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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/02 20060101AFI20230413BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019058028
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020157407
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 久人
(72)【発明者】
【氏名】中野 賢二
(72)【発明者】
【氏名】武内 紀之
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-148117(JP,A)
【文献】特開2014-037080(JP,A)
【文献】特開2011-136541(JP,A)
【文献】特開2017-080827(JP,A)
【文献】特開2015-199175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B25B21/00-23/18
B24B3/00-3/60
B24B21/00-39/06
B23B35/00-49/06
B23D45/00-65/04
B27B1/00-23/00
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、
前記作業工具を駆動させるモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、を備え、
前記本体ケースに前記モータが収容され、
前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、
前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられており、
前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部が形成されたバッテリ部が設けられるとともに、
前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出しており、
前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられており、
前記干渉低減手段は、
前記バッテリ部の前面と、前記バッテリ部において前記本体ケースの左右他方側となる側面との間の角部において、前記バッテリの前面と対向する部位の上端部を、前記トップハンドルの上端部よりも下方に配置するとともに、
前記バッテリ部の左右中央を、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置することで構成されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項2】
本体ケースと、
前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、
前記作業工具を駆動させるモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、を備え、
前記本体ケースに前記モータが収容され、
前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、
前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられており、
前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部が形成されたバッテリ部が設けられるとともに、
前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出しており、
前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられており、
前記干渉低減手段は、前記バッテリの前面と、前記バッテリにおいて前記本体ケースの左右他方側となる側面との間の角部において、前記バッテリの前面の上部に、前記バッテリの前面に対して窪み部を形成するとともに、
前記バッテリ部の左右中央を、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置することで構成されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項3】
本体ケースと、
前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、
前記作業工具を駆動させるモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、を備え、
前記本体ケースに前記モータが収容され、
前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、
前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられており、
前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部が形成されたバッテリ部が設けられるとともに、
前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出しており、
前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられており、
前記干渉低減手段は、前記バッテリ部の左右中央を、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置することで構成されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項4】
本体ケースと、
前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、
前記作業工具を駆動させるモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、を備え、
前記本体ケースに前記モータが収容され、
前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、
前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられており、
前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部が形成されたバッテリ部が設けられるとともに、
前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出しており、
前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられており、
前記干渉低減手段は、前記バッテリの後端部よりも、前記バッテリの前端部の左右中央、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置されるように傾斜した状態で、前記バッテリを前記バッテリ部に取り付けることで構成されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項5】
本体ケースと、
前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、
前記作業工具を駆動させるモータと、
前記モータに電力を供給するバッテリと、を備え、
前記本体ケースに前記モータが収容され、
前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、
前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられており、
前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部が形成されたバッテリ部が設けられるとともに、
前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出しており、
前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられており、
前記干渉低減手段は、前記バッテリの下端部よりも、前記バッテリの上端部の左右中央、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置されるように傾斜した状態で、前記バッテリを前記バッテリ部に取り付けることで構成されていることを特徴とする電動作業機。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電動作業機であって、
前記バッテリ部は、上部が下部よりも後方に配置されるように傾斜していることを特徴とする電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動式のチェンソーとしては、本体ケースにモータが収容されるとともに、本体ケースの後端部にはバッテリを取り付けるバッテリ部が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなチェンソーでは、バッテリを本体ケース内に収容する場合に比べて、大きなバッテリを取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5530186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のチェンソーでは、本体ケースの上部にトップハンドルが形成されるとともに、本体ケースの左側面に横ハンドルが取り付けられている。この構成では、作業者は左手で横ハンドルを持つとともに、右手でトップハンドルを持つことになる。前記した従来のチェンソーでは、バッテリ部およびバッテリがトップハンドルよりも右側に大きく突出している。
【0005】
作業者から比較的に遠方の対象物を切断するために、チェンソーを作業者から少し遠ざけるときには、作業者の右手をトップハンドルから本体ケースの後方に向けてやや伸ばすことが好ましい。しかしながら、前記した従来のチェンソーでは、右手の掌や手首がバッテリ部やバッテリの右側部に干渉し、右手がトップハンドルに対して右側に開いた状態となるため、作業者から比較的に遠方の対象物を切断し難いという問題がある。このように、従来のチェンソーでは、バッテリ部およびバッテリが手の動きに対して障害となる場合がある。
【0006】
本発明は、前記した問題を解決し、大きなバッテリを取り付けても、作業時にトップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えることができ、作業時の取り回しを良くできる電動作業機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第一の発明は、電動作業機であって、本体ケースと、前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、前記作業工具を駆動させるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備えている。前記本体ケースに前記モータが収容され、前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられている。前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部を有するバッテリ部が設けられている。前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出している。また、前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられている。前記干渉低減手段は、前記バッテリ部の前面と、前記バッテリ部において前記本体ケースの左右他方側となる側面との間の角部において、前記バッテリの前面と対向する部位の上端部を、前記トップハンドルの上端部よりも下方に配置するとともに、前記バッテリ部の左右中央を、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置することで構成されている。
【0008】
前記課題を解決するため、第二の発明は、電動作業機であって、本体ケースと、前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、前記作業工具を駆動させるモータと
、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備えている。前記本体ケースに前記モータが収容され、前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられている。前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部を有するバッテリ部が設けられている。前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出している。また、前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられている。前記干渉低減手段は、前記バッテリの前面と、前記バッテリにおいて前記本体ケースの左右他方側となる左右他方の側面との間の角部において、前記バッテリの前面の上部に、前記バッテリの前面に対して窪み部を形成するとともに、前記バッテリ部の左右中央を、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置することで構成されている。
【0009】
前記課題を解決するため、第三の発明は、電動作業機であって、本体ケースと、前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、前記作業工具を駆動させるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備えている。前記本体ケースに前記モータが収容され、前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられている。前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部が形成されたバッテリ部が設けられている。前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出している。また、前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられている。前記干渉低減手段は、前記バッテリ部の左右中央を、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置することで構成されている。
【0010】
前記課題を解決するため、第四の発明は、電動作業機であって、本体ケースと、前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、前記作業工具を駆動させるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備えている。前記本体ケースに前記モータが収容され、前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられている。前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部を有するバッテリ部が設けられている。前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出している。また、前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられている。前記干渉低減手段は、前記バッテリの後端部よりも、前記バッテリの前端部の左右中央、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置されるように傾斜した状態で、前記バッテリを前記バッテリ部に取り付けることで構成されている。
【0011】
前記課題を解決するため、第五の発明は、電動作業機であって、本体ケースと、前記本体ケースの前部から前方に突出している作業工具と、前記作業工具を駆動させるモータと、前記モータに電力を供給するバッテリと、を備えている。前記本体ケースに前記モータが収容され、前記本体ケースの上部には、前後方向に延びているトップハンドルが設けられ、前記本体ケースの左右一方の側面には、横ハンドルが設けられている。前記トップハンドルの後方には、一つの前記バッテリが着脱自在に設置される保持部を有するバッテリ部が設けられている。前記バッテリを前記保持部に取り付けた状態では、前記バッテリの上端部が前記トップハンドルの後端部の上端縁よりも上方に突出している。また、前記トップハンドルの後方には、前記トップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えるための干渉低減手段が設けられている。前記干渉低減手段は、前記バッテリの下端部よりも、前記バッテリの上端部の左右中央、前記トップハンドルの把持部の左右中央を通過している前後方向の軸線に対して前記本体ケースの左右一方側に配置されるように傾斜した状態で、前記バッテリを前記バッテリ部に取り付けることで構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動作業機を作業者が持つときには、左右一方の手で横ハンドルを持ち、他方の手でトップハンドルを持つことになる。本発明の電動作業機では、バッテリ部やバッテリが左右一方側に寄るように構成されているため、作業者の他方の手の掌や手首を一方側に寄せることができる。したがって、本発明の電動作業機では、作業時にトップハンドルを把持した掌または手首への干渉を抑えることができ、手の動きの自由度が高まるため、電動作業機の取り回しが良くなり、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係るチェンソーを示した側面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係るチェンソーを示した平面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係るチェンソーにおいてバッテリを外した状態の斜視図である。
図4】本発明の第一実施形態に係るチェンソーを前方右上から見た斜視図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るチェンソーを示した平面図である。
図6】本発明の第三実施形態に係るチェンソーを示した背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の一例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
各実施形態では、樹木や板などを切断するためのチェンソーに、本発明を適用した構成を例として説明する。以下の説明では、チェンソーの切断部側を前側として、トップハンドル側を上側としている。
【0015】
[第一実施形態]
第一実施形態のチェンソー1Aは、図1に示すように、本体ケース10と、本体ケース10に設けられた切断部20と、切断部20を駆動させるモータ30と、バッテリ90と、を備えている。チェンソー1Aは、本体ケース10に取り付けたバッテリ90からモータ30に電力が供給されることで、切断部20が駆動する。
【0016】
本体ケース10は、図3に示すように、樹脂製の箱体である本体部11と、本体部11の上側に設けられたトップハンドル40と、を備えている。このように、本体ケース10の上部には、トップハンドル40が設けられている。また、本体ケース10の左側面には、横ハンドル50が取り付けられている。
【0017】
なお、第一実施形態において、チェンソー1Aの左側とは、特許請求の範囲における左右一方であり、チェンソー1Aの右側とは、特許請求の範囲における左右他方である。
【0018】
本体部11の前部には、図1に示すように、モータ30が収容されている。モータ30は、公知の電動式モータである。モータ30の出力軸31は左右方向に延びている。
本体部11の前部には、モータ30の他に、モータ30の駆動を制御する制御基板(図示せず)およびモータ30の出力軸31に連結された駆動ギヤ(図示せず)などの駆動機構が収容されている。
【0019】
トップハンドル40は、本体部11の上面に連続して形成されており、本体部11の上方で前後方向に延びている。
トップハンドル40の前端部41は、本体部11の上面の前端部から上方に向けて突出している。トップハンドル40の後端部42は、後記するバッテリ部12の保持部13の上端部に連結されている。
【0020】
トップハンドル40の前端部41と後端部42との間には、前後方向に延びている把持部43が形成されている。把持部43は、トップハンドル40の前端部41から後端部42に向けて僅かに斜め下向きに傾斜している。
【0021】
把持部43は、作業者がチェンソー1Aを持つときに把持する部位である。把持部43と本体部11の上面との間の空間には、作業者の手が差し込まれる。
把持部43には、作業者が把持した状態で、ソーチェン22の回転を増減させるための操作手段であるトリガーレバー43aと、トリガーレバー43aのロックを解除するロック解除レバー43bと、が設けられている。
【0022】
図2に示すように、トップハンドル40の前端部41の上面には、作業者が把持部43を右手で把持したときに、右手の親指の腹面を載せるサムレスト45が設けられている。
また、サムレスト45の右側には、モータ30(図1参照)の駆動と停止を切り換える押しボタン式の電源スイッチ46が設けられている。
また、サムレスト45には、電源スイッチ46のオンオフを示すLED(発光ダイオード)の表示灯47が設けられている。
【0023】
トップハンドル40の後方には、図1に示すように、バッテリ90が着脱自在に設置されるバッテリ部12が設けられている。バッテリ部12は、本体部11の後端面に形成されている。
バッテリ部12には、バッテリ90を保持する保持部13と、バッテリ90の下部が収容されるバッテリケース14と、が形成されている。
【0024】
保持部13は、本体部11の後端部と、本体部11の後端部から上方に向けて延びている板状の部位とに形成されている。保持部13は、上部よりも下部が前方に配置されるように傾斜している。図3に示すように、保持部13の後面は、上端部から下端部に向かうに連れて漸次前方に変位した傾斜面となっている。保持部13の上端部には、トップハンドル40の後端部42が連結されている。
【0025】
保持部13の後面には、バッテリ90を着脱するための着脱機構15が設けられている。着脱機構15には、バッテリ90が上下方向に嵌め合わされるガイド部材と、バッテリ90を下側から支持する支持部材(図示せず)と、が設けられている。
保持部13にバッテリ90を取り付ける場合には、バッテリ90を着脱機構15に対して下方に向けてスライドさせることで、図1に示すように、バッテリ90を保持部13に取り付けることができる。
【0026】
バッテリ90は、公知のバッテリであり、図3に示すように、上下方向に延びている直方体のケースに、リチウムイオン蓄電池などの二次電池を収容したものである。
バッテリ90の高さは、図1に示すように、本体部11の後部の高さよりも大きく形成されている。本実施形態のバッテリ90は、本体ケース10に収容するタイプのバッテリよりも大きく形成されている。そして、バッテリ90は、作業に適した十分な高出力および充電容量を備えている。
【0027】
バッテリ90を保持部13に取り付けた状態では、バッテリ90の長手方向が本体ケース10の高さ方向に配置される。また、保持部13に取り付けたバッテリ90は、本体部11の後部と比較して大きく形成されている。バッテリ90は、本体部11の後部の高さ方向の中央部を上下方向に跨いでいる。
【0028】
また、バッテリ90を保持部13に取り付けた状態では、バッテリ90の上端部は、トップハンドル40の後端部42の下縁部H2よりも上方に突出しているとともに、トップハンドル40の後端部42の上縁部H1よりも上方に突出している。
【0029】
保持部13には、バッテリ90をバッテリ部12から取り外すためのイジェクト機構(図示せず)が設けられている。保持部13にバッテリ90を取り付けた状態で、バッテリ90の上部に設けられたレバーを操作して、イジェクト機構を作動させることで、バッテリ90を押し上げることができる。
【0030】
また、保持部13の後面には、図3に示すように、金属製の接続端子16が設けられている。接続端子16は、制御基板およびモータ30(図1参照)に電気的に接続されている。そして、保持部13の接続端子16にバッテリ90の接続端子が接続されることで、バッテリ90から制御基板およびモータ30に電力が供給される。
【0031】
バッテリケース14は、図1に示すように、バッテリ部12の下端部に形成されている。バッテリケース14は、バッテリ90の下部が収容される筒状の部位である。バッテリ90の下部はバッテリケース14に挿入される。
【0032】
本体部11の右側部には、図2に示すように、前方に突出している切断部20が設けられている。切断部20は、切断作業用の作業工具であり、ガイドバー21およびソーチェン22を備えている。
ガイドバー21は、前後方向に延びている板状部材であり、ガイドバー21の後端部が本体部11の右側部に取り付けられている。
ガイドバー21の外周部には、環状のソーチェン22が巻回されている。ソーチェン22の後端部は、モータ30の出力軸に連結された駆動ギヤに係合されている。
モータ30を駆動させて、駆動ギヤ(図示せず)を回転させると、ソーチェン22がガイドバー21の外周に沿って回転するように構成されている。
【0033】
横ハンドル50は、図3に示すように、本体ケース10の左側面の前部から後部に亘って、前後方向に延びている。横ハンドル50は、円柱状の部材を折り曲げて形成されている。
横ハンドル50の前端部は、トップハンドル40の前端部41の左側面に取り付けられている。横ハンドル50の後端部は、モータ30の出力軸31よりも後方かつ下方に配置されており、バッテリケース14の左側壁に取り付けられている。
横ハンドル50の前端部と後端部との間の部位は、本体ケース10の左側面に対して外側に膨らむように湾曲している(図2参照)。
【0034】
図1に示すチェンソー1Aによって樹木や板などの切断対象物を切断する場合には、作業者は右手でトップハンドル40の把持部43を把持するとともに、左手で横ハンドル50を把持して、チェンソー1を携帯する。
【0035】
作業者が右手でトップハンドル40の把持部43を把持すると、掌でロック解除レバー43bが押し込まれ、トリガーレバー43aのロックが解除される。また、把持部43を把持した右手の親指の腹面を、図2に示すサムレスト45に載せることで、作業者はトップハンドル40を安定して持つことができる。
【0036】
次に、作業者は右手の親指を右側にずらして電源スイッチ46を押してオンにする。そして、右手の親指の腹面をサムレスト45に戻した後に、図1に示すように、右手の人差指でトリガーレバー43aを引くと、モータ30が駆動して、ソーチェン22が回転する。これにより、ソーチェン22によって切断対象物を切断できる。
【0037】
第一実施形態のチェンソー1Aでは、図4に示すように、トップハンドル40を把持した掌または手首への干渉を抑えるための第一干渉低減手段100、第二干渉低減手段200および第三干渉低減手段300がトップハンドル40の後方に設けられている。
【0038】
第一干渉低減手段100は、バッテリ部12の保持部13の前面13aと右側面13bとの間の角部であって、バッテリ90の前面90aと対向する部分の上端部を、トップハンドル40の後端部42の上縁部よりも下方に配置することで構成されている。
保持部13の前面13aと右側面13bとの間の角部の上端部には、左右方向の内側から外側に向かうに連れて漸次低くなるように傾斜した傾斜面13cが形成されている。
【0039】
第二干渉低減手段200は、バッテリ90の前面90aと右側面90bとの間の角部であって、バッテリ90の前面90aの上部に、バッテリ90の前面90aに対して窪み部90cを形成することで構成されている。
バッテリ90の前面90aと右側面90bとの間の角部の上端部には、左右方向の内側から外側に向かうに連れて漸次低くなるように傾斜した傾斜面90dが形成されている。バッテリ90の傾斜面90dは、保持部13の傾斜面13cの後方に連続して配置されている。
【0040】
第三干渉低減手段300は、図2に示すように、バッテリ部12およびバッテリ90の左右中央Pを、トップハンドル40の把持部43の左右中央を通過している前後方向の軸線Lに対して左側に配置することで構成されている。
バッテリ部12およびバッテリ90は、トップハンドル40の把持部43に対して右側よりも左側に大きく突出している。つまり、バッテリ部12およびバッテリ90の左右中央Pを軸線L上に配置した場合に比べて、トップハンドル40の把持部43に対するバッテリ部12およびバッテリ90の右側への突出量が小さくなっている。
【0041】
作業者がトップハンドル40を右手で把持し、作業者から比較的に遠方の対象物を切断するために、チェンソー1Aを作業者から少し遠ざけるようとするとき、または、作業者から比較的に上方の対象物を切断するために、チェンソー1Aを作業者から少し上げようとするときは、作業者の右手をトップハンドル40から本体ケース10の後方に向けてやや伸ばすことになる。
【0042】
このとき、トップハンドル40を把持した右手の掌または手首は、バッテリ部12の保持部13の右前の角部の上端部に形成された傾斜面13c上に配置される。このように、右手の掌や手首が保持部13の右側面13bよりも左側に入り込む。
【0043】
また、トップハンドル40を把持した右手の掌または手首は、バッテリ90の右前の角部の上部に形成された窪み部90c内に配置される。このように、右手の掌や手首がバッテリ90の右側面90bよりも左側に入り込む。
【0044】
また、チェンソー1Aでは、バッテリ部12およびバッテリ90の左右中央Pが、トップハンドル40の把持部43の左右中央よりも左側に配置されている。これにより、右手の掌や手首を左側に寄せることができる。
【0045】
以上のようなチェンソー1A(電動作業機)では、図2に示すように、バッテリ部12およびバッテリ90が左側に寄るように構成されているため、チェンソー1Aを作業者から比較的に遠ざけたとき、または、比較的に上方に上げたときに、右手の掌や手首を左側に寄せることができる。したがって、作業者は右手を本体ケース10から後方に向けて伸ばし易くなる。
このように、チェンソー1Aでは、作業時にトップハンドル40を把持した掌または手首と、バッテリ部12およびバッテリ90との干渉を抑えることができるため、手の動きの自由度が高まる。
また、チェンソー1Aでは、図1に示すように、本体ケース10の前部にモータ30が収容され、後部に大きなバッテリ90を取り付けられているため、チェンソー1Aの前後の重量バランスが良い。
したがって、第一実施形態のチェンソー1Aでは、作業時の取り回しが良くなり、作業効率を高めることができる。
【0046】
第一実施形態のチェンソー1Aでは、バッテリ部12に取り付けたバッテリ90の長手方向が、本体ケース10の高さ方向に配置されている。この構成では、バッテリ90の長手方向を横方向に向けた場合に比べて、バッテリ90を高さ方向に大きくしても、バッテリ90の重心を前側に寄せることができる。したがって、大きなバッテリ90を備えたチェンソー1Aの作業時の取り回しを良くできるとともに、チェンソー1Aを小型化できる。
【0047】
第一実施形態のチェンソー1Aにおいて、バッテリ90を保持部13に取り付けた状態では、バッテリ90の上端部は、トップハンドル40の後端部42の下縁部H2よりも上方に突出しているとともに、トップハンドル40の後端部42の上縁部H1よりも上方に突出している。このように、バッテリ90の高さを設定することで、バッテリ90の出力および充電容量を大きくできる。
【0048】
第一実施形態のチェンソー1Aでは、バッテリ部12の上部が下部よりも後方に配置されるように傾斜しており、バッテリ90が把持部43から後方に離れるように傾斜している。この構成では、バッテリ90を上下方向に長くしても、作業者が把持部43を把持したときに、バッテリ90の上部が邪魔にならないため、チェンソー1Aの操作性を低下させることなく、バッテリ90を大きくできるとともに、バッテリ90を前記したように傾斜させることにより、バッテリ90の下部が前方に位置するので、トップハンドル40を軸にしたときの重心を前側に寄せることが可能となる。
【0049】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は前記第一実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
第一実施形態のチェンソー1Aには、図2に示すように、第一干渉低減手段100、第二干渉低減手段200および第三干渉低減手段300の三つが設けられている。しかしながら、チェンソー1Aには、第一干渉低減手段100、第二干渉低減手段200および第三干渉低減手段300の少なくとも一つが設けられていればよい。
【0050】
第一実施形態のチェンソー1Aでは、トップハンドル40を右手で把持するように構成されている。例えば、トップハンドル40を左手で把持するように構成した場合には、第一干渉低減手段100、第二干渉低減手段200および第三干渉低減手段300の左右を反転させればよい。
【0051】
第一実施形態では、本発明を適用したチェンソー1Aについて説明しているが、本発明を適用可能な電動作業機は限定されるものではなく、刈払機、ヘッジトリマー、ブロワなどの各種の電動作業機に適用可能である。
【0052】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態のチェンソー1Bについて説明する。
第二実施形態のチェンソー1Bは、前記した第一実施形態のチェンソー1A(図2参照)と略同様な構成であり、第四干渉低減手段400を備えている点が異なっている。
【0053】
第四干渉低減手段400は、図5に示すように、バッテリ90の後端部の左右中央よりも前端部の左右中央が左側に配置されるように傾斜した状態で、バッテリ90をバッテリ部12に取り付けることで構成されている。
第二実施形態のバッテリ部12の保持部13は、トップハンドル40の把持部43の左右中央に対して右側よりも左側に大きく突出している。
【0054】
第二実施形態のチェンソー1Bでは、バッテリ部12およびバッテリ90の前部が後部よりも左側に寄せられているため、トップハンドル40を把持した右手の掌や手首を左側に寄せることができる。
このように、第二実施形態のチェンソー1Bでは、作業時にトップハンドル40を把持した掌または手首への干渉を抑えることができ、手の動きの自由度が高まるため、作業時の取り回しが良くなり、作業効率を高めることができる。
【0055】
以上、本発明の第二実施形態について説明したが、本発明は前記第二実施形態に限定されることなく、第一実施形態と同様に、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
第二実施形態のチェンソー1Bには、第四干渉低減手段400に加えて、第一干渉低減手段100、第二干渉低減手段200および第三干渉低減手段300の少なくとも一つを設けてもよい。また、第二実施形態のチェンソー1Bには、第四干渉低減手段400のみを設けてもよい。
【0056】
第二実施形態のチェンソー1Bにおいて、トップハンドル40を左手で把持するように構成した場合には、第四干渉低減手段400の左右を反転させる。
【0057】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態のチェンソー1Cについて説明する。
第三実施形態のチェンソー1Cは、前記した第一実施形態のチェンソー1A(図2参照)と略同様な構成であり、第五干渉低減手段500を備えている点が異なっている。
【0058】
第五干渉低減手段500は、図6に示すように、バッテリ90の下端部の左右中央よりも上端部の左右中央が左側に配置されるように傾斜した状態で、バッテリ90をバッテリ部12に取り付けることで構成されている。
第三実施形態のチェンソー1Cでは、バッテリ部12の保持部13(図4参照)が下端部よりも上端部が左側に配置されるように傾斜している。
【0059】
第三実施形態のチェンソー1Cでは、バッテリ90の上端部が下端部よりも左側に寄せられているため、トップハンドル40を把持した右手の掌や手首を左側に寄せることができる。
このように、第三実施形態のチェンソー1Cでは、作業時にトップハンドル40を把持した掌または手首への干渉を抑えることができ、手の動きの自由度が高まるため、作業時の取り回しが良くなり、作業効率を高めることができる。
【0060】
以上、本発明の第三実施形態について説明したが、本発明は前記第三実施形態に限定されることなく、第一実施形態と同様に、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
第三実施形態のチェンソー1Cには、第五干渉低減手段500に加えて、第一干渉低減手段100(図2参照)、第二干渉低減手段200(図2参照)、第三干渉低減手段300(図2参照)および第四干渉低減手段400(図5参照)の少なくとも一つを設けてもよい。また、第三実施形態のチェンソー1Cには、第五干渉低減手段500のみを設けてもよい。
【0061】
第三実施形態のチェンソー1Cにおいて、トップハンドル40を左手で把持するように構成した場合には、第五干渉低減手段500の左右を反転させる。
【符号の説明】
【0062】
1A チェンソー(第一実施形態)
1B チェンソー(第二実施形態)
1C チェンソー(第三実施形態)
10 本体ケース
11 本体部
12 バッテリ部
13 保持部
13c 傾斜面
14 バッテリケース
20 切断部
21 ガイドバー
22 ソーチェン
30 モータ
40 トップハンドル
43 把持部
45 サムレスト
46 電源スイッチ
47 表示灯
50 横ハンドル
90 バッテリ
90c 窪み部
90d 傾斜面
100 第一干渉低減手段
200 第二干渉低減手段
300 第三干渉低減手段
400 第四干渉低減手段
500 第五干渉低減手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6