置が、前記可動体に近い側に位置し、且つ前記バイメタルの変形時に前記係合位置が前記可動体から遠い側に変位するように、前記吸引体を付勢している、回路遮断器である。
【0097】
上記構成の回路遮断器によれば、可動体が吸引体に接触している状態でバイメタルが変形すると、付勢部材の付勢力によりケース側係合部に対する吸引側係合部の係合位置が、可動体に近い側から可動体から遠い側に変位するため、吸引体と可動体がバイメタルの変形方向へ移動する。そのため、吸引側係合部の係合位置が可動体に近い側から可動体から遠い側に変位するまでの間は、バイメタルの変形が部分的に妨げられることを抑制でき、これにより、バイメタルの一部が塑性変形してしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0098】
1…回路遮断器、2…ケース、3…回路、4…吸引体、5…可動体、6…バイメタル、7…接触用付勢部材、8…操作機構、20…正面、21…背面、22…側面、30…入力端子、31…接点部、40…吸引側対向面、41…側壁部、42…連設壁部、50…可動側対向面、51…可動体本体部、52…取付部、53…押操作部、54…掛止保持部、61…可動端部、80…操作部、81…切替構造、220…回動軸、220a…ガイド面、220b…逃面、220ba…湾曲面、220bb…傾斜面、221…受部、310…固定側端子、311…可動側端子、400…吸引側接触部、401…吸引側接離部、410…貫通孔、500…可動側接触部、501…可動側接離部、712a…押込部、800…ベース部、801…レバー部、810…切替部材、811…開放用付勢部材、812…作動構造、812a…リンク部材、812aa…操作部側軸部、812ab…押込部側軸部、812b…押込部材、812ba…ベース部、812bb…差込片部、812bc…押込片部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13