(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】クマリン化合物、及びこれを含んだ顔料組成物
(51)【国際特許分類】
C09B 57/02 20060101AFI20230413BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20230413BHJP
C09D 11/326 20140101ALI20230413BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20230413BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230413BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20230413BHJP
C09B 57/00 20060101ALN20230413BHJP
【FI】
C09B57/02 D CSP
C09B67/20 F
C09D11/326
C09D17/00
B41M5/00 120
C09D11/38
C09B57/00 Z
(21)【出願番号】P 2019031580
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018061222
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 理恵
(72)【発明者】
【氏名】亀谷 紘
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165896(JP,A)
【文献】特開平08-259832(JP,A)
【文献】特開昭50-069380(JP,A)
【文献】特開2014-044419(JP,A)
【文献】特表2004-528458(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151071(WO,A1)
【文献】LUANら,Synthesis of fluorescent 3-benzoxazol-2-yl-coumarins,Advance in Colour Science and Technology,Vol 5 No 1,2002年01月,pp.18-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 57/02,67/20
C09D 11/322
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クマリン化合物、有機顔料及び樹脂分散剤を含有する、顔料組成物であって、
このクマリン化合物が、下記式(1)で表されるクマリン化合物である顔料組成物:
【化1】
式(1)中、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表し;R
3乃至R
10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はスルホ基を表し、但し、R
7乃至R
10の少なくとも一つはスルホ基であり;X
は二価の連結基
-NH-を
表す。
【請求項2】
上記式(1)において、R
1及びR
2がそれぞれ独立に炭素数1乃至4のアルキル基であり、R
3乃至R
6が水素原子であり、R
7乃至R
10がそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はスルホ基であって、かつR
7乃至R
10の少なくとも一つがスルホ基である、
請求項1に記載の顔料組成物。
【請求項3】
上記式(1)において、R
1及びR
2がエチル基であり、R
7乃至R
10がそれぞれ独立に水素原子又はスルホ基であって、かつR
7乃至R
10の少なくとも一つがスルホ基である、
請求項2に記載の顔料組成物。
【請求項4】
樹脂分散剤がカチオン系の樹脂分散剤である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の顔料組成物。
【請求項5】
有機顔料100質量部に対するクマリン化合物の添加量が1乃至50質量部である、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の顔料組成物。
【請求項6】
有機顔料がジケトピロロピロール骨格を有する顔料である
請求項1~4のいずれか1項に記載の顔料組成物。
【請求項7】
有機顔料がジケトピロロピロール骨格を有する顔料である、
請求項5に記載の顔料組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の顔料組成物、バインダー樹脂及び重合性化合物を含有するカラーレジスト。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の顔料組成物を含有するインクジェット用インク組成物。
【請求項10】
更に、少なくとも一種以上の有機溶剤を含有する、
請求項9に記載のインクジェット用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイや撮像素子などの製造に使用されるカラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの成分として好適なクマリン化合物(その塩を包含する)、並びに該化合物を含有する流動性や透明性に優れる顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料や印刷インク、近年ではカラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として、顔料が利用されている。顔料は、耐熱性、耐候性、耐マイグレーション等の諸特性で、染料と比較して堅牢性の面で優れる。一方で、顔料は、組成物にした際の凝集、沈降、経時的な粘度の増加、異種顔料と混合した際の色分かれ等の潜在的な不都合を有している。
【0003】
また最近では、液晶ディスプレイの高コントラスト化や撮像素子の微細化、インクジェットインクの高着色や高鮮明化等を達成するために、顔料の微粒子化および顔料組成物中における顔料の高濃度化の要求が高まっている。しかし、粒子径の微細化に伴い、また顔料の高濃度化に伴い凝集が起こりやすくなり、安定な分散体を得ることが困難となっている。
【0004】
こうした不都合を解決するために、顔料自体の改良検討(顔料表面処理)や顔料に対して良好な吸着性を有する分散剤の開発、界面活性剤の開発、および顔料誘導体の開発等の提案がこれまでに行われてきた。
顔料誘導体とは、微粒子化する顔料と同構造あるいは類似構造の顔料に、酸性や塩基性等の置換基を導入した化合物で、顔料との親和性や吸着性を有し、且つ酸・塩基相互作用により分散剤とも強い結合力を有し、顔料の微粒子化・分散安定化を向上する性質を有する物質を指す。このような顔料誘導体は、顔料の粉砕・分散微粒子化工程等において使用されている。
カラーフィルターやインクジェットで用いられる顔料としては、フタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料、染料レーキ顔料等が挙げられる。特にフタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、キナクリドン系顔料を中心に数々の顔料誘導体が報告されてきた。例えば、顔料のスルホン化物あるいはその金属塩を顔料と混和する方法(特許文献1乃至3参照)、置換アミノメチル誘導体を混和する方法(特許文献4参照)、フタルイミドメチル誘導体を混和する方法(特許文献5参照)等が知られている。
【0005】
これらの方法は、特定の骨格を有する顔料に対する効果は認められる。しかし、これらの方法においては、スルホン基、アミノメチル基、フタルイミドメチル基などを導入することが構造上難しい顔料に対しては、導入する置換基の数や位置の制御が難しい。結果として、顔料の分散が不充分になり、しかも色調にも悪影響を及ぼす副生成物が多量に生成し、顔料分散液の品質が安定しない等の不都合を有する。
また、これまでカラーフィルターのレッド用の顔料として広く使用されているピグメントレッド254を用いた顔料組成物は、透過率の向上が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭41-2466号公報
【文献】特開昭63-172772号公報
【文献】特公昭50-4019号公報
【文献】特公昭39-16787号公報
【文献】特開昭55-108466号公報
【文献】特開2015-91947号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Dyes and Pigments,47(1-2),79-89;2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、特にC.I.ピグメントレッド254をはじめとするレッド系等の有機顔料について、凝集、沈降、経時的な粘度の増加を引き起こすことなく有機顔料が微粒子化及び高濃度化された、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として安定な顔料組成物(顔料分散液)を提供することである。
本発明が解決しようとする更なる課題は、上述のような顔料組成物(顔料分散液)に好適に使用される新規なクマリン化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、クマリンスルホン酸誘導体からなる化合物を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、
(1).下記式(1)で表わされるクマリン化合物:
【0010】
【0011】
式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表し;R3乃至R10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はスルホ基を表し、但し、R7乃至R10の少なくとも一つはスルホ基であり;Xは酸素原子、硫黄原子又は二価の連結基-NR11-を表し、R11は水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。
(2).Xが二価の連結基-NH-である、前項(1)に記載のクマリン化合物。
(3).R1及びR2がそれぞれ独立に炭素数1乃至4のアルキル基であり、R3乃至R6が水素原子であり、R7乃至R10がそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はスルホ基であって、かつR7乃至R10の少なくとも一つがスルホ基である、前項(1)又は(2)に記載のクマリン化合物。
(4).R1及びR2がエチル基であり、R7乃至R10がそれぞれ独立に水素原子又はスルホ基であって、かつR7乃至R10の少なくとも一つがスルホ基である、前項(3)に記載のクマリン化合物。
(5).前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のクマリン化合物、有機顔料及び樹脂分散剤を含有する顔料組成物。
(6).樹脂分散剤がカチオン系の樹脂分散剤である、前項(5)に記載の顔料組成物。
(7).有機顔料100質量部に対するクマリン化合物の添加量が1乃至50質量部である、前項(5)又は(6)に記載の顔料組成物。
(8).有機顔料がジケトピロロピロール骨格を有する顔料である、前項(5)又は(6)に記載の顔料組成物。
(9).有機顔料がジケトピロロピロール骨格を有する顔料である、前項(7)に記載の顔料組成物。
(10).前項(5)乃至(9)のいずれか一項に記載の顔料組成物、バインダー樹脂及び重合性化合物を含有するカラーレジスト。
(11).前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のクマリン化合物を含有するインクジェット用インク組成物。
(12).更に、少なくとも一種以上の有機溶剤を含有する、前項(11)に記載のインクジェット用インク組成物。
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の式(1)で示されるクマリン化合物は製造が極めて容易である。
また、該化合物を使用することにより、C.I.ピグメントレッド254等の有機顔料について、凝集、沈降、経時的な粘度の増加を引き起こすことなく顔料が微粒子化・高濃度化された顔料組成物を提供することが可能になる。
このような顔料組成物は、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として好適である安定な分散体となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のクマリン化合物は、下記式(1)で表される。
【0014】
【0015】
本発明のクマリン化合物は、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤である顔料組成物の成分として好適に用いることができる。以下、便宜上、「本発明のクマリン化合物」を、単に「本発明の化合物」と簡略して記載することもある。
【0016】
式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。
式(1)のR1およびR2が表す炭素数1乃至4のアルキル基は、直鎖、分岐鎖のいずれでもよいが、直鎖であることが好ましい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基及びtert-ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基である。
式(1)におけるR1およびR2としては、それぞれ独立に炭素数1乃至4のアルキル基であることが好ましく、両者が同一の炭素数1乃至4のアルキル基であることがより好ましい。R1およびR2の両者が同一のメチル基又はエチル基であることが更に好ましく、両者がエチル基であることが特に好ましい。
【0017】
式(1)中、R3乃至R10はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基又はスルホ基を表すが、但し、R7乃至R10の少なくとも一つはスルホ基である。
式(1)のR3乃至R10が表す炭素数1乃至4のアルキル基の具体例としては、式(1)のR1およびR2が表す炭素数1乃至4のアルキル基の具体例と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
式(1)のR3乃至R10が表すハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子又は臭素原子である。
【0018】
式(1)におけるR3乃至R6としては、水素原子が好ましい。
式(1)におけるR7乃至R10としては、少なくとも一つがスルホ基であって、それ以外がそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、塩素原子又は臭素原子であることが好ましい。R8及びR9の少なくとも一つがスルホ基であって、それ以外がそれぞれ独立に水素原子、塩素原子又は臭素原子であることがより好ましく、R8及びR9の少なくとも一つがスルホ基であって、それ以外が水素原子であることが更に好ましい。R8がスルホ基であって、それ以外が水素原子であることが特に好ましい。
【0019】
式(1)中、Xは酸素原子、硫黄原子又は二価の連結基-NR11-を表す。R11は水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。
式(1)中のR11が表す炭素数1乃至4のアルキル基の具体例としては、式(1)のR1およびR2が表す炭素数1乃至4のアルキル基の具体例と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
式(1)におけるXとしては酸素原子、硫黄原子又は二価の連結基-NR11
-であって、R11が水素原子又はメチル基であることが好ましい。Xとしては二価の連結基-NR11-であって、R11が水素原子であることがより好ましい。
【0020】
式(1)で示される本発明のクマリン化合物は、例えば次のような方法で合成することができる。
すなわち、特許文献6に記載の方法により、下記式(4)で表される化合物を合成した後に、非特許文献1に記載の方法により、下記式(4)で示される化合物と下記式(5)で表される化合物を縮合反応させることにより、所望の化合物を得ることが出来る。下記式(4)及び(5)において、R1乃至R5及びR7乃至R10は上記式(1)におけるのと同じ意味を表す。
【0021】
【0022】
【0023】
本発明の化合物の具体例を以下に示す。
【0024】
【0025】
本発明の顔料組成物は、本発明の化合物、有機顔料及び樹脂分散剤を含有する。
本発明の顔料組成物が含有する有機顔料は、カラーインデックスに記載されたものなど従来公知のものであれば特に限定されない。
本発明の式(1)で表される化合物自体がレッド系の色相を有するため、有機顔料本来の色相を損なわない意味ではレッド系の有機顔料を用いるのが好ましい。カラーインデックスでピグメントレッドに分類される有機顔料を用いるのがより好ましく、C.I.ピグメントレッド254が更に好ましい。また、本発明の化合物と混合した際の分散安定性に優れるという意味で、顔料組成物が含有する有機顔料は、ジケトピロロピロール骨格を有する有機顔料であることが好ましい。
【0026】
本発明の顔料組成物が含有する樹脂分散剤は、公知の樹脂分散剤であれば特に限定されない。本発明の化合物との親和性を考慮した場合、カチオン系の樹脂分散剤が好ましい。カチオン系の樹脂分散剤としては、例えば、ビッグケミージャパン株式会社のBYK112、116、140、142、161、162、164、166、182、2000、2001、2050、2070、2150、エフカ社のEFKA4010、4015、4020、4050、4055、4060、4300、4330、4400、4406、日本ルーブリゾール株式会社のソルスパース24000、32500、味の素ファインテクノ社のアジスパーPB711、821、822、881などが挙げられる。
樹脂分散剤の添加量は、有機顔料100質量部に対して通常5乃至100質量部、好ましくは10乃至50質量部であってよい。樹脂分散剤の添加量を前記の範囲とすることにより、分散安定性に優れた顔料組成物が得られる。
【0027】
本発明の顔料組成物には、必要により有機溶剤を加えることができる。用い得る有機溶剤は特に限定されないが、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。有機溶剤は、通常、顔料組成物中に90質量%以下を占める量が用いられる。
【0028】
本発明のカラーレジストは、本発明の顔料組成物、バインダー樹脂及び重合性化合物を含有する。
本発明のカラーレジストに用い得るバインダー樹脂は、特に限定されないが、例えば、スチレン系(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体、スチレン-マレイン酸エステル系共重合体、セルロースアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。バインダー樹脂は、通常、顔料組成物中に50質量%以下を占める量が用いられる。
【0029】
本発明のカラーレジストに用い得る重合性化合物としては、光重合モノマー、エポキシ化合物及びメラミン系化合物等が挙げられる。
これらの重合性化合物の具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ビスフェノール-A型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-F型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-フルオレン型エポキシジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、9,9-ビス〔4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕フルオレン、カヤラッドRP-1040(日本化薬製)、カヤラッドDPCA-30(日本化薬製)、UA-33H(新中村化学製)、UA-53H(新中村化学製)及びM-8060(東亞合成製)等の(メタ)アクリレートモノマー;TEMPIC(堺化学製)、TMMP(堺化学製)、PEMP(堺化学製)及びDPMP(堺化学製)等のチオール系重合モノマー;NC-6000(日本化薬製)、NC-6300(日本化薬製)、NC-6300H(日本化薬製)、NC-3000(日本化薬製)、EOCN-1020(日本化薬製)、XD-1000(日本化薬製)、EPPN-501H(日本化薬製)、BREN-S(日本化薬製)、NC-7300L(日本化薬製)、セロキサイド2021P(ダイセル化学製)、EHPE3150(ダイセル化学製)、サイクロマーM100(ダイセル化学製)、エポリードPB3600(ダイセル化学製)、エピコート828(ジャパンエポキシレジン製)、エピコートYX8000(ジャパンエポキシレジン製)、エピコートYX4000(ジャパンエポキシレジン製)、VG-3101L(プリンテック製)、サイラエースS510(チッソ製)及びTEPIC(日産化学工業製)等のエポキシ化合物;並びにメチロール化メラミン及びMw-30(三和ケミカル)等のメラミン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの重合性化合物には、必要により重合開始剤や硬化促進剤等を併用することが好ましい。このような重合開始剤や硬化促進剤としては、公知のいかなるものを用いてもよい。
【0030】
本発明の顔料組成物及びカラーレジストに、必要により加えることのできるその他の添加剤としては、例えばチクソ付与剤、重合開始剤や硬化剤、硬化促進剤、重合禁止剤、有機又は無機フィラー、カップリング剤等が挙げられる。このようなその他の添加剤は、顔料組成物の具体的な目的用途によって選択すればよく上記に限定されない。また、その添加量も、具体的な目的用途に合わせて選択すれば良い。
【0031】
本発明の顔料組成物及びカラーレジストは、例えば次のような方法で調製することができる。
すなわち、有機顔料および本発明の化合物の配合の方法としては、従来公知の種々の方法、例えば、それぞれの乾燥粉末やプレスケーキを単に混合する方法や、ニーダー、ビーズミル、ディゾルバー、アトライター等の各種分散機により機械的に混合する方法、水又は有機溶剤中に有機顔料を懸濁させ、その中に本発明の化合物を添加混合して有機顔料の表面に均一に沈着する方法などが挙げられる。
次に、得られた有機顔料および本発明の化合物の混合物に、樹脂分散剤と、必要に応じてバインダー樹脂と、カラーレジストの場合は重合性化合物と、更には必要に応じて各種有機溶剤や各種添加剤等とを配合して、サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター等で分散することにより、所望の顔料組成物及びカラーレジストを製造することができる。或いは簡便的には、有機顔料、本発明の化合物及び樹脂分散剤と必要に応じてその他の成分を、一括で混合及び分散しても構わない。
なお、本発明の顔料組成物における本発明の化合物の添加量は、有機顔料100質量部に対して通常0.1乃至70質量部であってよく、好ましくは0.5乃至60質量部、より好ましくは1乃至50質量部であってよい。本発明の化合物の配合割合を前記の範囲とすることにより、目的とする分散安定性および有機顔料の微粒子化が達成される。
【0032】
本発明の顔料組成物の用途は特に限定されず、例えばグラビア印刷インクなどの各種印刷インク、塗料、電子写真用乾式トナー又は湿式トナー、インクジェット記録用インク、カラーフィルター用レジスト着色剤などの種々の用途が挙げられる。特に、本発明の顔料組成物は、顔料の微粒子化および高い安定性が要求されるカラーフィルター用レジスト着色剤、インクジェット記録用インクとして有用である。
尚、本発明の化合物をインクジェット記録用インクに用いる場合は、必ずしも有機顔料及び樹脂分散剤を併用する必要はないが、有機溶剤を併用することが好ましい。インクジェット記録用インク用途において、本発明の化合物に併用し得る有機溶剤の具体例としては、上記した本発明の顔料組成物に必要により加えることのできる有機溶剤と同じものが挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。尚、本文中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。実施例における極大吸収波長は分光光度計「(株)島津製作所製UV-3150」で測定した値であり、酸価はJIS K-0070:1992に準拠した測定方法で測定した値である。また、重量平均分子量は、移動相としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエイションクロマトグラフィーの測定結果に基づいて、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0034】
実施例1(上記具体例化合物のNo.2で示される化合物の合成)
反応容器中で水300部にC.I.アシッドイエロー184を15.5部溶解させた後、この溶解液に、20乃至30℃で濃塩酸を加えてpH0.5乃至1.0とし、同温度・pHで一時間撹拌した。析出した結晶をろ過して得られたウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥させることにより、具体例化合物No.2で示される化合物10.5部を得た。該化合物の極大吸収波長λmaxは440nm(NMP)であった。
【0035】
合成例1(バインダー樹脂Aの調製)
500mlの四つ口フラスコにメチルエチルケトン160部、メタクリル酸10部、ベンジルメタクリレート33部、α,α’-アゾビス(イソブチロニトリル)1部を仕込み、攪拌しながら30分間窒素ガスをフラスコ内に流入した。その後、80℃まで昇温し、80乃至85℃でそのまま4時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、無色透明で均一なバインダー樹脂溶液を得た。これをイソプロピルアルコールと水の1:1混合溶液中で沈殿させ、濾過し、固形分を取り出し、乾燥させ、バインダー樹脂Aを得た。得られたバインダー樹脂Aのポリスチレン換算重量平均分子量は18,000であり、酸価は152であった。
【0036】
実施例2(本発明の顔料組成物の調製)
有機顔料としてC.I.ピグメントレッド254 10.0部、本発明の化合物として実施例1で得られたNo.2で示される化合物1.0部、バインダー樹脂として合成例1で得られたバインダー樹脂A 1.8部、樹脂分散剤としてアジスパーPB881(味の素ファインテクノ社製)10.0部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート82部を配合し、プレミキシングの後、0.3mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで60分間分散した。得られた分散液を5μmのフィルタでろ過することにより本発明の顔料組成物を調製した。
【0037】
比較例1(比較用の顔料組成物の調製)
実施例1で得られたNo.2で示される化合物の代りに特許文献6の合成例1に記載の下記式(C)で表される化合物を用いた以外は実施例2と同様にして、比較用の顔料組成物を調製した。
【0038】
【0039】
上記実施例2及び比較例1で得られた顔料組成物について、B型粘度計を用い、室温(25℃)で10rpmの条件で粘度の測定を行い、下記の基準で評価した。尚、初期の分散安定性に加えて保存安定性を確認するために、初期(調製直後)の粘度の他に40℃で3日放置後の粘度も測定及び評価した。結果を表1に示した。
・評価基準
初期粘度:
20mPa・S未満:○(良好)
20mPa・S以上:×(不良)
40℃×3日後の粘度増加率:
20%未満:○(良好)
20%以上:×(不良)
【0040】
【0041】
表1から明らかなように、実施例2の顔料組成物は、比較例1と比べて初期粘度が低く抑えられており、実際に使用する際の作業性並びにレジストやインクの品質を損なわないものである。更に実施例2の顔料組成物は、保存安定性についても、比較例と比べて良好な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のクマリン化合物を用いることにより、凝集、沈降、経時的な粘度の増加をすることなく、有機顔料を微粒子化・高濃度化することが可能である。このような顔料誘導体は、カラーフィルター用レジストやインクジェット用インクの着色剤として、安定な分散体を得るために非常に有用である。