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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/03 20060101AFI20230413BHJP
   A61F 9/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
A61F7/08 334Q
A61F9/04 300
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018246811
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2019162411
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018046321
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】陳 貞儒
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-314618(JP,A)
【文献】国際公開第2006/001066(WO,A1)
【文献】特開2008-295779(JP,A)
【文献】特開2008-125657(JP,A)
【文献】実開昭60-023049(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/03
A61F 9/04
A61B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両目を覆うマスク本体と、前記マスク本体に設けられた発熱体と、前記マスク本体の長手方向両端部にそれぞれ接合され、当該マスク本体により着用者の両目を覆うように保持する一対の耳掛け部と、を備え、
前記耳掛け部が、前記耳掛け部の下側の外縁から前記開口部に向かうスリットを備え、
以下の条件を満たす、マスク。
(条件)
前記耳掛け部が耳掛け用の開口部を有し、
当該開口部の最大長さ方向に対し垂直な方向において、前記耳掛け部のうち前記開口部より上方に位置する部分の幅の最小値をDa(cm)とし、前記耳掛け部のうち前記開口部より下方に位置する部分の幅の最小値をDb(cm)としたとき、Da/Dbが、1.3以上、15.0以下であり、
前記Dbを含む直線と、前記耳掛け部の下側の外縁とが交わる点から、前記耳掛け部と前記マスク本体部との接合部までの、前記外縁の長さをDc(cm)としたとき、Dcが、1cm以上、4.5cm以下である。
【請求項2】
Dbが、0.3cm以上、2.0cm未満である、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記スリットが複数である、請求項1または2に記載のマスク。
【請求項4】
前記耳掛け部を前記最大長さ方向に100%伸長させたときの応力が10N以下である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記耳かけ部は不織布である、請求項1乃至のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項6】
前記発熱体は、被酸化性金属の酸化反応により水蒸気を発生するものである、請求項1乃至のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記発熱体が一対であり、各々により両目が覆われるように配置されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、目および目元を覆うマスクの機能が多様化し、様々なマスクが開発されている。例えば、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を利用した発熱体を内部に収容した温熱効果を有するマスクが利用されている。なかでも、発熱体により着用者の目を温め、左右の耳に一対の耳掛け部をひっかけて使用されるアイマスクは、軽量で簡便に用いられること等から、広く好まれている。
【0003】
一方で、アイマスクに対する期待はますます高まっている。たとえば、特許文献1には、耳掛け部を耳にかけやすく、マスク本体を顔にフィットさせやすくする観点から、耳掛け部連結部の位置や開口部の形状、およびスリット等を特定したアイマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-295779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、温熱効果を有するアイマスクの使用態様が多様化し、着用者が上体を起こして使用する態様だけではなく、仰臥位であったり、更には側臥位で使用する態様も生じてきた。このような場合、温熱効果を十分に得るためには、アイマスクが着用者にできるだけフィットすることが求められる。そのため、特許文献1に開示されるような従来のアイマスクにおいては、フィット感において改善の余地があった。
【0006】
ここで、アイマスクのフィット感を向上させるために、特段の工夫をすることなく、たとえば、アイマスクの横幅方向の長さを縮めて着用者の顔に温熱具を密着させようとした場合には、着用者の耳かけ部が装着された部分や耳裏において耳掛部による応力が高くなり、圧迫感が生じる傾向があった。
そこで、本発明者は、耳かけ部が装着された部分や耳裏における圧迫感を低減しつつ、側臥位の場合でもマスクの位置ずれを抑制する観点から鋭意検討を行ったところ、マスクを着用した際、着用者の目尻からこめかみ、目尻から耳たぶにかけての範囲を押さえつけないようにしつつ、着用者の眉付近をしっかり押さえることで、かかるマスクの横ずれを効果的に抑制し、フィット感を向上させつつ、圧迫感を低減できることを知見した。そして、マスクにおいて、フィット感と圧迫感との良好なバランスを得つつ、側臥位においても、広い範囲を均一に温め、全身のリラックス感を向上させるという課題を解決する観点から、さらに検討を進めた結果、マスクが特定の条件を満たすことが当該課題を解決する指針として有効なことを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、両目を覆うマスク本体と、前記マスク本体に設けられた発熱体と、前記マスク本体の長手方向両端部にそれぞれ接合され、当該マスク本体により着用者の両目を覆うように保持する一対の耳掛け部と、を備え、以下の条件を満たす、マスクを提供する。
(条件)
前記耳掛け部が耳掛け用の開口部を有し、
当該開口部の最大長さ方向に対し垂直な方向において、前記耳掛け部のうち前記開口部より上方に位置する部分の幅の最小値をDa(cm)とし、前記耳掛け部のうち前記開口部より下方に位置する部分の幅の最小値をDb(cm)としたとき、Da/Dbが、1.3以上、15.0以下であり、
前記Dbを含む直線と、前記耳掛け部の下側の外縁とが交わる点から、前記耳掛け部と前記マスク本体部との接合部までの、前記外縁の長さをDc(cm)としたとき、Dcが、1cm以上、4.5cm以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フィット感と圧迫感との良好なバランスが得られるマスクを提供することができる。また、本発明のマスクは、従来よりも広い範囲を温め、またフィット感の向上に伴い均一な温まり感が得られ、全身のリラックス感がより一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る温熱具の耳掛け部を開いた状態を模式的に示した平面図である。
図2】実施の形態に係る温熱具の耳掛け部を開く前の状態を模式的に示した平面図である。
図3図1に示す温熱具の分解斜視図である。
図4】実施の形態に係る発熱体を模式的に示した平面図である。
図5】実施の形態に係る発熱体を模式的に示した断面図である。
図6】実施形態に係る温熱具の変形例を模式的に示した平面図である。
図7】実施例1の温熱具の耳掛け部を模式的に示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、透気性と通気性とは同意である。
【0011】
[温熱具]
まず、本実施形態に係る温熱具50の一例について、図1図3に基づいて説明する。
本実施形態に係る温熱具50は、いわゆる温熱効果を有するアイマスクであり、マスク本体部51により着用者の両目を覆い、マスク本体部51に設けられた一対の発熱体100から、所定温度に加熱された水蒸気を目およびその周囲に付与するために用いられるものである。ただし、マスクの態様は、本実施形態のものに限定されない。
【0012】
図1に示すように、温熱具50は、マスク本体部51と、耳が挿入される孔54(54L、54R)がそれぞれ形成された一対の耳掛部52(52L、52R)とを有している。
【0013】
温熱具50は、各耳掛部52を着用者の耳に掛けて、マスク本体部51で着用者の両目を覆うように装着される。この着用状態下、後述する発熱体100から発生した温熱蒸気が着用者の目に施されるように構成されている。
【0014】
図2は、温熱具50の耳掛部52を開く前の状態を模式的に示した平面図である。同図において、一対の耳掛部52は、温熱具50の内方に向けて互いに折りたたまれ、マスク本体部51縦中央部において、互いに接合されている。接合された領域には、ミシン目またはハーフカット溝が設けられている。すなわち、一連に形成された一対の耳掛部52を2等分するようにミシン目またはハーフカット溝が設けられ、これを着用者が切り離することによって、耳掛部52Lと、耳掛部52Rとが得られるようになっている。その後、耳掛部52Lと、耳掛部52Rとを外方に向けて反転させることにより、図1の状態とすることができる。図1に示すように、耳掛部52をマスク本体部51から外側に向かって開いたとき、耳掛部52は、平面視においてハの字形状となっている。また、耳掛部52をマスク本体部51から外側に向かって開いたとき、孔52がマスク本体部51の長手方向に対して下方に傾いて延びている。
このような配置を取る事により、より一層着用時にマスク本体部51が顔にフィットしやすくなる。
【0015】
図3は、図1に示す温熱具50の分解斜視図である。図3に示されるように、マスク本体部51は袋体53から構成され、袋体53の内部に一対の発熱体100が設けられている。
【0016】
マスク本体部51は、長手方向Xとこれに直交する幅方向Yを有する横長の形状であり、ほぼ左右対称である。また、マスク本体部51は、可撓性の柔軟なシートにより構成されており、伸縮性を有していても有していなくてもよいが、眉付近に温熱具50をしっかりと押さえつけ、フィット感をより一層強く感じさせる観点から、伸縮性がある方が好ましい。
【0017】
マスク本体部51を構成する袋体53は、着用者の肌面に近い側に位置する第1袋体シート531と、着用者の肌面から遠い側に位置する第2袋体シート532とを有している。ここで、後述する発熱体100を挟み込むように、第1袋体シート531と第2袋体シート532とが設けられる。
【0018】
第1袋体シート531および第2袋体シート532は同形であり、略長円形をしている。そして、第1袋体シート531および第2袋体シート532の外形がマスク本体部51の外形をなしている。第1袋体シート531および第2袋体シート532はそれらを重ね合わせ、それらの周縁部を少なくとも一部接合し、かつY方向の中央部をX方向に沿って接合することで、袋体53となる。第1袋体シート531および第2袋体シート532を接合するためには、たとえばホットメルト接着剤を用いることができる。なお、発熱体100は接着剤やヒートシール等により、袋体53に固定されていてもよい。
【0019】
第1袋体シート531および第2袋体シート532としては、内部の発熱体100への空気の供給が十分にできるものが好ましく、たとえば、不織布をはじめとする繊維シートを使用できる。たとえば、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布およびスパンボンド不織布から選択される1種または2種以上を使用できる。
【0020】
袋体53には、そのY方向に延びる2つの長辺の中央部の位置において、該長辺からX方向に沿って内方に切れ込んだ略V字形のノッチ部57(ノッチ部571、ノッチ部572)がそれぞれ形成されている。ノッチ部571、およびノッチ部572は、切れ込みの程度が異なっている。ノッチ部571は、温熱具50を装着したときに、着用者の眉間またはその近傍に位置する。ノッチ部572は、温熱具50を装着したときに、着用者の鼻梁に位置する。したがって、通常、ノッチ部571よりもノッチ部572の方が切れ込みの程度が大きくなっている。
【0021】
さらに、図1に示すように、袋体53には、ノッチ部572に繋がるスリット32が、袋体53中央部であって発熱体100を離隔する領域において、袋体53の下端から延在している。スリット32により、着用感を向上しやすくなる。
【0022】
温熱具50における耳掛部52は、使用前の状態では、図3に示すように、第1袋体シート531上に配置されている。使用前の状態、すなわち左右の耳掛部52が第1袋体シート531上に位置している状態においては、左右の耳掛部52によって形成される輪郭は、第1袋体シート531の輪郭とほぼ同じになっている。
【0023】
耳掛部52は、温熱具50を着用者の顔に保持するための機能を有する。
耳掛部52は一対で用いられ、耳掛部52L、耳掛部52Rは、マスク本体部51の長手方向(X方向)の各端部にそれぞれ取り付けられている。より詳細には、耳掛部52において、マスク本体部51側を基端とし、マスク本体部51から遠い側を先端としたとき、耳掛部52の基端側の領域と、マスク本体部51の着用者側のシート(第1袋体シート531)とが接合されている。
また、耳掛部52L、および耳掛部52Rとはそれぞれマスク本体部51と重なり合う接合領域を有している。
【0024】
図1に示すように、耳掛部52は、下側の外縁から孔54に向かうスリット31を備えている。これにより、後述するLa方向において、耳掛部52の孔54より下方に位置する部分であって、装着時に目尻と耳たぶとの間で本体部51を支える部分の幅が小さくなっている。図1の温熱具50において、後述するDb(cm)は、孔54からスリット31の上端までの長さとなっている。また、図1の温熱具50において、スリット31は、Db(cm)を含む直線上に備えられている。
【0025】
図1には、スリット31と、耳掛部52の下側の外縁とが交わる点から、耳掛部52とマスク本体部51との接合部までの、耳掛部52の下側の外縁の長さDc(cm)が示されている。温熱具50において、Dcは1cm以上、4.5cm以下であり、耳掛部52において使用時に応力が集中しやすい範囲である。言い換えると、本実施形態において、Db(cm)を含む直線が、耳掛部52の下側の外縁のうち、耳掛部52とマスク本体部51との接合部からの長さが1cm~4.5cmの範囲内において、耳掛部52の下側の外縁と交わっている。これにより、温熱具50を装着した際、応力を効果的に低減することができ、耳かけ部52の目尻から耳たぶにかけて肌に当たる部分が引き延ばされて細くなる事で圧迫感が低減されると同時に、耳掛部52の孔54よりも下方における領域の伸長性を高めることができる結果、フィット感を保持しつつ圧迫感を低減しやすくなる。
【0026】
Dcは、フィット感と圧迫感のバランスを向上する観点から、好ましくは、1.5cm以上、4.0cm以下であり、より好ましくは、1.8cm以上、2.5cm以下である。
【0027】
スリット31の長さは、特に限定されないが、後述するDb(cm)を適切な範囲にするように、調整されることが好ましい。たとえば、スリット31の長さは、0.3cm以上、3.5cm以下とすることができる。
また、スリット31は、耳掛部52の伸長方向に対して、垂直な方向に備えられていてもよく、ななめ方向に備えられていてもよい。スリット31の切り込みの切片が温熱具50の装着時に使用者の肌にあたりにくくする観点から、スリット31は耳かけ部52の伸長方向に対して垂直な方向に備えられていることが好ましい。
【0028】
スリット31は、フィット感と圧迫感のバランスを制御しやすくする観点から、耳掛部52の下側の外縁のみに設けられていることが好ましい。言い換えると、耳掛部52は、上側の外縁にスリットを備えないことが好ましい。
【0029】
スリット31は、温熱具50が使用される前から設けられたものであってもよく、温熱具50が使用される前に、予め設けられた破線部を着用者が破断することによって形成されるものであってもよい。
【0030】
耳掛部52は、La方向に伸長性を有することが好ましい。具体的には温熱具50において、耳掛部52を、後述するLa方向に100%伸長させたときの応力(N)は、10N以下であることが好ましく、5N以下であることがより好ましい。これにより、フィット感と圧迫感のバランスをさらに向上できるとともに、使用時において耳掛部52を伸長しやすくし、耳掛部52を耳にかけやすくできる。さらに、フィット感を得る観点から、耳掛部52におけるLa方向における100%伸長時応力(N)は、1.5N以上であることが好ましい。
【0031】
なお、耳掛部52における伸長時の応力(N)は、JIS L1913を参考にした方法により測定することができる。
すなわち、試料幅を80±10mmとし、当該試料を引張り試験器での初期長さを55±15mmに設定し、引張速度300mm/minにて、La方向に規定の長さ(100%伸長時応力であれば、初期長さの100%の長さ、50%伸長時応力であれば、初期長さの50%の長さ)伸長させた際の引張強さを測定する。
具体的には、実施例において後述する。
【0032】
耳掛部52は、単層のシートにより構成されていてもよいし、複数のシートの積層体であってもよい。耳掛部52としては、不織布等の繊維材料からなる繊維シートを用いることができる。耳掛部52は、上述した袋体53と同様の材料を用いたものであってもよいし、異なる材料を用いたものであってよい。フィット感と圧迫感のバランスを制御しやすくする観点から、耳掛部52は、不織布であることが好ましい。
【0033】
一対の耳掛部52の平面形状は特に限定されないが、マスク本体部51を縦中央線で二等分したときのマスク本体部51の右側の平面形状と左側の平面形状とそれぞれ同一の形状であることが好ましい。例えば、略正方形状が挙げられる。
【0034】
孔54は、耳掛部52を着用者の耳にかけるための穴であり、耳掛部52を貫通している開口である。孔54は、耳掛部52のほぼ中央に設けられている。また、孔54は、マスク本体部51と耳掛部52とが接合した接合領域を除く領域に形成されている。
【0035】
孔54の形状は、特に限定されないが、図1,2においては、横幅方向に長尺であり、耳掛部52の基端から先端に向かって広がる角丸略三角状(しずく状)となっている。また、孔54は、上下対称であっても対称でなくてもよい。すなわち、上下において曲率半径が同じでも異なっていてもよい。また、孔54は耳かけ部52をマスク本体部51から外側に向かって開いた時、孔54がマスク本体部51の長手方向に対して下方に延びて傾いている。
【0036】
耳掛部52の孔54は、開口面積を調整し、耳が大きい人及び耳が小さい人の何れに対しても対応することができるよう、孔54の外郭近傍において、孔54の外郭から耳掛部52の外周に向かって延在する1又は2以上のスリットが設けられていてもよい。かかるスリットは、耳掛部52を耳に掛けるときに必要に応じて開くことができ、開口面積を調整できる。
【0037】
[発熱体]
つぎに、温熱具50に備えられる発熱体100について説明する。本実施形態において、一対の発熱体100が温熱具50に配され、それぞれの発熱体100が着用者の目を覆うこととなる。
【0038】
発熱体100の平面形状は、略正方形である。発熱体100の剛性は、マスク本体部51の剛性よりも大きく、発熱体100全体はマスク本体部51よりも伸縮しにくい。
【0039】
図4は、本実施形態の発熱体100の一例を示す平面図である。また、図5は、図4のA-A断面図である。本実施形態の発熱体100は、発熱部10と、発熱部10を収容する収容体20とを備える。
【0040】
発熱部10は、被酸化性金属、炭素成分、吸水剤、水および反応促進剤等を含む。
具体的には、発熱部10は、被酸化性金属の酸化反応によって発熱して温熱効果を付与するものであり、JIS S4100に準拠した測定において、発熱温度30℃以上70℃以下の性能を有するものを使用することができる。また、発熱部10は含まれる水が加熱されることにより、水蒸気を発生するという作用をもたらす。
【0041】
被酸化性金属は、酸化反応熱を発する金属であり、たとえば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、およびカルシウムからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属の粉末や繊維が挙げられる。
【0042】
炭素成分は、保水能、酸素供給能、および触媒能を有するものであり、たとえば、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、および黒鉛からなる群から選ばれる1種または2種以上の材料を用いることができる。
【0043】
発熱部10中には、水分を保持し、被酸化性金属の酸化反応を効率よく進行させるため、吸水剤を含ませることができる。吸水剤として、吸水性を有するポリマーや、吸水性を有する粉体を用いることができる。
【0044】
本実施形態においては発熱部10がシート状である態様を示したが、この発熱部10は、粉体状であってもよいし、シート状であってもよい。しかしながら、使用感に優れる点から、シート状であることが好ましい。このようなシート状の発熱体は繊維と共に抄造する方法、塗工する方法、ブレス等で圧密する方法など、任意の方法で得られる。
【0045】
発熱部10の厚みは、適度な剛性を得る観点から、好ましくは0.2mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上である。また、発熱部10の厚みは、取扱い性を良好にする観点から、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは3mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下である。
発熱部10の厚みを上記範囲とすることで、発熱効果を高めつつ、発熱体100を使用しやすいサイズにすることができる。また、発熱部10においては、適度な剛性を有するため、温熱具50の装着時にフィット感をより強く感じる事ができる。
なお、この発熱部10の厚みは平均厚みを示す。
【0046】
つづいて、発熱体100を構成する収容体20について説明する。
収容体20は、少なくとも一部が透気性であり、発熱部10を収容するものである。収容体20は、たとえば、図5に示すように2枚のシート(第1収容体シート201、第2収容体シート202)の周縁部203を貼り合せて構成することができる。
なお、第1収容体シート201は発熱部10よりも着用者の肌側に位置されるものであり、第2収容体シート202は発熱部10よりも着用者の肌から遠い側に位置されるものである。温熱具50が水蒸気を目又は皮膚に供給する場合、水蒸気を効率的に人の目や皮膚に与える観点から、第1収容体シート201は、透気性に長けているシートであることが好ましく、一方、第2収容体シート202は、透気性に乏しいシートであることが好ましい。すなわち、第2収容体シート202は、第1収容体シート201より透気性に乏しい事が好ましく、非通気である事がより好ましい。言い換えると、第2収容体シート202の通気度は、第1収容体シート201の通気度よりも高いことが好ましい。
【0047】
発熱部10が被酸化金属の酸化による発熱機能を有するものである場合、温熱具50によって水蒸気を効率的に目や皮膚に与えるために上述のように第1収容体シート201と第2収容体シート202の透気性を調整すると、発熱部10においては、第1収容シート201側より空気を優先的に取り込み、発熱反応を進行させることとなる。そのため、フィット感と発熱反応のバランスを取り、適度に目又は皮膚を加温する観点から、第1収容シート201の通気度は、3,000~6,000秒/100mlが好ましく、4,000~6,000秒/100mlがより好ましい。
【0048】
なお、「通気度」は、JIS P8117によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.45cm の面積を通過する時間で定義される。
【0049】
透気性シートとしては、樹脂製の多孔質シートや通気穴を有する樹脂製のシートを用いることができ、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびエチレン酢酸ビニル共重合体の1種または2種以上を使用することができる。
【0050】
第2収容体シート202としては、実質的に酸素を透過しないものを用いることができ、たとえば、ポリエチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニリデン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスルフォンおよびポリアミドの1種または2種以上を使用することができる。
【0051】
なお、本実施形態の温熱具50は、酸素により酸化される被酸化性金属を有するため、通常、酸素遮断袋に封入されて保管される。
【0052】
本実施形態の温熱具50は、両目を覆うマスク本体部51と、マスク本体部51に設けられた発熱体100と、マスク本体部51の長手方向両端部にそれぞれ接合され、マスク本体部51により着用者の両目を覆うように保持する一対の耳掛部52(52L、52R)と、を備え、以下の条件を満たすものである。
(条件)
耳掛部52が耳掛け用の孔54を有し、
孔54の最大長さ方向に対し垂直な方向において、耳掛部52のうち孔54より上方に位置する部分の幅の最小値をDa(cm)とし、耳掛部52のうち孔54より下方に位置する部分の幅の最小値をDb(cm)としたとき、Da/Dbが、1.3以上、15.0以下であり、Dbを含む直線と、耳掛部52の下側の外縁とが交わる点から、耳掛部52とマスク本体部51との接合部までの、上記外縁の長さをDc(cm)としたとき、Dcが、1cm以上、4.5cm以下である。
【0053】
ここで、孔54の最大長さとは、温熱具50を使用する前の状態における耳掛部52において、負荷を与えないときの長さLa(cm)である。温熱具50においては、図1,2に示されるように、孔54はX方向両端が円弧状になっており、当該円弧の最も深い点同士を結んだ直線が、La(cm)となる。孔54の最大長さ方向とは、La方向に平行な方向である。
なお、孔54LにおけるLaと、孔54RにおけるLaとが異なる場合、孔54のLaとは、両者の平均値とする。また、耳掛部52が、孔54の外縁の一部から耳掛部52の外縁に延在するスリットを有している場合、当該スリットは、最大長さLaには含まれない。さらに、孔54が開口面積を有していない切れ込みからなるマスクの場合(例えばT字形状の切れ込み)においては、孔54に相当するLa方向に延びる開口部の両端の頂点を結んだ直線が、La(cm))となる。また、マスク本体51と耳掛部52が一体になったもの(連なった1枚のシート)であってもよい。
【0054】
温熱具50において、耳掛部52のうち孔54より下方に位置する部分の幅の最小値Db(cm)は、スリット31の上端部から孔54までのLa方向に対し垂直な方向における長さとなっている。言い換えると、耳掛部52の孔54のLaさ方向に対し垂直な方向において、スリット31により、耳掛部52の下方に位置する部分の幅が小さくなっている。
【0055】
温熱具50において、Da/Dbは、1.3以上、15.0以下である。すなわち、耳掛部52が、La方向に対し垂直な方向において、孔54の下方に位置する部分の幅が孔54の上方に位置する部分の幅よりも小さい領域を備えることで、使用者の頬周辺から耳たぶ周辺において肌に接触する領域が小さくなり、また、耳掛部52を引き延ばして温熱具50を装着した際、マスク本体部51の上端部が着用者の眉付近にフィットしやすくなるとともに、耳掛部52の下方が伸長しやすくなるとともに下方に応力が集中することを抑制し、耳掛部52が装着された部分や耳裏に対する圧迫感を低下しやすくなる。なかでも、目尻から耳たぶまでの領域における応力を低減できる。さらに、Da/Dbは15.0以下であるため、耳掛け部の強度(例えば、耳掛部52の下方から切れないこと)、フィット感を維持しながら圧迫感の低減もできる。
Da/Dbは、耳掛部52の下方を伸長しやすくし、圧迫感を低減する観点から、好ましくは、1.7以上、より好ましくは、2.0以上、さらに好ましくは、2.5以上である。一方、Da/Dbは、フィット感を得る観点から、好ましくは、12以下、より好ましくは、7.0以下、さらに好ましくは、5.0以下である。
【0056】
また、温熱具50において、Daは、0.5cm以上、4.0cm以下であることが好ましく、耳掛部52の強度を保持する観点から、Daは、より好ましくは、0.8cm以上であり、さらに好ましくは、1.0cm以上であり、よりさらに好ましくは2.0cm以上であり、より一層さらに好ましくは2.5cm以上である。一方、耳掛部52の圧迫感を低減する観点から、Daは、より好ましくは、3.5cm以下であり、さらに好ましくは、3.3cm以下である。
【0057】
さらに、温熱具50において、フィット感の向上と圧迫感の低減を両立させる観点から、Dbは、0.3cm以上、2.0cm未満であることが好ましい。耳掛部52の強度を保持する観点とフィット感を向上する観点から、Dbは、より好ましくは、0.5cm以上であり、さらに好ましくは、0.6cm以上である。一方、耳掛部52のフィット感を保持しながら、伸長性を向上させて圧迫感を効果的に抑制する観点から、Dbは、より好ましくは、1.5cm以下であり、さらに好ましくは、1.3cm以下である。
【0058】
ここで、アイマスクタイプの温熱具50においては、わずかな隙間であっても温熱効果への影響が顕著になる傾向あり、また、場合によっては、隙間から酸素が入り込むことで、過剰な発熱が発生することもある。そのため、より高水準でのフィット感が求められる。一方で、フィット感と圧迫感とは、いわゆるトレードオフの関係にあるため、着用者にかかる負荷のバランスを温熱具50全体において適切に制御することが重要となる。
本実施形態における温熱具50において、上記の条件を満たすことによって、温熱具50が着用者の眉付近において密着しやすくなり、フィット感を向上させることができるとともに、着用者の耳掛部52が装着された部分や耳裏にかかる負荷を低減し、圧迫感を抑制でき、温熱具50による温熱効果を十分に得ることができるようになる。また、フィット感の向上に伴い、温熱具50全体において、より均一な温熱効果が得られるようになる。さらに、温熱具50によれば、従来よりも広い範囲を温め、かつ、目元が効果的に温められることで、全身のリラックス感も得られやすくなる。
【0059】
以上、図面を参照ながら本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0060】
温熱具50においては、スリット31が一方の耳掛部52に対し、単数である場合について説明したが、フィット感と圧迫感のバランスを制御しやすくする観点から、スリット31は、一方の耳掛部52に対し、複数であってもよい。スリット31の数は、一方の耳掛部52において、2~6が好ましく、2~4がより好ましい。複数のスリット31は、互いに、同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。また、スリット31が延在する方向は、互いに平行であってもよく、平行でなくてもよい。なお、温熱具50において、スリット31は、孔54の最大長さ方向に対し垂直な方向に形成されているが、スリット31が延在する方向はこれに限られない。
【0061】
また、温熱具50においては、耳掛部52がスリット31を備える例について説明したが、例えば、図6に示すように、スリット31ではなく、切欠部41を備える温熱具61であってもよい。温熱具61において、Db(cm)は、切欠部41の頂点から、孔54までの、La方向に垂直な方向の長さとなる。温熱具61において、Dbを含む直線が、耳掛部52の下側の外縁のうち、耳掛部52とマスク本体部51との接合部からの長さが1cm~5cmの範囲内において、耳掛部52の下側の外縁と交わることが好ましい。
切欠部41の形状は特に限定されず、図6に示されるように、三角状であってもよく、円弧状であってもよく、一部に曲線を有するものであってもよい。また、切欠部41の数も特に限定されない。
【0062】
なお、上記は、耳掛部52がスリット31または切欠部41を有する場合の、孔54からの長さであるDb(cm)の説明である。一方、本実施形態の温熱具は、耳掛部52がスリット31または切欠部41を有する場合に限られず、これ以外の態様であってもよく、例えば、耳掛部の外形を変形したり、耳掛部に対する孔の位置が調節された態様であっても、Db(cm)は同様に求められる。
【0063】
また、耳かけ部のDa/Dbが1.3以上、15.0以下を満たすように調整するためには、耳掛部52が、La方向に対し垂直な方向において、孔54の下方に位置する部分の幅が孔54の上方に位置する部分の幅よりも小さい領域を備えるように、設計すればよい。例えば、耳掛部の、形状や大きさなどの外形を変形したり、耳掛部に対する孔の位置を調節したりすることによっても達成できる。
【0064】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のマスク、或いは用途等を開示する。本発明の温熱具50は、前述した実施形態に制限されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更可能である。
上記の実施形態においては、温熱具50の機能として酸化還元反応による発熱体100について説明したが、これに限られず、他の方法によって加温してもよく、また、保温、保湿、保冷、急冷、遮光、芳香、抗菌、押圧および防塵機能等を更に有してもよい。マスクとしては、温熱具50のような蒸気温熱機能を有するマスクの他、例えば、(1)更に遮光性の部材を用い、光を遮る目的の安眠マスク、(2)保温機能を有する部材を用い、電子レンジなどの加熱器でマスクを温めてから目を温めることのできるマスク、(3)保冷剤、冷感剤などの冷却部材と、発熱機能を組み合わせ、発熱による加温と共に目を冷やすこともできるマスク、(4)香り成分を有する部材を発熱体と共に用い、リラックス効果を与えるマスク、(5)ビーズや球体を備え、目に圧迫感を与えて指圧効果を奏するマスク、(6)電気などで振動させることによりマッサージ効果を奏するマスク、などに変更することが可能である。
【0065】
<1> 両目を覆うマスク本体と、前記マスク本体に設けられた発熱体と、前記マスク本体の長手方向両端部にそれぞれ接合され、当該マスク本体により着用者の両目を覆うように保持する一対の耳掛け部と、を備え、以下の条件を満たす、マスク。
(条件)
前記耳掛け部が耳掛け用の開口部を有し、
当該開口部の最大長さ方向に対し垂直な方向において、前記耳掛け部のうち前記開口部より上方に位置する部分の幅の最小値をDa(cm)とし、前記耳掛け部のうち前記開口部より下方に位置する部分の幅の最小値をDb(cm)としたとき、Da/Dbが、1.3以上、15.0以下であり、
前記Dbを含む直線と、前記耳掛け部の下側の外縁とが交わる点から、前記耳掛け部と前記マスク本体部との接合部までの、前記外縁の長さをDc(cm)としたとき、Dcが、1cm以上、4.5cm以下である。
<2> Dbが、0.3cm以上、2.0cm未満である、<1>に記載のマスク。
<3> 前記耳掛け部が、前記耳掛け部の下側の外縁から前記開口部に向かうスリットを備える<1>または<2>に記載のマスク。
<4> 前記スリットが複数である、<3>に記載のマスク。
<5> 前記耳掛け部を前記最大長さ方向に100%伸長させたときの応力が10N以下である、<1>乃至<4>のいずれか一つに記載のマスク。
<6> 前記耳かけ部は不織布である、<1>乃至<5>のいずれか一つに記載のマスク。
<7> 前記発熱体は、被酸化性金属の酸化反応により水蒸気を発生するものである、<1>乃至<6>のいずれか一つに記載のマスク。
<8> 前記発熱体が一対であり、各々により両目が覆われるように配置されている、<1>乃至<7>のいずれか一つに記載のマスク。
<9> 前記耳掛部をマスク本体から外側に向かって開いたとき、前記耳掛け用の前記開口部が前記マスク本体の長手方向に対して下方に傾いて延びている、<1>乃至<8>のいずれか一つに記載のマスク。
<10> 前記耳掛部をマスク本体から外側に向かって開いたとき、前記耳掛部が平面視においてハの字形状となっている、<1>乃至<9>のいずれか一つに記載のマスク。
<11> 前記発熱体は、発熱部と、前記発熱部を内部に収容する収容体と、を備え、
前記発熱部の厚みが、好ましくは0.2mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上であり、さらに好ましくは0.5mm以上であり、一方、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは3mm以下であり、さらに好ましくは2mm以下である、<1>乃至<10>のいずれか一つに記載のマスク。
<12> 前記収容体は、前記発熱部よりも着用者の肌側に位置される第1収容体シートと、前記発熱部よりも着用者の肌から遠い側に位置される第2収容体シートと、を備え、
前記第2収容体シートの通気度は、前記第1収容体シートの通気度よりも高い、<11>に記載のマスク。
<13> 前記第1収容シートの通気度は、好ましくは3,000~6,000秒/100mlであり、より好ましくは4,000~6,000秒/100mlである、<11>または<12>に記載のマスク。
<14> Da/Dbは、好ましくは1.7以上であり、より好ましくは2.0以上であり、さらに好ましくは2.5以上であり、一方、好ましくは12以下であり、より好ましくは7.0以下であり、さらに好ましくは、5.0以下である、<1>乃至<13>のいずれか一つに記載のマスク。
<15> Da/Dbは、好ましくは1.7以上12以下あり、より好ましくは2.0以上7.0以下あり、さらに好ましくは2.5以上5.0以下ある、<1>乃至<14>のいずれか一つに記載のマスク。
<16> Dbは、より好ましくは、0.5cm以上であり、さらに好ましくは、0.6cm以上であり、一方、より好ましくは、1.5cm以下であり、さらに好ましくは、1.3cm以下である、<1>乃至<15>のいずれか一つに記載のマスク。
<17> 前記スリットが、前記開口部の最大長さ方向に対し垂直な方向に形成されている、<3>乃至<16>のいずれか一つに記載のマスク。
<18> 前記発熱体により、温熱蒸気を放出する、<1>乃至<17>のいずれか一つに記載のマスク。
<19> アイマスクタイプである、<1>乃至<18>のいずれか一つに記載のマスク。
【実施例
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0067】
(実施例および比較例)
図1に示すような温熱具について、表2に示す構成となるよう、以下の手順に従い作製した。
〔発熱粉体水分散物の調製〕
表1で示す組成比で、材料を用意し、次の手順で調製した。キサンタンガムを水に溶解し、次いでリン酸3カリウム、水酸化カリウムを溶解して水溶液を用意した。一方で、鉄粉、活性炭をプレ混合した粉体を用意し、上記水溶液に、プレ混合粉体を入れ、ディスクタービン型攪拌羽根で150rpm、10分間攪拌してスラリー状の発熱粉体水分散物を得た。なお、塩化ナトリウムは後述する第1吸水シートの表面に該発熱粉体水分散物を塗布後、塗工面上に散布した。
【0068】
【表1】
【0069】
〔発熱部の作製〕
第1吸水シートとして、木材パルプ製の紙(坪量20g/m、伊野紙株式会社製)と吸水性ポリマー(球状、平均粒子径300μm、アクアリックCA、株式会社日本触媒製、坪量30g/m)と木材パルプ製の紙(坪量30g/m、伊野紙株式会社製)を積層して一体化したポリマーシート(最大吸水量の10~45質量%の水を吸収した状態での通気度2秒/100ml)を用い、第2吸水シートとして、ポリエチレンラミネート紙(ニットク株式会社製)を用いた。
第1吸水シートとして用いるポリマーシートを用意し、前述のとおりに調製した発熱粉体水分散物を25cm(5cm×5cm)の第1吸水シートの表面に厚み略3mm(塗工量1.7g)で塗工し、塗工面上に、食塩(日本薬局方塩化ナトリウム:富田製薬株式会社製)を0.089g散布し、塗工面を第2吸水シート25cm(5cm×5cm)で被覆することで、発熱部を作製した。
【0070】
〔発熱体の作製〕
収容体における第1収容体シートを、炭酸カルシウムを含む多孔質の延伸ポリエチレン透湿性フィルム(JIS P8117による通気度3,500秒)から構成した。第2収容体シートは、ポリエチレン製の非透湿フィルムから構成した。該第2収容体シートの一面に吸水紙(坪量35g/m)を積層して、上述のシート状発熱部の1枚を間にして、第1収容体シートと第2収容体シートとを、吸水紙が外方を向くように重ね、周縁部においてシートどうしを接合し、矩形の発熱体を得た。
【0071】
〔温熱具の作製〕
第1袋体シートは、ポリプロピレン不織布(ニードルパンチ法、坪量80g/m)、第2袋体シートは、ポリエチレンテレフタレート不織布(エアスルー法、坪量30g/m)を用い、図5に示すように、両袋体シートの間に、上記で得られた発熱体を2個挟み、周縁部および縦中心線近傍において第1袋体シート、第2袋体シートどうしを接合し、マスク本体部を作成した。さらに、第1袋体シートの外側面に、不織布製の耳掛け部を該マスク本体部と接合することにより、実施例及び比較例の温熱具を得た。なお、以上の各操作は、酸素が存在しない雰囲気下で行った。
また、実施例及び比較例の温熱具について、表2に示されているDa、DbおよびDcを有する耳掛け部となるように、以下のようにして、開口部、及びスリット又は切欠部を設けた。
【0072】
・実施例1
図7に示すように、耳掛け部52Lの第1袋体シートと接合する側の最も外側の点を点P3とし、点P3からX方向に沿って内側に15mmを離れた点を点P2とした。また、点P3と点P2は、耳掛け部52LのY方向の中心線(縦中央線Y1)上とした。つぎに、点P2を小円S1の円心とし、小円S1の曲率半径は1.5mmとした。同時に小円S1の円心からY方向の下方に向かいX方向と20度をなす方向であって、小円S1の円心(点P2)から50.5mm離れる点を点P1とした。点P1を大円S2の円心とし、大円S2の曲率半径は8mmとなるようにして、小円S1および大円S2の一部を両端とする開口部(孔54L)を設けた。すなわち、小円S1および大円S2の一部と、開口部(孔54L)の一部とを一致させた。ただし、図7では、小円S1および大円S2を示す破線と、開口部(孔54L)を示す実線とが重ならないよう、便宜上、小円S1および大円S2を開口部(孔54L)の内側においてやや小さめに示している。また、小円S1の円心(点P2)と大円S2の円心(点P1)を結ぶ直線の傾きは、La方向と一致する。また耳掛け部52Lの下側の外縁から当該開口部(孔54L)に向かう前記開口部の最大長さ方向に対し垂直な方向に2.5cmのスリット31を設けた。
同様にして、耳掛け部52Rについても、左右対称となるように、開口部およびスリットを設け、温熱具を作成した。
【0073】
・実施例2
実施例1の開口部をY方向に沿って下方に2mm平行移動させた位置に、実施例1と同様の開口部を形成し、また耳掛け部の下側の外縁から当該開口部に向かう前記開口部の最大長さ方向に対し垂直な方向に2.4cmのスリットを設け、温熱具を作成した。
【0074】
・実施例3
実施例1のスリットのかわりに、略三角形の切欠け部を設けた以外は、実施例1と同様にして耳掛け部を備える温熱具を作成した。
具体的には、図6に示されるDcを1.8mmとなるようにし、耳掛け部の下側の外縁を底辺として形成される略三角形の切欠け部を有するものとした。該略三角形は、La方向と直交する線における、耳掛け部の下側の外縁との交点から高さが2.5mmの点を頂点とし、その大きさは1.9cmとした。
【0075】
・比較例1
実施例1の小円及び大円の曲率半径を各々4.5mmと11mmに変更したことと、スリットを設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、温熱具を作成した。
【0076】
・比較例2
実施例1のスリットの長さを2mmに変更すると共にDcを表2に示されているものにした以外は、実施例1と同様にして温熱具を作成した。
【0077】
・比較例3
実施例1の開口部をY方向に沿って上方に2mmに平行移動させた位置に、実施例1と同様の開口部を形成した。また、図6に示されるDcを4mmとなるようにし、耳掛け部の下側の外縁を底辺として形成される略三角形の切欠け部を有するものとした。該略三角形は、La方向と直交する線における、耳掛け部の下側の外縁との交点からの高さが2mmの点を頂点とし、その大きさは2cmとした。
【0078】
・比較例4
実施例1の開口部をY方向に沿って下方に8mmに平行移動させた位置に、実施例1と同様の開口部を形成した。また、図6に示されるDcを4mmとなるようにし、耳掛け部の下側の外縁を底辺として形成される略三角形の切欠け部を有するものとした。該略三角形は、La方向と直交する線における、耳掛け部の下側の外縁との交点から高さが1.95mmの点を頂点とし、その大きさは2cmとした。
【0079】
得られた温熱具を用いて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】
(評価)
【0081】
・耳掛部の伸長性
まず、温熱具から一対の耳掛部を剥離した。マスク本体と耳掛部が一体になったもの(連なった1枚のシート)の場合、孔の基端側の円弧の頂点から5mm内側を切り落とす。次に、一方の耳掛け部を用い、以下の装置を用いて、耳掛部のLa方向両端部をチャックにより挟み、応力を加えて、300mm/分の速さで、La方向に100%伸長させ、その後、応力を開放して、耳掛部をもとの状態とし、伸長長さに対する荷重(N)を測定した。また、試料幅は80±10mmであり、チャック間隔は55±15mmとなるよう調整した。
装置名:「テンシロン万能試験機」
製造元:「株式会社オリエンテック」
【0082】
・官能評価
熟練したパネリスト21名が各温熱具を就寝時に着用し、以下の基準で評価し、21名の平均値を算出した。数値が高いほど、良好な結果であることを表す。
[フィット感]
5:良好なフィット感がある
4:やや良好なフィット感がある
3:フィット感がある
2:わずかにフィット感がある
1:フィット感がほとんどない
[圧迫感のなさ]
5:圧迫感がまったくない
4:圧迫感がほとんどない
3:圧迫感がない
2:圧迫感がややある
1:圧迫感がある
[目の周りの温まり感]
5:目の周りの温まり感が十分ある
4:目の周りの温まり感がやや十分ある
3:目の周りの温まり感がある
2:目の周りの温まり感がやや足りない
1:目の周りの温まり感がない
[全身のリラックス感]
5:全身のリラックス感が十分ある
4:全身のリラックス感がやや十分ある
3:全身のリラックス感がある
2:全身のリラックス感がやや足りない
1:全身のリラックス感がない
【0083】
【表2】
【0084】
実施例1と比較例1で作成した温熱具をそれぞれ室温環境下(20℃、55%)にて側臥位で10分装着した。その後の温熱具を外してすぐの顔の皮膚温度をサーモスタットを用いて測定した。
38℃以上となる面積を画像解析により計算したところ、実施例1では17.2cmであったのに対し、比較例1では10.6cmであった。
【符号の説明】
【0085】
10 発熱部
20 収容体
31 スリット
32 スリット
41 切欠部
50 温熱具
51 マスク本体部
52 耳掛部
52L 耳掛部
52R 耳掛部
53 袋体
54 孔
54L 孔
54R 孔
57 ノッチ部
61 温熱具
100 発熱体
201 第1収容体シート
202 第2収容体シート
203 周縁部
531 第1袋体シート
532 第2袋体シート
571 ノッチ部
572 ノッチ部
X 長手方向
Y 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7