(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】風向調整装置及び空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
B60H1/34 631
B60H1/34 611A
B60H1/34 611Z
(21)【出願番号】P 2018237262
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 剛史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 義彦
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-219038(JP,A)
【文献】特開昭60-200039(JP,A)
【文献】特開2013-116650(JP,A)
【文献】特開2014-224643(JP,A)
【文献】特開2009-280057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って空調風を導くダクト本体部と、このダクト本体部
の下流端に設けられ、このダクト本体部により導かれた空調風が突き当たる壁部と、前記ダクト本体部にて前記壁部と近接する位置に前記所定方向と交差する方向に沿って開口された吹出部とを備えたダクトの前記吹出部に取り付けられる風向調整装置であって、
前記所定方向に沿って前記吹出部に複数配置され、前記吹出部からの空調風の吹き出し方向と交差する方向に風向を調整可能なフィンと、
前記フィンを挟んで前記ダクト本体部と対向する側に設けられ、端部が前記壁部により閉塞され
てコ字状に折り返されて前記ダクト本体部により空調風を導く方向に対して反対方向となる前記吹出部と連通し、前記壁部に突き当たった空調風が流れる閉じ通路と
を具備したことを特徴とする風向調整装置。
【請求項2】
閉じ通路は、
吹出部にて壁部側から延び、前記壁部側の一部のフィンの吹き出し方向下流側を覆う遮蔽部と、
少なくとも残りの他の前記フィンの前記吹き出し方向下流側に開口する吹出口とを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の風向調整装置。
【請求項3】
遮蔽部は、フィンに対向する位置に、空調風を吹出口側へとガイドするガイド部を備えた
ことを特徴とする請求項2記載の風向調整装置。
【請求項4】
所定方向に沿って空調風を導くダクト本体部と、このダクト本体部に設けられ、このダクト本体部により導かれた空調風が突き当たる壁部と、前記ダクト本体部にて前記壁部と近接する位置に前記所定方向と交差する方向に沿って開口された吹出部とを備えたダクトと、
このダクトの前記吹出部に取り付けられる請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置と
を具備したことを特徴とする空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト本体部により空調風を導く所定方向に対して交差する方向に沿って開口された吹出部に取り付けられる風向調整装置及びこれを備えた空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンターコンソール部などの車両の各部に設置され、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
例えば、車室レイアウト上の制限により、側部用の風向調整装置が乗員着座位置から離れた位置、主に車両側壁部などに設定される場合がある。この風向調整装置は、空調装置と接続されて前後方向に空調風を導くダクトに車両前後方向と交差する方向(車幅方向)に開口された吹出口に取り付けられている。また、この風向調整装置は、風向調整用のフィンを複数、前後方向に回動可能に備えている。そして、ダクトから送られてくる空調風が吹出口から車室内へ向けて吹き出される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-78733号公報 (第6-7頁、
図1-11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような側部用の風向調整装置では、インストルメントパネルなどに設けられた風向調整装置と異なり、空調装置(HVAC)から距離があることから、ダクト内を送風される間にただでさえ風速が弱まってしまう上、ダクトの最下流に設けられた壁に突き当たった空調風がダクト内で乱流を生じ、車室内へ吹き出す風量が減少する。そのため、風向調整用のフィンは、吹き出される空調風の風速を均一にする作用を有するに過ぎず、回動させても任意の方向へ充分な量の空調風を送ることが困難である。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、レイアウト上の制限がある場合でも風向の適切な調整が可能な風向調整装置及びこれを備えた空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、所定方向に沿って空調風を導くダクト本体部と、このダクト本体部の下流端に設けられ、このダクト本体部により導かれた空調風が突き当たる壁部と、前記ダクト本体部にて前記壁部と近接する位置に前記所定方向と交差する方向に沿って開口された吹出部とを備えたダクトの前記吹出部に取り付けられる風向調整装置であって、前記所定方向に沿って前記吹出部に複数配置され、前記吹出部からの空調風の吹き出し方向と交差する方向に風向を調整可能なフィンと、前記フィンを挟んで前記ダクト本体部と対向する側に設けられ、端部が前記壁部により閉塞されてコ字状に折り返されて前記ダクト本体部により空調風を導く方向に対して反対方向となる前記吹出部と連通し、前記壁部に突き当たった空調風が流れる閉じ通路とを具備したものである。
【0008】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、閉じ通路は、吹出部にて壁部側から延び、前記壁部側の一部のフィンの吹き出し方向下流側を覆う遮蔽部と、少なくとも残りの他の前記フィンの前記吹き出し方向下流側に開口する吹出口とを備えたものである。
【0009】
請求項3記載の風向調整装置は、請求項2記載の風向調整装置において、遮蔽部は、フィンに対向する位置に、空調風を吹出口側へとガイドするガイド部を備えたものである。
【0010】
請求項4記載の空調装置は、所定方向に沿って空調風を導くダクト本体部と、このダクト本体部に設けられ、このダクト本体部により導かれた空調風が突き当たる壁部と、前記ダクト本体部にて前記壁部と近接する位置に前記所定方向と交差する方向に沿って開口された吹出部とを備えたダクトと、このダクトの前記吹出部に取り付けられる請求項1ないし3いずれか一記載の風向調整装置とを具備したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の風向調整装置によれば、所定方向に沿って吹出部にフィンを複数配置するとともに、フィンを挟んでダクトのダクト本体部と対向する側に、端部がダクトのダクト本体部の下流端に位置する壁部により閉塞されてコ字状に折り返される閉じ通路を形成することで、フィンにより風向を調整する際に、壁部に突き当たって閉じ通路を流れて吹出部へと折り返す空調風が、フィンにより直接風向制御される空調風の流速を高め、レイアウト上の制限がある場合でも風向の適切な調整が可能となる。
【0012】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、閉じ通路において、所定方向に沿って吹出部に複数配置されたフィンのうち、ダクトの壁部側の一部のフィンの吹き出し方向下流側を遮蔽部により覆い、少なくとも残りの他のフィンの吹き出し方向下流側に吹出口を開口することで、フィンにより風向を調整する際に、壁部に突き当たって閉じ通路を流れる空調風を、遮蔽部から吹出口側へと整流して、フィンにより直接風向制御される空調風の流速をより効果的に高めることができる。
【0013】
請求項3記載の風向調整装置によれば、請求項2記載の風向調整装置の効果に加えて、遮蔽部のフィンに対向する位置に、空調風を吹出口側へとガイドするガイド部を設けることで、ダクトの壁部に突き当たって遮蔽部により吹出口へと流れる空調風の流速をガイド部によって高め、風向をより適切に調整可能になるとともに、風切り音などの雑音の発生を抑制できる。
【0014】
請求項4記載の空調装置によれば、例えば車両の車室の側部など、スペースが取りにくくレイアウト上に制限がある位置に空調装置が配置されていても、風向調整装置により風向を適切に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の風向調整装置を備えた空調装置を示すフィンの中立位置での断面図である。
【
図2】同上空調装置のフィンを一方向に振った位置での断面図である。
【
図3】同上空調装置のフィンを他方向に振った位置での断面図である。
【
図4】同上風向調整装置のダクト側から見た斜視図である。
【
図5】同上風向調整装置のダクト側から見た正面図である。
【
図6】同上風向調整装置の一部の車室側から見た斜視図である。
【
図7】同上風向調整装置をダクト側から見た分解斜視図である。
【
図8】同上風向調整装置の車室側から見た斜視図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態の風向調整装置をダクト側から見た分解斜視図である。
【
図10】同上風向調整装置の車室側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1の実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし
図8において、10は風向調整装置である。この風向調整装置10は、ルーバ装置あるいはベンチレータなどとも呼ばれ、例えば自動車の車室側壁部や天井などの被取付部に取り付けられ、空調装置本体(HVAC)にダクト11を介して接続されて、このダクト11とともに、車室内に風を吹き出し、空調を行う車両用の空調装置12を構成している。なお、以下、前後方向、及び上下方向については、風向調整装置10を例えば右席に着座する乗員の右側方の被取付部に取り付けた状態での自動車の前後方向、及び上下方向を基準として説明するが、これらの方向は、被取付部の位置に応じてそれぞれ読み替えた配置とすることができる。例えば、図中においては、矢印FR方向を前方向、矢印RR方向を後方向、矢印U方向を上方向、矢印Dを下方向、矢印Cを車室方向、矢印Wを車外方向とする。
【0018】
風向調整装置10は、概略として、意匠部材であるフィニッシャ15と、(第1)風向調整体である複数のフィンである縦ルーバ(Vルーバ)16と、連結部材であるリンク17と、(第2)風向調整体である複数の横ルーバ(Hルーバ)18とを備えている。より詳細に、風向調整装置10は、フィニッシャ15に対して、横ルーバ18を一体的に備えたハウジング21がフィニッシャ15に上下方向に回動可能に軸支され、このハウジング21に縦ルーバ16がそれぞれ前後方向に回動可能に軸支され、これら縦ルーバ16がリンク17によって互いに連動して回動するように連結されている。そして、この風向調整装置10は、ダクト11に取り付けられている。
【0019】
ここで、ダクト11は、
図1ないし
図3に示すように、所定方向、本実施の形態では前後方向に沿って空調風を導く筒状のダクト本体部25を備えている。このダクト本体部25には、このダクト本体部25により導かれた空調風が突き当たる壁部26が設けられている。また、このダクト本体部25には、空調風を導く所定方向、すなわち前後方向に対して交差する方向、本実施の形態では車幅方向に沿って吹出部27が開口されている。
【0020】
ダクト本体部25は、例えば合成樹脂などにより長手状に形成されている。すなわち、このダクト本体部25は、幅が狭く形成されている。本実施の形態において、このダクト本体部25は、長手方向を前後方向に沿わせた状態で被取付部内に埋め込まれて配置されている。そして、本実施の形態において、このダクト本体部25は、後側から前側に向かって空調風を導くようになっている。
【0021】
壁部26は、ダクト11の最下流端に配置されている。この壁部26は、ダクト本体部25の幅方向に沿って形成されている。すなわち、この壁部26は、ダクト本体部25により空調風を導く方向に対して交差(直交)する方向に沿って形成されている。このため、本実施の形態において、この壁部26は、車幅方向に沿って配置される。また、本実施の形態において、この壁部26は、ダクト本体部25の最前部に位置している。
【0022】
吹出部27は、風向調整装置10が取り付けられる部分である。この吹出部27は、ダクト本体部25にて壁部26と近接する位置に配置されている。すなわち、本実施の形態において、この吹出部27は、ダクト本体部25の最前部の車室側の側部に開口されている。この吹出部27は、ダクト本体部25により空調風を導く方向、本実施の形態では前後方向に長手状に形成されている。この吹出部27は、単なる開口でもよいが、本実施の形態では、ダクト本体部25から車室側に向かって突出する筒状に形成されている。また、本実施の形態において、この吹出部27は、車室側に向かって拡開状に形成されている。
【0023】
そして、
図1ないし
図5、
図7及び
図8に示すフィニッシャ15は、ガーニッシュとも呼ばれ、例えば車室側に露出する車両用内装材である。このフィニッシャ15は、例えば合成樹脂などにより形成されている。このフィニッシャ15は、ダクト11(ダクト本体部25)が車室内に直接露出しないように、ダクト11(ダクト本体部25)の吹出部27を覆って取り付けられている。このフィニッシャ15には、吹出口31が厚み方向に貫通して開口されている。また、このフィニッシャ15の背面側、すなわち車外側の部分には、吹出口31を囲んで、支持受部32が形成されている。
【0024】
吹出口31は、吹出部27と連通し、ダクト本体部25により導かれて吹出部27から吹き出される空調風を車室内へと吹き出させるものである。この吹出口31は、ダクト本体部25により空調風を導く所定方向、本実施の形態では前後方向に沿って長手状に形成され、車幅方向に開口されている。例えば、この吹出口31は、車室側から見て横長の四角形状に形成されている。この吹出口31は、吹出部27よりも長手寸法が小さく設定されている。例えば、本実施の形態において、この吹出口31は、吹出部27の長手寸法の半分ないし2/3程度の長さに設定されている。
【0025】
図1ないし
図4に示す支持受部32は、ハウジング21を回動可能に軸支する部分である。この支持受部32は、角筒状に形成されている。すなわち、この支持受部32は、それぞれ吹出口31を挟んで対向する一対の支持壁部34,35と一対の区画壁部36,37とを備えている。本実施の形態において、支持壁部34,35は、例えば吹出口31の上下縁部に沿って形成されている。また、一方の区画壁部36は、吹出口31の一端部に沿って形成され、他方の区画壁部37は、吹出口31の他端部に対して他端側に離れた位置に形成されている。本実施の形態において、一方の区画壁部36は、吹出口31の前縁部、すなわち吹出部27の前縁部、換言すればダクト本体部25の壁部26に近接して位置し、他方の区画壁部37は、吹出口31の後縁部から後側に離れて吹出部27の後縁部に近接して位置している。このため、支持受部32の内部には、吹出口31よりもダクト本体部25により空調風を導く所定方向、本実施の形態では前後方向に長い空間部39が支持壁部34,35及び区画壁部36,37によって区画される。この空間部39には、ハウジング21が収容配置される。
【0026】
縦ルーバ16は、ダクト本体部25により空調風を導く所定方向、すなわち本実施の形態では前後方向に沿って吹出部27に複数配置されている。これら縦ルーバ16は、前後方向に略等ピッチ(等ピッチも含む)に互いに離れて配置されている。また、これら縦ルーバ16は、吹出口31の短手方向、本実施の形態では上下方向に沿って位置し、上下両端が回動可能に軸支されて、車幅方向に回動可能となっている。本実施の形態では、これら縦ルーバ16は、それぞれハウジング21に回動可能に軸支されているが、フィニッシャ15(支持受部32(支持壁部34,35))に回動可能に軸支されていてもよい。また、これら縦ルーバ16は、吹出口31の開口面に対して背面側、すなわち車室と反対側である車外側(本実施の形態では右側)にややオフセットされた位置に配置されている。そして、これら縦ルーバ16は、それぞれ板状に形成されており、両面が整流面となっている。これら縦ルーバ16は、各整流面により、吹出部27(吹出口31)からの空調風の吹き出し方向と交差する方向、本実施の形態では前後方向に風向を調整可能となっている。また、これら縦ルーバ16のいずれかには、これら縦ルーバ16を連動して回動させるための操作ノブ41が一体的に設けられている。この操作ノブ41は、ハウジング21(横ルーバ18)を連動して回動させる際にも用いられる。
【0027】
リンク17は、例えば縦ルーバ16の背面側、すなわち車室(吹出口31)に対して反対側である車外側(本実施の形態では右側)の位置に配置されている。このリンク17は、吹出口31の長手方向に沿って配置されている。
【0028】
横ルーバ18は、ダクト本体部25により空調風を導く所定方向、すなわち本実施の形態では前後方向に対して交差(直交)する方向に沿って吹出部27に複数配置されている。これら横ルーバ18は、上下方向に略等ピッチ(等ピッチも含む)に互いに離れて配置されている。また、これら横ルーバ18は、吹出口31の長手方向、すなわち本実施の形態では前後方向に沿って位置している。本実施の形態では、これら横ルーバ18は、それぞれハウジング21に固定され、このハウジング21と一体的に回動可能となっているが、フィニッシャ15(支持受部32(区画壁部36,37))にそれぞれ別個に回動可能に軸支され、リンクなどを介して連動して回動されるように構成されていてもよい。また、これら横ルーバ18は、縦ルーバ16に対して、吹出口31の開口面側に配置されている。そして、これら横ルーバ18は、それぞれ板状に形成されており、両面が整流面となっている。これら横ルーバ18は、各整流面により、吹出部27(吹出口31)からの空調風の吹き出し方向と交差する方向、本実施の形態では上下方向に風向を調整可能となっている。
【0029】
図5ないし
図7に示すハウジング21は、例えば枠状に形成されている。本実施の形態において、このハウジング21は、空間部39に収容可能な四角形枠状となっている。すなわち、このハウジング21は、一対の側面部44,45と一対の端面部46,47とを一体的に備えている。また、このハウジング21には、取付面部48が一体的に形成されている。さらに、このハウジング21には、遮蔽部49が一体的に形成されている。
【0030】
側面部44,45は、本実施の形態において、例えば吹出口31の上下縁部に沿って形成され、フィニッシャ15の支持受部32の支持壁部34,35に近接して位置している。
【0031】
また、一方の端面部46は、吹出口31の一端部に沿って形成され、他方の端面部47は、吹出口31の他端部に対して他端側に離れた位置に形成されている。本実施の形態において、一方の端面部46は、吹出口31の前縁部、すなわち吹出部27の前縁部、換言すればダクト本体部25の壁部26及びフィニッシャ15の前側の区画壁部36に近接して位置し、他方の端面部47は、吹出口31の後縁部から後側に離れて吹出部27の後縁部及びフィニッシャ15の後側の区画壁部37に近接して位置している。このため、ハウジング21は、吹出口31のダクト本体部25により空調風を導く所定方向、本実施の形態では前後方向の寸法L1が、吹出口31の寸法L2よりも長く形成されている(L1>L2、
図5)。そして、各端面部46,47には、ハウジング21の回動用の回動軸51,52が吹出口31側とは反対側の面に突設されている。これら回動軸51,52は、フィニッシャ15の支持受部32(区画壁部36,37)に設けられた例えば丸孔状の受け部54,55に挿入されることでフィニッシャ15(吹出口31)に対してハウジング21が回動可能に軸支される。
【0032】
取付面部48は、端面部46,47の間にてこれら端面部46,47に対して平行(略平行も含む)に位置している。この取付面部48には、端面部46との間に、横ルーバ18が橋架されている。この取付面部48は、端面部46に対して、吹出口31の寸法L2と略等しい距離離れた位置に形成されている。したがって、ハウジング21には、側面部44,45、端面部46及び取付面部48に囲まれる通気部57が形成されている。
【0033】
遮蔽部49は、吹出部27にて壁部26側、本実施の形態では後側から前側に向かって延びている。本実施の形態において、この遮蔽部49は、ハウジング21の端面部47から吹出口31側(通気部57側)に向かって壁状に延びて形成されている。例えば、この遮蔽部49の長手方向、本実施の形態では前後方向の寸法L3は、ハウジング21の寸法L1よりも小さく、本実施の形態ではさらに吹出口31の寸法L2よりも小さい(L1>L2>L3、
図5)。また、この遮蔽部49の寸法L3と吹出口31の寸法L2との和は、ハウジング21の寸法L1と略等しい(L1≒L2+L3)。さらに、この遮蔽部49は、側面部44,45、端面部47、及び取付面部48と連続して形成されている。このため、ハウジング21は、通気部57に対して長手方向に隣接する位置の吹出口31側が遮蔽部49により覆われて閉塞されている。この遮蔽部49は、一部の縦ルーバ16、本実施の形態では壁部26側の複数の縦ルーバ16に対して、空調風の吹き出し方向下流側、すなわち車室側(本実施の形態では左側)に所定距離、離れて対向して位置している。すなわち、この遮蔽部49により車室側が覆われた縦ルーバ16は、吹出口31に対して露出しない、第1フィンとしての非露出フィンである非露出縦ルーバ16aとなっている。本実施の形態において、非露出縦ルーバ16aは、例えば3つ設定され、遮蔽部49及びフィニッシャ15により車室側が覆われて位置している。換言すれば、縦ルーバ16のうち、非露出縦ルーバ16a以外のものは、通気部57を介して吹出口31に露出する、第2フィンとしての露出フィンである露出縦ルーバ16bとなっている。つまり、ハウジング21には、通気部57に対して長手方向に隣接する位置に、壁部26から吹出口31へと、通気部57に連通して閉じ通路58が形成されている。閉じ通路58は、縦ルーバ16を挟んでダクト本体部25と対向する側、本実施の形態では車室側に位置し、端部が壁部26により閉塞されているとともに、非露出縦ルーバ16aを収容している。また、遮蔽部49の背面側、すなわち縦ルーバ16(非露出縦ルーバ16a)と対向する側には、空調風を吹出口31(通気部57)側へとガイドするガイド部59が形成されている。このガイド部59は、本実施の形態において、例えば遮蔽部49に形成された複数の溝部とするが、リブなどとすることもできる。このガイド部59は、ダクト本体部25により空調風を導く所定方向、本実施の形態では前後方向に沿って形成され、上下に複数設定されている。
【0034】
そして、風向調整装置10は、予め成形されたハウジング21内に縦ルーバ16をそれぞれ取り付けるとともに、これら縦ルーバ16をリンク17により連結する。さらに、この縦ルーバ16及びリンク17を取り付けたハウジング21を、予め成形されたフィニッシャ15の支持受部32に対して、回動軸51,52を受け部54,55に嵌合させる。この結果、ハウジング21が支持受部32により囲まれる空間部39内に回動可能に配置され、風向調整装置10が完成される。
【0035】
この後、完成された風向調整装置10を、予め設置されたダクト11に対して、フィニッシャ15により吹出部27を覆うように取り付けることで、空調装置12が完成する。この状態で、ダクト11のダクト本体部25に設けられた壁部26に対して、風向調整装置10の遮蔽部49側が近接して位置し、壁部26と遮蔽部49とによって、ダクト本体部25(ダクト11)の下流端の位置に、コ字状に折り返された閉じ通路58が形成される。この状態で、縦ルーバ16のうち、非露出縦ルーバ16aに対向して遮蔽部49が位置し、縦ルーバ16の残りの他である露出縦ルーバ16bと、横ルーバ18との位置に吹出口31が位置する。そして、操作ノブ41を摘んだ乗員がこの操作ノブ41を前後に振ることでリンク17を介して互いに連結された縦ルーバ16が、互いに略平行な角度を保ちつつ前後に回動する。また、操作ノブ41を摘んだ乗員がこの操作ノブ41を上下に振ることでハウジング21がフィニッシャ15に対して回動し、縦ルーバ16とともに横ルーバ18が上下に回動する。
【0036】
そして、風向調整装置10は、空調装置本体から供給された空調風がダクト11のダクト本体部25により後方へと導かれ、吹出部27から風向調整装置10側へと流れる。このとき、吹出部27からハウジング21の通気部57を介して吹出口31へと直接流れる主流の空調風は、縦ルーバ16の露出縦ルーバ16bの整流面に沿って整流される。また、壁部26に突き当たった空調風は、この壁部26に近接して位置する縦ルーバ16の各非露出縦ルーバ16aの整流面に沿って遮蔽部49側へと流れ、壁部26と遮蔽部49との間のコ字状の閉じ通路58に溜められ、遮蔽部49に沿って、この遮蔽部49によってダクト本体部25により空調風を導く方向と反対方向へと、すなわち吹出口31へとガイド部59によりガイドされる。
【0037】
この後、空調風は、横ルーバ18の整流面に沿って整流され、吹出口31から乗員側、すなわち車室内に吹き出される。
【0038】
例えば、
図1に示す中立位置から、
図2に示すように縦ルーバ16を前方に振った場合、吹出部27の縦ルーバ16の露出縦ルーバ16bの整流面に沿って前方に整流される主流の空調風に対して、壁部26に突き当たって閉じ通路58を縦ルーバ16の各非露出縦ルーバ16aの整流面に沿って遮蔽部49側を介して吹出口31へと、ダクト本体部25により空調風を導く所定方向とは反対方向に向かってガイド部59により前方にガイドされて流速が増した空調風が混ざり、縦ルーバ16の振り角度よりも大きく前方に風向が調整される。なお、本実施の形態においては、縦ルーバ16を前方に最大に振った場合、隣り合うすべての縦ルーバ16どうしが互いに重なることで、空調風を遮断(シャット)する。
【0039】
同様に、
図1に示す中立位置から、
図3に示すように縦ルーバ16を後方に振った場合、吹出部27の縦ルーバ16の露出縦ルーバ16bの整流面に沿って後方に整流される主流の空調風に対して、壁部26に突き当たって閉じ通路58を縦ルーバ16の各非露出縦ルーバ16aの整流面に沿って遮蔽部49側を介して吹出口31へと、ダクト本体部25により空調風を導く所定方向とは反対方向に向かってガイド部59により前方にガイドされて流速が増した空調風が混ざり、縦ルーバ16の振り角度よりも大きく後方に風向が調整される。
【0040】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、所定方向に沿って吹出部27に縦ルーバ16を複数配置するとともに、フィンを挟んでダクトのダクト本体部と対向する側に、端部がダクトの壁部により閉塞される閉じ通路を形成することで、フィンにより風向を調整する際に、壁部26に突き当たって閉じ通路58を流れる空調風が、縦ルーバ16(露出縦ルーバ16b)により直接風向制御される空調風の流速を高め、レイアウト上の制限がある場合でも風向の適切な調整が可能となる。
【0041】
また、閉じ通路58において、ダクト11の壁部26側の一部の縦ルーバ16(非露出縦ルーバ16a)の吹き出し方向下流側を遮蔽部49により覆い、少なくとも残りの他の縦ルーバ16(露出縦ルーバ16b)の吹き出し方向下流側に吹出口31を開口することで、縦ルーバ16により風向を調整する際に、壁部26に突き当たって閉じ通路58を流れる空調風を、遮蔽部49から吹出口31側へと整流して、縦ルーバ16(露出縦ルーバ16b)により直接風向制御される空調風の流速をより効果的に高めることができる。
【0042】
すなわち、空調装置本体からの空調風の経路がレイアウトの制限上遠くなると、風速が弱まって乗員のターゲットポイントに空調風が届きにくくなるため、閉じ通路58(遮蔽部49及びその背面側の縦ルーバ16)によって壁部26を利用して空調風を溜めて流速の低下を抑制し、乗員のターゲットポイントに空調風の束を向けることができる。このため、車両のレイアウトによって吹出口31を乗員のターゲットポイントから離れた位置にしかレイアウトできない条件であっても、閉じ通路58(遮蔽部49及びその背面側の縦ルーバ16)によって風向制御性をリカバリできる。
【0043】
また、遮蔽部49の縦ルーバ16(非露出縦ルーバ16a)に対向する位置に、空調風を吹出口31側へとガイドするガイド部59を設けることで、ダクト11の壁部26に突き当たって遮蔽部49により吹出口31へと流れる空調風の流速をガイド部59によって高め、風向をより適切に調整可能になるとともに、風切り音(笛吹音)などの雑音の発生を抑制できる。
【0044】
さらに、フィニッシャ15の吹出口31の側方の背面側にハウジング21を設定できるため、フィニッシャ15のデザインの幅が広がる。
【0045】
また、遮蔽部49は、ハウジング21に一体に設けることで、遮蔽部49を形成するための専用の成形型などが不要であり、低コストで風向調整装置10を製造できる。
【0046】
そして、例えば車両の車室の側部など、スペースが取りにくくレイアウト上に制限がある位置に空調装置12が配置されていても、上記の風向調整装置10により風向を適切に調整できる。
【0047】
なお、上記の第1の実施の形態において、
図9及び
図10に示す第2の実施の形態のように、フィニッシャ15の吹出口31をハウジング21の遮蔽部49の前方の位置まで拡張して開口させても、同様の作用効果を奏することができる。
【0048】
また、遮蔽部49は、ハウジング21に代えて、フィニッシャ15に設けてもよい。
【0049】
さらに、縦ルーバ16には、遮蔽部49の背面に位置する非露出縦ルーバ16aが設定されていなくてもよい。つまり、ダクト11の一部を延長して閉じ通路58を構成し、縦ルーバ16は吹出口31に対向する位置にのみ配置されているように構成されていてもよい。
【0050】
また、上記の各実施の形態において、空調装置12は、車両用のものだけでなく、任意の空調装置として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、例えば、自動車の車室側部や天井などに備えられる車両用空調装置の風向調整装置として適用できる。
【符号の説明】
【0052】
10 風向調整装置
11 ダクト
12 空調装置
16 フィンである縦ルーバ
25 ダクト本体部
26 壁部
27 吹出部
31 吹出口
49 遮蔽部
58 閉じ通路
59 ガイド部