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特許7261574泡弾力改善剤、洗浄用組成物および泡弾力改善方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】泡弾力改善剤、洗浄用組成物および泡弾力改善方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20230413BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230413BHJP
   C11D 3/12 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q19/10
C11D3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018234166
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020094014
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山北 夏子
(72)【発明者】
【氏名】前澤 閑久
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172187(JP,A)
【文献】特開2015-172041(JP,A)
【文献】特開2004-155684(JP,A)
【文献】特開2001-233722(JP,A)
【文献】特開2006-022008(JP,A)
【文献】特開2002-167325(JP,A)
【文献】特開2001-058940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
C11D 1/00- 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄用組成物に用いられる泡弾力改善剤であって、
レーザー回折散乱法により得られる体積基準の粒子径分布におけるD50が1μm以上10μm未満の炭を含む、泡弾力改善剤。
【請求項2】
前記炭は、前記粒子径分布におけるD10/D50の値が0.25以上である、請求項1に記載の泡弾力改善剤。
【請求項3】
前記炭は、前記粒子径分布における(D90-D10)/D50の値が1.2未満である、請求項1または請求項2に記載の泡弾力改善剤。
【請求項4】
泡弾力改善剤を含む、洗浄用組成物であって、
前記泡弾力改善剤は、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の粒子径分布におけるD50が1μm以上10μm未満の炭を含み、
前記炭は、下記の条件(i)または(ii):
(i)前記粒子径分布におけるD10/D50の値が0.25以上である、
(ii)前記粒子径分布における(D90-D10)/D50の値が1.2未満である、
の少なくとも一方を満たす、洗浄用組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の泡弾力改善剤を洗浄用組成物に配合することを特徴とする、洗浄用組成物の泡弾力改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡弾力改善剤、洗浄用組成物および泡弾力改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄用組成物は、皮膚上の汚れ、余分な皮脂などを除去するものである。近年、洗浄後の肌のつっぱり感が抑制されつつも、洗浄力に優れる洗浄用組成物として、炭を含有する洗浄用組成物が開発されている。たとえば特許文献1(特開2002-167325号公報)には、高級脂肪酸、炭、および多価アルコールを含有する洗浄用組成物が開示されている。特許文献2(特開2015-172187号公報)には、炭、ポリオキシプロピレンヤシ油脂肪酸モノイソプロパノールアミド、およびIOB値が3~5の多価アルコールを含有する洗浄用組成物が開示されている。
【0003】
ところで、洗浄用組成物は、洗浄力のみならず、匂い、感触などに関する良好な使用感が求められる。たとえば、弾力性に優れた泡は、ユーザーに対して良好な使用感を提供することができる点で有益である。泡の弾力性を改善させる方法としては、洗浄用組成物中の界面活性剤の含有割合を高める方法が広く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-167325号公報
【文献】特開2015-172187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、洗浄用組成物中の界面活性剤の含有量が高められた場合、皮膚への刺激の高まりが懸念される。このため、洗浄用組成物の泡の弾力性を改善させるための他の方法が求められる。そこで本発明は、泡の弾力性を改善可能な泡弾力改善剤、洗浄用組成物および泡弾力改善方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のように従来より炭は、洗浄力を向上させる目的で洗浄用組成物に配合されていた。一方、炭が配合されることによる泡の弾力性の変化については、これまで着目されていなかった。これは、泡の弾力性については、界面活性剤などの他の配合成分が担っていることが技術常識であるためであろう。しかし驚くことに、本発明者らの検討により、市販されている炭を洗浄用組成物に配合して泡の弾力性を確認したところ、弾力性が低下することが知見された。
【0007】
上記知見を得た本発明者らは発想を転換し、炭が泡の弾力性を低下させ得るということは、炭が泡の弾力性を向上させ得るのではないかと考えた。泡の弾力性を低下させる要因となっていた炭が、ひるがえって泡弾力を改善させる要因となることができれば、洗浄用組成物の配合を大きく変えることなく、すなわち、従来の洗浄力を低下させることなく、泡弾力の改善を図ることができると考えた。洗浄用組成物の配合を大きく代える必要がないことは、製造コストの観点からも好ましく、またユーザーが受け容れ易い点からも好ましい。
【0008】
以上の観点に基づいて本発明者らは鋭意検討を重ね、本発明を完成させた。本発明は、以下のとおりである。
〔1〕洗浄用組成物に用いられる泡弾力改善剤であって、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の粒子径分布におけるD50が10μm未満の炭を含む、泡弾力改善剤。
〔2〕上記D50が1μm以上である、〔1〕の泡弾力改善剤。
〔3〕上記炭は、粒子径分布におけるD10/D50の値が0.25以上である、〔1〕または〔2〕の泡弾力改善剤。
〔4〕上記炭は、粒子径分布における(D90-D10)/D50の値が1.2未満である、〔1〕から〔3〕のいずれかの泡弾力改善剤。
〔5〕〔1〕から〔4〕のいずれかの泡弾力改善剤を含む、洗浄用組成物。
〔6〕〔1〕から〔4〕のいずれかの泡弾力改善剤を洗浄用組成物に配合することを特徴とする、洗浄用組成物の泡弾力改善方法。
〔7〕レーザー回折散乱法により得られる体積基準の粒子径分布におけるD50が10μm未満の炭と、界面活性剤とを含有する、洗浄用組成物。
〔8〕上記D50が1μm以上である、〔7〕の洗浄用組成物。
〔9〕上記炭は、粒子径分布におけるD10/D50の値が0.25以上である、〔7〕または〔8〕の洗浄用組成物。
〔10〕上記炭は、粒子径分布における(D90-D10)/D50の値が1.2未満である、〔7〕から〔9〕のいずれかの洗浄用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗浄用組成物における泡の弾力性を改善可能な泡弾力改善剤、洗浄用組成物および泡弾力改善方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る泡弾力改善剤、洗浄用組成物および泡弾力改善方法について、それぞれ詳細に説明する。なお本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0011】
〈泡弾力改善剤〉
本発明に係る泡弾力改善剤は、後述する洗浄用組成物に用いられる泡弾力改善剤であって、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の粒子径分布におけるD50が10μm未満の炭を含む。このような粒子径分布の測定には、株式会社東日製作所の「LDSA-3400A」などのレーザー回折式粒度分布測定装置を用いることができる。「D50」は、上記粒子径分布において、微粒側からの積算粒子体積が全粒子体積の50%になる粒子径を示す。
【0012】
上記炭の種類は特に制限されず、桐炭、備長炭、竹炭、ヒノキ木炭、ヤシ殻炭およびこれらの活性炭、ならびにこれらの薬用炭などが挙げられる。洗浄用組成物に含ませる用途に鑑みれば、薬用炭が好ましい。炭の形状も特に制限されず、球状、略球状、不定形状などが挙げられる。なお「炭」とは、木材、竹、ヤシ殻などの有機物が炭化されたものであり、多孔質なものである。
【0013】
D50が10μm以上の場合、反対に泡の弾力性の低下が引き起こされる。またD50が1μm未満の場合、炭の凝集が顕著となるために、泡弾力改善剤の取り扱いが困難となる傾向がある。このためD50は好ましくは1μm以上である。またD50は2.7~9.6μmが好ましく、3.3~7.8μmがより好ましい。泡の弾力性と泡のすすぎ易さとの両特性のバランスに優れるためである。
【0014】
また炭は、上記粒子径分布におけるD10/D50の値が0.25以上であることが好ましい。この場合に、泡の弾力性の顕著な向上が可能となる。D10/D50の値は、低粒子径側の粒子径分布の広がりを示す値であり、たとえばD50が同じである2種類の炭を比較した場合に、D10/D50の値が大きいほど、低粒子径側の粒子径分布がシャープであることを示す。なお「D10」は上記粒子径分布において、微粒側からの積算粒子体積が全粒子体積の10%になる粒子径を示す。D10/D50の値は、好ましくは0.3以上である。D10/D50の上限値は特に制限されないが、たとえば0.9とすることができる。
【0015】
また炭は、上記粒子径分布における(D90-D10)/D50の値が1.2未満であることが好ましい。この場合に、泡の弾力性の顕著な向上が可能となる。(D90-D10)/D50の値は、粒子径分布の広がりを示す値であり、その値が大きいほど粒子径分布がブロードであり、その値が小さいほど粒子径分布がシャープであることを示す。なお「D90」は上記粒子径分布において、微粒側からの積算粒子体積が全粒子体積の90%になる粒子径を示す。(D90-D10)/D50の下限値は特に制限されないが、たとえば0.1とすることができる。
【0016】
また上記炭は、D10が2μm以上であることが好ましい。この場合、泡弾力改善剤の取り扱い性が顕著に向上する。また上記炭は、D90が14μm以下であることが好ましい。この場合、泡の弾力性の顕著な向上が可能となる。
【0017】
本発明に係る泡弾力改善剤は、上記炭以外に他の成分を含んでも良い。他の成分としては、たとえば、後述する洗浄用組成物に配合される成分が挙げられる。ただし、泡弾力改善剤がこのような他の成分を含む場合、これを洗浄用組成物に配合する際に、他の成分の総配合量が、洗浄用組成物として適切な範囲となるように調整する必要がある。このため、泡弾力改善剤は上記炭からなる、すなわち泡弾力改善剤は上記炭のみからなることが好ましい。
【0018】
本発明に係る泡弾力改善剤は、たとえば、市販の炭を粉砕して粒子径を適宜調整することにより、製造することができる。粒子径の調整は、たとえば粉砕機の分級回転数、粉砕圧力、粉砕時間などの調整により可能となる。また所望の粒子径を有する市販の炭、すなわち一定の粒子径に微細化されている市販の炭を用いることもできる。
【0019】
本発明に係る泡弾力改善剤によれば、洗浄用組成物に配合させることにより、洗浄用組成物により形成される泡の弾力性を改善させることができる。すなわち本発明に係る泡弾力改善剤は、洗浄用組成物に特化した泡弾力改善剤である。泡の弾力性が改善することにより、泡がへたりにくくなり、たとえば、泡が肌に接触した際のもちもち感が高められたり、口腔内における洗浄感が高められたりすることとなる。また炭においては、さらに洗浄力の向上、皮脂の吸着、臭いの吸着といった他の効果が知られていることから、本発明に係る泡弾力改善剤によれば、泡の弾力性の改善に加え、上記他の効果を付随して発揮することができる点でも有益である。
【0020】
〈洗浄用組成物〉
本発明に係る洗浄用組成物は、上述の泡弾力改善剤を含む。洗浄用組成物における泡弾力改善剤の配合量は特に制限されないが、上記効果を好適に発揮させる観点から、洗浄用組成物の全体に対して0.0001~10重量%が好ましく、0.001~5重量%がより好ましく、0.01~1重量%がより好ましい。
【0021】
本発明に係る洗浄用組成物は、上述の泡弾力改善剤を含む限り、洗浄用組成物の成分として従来公知のいずれの成分を含んでもよい。具体的には、基剤(担体)、高級脂肪酸塩、界面活性剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防腐剤(保存剤)、pH調整剤、キレート剤、安定化剤、香料などが挙げられる。
【0022】
基剤としては、水(イオン交換水、精製水など)などの水系基剤;エタノール、イソプロパノールのような低級アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、ジグリセリン、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール;などが挙げられる。好ましくは、水系基剤であり、より好ましくは水である。洗浄用組成物における基剤の配合量は適宜選択できる。たとえば、洗浄用組成物の全体に対して30~95重量%、好ましくは50~90重量%、より好ましくは60~80重量%である。
【0023】
高級脂肪酸塩は、高級脂肪酸を塩基で中和したものを指し、脂肪酸石鹸とも呼ばれる化合物である。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、2-パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、リノエライジン酸、アラキドン酸、ペトロセリン酸、リチノレイン酸などが挙げられる。また高級脂肪酸は、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム核油脂肪酸などの混合脂肪であってもよい。好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、またはヤシ油脂肪酸である。洗浄用組成物における高級脂肪酸の配合量は適宜選択できる。たとえば、洗浄用組成物の全体に対して0.1~50重量%、好ましくは0.5~40重量%、より好ましくは1~30重量%である。
【0024】
界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレン(以下、POEという)ラウリルエーテル酢酸ナトリウムなどのアルキルエーテルカルボン酸塩;ラウレス硫酸ナトリウムなどのアルキルエーテル硫酸塩;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型両性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウムなどのN-アシルタウリン塩;ラウリルアミノジ酢酸ナトリウム液などのアルキルイミノジカルボン酸塩型両性界面活性剤;ラウリルヒドロキシスルホベタイン液などのアルキルヒドロキシスルホベタイン型両性界面活性剤;POE-オクチルドデシルアルコール、POE-2-デシルテトラデシルアルコールなどのPOE-分岐アルキルエーテル;POE-オレイルアルコールエーテル、POE-セチルアルコールエーテルなどのPOE-アルキルエーテル;ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレートおよびソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエステル;POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノイソステアレート、およびPOE-ソルビタンモノラウレートなどのPOE-ソルビタンエステル;グリセリンモノオレエート、グリセリンモノステアレート、およびグリセリンモノミリステートなどのグリセリン脂肪酸エステル;POE-グリセリンモノオレエート、POE-グリセリンモノステアレート、およびPOE-グリセリンモノミリステートなどのPOE-グリセリン脂肪酸エステル;POE-ジヒドロコレステロールエステル、POE-硬化ヒマシ油、およびPOE-硬化ヒマシ油イソステアレートなどのPOE-硬化ヒマシ油脂肪酸エステル;POE-オクチルフェニルエーテルなどのPOE-アルキルアリールエーテル;モノイソステアリルグリセリルエーテル、モノミリスチルグリセリルエーテルなどのグリセリンアルキルエーテル;POE-モノステアリルグリセリルエーテル、POE-モノミリスチルグリセリルエーテルなどのPOE-グリセリンアルキルエーテル;ジグリセリルモノステアレート、デカグリセリルデカステアレート、デカグリセリルデカイソステアレート、およびジグリセリルジイソステアレートなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;などの非イオン界面活性剤:あるいはレシチン、水素添加レシチン、サポニン、サーファクチンナトリウム、コレステロール、胆汁酸などの天然由来の界面活性剤などが挙げられる。洗浄用組成物における界面活性剤の配合量は適宜選択できる。たとえば、洗浄用組成物の全体に対して0.1~50重量%、好ましくは0.5~40重量%、より好ましくは1~30重量%である。
【0025】
粘度調整剤としては、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、部分架橋ポリアクリル酸、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、バーミキュライト、ノントライト、ザウコナイト、ラポナイトなどの増粘剤;プロピレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ベンゼンスルホン酸塩、炭素数1~4程度の低級アルキルベンゼンスルホン酸塩などの減粘剤;などが挙げられる。
【0026】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコフェロール誘導体、エリソルビン酸、L-システイン塩酸塩などが挙げられる。
【0027】
防腐剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビン酸およびその塩、グルコン酸クロルヘキシジン、アルカンジオールなどが挙げられる。
【0028】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などが挙げられる。
【0029】
キレート剤としては、キレート剤としては、エチレンジアミン4酢酸(エデト酸)、エチレンジアミン4酢酸塩(ナトリウム塩(エデト酸ナトリウム:日本薬局方、EDTA-2Naなど)、カリウム塩など)、フィチン酸、グルコン酸、ポリリン酸、メタリン酸などが挙げられる。中でも、エデト酸ナトリウムが好ましい。
【0030】
安定化剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ビチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
【0031】
香料としては、たとえば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノールなどのテルペノイド類が挙げられる。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよいが、清涼感や香りなどの官能面や安全性の面から、1-メントール、d-メントール、dl-メントール、d-カンフル、dl-カンフル、d-ボルネオール、dl-ボルネオールが好ましく、l-メントールが特に好ましい。テルペノイド類は、精油に含有した状態で使用することもでき、好ましい精油は、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ウイキョウ油、ハッカ油、ケイヒ油、ローズ油などである。
【0032】
本発明に係る洗浄用組成物において、上記の各成分はそれぞれ、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。洗浄用組成物の種類は特に制限されず、洗顔料、クレンジング料、ボディソープ、ハンドソープ、頭髪用シャンプー、頭髪用リンスインシャンプーなどが挙げられる。またその形態も特に制限されず、液状、ペースト状、粉末状、および固形状のいずれの形態であってもよい。また本発明に係る洗浄用組成物は、歯磨き用組成物などの口腔洗浄性を付与する口腔洗浄用組成物であってもよい。炭の分散性の観点からは、本発明に係る洗浄用組成物は液状またはペースト状であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る洗浄用組成物によれば、これを泡立てた際の泡の弾力性が改善される。またさらに、泡弾力改善剤が炭からなることにより、これに伴う洗浄力の向上、皮脂の吸着、臭いの吸着といった機能の発揮も可能となる。
【0034】
上述の洗浄用組成物には、レーザー回折散乱法により得られる体積基準の粒子径分布におけるD50が10μm未満の炭と、界面活性剤とを含有する、洗浄用組成物が含まれる。上記D50が1μm以上であることが好ましい。また上記炭は、粒子径分布におけるD10/D50の値が0.25以上であることが好ましい。さらに上記炭は、粒子径分布における(D90-D10)/D50の値が1.2未満であることが好ましい。
【0035】
〈泡弾力改善方法〉
本発明に係る泡弾力改善方法は、上述の泡弾力改善剤を洗浄用組成物に配合することを特徴とする、洗浄用組成物の泡弾力改善方法である。上述の泡弾力改善剤が配合された洗浄用組成物を従来の方法により泡立てることにより、泡弾力改善剤が配合されない場合と比して、弾力性に優れた泡を形成することができる。これにより、洗浄用組成物の泡弾力を改善することができる。
【実施例
【0036】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
〈泡弾力改善剤の作製〉
D50が11.7μmの市販の薬用炭(ヤシ殻活性炭)を、微粉砕機(「ミクロンジェットQ型 MJQ-LAB」、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて粉砕し、D50が2.7μm、3.3μm、6.6μm、7.8μm、および9.6μmの5種類の薬用炭を作製した。各薬用炭のD50は、分級回転数および粉砕圧力を変更することにより調整した。以上により、5種類の薬用炭からなる泡弾力改善剤が作製された。各薬用炭のD10、D50およびD90は、レーザー回折式粒度分布測定装置(「LDSA-3400A」、株式会社東日製作所)を用いて測定した。
【0038】
〈洗浄用組成物の作製〉
市販の薬用炭および上記で作製された5種類の薬用炭を用いて、洗浄用組成物(ボディソープ)を作製した。洗浄用組成物の配合割合は以下のとおりである。これにより、6種類の洗浄用組成物を作製した。
薬用炭 :0.1重量%
ラウリン酸 :10重量%
ミリスチン酸 :5重量%
パルミチン酸 :1重量%
水酸化カリウム :4.5重量%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:0.8重量%
グリセリン :2重量%
精製水 :残部。
【0039】
またコントロールとして、薬用炭を配合していない洗浄用組成物を作製した。この洗浄用組成物における各成分の配合割合は、薬用炭を含まない点以外は上記の配合割合と一致する。
【0040】
〈泡の弾力性の評価〉
上記で作製された7種類の洗浄用組成物について、泡の弾力性を評価した。具体的にはまず、精製水を用いて10mlの各洗浄用組成物を10倍に希釈し、得られた100mlの各希釈液を、ミキサー(「IFM-620DG」、岩谷産業株式会社製)を用いて10秒間泡立てた。次に各希釈液から生成された各泡に対し、泡物性試験機(「TB-1T」、株式会社テクノハシモト製)を用いて押し込み面積を測定した。測定条件は以下のとおりである。測定により得られた値に関し、その数値が大きいほど泡の弾力性が高く、その数値が小さいほど泡の弾力性が低いことを示す。
試験方法 :サイクル試験
サイクル数 :5回
開始位置 :100mm
ストローク(往復)幅:50mm
移動速度 :10mm/秒
加減速度 :0.10G。
【0041】
〈分散性の評価〉
上記で作製された7種類の洗浄用組成物のうち、薬用炭が配合された6種類の洗浄用組成物について、薬用炭の分散性を評価した。具体的にはまず、各洗浄用組成物7mlを10ml容量の各遠沈管(内径1.5cm)に入れ、これを卓上遠心機(「S700T」、久保田商事株式会社製)にセットし、3000rpmで10分間遠心分離を行った。遠心分離後、洗浄用組成物の上部領域の色を、目視により以下の4段階で評価した。上部領域とは、洗浄用組成物のうち、洗浄用組成物の液面(上面)から下方に1cm移動した面と、該液面から下方に2cm移動した面とに挟まれる領域である。下記ランクに関し、遠心前と比較して色の変化がないほど、薬用炭が沈殿せずに分散されていることを示し、遠心前と比較して色が薄くなるほど、薬用炭が沈殿していることを示す。
ランクA:遠心前と比較して変化がない
ランクB:遠心前と比較してわずかに薄い
ランクC:遠心前と比較して薄い
ランクD:遠心前と比較して極めて薄い。
【0042】
【表1】
【0043】
表1において、No.6は市販の薬用炭が配合された洗浄用組成物であり、No.1~No.5は、市販の薬用炭を粉砕してなる薬用炭が配合された洗浄用組成物であり、No.7は、薬用炭が配合されていない洗浄用組成物である。すなわちNo.1~No.5は実施例であり、No.6は比較例であり、No.7は参考例(コントロール)である。
【0044】
No.1~7の押し込み面積の結果およびNo.1~6の分散性の結果を表1に示す。またNo.1~No.6については、各薬用炭のD10、D50およびD90も併せて示す。表1のNo.6およびNo.7を比較し、D50が11.7μmの薬用炭を含む洗浄用組成物は、薬用炭を含まない場合と比して、泡の弾力性が低下することが確認された。一方No.1~No.6を比較し、D50が9.6μm以下の薬用炭を含む洗浄用組成物は、薬用炭を含まない場合と比して泡の弾力性が向上していることが確認された。
【0045】
また分散性に関し、No.6においては、遠心分離によって多くの薬用炭が沈殿してしまうのに対し、No.1~No.5においては、沈殿が大きく抑制されていることが確認された。このことから、D50が10μm未満の薬用炭を含む泡弾力改善剤であれば、洗浄用組成物での高い分散性を有することができ、もって洗浄用組成物の保管安定性が担保されることが分かった。また泡の弾力性および分散性に優れるNo.1~No.5に関し、D10/D50の値は0.25以上であり、(D90-D10)/D50の値は1.2未満であった。
【0046】
〈使用感の評価〉
No.3およびNo.6の洗浄用組成物について、使用感を評価した。具体的にはまず、精製水を用いて10mlの各洗浄用組成物を10倍に希釈し、得られた100mlの各希釈液を上記ミキサーを用いて10秒間泡立てた。次に各希釈液から生成された各泡について、「(1)泡の弾力性」、「(2)泡のきめの細かさ」および「(3)泡の肌当たりの滑らかさ」について、評価者が以下の4段階で評価した。得られた結果を表2に示す。
ランクA:非常に良い
ランクB:良い
ランクC:普通
ランクD:悪い。
【0047】
【表2】
【0048】
No.6においては、「(1)泡の弾力性」、「(2)泡のきめの細かさ」および「(3)泡の肌当たりの滑らかさ」の全ての評価がランクCであったのに対し、No.3においては、「(1)泡の弾力性」の評価はランクAであり、「(2)泡のきめの細かさ」および「(3)泡の肌当たりの滑らかさ」の評価はランクBであった。この結果から、D50が10μm未満の炭を含有する洗浄用組成物は、泡の弾力性に優れ、かつユーザーに対して良好な使用感を提供できることが理解された。
【0049】
以下に本発明の製剤処方例を示す。
<製剤処方例1:ボディソープ>
薬用炭(D50:6.6μm) 0.5重量%
ラウリン酸 5重量%
パルミチン酸 5重量%
ステアリン酸 5重量%
水酸化カリウム 適量
グリセリン 5重量%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.01重量%
エデト酸2ナトリウム 0.05重量%
フェノキシエタノール 0.3重量%
塩化ベンザルコニウム 0.1重量%
ラウレス硫酸ナトリウム 5重量%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 5重量%
ポリクオタニウム-10 0.5重量%
ポリクオタニウム-7 0.2重量%
カオリン 0.5重量%
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.5重量%
ヒドロキシエチルセルロース 0.3重量%
水 残部
合計 100重量%。
【0050】
<製剤処方例2:ボディソープ>
薬用炭(D50:6.6μm) 0.0001重量%
ラウリン酸PEG-80ソルビタン 5重量%
ココイルグルタミン酸2ナトリウム 4重量%
ココイルグリシンナトリウム 2重量%
ソルビトール 5重量%
ココイルメチルタウリンタウリンナトリウム 2重量%
クエン酸 適量
エデト酸2ナトリウム 0.05重量%
コカミドDEA 1重量%
ココアンホ酢酸ナトリウム 3重量%
ポリクオタニウム-7 0.05重量%
グリチルリチン酸ジカリウム 0.3重量%
水 残部
合計 100重量%。
【0051】
<製剤処方例3:シャンプー>
薬用炭(D50:6.6μm) 0.6重量%
ラウレス硫酸ナトリウム 30重量%
ココイルグルタミン酸トリエタノールアミン 5重量%
ラウロイルメチルアラニンナトリウム 5重量%
ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン 5重量%
クエン酸 適量
ジメチコン 0.3重量%
メチルパラベン 0.2重量%
エデト酸2ナトリウム 0.1重量%
ポリクオタニウム-10 0.5重量%
ポリクオタニウム-39 0.1重量%
ポリクオタニウム-7 0.1重量%
香料 0.8重量%
水 残部
合計 100重量%。
【0052】
<製剤処方例4:シャンプー>
薬用炭(D50:6.6μm) 0.2重量%
オレフィン(C14-16)スルホン酸ナトリウム 15重量%
POEラウリルエーテル酢酸Na 5重量%
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 5重量%
ヤシ油脂肪酸TEA液 5重量%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液 5重量%
クエン酸 適量
エデト酸2ナトリウム 0.1重量%
塩化ベンザルコニウム 1重量%
ポリクオタニウム-10 0.6重量%
ポリクオタニウム-7 0.1重量%
香料 0.5重量%
水 残部
合計 100重量%。
【0053】
<製剤処方例5:洗顔料>
薬用炭(D50:6.6μm) 1重量%
ラウリン酸 5重量%
ミリスチン酸 10重量%
パルミチン酸 7重量%
ステアリン酸 7重量%
水酸化カリウム 適量
ブチレングリコール 5重量%
グリセリン 5重量%
トコフェロール 0.05重量%
エデト酸2ナトリウム 0.05重量%
フェノキシエタノール 0.3重量%
サリチル酸 0.2重量%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 5重量%
ポリクオタニウム-10 0.3重量%
ポリクオタニウム-7 0.1重量%
l-メントール 0.3重量%
香料 0.2重量%
水 残部
合計 100重量%。
【0054】
<製剤処方例6:粉末状洗顔>
薬用炭(D50:6.6μm) 0.1重量%
タルク 残部
コーンスターチ 25重量%
シリカ 2重量%
ソルビトール 6重量%
グルコース 4重量%
デキストリン 1重量%
ラウロイルアスパラギン酸ナトリウム 10重量%
ミリストイルグルタミン酸ナトリウム 5重量%
ココイルグリシンナトリウム 1.5重量%
ミリスチン酸ナトリウム 1重量%
リン酸カリウム 0.2重量%
リン酸2カリウム 0.2重量%
香料 0.3重量%
合計 100重量%。
【0055】
<製剤処方例7:固型石鹸>
薬用炭(D50:6.6μm) 5重量%
石ケン素地 残部
グリセリン 2重量%
ソルビトール 2重量%
ポリクオタニウム-7 0.1重量%
ポリクオタニウム-39 0.1重量%
ジブチルヒドロキシトルエン 0.01重量%
エデト酸2ナトリウム 0.05重量%
フェノキシエタノール 0.3重量%
塩化ベンザルコニウム 0.5重量%
香料 0.5重量%
合計 100重量%。
【0056】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。