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特許7261507電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20230413BHJP
   G06N 99/00 20190101ALI20230413BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06N99/00 180
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021522043
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 CN2021080499
(87)【国際公開番号】W WO2022048127
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】202010922508.2
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521165622
【氏名又は名称】ノース チャイナ エレクトリック パワー ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】North China Electric Power University
【住所又は居所原語表記】No.2, Beinong Road, Huilongguan, Changping District, Beijing, 102206, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ファン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジン シュンピン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョン シンモン
(72)【発明者】
【氏名】リィゥ ジーヂェン
(72)【発明者】
【氏名】フー ヤン
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/086886(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109919658(CN,A)
【文献】特開平06-066110(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108347062(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111080014(CN,A)
【文献】三宅 賢稔,分散型電源と電力システムとの競争と協調―熱併給発電を対象にした分析―,電気学会論文誌B,2005年05月01日,Vol.125 No. 2,pp.147-156
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06N 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユニットを含む電気ヒートポンプ-熱電併給システムの構成要素のフレームを構築し、そして各ユニットが選択可能な全ての行為を表現した各ユニットの出力モデルを構築するステップS1と、
電気ヒートポンプ-熱電併給システムの中の各ユニットの利得を表現した利得関数モデルを構築するステップS2と、
各ユニットの出力モデル及び利得関数モデルを含み且つ各ユニットをゲームの主体として構成された、電気ヒートポンプ-熱電併給システムの非協力ゲームモデルを構築するステップS3と、
粒子群アルゴリズムを用いて非協力ゲームモデルに対して求解を行い、各ユニットの熱電配分最適化計画を獲得するステップS4とを含む電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項2】
粒子群アルゴリズムを用いて非協力ゲームモデルに対して求解を行う過程が、
相関パラメータを入力するステップS41と、
粒子群の初期値を初期化するステップS42と、
対応する利得関数を計算するステップS43と、
利得に応じて粒子群を更新するステップS44と、
適応度関数を計算するステップS45と、
解かれた結果がナッシュ均衡解であるか否かを判断し、ナッシュ均衡解であれば、求解を完了し、ナッシュ均衡解でなければ、S44に戻るステップS46とを含む請求項1に記載の電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項3】
ステップS3における非協力ゲームモデルの構築は、電熱需給バランス、ユニット運転条件を制約とし、電気ヒートポンプ-熱電併給システムにおける各ユニットの利得を最大化することを最適化目標とすることを特徴とする請求項1に記載の電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項4】
電気ヒートポンプ-熱電併給システムは、風力発電ユニット、太陽光発電ユニット、電力貯蔵システム、熱電ユニット、および電気ヒートポンプを含むことを特徴とする請求項1に記載の電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項5】
前記風力発電ユニットの出力モデルが以下の式で表され、
【数1】
ここで、vは時刻tにおけるリアルタイム風速、vは風力発電ユニットのカットイン風速、vは風力発電ユニットのカットアウト風速、vは風力発電ユニットの定格風速、PWZは風力発電ユニットの設備容量値であり、
前記風力発電ユニットの利得関数モデルは以下の式で表され、
【数2】
ここで、Iは風力発電ユニットの利得、IWsellは風力発電ユニットの売電収入、IWaは風力発電ユニットの補助金収入、IWmは風力発電ユニットのメンテナンスコストを示すことを特徴とする請求項4に記載の電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項6】
前記太陽光発電ユニットの出力モデルが以下の式で表され、
【数3】
ここで、αpvは太陽光発電ユニットのパワーディレーティング係数、Ppvzは太陽光発電の設備容量、Aは時刻tにおける太陽光発電ユニットの実際の放射照度、Aは標準条件下での放射照度、αはパワー温度係数、Tstpは標準条件下での温度、Tはリアルタイム温度であり、
前記太陽光発電ユニットの利得関数モデルは以下の式で表され、
【数4】
ここで、Ipvは太陽光発電ユニットの利得、Ipvsellは太陽光発電ユニットの売電収入、Ipvaは太陽光発電ユニットの補助金収入、Ipvmは太陽光発電ユニットのメンテナンスコストを示すことを特徴とする請求項4に記載の電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項7】
前記電力貯蔵システムの出力モデルが以下の式で表され、
【数5】
ここで、Ce,t+1は時刻t+1における蓄電池の残量、Ce,tは時刻tにおける蓄電池の残量、αは蓄電池の自己放電効率、β及びβはそれぞれ蓄電池の充放電効率、Pe,tは蓄電池の充放電パワー、Δtは充放電時間の長さであることを特徴とする請求項4に記載の電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項8】
前記熱電ユニットの出力モデルが以下の式で表され、
【数6】
ここで、Ppc,tは時刻tにおけるピュアコンデンシング作業状態電力、Pchp,tは時刻tにおける熱電ユニットの電力、Qchp,tは時刻tにおける熱電ユニットの熱パワー、αchpは電熱変換係数であり、
前記熱電ユニットの利得関数モデルは以下の式で表され、
【数7】
ここで、Ichpは熱電ユニットの利得、Issellは熱電ユニットの売電・売熱収入、Isfは熱電ユニットの燃料コスト、Ismは熱電ユニットのメンテナンスコスト、Isaは熱電ユニットが支払う必要がある風力発電や太陽光発電の廃棄のコストを示すことを特徴とする請求項4に記載の電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項9】
前記電気ヒートポンプの出力モデルが以下の式で表され、
【数8】
ここで、χは電気ヒートポンプの熱供給効率、Qは電気ヒートポンプによって変換された熱エネルギー、Wは電気ヒートポンプで消費された電気エネルギー、Qpuは電気ヒートポンプの暖房能力、Ppuは電気ヒートポンプの入力パワーであることを特徴とする請求項4に記載の電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法。
【請求項10】
電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整装置であって、前記装置は、請求項1-9のいずれか1項に記載された調整方法を実現するように構成され、
前記装置は、制御モジュールおよび通信モジュールを含み、前記通信モジュールは、前記電気ヒートポンプ-熱電併給システムの各ユニットにそれぞれ接続され、各ユニットのデータを収集し、各ユニットに調整命令を送信するために使用され、前記制御モジュールは各ユニットの出力モデル、利得関数モデル、制約条件及び非協力ゲームモデルを記憶し、非協力ゲームモデルに対して求解を行って最適な調整手順を得るために用いられる電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー運用技術の分野に関し、特に、電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー構造に深刻な変革が発生した国際環境の中で、世界のエネルギーモデルチェンジは深く推進され、風力発電、太陽光発電(Photovoltaic)などのクリーンエネルギーの開発利用も強力な発展を遂げ、持続可能な発展を実現する鍵となっている。エネルギー転換の世界的な傾向の下で、コージェネレーションユニットを備えた従来の火力発電所と風力発電、太陽光発電とを結合した熱電併給システムは一種の有効なエネルギー開発利用形式である。しかしながら、暖房期には、火力発電所のコージェネレーションユニットの出力が大きく、コージェネレーションの「熱で発電量を決定する(power determined by heat)」運転方式は、コージェネレーションユニットの調節能力を大幅に低下させ、電力系統の柔軟性を制限し、それによって風力発電や太陽光発電の廃棄が比較的深刻になる。
【0003】
現在、主に熱電併給システムに蓄熱タンク、電気熱変換装置(例えば電気ヒートポンプ)を増設し、システム構造と性能とを最適化するなどの方法によって、熱で発電量を決定することの制約を切り離し、この基礎の上で、熱電配分(scheduling)の最適化によって、より風力発電や太陽光発電の消費を促進することができる。発電ユニットと熱供給のユニットの相互協調運転を実現し、熱電2種類のエネルギーを合理的に配分し、コージェネレーションユニットと風力発電ユニットと太陽光発電との出力を最適化することは、システム内の多元化エネルギー使用需要を満たし、エネルギー利用効率を高め、従来の火力発電所の運転モデルの転換を実現し、エネルギー使用時の環境汚染を減らす上で重要な意義がある。
【0004】
現在の熱電併給システムの配分最適化方法では、システム内の個々のユニットを全体として一つに集約し、システム全体の経済効果の最適化と、システム全体の運転コストの最小化などを目標として、熱電併給配分モデルを構築している。しかし、これらの方法は各ユニットが異なる主体に属する可能性を考慮しておらず、異なる主体の意思決定行為が相互に影響し合う、すなわちシステム全体の最適と各主体が追求する自身の収益の最適とが衝突する可能性があり、したがって,これらの方法の配分最適化計画は各主体にとって最適解ではない可能性があり、これにより、各主体が当該最適化計画から離れ、より高いリターンを得るために別の計画を求めることになる。
【0005】
ゲーム理論は高度な最適化方法として、主に相互に影響を与える複数の独立した主体間の複雑な行為を研究し、多主体多目的の最適化問題を解くのに適している。
【0006】
したがって、上記の1つまたは複数の問題を解決または軽減するために、従来技術の欠点に対応する電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整(regulate and control)方法およびシステムを研究する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
そこで、本発明は、各ユニットを異なる主体と見なし、各主体自身の利益を最大化することを目標として調整することができ、熱電ユーザの負荷需要を満たすだけでなく、各ユニット主体がその収益に最大限満足できるようにすることができる電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法及びシステムを提供するものである。
【0008】
一方では、本発明は、電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法を提供するものであり、この方法は、次のステップを含むことを特徴とする。
【0009】
S1:電気ヒートポンプ-熱電併給システムの構成要素(成分)のフレーム(framework of composition)を構築し、そして各ユニットの出力モデルを構築する。
【0010】
S2:電気ヒートポンプ-熱電併給システムの中の各ユニットの利得関数モデルを構築する。
【0011】
S3:電気ヒートポンプ-熱電併給システムの非協力ゲームモデルを構築する。
【0012】
S4:粒子群アルゴリズムを用いて非協力ゲームモデルに対して求解を行い、各ユニットの熱電配分最適化計画を獲得する。
【0013】
上述した側面および任意の可能な実施方式は、さらに、粒子群アルゴリズムを用いて非協力ゲームモデルに対して求解を行うプロセスが以下を含む実現方式を提供する。
【0014】
S41:相関パラメータを入力する。
【0015】
S42:粒子群(particle swarm)の初期値を初期化する。
【0016】
S43:対応する利得関数を計算する。
【0017】
S44:利得に応じて粒子群を更新する。
【0018】
S45:適応度関数を計算する。
【0019】
S46:解かれた結果がナッシュ均衡解であるか否かを判断する。ナッシュ均衡解であれば、求解を完了し、ナッシュ均衡解でなければ、S44に戻る。
【0020】
上述したような側面および任意の可能な実現方式は、さらに実現方式を提供し、ステップS3における非協力ゲームモデルの構築は、電熱需給バランス、ユニット運転条件を制約とし、電気ヒートポンプ-熱電併給システムにおける各主体の利得を最大化することを最適化目標とする。
【0021】
上述したような側面および任意の可能な実現方式は、さらに、風力発電ユニット、太陽光発電ユニット、電力貯蔵システム、熱電ユニット(コージェネレーションユニット)、および電気ヒートポンプを含む電気ヒートポンプ-熱電併給システムの実現方式を提供する。
【0022】
上述したような側面および任意の可能な実現方式は、さらに実現方式を提供し、風力発電ユニットの出力モデルは次の通りである。
【数1】
【0023】
ここで、vは時刻tにおけるリアルタイム風速、vは風力発電ユニットのカットイン風速(Cut-in Speed)、vは風力発電ユニットのカットアウト風速(Cut-out Speed)、vは風力発電ユニットの定格風速、PWZは風力発電ユニットの設備容量値である。
【0024】
風力発電ユニットの利得関数モデルは次の通りである。
【数2】
【0025】
ここで、Iは風力発電ユニットの利得、IWsellは風力発電ユニットの売電収入、IWaは風力発電ユニットの補助金収入、IWmは風力発電ユニットのメンテナンスコストを示す。
【0026】
上述したような側面および任意の可能な実現方式は、さらに実現方式を提供し、太陽光発電ユニットの出力モデルは次の通りである。
【数3】
【0027】
ここで、αpvは太陽光発電ユニットのパワーディレーティング係数(power derating coefficient)、Ppvzは太陽光発電の設備容量、Aは時刻tにおける太陽光発電ユニットの実際の放射照度、Aは標準条件下での放射照度、αはパワー温度係数、Tstpは標準条件下での温度、Tはリアルタイム温度である。
【0028】
太陽光発電ユニットの利得関数モデルは次の通りである。
【数4】
【0029】
ここで、Ipvは太陽光発電ユニットの利得、Ipvsellは太陽光発電ユニットの売電収入、Ipvaは太陽光発電ユニットの補助金収入、Ipvmは太陽光発電ユニットのメンテナンスコストを示す。
【0030】
上述したような側面および任意の可能な実現方式は、さらに実現方式を提供し、電力貯蔵システムの出力モデルは次の通りである。
【数5】
【0031】
ここで、Ce,t+1は時刻t+1における蓄電池の残量、Ce,tは時刻tにおける蓄電池の残量、αは蓄電池の自己放電効率、β及びβはそれぞれ蓄電池の充放電効率、Pe,tは蓄電池の充放電パワー、Δtは充放電時間の長さである。
【0032】
上述したような側面および任意の可能な実現方式は、さらに実現方式を提供し、熱電ユニットの出力モデルは次の通りである。
【数6】
【0033】
ここで、Ppc,tは時刻tにおけるピュアコンデンシング作業状態電力(pure condensing working condition electric power)、Pchp,tは時刻tにおける熱電ユニットの電力、Qchp,tは時刻tにおける熱電ユニットの熱パワー、αchpは電熱変換係数である。
【0034】
熱電ユニットの利得関数モデルは次の通りである。
【数7】
【0035】
ここで、Ichpは熱電ユニットの利得、Issellは熱電ユニットの売電・売熱収入、Isfは熱電ユニットの燃料コスト、Ismは熱電ユニットのメンテナンスコスト、Isaは熱電ユニットが支払う必要がある風力発電や太陽光発電の廃棄のコストを示す。
【0036】
上述したような側面および任意の可能な実現方式は、さらに実現方式を提供し、電気ヒートポンプの出力モデルは次の通りである。
【数8】
【0037】
ここで、χは電気ヒートポンプの熱供給効率、Qは電気ヒートポンプによって変換された熱エネルギー、Wは電気ヒートポンプで消費された電気エネルギー、Qpuは電気ヒートポンプの暖房能力、Ppuは電気ヒートポンプの入力パワーである。
【0038】
一方、本発明は、電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整装置を提供し、前記装置は、上記のいずれかに記載された調整方法を実現するように構成されることを特徴とする。
【0039】
前記装置は、制御モジュールおよび通信モジュールを含む。前記通信モジュールは、電気ヒートポンプ-熱電併給システムの各ユニットにそれぞれ接続され、各ユニットのデータを収集し、各ユニットに調整命令を送信するために使用される。前記制御モジュールは各ユニットの出力モデル、利得関数モデル、制約条件及び非協力ゲームモデルを記憶し、非協力ゲームモデルに対して求解を行って最適な調整手順を得るために用いられる。
【0040】
従来技術と比較して、本発明は以下の技術的効果を得ることができる。
【0041】
本発明は、電気ヒートポンプ-熱電併給システムにおける全てのユニットを全体として最適化するのではなく、個々のユニットをそれぞれの利得の最大化を目的とする異なる主体と見なし、そのため、ゲーム理論の思想でこの多主体意思決定の最適化問題を見て、そして各主体間の相互作用を考慮して、熱電配分の非協力ゲームモデルを構築し、これは電気ヒートポンプ-熱電併給システムの主体の多様性に対応するのに有利である。
【0042】
本発明は、各主体が設定された条件の下で最適解を探索する過程をシミュレートする粒子群アルゴリズムと、他の主体が意思決定を変更することに対する各主体の応答をシミュレートする反復アルゴリズムとを合わせて非協力ゲームモデルに対して求解を行う。得られたナッシュ均衡解を解くことにより、各ユニットの配分出力の最適計画を確定することができ、この出力計画は熱電ユーザの負荷需要を満たすだけでなく、各主体を満足させることができる。
【0043】
もちろん、本発明のいずれかの製品を実現するには、必ずしも上記の技術的効果のすべてを同時に達成する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明の技術的解決手段をよりわかりやすく説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面について簡単に説明する。明らかに、下記の図面は、本発明の一部の実施例を示すものにすぎず、当業者が創造的な業務を行わない前提の下でこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0045】
図1図1は、本発明の一実施例による提供される電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法のフローチャートである。
図2図2は、本発明の一実施例による提供される電気ヒートポンプ-熱電併給システムの構成ブロック図である。
図3図3は、本発明の一実施例による提供されるコージェネレーションユニットの特性曲線図である。
図4図4は、本発明の一実施例による提供される電気ヒートポンプのエネルギー変換関係図である。
図5図5は、本発明の一実施例による提供される粒子群アルゴリズムが非協力ゲームモデルに対して求解を行うフローチャートである。
図6図6は、本発明の一実施例による提供される典型的な日の風速曲線である。
図7図7は、本発明の一実施例による提供される典型的な日の放射照度曲線である。
図8図8は、本発明の一実施例による提供される典型的な日の風力発電ユニットの発電パワー曲線である。
図9図9は、本発明の一実施例による提供される典型的な日の太陽光発電パワー曲線である。
図10図10は、本発明の一実施例による提供される典型的な日の電気負荷需要曲線である。
図11図11は、本発明の一実施例による提供される典型的な日の熱負荷需要曲線である。
図12図12は、本発明の一実施例による提供される風力発電ユニットの意思決定曲線である。
図13図13は、本発明の一実施例による提供される太陽光発電の意思決定曲線である。
図14図14は、本発明の一実施例による提供されるコージェネレーションユニットの電力供給の意思決定曲線である。
図15図15は、本発明の一実施例による提供されるコージェネレーションユニットの熱供給の意思決定曲線である。
図16図16は、本発明の一実施例による提供される電気ヒートポンプの熱供給曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の技術的解決手段をよりよく理解するために、本発明の実施例を添付図面を合わせて以下に詳細に説明する。
【0047】
明らかに、記載された実施例は、本発明の実施例の一部であり、そのすべてではない。本発明に係る実施例に基づいて当業者が創造的な業務を行わない前提の下で得たすべての実施例は、本発明の保護範囲内に属する。
【0048】
本発明の実施例において使用される用語は、特定の実施例を説明する目的のみであり、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の実施例および添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「1種」、「前記」、および「当該」もまた、文脈が他の意味を明示的に示す場合を除き、複数形を含むことが意図される。
【0049】
電気ヒートポンプ-熱電併給システムの各ユニットが異なる主体に属し、異なる主体の意思決定行為が相互に影響し合う、すなわちシステム全体の最適と各主体が追求する自身の利得の最適とが衝突する可能性があり、したがって、電気ヒートポンプ-熱電併給システムの熱電配分問題は複数主体が参加する意思決定最適化問題である。電気ヒートポンプ-熱電併給システムにおける各ユニットの運転出力特性及び利得関数に基づいて、各ユニットの配分意思決定をどのように最適化し、それに応じる出力計画を獲得することは、本発明が解決しようとする技術的課題である。
【0050】
この問題を解決するために、本発明は、コージェネレーションユニット、風力発電ユニット、太陽光発電等の複数の主体を対象とする電気ヒートポンプ-熱電併給システムについて、構築したユニット出力モデル及びその利得関数モデルに基づいて、ゲーム理論の思想により、各主体の行為及び対応する利得を十分に考慮するとともに、各行為間の相互影響を考慮し、電熱需給バランス、ユニット運転条件を制約とし、電気ヒートポンプ-熱電併給システムにおける各主体の利得を最大化することを最適化目標とし、熱電配分の非協力ゲームモデルを構築し、粒子群アルゴリズムと反復アルゴリズムとを合わせてゲームの均衡策略に対して求解を行い、最後に得られたナッシュ均衡戦略を最適化後の各ユニットの出力計画とし、それによって熱電配分の意思決定に指針を与える。
【0051】
図1に示すように、電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法は、以下のステップを含む。
【0052】
ステップ1 電気ヒートポンプ-熱電併給システムの構成要素のフレームを構築し、そして各ユニットの熱/電気出力をモデリングする。
【0053】
1-1)図2に示すように、電気ヒートポンプ-熱電併給システムは、電力供給部と熱供給部との2つの部分から構成されている。このうち、電力供給部分は風力発電ユニット、太陽光発電ユニット、電力貯蔵システム、電力ユーザからなり、熱供給部分は熱電ユニット、電気ヒートポンプ、および熱ユーザからなる。
【0054】
1-2)風力発電ユニット出力モデル
【0055】
電気ヒートポンプ-熱電併給システムでは、風力発電ユニットの出力は設備規模と実際の状況とによって制約される。設備容量を決定する場合、各時刻の風力発電出力の最大値は天気、環境などの実際状況によって決定され、風力発電ユニット出力と風速とは次の非線形関係を満たす。
【数9】
【0056】
式において、vは時刻tにおけるリアルタイム風速、vは風力発電ユニットのカットイン風速、vは風力発電ユニットのカットアウト風速、vは風力発電ユニットの定格風速、PWZは風力発電ユニットの設備容量値である。リアルタイム風速がカットイン風速よりも小さい場合又はカットアウト風速よりも大きい場合には風力発電ユニットが停止状態にあり、リアルタイム風速がカットイン風速よりも大きく且つ定格風速よりも小さい場合にはリアルタイムパワーと風速とが一次関数の式を満たし、リアルタイム風速が定格風速よりも大きく且つカットアウト風速よりも小さい場合にはリアルタイム出力値が設備容量値と等しくなる。
【0057】
1-3)太陽光発電出力モデル
【0058】
同様に、太陽光発電の出力も設備規模と実際の状況とによって制約される。設備容量が決定された場合、太陽光発電の出力は光強度、温度に関係し、太陽光発電の出力は次の式で示すことができる。
【数10】
【0059】
式において、αpvはユニットのパワーディレーティング係数(power derating coefficient)、Ppvzは太陽光発電の設備容量、Aは時刻tにおける太陽光発電ユニットの実際の放射照度、Aは標準条件下での放射照度、αはパワー温度係数、Tstpは標準条件下での温度である。αの値は比較的非常に小さく、温度変動が太陽光発電の出力に与える影響はほぼ0であるため、太陽光発電ユニットの出力は実際の放射照度Aにほぼ正比例する。すなわち、以下の通りである。
【数11】
【0060】
1-4)電力貯蔵システム出力モデル
【0061】
電池のSOCは、電池残量と電池満充電量との比である。
【数12】
【0062】
式において、Ce,tは時刻tにおける蓄電池の残量であり、Cfullは蓄電池の容量である。
【0063】
e,tを蓄電池の充放電パワーと定義し、Pe,t≦0のとき蓄電池が充電中であり、Pe,t>0のとき蓄電池が放電中であるとすると、蓄電池のエネルギー貯蔵状態は次のように示すことができる。
【数13】
【0064】
式において、αは蓄電池の自己放電効率、β及びβはそれぞれ蓄電池の充放電効率である。
【0065】
1-5)コージェネレーションユニット出力モデル
【0066】
本発明で選択された抽気復水式ユニット(extraction-condensing unit)において、蒸気タービン全体は次の3つの部分から構成されている。すなわち、低圧シリンダー、中圧シリンダー、高圧シリンダーである。ボイラーで発生した高温高圧蒸気は蒸気タービンに入って仕事をし、熱供給抽気は中圧シリンダーの排気からのものであり、中圧シリンダーの残りの蒸気は低圧シリンダーに投入されて仕事をした後、復水器に入って復水し、再びボイラーに戻って繰り返し運用を実現する。この動作原理に基づいて、(Pchp+αchpchp)をコージェネレーションユニットのパワーと等価にすることができる。
【数14】
【0067】
式において、Ppc,tは時刻tにおけるピュアコンデンシング作業状態電力、Pchp,tは時刻tにおけるユニットの電力、Qchp,tは時刻tにおけるユニットの熱パワー、αchpは電熱変換係数であり、1Wの熱パワーをαchpWの電力に置き換えることができることを示す。電力Pchp,tと熱パワーQchp,tの値をとる範囲を図3に示し、コージェネレーションユニットのパワーの調整可能領域はABCDで構成される四角形領域であり、熱パワーが増加すると調整可能な電力範囲が急速に減少し、ユニットのピーク調整能力(regulating peak capacity)も劣ることは明らかである。
【0068】
1-6)電気ヒートポンプ出力モデル
【0069】
電気ヒートポンプは、火力発電所の熱供給戻り水から低温余熱を低品質熱エネルギーとして抽出し、高品質熱エネルギーに変換することができる。図4は電気ヒートポンプの基本エネルギーの変換を示す。理想的には、熱力学の第一法則に基づいて、次の関係式が得られる。
【数15】
【0070】
式において、Qは電気ヒートポンプによって変換された高品質熱エネルギー、Qは低温熱源から吸収された低品質熱エネルギー、Wは電気ヒートポンプで消費された電気エネルギーである。電気ヒートポンプの熱供給効率(エネルギー効率係数)χは次のように表現される。
【数16】
【0071】
上記式より、電気ヒートポンプの熱電変換関係をQpu=χ・Ppuと表すことができ、Qpuは電気ヒートポンプの暖房能力、Ppuは電気ヒートポンプの入力パワーである。
【0072】
ステップ2 電気ヒートポンプ-熱電併給システムの中の各ユニットの利得関数と制約条件とに対してモデルを構築する。
【0073】
2-1)風力発電ユニットの利得関数
【0074】
風力発電ユニットの利得Iは次のように表すことができる。
【数17】
【0075】
式において、Iwsellは風力発電ユニットの売電収入、Iwaは風力発電ユニットの補助金収入、Iwmは風力発電ユニットのメンテナンスコスト、Csell,tは時刻tにおけるリアルタイムの電気料金、Cwsuは風力発電ユニットの補助電気料金、Pws,tは時刻tにおける風力発電ユニットの売電パワー、Kwmは風力発電ユニットのメンテナンス係数、Pwc,tは時刻tにおける風力発電ユニットの電力供給可能パワーを示す。
【0076】
2-2)太陽光発電の利得関数
【0077】
ソーラーセルの利得関数Ipvは、風力発電ユニットと似ている。
【数18】
【0078】
式において、Ipvsellは太陽光発電の売電収入、Ipvaは太陽光発電の補助金収入、Ipvmは太陽光発電のメンテナンスコスト、Cpvsuは太陽光発電の補助電気料金、Ppvs,tは時刻tにおける太陽光発電の売電パワー、Kpvmは太陽光発電のメンテナンス係数、Ppvc,tは時刻tにおける太陽光発電の電力供給可能パワーを示す。
【0079】
2-3)コージェネレーションユニットと電気ヒートポンプとを1つの熱電システムと見なす、このシステムでは、コージェネレーションユニットは主要な構成部分であり、電力供給と熱供給とのコアであり、電気ヒートポンプは電熱変換の補助的な役割を果たし、熱ユーザの需要とコージェネレーションユニットの熱供給量とのミスマッチをある程度解決することができ、それによってシステム全体の調整能力を高めることができる。このシステムの利得Ichpは、次のように示すことができる。
【数19】
【0080】
式において、Issellは熱電システムの売電売熱収入、Isfは熱電システムの燃料コスト、Ismは熱電システムのメンテナンスコスト、Isaは熱電システムが支払う必要がある風力発電や太陽光発電の廃棄のコスト、CsellーQ,tは時刻tにおける熱エネルギーの単価、Pchps,tは時刻tにおけるコージェネレーションユニットの売電量、Qload,tは電気ヒートポンプ-熱電併給システムにおける期間tにおける熱負荷需要であり、C及びCは、それぞれコージェネレーションユニットの発電平均コスト及び発熱平均コストであり、Cは単位石炭コストであり、式における0.123及び0.1288は標準炭の電気当量及び熱当量であり、単位はkg/kWhであり、η及びηはそれぞれコージェネレーションユニットの発電効率及び発熱効率であり、Ksm1及びKsm2はそれぞれ熱電システムの電気出力及び熱出力のメンテナンス係数であり、μは風力発電の廃棄のペナルティ因子であり、μpvは太陽光発電の廃棄のペナルティ因子である。ここで、コージェネレーションユニットの発電量Pchp,tのうちの一部Pchps,tは電気ユーザの負荷需要を満たすために使用され、他の一部Ppu,tは電気ヒートポンプの入力パワーとして使用される、すなわち、式(22)である。
【数20】
【0081】
2-4)制約条件
【0082】
2-4-1)電力供給バランス制約
【0083】
パワーはネットワーク全体の電力伝送中に平衡を維持しなければならず、この平衡特性はネットワークの周波数安定性と電圧安定性とに決定的な影響を与える。発電パワーが必要な負荷よりも大きい場合、グリッド周波数はそれに伴って増加し、逆の場合は減少し、電力システムの安定性はネットワーク周波数の安定性に依存すべきである。
【数21】
【0084】
式において、Pload,tは時刻tにおける電気ヒートポンプ-熱電併給システム内の電気負荷需要、Pe,tは電気エネルギー貯蔵の充放電パワーである。
【0085】
2-4-2)熱供給バランス制約
【0086】
熱供給システムでは、消費者と熱源との需給バランスが保たれなければならない。熱供給温度は熱ユーザの需要量の減少に伴って上昇し、その逆も成り立つことになるため、熱供給の質は熱供給温度にある程度依存する。したがって、配分の結果が熱供給需要と一致することを確保する必要がある。本発明は、伝送による熱損失を考慮せず、熱供給バランス制約は次の通りである。
【数22】
【0087】
式において、Qchp,tは期間tにおけるコージェネレーションユニットの熱供給パワー、Qpu,tは期間tにおける電気ヒートポンプの暖房パワーである。
【0088】
2-4-3)ユニット出力制約
【0089】
電気ヒートポンプ-熱電併給システムの最適化配分において、風力発電ユニットの各時刻における実際の電力供給パワーPws,tは、その電力供給可能パワーPwc,t以下である必要があり、太陽光発電ユニットの各時刻における実際の電力供給パワーPpvs,tは、その電力供給可能パワーPpvc,t以下である必要がある。電力貯蔵設備が稼働時に受ける制約には容量制約と充放電出力制約とが含まれ、電気ヒートポンプは運転中に一部の熱負荷を提供し、制約範囲内で出力しなければならない。
【数23】
【0090】
式において、
【数24】
は蓄電設備の充放電パワーの最大値、Pchp,max及びPchp,minはそれぞれコージェネレーションユニットの電力供給パワーの上限と下限、Qchp,max及びQchp,minはそれぞれコージェネレーションユニットの熱供給パワーの上限と下限、Ppu,max及びPpu,minは電気ヒートポンプの入力パワーの上限と下限である。このうち、コージェネレーションユニットの電力Pchp,tと熱パワーQchp,tは、図3に示す四角形ABCDにも含まれているはずである。
【0091】
ステップ3 電気ヒートポンプ-熱電併給システムの非協力ゲームモデルを構築する。すなわち、電気ヒートポンプ-熱電併給システムの運転モードに基づいて、各ユニットの主体に対してそれに対応した非協力ゲームモデルを構築する。
【0092】
3-1)ゲーム理論と電気ヒートポンプ-熱電併給システム
【0093】
ゲーム理論は、矛盾と対立との間でどのように最適な判断(意思決定)を行うかを研究する数学研究理論である。ゲーム理論の本質は、他人の利得を賢明に利用して、自分のために最適な選択肢を選択すべきという、系統的な思考上に基づく合理的な思考にある。合理的な選択とは、ゲーム参加者の知識で目的関数を極大化する選択である。すなわち、意思決定に参加する人はすべて理性を持って、最適な戦略を採用し、最小の代価で自分のために最大の利得を得ようとする。
【0094】
ゲーム理論の基本的な要素は次の通りである。プレイヤーとは、ゲーム行為の参加者と意思決定の主要な部分、つまりゲームの中で意思決定を行う者であり、少なくとも2人いる。戦略集合とは、各ゲーム当事者がゲーム中に選択可能なすべての手順の集合である。利得とは、各ゲーム当事者の決定された効用または期待される効用であり、利得の値は、参加者個人の主体的な戦略に加えて、自身以外の参加者の戦略にも依存する。
【0095】
ナッシュ均衡はゲーム理論の体系における重要な概念であり、すべてのプレイヤーの最適な戦略集合である戦略の組み合わせを表す。理性的なプレイヤーがナッシュ均衡を戦略として採用した場合、どのプレイヤーも独自に戦略を変更することはない。そうしないと、彼の利得は低下する。いずれかのプレイヤーiにとって、U、s、Sをそれぞれその利得、戦略、戦略集合とし、
【数25】
をゲームの1つのナッシュ均衡とすると、任意のsi∈Siに対して、次の式が成り立つ。
【数26】
【0096】
電気ヒートポンプ-熱電併給システムにおける各ユニット主体を1つのプレイヤーと見なすと、各ユニットの出力は対応するプレイヤーの戦略であり、実際の運転モードでは、各ユニットは通常異なる運営者に属する。すなわち当該ゲームは非協力ゲームである。この非協力ゲームの下で,各プレイヤーの間に制約力のある協議がないため、それぞれが自分の利得を最大化する戦略を求めて実行する。
【0097】
3-2)電気ヒートポンプ-熱電併給システムの非協力ゲームモデル
【0098】
電気ヒートポンプ-熱電併給システムの非協力ゲームモデルは下記の通りである。
【0099】
(1)参加者:風力発電ユニット、太陽光発電ユニット、および熱電システム(コージェネレーションユニットと電気ヒートポンプとを含む)
【0100】
(2)戦略集合:風力発電ユニットの電力供給可能パワーPwc,t、太陽光発電の電力供給可能パワーPpvc,t、コージェネレーションユニットの電力供給パワーPchp,t、及び、熱供給パワーQchp,t
【0101】
(3)利得関数:各ユニットの利得I,k∈{w,pv,chp}
【0102】
各ユニットが非協力的なゲーム方式を採用している場合、各ユニットの電力供給パワーの間に相互攪乱が存在し、ゲームの参加者は他の参加者の意思決定に応じて自身の意思決定行動を変更する。各参加者は、他の参加者の意思決定に基づいて、自分の利得を最大にする意思決定を選択する。すなわち、以下のとおりである。
【数27】
【0103】
式において,
【数28】
はPwcを変量とし、Iが最大値をとるときのPwcを示す。
【数29】
も同様である。
【0104】
式(33-35)の解を求めることで、この非協力ゲームモデルのナッシュ均衡解
【数30】
が得られ、このとき各ユニットの利得は
【数31】
として表すことができる。
【0105】
ステップ4 粒子群アルゴリズムと反復アルゴリズムとを合わせて、構築した非協力ゲームモデルに対して求解を行い、各ユニットの熱電配分最適化計画を獲得する。
【0106】
粒子群アルゴリズムは、鳥獣の採餌行動を模倣するために使用されるアルゴリズムであり、鳥獣の飛翔行動経験と組み合わせて最適な解決策を探索するアルゴリズムである。このアルゴリズムは2つの主要なパラメータすなわち飛行方向と速度とを変えることによって、空間探索経路を求めることを実現する。このアルゴリズムの原理は簡単で、実現は容易であるため、システムの配分最適化に広く用いられている。
【0107】
非協力ゲームモデルの求解過程では、各ユニットの戦略の組み合わせを粒子と見なし、1つの粒子には速度と位置との2つの属性が含まれる。粒子群更新アルゴリズムの式は次の通りである。
【数32】
【0108】
ここで、ωは慣性係数を示す。tは反復回数を示す。v i,zは、i番目の粒子のt番目の反復の第z次元速度を示す。c、cは加速定数を示す。r,rは(0,1)にある乱数を示す。pi,zはi番目の粒子の第z次元の個体最適値を示す。pq,zは粒子全体の第z次元の全局最適値を示す。x i,zは、i番目の粒子のt番目の反復の第z次元の位置を示す。粒子群最適化アルゴリズムの初期値はランダムな粒子群であり、個々の粒子の推定によって決定することができる。反復の過程において、粒子は全局および個体の最適値を追跡し、自身の速度と位置とを更新する。適応度関数を用いて粒子の位置の優劣を評価し、新たな位置と合わせて過去の最適位置を更新し、最終的に反復終了条件を満たして最適解を得る。非協力ゲームモデルを解く過程を図5に示す。
【0109】
非協力ゲームモデルの場合、粒子群アルゴリズムを用いて反復的に求解する具体的なステップは、以下の通りである。
【0110】
(1)設備運転パラメータ及び制限パラメータを初期化し、パラメータの上限と下限の制約を設定する。
【0111】
(2)均衡点初期値(Pwc,o,Ppvc,o,Pchp,o,Qchp,o)を設定する。
【0112】
(3)各ゲーム参加者は一定の順序で独立して最適化を行う。
【0113】
(4)第iラウンドの最適化結果を(Pwc,i,Ppvc,i,Pchp,i,Qchp,i)とし、第i+1ラウンドの反復最適化を経て得られる最適化結果を(Pwc,i+1,Ppvc,i+1,Pchp,i+1,Qchp,i+1)とすると、次の関係式を満たす。
【数33】
【0114】
式において、Pwc,i、Ppvc,i、Pchp,i、Qchp,iはそれぞれ第iラウンド最適化後の風力発電ユニット、太陽光発電、熱電システムの電力供給可能パワーと熱供給可能パワーを示す。
【0115】
(5)求められた解がナッシュ均衡解であるかどうかを判定する。参加者がゲームの全ラウンドにおいて自分の戦略を変更しなければ、全プロセスは終了する。
【数34】
【0116】
式において、P ws、P pvs、P chp、Q chpはそれぞれナッシュ均衡解に対応する風力発電ユニット、太陽光発電、熱電システムの電力供給可能パワーと熱供給可能パワーを示す。各ユニットは、電熱負荷需要および他のユニットの状況に応じて、自己の発電発熱量、すなわち電力供給可能・熱供給可能パワーを最適化すべき意思決定値として決定し、電力供給可能・熱供給可能パワーは実際の電熱取引の出来高である消費された量である。反復の過程において、意思決定が変化しない(等しいか、1%未満のようにわずかに変化する)場合、ナッシュ均衡が達成されたとみなされる。この問題のナッシュ均衡は必然的に存在するので,必ず均衡に達する。
【0117】
(6)ナッシュ均衡解に基づいて各ユニットの出力を決定した後、電気ヒートポンプ-熱電併給システムの最適化配分計画を得ることができる。
<実施例1>
【0118】
本特許に記載された電気ヒートポンプ-熱電併給システム(図2参照)を例にして、風力発電ユニット、太陽光発電、電力貯蔵システム、コージェネレーションユニット及び電気ヒートポンプ等の設備が配置され、そのうち、風力発電ユニットの設備容量は3000kWであり、太陽光発電の設備容量は2000kWであり、電力貯蔵システムの設備容量は1000kWであり、コージェネレーションユニットの設備容量は400kWである。1日Tは24時間、各意思決定期間は1時間であり、ある典型的な日の風速と放射照度とのデータ(図6、7参照)を選択して分析し、風力発電ユニットと太陽光発電との出力表現式を合わせて、典型的な日の風力発電ユニットの発電パワーと太陽光発電パワーとの曲線(図8、9参照)を得て、選択した典型的な日における電気負荷と熱負荷との予測曲線を図10と11に示す。
【0119】
本発明では粒子群アルゴリズムを用いて循環反復計算を行い、加速定数c1、c2を1.3とし,許容誤差Δを0.05%に設定し、粒子群規模Nを100とし,最大反復回数を100とする。システム中の各ユニットは、自身の利得関数を最大にすることを目標に非協力ゲームを行う。計算例に該当する作業設備に関するデータと電気料金とを表1と表2とに示す。実際を考慮すると、電力供給可能パワーを選択する際の意思決定空間は離散的であり、各ユニットの電力供給の意思決定は整数kWでなければならない。
【0120】
【表1】
【0121】
【表2】
【0122】
この計算例シミュレーションにおける具体的なデータに基づいて、上記モデルを用いて、この電気ヒートポンプ-熱電併給システムの電力供給の意思決定問題をモデリングし、MATLABにおいて計算する。この非協力ゲームモデルの下で、ある典型的な日に各ユニット主体の電力供給の意思決定と熱供給の意思決定とを求めた結果を図12~16に示す。
【0123】
この非協力ゲーム均衡解の下で、各ユニットの利得結果は次の通りである。風力発電ユニットの典型的な日の総利得は18830.563元である。太陽光発電の典型的な日の総利得は6159.171元である。コージェネレーションユニットの典型的な日の総利得は9639.859元である。
【0124】
図14と15から分かるように、システム中のコージェネレーションユニットは「熱で発電量を決定する」のモードで運転し、まず熱負荷を満たし、これはその電力ピーク調整能力を制限するため、電力供給の意思決定は比較的安定しており、コージェネレーションユニットは風力発電ユニット、太陽光発電ユニットと協同して相補的に運転している。風力発電ユニットと太陽光発電ユニットは、より多くの利得を得るために、できるだけ多くの供給可能な電気量を供給するが、この値が大きすぎると、ユニットのメンテナンスコストが増加し、風力発電や太陽光発電の廃棄の量が増加し、コージェネレーションユニットのペナルティコストもそれに応じて増加する。一方、コージェネレーションユニットは自分の利得を最大化するために、風力発電や太陽光発電の廃棄現象をできるだけ減らし、これは相互ゲームの局面を形成する。図16に示すように、コージェネレーションユニットの熱供給出力が不足している場合には、不足した熱エネルギーを電気ヒートポンプから供給するが、システムにおける電気ヒートポンプの熱供給はコージェネレーションユニットの供給電気量の増大に依存して行う必要がある。
【0125】
本発明の利点は下記の通りである。
【0126】
(1)本発明は、電気ヒートポンプ-熱電併給システムにおける全てのユニットを全体として最適化するのではなく、個々のユニットをそれぞれの利得の最大化を目的とする異なる主体と見なし、そのため、ゲーム理論の思想でこの多主体意思決定の最適化問題を見て、そして各主体間の相互作用を考慮して、熱電配分の非協力ゲームモデルを構築し、これは電気ヒートポンプ-熱電併給システムの主体の多様性に対応するのに有利である。
【0127】
(2)本発明は、各主体が設定された条件の下で最適解を探索する過程をシミュレートする粒子群アルゴリズムと、他の主体が意思決定を変更することに対する各主体の応答をシミュレートする反復アルゴリズムとを合わせて非協力ゲームモデルに対して求解を行う。得られたナッシュ均衡解を解くことにより、各ユニットの配分出力の最適計画を確定することができ、これにより、熱電配分決定の指針となり、この出力計画は熱電ユーザの負荷需要を満たすだけでなく、各主体を満足させることができる。
【0128】
以上、本出願の実施例による提供される電気ヒートポンプ-熱電併給システムを最適化する調整方法及びシステムについて詳細に説明した。上記の実施例の説明は、本明細書に記載された方法およびそのコア思想の理解を助けるためにのみ使用される、また、当業者にとっては、本願の思想に基づいて、具体的な実施形態及び適用範囲のいずれにおいても変更される点があり、以上のように、本明細書の内容は本願に対する制限と理解されるべきではない。
【0129】
例えば、明細書および特許請求の範囲において、特定のコンポーネントを指すためにある語彙が使用されている。当業者であれば、ハードウェア製造業者が同一のコンポーネントを異なる用語で呼ぶ場合があることを理解できるはずである。本明細書および特許請求の範囲は、名称の相違をコンポーネントを区別する方式としているのではなく、コンポーネントの機能上の相違を区別の基準としている。説明書及び特許請求の範囲全体で言及されている「含む」、「含まれる」は開放的な用語であるため、「含む/含まれるが、これらに限定されない」と解釈すべきである。「おおむね」とは、許容できる誤差範囲内で、当業者が一定の誤差範囲内で前記技術的課題を解決し、前記技術的効果を基本的に達成できることをいう。本明細書は、本出願を実施するためのより良い実施形態として後に記載されるが、前記の記載は、本明細書の一般的な原則を説明することを目的とし、本明細書の範囲を限定するために使用されるものではない。本出願の保護の範囲は,添付の特許請求の範囲に定義されているものに従うものとする。
【0130】
用語「含む」、「含まれる」、またはそれらの任意の他のバリエーションは、非排他的な「含む」をカバーすることを意図し、したがって、一連の要素を含む商品またはシステムは、それらの要素だけでなく、明示的にリストされていない他の要素も含む、またはその商品またはシステムに固有の要素も含む。これ以上の制限がない場合、文言「…を1つ含む」で限定された要素は、前記要素を含む商品又はシステムに別の同一要素が存在することを排除するものではない。
【0131】
本明細書で使用される用語「および/または」は、3つの関係が存在してもよいことを意味する関連オブジェクトを記述する関連関係にすぎないことが理解されるべきである。例えば、Aおよび/またはBは、以下のことを意味してもよい。Aが単独で存在する場合、AとBが同時に存在する場合、Bが単独で存在する場合の3つである。また,本稿では符号「/」は,一般に前後の関連対象が「または」の関係にあることを意味する。
【0132】
上記の説明は、本明細書のいくつかの好ましい実施例を明示し、説明している、しかしながら、前述したように、本出願は、本明細書に開示された形態に限定されるものではなく、他の実施例の除外とみなされるべきではなく、他の様々な組み合わせ、修正、および環境で使用することができ、本明細書に記載された出願の概念の範囲内で、上記の教示または関連する分野の技術または知識によって変更することができることが理解されるべきである。当業者による変更及び変化が本出願の精神及び範囲から逸脱しない場合は、すべて本出願に添付された特許請求の範囲の保護の範囲内にあるものとする。
図1
図2
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図10
図11
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