(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】竪樋本数算出システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20230413BHJP
E04D 13/08 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
G06F30/13
E04D13/08 Z
(21)【出願番号】P 2019067196
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 勝
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-259475(JP,A)
【文献】特開2002-146979(JP,A)
【文献】特開2007-080013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
E04D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根部の屋根投影平面積と、軒樋の仕様及び竪樋の仕様に基づいて決定される前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積と、に基づいて、前記竪樋の第一の必要本数を算出する第一必要本数算出処理部と、
前記軒樋の長さ寸法と、前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様に基づいて決定される前記竪樋の最大離間距離と、に基づいて、前記竪樋の第二の必要本数を算出する第二必要本数算出処理部と、
前記第一の必要本数と、前記第二の必要本数と、のうち本数が多い方を前記建物における前記竪樋の必要本数として算出する必要本数決定処理部と、
を具備する竪樋本数算出システム。
【請求項2】
前記第一必要本数算出処理部は、
前記屋根投影平面積を、前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積で除算することで、前記竪樋の第一の必要本数を算出する、
請求項1に記載の竪樋本数算出システム。
【請求項3】
前記第一必要本数算出処理部は、
前記建物が建設される地域の地域情報に対応する降雨強度に基づいて、前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定する、
請求項1又は請求項2に記載の竪樋本数算出システム。
【請求項4】
前記第二必要本数算出処理部は、
前記軒樋の長さ寸法を、前記竪樋の最大離間距離で除算することで、前記竪樋の第二の必要本数を算出する、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の竪樋本数算出システム。
【請求項5】
前記第二必要本数算出処理部は、
前記軒樋が複数に分割されている場合、
前記複数の軒樋ごとに前記竪樋の本数を算出すると共に、当該複数の軒樋ごとの前記竪樋の本数の合計を前記竪樋の第二の必要本数とする、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の竪樋本数算出システム。
【請求項6】
前記第一必要本数算出処理部は、
前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋を構成するか否かの判断に基づいて、前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定し、
前記第二必要本数算出処理部は、
前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋を構成するか否かの判断に基づいて、前記竪樋の最大離間距離を決定する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の竪樋本数算出システム。
【請求項7】
前記第一必要本数算出処理部は、
前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋を構成する場合、前記竪樋の垂直落差が、所定の距離以下であるか否かの判断に基づいて、前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定し、
前記第二必要本数算出処理部は、
前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋を構成する場合、前記竪樋の垂直落差が、所定の距離以下であるか否かの判断に基づいて、前記竪樋の最大離間距離を決定する、
請求項6に記載の竪樋本数算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪樋本数算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物に設置される雨樋に関する設計支援システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、建物の邸別設計情報を用いて、排水ドレイン及び竪樋の必要数を決定する排水ドレイン配置設計プログラムが記載されている。上記排水ドレイン配置設計プログラムは、雨樋における外樋の周長を、排水ドレイン1つあたりで負担できる外樋の長さで除算することで、排水ドレイン及び竪樋の必要数を決定する構成とされている。
【0004】
ここで、竪樋(排水ドレイン)の必要数は、建物の屋根部の屋根投影平面積と、竪樋(排水ドレイン)1つあたりで負担できる屋根投影平面積と、に基づく算出方法によっても算出される。しかしながら、上述した特許文献1に記載される排水ドレイン配置設計プログラムは、このような屋根投影平面積に基づく算出方法によっては竪樋(排水ドレイン)の必要数を算出しない。
【0005】
このことから、上記排水ドレイン配置設計プログラムで算出した竪樋(排水ドレイン)の必要数が、上記屋根投影平面積に基づく算出方法によっても適当であるか(必要数を満足するか)否かを判断するには、別途、算出の工程が必要となり、設計者の負担となることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、建物の屋根部の屋根投影平面積に基づく竪樋の必要本数を満足させ、かつ、軒樋の長さ寸法に基づく竪樋の必要本数を満足させる竪樋の本数を算出可能な竪樋本数算出システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、建物の屋根部の屋根投影平面積と、軒樋の仕様及び竪樋の仕様に基づいて決定される前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積と、に基づいて、前記竪樋の第一の必要本数を算出する第一必要本数算出処理部と、前記軒樋の長さ寸法と、前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様に基づいて決定される前記竪樋の最大離間距離と、に基づいて、前記竪樋の第二の必要本数を算出する第二必要本数算出処理部と、前記第一の必要本数と、前記第二の必要本数と、のうち本数が多い方を前記建物における前記竪樋の必要本数として算出する必要本数決定処理部と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、前記第一必要本数算出処理部は、前記屋根投影平面積を、前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積で除算することで、前記竪樋の第一の必要本数を算出するものである。
【0011】
請求項3においては、前記第一必要本数算出処理部は、前記建物が建設される地域の地域情報に対応する降雨強度に基づいて、前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定するものである。
【0012】
請求項4においては、前記第二必要本数算出処理部は、前記軒樋の長さ寸法を、前記竪樋の最大離間距離で除算することで、前記竪樋の第二の必要本数を算出するものである。
【0013】
請求項5においては、前記第二必要本数算出処理部は、前記軒樋が複数に分割されている場合、前記複数の軒樋ごとに前記竪樋の本数を算出すると共に、当該複数の軒樋ごとの前記竪樋の本数の合計を前記竪樋の第二の必要本数とするものである。
【0014】
請求項6においては、前記第一必要本数算出処理部は、前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋を構成するか否かの判断に基づいて、前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定し、前記第二必要本数算出処理部は、前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋を構成するか否かの判断に基づいて、前記竪樋の最大離間距離を決定するものである。
【0015】
請求項7においては、前記第一必要本数算出処理部は、前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋を構成する場合、前記竪樋の垂直落差が、所定の距離以下であるか否かの判断に基づいて、前記竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定し、前記第二必要本数算出処理部は、前記軒樋の仕様及び前記竪樋の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋を構成する場合、前記竪樋の垂直落差が、所定の距離以下であるか否かの判断に基づいて、前記竪樋の最大離間距離を決定するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、建物の屋根部の屋根投影平面積に基づく竪樋の必要本数を満足させ、かつ、軒樋の長さ寸法に基づく竪樋の必要本数を満足させる竪樋の本数を算出することができる。
【0018】
請求項2においては、屋根投影平面積と、竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積と、を用いた竪樋の第一の必要本数の算出を行うことができる。
【0019】
請求項3においては、竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積を好適に決定することができる。
【0020】
請求項4においては、軒樋の長さ寸法と、竪樋の最大離間距離と、を用いた竪樋の第二の必要本数の算出を行うことができる。
【0021】
請求項5においては、軒樋が複数設けられた建物において、竪樋の第二の必要本数の算出を行うことができる。
【0022】
請求項6においては、軒樋の仕様及び竪樋の仕様の組み合わせにより定まる雨樋のサイホン性能に基づいて、竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積及び竪樋の最大離間距離を決定することができる。
【0023】
請求項7においては、雨樋のサイホン性能の有無に基づいて、竪樋の一本あたりの負担屋根投影平面積及び竪樋の最大離間距離を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る竪樋本数算出システムの対象となる建物を模式的に示した平面図。
【
図3】竪樋本数算出システムの構成を示したブロック図。
【
図4】軒樋及び竪樋の仕様と、地域情報ごとの竪樋一本あたりの負担屋根投影平面積と、の関係を示した表。
【
図5】軒樋及び竪樋の仕様と、竪樋の最大離隔距離と、の関係を示した表。
【
図7】第一必要本数算出処理を示したフローチャート。
【
図8】第二必要本数算出処理を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の一実施形態に係る竪樋本数算出システム100について説明する。まず、
図1及び
図2に示す当該竪樋本数算出システム100の対象となる建物1について説明する。
【0026】
建物1は、所定の敷地に建てられる住宅である。本実施形態では、建物1を戸建て住宅としている。建物1の階数としては、適宜の階数を採用可能である。また、建物1は、戸建て住宅に限られず集合住宅としてもよい。建物1は、屋根部2及び雨樋3を具備する。
【0027】
屋根部2は、建物1の上部を覆うものである。屋根部2の形状としては、寄棟や切妻等、種々の形状を採用可能である。なお、図例では、屋根部2の形状を寄棟とした例を示している。屋根部2は、平面視において、略矩形状とされている。
【0028】
雨樋3は、屋根部2の雨水を集めると共に排水するものである。雨樋3は、軒樋4及び竪樋5を具備する。
【0029】
軒樋4は、屋根部2の雨水を集めるものである。軒樋4は、屋根部の周方向に沿って長尺とされると共に、上方に開口する形状とされる。軒樋4は、
図1に示すように、屋根部2の全周に亘って設けられる。軒樋4は、所定の取付手段を介して、建物1の軒先に設けられる。
【0030】
軒樋4の底部には、集めた雨水を下方に排水する落し口(排水ドレイン)が複数個所に設けられる。軒樋4は、落し口が下流に位置するような傾斜(水勾配)が付与される。上記水勾配は、軒樋4の排水性能等に基づいて設定される。水勾配としては、例えば1/1000~1/300とすることが考えられる。
【0031】
竪樋5は、軒樋4に集められた雨水を排水するものである。竪樋5は、
図2に示すように、上下方向に長尺な筒形状とされている。竪樋5の上端は、軒樋4の落し口に接続される。また、竪樋5の下端は、地中に埋設された排水管に接続される。また、建物1に、バルコニーや下屋根を設ける場合であって、当該バルコニー及び下屋根の雨水を排出する樋を設けた場合、竪樋5の上下方向途中部位において、上記樋が接続される合流部を設けることができる。これにより、上記バルコニー及び下屋根の雨水を竪樋5に合流させることが可能である。
【0032】
次に、竪樋本数算出システム100について説明する。
【0033】
図3に示す竪樋本数算出システム100は、建物1に必要な竪樋5の本数(必要本数)を算出するものである。竪樋本数算出システム100は、主として記憶部101、制御部102、表示部103及び入力部104を具備する。
【0034】
記憶部101は、各種のプログラムやデータ等が記憶されるものである。記憶部101は、HDD、RAM、ROM等により構成される。
【0035】
制御部102は、記憶部101に記憶されたプログラムを実行するものである。制御部102は、CPUにより構成される。
【0036】
表示部103は、各種の情報を表示するものである。表示部103は、液晶ディスプレイ等により構成される。
【0037】
入力部104は、各種の情報を入力するためのものである。入力部104は、キーボード、マウス等により構成される。
【0038】
このように、竪樋本数算出システム100としては、一般的なパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
【0039】
竪樋本数算出システム100は、竪樋本数算出処理を実行可能である。竪樋本数算出処理は、建物1における竪樋5の必要本数を自動で算出するものである。竪樋本数算出処理は、所定の入力値に基づいて行われる。
【0040】
上記所定の入力値は、竪樋本数算出処理を実行する前に、入力部104を介して入力される。ここで、所定の入力値には、建物1の計画情報や、地域情報、軒樋4及び竪樋5の仕様情報が含まれる。上記所定の入力値は、記憶部101に記憶される。
【0041】
計画情報は、建物1の設計計画を示す情報である。計画情報には、平面視における屋根部2の全体の面積(屋根投影平面積)の情報が含まれる。屋根投影平面積は、屋根部2の幅寸法及び奥行寸法により求めるようにしてもよく、建物1の床面積及び軒出面積により求めるようにしてもよい。
【0042】
また、計画情報には、軒樋4の長さ寸法の情報が含まれる。軒樋4の長さ寸法は、連続する軒樋4の長さ寸法である。また、軒樋4が、屋根部2の周方向に沿って複数に分割されている場合には、上記複数の軒樋4のそれぞれの長さ寸法を、軒樋4の長さ寸法として把握する。
【0043】
また、計画情報には、竪樋5の垂直落差の情報が含まれる。ここで、竪樋5の垂直落差とは、竪樋5に合流部が設けられていない場合においては、竪樋5における上端部(落し口に接続される部分)から下端部までの距離である。また、垂直落差は、竪樋5に合流部が設けられている場合においては、竪樋5における上端部(落し口に接続される部分)から合流部までの距離である。
【0044】
また、計画情報には、建物1の階数や、軒先から地面までの距離、バルコニー及び下屋根の有無や面積等の情報が含まれる。また、計画情報は、上述した建物1の情報が含まれるおおまかなプランであってもよく、設計図面であってもよい。
【0045】
また、地域情報は、所定の地域を、雨量(降雨強度)に基づいて複数の地域区分に分類したものである。本実施形態では、都道府県を単位として、全都道府県を降雨強度ごとに三つの地域区分に分類している。なお、上記分類される地域の単位としては、都道府県を更に細分化したものを採用してもよい。
【0046】
降雨強度とは、瞬間的な雨の強さ(例えば十分間の雨の強さ)を一時間あたりの雨量に換算したものである。本実施形態では、都道府県別の降雨強度の最大記録を基に、全都道府県を、第一地域、第二地域及び第三地域の三つの地域区分に分類している。
【0047】
具体的には、
図4に示すように、上記降雨強度の記録が160mm/h以下であり、140mm/hを超える地域を、第一地域としている。また、上記降雨強度の記録が140mm/h以下であり、120mm/hを超える地域を、第二地域としている。また、上記降雨強度の記録が120mm/h以下の地域を、第三地域としている。このように、上記地域区分においては、第一地域、第二地域及び第三地域の順番に雨量が多くなる。
【0048】
また、軒樋4及び竪樋5の仕様情報は、軒樋4及び竪樋5の仕様に関する情報である。ここで、軒樋4及び竪樋5の仕様とは、軒樋4及び竪樋5の種類や形状、内径、材質等、排水性能に関する構成を意味する。
【0049】
雨樋3において、竪樋5の一本あたりの排水性能は、軒樋4の仕様及び竪樋5の仕様の組み合わせによって定まる。例えば、軒樋4の仕様及び竪樋5の仕様の組み合わせにより、サイホン式の雨樋3を構成する場合、竪樋5の一本あたりの排水性能は比較的向上する。これにより、竪樋5の本数を比較的少なくすることができる。ここで、サイホン式の雨樋3とは、竪樋5の内部に雨水を満たすことで、サイホン効果により雨水を引き込み可能な構成とし、排水性能を向上させた雨樋3である。
【0050】
本実施形態では、一例として、軒樋4及び竪樋5について、それぞれ第一の仕様及び第二の仕様を有するものとする。また、以下では、
図4に示すように、第一の仕様の軒樋4及び第一の仕様の竪樋5を組み合わせた雨樋3(以下では、「第一の雨樋3」と称して説明する)と、第二の仕様の軒樋4及び第二の仕様の竪樋5を組み合わせた雨樋3(以下では、「第二の雨樋3」と称して説明する)と、の二種類の雨樋3を例示して説明する。なお、第一の雨樋3及び第二の雨樋3は、いずれもサイホン式の雨樋3であるものとする。
【0051】
なお、サイホン式の雨樋3において、サイホン効果による排水性能(サイホン性能)を発揮させるには、竪樋5の垂直落差が所定の距離以上であることが条件となる。本実施形態では、竪樋5の垂直落差が2m以上であることを、サイホン性能を発揮させる条件としている。すなわち、竪樋5の垂直落差が2m未満である場合、雨樋3をサイホン性能を発揮不能なものとみなす。この場合、サイホン式の雨樋3であっても、当該雨樋3の排水性能を非サイホン式の雨樋3の排水性能と同様とみなす。
【0052】
上述した雨樋3の排水性能により、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積と、竪樋5の最大離隔距離が定まる。以下では、まず、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積について説明する。
【0053】
負担屋根投影平面積は、竪樋5の排水性能の範囲で排水(負担)可能な屋根部2の面積である。負担屋根投影平面積は、建物1が建設される地域の降雨強度に基づいて決定される。本実施形態では、負担屋根投影平面積を、上述したように都道府県ごとの降雨強度に基づく地域区分である第一地域、第二地域及び第三地域に基づいて定めている。具体的には、本実施形態では、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を、
図4に示すものとしている。
【0054】
すなわち、サイホン性能を発揮可能な第一の雨樋3について、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を、第一地域においては65m2とし、第二地域においては75m2とし、第三地域においては85m2としている。
【0055】
また、サイホン性能を発揮可能な第二の雨樋3について、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を、第一地域においては55m2とし、第二地域においては65m2とし、第三地域においては75m2としている。
【0056】
また、サイホン性能を発揮不能な第一の雨樋3及び第二の雨樋3について、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を、第一地域、第二地域及び第三地域のいずれも30m2としている。なお、上述した負担屋根投影平面積は一例であり、負担屋根投影平面積としては上述したものに限られない。
【0057】
次に、竪樋5の最大離隔距離について説明する。
【0058】
最大離隔距離は、雨樋3において隣り合う竪樋5同士の最大(最長)の距離(間隔)である。最大離隔距離は、竪樋5の一本あたりの排水性能に基づいて定まる。本実施形態では、竪樋5の最大離隔距離を、
図5に示すものとしている。
【0059】
すなわち、サイホン性能を発揮可能な第一の雨樋3について、竪樋5の最大離隔距離を20.5mとしている。また、サイホン性能を発揮可能な第二の雨樋3について、竪樋5の最大離隔距離を15.5mとしている。また、サイホン性能を発揮不能な第一の雨樋3及び第二の雨樋3について、いずれも、竪樋5の最大離隔距離を10mとしている。なお、上述した最大離隔距離は一例であり、最大離隔距離としては上述したものに限られない。
【0060】
竪樋本数算出処理は、操作者による操作を契機として実行される。以下では、
図6のフローチャートを用いて、竪樋本数算出処理において制御部102が行う処理について説明する。本実施形態に係る竪樋本数算出処理においては、第一必要本数算出処理、第二必要本数算出処理及び必要本数決定処理が、上記した順番に行われる。
【0061】
まず、制御部102は、第一必要本数算出処理(ステップS10)を行う。第一必要本数算出処理は、建物1の屋根部2の屋根投影平面積と、所定の雨樋3における竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積と、に基づいて竪樋5の第一の必要本数を算出する処理である。
【0062】
上記竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を求めるために必要な情報は、予め操作者により入力(選択)される。具体的には、操作者は、第一必要本数算出処理に先立って、上記所定の雨樋3を構成する軒樋4の仕様及び竪樋5の仕様の組み合わせを選択すると共に、第一地域から第三地域までの地域区分のうち、建物1が建設される地域が含まれるものを選択する。
【0063】
以下では、
図7のフローチャートを用いて、第一必要本数算出処理について説明する。
【0064】
ステップS20において、制御部102は、雨樋3がサイホン式であるか否かを判断する。制御部102は、雨樋3がサイホン式であると判断した場合(ステップS20:YES)には、ステップS21の処理へ移行する。一方、制御部102は、雨樋3がサイホン式でないと判断した場合(ステップS20:NO)には、ステップS23の処理へ移行する。
【0065】
ステップS21において、制御部102は、雨樋3における竪樋5の垂直落差が2m以上であるか(サイホン性能を発揮可能であるか)否かを判断する。制御部102は、竪樋5の垂直落差が2m以上であると判断した場合(ステップS21:YES)には、ステップS22の処理へ移行する。一方、制御部102は、竪樋5の垂直落差が2m未満であると判断した場合(ステップS21:NO)には、ステップS23の処理へ移行する。
【0066】
ステップS22において、制御部102は、屋根部2の屋根投影平面積と、サイホン性能を発揮可能な雨樋3における竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積と、に基づいて竪樋5の第一の必要本数を算出する。具体的には、制御部102は、屋根部2の屋根投影平面積を、サイホン性能を発揮可能な雨樋3における竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積で除算することで竪樋5の第一の必要本数を算出する。
【0067】
上記算出に際して、制御部102は、軒樋4及び竪樋5の仕様と、建物1が建設される地域の地域情報に対応する降雨強度と、の関係から、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を取得する。制御部102は、ステップS22の処理を実行した後、第一必要本数算出処理を終了する。
【0068】
ステップS23において、制御部102は、屋根部2の屋根投影平面積と、サイホン性能を発揮不能な雨樋3における竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積と、に基づいて竪樋5の第一の必要本数を算出する。具体的には、制御部102は、屋根部2の屋根投影平面積を、サイホン性能を発揮不能な雨樋3における竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積で除算することで竪樋5の第一の必要本数を算出する。制御部102は、ステップS23の処理を実行した後、第一必要本数算出処理を終了する。
【0069】
次に、制御部102は、第二必要本数算出処理(ステップS11)を行う(
図6参照)。第二必要本数算出処理は、軒樋4の長さ寸法と、所定の雨樋3における竪樋5の最大離隔距離と、に基づいて竪樋5の第二の必要本数を算出する処理である。
【0070】
以下では、
図8のフローチャートを用いて、第二必要本数算出処理について説明する。
【0071】
ステップS30において、制御部102は、雨樋3がサイホン式であるか否かを判断する。制御部102は、雨樋3がサイホン式であると判断した場合(ステップS30:YES)には、ステップS31の処理へ移行する。一方、制御部102は、雨樋3がサイホン式でないと判断した場合(ステップS30:NO)には、ステップS33の処理へ移行する。
【0072】
ステップS31において、制御部102は、雨樋3における竪樋5の垂直落差が2m以上であるか(サイホン性能を発揮可能であるか)否かを判断する。制御部102は、竪樋5の垂直落差が2m以上であると判断した場合(ステップS31:YES)には、ステップS32の処理へ移行する。一方、制御部102は、竪樋5の垂直落差が2m未満であると判断した場合(ステップS31:NO)には、ステップS33の処理へ移行する。
【0073】
ステップS32において、制御部102は、軒樋4の長さ寸法と、サイホン性能を発揮可能な雨樋3における竪樋5の最大離隔距離と、に基づいて竪樋5の第二の必要本数を算出する。具体的には、制御部102は、軒樋4の長さ寸法を、サイホン性能を発揮可能な雨樋3における竪樋5の最大離隔距離で除算することで竪樋5の第二の必要本数を算出する。
【0074】
ここで、雨樋3において、軒樋4が複数に分割されている場合には、制御部102は、上記複数の軒樋4ごとに、当該軒樋4の長さ寸法を竪樋5の最大離隔距離で除算する処理を実行すると共に、上記複数の軒樋4ごとに算出された竪樋5の本数の合計を竪樋5の第二の必要本数として算出する。制御部102は、ステップS32の処理を実行した後、第二必要本数算出処理を終了する。
【0075】
ステップS33において、制御部102は、軒樋4の長さ寸法と、サイホン性能を発揮不能な雨樋3における竪樋5の最大離隔距離と、に基づいて竪樋5の第二の必要本数を算出する。具体的には、制御部102は、軒樋4の長さ寸法を、サイホン性能を発揮不能な雨樋3における竪樋5の最大離隔距離で除算することで竪樋5の第二の必要本数を算出する。
【0076】
ここで、雨樋3において、軒樋4が複数に分割されている場合には、制御部102は、上記ステップS32の処理と同様、上記複数の軒樋4ごとに算出した竪樋5の本数の合計を竪樋5の第二の必要本数として算出する。制御部102は、ステップS33の処理を実行した後、第二必要本数算出処理を終了する。
【0077】
次に、制御部102は、必要本数決定処理(ステップS12)を行う(
図6参照)。必要本数決定処理は、竪樋5の第一の必要本数及び第二の必要本数に基づいて、建物1における竪樋5の必要本数を算出する処理である。
【0078】
具体的には、制御部102は、第一必要本数算出処理において算出した竪樋5の第一の必要本数と、第二必要本数算出処理において算出した竪樋5の第二の必要本数と、を比較すると共に、竪樋5の第一の必要本数と、竪樋5の第二の必要本数と、のうち本数が多い方を建物1における竪樋5の必要本数として算出する。この際、表示部103には、上記建物1における竪樋5の必要本数が表示される。制御部102は、ステップS12の処理を実行した後、竪樋本数算出処理を終了する。
【0079】
上記構成によれば、雨樋3における竪樋5の必要本数の算出を好適に行うことができる。すなわち、竪樋本数算出システム100により、建物1の屋根部2の屋根投影平面積と、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積と、に基づく竪樋5の第一の必要本数を満足させ、かつ、軒樋4の長さ寸法と、竪樋5の最大離隔距離を満足させる最低限の竪樋5と、に基づく竪樋5の第二の必要本数を満足させる竪樋5の必要本数を自動で算出することができる。これにより、建物1に設置される雨樋3において、竪樋5の本数が足りず、雨樋3の排水性能が不足することを抑制することができる。また、竪樋5の本数が過剰となり、雨樋3のコストが増大することを抑制することができる。
【0080】
また、上記構成によれば、雨樋3の排水性能に基づいて、竪樋5の必要本数の算出を好適に行うことができる。すなわち、雨樋3がサイホン式の雨樋3であるか否かや、雨樋3のサイホン性能の有無に基づいて、竪樋5の必要本数の算出を行うことができる。
【0081】
以上のように、本発明の一実施形態に係る竪樋本数算出システム100は、
建物1の屋根部2の屋根投影平面積と、軒樋4の仕様及び竪樋5の仕様に基づいて決定される前記竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積と、に基づいて、前記竪樋5の第一の必要本数を算出する(ステップS10)第一必要本数算出処理部(制御部102)と、
前記軒樋4の長さ寸法と、前記軒樋4の仕様及び前記竪樋5の仕様に基づいて決定される前記竪樋5の最大離間距離と、に基づいて、前記竪樋5の第二の必要本数を算出する(ステップS11)第二必要本数算出処理部(制御部102)と、
前記第一の必要本数と、前記第二の必要本数と、のうち本数が多い方を前記建物1における前記竪樋5の必要本数として算出する(ステップS12)必要本数決定処理部(制御部102)と、
を具備するものである。
【0082】
このような構成により、建物1の屋根部2の屋根投影平面積に基づく竪樋5の必要本数を満足させ、かつ、軒樋4の長さ寸法に基づく竪樋5の必要本数を満足させる竪樋5の本数を算出することができる。すなわち、建物1の屋根部2の屋根投影平面積と、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積と、に基づく竪樋5の第一の必要本数を満足させ、かつ、軒樋4の長さ寸法と、竪樋5の最大離隔距離を満足させる最低限の竪樋5と、に基づく竪樋5の第二の必要本数を満足させる竪樋5の必要本数を自動で算出することができる。これにより、建物1に設置される雨樋3において、竪樋5の本数が足りず、雨樋3の排水性能が不足することを抑制することができる。また、竪樋5の本数が過剰となり、雨樋3のコストが増大することを抑制することができる。
【0083】
また、前記第一必要本数算出処理部(制御部102)は、
前記屋根投影平面積を、前記竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積で除算することで、前記竪樋5の第一の必要本数を算出するものである。
【0084】
このような構成により、屋根投影平面積と、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積と、を用いた竪樋5の第一の必要本数の算出を行うことができる。
【0085】
また、前記第一必要本数算出処理部(制御部102)は、
前記建物1が建設される地域の地域情報に対応する降雨強度に基づいて、前記竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定するものである。
【0086】
このような構成により、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を好適に決定することができる。すなわち、建物1が建設される地域に対応する降雨強度を考慮して竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定することができる。
【0087】
また、前記第二必要本数算出処理部(制御部102)は、
前記軒樋4の長さ寸法を、前記竪樋5の最大離間距離で除算することで、前記竪樋5の第二の必要本数を算出するものである。
【0088】
このような構成により、軒樋4の長さ寸法と、竪樋5の最大離間距離と、を用いた竪樋5の第二の必要本数の算出を行うことができる。
【0089】
また、前記第二必要本数算出処理部(制御部102)は、
前記軒樋4が複数に分割されている場合、
前記複数の軒樋4ごとに前記竪樋5の本数を算出すると共に、当該複数の軒樋4ごとの前記竪樋5の本数の合計を前記竪樋5の第二の必要本数とするものである。
【0090】
このような構成により、軒樋4が複数に分割されている建物1において、竪樋5の第二の必要本数の算出を行うことができる。
【0091】
また、前記第一必要本数算出処理部(制御部102)は、
前記軒樋4の仕様及び前記竪樋5の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋3を構成するか否かの判断(ステップS20)に基づいて、前記竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定し、
前記第二必要本数算出処理部(制御部102)は、
前記軒樋4の仕様及び前記竪樋5の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋3を構成するか否かの判断(ステップS30)に基づいて、前記竪樋5の最大離間距離を決定するものである。
【0092】
このような構成により、軒樋4の仕様及び竪樋5の仕様の組み合わせにより定まる雨樋3のサイホン性能に基づいて、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積及び竪樋5の最大離間距離を決定することができる。
【0093】
また、前記第一必要本数算出処理部(制御部102)は、
前記軒樋4の仕様及び前記竪樋5の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋3を構成する場合(ステップS20:YES)、前記竪樋5の垂直落差が、所定の距離以下であるか否かの判断(ステップS21)に基づいて、前記竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定し、
前記第二必要本数算出処理部(制御部102)は、
前記軒樋4の仕様及び前記竪樋5の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋3を構成する場合(ステップS30:YES)、前記竪樋5の垂直落差が、所定の距離以下であるか否かの判断(ステップS31)に基づいて、前記竪樋5の最大離間距離を決定するものである。
【0094】
このような構成により、雨樋3のサイホン性能の有無に基づいて、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積及び竪樋5の最大離間距離を決定することができる。すなわち、軒樋4の仕様及び竪樋5の仕様の組み合わせが、サイホン式の雨樋3を構成する場合であっても、竪樋5の垂直落差が、所定の距離以下であり、サイホン性能を発揮しない場合を考慮して竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積及び竪樋5の最大離間距離を決定することができる。
【0095】
なお、本実施形態に係る制御部102は、本発明に係る第一必要本数算出処理部、第二必要本数算出処理部及び必要本数決定処理部の一形態である。
【0096】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0097】
例えば、本実施形態では、軒樋4の仕様及び竪樋5の仕様を、それぞれ第一の仕様及び第二の仕様とした例を示したが、このような態様に限られない。軒樋4の仕様及び竪樋5の仕様としては、種々のものを採用可能である。
【0098】
また、本実施形態では、雨樋3をサイホン式の雨樋3とした例を示したが、このような態様に限られない。例えば、雨樋3を非サイホン式の雨樋3としてもよい。
【0099】
また、本実施形態では、建物1が建設される地域の地域情報に対応する降雨強度に基づいて、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定する構成とした例を示したが、このような態様に限られない。例えば、地域情報に対応する降雨強度に関わらず、竪樋5の一本あたりの負担屋根投影平面積を決定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 建物
2 屋根部
3 雨樋
4 軒樋
5 竪樋
100 竪樋本数算出システム
102 制御部