IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ゼリー状食品 図1
  • 特許-ゼリー状食品 図2
  • 特許-ゼリー状食品 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ゼリー状食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/10 20160101AFI20230413BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20230413BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20230413BHJP
【FI】
A23L21/10
A23L29/262
A23L29/269
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019045960
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2019162103
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2018046728
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛之
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217000(JP,A)
【文献】特開2013-046591(JP,A)
【文献】特開2004-313123(JP,A)
【文献】特開2013-192534(JP,A)
【文献】特開2017-012165(JP,A)
【文献】米国特許第05562939(US,A)
【文献】特表2013-542743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 21/
A23L 29/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は2種以上のゼリー片が、基材ゼリー中に点在又は分散したゼリーインゼリーの製造方法であって、
該基材ゼリーにウェランガム及び/又はセルロースを含有させる工程、
該1種又は2種以上のゼリー片と、該基材ゼリーとを容器に充填する工程、及び
該容器を加熱処理する工程、
を含む、ゼリーインゼリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー状食品に関する。詳細には、1種又は2種以上のゼリー片が、基材ゼリー中に点在又は局在したゼリーインゼリーに関する。
【背景技術】
【0002】
市場では、多種のゼリー状食品が販売され、製品形態も多岐に亘っている。見た目の美しさから、種々の色素や果汁等を用いて、着色された製品も多い。中には、有色又は無色であって透明度の高いゼリーを基材として用い、その中に鮮やかな色合いのゼリー片を、球状、角形、花びら状等にして埋め込むことにより、色鮮やかなゼリーインゼリー食品も創作されている。
【0003】
日本の伝統的な羊羹、水羊羹、錦玉においても、基材ゼリーに花や葉、星、鳥、魚等の形に成形したゼリー片を包含させて、季節に合った趣を演出するために、ゼリーインゼリーの形態が利用されている。
【0004】
ゼリーインゼリー食品とすることにより、見た目の美しさを演出することも可能であるが、ゼリー片の固さを調節することにより、基材ゼリーとゼリー片とを噛んだ時の食感の違いを楽しむことや、ゼリー片に異なる風味付けをすることにより、基材ゼリーとは異なる味を楽しむことが可能となる。
【0005】
例えば特許文献1では、概観は単一のゼリー食品のようであるが、食していく過程で内部に別のゼリーが現れてくるゼリーインゼリーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-125602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
通常、市販されている容器包装詰めされたゼリー食品は、加熱による殺菌処理がなされている。ゼリーインゼリーの形態を利用する場合、内包されるゼリー片に含まれる成分が、加熱による殺菌処理により溶出して、基材ゼリーに漏れ出てしまうという課題が見出された。
【0008】
ゼリー片に含まれる成分が基材ゼリーに溶出してしまうと、ゼリー片と基材ゼリーとの境界が不鮮明となり、ゼリーインゼリーとしての外観や風味を著しく損ねてしまうので好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゼリーインゼリーにおける基材ゼリー中に、ウェランガム及び/又はセルロースを含有させることにより、内包されるゼリー片に含まれる成分が、加熱による殺菌処理により溶出することを顕著に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げるゼリーインゼリーを提供する。
項1.
1種又は2種以上のゼリー片が、基材ゼリー中に点在又は局在したゼリーインゼリーであって、
該基材ゼリーが、ウェランガム及び/又はセルロースを含有する、ゼリーインゼリー。
項2.
前記セルロースが、発酵セルロース、結晶セルロース、及び、微結晶セルロースからなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載のゼリーインゼリー。
項3.
80℃以上で加熱処理されたものである、項1又は2に記載のゼリーインゼリー。
項4.
前記基材ゼリーにおけるウェランガムの含有量が、前記基材ゼリー全量に対して0.01~3質量%である、項1~3のいずれか1項に記載のゼリーインゼリー。
項5.
前記基材ゼリーにおけるセルロースの含有量が、前記基材ゼリー全量に対して0.005~2質量%である、項1~4のいずれか1項に記載のゼリーインゼリー。
項6.
基材ゼリーにウェランガム及び/又はセルロースを含有させる工程、
1種又は2種以上のゼリー片と、該基材ゼリーとを容器に充填する工程、及び
該容器を加熱処理する工程、
を含む、ゼリーインゼリーにおける基材ゼリーへの成分溶出を抑制する方法。
項7.
1種又は2種以上のゼリー片が、基材ゼリー中に点在又は局在したゼリーインゼリーの製造方法であって、
該基材ゼリーにウェランガム及び/又はセルロースを含有させる工程、
該1種又は2種以上のゼリー片と、該基材ゼリーとを容器に充填する工程、及び
該容器を加熱処理する工程、
を含む、ゼリーインゼリーの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ゼリーインゼリーの形態であっても、内包されるゼリー片に含まれる成分が、加熱処理により溶出することが抑制され、外観に優れたゼリーインゼリー及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】試験例1において、ゼリー片に含まれる成分が、加熱処理により溶出することが抑制された状態を示す写真である。
図2】試験例2において、ゼリー片に含まれる成分が、加熱処理により溶出することが抑制された状態を示す写真である。
図3】試験例3において、ゼリー片に含まれる成分が、加熱処理により溶出することが抑制された状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、1種又は2種以上のゼリー片が、基材ゼリー中に点在又は局在したゼリーインゼリーであって、該基材ゼリーが、ウェランガム及び/又はセルロースを含有する、ゼリーインゼリーに関する。
【0014】
[ゼリーインゼリー]
本明細書において、ゼリーインゼリーとは、基材ゼリーとゼリー片を含有するものであり、1種又は2種以上のゼリー片が、基材ゼリー中に点在又は局在した状態をいう。基材ゼリー中のゼリー片は、基材ゼリー(容器)の底面に配置されていてもよく、基材ゼリー(容器)の上面に配置されていてもよく、基材ゼリー(容器)中に浮かぶ様に配置されていてもよい。
【0015】
(基材ゼリー)
本明細書において、基材ゼリーとは、ゼリー片を除いた連続相部分となるゼリーをいう。具体的には、ゼリー片とゼリーインゼリーを充填する容器との間の空間を占めるゼリーをいう。
【0016】
本発明において、ゼリーインゼリーにおける基材ゼリー中に、ウェランガム及び/又はセルロースを含有させることにより、内包されるゼリー片に含まれる成分が、加熱による殺菌処理により溶出することを顕著に抑制できる。
【0017】
(ウェランガム)
本明細書において、ウェランガムは、スフィンゴモナス属細菌(Sphingomonas sp.)の培養液から得られた多糖類を主成分とするものである。簡便には、一般に流通している市販製品を利用することが可能であり、具体的には三栄源エフ・エフ・アイ株式会社のビストップ(登録商標)W等が例示できる。
【0018】
基材ゼリーにおけるウェランガムの含有量は、他の成分の種類やその含有量等により適宜調整され、特に制限されないが、例えば、基材ゼリー全量に対して、0.01~3質量%であり、0.03~1質量%が好ましく、0.05~0.8質量%がより好ましい。
【0019】
(セルロース)
本明細書において、セルロースは、草木類や微生物などから得られるセルロースのことであり、一般的なものとしては木材パルプを機械的若しくは化学的に処理して得られる粉末セルロース、発酵セルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース、微小繊維状セルロースなどが挙げられる。本発明の効果を顕著に奏する観点から、セルロースとしては、発酵セルロース、結晶セルロース、及び、微結晶セルロースからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、発酵セルロース及び/又は微結晶セルロースがより好ましく、発酵セルロースが更に好ましい。
【0020】
発酵セルロースは、セルロース生産菌が生産するセルロースであればよく、特に限定されない。通常、発酵セルロースは、セルロース生産菌を既知の方法、例えば特開昭61-212295号公報、特開平3-157402号公報、特開平9-121787号公報等に記載される方法に従って培養し、得られた培養物からセルロース生産菌を単離するか、または所望に応じて適宜精製することによって製造することができる。
【0021】
ここでセルロース生産菌としては、アセトバクター属、シュードモナス属、アグロバクテリウム属等に属する細菌が挙げられるが、好適にはアセトバクター属である。発酵セルロースを生産するアセトバクター属の細菌として、より具体的には、アセトバクター・パスツリアヌス株(例えば、ATCC10245等)、アセトバクター・エスピーDA株(例えば、FERM P-12924等)、アセトバクター・キシリナム株(例えば、ATCC23768、ATCC23769、ATCC10821、ATCC1306-21等)を挙げることができる。好ましくは、アセトバクター・キシリナム株である。
【0022】
かかるセルロース生産菌を培養する培地及び条件としては、特に限定されず、常法に従うことができる。例えば、培地は、基本的に窒素源、炭素源、水、酸素及びその他の必要な栄養素を含有しており、上記微生物が増殖して目的の発酵セルロースを産生することができるものであればよく、例えばHestrin-Schramm培地を挙げることができる。なお、セルロースの生産性を向上させるために、培地中にセルロースの部分分解物、イノシトール、フィチン酸等を添加することもできる(特開昭56-46759号公報、特開平5-1718号公報)。培養条件としては、例えばpH5~9、培養温度20~40℃の範囲が採用され、発酵セルロースが十分産生されるまで培養が続けられる。培養方法は、静置培養、撹拌培養、通気培養のいずれでもよいが、好適には通気撹拌培養である。
【0023】
発酵セルロースを大量生産するためには、多段階接種法が好ましい。この場合、通常、2段階の予備接種プロセス、一次接種発酵プロセス、二次接種発酵プロセス及び最終発酵プロセスからなる5段階の発酵プロセスが採用され、各プロセスで増殖された細菌について細胞の形態およびグラム陰性であることを確認しながら、次プロセスの発酵器に継代される。
【0024】
発酵後、産生された発酵セルロースは培地から分離処理され、洗浄されて、適宜精製される。精製方法は特に限定されないが、通常、培地から回収した発酵セルロースを洗浄後、脱水し、再度水でスラリー化した後に、アルカリ処理によって微生物を除去し、次いで該アルカリ処理によって生じた溶解物を除去する方法が用いられる。具体的には、次の方法が例示される。
【0025】
まず、微生物の培養によって得られる培養物を脱水し、固形分約20%のケーキとした後、このケーキを水で再スラリー化して固形分を1~3%にする。これに水酸化ナトリウムを加えて、pH13程度にして撹拌しながら数時間、系を65℃に加熱して、微生物を溶解する。次いで、硫酸でpHを6~8に調整し、該スラリーを脱水して再度水でスラリー化し、かかる脱水・スラリー化を数回繰り返す。精製された発酵セルロースは、必要に応じて乾燥処理を施すことができる。乾燥処理としては特に制限されることなく、自然乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、スプレードライ、ドラムドライ等の公知の方法を用いることができる。好ましくはスプレードライ法、ドラムドライ法である。
【0026】
かくして得られる発酵セルロースは、白色から黄褐色の物質であり水に急速に分散できる非常に繊細な繊維性粒子からなる。なお、本発明で用いられる発酵セルロースは、上記方法で調製される発酵セルロースと同一若しくは類似の性質を有し、本発明の目的を達成しえるものであれば、その調製方法によって限定されるものではない。
【0027】
そして本発明における発酵セルロースは、他の高分子物質と組み合わせ、複合化した状態(複合体)にて用いる。発酵セルロースを高分子物質と複合化させる方法としては、特開平9-121787号公報に記載される2種類の方法を挙げることができる。
【0028】
第一の方法は、微生物を培養して発酵セルロースを産生させるにあたり、培地中に高分子物質を添加して培養を行い、発酵セルロースと高分子物質とが複合化した発酵セルロース複合化物として得る方法である。
【0029】
また第二の方法は、微生物の培養によって生産された発酵セルロースのゲルを高分子物質の溶液に浸漬して、高分子物質を発酵セルロースのゲルに含浸させて複合化する方法である。発酵セルロースのゲルは、そのままか、あるいは常法により均一化処理を行ったのちに高分子物質の溶液に浸漬する。均一化処理は、公知の方法で行えばよく、例えばブレンダー処理や500kg/cmで40回程度の高圧ホモジナイザー処理、1000kg/cmで3回程度のナノマイザー処理などを用いた機械的解離処理が有効である。浸漬時間は、制限されないが、30分以上24時間程度、好ましくは一晩を挙げることができる。また、浸漬終了後は遠心分離や濾過などの方法で浸漬液を除去することが望ましい。さらに、水洗いなどの処理を行って過剰の高分子物質を除去すると、高分子物質と複合化された状態の発酵セルロースを取得することができ、複合化に利用されないで残存する高分子物質の影響を抑えることができる。
【0030】
発酵セルロースとの複合化に使用される高分子物質としては、例として、キサンタンガム、カラギナン、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、カシアガム、グルコマンナン、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、タマリンドシードガム、ペクチン、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、マクロホモプシスガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、プルラン、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)の塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、微結晶セルロース、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)といった各種高分子物質を挙げることができる。これらは一種単独で使用してもよいし、または2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0031】
本発明において発酵セルロースは、前述する高分子物質のグァーガム又はキサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)若しくはその塩からなる群から選択される少なくとも1種を複合化させた状態で用いられる。なお、所望により、発酵セルロース複合体を乾燥させて、乾燥粉末を得ることもできる。
【0032】
かかる発酵セルロース複合体の乾燥粉末は商業上入手可能であり、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンアーティスト[登録商標]H-PN」、「サンアーティスト[登録商標]PN」、「サンアーティスト[登録商標]H-PG」、及び「サンアーティスト[登録商標]PG」等が挙げられる。
【0033】
前記製剤中、「サンアーティスト[登録商標]H-PN」及び「サンアーティスト[登録商標]PN」は、発酵セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びキサンタンガムの発酵セルロース複合体を含有する製剤であり、「サンアーティスト[登録商標]H-PG」及び「サンアーティスト[登録商標]PG」は、発酵セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びグァーガムの発酵セルロース複合体を含有する製剤である。
【0034】
本明細書において、結晶セルロースは、例えば木材パルプ、精製リンターなどのセルロース系素材を、酸加水分解、アルカリ酸化分解、酵素分解などにより解重合処理して得られる平均重合度30~400、結晶性部分が10%を超えるものをいう。
【0035】
本願発明で使用する微結晶セルロースは、微結晶セルロース単独のもの、好ましくは微結晶セルロースと分散剤や崩壊剤を特定の割合で含有する複合体とした微結晶セルロース製剤を好適に使用することが出来る。
【0036】
微結晶セルロース製剤の製法としては、例えば、パルプを磨砕して得られた微細セルロースを分散剤や崩壊剤と均一に混合して均質なスラリーとしてこれを乾燥することにより得られる方法を挙げることができるが、具体的には、特公昭40-14174号公報、特公昭62-43661号公報、特開平6-335365号公報などに記載のものが使用できる。分散剤や崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ガラクトマンナン(グァーガム、酵素分解グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム等)、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸及びその塩、カードラン、ガティガム、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ゼラチン、トラガントガム、プルランなどを使用することが出来る。中でも、好ましいのは、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラヤガム、キサンタンガムである。
【0037】
かかる結晶セルロース及び/又は微結晶セルロースは、商業上入手可能であり、微結晶セルロースとしては、例えば、旭化成工業株式会社製のセオラス製品や、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製のビストップ[登録商標]D-4091、ホモゲン[商標]No.2210、ホモゲン[商標]No.1610、ホモゲン[商標]No.1855等が挙げられる。
【0038】
基材ゼリーにおけるセルロースの含有量は、他の成分の種類やその含有量等により適宜調整され、特に制限されないが、例えば、基材ゼリー全量に対して、0.005~2質量%であり、0.008~1質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0039】
(ゼリー片)
ゼリー片は、ゼリーインゼリーに彩りを与えたり、外観や食感に影響を与えるために、ゼリーインゼリーの基材ゼリーに包含されるものであり、色、形、風味、固さ等は限定されず、適宜調整して用いられる。
【0040】
また、ゼリー片は、1種又は2種以上のものを用いることができ、それぞれ色、形、風味、固さ等が異なっていてもよい。
【0041】
(基材ゼリー及びゼリー片の製造方法)
本明細書において、基材ゼリー及びゼリー片は、公知のゼリーの製造方法により製造される。典型的には、基材ゼリーの製造方法では、ゲル化剤を水に分散させた後、野菜成分、果物成分、甘味料、乳原料、色素等の各種素材を添加して、基材ゼリーが得られる。
【0042】
ゼリー片は、基材ゼリー中に点在又は局在した状態で用いられるものであるため、基材ゼリーとは別の組成のゼリーから得られる。事前に各種の色、形、風味、固さを有するゼリー片を用意しておくことが好ましい。
【0043】
典型的には、ゼリー片の製造方法では、ゲル化剤を水に分散させた後、野菜成分、果物成分、甘味料、乳原料、色素等の各種素材を添加して、ゼリー片のゼリーミックスが得られる。このゼリーミックスを、所望の形状に成形するための容器(モールド)に充填する。ゼリーミックスが充填された容器を冷却することで所望の形状に成形されたゼリー片が得られる。一つの実施態様においては、ショ糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖質とゲル化剤とを混合したのち、水に分散させる。この分散物を80~100℃に加熱して、ゲル化剤を均一に溶解させる。その後、60~80℃に冷却して、野菜成分、果物成分、甘味料、乳原料、色素等の各種素材を添加して、ゼリー片のゼリーミックスが得られ、これを所望の形状に成形するための容器(モールド)に充填して冷却することで、棒状、麺状、角柱状、ダイス状、球状、半月状、さのう(さ嚢)状等の所望の形状に成形されたゼリー片が得られる。別の実施形態においては、ゼリー片のゼリーミックスを得て、容器に充填して冷却した後、カッティングマシン等を用いて、棒状、麺状、角柱状、ダイス状等の所望の形状に裁断することでゼリー片を得ることも可能である。更に、別の実施形態においては、ゼリー片のゼリーミックスを得て、容器に充填して冷却した後、ミキサー等を用いて撹拌して、不定形に分断することでゼリー片を得ることも可能である。
【0044】
基材ゼリー及びゼリー片における水の含有量は、特に限定されず、所望の食感が得られるように、例えば、10~99質量%以上とすることができ、20~98質量%とすることが好ましく、25~97質量%とすることがより好ましく、30~96質量%とすることが更に好ましく、40~95質量%とすることが特に好ましい。
【0045】
野菜成分としては、特に限定されず、人参、ほうれん草、タマネギ、トマト、パプリカ、カボチャ、大根等の各種の野菜から得られるエキス、パウダー、ピューレ、ペースト等を使用することができる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0046】
果物成分としては、特に限定されず、イチゴ、ブドウ、梨、レモン、みかん、オレンジ、マンゴー、桃、キウイ等の各種の果物から得られる果汁、パウダー、ピューレ、ペースト等を適宜使用することができる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0047】
甘味料としては、特に限定されず、ブトウ糖、ショ糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖質、果汁又は濃縮果汁、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール、サッカリン、ネオテーム、アスパルテーム(登録商標)、ソーマチン、アセスルファムK(登録商標)、スクラロース(登録商標)等の人工甘味料等の任意の甘味料を用いることができる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0048】
乳原料としては、特に限定されず、牛乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、発酵乳、生クリーム、練乳等を適宜使用することができる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0049】
色素としては、特に限定されず、アントシアニン系色素、アザフィロン系色素、カロテノイド系色素、ベタシアニン系色素及びポリフェノール系色素等が挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。
【0050】
ゲル化剤としては、特に限定されず、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グァーガム、ペクチン、寒天、ゼラチン、アラビアガム、グルコマンナン、タラガム、プルラン、サイリウムシードガム、タマリンド種子多糖類、トラガントガム、カラヤガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、マクロホモプシスガム、澱粉類(トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、餅米、タピオカ、サゴヤシ等由来の生澱粉、当該生澱粉に物理的又は化学的処理を施した加工澱粉(酸分解澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、グラフト化澱粉、カルボキシメチル基、ヒドロキシアルキル基等を導入したエーテル化澱粉、アセチル基等を導入したエステル化澱粉、澱粉の2カ所以上の水酸基を官能基を介して結合させた架橋澱粉、オクテニルコハク酸基のような疎水基を導入した乳化性澱粉、湿熱・乾熱処理澱粉等))、デキストリン等を適宜使用することができる。これらは単独で使用されてもよく、2種以上を組合せて使用されてもよい。ゼリー片の製造に用いられるゲル化剤には、上記の成分の他、本発明の効果が奏される限りにおいて、ウェランガム及び/又はセルロースを含有させることも可能である。
【0051】
上記の成分の他、基材ゼリー及びゼリー片には、酸味料、pH調整剤、調味料、中和剤、酸化防止剤、カラメル、香料、保存料、糊料、洋酒、ビタミン、ミネラル類、数mm角のカット野菜やカット果実、柑橘系果実のさのう、ナタデココ等固形物を添加して用いてもよい。
【0052】
ゼリー片に含まれる成分のうち、色合いを有する成分は、ゼリーインゼリーを製造するための加熱による殺菌処理時に、ゼリー片から溶出しやすく、外観に影響を与えやすい。ゼリー片に含まれるこのような成分としては、限定はされないが、野菜由来色素を含む野菜成分、果物由来色素を含む果物成分、乳脂肪球等を含む乳原料、各種の色素等が挙げられる。市販されるゼリーインゼリーは、包装容器詰めされ、食品衛生法で規定されている範囲で常法により、加熱殺菌処理され提供される。
【0053】
食品衛生法で規定されている範囲で加熱殺菌処理を行う観点から、基材ゼリー及びゼリー片は、pH調整剤又は酸味剤により、pH調整されていることが好ましい。pH調整剤又は酸味剤としては、食品衛生法で規定されている範囲であれば特に制限されないが、例えば、クエン酸、クエン酸3ナトリウム等のクエン酸塩、乳酸、リンゴ酸等の有機酸、各種リン酸塩等が挙げられる。
【0054】
基材ゼリー及びゼリー片のpHは、本発明の効果を顕著に奏する観点から、pH3.5~7.8とすることができ、pH3.5~4.2、pH5.5~6.0又はpH6.0~7.8とすることができ、pH3.5~7.5であることが好ましく、pH3.6~7.2であることがより好ましく、pH3.8~7.0であることが更に好ましく、pH4.0~6.8であることが特に好ましい。
【0055】
従来、ゼリーインゼリーにおいて、ゼリー片と基材ゼリーとの境界を明瞭に分離させるためには、ゼリー片と基材ゼリーとのブリックス差を大きくする必要があり、例えばブリックス差を20度以上とする必要があった。しかしながら、本発明によれば、ウェランガム及び/又はセルロースを含有する基材ゼリーと、ゼリー片とのブリックス差が15度以下、さらには10度以下であっても、ゼリー片に含まれる成分が、加熱による殺菌処理により溶出することを抑制できるため、ゼリー片と基材ゼリーとの境界を明瞭に分離したゼリーインゼリーを製造することができる。
【0056】
[ゼリーインゼリーの製造方法]
本発明のゼリーインゼリーの製造方法は、1種又は2種以上のゼリー片が、基材ゼリー中に点在又は局在したゼリーインゼリーの製造方法であって、
該基材ゼリーにウェランガム及び/又はセルロースを含有させる工程、
該1種又は2種以上のゼリー片と、該基材ゼリーとを容器に充填する工程、及び
該容器を加熱処理する工程、
を含む。
【0057】
本発明のゼリーインゼリーの製造方法において用いられるウェランガム、セルロース、その他の成分の種類や含有量については、上記の[ゼリーインゼリー]の記載に準じる。
【0058】
該基材ゼリーにウェランガム及び/又はセルロースを含有させる工程においては、限定はされないが、ゲル化剤を水に分散させる際にウェランガム及び/又はセルロースを含有させることが好ましい。一つの実施態様においては、ゲル化剤を水に分散させた後、野菜成分、果物成分、甘味料、乳原料、色素等の各種素材を添加する前後において基材ゼリーにウェランガム及び/又はセルロースを添加することも可能である。一つの実施態様においては、ショ糖、果糖ブドウ糖液糖等の糖質と、ゲル化剤と、ウェランガム及び/又はセルロースとを混合したのち、水に分散させる。この分散物を80~100℃に加熱して、ゲル化剤を均一に溶解させる。その後、60~80℃に冷却して、野菜成分、果物成分、甘味料、乳原料、色素等の各種素材を基材ゼリーに添加することも可能である。この実施態様において、各種素材を基材ゼリーに添加する前後においてウェランガム及び/又はセルロースを含有させるよう変更することも可能である。
【0059】
該1種又は2種以上のゼリー片と、該基材ゼリーとを容器に充填する工程においては、基材ゼリーは容器に充填される前において加熱又は冷却され、60~80℃等の適度な温度に保たれた状態であることが好ましい。一つの実施態様において、基材ゼリーは60~80℃にまで、加熱又は冷却され、予め成形していた1種又は2種以上のゼリー片と共に、ゼリーに一般的に用いられる容器に充填される。
【0060】
製造されるゼリーインゼリーの所望の外観に合わせて、基材ゼリー中に1種又は2種以上のゼリー片が配置される。ゼリー片を基材ゼリー中に配置する方法は、公知の方法が適宜採用され限定はされない。
【0061】
基材ゼリー中でゼリー片を、容器の底面に配置する場合、限定はされないが、例えば、始めに容器にゼリー片を配置し、少量の加熱溶解した基材ゼリーを加えた後、徐々に基材ゼリーを容器の全量まで充填することにより、所望のゼリーインゼリーの外観が得られる。
【0062】
基材ゼリー中でゼリー片を、容器の上面に配置する場合、限定はされないが、例えば、始めに容器に加熱溶解した基材ゼリーを9分目程度まで加えた後、ゼリー片を配置し、その後、基材ゼリーを容器の全量まで充填することにより、所望のゼリーインゼリーの外観が得られる。
【0063】
基材ゼリー中でゼリー片が浮かぶように配置する場合、限定はされないが、例えば、始めに容器に加熱溶解した基材ゼリーを4分目~6分目程度まで加えた後、ゼリー片を配置し、その後、基材ゼリーを容器の全量まで充填することにより、所望のゼリーインゼリーの外観が得られる。
【0064】
別の実施態様においては、ゼリー片の比重と基材ゼリーの比重とを調整することにより、ゼリー片と基材ゼリーとを容器に加えた後、容器を冷却することで、ゼリー片を所望の位置に配置することも可能である。冷却時に、容器を保持する方向を調整することで、ゼリー片の配置を更に調整することも可能である。
【0065】
別の実施態様においては、基材ゼリー及び/又はゼリー片の製造に用いられるゲル化剤の種類や含有量、ウェランガム及び/又はセルロースの含有量等を調整することにより、ゼリー片と基材ゼリーとを容器に加えた後、容器を冷却することで、ゼリー片を所望の位置に配置することも可能である。冷却時に、容器を保持する方向を調整することで、ゼリー片の配置を更に調整することも可能である。
【0066】
使用される容器は、ゼリーに一般的に使用される容器であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、10~1000mlの容量、30~600mlの容量、40~400mlの容量のカップ型の容器を使用することができる。
【0067】
食品衛生法で規定されている範囲であれば容器の材質には特に制限がないが、例えば、紙、ガラス、金属、合成樹脂の容器を使用することができ、不透明、透明、半透明の合成樹脂の容器を使用することが好ましい。このような合成樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。金属の容器としては、アルミニウム缶容器、スチール缶容器等が挙げられる。
【0068】
上記の充填工程の後、さらに、容器の開口部を包装フィルム等により封じる密閉工程を含むことが好ましい。包装フィルムの材質は、食品衛生法で規定されている範囲であれば特に制限されない。限定はされないが、容器の開口部が包装フィルムによりヒートシールされることが好ましい。
【0069】
該容器を加熱処理する工程においては、食品衛生法で規定されている範囲で、殺菌のため、常法により容器が加熱処理される。食品衛生法で規定された殺菌条件を満たすため、ゼリー片及び基材ゼリーは、pHが3.5~4.2又は5.5~6.0に調整されたものであることが好ましい。pHが3.5~4.2である場合は、80~85℃で30分の湯殺菌がなされ、pHが5.5~6.0である場合は、115~120℃で20~30分のレトルト殺菌がなされる。
【0070】
加熱処理の温度は、通常80℃以上とすることができる。本発明によれば、ゼリーインゼリーが、80℃以上に加熱処理されることにより、ゼリー片に含まれる成分が基材ゼリーに溶出しやすい条件においても、その溶出を抑制することが可能となる。加熱処理の温度及び時間は、ゼリー片及び基材ゼリーのpHが3.5~4.2である場合は、80~85℃で30分の湯殺菌であることが好ましく、ゼリー片及び基材ゼリーのpHが5.5~6.0である場合は、115~120℃で20~30分のレトルト殺菌であることが好ましい。
【0071】
[ゼリーインゼリーにおける基材ゼリーへの成分溶出を抑制する方法]
本発明のゼリーインゼリーにおける基材ゼリーへの成分溶出を抑制する方法は、基材ゼリーにウェランガム及び/又はセルロースを含有させる工程、
1種又は2種以上のゼリー片と、該基材ゼリーとを容器に充填する工程、及び
該容器を加熱処理する工程、
を含む。
【0072】
上記抑制方法において用いられるウェランガム、セルロース、その他の成分の種類や含有量については、上記の[ゼリーインゼリー]の記載に準じる。また、各工程やその他の追加可能な工程については、上記の[ゼリーインゼリーの製造方法]の記載に準じる。
【実施例
【0073】
以下に、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。
【0074】
(試験例1.ゼリーインゼリーの外観評価試験1)
表1の処方に基づき、ゼリー片を想定した内側ゼリーを調製した。具体的には、果糖ブドウ糖液糖と各種ゲル化剤とを混合した後、水に分散させた。約80℃に加熱することで、均一にゲル化剤を溶解させた。ゲル化剤溶液を約70℃に冷却した後、その他の成分を加えた。pHは、クエン酸により、pH4に調整された。このゼリーミックスを容器に充填して成形した後、1cm角に裁断することでゼリー片を想定した内側ゼリーを調製した。
【0075】
また、表2の処方に基づき、基材ゼリーを想定した外側ゼリーを調製した。具体的には、果糖ブドウ糖液糖と各種ゲル化剤とを混合した後、水に分散させた。約80℃に加熱することで、均一にゲル化剤を溶解させた。ゲル化剤溶液を約70℃に冷却した後、その他の成分を加えた。pHは、クエン酸により、pH4に調整され、基材ゼリーを想定した外側ゼリーを調製した。
【0076】
1cm角の内側ゼリーを、開口部約7cm、深さ約3cm、容積70mLのPET容器に、約20個点在させ、外側ゼリーを充填した後に、包装フィルムによりヒートシールした。
【0077】
密閉された容器を、85℃で30分加熱して、湯殺菌した。(内-処方1)から(内-処方5)までのそれぞれと、(外-処方)から(外-処方4)までのそれぞれとを組み合わせて、合計25種のゼリーインゼリーを製造した(比較例1~5、実施例1-1~1-5、実施例2-1~2-5、実施例3-1~3-5、実施例4-1~4-5)。
【0078】
ゼリー片を想定した内側ゼリーに含まれる成分が、加熱処理により溶出した程度を目視するため、それぞれのゼリーインゼリーを、黒色の色紙に静置し、包装フィルムによりヒートシールされた側から等しい撮影条件により写真撮影を行った。その結果を図1に示す。成分の溶出度合いの比較基準として、それぞれの外側ゼリーのみを同形状の容器に充填した後に、包装フィルムによりヒートシールしたゼリーサンプルを製造して、それぞれ図1の左端に並べた(基準1~5)。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
表1及び表2で用いたサンアーティスト(登録商標)PGは、発酵セルロースを20質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウムを6.7質量%、及びキサンタンガムを6.7質量%含有する製剤である。表中のサンアーティスト(登録商標)PG溶液(2.5%)との表記は、サンアーティスト(登録商標)PGが2.5%含まれた溶液であることを示す。
【0082】
[目視評価]
製造した合計25種のゼリーインゼリー(比較例1~5、実施例1-1~1-5、実施例2-1~2-5、実施例3-1~3-5、実施例4-1~4-5)について、目視評価を行った。評価は、目視による評価に精通した3名の評価者によるもので、表3の点数の評価基準を共通認識として確認し、平均点を算出して行った。
【0083】
【表3】
【0084】
目視評価による結果は、表4のとおりである。なお、表4は、図1と基準となる外側ゼリー、比較例1~5、実施例1-1~4-5の結果がそれぞれ対応する配置となるように記載している。
【0085】
【表4】
【0086】
図1に示すように、ウェランガム及び/又はセルロースを含有しない基材ゼリー(外側ゼリー)を用いたゼリーインゼリーでは、ゼリー片(内側ゼリー)に含まれる成分が加熱処理により溶出して、基材ゼリーが白濁~ゼリー片に含まれる色素の薄い朱色に染まっている。ゼリー片に含まれる成分の溶出により、ゼリー片の輪郭や、基材ゼリーとの境界が不明瞭となり、外観を著しく損ねる結果となった(最上段の写真、比較例1~5)。表4に示す目視評価では、比較例1~5は、評価者全員が評点1をつける結果となった。
【0087】
一方、図1に示すように、ウェランガムを含有する基材ゼリー(外側ゼリー)を用いたゼリーインゼリーでは、ゼリー片(内側ゼリー)に含まれる成分が加熱処理により溶出することが抑制され、基材ゼリーの色合いは基準とする左端のサンプルと同程度の色合いであった。これにより、基材ゼリーにウェランガムを含有させることによって、ゼリー片に含まれる成分の加熱処理による溶出を抑制できることが確認された(2段目から4段目までの写真、実施例1-1~1-5、実施例2-1~2-5、実施例3-1~3-5)。表4に示す目視評価では、実施例1-1~1-5、実施例2-1~2-5、及び実施例3-1~3-5は、評価者全員が評点3をつける結果となった。
【0088】
また、図1に示すように、セルロースを含有する基材ゼリー(外側ゼリー)を用いたゼリーインゼリーでは、ゼリー片(内側ゼリー)に含まれる成分が加熱処理により溶出することが抑制され、基材ゼリーの色合いは基準とする左端のサンプルと同程度の色合いであった。これにより、基材ゼリーにセルロースを含有させることによって、ゼリー片に含まれる成分の加熱処理による溶出を抑制できることが確認された(5段目までの写真、実施例4-1~4-5)。表4に示す目視評価では、実施例4-1~4-5は、評価者全員が評点3をつける結果となった。
【0089】
(試験例2.ゼリーインゼリーの外観評価試験2)
表5の処方に基づき、ゼリー片を想定した内側ゼリーを調製した。具体的には、果糖ブドウ糖液糖と各種ゲル化剤とを混合した後、水に分散させた。約80℃に加熱することで、均一にゲル化剤を溶解させた。ゲル化剤溶液を約70℃に冷却した後、その他の成分を加えた。pHは、クエン酸3ナトリウムにより、pH4に調整された。このゼリーミックスを容器に充填して成形した後、1cm角に裁断することでゼリー片を想定した内側ゼリーを調製した。
【0090】
また、表6の処方に基づき、基材ゼリーを想定した外側ゼリーを調製した。具体的には、果糖ブドウ糖液糖と各種ゲル化剤とを混合した後、水に分散させた。約80℃に加熱することで、均一にゲル化剤を溶解させた。ゲル化剤溶液を約70℃に冷却した後、その他の成分を加えた。pHは、クエン酸3ナトリウムにより、pH4に調整され、基材ゼリーを想定した外側ゼリーを調製した。
【0091】
1cm角の内側ゼリーを、開口部約7cm、深さ約3cm、容積70mLのPET容器に、約20個点在させ、外側ゼリーを充填した後に、包装フィルムによりヒートシールした。
【0092】
密閉された容器を、85℃で30分加熱して、湯殺菌した。(内-処方6)から(内-処方8)までのそれぞれと、(外-比較)から(外-処方8)までのそれぞれとを組み合わせて、合計15種のゼリーインゼリーを製造した(比較例2-1~2-3、実施例5-1~5-3、実施例6-1~6-3、実施例7-1~7-3、実施例8-1~8-3)。
【0093】
ゼリー片を想定した内側ゼリーに含まれる成分が、加熱処理により溶出した程度を目視するため、それぞれのゼリーインゼリーを、黒色の色紙に静置し、包装フィルムによりヒートシールされた側から等しい撮影条件により写真撮影を行った。その結果を図2に示す。成分の溶出度合いの比較基準として、それぞれの外側ゼリーのみを同形状の容器に充填した後に、包装フィルムによりヒートシールしたゼリーサンプルを製造して、それぞれ図2の左端に並べた(基準6~10)。
【0094】
【表5】
【0095】
【表6】
【0096】
表5及び表6で用いたサンアーティスト(登録商標)PGは、発酵セルロースを20質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウムを6.7質量%、及びキサンタンガムを6.7質量%含有する製剤である。表中のサンアーティスト(登録商標)PG溶液(2.5%)との表記は、サンアーティスト(登録商標)PGが2.5%含まれた溶液であることを示す。
【0097】
[目視評価]
製造した合計15種のゼリーインゼリー(比較例2-1~2-3、実施例5-1~5-3、実施例6-1~6-3、実施例7-1~7-3、実施例8-1~8-3)について、目視評価を行った。評価方法は、試験例1と同様である。
【0098】
目視評価による結果は、表7のとおりである。なお、表7は、図2と基準となる外側ゼリー、比較例2-1~2-3、実施例5-1~8-3の結果がそれぞれ対応する配置となるように記載している。
【0099】
【表7】
【0100】
図2に示すように、セルロースを含有しない基材ゼリー(外側ゼリー)を用いたゼリーインゼリーでは、ゼリー片(内側ゼリー)に含まれる成分が加熱処理により溶出して、基材ゼリーが白濁~ゼリー片に含まれる色素の薄い朱色に染まっている。ゼリー片に含まれる成分の溶出により、ゼリー片の輪郭や、基材ゼリーとの境界が不明瞭となり、外観を著しく損ねる結果となった(最上段の写真、比較例2-1~2-3)。表7に示す目視評価では、比較例2-1~2-3は、評価者全員が評点1をつける結果となった。
【0101】
一方、図2に示すように、発酵セルロースを含有する基材ゼリー(外側ゼリー)を用いたゼリーインゼリーでは、ゼリー片(内側ゼリー)に含まれる成分が加熱処理により溶出することが抑制され、基材ゼリーの色合いは基準とする左端のサンプルと同程度の色合いであった。これにより、基材ゼリーに発酵セルロースを含有させることによって、ゼリー片に含まれる成分の加熱処理による溶出を抑制できることが確認された(2段目から5段目までの写真、実施例5-1~5-3、実施例6-1~6-3、実施例7-1~7-3、実施例8-1~8-3)。表4に示す目視評価では、実施例5-1~5-3、実施例6-1~6-3、実施例7-1~7-3、実施例8-1~8-3は、評価者全員が評点3をつける結果となった。
【0102】
(試験例3.ゼリーインゼリーの外観評価試験3)
表8の処方に基づき、ゼリー片を想定した内側ゼリーを調製した。具体的には、果糖ブドウ糖液糖と各種ゲル化剤とを混合した後、水に分散させた。約80℃に加熱することで、均一にゲル化剤を溶解させた。ゲル化剤溶液を約70℃に冷却した後、その他の成分を加えた。pHは、クエン酸3ナトリウムにより、pH4に調整された。このゼリーミックスを容器に充填して成形した後、1cm角に裁断することでゼリー片を想定した内側ゼリーを調製した。
【0103】
また、表9の処方に基づき、基材ゼリーを想定した外側ゼリーを調製した。具体的には、果糖ブドウ糖液糖と各種ゲル化剤とを混合した後、水に分散させた。約80℃に加熱することで、均一にゲル化剤を溶解させた。ゲル化剤溶液を約70℃に冷却した後、その他の成分を加えた。pHは、クエン酸3ナトリウムにより、pH4に調整され、基材ゼリーを想定した外側ゼリーを調製した。
【0104】
1cm角の内側ゼリーを、開口部約7cm、深さ約3cm、容積70mLのPET容器に、約20個点在させ、外側ゼリーを充填した後に、包装フィルムによりヒートシールした。
【0105】
密閉された容器を、85℃で30分加熱して、湯殺菌した。(内-処方9)から(内-処方11)までのそれぞれと、(外-比較)から(外-処方11)までのそれぞれとを組み合わせて、合計12種のゼリーインゼリーを製造した(比較例3-1~3-3、実施例9-1~9-3、実施例10-1~10-3、実施例11-1~11-3)。
【0106】
ゼリー片を想定した内側ゼリーに含まれる成分が、加熱処理により溶出した程度を目視するため、それぞれのゼリーインゼリーを、黒色の色紙に静置し、包装フィルムによりヒートシールされた側から等しい撮影条件により写真撮影を行った。その結果を図3に示す。成分の溶出度合いの比較基準として、それぞれの外側ゼリーのみを同形状の容器に充填した後に、包装フィルムによりヒートシールしたゼリーサンプルを製造して、それぞれ図3の左端に並べた(基準11~14)。
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
【0109】
表8及び表9で用いた微結晶セルロースは、微結晶セルロースを87.5質量%含有する製剤である。
【0110】
[目視評価]
製造した合計12種のゼリーインゼリー(比較例3-1~3-3、実施例9-1~9-3、実施例10-1~10-3、実施例11-1~11-3)について、目視評価を行った。評価方法は、試験例1と同様である。
【0111】
目視評価による結果は、表10のとおりである。なお、表10は、図3と基準となる外側ゼリー、比較例3-1~3-3、実施例9-1~11-3の結果がそれぞれ対応する配置となるように記載している。
【0112】
【表10】
【0113】
図3に示すように、セルロースを含有しない基材ゼリー(外側ゼリー)を用いたゼリーインゼリーでは、ゼリー片(内側ゼリー)に含まれる成分が加熱処理により溶出して、基材ゼリーが白濁~ゼリー片に含まれる色素の薄い朱色に染まっている。ゼリー片に含まれる成分の溶出により、ゼリー片の輪郭や、基材ゼリーとの境界が不明瞭となり、外観を著しく損ねる結果となった(最上段の写真、比較例3-1~3-3)。表10に示す目視評価では、比較例3-1~3-3は、評価者全員が評点1をつける結果となった。
【0114】
一方、図3に示すように、結晶セルロースを含有する基材ゼリー(外側ゼリー)を用いたゼリーインゼリーでは、ゼリー片(内側ゼリー)に含まれる成分が加熱処理により溶出することが抑制され、基材ゼリーの色合いは基準とする左端のサンプルと同程度の色合いであった。これにより、基材ゼリーに結晶セルロースを含有させることによって、ゼリー片に含まれる成分の加熱処理による溶出を抑制できることが確認された(2段目から4段目までの写真、実施例9-1~9-3、実施例10-1~10-3、実施例11-1~11-3)。表4に示す目視評価では、実施例9-1~9-3、実施例10-1~10-3、実施例11-1~11-3は、評価者全員が評点3をつける結果となった。
図1
図2
図3