(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】車載レーダー装置用レドームの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/03 20060101AFI20230413BHJP
H01Q 1/42 20060101ALI20230413BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20230413BHJP
B60R 13/00 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
G01S7/03 246
H01Q1/42
G01S13/931
B60R13/00
(21)【出願番号】P 2019078631
(22)【出願日】2019-04-17
【審査請求日】2022-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】池増 竜帆
(72)【発明者】
【氏名】古林 宏之
(72)【発明者】
【氏名】山本 真平
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-215242(JP,A)
【文献】特開2002-022821(JP,A)
【文献】特表2003-518634(JP,A)
【文献】特開2005-124222(JP,A)
【文献】特開昭49-062062(JP,A)
【文献】特開2015-099081(JP,A)
【文献】特開2018-066706(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014002438(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 1/42
B60R 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明で電磁波透過性の前基材と、加飾層と、ヒーターエレメントだけで構成されるヒーター層が表面側から順に密接して設けられ、
前記前基材の背面側の第1の凹部に倣うように表面側に部分突出して前記加飾層が形成され、
前記第1の凹部に対応する位置に設けられる前記加飾層の背面側の第2の凹部に倣うように表面側に部分突出して前記ヒーター層が設けられている
車載レーダー装置用レドームの製造方法であって、
電磁波透過性の前基材の背面側の第1の凹部に倣って表面側に部分突出するように加飾層を形成する第1工程と、
前記第1の凹部に対応する位置に設けられている前記加飾層の背面側の第2の凹部に、表面側に部分突出し且つ前記第2の凹部に倣う形状で形成される突出部を係合するようにして、ヒーター層を構成するヒーターエレメントを前記加飾層の背面に密着して形成する第2工程と、
前記加飾層が形成され且つ前記ヒーター層が設けられた前記前基材を金型内に配置し、前記第2の凹部に対応する位置に設けられている前記ヒーター層の背面側の第3の凹部と、前記ヒーターエレメントが設けられていない若しくは一部だけに設けられている前記第2の凹部とに凸部を係合するようにして前記ヒーター層の背面側に電磁波透過性の後基材を射出成形で形成する第3工程を備えることを特徴とする車載レーダー装置用レドームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載レーダー装置の前側に設けられる車載レーダー装置用レドームに係り、特に融雪機能を有する車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載レーダー装置用レドームとして、必要な電磁波の透過性の確保を図りつつ、融雪機能を発揮するレドームが知られている。このようなレドームとして、加飾層の後側にヒーター層を設け、加飾層の良好な視認性を確保できる特許文献1のレドームがある。特許文献1のレドームは、透明基板と、透明基板の後側に配置される第1基材及び第2基材を有し、透明基板と第1基材の間に加飾層が形成され、第1基材と第2基材がヒーター層を前後から挟み込んで密封するようにして相互に接合されるものであり、表面側から順に透明基板、加飾層、第1基材、ヒーター層、第2基材が設けられる構造になっている。
【0003】
また、特許文献1には、従来例のレドームとして、表面側から順に透明基板、加飾層、空隙部、ヒーター層、基材が設けられる構造も開示されている。この従来例のレドームは、透明基板及び基材の比誘電率と大きく異なる空隙部内の空気の比誘電率により、電磁波透過性能が低下することが指摘されている(特許文献1の段落[0004]、[0010]、
図10(b)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のレドームは、上記従来例のレドームの空隙部に相当する部位に第2基材と同一樹脂材料の第1基材を配置する構造により、電磁波透過性能の低下を抑制することが可能である。しかしながら、特許文献1のレドームは、透明基板の表面とヒーター層との間に透明基板、加飾層、第1基材が配置される構造のため、ヒーター層から雪が付着する透明基板の表面までの距離が長くなり、熱伝導効率が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、エンブレムの意匠部等を構成する加飾層の良好な視認性の確保、電磁波透過性の向上を図ることができると共に、高い熱伝導効率でレドームの外表面に付着した雪を確実に融雪することができる車載レーダー装置用レドーム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、透明で電磁波透過性の前基材と、加飾層と、ヒーター層が表面側から順に密接して設けられ、前記前基材の背面側の第1の凹部に倣うように表面側に部分突出して前記加飾層が形成され、前記第1の凹部に対応する位置に設けられる前記加飾層の背面側の第2の凹部に倣うように表面側に部分突出して前記ヒーター層が設けられていることを特徴とする。前記ヒーター層は例えばヒーターエレメントだけで構成すると好適である。
これによれば、ヒーター層の表面側に加飾層が設けられることにより、透明な前基材を介して、エンブレムの意匠部等を構成する加飾層の良好な視認性を確保することができる。また、加飾層とヒーター層との間に空隙部や基材が設けられずに、加飾層とヒーター層が密接して設けられるため、電磁波透過性を向上することができる。また、透明な前基材の表面とヒーター層との間に、別の基材が設けられずに、前基材と加飾層が設けられることから、ヒーター層から前基材の表面への熱伝導効率を高めることができ、レドームの外表面に付着した雪や氷を確実に融雪することができる。また、第1の凹部、第2の凹部に対応する位置では、ヒーター層が表面側に部分突出することにより、前基材の表面の単位面積当たりの占有面積を増やさずにヒーター層或いはそのヒーターエレメントの密度を高めることが可能となる。これにより、確実な融雪を行いつつ、電磁波透過性を一層向上することができる。また、前基材の表面とヒーター層との間には前基材が設置されていることから、前基材の厚みや広がりでヒーター層の加熱を熱拡散して、前基材の表面全体に亘って均一性の高い融雪を行うことができる。また、加飾層とヒーター層との間に基材を設けない構成であることから、この間の基材の成形工程を無くすことができ、より高い製造効率で製造することができる。
【0008】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記第2の凹部に対応する位置に設けられる前記ヒーター層の背面側の第3の凹部に凸部を係合するようにして前記ヒーター層の背面側に電磁波透過性の後基材が設けられていることを特徴とする。
これによれば、ヒーター層の背面側の第3の凹部に後基材の凸部を係合してヒーター層の背面側に後基材を設けることにより、後基材の凸部とヒーター層の第3の凹部を係合固着してより高い強度で固定することができる。
【0009】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記ヒーター層における隣り合って配線されているヒーターエレメントに流れる電流の方向が互いに略反平行であることを特徴とする。
これによれば、隣り合うヒーターエレメントに流れる電流の方向が互いに略反平行のなるようにすることで、隣り合うヒーターエレメントから放射される電磁波を逆位相とし、ヒーターエレメントからの電磁放射を打ち消すことができ、より優れた電磁波透過性能を得ることができる。特に、隣り合って配線されている各々のヒーターエレメントに流れる電流の方向を互いに略反平行にすることにより、全体に亘って非常に優れた電磁波透過性能を発揮することができる。
【0010】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記ヒーター層が絶縁フィルムと前記絶縁フィルムの背面側に固着されたヒーターエレメントから構成されることを特徴とする。
これによれば、絶縁フィルムによる絶縁性担保により、加飾層の構成に拘わらず、ヒーターエレメントへの通電で加飾層に導通が発生することを防止でき、加飾層の導通で電磁波透過性が低下することを確実に防止できる。また、絶縁フィルムにヒーターエレメントを固着することにより、ヒーターエレメントの位置ズレを防止できると共に、絶縁フィルムでヒーターエレメントを保護することもできる。また、絶縁フィルムはヒーターエレメントを固着する下地として機能し、ヒーターエレメントの加飾層への固着強度を高めることができる。
【0011】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記ヒーター層がヒーターエレメントだけで構成されることを特徴とする。
これによれば、ヒーターエレメントを直接加飾層に密接させ、ヒーター層から前基材の表面への熱伝導効率をより高めることができ、レドームの外表面に付着した雪をより確実に融雪することができる。
【0012】
本発明の車載レーダー装置用レドームは、前記前基材の表面から前記第1の凹部の表面側に位置する底までの距離が0.1~10mmに設定され、前記ヒーター層の部分突出する突出部の先端から前記ヒーター層の前記突出部以外の最背面までの距離が1~10mmに設定されていることを特徴とする。
これによれば、よりバランス良く熱拡散の均一性の向上と熱伝導効率の向上を図り、前基材の表面全体に亘って均一性の高い確実な融雪を行うことができる。
【0013】
本発明の車載レーダー装置用レドームの製造方法は、本発明の車載レーダー装置用レドームを製造する方法であって、電磁波透過性の前基材の背面側の第1の凹部に倣って表面側に部分突出するように加飾層を形成する第1工程と、前記第1の凹部に対応する位置に設けられている前記加飾層の背面側の第2の凹部に、表面側に部分突出し且つ前記第2の凹部に倣う形状で形成されている突出部を係合して、絶縁フィルムと前記絶縁フィルムの背面側に固着されたヒーターエレメントから構成されるヒーター層を前記加飾層に固着する第2工程と、前記加飾層が形成され且つ前記ヒーター層が設けられた前記前基材を金型内に配置し、前記第2の凹部に対応する位置に設けられている前記ヒーター層の背面側の第3の凹部に凸部を係合するようにして前記ヒーター層の背面側に電磁波透過性の後基材を射出成形で形成する第3工程を備えることを特徴とする。
これによれば、ヒーター層の表面側に部分突出し且つ第2の凹部に倣う形状の突出部が形成され、絶縁フィルムとその背面側に固着されたヒーターエレメントから構成されるヒーター層を用い、突出部を第2の凹部に係合してヒーター層を固着することにより、容易に位置合わせしてヒーター層の絶縁フィルムとヒーターエレメントを設けることができ、製造作業を容易化することができる。また、中間品のヒーター層は、絶縁フィルムだけを基にしてヒーターエレメントを形成して得ることができることから、多様な製造手段を用いて形成することが可能となり、適用可能な製造手段の多様化を図ることができる。また、ヒーター層の背面側の第3の凹部に後基材の凸部を係合してヒーター層の背面側に後基材を射出成形することにより、後基材の凸部とヒーター層の第3の凹部を係合固着した高い固着強度の後基材を背面側に設けることができる。
【0014】
本発明の車載レーダー装置用レドームの製造方法は、本発明の車載レーダー装置用レドームを製造する方法であって、電磁波透過性の前基材の背面側の第1の凹部に倣って表面側に部分突出するように加飾層を形成する第1工程と、前記第1の凹部に対応する位置に設けられている前記加飾層の背面側の第2の凹部に、表面側に部分突出し且つ前記第2の凹部に倣う形状で形成されている突出部を係合して、絶縁フィルムを前記加飾層に固着する第2工程と、前記絶縁フィルムの背面側にヒーターエレメントを形成して固着し、前記絶縁フィルムと前記絶縁フィルムの背面側に固着されたヒーターエレメントから構成されるヒーター層を形成する第3工程と、前記加飾層が形成され且つ前記ヒーター層が設けられた前記前基材を金型内に配置し、前記第2の凹部に対応する位置に設けられている前記ヒーター層の背面側の第3の凹部に凸部を係合するようにして前記ヒーター層の背面側に電磁波透過性の後基材を射出成形で形成する第4工程を備えることを特徴とする。
これによれば、表面側に部分突出し且つ第2の凹部に倣う形状の突出部が形成された絶縁フィルムを用い、突出部を第2の凹部に係合して絶縁フィルムを固着することにより、容易に位置合わせして絶縁フィルムを設けることができ、製造作業を容易化することができる。また、既に加飾層に固着された絶縁フィルムの背面側にヒーターエレメントを形成することにより、ヒーターエレメントをより正確な位置に安定して設置することができる。また、ヒーター層の背面側の第3の凹部に後基材の凸部を係合してヒーター層の背面側に後基材を射出成形することにより、後基材の凸部とヒーター層の第3の凹部を係合固着した高い固着強度の後基材を背面側に設けることができる。
【0015】
本発明の車載レーダー装置用レドームの製造方法は、透明で電磁波透過性の前基材と、加飾層と、ヒーターエレメントだけで構成されるヒーター層が表面側から順に密接して設けられ、前記前基材の背面側の第1の凹部に倣うように表面側に部分突出して前記加飾層が形成され、前記第1の凹部に対応する位置に設けられる前記加飾層の背面側の第2の凹部に倣うように表面側に部分突出して前記ヒーター層が設けられている本発明の車載レーダー装置用レドームを製造する方法であって、電磁波透過性の前基材の背面側の第1の凹部に倣って表面側に部分突出するように加飾層を形成する第1工程と、前記第1の凹部に対応する位置に設けられている前記加飾層の背面側の第2の凹部に、表面側に部分突出し且つ前記第2の凹部に倣う形状で形成される突出部を係合するようにして、ヒーター層を構成するヒーターエレメントを前記加飾層の背面に密着して形成する第2工程と、前記加飾層が形成され且つ前記ヒーター層が設けられた前記前基材を金型内に配置し、前記第2の凹部に対応する位置に設けられている前記ヒーター層の背面側の第3の凹部と、前記ヒーターエレメントが設けられていない若しくは一部だけに設けられている前記第2の凹部とに凸部を係合するようにして前記ヒーター層の背面側に電磁波透過性の後基材を射出成形で形成する第3工程を備えることを特徴とする。
これによれば、加飾層の背面に直接ヒーターエレメントを形成することにより、ヒーターエレメントを加飾層の背面のより正確な位置に安定して設置することができる。また、ヒーター層の背面側の第3の凹部と、ヒーターエレメントが設けられていない若しくは一部だけに設けられている第2の凹部とに後基材の凸部を係合してヒーター層の背面側に後基材を射出成形することにより、後基材の凸部と第3の凹部、第2の凹部を係合固着した高い固着強度の後基材を背面側に設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エンブレムの意匠部等を構成する加飾層の良好な視認性の確保、電磁波透過性の向上を図ることができると共に、高い熱伝導効率でレドームの外表面に付着した雪を確実に融雪することができる車載レーダー装置用レドームを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による第1実施形態の車載レーダー装置用レドームの正面図。
【
図5】(a)~(d)は第1実施形態の車載レーダー装置用レドームを製造する第1例の製造工程を説明する工程説明図。
【
図6】(a)~(e)は第1実施形態の車載レーダー装置用レドームを製造する第2例の製造工程を説明する工程説明図。
【
図7】本発明による第2実施形態の車載レーダー装置用レドームのA-A拡大断面図に相当する断面図。
【
図9】(a)~(c)は第2実施形態の車載レーダー装置用レドームを製造する製造工程例を説明する工程説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態の車載レーダー装置用レドーム〕
本発明による実施形態の車載レーダー装置用レドーム1では、
図1~
図4に示すように、透明で電磁波透過性の前基材2と、加飾層3と、ヒーター層4と、電磁波透過性の後基材5が表面側から順に密接するように固着して設けられている。図示例の前基材2は正面視で楕円形であり、この透明の前基材2を介して、表面側から意匠部を構成するマーク記号部10を視認可能になっている。
図1中のRは電磁波透過領域である。尚、前基材2やレドーム1の形状は楕円形以外にも適用可能な範囲で任意であり、例えば、正方形、長方形、台形、真円形、三角形といった形状でもよい.
【0019】
透明な前基材2と、後基材5は絶縁性で電磁波透過性を有する。前基材2と、後基材5には、例えば同一材料で形成する等、複素誘電率に基づき定義される屈折率nが相互に整合する、又は、屈折率nが略同一或いは近接するものを用いると電磁波の透過性能向上の観点から好適である。前基材2と後基材5の近接する屈折率nの数値範囲としては、前基材2と後基材5の屈折率の相違が0~10%の範囲内とすると良好である。
【0020】
ここでの屈折率nは比誘電率実数部εr'と比誘電率虚数部εr"から数式1として定義される量である。 透過性の観点から適用周波数における虚数部と実数部の比から数式2として定義される誘電正接(ロスタンジェント)tanδの大きさは0.1以下とすると好適である。また比誘電率実部の大きさは3以下とすると好適である。誘電正接と非誘電率実部の大きさをこれらの数値以下とすることにより、レドームに必要とされる反射率と内部損失の低減を確実にすることが可能となる。
【0021】
【0022】
【0023】
前基材2と、後基材5は、合成樹脂、ガラス、セラミックス等の本発明の趣旨の範囲内で適宜の材料を用いることが可能であるが、好適には絶縁性の合成樹脂とするとよい。透明の前基材2は、良好な視認性を確保するため可視光線透過率50%以上の無色材料又は有色材料とすることが好ましい。
【0024】
前基材2を絶縁性の透明合成樹脂とする場合の材料は、適用可能な範囲で適宜であり、例えばポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、ポリスチレン(PS)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、又、添加剤を含有させてもよい。
【0025】
後基材5を絶縁性の合成樹脂とする場合の材料は、適用可能な範囲で適宜であり、例えばアクリロニトリル-エチレンプロピルラバー-スチレン共重合体(AES)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合(ASA)等の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、又、添加剤を含有させてもよい。
【0026】
前基材2の背面21には、加飾層3が密着して設けられており、本実施形態の加飾層3は、電磁波透過性金属部31と有色部32とから構成されている。尚、加飾層3は、本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、電磁波透過性金属部31と有色部32で構成される加飾層3以外にも、例えば電磁波透過性金属部だけで構成される加飾層、或いは有色部だけで構成される加飾層等とすることが可能である。
【0027】
電磁波透過性金属部31は、電磁波透過性で金属光沢を有する不連続金属層で構成され、光輝性で一体的な視認性を有し、前基材2の背面21に無電解めっき、蒸着又はスパッタ等で形成されている。電磁波透過性金属部31を光輝性で一体的な視認性を有する不連続金属層とする場合、例えばニッケル若しくはニッケル合金、クロム若しくはクロム合金、コバルト若しくはコバルト合金、錫若しくは錫合金、銅若しくは銅合金、銀若しくは銀合金、パラジウム若しくはパラジウム合金、白金若しくは白金合金、ロジウム若しくはロジウム合金、金若しくは金合金等から構成することが可能である。
【0028】
尚、電磁波透過性金属部31は、電磁波透過性で金属光沢と一体的な視認性を有する不連続金属層以外にも、本発明の趣旨の範囲内で適宜の電磁波透過性金属部とすることが可能であり、例えば蒸着又はスパッタ等で形成されたシリコンやゲルマニウム等の半導体層、或いはこの半導体と可視光反射率が50%以上の金属(例えば金、銀、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、鉄、ニッケル、クロム)等の光輝金属との合金層等とすることが可能である。また、前基材2の背面21と電磁波透過性金属部31との間には、例えば無電解めっき層を形成しやすくする改質表面を形成するための下地層など、必要に応じて透明下地層等の下地層を設けることも可能である。
【0029】
有色部32は、電磁波透過性を有し、印刷、又は塗装マスクを用いた塗装等で形成されている。本実施形態の加飾層3では、有色部32が電磁波透過性金属部31の表面側の一部に積層されるようにして前基材2の背面21に密着して設けられており、前基材2の背面21が露出している領域と、有色部32が設けられている領域の全体に亘って電磁波透過性金属部31が層状に形成され、前基材2の露出した背面21と有色部32に密着して設けられている。
【0030】
そして、前基材2の背面21側には、マーク記号部10に対応する位置に第1の凹部211が形成されており、加飾層3は、第1の凹部211に倣うように断面視で表面側に部分突出して曲がって形成されている。図示例では、加飾層3の電磁波透過性金属部31が第1の凹部211に倣うように部分突出して形成され、第1の凹部211には有色部32は設けられず、電磁波透過性金属部31だけが入り込んで設けられている。また、図示例の有色部32は、前基材2の第1の凹部211以外の背面21に沿うように密着して設けられている。
【0031】
加飾層3の背面33側には、第1の凹部211に対応する位置に第2の凹部34が設けられており、ヒーター層4は、第2の凹部34に倣うように断面視で表面側に部分突出して曲がって形成され、突出部43が第2の凹部34に係合されるようにして配置されている。ヒーター層4は、ヒーターエレメント41を有し、絶縁フィルム42と、絶縁フィルム42の背面側に固着されたヒーターエレメント41から構成される。
【0032】
ヒーターエレメント41は、例えばニクロム線、鉄クロム、銅、銀、カーボン繊維、ITO膜のような透明導電膜等の適用可能な適宜の導電性材料とすることが可能である。尚、例えばヒーターエレメント42を40℃~50℃まで昇温した場合、加飾層3の耐熱温度は例えば100℃程度、PC等の前基材2の耐熱温度は例えば80℃程度、AES等の後基材5の耐熱温度は例えば80℃程度であることから、ヒーターエレメント42の昇温に対して良好な耐熱性のある構造になっている。
【0033】
絶縁フィルム42は、適用可能な適宜の電磁波透過性を有する絶縁性素材とすることが可能であり、例えばポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP、OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリル(AC)、又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の絶縁性合成樹脂で形成すると好適である。また、絶縁フィルム42の厚さは、前基材2への熱伝導性を高め、ヒーターエレメント41を保護する観点から0.05~1.0mmとすると好適である。
【0034】
絶縁フィルム42には、前基材2及び後基材5と、複素誘電率に基づき定義される屈折率nが相互に整合する、又は、屈折率nが略同一或いは近接するものを用いると電磁波の透過性能向上の観点から好適である。前基材2及び後基材5と絶縁フィルム42の近接する屈折率nの数値範囲としては、前基材2及び後基材5の屈折率と絶縁フィルム42の屈折率との相違が0~10%の範囲内となるようにすると良好である。尚、屈折率nも比誘電率実数部εr'と比誘電率虚数部εr"から数式1として定義される量である。また、絶縁フィルム42においても、透過性の観点から適用周波数における虚数部と実数部の比から数式2として定義される誘電正接(ロスタンジェント)tanδの大きさを0.1以下とすることが好ましい。
【0035】
ヒーター層4のヒーターエレメント41は、その両端がコネクタ6に電気的に接続され且つ機械的に固定されており、コネクタ6を介してヒーターエレメント41に電力が供給され、ヒーターエレメント41が発熱するようになっている。更に、本実施形態におけるコネクタ6から延びるヒーターエレメント41は、前基材2の背面21の面方向に蛇行して折り返すように配線されて一連で延びて形成されており、ヒーター層4で隣り合って配線されているヒーターエレメント41・41に流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行となるように設定されている。また、加飾層3の第2の凹部34における前基材2の面方向に離間する複数箇所にヒーターエレメント41が配設され、第2の凹部34の複数箇所のヒーターエレメント41でエンブレムの意匠部の周辺を確実に融雪して視認性をより高めることができるようになっている。
【0036】
更に、よりバランス良く熱拡散の均一性の向上と熱伝導効率の向上を図り、前基材2の表面全体に亘って均一性の高い確実な融雪を行う観点からは、前基材2の表面22から第1の凹部211の表面側に位置する底までの距離L1を0.1~10mmに設定すると良好であり、より好ましくは0.7mm~8mm、より一層好ましくは1.5mm~4.5mmに設定するとよい。同様の観点から、ヒーター層4の部分突出する突出部43の先端からヒーター層4の突出部43以外の最背面44までの距離L2を1~10mmに設定すると良好であり、1.5mm~4.5mmに設定するとより好ましい。
【0037】
そして、車載レーダー装置用レドーム1では、加飾層3の第2の凹部34に対応する位置に設けられるヒーター層4の背面側の第3の凹部45に、換言すれば突出部43の裏面側に、凸部51を係合するようにして、ヒーター層4の背面側に電磁波透過性の後基材5が設けられている。この車載レーダー装置用レドーム1は、車載レーダー装置100の前方に配置されて車両に取り付けられる。尚、図示例の車載レーダー装置用レドーム1はエンブレム形状のレドームとしたが、本発明の車載レーダー装置用レドームは、バンパー等の適宜の車両実装部品で構成することが可能である。
【0038】
第1実施形態の車載レーダー装置用レドーム1を製造する際には、例えば
図5に示す第1例では、電磁波透過性の前基材2の背面21側の第1の凹部211に倣うように表面側に部分突出するように加飾層3を形成する。加飾層3の形成工程では、例えば有色部32を、印刷、又は塗装マスクを用いた塗装等により、前基材2の背面21の所定領域に形成した後、無電解めっき、蒸着又はスパッタ等により、前基材2の背面21の第1の凹部211内を含む全体に亘って電磁波透過性金属部31を形成する(
図5(a)参照)。
【0039】
次いで、絶縁フィルム42と絶縁フィルム42の背面側に固着されたヒーターエレメント41から構成され、所定領域に突出部43が予め形成されている3次元形状のシート状のヒーター層4を用い、第1の凹部211に対応する位置に設けられている加飾層3の背面側の第2の凹部34に、表面側に部分突出し且つ第2の凹部34に倣う形状で形成されている突出部43を係合して、ヒーター層4を加飾層3に固着する(
図5(b)、(c)参照)。このヒーター層4の加飾層3への固着は、熱溶着又は接着剤による接着で行うと良好である。また、予め突出部43が形成されたヒーター層4において、絶縁フィルム42へのヒーターエレメント41の形成或いは描画は、例えば印刷、蒸着、スパッタ、めっき、エッチング、MID、ワイヤーボンディング、インクジェット、又はディスペンサー等を用いて行うことが可能である。
【0040】
その後、加飾層3が形成され且つヒーター層4が設けられた前基材2を金型内に配置し、加飾層3の第2の凹部34に対応する位置に設けられているヒーター層4の背面側の第3の凹部45に凸部51が係合されるようにして、ヒーター層4の背面側に電磁波透過性の後基材5を射出成形で形成し、車載レーダー装置用レドーム1を得る(
図5(d)参照)。
【0041】
また、第1実施形態の車載レーダー装置用レドーム1の製造工程の別例(第2例)として、
図6(a)に示すように、上記第1例と同様、電磁波透過性の前基材2の背面21側の第1の凹部211に倣うように表面側に部分突出するように加飾層3を形成した後、所定領域に突出部43mが予め形成されている3次元形状のシート状の絶縁フィルム42を用い、第1の凹部211に対応する位置に設けられている加飾層3の背面側の第2の凹部34に、表面側に部分突出し且つ第2の凹部34に倣う形状で形成されている突出部43mを係合して、絶縁フィルム42を加飾層3に固着する(
図6(b)、(c)参照)。この絶縁フィルム42の加飾層3への固着は、熱溶着又は接着剤による接着で行うと良好である。
【0042】
その後、
図6(d)に示すように、絶縁フィルム42の背面側にヒーターエレメント41を形成して固着し、絶縁フィルム42と絶縁フィルム42の背面側に固着されたヒーターエレメント41から構成されるヒーター層4を形成する。この工程における絶縁フィルム42へのヒーターエレメント41の形成或いは描画も、例えば印刷、蒸着、スパッタ、メッキ、エッチング、ワイヤーボンディング、インクジェット、又はディスペンサー等を用いて行うことが可能である。
【0043】
その後、加飾層3が形成され且つヒーター層4が設けられた前基材2を金型内に配置し、加飾層3の第2の凹部34に対応する位置に設けられているヒーター層4の背面側の第3の凹部45に凸部51が係合されるようにして、ヒーター層4の背面側に電磁波透過性の後基材5を射出成形で形成し、車載レーダー装置用レドーム1を得る(
図6(e)参照)。
【0044】
第1実施形態によれば、ヒーター層4の表面側に加飾層3が設けられることにより、透明な前基材2を介して、エンブレムの意匠部等を構成する加飾層3の良好な視認性を確保することができる。また、加飾層3とヒーター層4との間に空隙部や基材が設けられずに、加飾層3とヒーター層4が密接して設けられるため、電磁波透過性を向上することができる。また、透明な前基材2の表面22とヒーター層4との間に、別の基材が設けられずに、前基材2と加飾層3が設けられることから、ヒーター層4から前基材2の表面22への熱伝導効率を高めることができ、レドーム1の外表面に付着した雪や氷を確実に融雪することができる。また、第1の凹部211、第2の凹部34に対応する位置では、ヒーター層4が表面側に部分突出することにより、前基材2の表面22の単位面積当たりの占有面積を増やさずにヒーター層4或いはそのヒーターエレメント41の密度を高めることが可能となる。或いは従来と同等の融雪を細い線幅のヒーターエレメント41で行うことも可能である。これにより、確実な融雪を行いつつ、電磁波透過性を一層向上することができる。また、前基材2の表面22とヒーター層4との間には前基材2が設置されていることから、前基材2の厚みや広がりでヒーター層4の加熱を熱拡散して、前基材2の表面22の全体に亘って均一性の高い融雪を行うことができる。また、加飾層3とヒーター層4との間に基材を設けない構成であることから、この間の基材の成形工程を無くすことができ、より高い製造効率で製造することができる。
【0045】
また、ヒーター層4の背面側の第3の凹部45に後基材5の凸部51を係合してヒーター層4の背面側に後基材5を設けることにより、後基材5の凸部51とヒーター層4の第3の凹部45を係合固着してより高い強度で固定することができる。
【0046】
また、隣り合って配置されるヒーターエレメント41・41に流れる電流の方向が互いに略反平行のなるようにすることで、隣り合うヒーターエレメント41・41から放射される電磁波を逆位相とし、ヒーターエレメント41からの電磁放射を打ち消すことができ、より優れた電磁波透過性能を得ることができる。特に、電磁波透過領域R等で、隣り合って配線されている各々のヒーターエレメント41・41に流れる電流の方向を互いに略反平行にすることにより、全体に亘って非常に優れた電磁波透過性能を発揮することができる。
【0047】
また、ヒーター層4を絶縁フィルム42と絶縁フィルム42の背面側に固着されたヒーターエレメント41から構成することにより、絶縁フィルム42による絶縁性担保により、電磁波透過性金属部31を有する加飾層3など加飾層の構成に拘わらず、ヒーターエレメント41への通電で加飾層3に導通が発生することを防止でき、加飾層3の導通で電磁波透過性が低下することを確実に防止できる。また、絶縁フィルム42にヒーターエレメント41を固着することにより、ヒーターエレメント41の位置ズレを防止できると共に、絶縁フィルム42でヒーターエレメント41を保護することもできる。また、絶縁フィルム42はヒーターエレメント41を固着する下地として機能し、ヒーターエレメント41の加飾層3への固着強度を高めることができる。
【0048】
また、第1例の車載レーダー装置用レドーム1の製造方法によれば、ヒーター層4の表面側に部分突出し且つ第2の凹部34に倣う形状の突出部43が形成され、絶縁フィルム42とその背面側に固着されたヒーターエレメント41から構成されるヒーター層4を用い、突出部43を第2の凹部34に係合してヒーター層4を固着することにより、容易に位置合わせしてヒーター層4の絶縁フィルム42とヒーターエレメント41を設けることができ、製造作業を容易化することができる。また、中間品のヒーター層4は、絶縁フィルム42だけを基にしてヒーターエレメント41を形成して得ることができることから、多様な製造手段を用いて形成することが可能となり、適用可能な製造手段の多様化を図ることができる。また、ヒーター層4の背面側の第3の凹部45に後基材5の凸部51を係合してヒーター層4の背面側に後基材5を射出成形することにより、後基材5の凸部51とヒーター層4の第3の凹部45を係合固着した高い固着強度の後基材5を背面側に設けることができる。
【0049】
また、第2例の車載レーダー装置用レドーム1の製造方法によれば、表面側に部分突出し且つ第2の凹部34に倣う形状の突出部43mが形成された絶縁フィルム42を用い、突出部43mを第2の凹部34に係合して絶縁フィルム42を固着することにより、容易に位置合わせして絶縁フィルム42を設けることができ、製造作業を容易化することができる。また、既に加飾層3に固着された絶縁フィルム42の背面側にヒーターエレメント41を形成することにより、ヒーターエレメント41をより正確な位置に安定して設置することができる。また、ヒーター層4の背面側の第3の凹部45に後基材5の凸部51を係合してヒーター層4の背面側に後基材5を射出成形することにより、後基材5の凸部51とヒーター層4の第3の凹部45を係合固着した高い固着強度の後基材5を背面側に設けることができる。
【0050】
〔第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム〕
本発明による実施形態の車載レーダー装置用レドーム1aでは、
図7及び
図8に示すように、透明で電磁波透過性の前基材2と、加飾層3と、ヒーター層4aと、電磁波透過性の後基材5が表面側から順に密接するように固着して設けられている。ヒーター層4aは、第1実施形態のヒーター層4とは異なり、ヒーターエレメント41aだけで構成されている。
【0051】
ヒーターエレメント41aだけで構成されたヒーター層4aは、第1の凹部211に対応する位置に設けられた第2の凹部34に倣うように断面視で表面側に部分突出して曲がって形成され、突出部43aが第2の凹部34に係合されるようにして配置されている。ヒーターエレメント41aは第1実施形態のヒーターエレメント41と同様の材料で形成される。
【0052】
ヒーターエレメント41aも、第1実施形態のヒーターエレメント41と同様に、その両端がコネクタ6に電気的に接続され且つ機械的に固定されており、コネクタ6を介してヒーターエレメント41aに電力が供給され、ヒーターエレメント41aが発熱するようになっている。更に、ヒーターエレメント41aは、前基材2の背面21の面方向に蛇行して折り返すように配線されて一連で延びて形成されており、ヒーター層4aで隣り合って配線されているヒーターエレメント41a・41aに流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行となるように設定されている(
図1参照)。また、加飾層3の第2の凹部34における前基材2の面方向に離間する複数箇所にヒーターエレメント41aが配設され、第2の凹部34の複数箇所のヒーターエレメント41aでエンブレムの意匠部の周辺を確実に融雪して視認性をより高めることができるようになっている。
【0053】
よりバランス良く熱拡散の均一性の向上と熱伝導効率の向上を図り、前基材2の表面全体に亘って均一性の高い確実な融雪を行う観点からは、前基材2の表面22から第1の凹部211の表面側に位置する底までの距離L1を0.1~10mmに設定すると良好であり、より好ましくは0.7mm~8mm、より一層好ましくは1.5mm~4.5mmに設定するとよい。同様の観点から、ヒーター層4aの部分突出する突出部43aの先端からヒーター層4aの突出部43a以外の最背面44aまでの距離L2を1~10mmに設定すると良好であり、1.5mm~4.5mmに設定するとより好ましい。
【0054】
そして、車載レーダー装置用レドーム1aでは、加飾層3の第2の凹部34に対応する位置に設けられるヒーター層4aの背面側の第3の凹部45aに、換言すれば突出部43aの裏面側に、凸部51を係合すると共に、ヒーター層4a或いはヒーターエレメント41aが設けられていない箇所或いは一部だけに設けられている箇所の第2の凹部34に凸部51を係合するようにして、ヒーター層4aの背面側に電磁波透過性の後基材5が設けられている。この車載レーダー装置用レドーム1aも、車載レーダー装置100の前方に配置されて車両に取り付けられる。車載レーダー装置用レドーム1aの構成による本発明の車載レーダー装置用レドームも、エンブレム、バンパー等の適宜の車両実装部品で構成することが可能である。尚、第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム1aのその他の構成は、第1実施形態の車載レーダー装置用レドーム1と同様である。
【0055】
第2実施形態の車載レーダー装置用レドーム1を製造する際には、
図9に示す例のように、電磁波透過性の前基材2の背面21側の第1の凹部211に倣うように表面側に部分突出するように加飾層3を形成する。加飾層3の形成工程は、第1実施形態の第1例、第2例と同様であり、例えば有色部32を、印刷、又は塗装マスクを用いた塗装等により、前基材2の背面21の所定領域に形成した後、無電解めっき、蒸着又はスパッタ等により、前基材2の背面21の第1の凹部211内を含む全体に亘って電磁波透過性金属部31を形成する(
図9(a)参照)。
【0056】
その後、第1の凹部211に対応する位置に設けられている加飾層3の背面側の第2の凹部34に、表面側に部分突出し且つ第2の凹部34に倣う形状で形成される突出部43aを係合するようにして、ヒーター層4aを構成するヒーターエレメント41aを加飾層3の背面に密着して形成する(
図9(b)参照)。この工程における加飾層3へのヒーターエレメント41aの形成或いは描画は、例えば印刷、蒸着、スパッタ、メッキ、エッチング、ワイヤーボンディング、インクジェット、又はディスペンサー等を用いて行うことが可能である。
【0057】
その後、加飾層3が形成され且つヒーター層4aが設けられた前基材2を金型内に配置し、加飾層3の第2の凹部34に対応する位置に設けられているヒーター層4aの背面側の第3の凹部45aと、ヒーターエレメント41aが設けられていない箇所或いは一部だけに設けられている箇所の第2の凹部34に、凸部51が係合されるようにして、ヒーター層4aの背面側に電磁波透過性の後基材5を射出成形で形成し、車載レーダー装置用レドーム1aを得る(
図9(c)参照)。
【0058】
第2実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができると共に、ヒーターエレメント41aを直接加飾層3に密接させ、ヒーター層4aから前基材2の表面22への熱伝導効率をより高めることができ、レドームの外表面に付着した雪や氷をより確実に融雪することができる。
【0059】
また、第2実施形態の製造例によれば、加飾層3の背面33に直接ヒーターエレメント41aを形成することにより、ヒーターエレメント41aを加飾層3の背面33のより正確な位置に安定して設置することができる。また、ヒーター層4aの背面側の第3の凹部45aと、ヒーターエレメント41aが設けられていない若しくは一部だけに設けられている第2の凹部34とに後基材5の凸部51を係合してヒーター層4aの背面側に後基材5を射出成形することにより、後基材5の凸部51と第3の凹部45a、第2の凹部24を係合固着した高い固着強度の後基材5を背面側に設けることができる。
【0060】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0061】
例えば本発明の車載レーダー装置用レドームにおける前基材の背面側の第1の凹部、加飾層の背面側の第2の凹部、ヒーター層の背面側の第3の凹部の形状と数は適用可能な範囲で適宜であり、それぞれ溝状或いは椀状等の所要形状の凹部とし、単数又は複数設けることが可能である。また、前基材の背面側に、第1の凹部に相当しない凹部が設けられる構造も本発明に含まれる。
【0062】
また、本発明の車載レーダー装置用レドームは、隣り合って配線されているヒーター線に流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行である構成とすると好適であるが、隣り合って配線されているヒーター線に流れる電流の方向が互いに略反平行或いは反平行でない構成の場合も包含する。
【0063】
また、本発明の車載レーダー装置用レドームが対象とするレーダーの電磁波は適用可能な範囲で適宜であり、車載レーダーとして実用化されている24/26GHz帯、76/77GHz帯、77/81GHz帯等に加え、これら以外のレーダー用の電磁波にも本発明を適用することが可能である。更に、より短波長のレーダーが実用化された際にも同様に本発明を適用することが可能である。
【0064】
また、本発明におけるヒーターエレメントの配線パターン、配線構成は、上記ヒーターエレメント41、41aの配線構成に限定されず、本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば同心円状、同心楕円状にヒーターエレメントを配線する構成や、中心から略放射状に延びるようにヒーターエレメントを配線する構成等としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、車載レーダー装置用レドームに利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1、1a…車載レーダー装置用レドーム 2…前基材 21…背面 211…第1の凹部 22…表面 3…加飾層 31…電磁波透過性金属部 32…有色部 33…背面 34…第2の凹部 4、4a…ヒーター層 41、41a…ヒーターエレメント 42…絶縁フィルム 43、43m、43a…突出部 44、44a…最背面 45、45a…第3の凹部 5…後基材 51…凸部 6…コネクタ 10…マーク記号部 100…車載レーダー装置 R…電磁波透過領域 L1…前基材の表面から第1の凹部の表面側に位置する底までの距離 L2…ヒーター層の部分突出する突出部の先端からヒーター層の突出部以外の最背面までの距離