(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】流量制御装置、流量制御装置の制御方法、流量制御装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2022501963
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006096
(87)【国際公開番号】W WO2021166997
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2020028277
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】金井良友
(72)【発明者】
【氏名】野澤崇浩
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206387(JP,A)
【文献】特開2014-59609(JP,A)
【文献】特開平9-217898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御対象に供給される流体の流量を制御して前記被制御対象内を流量設定値に保つ流量制御装置であって、
前記流体の流量を計測する流量センサによる計測値を取得する計測値取得部と、
前記流体の流量設定値を取得する設定値取得部と、
前記流量設定値とは異なる流量調整値を決定する調整値決定部と、
前記計測値と前記流量調整値との差が小さくなるように、前記被制御対象に前記流体を供給するバルブの開度を調整し、前記流体の流量を制御する駆動制御部と、
を備え
、
前記流量調整値は、前記流量設定値の設定後に設定される初期調整値を含み、
前記初期調整値は、前記流量設定値と同等又は同等以上である、
流量制御装置。
【請求項2】
前記バルブの駆動電圧を取得するバルブ出力取得部をさらに備え、
前記調整値決定部は、前記バルブの駆動電圧が所定のバルブ目標値に達すると、前記流量調整値を変更する、
請求項
1記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記調整値決定部は、前記初期調整値の後に、前記流量設定値よりも大きい過渡調整値を前記流量調整値として保持する、
請求項
1又は2記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記計測値の一時的な目標となる値であって、前記流量設定値とは異なる流量目標値を決定する流量目標値決定部をさらに備え、
前記調整値決定部は、前記計測値が前記流量目標値になると、前記流量調整値を変更する、
請求項
1乃至
3のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記流量目標値決定部は、前記調整値決定部により前記流量調整値が変更されると、前記流量目標値を変更する、
請求項
4記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記流量目標値決定部は、前記流量設定値よりも大きい過渡調整値を前記流量調整値として設定しているときに前記計測値の一時的な目標となる流量目標値を決定し、
前記調整値決定部は、前記計測値が流量目標値に達すると、前記流量調整値を変更する、
請求項
4又は5記載の流量制御装置。
【請求項7】
被制御対象に供給される流体の流量を制御して前記被制御対象内を流量設定値に保つ流量制御装置の制御方法であって、
前記流体の流量を計測する流量センサによる計測値を取得するステップと、
前記流体の流量設定値を取得するステップと、
前記流量設定値とは異なる流量調整値を決定するステップと、
前記計測値と前記流量調整値との差が小さくなるように、前記被制御対象に前記流体を供給するバルブの開度を調整し、前記流体の流量を制御するステップと、
を含み、
前記流量調整値は、前記流量設定値の設定後に設定される初期調整値を含み、
前記初期調整値は、前記流量設定値と同等又は同等以上である、
流量制御装置の制御方法。
【請求項8】
被制御対象に供給される流体の流量を制御して前記被制御対象内を流量設定値に保つ流量制御装置の制御プログラムであって、
前記流体の流量を計測する流量センサによる計測値を取得する命令と、
前記流体の流量設定値を取得する命令と、
前記流量設定値とは異なる流量調整値を決定する命令と、
前記計測値と前記流量調整値との差が小さくなるように、前記被制御対象に前記流体を供給するバルブの開度を調整し、前記流体の流量を制御する命令と、
をコンピュータに実行させ
、
前記流量調整値は、前記流量設定値の設定後に設定される初期調整値を含み、
前記初期調整値は、前記流量設定値と同等又は同等以上である、
流量制御装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御装置、ならびにその制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
流量センサで測定した流量に基づいて制御弁を調整することで、下流へ流れ出る流体の流量を設定値に調整する流量制御装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、流量を目標流量と一致するように変化させるべく圧電素子に電圧を印加する流量制御装置において、流量調整弁が閉状態である場合に目標流量が変化したとき、変化後の目標流量に対応する目標電圧値に対してより大きな振幅を示す電圧変化に対応する信号を過渡的に出力し、その後目標電圧値に収束するように電圧を変化させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、流量を設定流量に高速に調整することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の観点に係る流量制御装置は、被制御対象に供給される流体の流量を制御して前記被制御対象内を流量設定値に保つ流量制御装置であって、前記流体の流量を計測する流量センサによる計測値を取得する計測値取得部と、前記流体の流量設定値を取得する設定値取得部と、前記流量設定値とは異なる流量調整値を決定する調整値決定部と、前記計測値と前記流量調整値との差が小さくなるように、前記被制御対象に前記流体を供給するバルブの開度を調整し、前記流体の流量を制御する駆動制御部と、を備える。
【0007】
前記流量調整値は、前記流量設定値の設定後に設定される初期調整値を含み、前記初期調整値は、前記流量設定値と同等又は同等以上であるものとしてもよい。
【0008】
前記バルブの駆動電圧を取得するバルブ出力取得部をさらに備え、前記調整値決定部は、前記バルブの駆動電圧が所定のバルブ目標値に達すると、前記流量調整値を変更するものとしてもよい。
【0009】
前記調整値決定部は、前記初期調整値の後に、前記流量設定値よりも大きい過渡調整値を前記流量調整値として保持するものとしてもよい。
【0010】
前記計測値の一時的な目標となる値であって、前記流量設定値とは異なる流量目標値を決定する流量目標値決定部をさらに備え、前記調整値決定部は、前記計測値が前記流量目標値になると、前記流量調整値を変更するものとしてもよい。
【0011】
前記流量目標値決定部は、前記調整値決定部により前記流量調整値が変更されると、前記流量目標値を変更するものとしてもよい。
【0012】
前記流量目標値決定部は、前記流量設定値よりも大きい過渡調整値を前記流量調整値として設定しているときに前記計測値の一時的な目標となる流量目標値を決定し、前記調整値決定部は、前記計測値が流量目標値に達すると、前記流量調整値を変更するものとしてもよい。
【0013】
本発明の別の観点に係る流量制御装置の制御方法は、被制御対象に供給される流体の流量を制御して前記被制御対象内を流量設定値に保つ流量制御装置の制御方法であって、前記流体の流量を計測する流量センサによる計測値を取得するステップと、前記流体の流量設定値を取得するステップと、前記流量設定値とは異なる流量調整値を決定するステップと、前記計測値と前記流量調整値との差が小さくなるように、前記被制御対象に前記流体を供給するバルブの開度を調整し、前記流体の流量を制御するステップと、を含む。
【0014】
本発明のさらに別の観点に係る流量制御装置の制御プログラムは、被制御対象に供給される流体の流量を制御して前記被制御対象内を流量設定値に保つ流量制御装置の制御プログラムであって、前記流体の流量を計測する流量センサによる計測値を取得する命令と、前記流体の流量設定値を取得する命令と、前記流量設定値とは異なる流量調整値を決定する命令と、前記計測値と前記流量調整値との差が小さくなるように、前記被制御対象に前記流体を供給するバルブの開度を調整し、前記流体の流量を制御する命令と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、流量を設定流量に高速に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる流量制御装置の実施の形態を示す全体概略図である。
【
図2】上記流量制御装置が有する制御回路の概略構成図および機能ブロック図である。
【
図3】上記流量制御装置における値の変化を示すグラフの1例であって、(a)流量設定値、流量センサの計測値、およびバルブの駆動電圧を示すグラフ、(b)上記流量センサの計測値と比較し、流量を制御するための流量調整値の推移を示すグラフである。
【
図4】バルブの駆動電圧に基づいて流量調整値を変更するフローチャートである。
【
図5】センサの計測値に基づいて流量調整値を変更するフローチャートである。
【
図6】上記流量調整値の推移の別の実施形態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる流量制御装置ならびにその制御方法および制御プログラムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
●流量制御装置の概要
流量制御装置1は、被制御対象内の流量が流量設定値に保持されるように制御する装置である。流量制御装置1は、流量設定値とは異なる流量調整値を設定し、当該流量調整値と計測値との差が小さくなるように、被制御対象に流体を供給するバルブを制御することで、被制御対象内の流量を迅速に流量設定値に到達させる。
【0019】
図1に示すように、流量制御装置1は、バルブボディ101、流量センサ102、制御回路103、およびバルブ105を備える。
【0020】
バルブボディ101は、ステンレス等の鋼材により構成され、外形が直方体形状の部材である。バルブボディ101は、被制御対象に供給される流体の供給路上にあり、バルブボディ101aの上流は上流流路101a、下流は下流流路101bとなっている。上流流路101aの上流側および下流流路101bの下流側は、制御対象の流体が流れる管にそれぞれ接続されている。
【0021】
上流流路101aは、上流側から流体が流入する流路である。上流流路101aは途中で、流量センサ102を通る流路とバイパス流路とに分岐した後に合流し、バルブ105へと流出する。バルブ105は、上流流路101aと下流流路101bとの間を連通する開度等が制御可能な弁体であり、例えばボイスコイルによって駆動される電磁弁である。下流流路101bは、上流側からバルブ105により流量制御された流体が流入し、流量制御装置1の下流側、すなわち被制御対象に流出するように構成されている。
【0022】
制御回路103は、流量設定値を取得し、流量センサ102の計測値および流量設定値に基づいてバルブ105を制御する装置であり、例えば電子基板により構成されている。制御回路103は、外部の流量設定装置100に有線又は無線により接続されていて、当該流量設定装置100から流量設定値を取得してもよい。制御回路103は、例えばフィードバック制御を行うことにより、下流流路101bから排出される流量が流量設定値となるように、バルブ105の開度を制御する。
【0023】
●流量制御装置内部の回路構成
図2に示すように、制御回路103は、主として、情報処理を実行するための演算装置10、駆動制御回路40、およびバルブ駆動回路50により構成される。
【0024】
演算装置10は、流量設定装置100からの流量設定値、および流量センサ102の計測値を取得し、バルブ105の駆動を制御するために駆動制御回路40が参照する信号を出力する装置であり、例えばCPU(Central Processing Unit)である。流量センサ102により計測された信号は、増幅およびフィルタリングするセンサ回路、およびデジタル化するA/D変換回路等を介して演算装置10に入力されてもよい。演算装置10からの出力信号は、D/A変換回路を介してアナログ化され、駆動制御回路40に入力されてもよい。
【0025】
駆動制御部の例である駆動制御回路40は、演算装置10が決定する流量調整値と計測値と信号を参照して、バルブを駆動する駆動信号を生成し、バルブ駆動回路50に出力する回路である。駆動制御回路40は、流量調整値と計測値とが入力される。駆動制御回路40は、比較回路41および処理回路42により構成される。比較回路41は、流量調整値と計測値とを比較する。処理回路42は、比較の結果に基づいて、流量調整値と計測値との差が小さくなるようにバルブ105を制御するための信号を生成する。駆動制御回路40は、流量調整値が計測値よりも大きく、流量調整値と計測値との差が大きいほど、バルブ105の開度を大きくする。
【0026】
バルブ駆動回路50は、駆動制御回路40からの信号に基づいてバルブ105を駆動し、バルブ105の開度を調整する。
【0027】
●演算装置の機能ブロック
演算装置10は、ソフトウェア資源として少なくとも、設定値取得部11、調整値決定部12、計測値取得部13、バルブ出力取得部14、流量目標値決定部15およびバルブ目標値決定部16を備える。
【0028】
設定値取得部11は、流体の流量設定値を取得する機能部である。流量設定値は、流量制御装置1が制御対象内において保持すべき最終的な流量である。
【0029】
計測値取得部13は、流体の流量センサ102による計測値を取得する機能部である。バルブ出力取得部14は、駆動制御回路40からバルブ105に出力される駆動電圧を取得する機能部である。
【0030】
調整値決定部12は、流量設定値とは異なる流量調整値を決定する機能部である。調整値決定部12は、流量調整値を流量設定値よりも大きくしてもよい。流量調整値は、流量設定値に基づいて決定されてもよい。
【0031】
流量目標値決定部15は、計測値の一時的な目標となる流量目標値を決定する機能部である。バルブ目標値決定部16は、バルブ105の駆動電圧の一時的な目標となるバルブ目標値を決定する機能部である。
【0032】
図3を用いて、流量制御装置1により流量が調整される様子を示す1例を説明する。
図3(a)に示すように、時間「0」において、流量設定値R0が設定される。すると、
図3(b)に示すように、調整値決定部12は、第1調整期間P1、第2調整期間P2、第3調整期間P3をこの順に遷移して、各調整期間P1乃至P3にそれぞれにおいて流量調整値を異なる態様に決定する。また、調整値決定部12は、調整期間P4において流量調整値を流量設定値と同等値に保持する。言い換えれば、調整値決定部12は、ある1つの流量設定値に対して複数の流量調整値を算出し、流量調整値を変更しながら、計測値を当該流量設定値へ至らせる。
【0033】
より具体的には、まず、調整値決定部12は、第1調整期間P1において流量調整値を徐々に増加させ、初期調整値R1で保持する。その後、調整値決定部12は、所定の時点から第2調整期間P2に移行し、流量調整値を流量設定値より大きい過渡調整値R2まで徐々に変化させる。調整値決定部12は、流量調整値を過渡調整値R2に所定時間保持する。その後、調整値決定部12は、第3調整期間P3に移行し、流量調整値を過渡調整値R2から徐々に低下させる。また、調整値決定部12は、所定の時点で第4調整期間P4に移行し、流量調整値を流量設定値と同等の最終調整値R3に保持する。
【0034】
各調整期間P1乃至P3は、あらかじめ各期間の長さが定めされていてもよいし、取得される値に基づいて次の期間への移行が決定されてもよい。例えば、バルブ目標値決定部16によりバルブ目標値が決定されていて、バルブ105の駆動電圧がバルブ目標値に到達するとき、次の期間に移行してもよい。また、流量目標値決定部15により計測値の一時的な目標となる流量目標値が決定されていて、流量センサ102による計測値が流量目標値に到達するとき、次の期間に移行してもよい。
【0035】
より具体的には、調整期間P1の開始後、あらかじめ定められた所定の時間経過後に調整期間P2に移行してもよい。また、調整期間P2の開始後、所定時間経過後に調整期間P3へ移行してもよい。調整期間P3の開始後、所定時間経過後に調整期間P4へ移行してもよい。また、各調整期間P1乃至P3におけるバルブ目標値があらかじめそれぞれ定められていて、バルブ105の駆動電圧が所定のバルブ目標値に到達すると次の調整期間P2乃至P4に移行してもよい。さらに、各調整期間P1乃至P3における流量目標値があらかじめそれぞれ定められていて、計測値が所定の流量目標値に到達すると次の調整期間P2乃至P4に移行してもよい。
【0036】
さらにまた、これらを組み合わせてもよい。すなわち、例えば、調整期間P1、P2においては所定時間経過後に調整期間P2、P3に移行し、調整期間P3においてバルブ105の駆動電圧がバルブ目標値に到達すると調整期間P4に移行してもよい。またこれに代えて、調整期間P3において計測値が流量目標値に到達すると調整期間P4に移行してもよい。
【0037】
調整期間P1の開始後、あらかじめ定められた所定の時間経過後に調整期間P2に移行し、調整期間P2、3においてバルブ105の駆動電圧がバルブ目標値に到達すると調整期間P3、P4に移行してもよい。またこれに代えて、調整期間P3において流量センサ102の計測値が流量目標値に到達すると調整期間P4に移行してもよい。
【0038】
調整期間P1においてバルブ105の駆動電圧が第1バルブ目標値に到達すると調整期間P2に移行し、調整期間P2においてバルブ105の駆動電圧が第2バルブ目標値に到達すると調整期間P3に移行し、調整期間P3において流量センサ102の計測値が流量目標値に到達すると調整期間P4に移行してもよい。
【0039】
調整期間P1においてバルブ105の駆動電圧がバルブ目標値に到達すると調整期間P2に移行し、調整期間P2において流量センサ102の計測値が第1流量目標値に到達すると調整期間P3に移行し、調整期間P3において流量センサの計測値が第2流量目標値に到達すると調整期間P4に移行してもよい。
【0040】
調整期間P1においてバルブ105の駆動電圧が第1バルブ目標値に到達すると調整期間P2に移行し、調整期間P2において流量センサ102の計測値が流量目標値に到達すると調整期間P3に移行し、調整期間P3においてバルブ105の駆動電圧が第2バルブ目標値に到達すると調整期間P4に移行してもよい。
【0041】
また、本実施形態においては調整期間は3つであったが、2つ以下であっても4つ以上であってもよい。
【0042】
初期調整値R1は、流量設定値と同等又は同等以上である。流量設定値の設定直後においては、流量設定値と計測値が大きく乖離している。この構成によれば、流量設定値の設定直後においてバルブ105の開度が大きくなるため、被制御対象内の流量を迅速に流量設定値に到達させることができる。初期調整値R1は、バルブ105の開度が最大となるような値であってもよい。
【0043】
調整値決定部12は、初期調整値R1の後に、流量設定値よりも大きい過渡調整値R2を流量調整値として保持してもよい。
【0044】
過渡調整値R2は、初期調整値R1よりも小さくてもよい。最終調整値R3が初期調整値R1より十分小さい場合、初期調整値R1の直後に最終調整値R3での流量制御を行うと、バルブ105が一旦閉じてしまい、流量制御に時間がかかってしまう。初期調整値R1の後に過渡調整値R2を経て最終調整値R3に移行する構成によれば、流量調整値が順次小さくなるため、バルブ105を十分開いた状態で流量制御を継続することができる。
【0045】
また、
図6に示すように、過渡調整値R21は、初期調整値R1よりも大きくてもよい。最終調整値R3が所定以上である場合には、過渡調整値R21を大きく設定することで、計測値を流量設定値により迅速に到達させることができる。
【0046】
調整値決定部12は、最終調整値R3が所定未満であるとき過渡調整値R2を初期調整値R1よりも小さくし、最終調整値R3が所定値を超えるとき過渡調整値R2を初期調整値R1よりも大きくしてもよい。
【0047】
第3調整期間P3において、調整値決定部12は、流量調整値を一定の傾きで徐々に低下させてもよいし、傾きを変化させながら低下させてもよい。また、調整値決定部12は、流量調整値を段階的に低下させてもよい。さらに、第3調整期間P3は、過渡調整値R2と最終調整値R3との差異に基づいて変化の態様を決定してもよい。
【0048】
●バルブの駆動電圧に基づいて流量調整値を変更するフローチャート
図4を用いて、バルブ105の駆動電圧が所定のバルブ目標値に達すると、次の調整期間に移行、すなわち流量調整値を変更するフローを説明する。同図に示すように、まず、設定される流量設定値を取得する(S11)。次いで、流量調整値の決定(S12)およびバルブ目標値の決定(S12)を行う。ステップS12およびステップS13は同時に行われてもよいし、順次行われてもよい。
【0049】
次いで、流量設定値と流量調整値とに基づいて、互いの差が小さくなるようにバルブ105を制御する(S14)。バルブ105の駆動電圧を取得し(S15)、バルブ105の駆動電圧がバルブ目標値に到達しているか否かを判別する(S16)。バルブ105の駆動電圧がバルブ目標値に到達していないとき、所定時間後にステップS14に戻り、再度バルブ105の駆動電圧をバルブ目標値とを比較する(S17)。ステップS16およびステップS17を繰り返し、バルブ105の駆動電圧がバルブ目標値に到達すると、流量調整値を変更する(S18)。このとき、流量調整値は、流量設定値と同等の値に設定されてもよい。
【0050】
この構成によれば、バルブ105が開いてから流量センサ102の計測値に反映されるまでのタイムラグにおいても、バルブ105の初期動作の様子に基づいて流量調整値を変更することができる。
【0051】
●センサの計測値に基づいて流量調整値を変更するフローチャート
図5を用いて、計測値が所定の流量目標値になると、次の調整期間に移行、すなわち流量調整値を変更するフローを説明する。同図に示すように、まず、流量調整値の決定(S21)および流量目標値の決定(S22)を行う。ステップS21およびステップS22は同時に行われてもよいし、順次行われてもよい。次いで、流量設定値と流量調整値とに基づいて、互いの差が小さくなるようにバルブ105を制御する(S23)。流量センサ102の計測値を取得し(S24)、計測値が流量目標値に到達しているか否かを判別する(S25)。計測値が流量目標値に到達していないとき、ステップS23に戻り、所定時間後に再度計測値を取得する(S24)。なお、ステップS23は、ステップS24およびステップS25とは非同期的に実施されてよい。
【0052】
ステップ25において、計測値が流量目標値に到達しているとき、調整値決定部12は、流量調整値を変更する(S26)。また、流量目標値決定部15は、流量目標値を変更する(S27)。ステップS26およびステップS27は、順不同であり、同時に行われてもよい。
【0053】
この構成によれば、計測値が流量調整値に到達する前の、フィードバック制御の初期段階の挙動を利用して、流量を変化させることができる。フィードバック制御においては、流量調整値と計測値との差が大きいほど強いフィードバックがかかるため、本構成によれば、流量を迅速に制御できる。
【0054】
このように、本発明にかかる流量制御装置によれば、被制御対象内の流量を迅速に流量設定値に到達させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 流量制御装置
11 設定値取得部
12 調整値決定部
13 計測値取得部
40 駆動制御部
105 バルブ