(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
B60K 6/40 20071001AFI20230413BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20230413BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20230413BHJP
B62M 23/02 20100101ALI20230413BHJP
F16H 3/08 20060101ALI20230413BHJP
F16D 41/06 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B62M23/02 110
F16H3/08
F16D41/06 F
(21)【出願番号】P 2019070504
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西藪 正貴
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173670(WO,A1)
【文献】特開平02-091429(JP,A)
【文献】特開平03-003911(JP,A)
【文献】特開平10-089446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20ー 6/547
B60W 10/00-20/50
B62M 23/02
F16H 3/08
F16D 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及び電動モータと、
入力軸、出力軸及びギヤ列を有し、前記エンジン及び前記電動モータから前記入力軸に伝達される回転動力を変速して駆動輪に出力する変速機と、
前記エンジンのクランク軸と前記変速機の前記入力軸との間の動力伝達経路に介設されるように前記変速機の前記入力軸の一端部に接続されたメインクラッチと、
前記エンジンからの回転動力を前記メインクラッチに伝達するように、前記入力軸の軸線方向における前記メインクラッチと前記ギヤ列との間にて前記入力軸周りに配置されたプライマリギヤと、
前記エンジン及び前記電動モータからの回転動力が入力される被駆動軸を有するポンプと、
前記エンジンから前記ポンプに動力を伝達する第1ワンウェイクラッチと、
前記電動モータから前記ポンプに動力を伝達する第2ワンウェイクラッチと、を備え、
前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチは、前記プライマリギヤと前記ギヤ列との間において前記入力軸周りに配置されている、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記プライマリギヤと前記ギヤ列との間に介在する側壁部を有し、前記クランク軸、前記入力軸、前記出力軸及び前記ギヤ列を収容するクランクケースと、
前記側壁部に形成された孔に嵌合され、前記入力軸を支持する軸受と、を更に備え、
前記入力軸及び前記ポンプの前記被駆動軸は、前記側壁部より前記プライマリギヤ側に突出しており、
前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチは、前記プライマリギヤと前記軸受との間に配置され、前記ポンプの前記被駆動軸に接続されている、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記プライマリギヤは、前記ギヤ列側から前記メインクラッチ側に向けて窪んだ凹部を有し、
前記第1ワンウェイクラッチは、前記第2ワンウェイクラッチに対して前記プライマリギヤ側に配置されており、
前記第1ワンウェイクラッチの少なくとも一部は、前記凹部に収容されており、
前記プライマリギヤの径方向から見て前記第1ワンウェイクラッチは、前記プライマリギヤに重なっている、請求項1又は2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記ポンプの前記被駆動軸に動力伝達可能に接続されるように前記入力軸周りに配置される環状部材を更に備え、
前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチは、前記軸線方向に互いに隣接し、前記環状部材に内嵌されている、請求項1
又は2に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記ポンプの前記被駆動軸に動力伝達可能に接続されるように前記入力軸周りに配置される環状部材を更に備え、
前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチは、前記軸線方向に互いに隣接し、前記環状部材に内嵌されている、請求項3に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記環状部材の少なくとも一部は、前記凹部に収容されており、
前記プライマリギヤの径方向から見て、前記環状部材は、前記プライマリギヤに重なっている、請求項
5に記載のハイブリッド車両。
【請求項7】
前記プライマリギヤの内周面を回転自在に支持する第1筒部と、前記第1筒部の前記ギヤ列側において前記第1筒部よりも径方向外方に突出して前記第2ワンウェイクラッチに内嵌された第2筒部とを有し、前記入力軸と共回転するように前記入力軸に外嵌されたカラーを更に備え、
前記プライマリギヤは、前記第1ワンウェイクラッチに動力伝達可能なように前記第1ワンウェイクラッチに内嵌された筒部を有し、
前記プライマリギヤの前記筒部は、前記カラーの前記第1筒部に回転自在に外嵌されている、請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【請求項8】
前記入力軸は、前記軸線方向に延びた油通路と、前記油通路から径方向外方に延びて前記カラーに向けて開口した油吐出孔とを有し、
前記カラーの前記第1筒部は、前記入力軸の前記油吐出孔に連通し、前記カラーの前記第1筒部と前記プライマリギヤの前記筒部との間の摺動空間に向けて開口した油吐出孔を有し、
前記カラーの前記第2筒部と前記プライマリギヤの前記筒部との間には、前記摺動空間から前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチに向けて径方向外方に延びる油吐出路が形成されている、請求項
7に記載のハイブリッド車両。
【請求項9】
前記ハイブリッド車両は、ライダーが跨って乗る鞍乗型車両であり、
前記エンジンの前記クランク軸、前記変速機の前記入力軸、及び、前記変速機の前記出力軸は、前記鞍乗型車両の車幅方向に延びている、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン及び電動モータを備えるハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(内燃機関)からの回転動力を第1ワンウェイクラッチを介してオイルポンプに伝達する第1伝達経路と、電動モータからの回転動力を第2ワンウェイクラッチを介して前記オイルポンプに伝達する第2伝達経路とを備えたハイブリッド車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。これによれば、エンジン又は電動モータのいずれか一方が停止してもオイルポンプが機械的に駆動され、ポンプ専用の補機モータを搭載する必要がなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エンジン及び電動モータの動力でオイルポンプを機械的に駆動するためには、エンジンからの動力と電動モータからの動力とが干渉しないように2つのワンウェイクラッチが必要となり、ポンプ駆動のための動力伝達経路の占有空間がエンジン車両に比べて大きくなる。
【0005】
そこで本発明は、ハイブリッド車両において、ポンプを含めた動力系統を小型化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るハイブリッド車両は、エンジン及び電動モータと、入力軸、出力軸及びギヤ列を有し、前記エンジン及び前記電動モータから前記入力軸に伝達される回転動力を変速して駆動輪に出力する変速機と、前記エンジンのクランク軸と前記変速機の前記入力軸との間の動力伝達経路に介設されるように前記変速機の前記入力軸の一端部に接続されたメインクラッチと、前記エンジンからの回転動力を前記メインクラッチに伝達するように、前記入力軸の軸線方向における前記メインクラッチと前記ギヤ列との間にて前記入力軸周りに配置されたプライマリギヤと、前記エンジン及び前記電動モータからの回転動力が入力される被駆動軸を有するポンプと、前記エンジンから前記ポンプに動力を伝達する第1ワンウェイクラッチと、前記電動モータから前記ポンプに動力を伝達する第2ワンウェイクラッチと、を備え、前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチは、前記プライマリギヤと前記ギヤ列との間において前記入力軸周りに配置されている。
【0007】
前記構成によれば、第1ワンウェイクラッチ及び第2ワンウェイクラッチが、プライマリギヤと変速機のギヤ列との間の隙間に配置されると共に、ポンプを変速機に近づけて配置可能となる。よって、ハイブリッド車両において、ポンプを含めた動力系統の小型化を図ることができる。
【0008】
一例として、前記プライマリギヤと前記ギヤ列との間に介在する側壁部を有し、前記クランク軸、前記入力軸、前記出力軸及び前記ギヤ列を収容するクランクケースと、前記側壁部に形成された孔に嵌合され、前記入力軸を支持する軸受と、を更に備え、前記入力軸及び前記ポンプの前記被駆動軸は、前記側壁部より前記プライマリギヤ側に突出しており、前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチは、前記プライマリギヤと前記軸受との間に配置され、前記ポンプの前記被駆動軸に接続されている構成としてもよい。
【0009】
前記構成によれば、第1ワンウェイクラッチ及び第2ワンウェイクラッチが、クランクケースの側壁部に設けた軸受とプライマリギヤとの間の隙間に配置されると共に、クランクケースの側壁部よりプライマリギヤ側に突出したポンプの被駆動軸に短距離で動力を伝達可能となる。よって、動力伝達用の部品点数の増加を抑制しながらポンプを含めた動力系統を小型化できる。
【0010】
一例として、前記プライマリギヤは、前記ギヤ列側から前記メインクラッチ側に向けて窪んだ凹部を有し、前記第1ワンウェイクラッチは、前記第2ワンウェイクラッチに対して前記プライマリギヤ側に配置されており、前記第1ワンウェイクラッチの少なくとも一部は、前記凹部に収容されており、前記プライマリギヤの径方向から見て前記第1ワンウェイクラッチは、前記プライマリギヤに重なっている構成としてもよい。
【0011】
前記構成によれば、第1ワンウェイクラッチがプライマリギヤと軸線方向位置において重なるので、動力系統の軸線方向寸法を小さくできる。
【0012】
一例として、前記ポンプの前記被駆動軸に動力伝達可能に接続されるように前記入力軸周りに配置される環状部材を更に備え、前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチは、前記軸線方向に互いに隣接し、前記環状部材に内嵌されている構成としてもよい。
【0013】
前記構成によれば、2つのワンウェイクラッチを隣接配置し、その2つのワンウェイクラッチを1つの環状部材(例えば、ギヤ、スプロケット、プーリ等)に内嵌するので、部品点数の増加を抑制しながら動力系統の軸線方向寸法を小さくできる。
【0014】
一例として、前記環状部材の少なくとも一部は、前記凹部に収容されており、前記プライマリギヤの径方向から見て、前記環状部材は、前記プライマリギヤに重なっている構成としてもよい。
【0015】
前記構成によれば、環状部材がプライマリギヤと軸線方向位置において重なるので、動力系統の軸線方向寸法を小さくできる。
【0016】
一例として、前記プライマリギヤの内周面を回転自在に支持する第1筒部と、前記第1筒部の前記ギヤ列側において前記第1筒部よりも径方向外方に突出して前記第2ワンウェイクラッチに内嵌された第2筒部とを有し、前記入力軸と共回転するように前記入力軸に外嵌されたカラーを更に備え、前記プライマリギヤは、前記第1ワンウェイクラッチに動力伝達可能なように前記第1ワンウェイクラッチに内嵌された筒部を有し、前記プライマリギヤの前記筒部は、前記カラーの前記第1筒部に回転自在に外嵌されている構成としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、各ワンウェイクラッチへの動力伝達経路をコンパクトに形成できる。
【0018】
一例として、前記入力軸は、前記軸線方向に延びた油通路と、前記油通路から径方向外方に延びて前記カラーに向けて開口した油吐出孔とを有し、前記カラーの前記第1筒部は、前記入力軸の前記油吐出孔に連通し、前記カラーの前記第1筒部と前記プライマリギヤの前記筒部との間の摺動空間に向けて開口した油吐出孔を有し、前記カラーの前記第2筒部と前記プライマリギヤの前記筒部との間には、前記摺動空間から前記第1ワンウェイクラッチ及び前記第2ワンウェイクラッチに向けて径方向外方に延びる油吐出路が形成されている構成としてもよい。
【0019】
前記構成によれば、プライマリギヤとカラーとの間の摺動空間に供給された潤滑油を2つのワンウェイクラッチの潤滑にも利用でき、潤滑構造を簡素化できる。
【0020】
一例として、前記ハイブリッド車両は、ライダーが跨って乗る鞍乗型車両であり、前記エンジンの前記クランク軸、前記変速機の前記入力軸、及び、前記変速機の前記出力軸は、前記鞍乗型車両の車幅方向に延びている構成としてもよい。
【0021】
前記構成によれば、車幅寸法を小さくする必要のある鞍乗型車両(例えば、自動二輪車)において、車幅寸法の増加を抑制してコンパクトに保つことができる。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、ハイブリッド車両において、ポンプを含めた動力系統を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図1に示す自動二輪車の動力系統の模式図である。
【
図4】
図1に示す自動二輪車の動力系統の各軸等を車幅方向から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0025】
図1は、実施形態に係る自動二輪車1の側面図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、ライダーが跨って乗る鞍乗型車両の一例であり、ハイブリッド車両である。自動二輪車1は、前輪2と、後輪3(駆動輪)と、車体フレーム4と、前輪2を車体フレーム4の前部に接続する前サスペンション5と、後輪3を車体フレーム4の後部に接続する後サスペンション6とを備える。前サスペンション5は、上下方向に間隔をあけて配置されるブラケット7によって互いに連結される。ブラケット7に接続される操舵軸が車体フレーム4の一部であるヘッドパイプ4aに角変位可能に支持される。当該操舵軸には、運転者が手で握るハンドル8が設けられている。ハンドル8の後側には、燃料タンク9が設けられ、燃料タンク9の後側に運転者が着座するシート10が設けられている。車体フレーム4には、前輪2と後輪3と間において走行動力源となるエンジンEが搭載されている。エンジンEの近傍には、走行動力源となる電動モータMが配置されている。
【0026】
エンジンEの後側には、入力軸11a及び出力軸11bを備える変速機11が配置されている。入力軸11aの端部には、クランク軸Eaから入力軸11aへの動力伝達を断続するメインクラッチ12(例えば、多板クラッチ)が設けられている。電動モータMの回転動力は、図示しない動力伝達機構(例えば、ギヤ、チェーン、ベルト等)を介して変速機11の入力軸11aに伝達される。即ち、エンジンE及び電動モータMの両方の動力が、入力軸11aに伝達される。
【0027】
入力軸11aの近傍には、入力軸11aの回転に機械的に連動して駆動されるオイルポンプPが設けられている。オイルポンプPは、エンジンE及び電動モータMからの回転動力が入力される被駆動軸Pa(
図4参照)を有する。エンジンEのクランク軸Ea、変速機11の入力軸11a及び出力軸11b、メインクラッチ12、及び、オイルポンプPは、クランクケースCに収容されている。クランク軸Ea、入力軸11a、出力軸11b及び被駆動軸Paは、互いに平行であり、自動二輪車1の車幅方向(左右方向)に延びている。車体フレーム4には、後輪3を支持して前後方向に延びるスイングアーム13が角変位可能に支持されている。変速機11の出力軸11bの回転動力は、出力伝達部材14(例えば、チェーン、ベルト等)を介して後輪3に伝達される。
【0028】
図2は、
図1に示す自動二輪車1の動力系統の模式図である。
図2に示すように、変速機11は、入力軸11aと、出力軸11bと、減速比の異なる複数組のギヤ列11cとを有する。変速機11は、ギヤ列11cを介して入力軸11aから出力軸11bに動力伝達可能に構成され、ギヤ列11cのうち任意の一組を選択して変速する。例えば、変速機11は、ドッグクラッチ式の変速機である。変速機11の入力軸11aには、エンジンEのクランク軸Eaからの回転動力が伝達可能であると共に、電動モータMから回転動力が伝達可能である。変速機11の出力軸11bの回転動力は、出力伝達部材14を介して後輪3に伝達される。即ち、エンジンE及び電動モータMから入力軸11aに伝達される回転動力が、ギヤ列11cで変速されて出力軸11bに伝達され、後輪3に出力される。
【0029】
変速機11の入力軸11aの一端部には、メインクラッチ12が設けられている。メインクラッチ12は、エンジンEのクランク軸Eaと変速機11の入力軸11aとの間の動力伝達経路に介設される。入力軸11aの軸線方向におけるメインクラッチ12とギヤ列11cとの間には、入力軸11a周りにプライマリギヤ17が設けられている。プライマリギヤ17は、クランク軸Eaからの回転動力をメインクラッチ12に伝達する。プライマリギヤ17とギヤ列11cとの間には、ポンプ動力分配器18が入力軸11a周りに配置されている。
【0030】
クランクケースCは、ケース本体20と、ケースカバー21とを備える。ケース本体20は、車幅方向に互いに離間した一対の側壁部20a,20bを有し、一対の側壁部20a,20bの間には主収容空間S1が形成される。ケース本体20の主収容空間S1には、クランク軸Ea、入力軸11a、出力軸11b、ギヤ列11c及びオイルポンプPが収容される。側壁部20a,20bの各々には一対の孔Hが形成され、孔Hには軸受15,16が装着されている。軸受15は、入力軸11aを回転自在に支持し、軸受16は、出力軸11bを回転自在に支持する。側壁部20aは、プライマリギヤ17とギヤ列11cとの間に介在する。入力軸11aは、側壁部20aよりプライマリギヤ17側に突出している。なお、
図2には現れていないが、オイルポンプPの被駆動軸Pa(
図4参照)も、側壁部20aよりプライマリギヤ17側に突出している。
【0031】
ポンプ動力分配器18は、側壁部20aに設けられ且つ入力軸11aを支持する軸受15とプライマリギヤ17との間に配置されている。ポンプ動力分配器18は、オイルポンプPの被駆動軸Pa(
図4参照)に動力伝達可能に接続されている。ポンプ動力分配器18は、エンジンEのクランク軸Eaからプライマリギヤ17を介して伝わる動力と、電動モータMから入力軸11aを介して伝わる動力とを、適切にオイルポンプPの被駆動軸Paに分配するものである。
【0032】
クランクケースCのケース本体20の側壁部20aには、側方からケースカバー21が取り付けられる。側壁部20aとケースカバー21との間には、副収容空間S2が形成される。副収容空間S2には、メインクラッチ12、プライマリギヤ17、ポンプ動力分配器18及びオイルポンプPの被駆動軸Paが収容される。
【0033】
図3は、
図2の要部を拡大した断面図である。
図4は、
図1に示す自動二輪車1の動力系統の軸等を車幅方向から見た模式図である。
図3に示すように、メインクラッチ12は、外ケース(図示せず)と、内ケース(図示せず)と、多板ユニット(図示せず)とを有する。多板ユニットが圧接状態になると、外ケースに対して内ケースが相対回転不能になりクラッチ接続状態となる。多板ユニットが非圧接状態になると、外ケースに対して内ケースが相対回転自在になりクラッチ切断状態となる。メインクラッチ12の外ケースは、プライマリギヤ17と共回転するようにプライマリギヤ17に結合されている。メインクラッチ12の内ケースは、入力軸11aと共回転するように入力軸11aに結合されている。プライマリギヤ17の内径は入力軸11aの外径よりも大きく、プライマリギヤ17の内周面は、入力軸11aの外周面から径方向外側に隙間をあけて離間している。
【0034】
ポンプ動力分配器18は、プライマリギヤ17の筒部17aと、カラー30と、第1ワンウェイクラッチ31と、第2ワンウェイクラッチ32と、環状部材33と、を備える。プライマリギヤ17は、その内周部からポンプ動力分配器18側に突出する筒部17aを有する。カラー30は、入力軸11aに外嵌され、入力軸11aと共回転するように入力軸11aに結合されている。カラー30は、プライマリギヤ17の内周面を回転自在に支持する第1筒部30aと、第1筒部30aのギヤ列11c側において第1筒部30aよりも径方向外方に突出して第2筒部30bとを有する。
【0035】
プライマリギヤ17の筒部17aは、カラー30の第1筒部30aに回転自在に外嵌されている。プライマリギヤ17の筒部17aとカラー30の第1筒部30aとの間の摺動空間には、メタル軸受19が配置されている。カラー30の第2筒部30bは、入力軸11aの軸線X方向において、プライマリギヤ17の筒部17aに対向している。プライマリギヤ17の筒部17aの外径と、カラー30の第2筒部30bの外径とは、互いに同一である。
【0036】
プライマリギヤ17の筒部17aには、第1ワンウェイクラッチ31が外嵌され、カラー30の第2筒部30bには、第2ワンウェイクラッチ32が外嵌されている。即ち、第1ワンウェイクラッチ31が第2ワンウェイクラッチ32に対してプライマリギヤ17側に配置された状態で、第1ワンウェイクラッチ31及び第2ワンウェイクラッチ32が入力軸11aの軸線X方向に隣接配置されている。プライマリギヤ17の回転動力は第1ワンウェイクラッチ31に伝達され、入力軸11aの回転動力はカラー30を介して第2ワンウェイクラッチ32に伝達される。
【0037】
第1ワンウェイクラッチ31及び第2ワンウェイクラッチ32は、環状部材33に内嵌されている。環状部材33は、例えば、ギヤ、スプロケット、プーリ等である。第1ワンウェイクラッチ31は、プライマリギヤ17から環状部材33に向かう動力を伝達する一方、環状部材33からプライマリギヤ17に向かう動力を伝達しない。第2ワンウェイクラッチ32は、カラー30の第2筒部30bから環状部材33に向かう動力を伝達する一方、環状部材33からカラー30の第2筒部30bに向かう動力を伝達しない。2つのワンウェイクラッチ31,32が隣接して1つの環状部材33に内嵌されるので、部品点数の増加を抑制しながら動力系統の軸線X方向の寸法低減が図られる。環状部材33は、動力伝達機構34(例えば、ギヤ、チェーン、ベルト等)を介して、オイルポンプPの被駆動軸Paに動力伝達可能に接続される(
図4参照)。
【0038】
プライマリギヤ17は、ギヤ列11c側からメインクラッチ12側に向けて窪んだ凹部17bを有する。凹部17bは、筒部17aの径方向外側に隣接配置されている。第1ワンウェイクラッチ31及び環状部材33の一部は、凹部17bに収容されている。言い換えると、プライマリギヤ17の径方向から見て、第1ワンウェイクラッチ31及び環状部材33は、プライマリギヤ17に重なっている。第1ワンウェイクラッチ31及び環状部材33がプライマリギヤ17と軸線X方向の位置において重なるので、動力系統の軸線X方向の寸法低減が図られる。なお、可能な場合には、第2ワンウェイクラッチ32も、プライマリギヤ17の径方向から見てプライマリギヤ17に重なる構成としてもよい。
【0039】
入力軸11aには、その軸線X上に延びた油通路11aaと、油通路11aaから径方向外方に延びてカラー30(の第1筒部30a)に向けて開口した油吐出孔11abとが形成されている。カラー30の第1筒部30aには、入力軸11aの油吐出孔11abに連通する30aaが形成されている。油吐出孔30aaは、カラー30の第1筒部30aとプライマリギヤ17の筒部17aとの間の摺動空間に配置された軸受19(例えば、メタル軸受)に向けて開口している。
【0040】
カラー30の第2筒部30bのうち筒部17aに対向する側面には、径方向外方に延びる油吐出路30baが形成されている。油吐出路30baは、例えば、放射状に延びる溝である。カラー30が入力軸11aと共回転する際に、油吐出路30baは、メタル軸受19の配置された空間にある潤滑油を遠心力により第1ワンウェイクラッチ31及び第2ワンウェイクラッチ32が配置された空間に導く。これにより、プライマリギヤ17とカラー30との間の摺動空間に供給された潤滑油が2つのワンウェイクラッチ31,32の潤滑にも利用され、潤滑構造が簡素化される。なお、ポンプ動力分配器18と軸受15との間には、ワッシャWが挟まれている。
【0041】
以上に説明した構成によれば、第1ワンウェイクラッチ31及び第2ワンウェイクラッチ32が、プライマリギヤ17と変速機11のギヤ列11cとの間の隙間(具体的には軸副収容空間S2における軸受15とプライマリギヤ17との間)に配置されると共に、オイルポンプPが変速機11に近づけて配置され、クランクケースCの側壁部20aよりプライマリギヤ17側に突出したオイルポンプPの被駆動軸Paに短距離で動力を伝達可能となる。よって、ハイブリッド車両において、動力伝達用の部品点数の増加を抑制しながら、オイルポンプPを含めた動力系統の小型化を図ることができる。特に、車幅寸法を小さくする必要のある自動二輪車1において、車幅寸法の増加を抑制してコンパクトに保つことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 自動二輪車
11 変速機
11a 入力軸
11b 出力軸
11c ギヤ列
11aa 油通路
11ab 油吐出孔
12 メインクラッチ
15 軸受
17 プライマリギヤ
17a 筒部
17b 凹部
20a 側壁部
30 カラー
30a 第1筒部
30b 第2筒部
30aa 油吐出孔
30ba 油吐出路
31 第1ワンウェイクラッチ
32 第2ワンウェイクラッチ
33 環状部材
E エンジン
Ea クランク軸
C クランクケース
H 孔
M 電動モータ
P オイルポンプ
Pa 被駆動軸