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特許7261650セラミックスヒータ型グロープラグおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ型グロープラグおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F23Q 7/00 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
F23Q7/00 605M
F23Q7/00 V
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019080250
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020176787
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】豊島 康夫
(72)【発明者】
【氏名】塔ケ崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】南方 祐人
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535589(JP,A)
【文献】特開2001-141238(JP,A)
【文献】特開平10-169982(JP,A)
【文献】特開平07-301417(JP,A)
【文献】実開平03-005065(JP,U)
【文献】米国特許第04414463(US,A)
【文献】特開2002-195559(JP,A)
【文献】特開昭61-217623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23Q 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機導電体からなる発熱体及び絶縁性セラミックスで形成されたセラミックスヒータと、
このセラミックスヒータが一端部内に固定されるとともに、他端部がハウジングの内部孔に固定される金属製外筒と、
前記金属製外筒内に位置する前記セラミックスヒータの端面から突出させた、前記発熱体に接続するリード線の端部に、一方の端部が接続される、棒状の剛体で形成された電極取り出し金具と、
前記電極取り出し金具と前記リード線との接続部に位置し、前記リード線が貫通する貫通孔を有するとともに、前記金属製外筒の他端部に少なくとも一部が嵌入するインシュレータと、
を備え
前記インシュレータが、前記金属製外筒の他端部に嵌入する小径部と、該小径部よりも径が大きい大径部と、該大径部及び前記小径部の間を繋ぎ前記金属製外筒の前記他端部における開口端と当接する段部と、を有することを特徴とするセラミックスヒータ型グロープラグ。
【請求項2】
前記インシュレータにおける前記金属製外筒に嵌入する側とは反対側に、前記電極取り出し金具の前記一方の端部が嵌入する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ型グロープラグ。
【請求項3】
前記電極取り出し金具の前記一方の端部における先端が、嵌入する前記凹部内において、当該凹部の底に当接していることを特徴とする請求項2に記載のセラミックスヒータ型グロープラグ。
【請求項4】
前記小径部に、嵌入方向の全域にわたって、または、その一部に、当該小径部の先端側から前記段部に向けて高さが漸次高くなる傾斜部を有するリブが設けられていることを特徴とする請求項に記載のセラミックスヒータ型グロープラグ。
【請求項5】
前記電極取り出し金具の前記一方の端部における端面には、挿入穴が形成されており、 前記電極取り出し金具と前記リード線との接続が、前記挿入穴に前記リード線の端部が挿入されることで為されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセラミックスヒータ型グロープラグ。
【請求項6】
前記挿入穴は、前記電極取り出し金具の軸方向に延在しており、
当該挿入穴に挿入された前記リード線が存在する前記軸方向位置であって、前記インシュレータが存在しない前記軸方向位置に、前記電極取り出し金具の外周が縮径された縮径部を有することを特徴とする請求項に記載のセラミックスヒータ型グロープラグ。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のセラミックスヒータ型グロープラグを製造する製造方法であって、
前記セラミックスヒータを、前記リード線が突出する端部が内部に位置し、前記リード線は貫通して表出するように前記金属製外筒に挿入し、固定する金属製外筒取付工程と、
前記インシュレータを、その貫通孔に前記リード線を貫通させつつ、前記金属製外筒の他端部に少なくとも一部を嵌入させるインシュレータ取付工程と、
前記電極取り出し金具の前記一方の端部と前記リード線の端部とを接続させて、当該接続部に前記インシュレータを位置させる電極取り出し金具取付工程と、
前記ハウジングの内部孔内に前記接続部が位置するようにして、前記金属製外筒の前記他端部を当該内部孔の端部開口に固定させるハウジング取付工程と、
をこの順で行うことを特徴とするセラミックスヒータ型グロープラグの製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれかに記載のセラミックスヒータ型グロープラグを製造する製造方法であって、
前記セラミックスヒータを、前記リード線が突出する端部が内部に位置し、前記リード線は貫通して表出するように前記金属製外筒に挿入し、固定する金属製外筒取付工程と、
前記インシュレータにおける前記金属製外筒に嵌入する側とは反対側を、前記電極取り出し金具の前記一方の端部に仮固定するインシュレータ仮固定工程と、
前記セラミックスヒータが固定された前記金属製外筒の他端部に、前記電極取り出し金具に仮固定された前記インシュレータにおける前記金属製外筒に嵌入する側を近づけて行き、その貫通孔に前記リード線を貫通させつつ、前記金属製外筒の他端部に少なくとも一部を嵌入させ、同時に、前記電極取り出し金具の前記一方の端部と前記リード線の端部とを接続させて、当該接続部に前記インシュレータを位置させる、四部品一体化工程と、
前記ハウジングの内部孔内に前記接続部が位置するようにして、前記金属製外筒の前記他端部を当該内部孔の端部開口に固定させるハウジング取付工程と、
を四部品一体化工程以降はこの順で行うことを特徴とするセラミックスヒータ型グロープラグの製造方法。
【請求項9】
前記電極取り出し金具の前記一方の端部の端面に開口し、前記電極取り出し金具の軸方向に延在する挿入穴が形成されており、
前記電極取り出し金具と前記リード線との接続が、前記挿入穴に前記リード線の端部を挿入することで為され、
前記ハウジング取付工程の前に、前記挿入穴に挿入された前記リード線が存在する前記軸方向位置であって、前記インシュレータが存在しない前記軸方向位置における前記電極取り出し金具の外周を縮径させて、当該電極取り出し金具と前記リード線とを緊結させるリード線緊結工程を有することを特徴とする請求項またはに記載のセラミックスヒータ型グロープラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体としてセラミックスヒータを用いた、ディーゼルエンジンの始動補助用のセラミックスヒータ型グロープラグおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミックスヒータとして、絶縁性セラミックス中に、高融点金属(例えばタングステン等)のコイルや導電性セラミックスの発熱体、あるいは、フィルム状の発熱体を埋設し、または導電性セラミックスの発熱体の一部を露出させ、その発熱体の負極側のリード線を絶縁性セラミックスの側面から取り出して金属製外筒に接続するとともに、正極側のリード線を絶縁性セラミックスの発熱体から遠い側の端面から取り出して、電極取り出し金具の一端に接続し、さらに、この電極取り出し金具の他端に外部接続端子を接続するように構成したものが従来から知られている。
【0003】
近年は、排気ガス規制に対応するため、ディーゼルエンジンの直噴タイプ化が図られ、それに対応するためグロープラグの細径化、長尺化が要求されている。このような要求に対応するため、組付け時にハウジング内を通過する部材を細径化して、ハウジングの強度を確保しつつハウジングを細径化するとともに、外部接続端子にバッテリ端子を接続する際の締め付けトルクや、エンジンの振動に耐えられる強度を確保することが望まれる。
【0004】
従来からディーゼルエンジン用グロープラグの発熱体として広く用いられているシース型ヒータの場合には、電極取り出し金具をスエージング加工によりシース内に固定する構造なので、この電極取り出し金具によって外部接続端子への締め付けトルクやエンジンの振動に対する強度を確保するようにしている。これに対し、前記セラミックスヒータでは、その端面から取り出されるリード線が細いため、強度を確保することが難しいという問題があった。
【0005】
この問題を解決する技術が、特許文献1に開示されている。即ち、特許文献1に記載の技術は、セラミックスヒータの端面から取り出されるリード線や、このリード線に接続される電極取り出し金具のハウジングに対する保持構造を、これらが収容されている金属製外筒の空間内に酸化マグネシウム粉末等の耐熱性絶縁粉体を充填し、ゴム製のシール部材で金属製外筒の開口をシールした上で、これらが収容されている部位の金属製外筒の外径を縮径させるスエージング加工を施すことで実現している。特許文献1に記載の技術によれば、外部接続端子に対する締め付けトルクやエンジンの振動に対して充分な強度が確保できるようになっている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術では、セラミックスヒータからの接続リードや電極取り出し金具の耐熱性絶縁粉体によるハウジングへの固定や、スエージング加工によって、作業工程の複雑化や維持費用の高コスト化を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-195559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、セラミックスヒータの端面から取り出されるリード線や、このリード線に接続される電極
取り出し金具のハウジングに対する保持構造を、簡単な構造で、かつ、低コストで実現し得るセラミックスヒータ型グロープラグを提供することにある。また、本発明の他の目的は、簡易な工程で製造することができるセラミックスヒータ型グロープラグの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明のセラミックスヒータ型グロープラグは、無機導電体からなる発熱体及び絶縁性セラミックスで形成されたセラミックスヒータと、
このセラミックスヒータが一端部内に固定されるとともに、他端部またはその近傍がハウジングの内部孔に固定される金属製外筒と、
前記金属製外筒内に位置する前記セラミックスヒータの端面から突出させた、前記発熱体に接続するリード線の端部に、一方の端部が接続される、棒状の剛体で形成された電極取り出し金具と、
前記電極取り出し金具と前記リード線との接続部に位置し、前記リード線が貫通する貫通孔を有するとともに、前記金属製外筒の他端部に少なくとも一部が嵌入するインシュレータと、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明においては、前記インシュレータにおける前記金属製外筒に嵌入する側とは反対側に、前記電極取り出し金具の前記一方の端部が嵌入する凹部が形成されていることが好ましい。
この場合に、前記電極取り出し金具の前記一方の端部における先端が、嵌入する前記凹部内において、当該凹部の底に当接していることが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、前記インシュレータが、前記金属製外筒の他端部に嵌入する小径部と、該小径部よりも径が大きい大径部と、該大径部及び前記小径部の間を繋ぎ前記金属製外筒の前記他端部における開口端と当接する段部と、を有することが好ましい。
この場合に、前記小径部に、嵌入方向の全域にわたって、または、その一部に、当該小径部の先端側から前記段部に向けて高さが漸次高くなる傾斜部を有するリブが設けられていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明においては、前記電極取り出し金具の前記一方の端部における端面には、挿入穴が形成されており、
前記電極取り出し金具と前記リード線との接続が、前記挿入穴に前記リード線の端部が挿入されることで為されていることが好ましい。
【0013】
この場合に、前記挿入穴は、前記電極取り出し金具の軸方向に延在しており、
当該挿入穴に挿入された前記リード線が存在する前記軸方向位置であって、前記インシュレータが存在しない前記軸方向位置に、前記電極取り出し金具の外周が縮径された縮径部を有することが好ましい。
【0014】
一方、本発明のセラミックスヒータ型グロープラグの第1の製造方法は、上記本発明のセラミックスヒータ型グロープラグを製造する製造方法であって、
前記セラミックスヒータを、前記リード線が突出する端部が内部に位置し、前記リード線は貫通して表出するように前記金属製外筒に挿入し、固定する金属製外筒取付工程と、
前記インシュレータを、その貫通孔に前記リード線を貫通させつつ、前記金属製外筒の他端部に少なくとも一部を嵌入させるインシュレータ取付工程と、
前記電極取り出し金具の前記一方の端部と前記リード線の端部とを接続させて、当該接続部に前記インシュレータを位置させる電極取り出し金具取付工程と、
前記ハウジングの内部孔内に前記接続部が位置するようにして、前記金属製外筒の前記他端部を当該内部孔の端部開口に固定させるハウジング取付工程と、
をこの順で行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のセラミックスヒータ型グロープラグの第2の製造方法は、上記本発明のセラミックスヒータ型グロープラグを製造する製造方法であって、
前記セラミックスヒータを、前記リード線が突出する端部が内部に位置し、前記リード線は貫通して表出するように前記金属製外筒に挿入し、固定する金属製外筒取付工程と、
前記インシュレータにおける前記金属製外筒に嵌入する側とは反対側を、前記電極取り出し金具の前記一方の端部に仮固定するインシュレータ仮固定工程と、
前記セラミックスヒータが固定された前記金属製外筒の他端部に、前記電極取り出し金具に仮固定された前記インシュレータにおける前記金属製外筒に嵌入する側を近づけて行き、その貫通孔に前記リード線を貫通させつつ、前記金属製外筒の他端部に少なくとも一部を嵌入させ、同時に、前記電極取り出し金具の前記一方の端部と前記リード線の端部とを接続させて、当該接続部に前記インシュレータを位置させる、四部品一体化工程と、
前記ハウジングの内部孔内に前記接続部が位置するようにして、前記金属製外筒の前記他端部を当該内部孔の端部開口に固定させるハウジング取付工程と、
を四部品一体化工程以降はこの順で行うことを特徴とする。
【0016】
上記第1の製造方法及び上記第2の製造方法のいずれの製造方法においても、前記電極取り出し金具の前記一方の端部の端面に開口し、前記電極取り出し金具の軸方向に延在する挿入穴が形成されており、
前記電極取り出し金具と前記リード線との接続が、前記挿入穴に前記リード線の端部を挿入することで為され、
前記ハウジング取付工程の前に、前記挿入穴に挿入された前記リード線が存在する前記軸方向位置であって、前記インシュレータが存在しない前記軸方向位置における前記電極取り出し金具の外周を縮径させて、当該電極取り出し金具と前記リード線とを緊結させるリード線緊結工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
セラミックスヒータ型グロープラグにかかる本発明によれば、セラミックスヒータの端面から取り出されるリード線や、このリード線に接続される電極取り出し金具のハウジングに対する保持構造を、簡単な構造で、かつ、低コストで実現することができる。
また、セラミックスヒータ型グロープラグの製造方法にかかる本発明によれば、簡易な工程でセラミックスヒータ型グロープラグ製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の例示的一態様である実施形態にかかるセラミックスヒータ型グロープラグの縦断面図である。
図2図1に示されたセラミックスヒータ型グロープラグにおけるリード線と電極取り出し金具との接続部およびその周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図3図1に示されたセラミックスヒータ型グロープラグにおけるインシュレータをある方向から見た拡大斜視図である。
図4図1に示されたセラミックスヒータ型グロープラグにおけるインシュレータを図3とは異なる方向から見た拡大斜視図である。
図5】本発明のセラミックスヒータ型グロープラグの一の製造方法における各工程を追って順に操作を行った場合の製造過程を(a)~(e)の順に示す模式断面図である。
図6】本発明のセラミックスヒータ型グロープラグの他の製造方法における各工程を追って順に操作を行った場合の製造過程を(a)~(e)の順に示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[セラミックスヒータ型グロープラグ]
以下、本発明のセラミックスヒータ型グロープラグの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の例示的一態様である実施形態にかかるセラミックスヒータ型グロープラグの縦断面図である。また、図2は、本発明の例示的一態様である実施形態にかかるセラミックスヒータ型グロープラグの、セラミックスヒータにおける発熱体の端面から突出させたリード線10と電極取り出し金具12との接続部およびその周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【0020】
このセラミックスヒータ型グロープラグ(以下、単に「グロープラグ」と称する場合がある。)のハウジング2は円筒状をしており、その内部の孔(内部孔4)は、図の右側のセラミックスヒータ固定側が大径部4a、図の左側の外部接続端子固定側が小径部4bである段付きの軸方向に延在する孔になっている。
【0021】
ハウジング2の内部孔4の大径部4a内には、セラミックスヒータ6が圧入またはロウ付け等により接合された金属製外筒8が挿入され、この金属製外筒8の外周面の一部が圧入またはロウ付け等によりこのハウジング2の端部開口2aに固定されている。即ち、この金属製外筒8の先端(一端部)8a内にセラミックスヒータ6が固定されるとともに、後端(他端部)8bの近傍が、ハウジング2の内部孔4の端部開口2aに固定されている。
【0022】
セラミックスヒータ6は、従来公知の構成であり、内部の図示および詳細な説明は省略するが、その本体部を構成するセラミックス絶縁体の内部に、高融点金属(例えばタングステン(W)等)をコイル状にした発熱線(発熱体)が埋め込まれた発熱部6aを有しており、この発熱部6aが、前記金属製外筒8の先端(一端部)8aから突出するとともに、この発熱部6aから遠い側の端面6bが金属製外筒8の内部に位置している。
【0023】
なお、この実施形態では、発熱体を高融点金属としているが、導電性セラミックスやシート状の発熱体等であってもよく、導電性セラミックスの発熱体の一部を絶縁性セラミックスから露出させる等、セラミックヒータ6は、絶縁性セラミックスと発熱体としての無機導電体とを複合して形成されたものが用いられる。
【0024】
セラミックスヒータ6の内部に埋め込まれたコイル状の発熱線の一端に負極側のリード線が接続されるとともに、他端に正極側のリード線が接続されている。負極側のリード線は、金属製外筒8の内部側でセラミックス絶縁体の外面に露出して金属製外筒8の内面にロウ付け等によって電気的に接続されている。
【0025】
金属製外筒8は、導電性を有する金属材料、例えば、ステンレス鋼(SUS430等)の材料から形成されている。金属製外筒8は、外周面が段付きの円筒状に形成されている。特に、本実施形態では、後述するように、インシュレータ14を保持するための特別な加工を内周面に施す必要が無く、円筒形の内周面のみを有する管形状で十分であるため、プレス延伸法によって容易に製造することができる。したがって、本実施形態における金属製外筒8は、低コストで形成することができる。
【0026】
セラミックスヒータ6内部の発熱線の正極側のリード線は、セラミックスヒータ6の端面6b側に延びており、このセラミックスヒータ6内で電極取り出し用のリード線10に接続されている。当該電極取り出し用のリード線10は、細径の線材である。電極取り出し用のリード線10は、セラミックスヒータ6の端面6b側から突出し、さらに延伸して
おり、その端部10aが、金属製外筒8の後端(他端部)8bから突き出している。
【0027】
この電極取り出し用のリード線10をセラミックス絶縁体の内部の正極側のリード線に接続してセラミックスヒータ外部に取り出す構造には、特開2000-121055公報や特開2001-324141号公報等に記載された方法、あるいはその他の方法を適用することができる。
【0028】
セラミックスヒータ6の端面6bから取り出された電極取り出し用のリード線10は、インシュレータ14の中心に設けられた貫通孔14aを貫通して延伸している。図3に、インシュレータ14をある方向から見た拡大斜視図を、図4に、当該インシュレータ14を他の方向から見た拡大斜視図を、それぞれ示す。
【0029】
インシュレータ14は、金属製外筒8の後端(他端部)8bに嵌入する小径部14bと、該小径部14bよりも径が大きい大径部14cと、大径部14c及び小径部14bの間を繋ぐ段部14dと、を有する。段部14dは、外径が大径部14cと、内径が小径部14bと、それぞれ等しい円環状の部位である。
【0030】
小径部14bには、嵌入方向(図3における矢印A方向)の一部に、当該小径部14bの先端側(同矢印A方向側)から段部14dに向けて高さ(本発明において、リブの高さとは、小径部14bの周面からの高さを指す。)が漸次高くなる傾斜部14eを有するリブ14fが設けられている。リブ14fにおいて、傾斜部14eに続く段部14d側は、高さが一定の等高部14gとなっている。
【0031】
なお、本発明において、インシュレータ14の小径部14bにリブ(14f)を設ける場合において、リブ(14f)自体の長さは、嵌入方向(矢印A方向)における先端側(同矢印A方向側)から段部14dの全域にわたっても構わないし、本実施形態のように、その途中から始まっても構わない。さらに、リブ(14f)が段部14dまで届いていなくても構わない。リブの幅(小径部14bの周方向長さ)や本数についても特に制限はなく、適宜設計すればよい。
【0032】
また、傾斜部14eの長さは、嵌入方向(矢印A方向)における先端側(同矢印A方向側)から段部14dのリブ(14f)の全長にわたっても構わないし、本実施形態のように、リブ(14f)の一部領域であっても構わない。リブ(14f)を設けることにより、後述する金属製外筒8への圧入が好適に実施できるようになっていればよい。
【0033】
インシュレータ14における金属製外筒8に嵌入する側とは反対側(矢印A方向とは逆方向側)には、電極取り出し金具12の先端部(一方の端部)12aが嵌入する凹部14hが形成されている。また、インシュレータ14には、これを嵌入方向(矢印A方向)に貫通する中心軸と平行でこれを含む貫通孔14aが形成されている。
【0034】
貫通孔14aは、金属製外筒8の中心軸と軸が一致するように延伸しており、インシュレータ14における金属製外筒8に嵌入する側とその反対側との間を貫通する孔である。リード線10は、この貫通孔14aに貫通し保持されることにより、金属製外筒8の中心軸の位置に支持されている。
【0035】
インシュレータ14は、電極取り出し金具12とリード線10との接続部に位置し、その一部である小径部14bが金属製外筒8の後端8bに嵌入している。そして、貫通孔14aにリード線10が貫通するとともに、小径部14bが金属製外筒8の後端8bに嵌入している。この状態で、段部14dは、金属製外筒8の後端8bにおける開口端8cと当接している。段部14dが後端8bの開口端8cと当接していることで、インシュレータ
14と金属製外筒8との間で位置決めが為されて、両者の位置関係が安定した状態になる。
【0036】
インシュレータ14の材質としては、特に制限はないが、樹脂成形に適した形状であり、また、低コストで成形することができることから、樹脂製であることが好ましい。本実施形態に示す形状のインシュレータ14は、公知の樹脂成形手法により容易に成形することができる。また、セラミックスヒータ6とは直接接することなく、金属製外筒8が間に介在し、ある程度離間しており、求められる耐熱性もそれほど高温ではないため、選択可能な樹脂の制限も比較的少ない。具体的に選択可能な樹脂としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、等を挙げることができる。
【0037】
インシュレータ14の凹部14hには、電極取り出し金具12の先端部12aが嵌入している。電極取り出し金具12の先端部12aにおける端面12bが、嵌入する凹部14h内において、当該凹部14hの底14iに当接している。端面12bが底14iに当接していることで、電極取り出し金具12とインシュレータ14との間、さらには、当該インシュレータ14の一部が嵌入する金属製外筒8との間で位置決めが為されて、三者の位置関係が安定した状態になる。
【0038】
電極取り出し金具12は、棒状の剛体で形成されており、その先端部12aにおける端面12bには、当該端面12bに向けて開口し、電極取り出し金具12の軸方向に延在する挿入穴12fが形成されている。そして、当該挿入穴12fにリード線10の端部10aが挿入されることで、電極取り出し金具12とリード線10とが電気的に接続されている。
【0039】
電極取り出し金具12とリード線10との接続は、一般的に、挿入穴12fへのリード線10の端部10aの圧入やロウ付けにより、あるいは、電極取り出し金具12の先端部12aをかしめることにより、確実ならしめることができる。しかし、本実施形態においては、リード線10が存在する前記軸方向位置であって、インシュレータ14が存在しない前記軸方向位置における電極取り出し金具12の外周が縮径されて縮径部12cとなり、当該箇所で電極取り出し金具12とリード線10とが緊結されている。
【0040】
電極取り出し金具12の外周を径方向から締め付けるように絞ることで、縮径部12cを形成することができる。特許文献1に記載のスエージング加工のように、金属製外筒の外側から耐熱性絶縁粉体を介して電極取り出し金具を塑性変形させてシース内に固定すると同時にリード線を接続する場合には、間接的な加圧であるため、電極取り出し金具とリード線との接続強度向上効果はあまり高くはないが、本実施形態では電極取り出し金具12の外周を直接絞っているので、簡便な方法でありながら、電極取り出し金具12とリード線10との接続を極めて強固なものとすることができる。
【0041】
電極取り出し金具12は、ハウジング2の内部孔4の小径部4b内で同軸上に延在し、先端部12aとは反対側の端部である後端部12dがハウジング2の外部に突出している。電極取り出し金具12における小径部4b内で後端部12dに近い部位に、インシュレータ14とは別のインシュレータ12gが取り付けられている。
【0042】
当該インシュレータ12gは、ハウジング2の内部孔4の内周面と電極取り出し金具12との間に介在し、両者間の絶縁スペーサとして機能するほか、電極取り出し金具12の支持部材としても機能する。電極取り出し金具12は、後端部12d側がこのインシュレータ12gで支持され、先端部12a側は、既述の通り、インシュレータ14(さらには、金属製外筒8)で支持され、ハウジング2の内部孔4内で、その内周面との離間が保た
れ、両者間の絶縁が確保されている。
【0043】
電極取り出し金具12における後端部12dに、シール部材(Oリング)20を挿入させ、ハウジング2の内部孔4の小径部4bの端部開口2aを嵌合させる。この端部開口2aは、テーパが形成された円環状の部位であり、これに対応する形状を有するシール部材20が当接して嵌合するようになっている。
【0044】
電極取り出し金具12におけるハウジング2から突出している後端部12d近傍には、周面にローレット加工が施されたローレット部12eが形成されている。このローレット部12eを絶縁性で円環状のインシュレータ26の孔に嵌入させる。そして、電極取り出し金具12の後端部12dをラウンドピン18の穴に嵌入させ、ローレット部12eが形成されている位置でラウンドピン18の外周を縮径させることで、電極取り出し金具12がラウンドピン18に固定され、インシュレータ26及びシール部材20を挟んで、電極取り出し金具12がハウジング2に固定されている。
【0045】
以上の如き本実施形態のセラミックスヒータ型グロープラグによれば、セラミックスヒータ6の端面6bから取り出されるリード線10と、このリード線10に接続される電極取り出し金具12を、容易に成型することができるインシュレータ14を1つ用いるだけの簡単な構造で、ハウジング2に対して保持させることができ、低コスト化を実現することができる。その他、製造上のメリットについては、以下に説明する<セラミックスヒータ型グロープラグの製造方法>の中で述べる。
【0046】
[セラミックスヒータ型グロープラグの製造方法]
本発明のセラミックスヒータ型グロープラグは、以下に説明する2種類の本発明のセラミックスヒータ型グロープラグの製造方法によって好適に製造することができる。以下、これら2種類をそれぞれ「第1の製造方法」及び「第2の製造方法」と称する。)
【0047】
<第1の製造方法>
第1の製造方法は、金属製外筒取付工程と、インシュレータ取付工程と、電極取り出し金具取付工程と、ハウジング取付工程と、をこの順で行う製造方法であり、電極取り出し金具取付工程とハウジング取付工程との間に、必要に応じて、リード線緊結工程が含まれる。
以下、図5を用いて、各工程ごとに順を追って説明する。なお、図5は、第1の製造方法における各工程を追って順に操作を行った場合の製造過程を(a)~(e)の順に示す模式断面図である。
【0048】
(金属製外筒取付工程)
第1の製造方法において、金属製外筒取付工程は、図5(a)に示すように、セラミックスヒータ6を、リード線10が突出する端面6bが内部に位置し、リード線10は貫通して表出するように金属製外筒8に挿入する操作を行い、セラミックスヒータ6に金属製外筒8を固定する工程である。
【0049】
このとき、図5(a)に示すように、セラミックスヒータ6を垂直に保持しながら、金属製外筒8にセラミックスヒータ6が挿し込まれるように上から下げて、金属製外筒8にセラミックスヒータ6を挿入する。なお、セラミックスヒータ6を垂直に保持するのは、この後の全ての工程において維持される。
【0050】
セラミックスヒータ6と金属製外筒8との固定は、圧入によっても構わないが、既述の通り、負極側のリード線が金属製外筒8の内部側でセラミックスヒータ6の外面に露出しているので、導通を確実ならしめるために、銀ろうによるロウ付けを行うことが好ましい
。両者の電気的な接続は、その他公知の各種方法によって実現することができ、例えば、特開2001-43960号公報等に記載されているメタライズ処理を施して、メタライズ層と銀ろうとの導通を確実ならしめる方法を採用することもできる。
【0051】
(インシュレータ取付工程)
第1の製造方法において、インシュレータ取付工程は、図5(b)に示すように、インシュレータ14を上方から下方(矢印B方向)に移動させて、その貫通孔14aにリード線10を挿し込み、これを貫通させつつ、金属製外筒8の後端(他端部)8bに、少なくとも一部(本例では、インシュレータ14の一部に相当する小径部14b)を嵌入させる操作を行う工程である。
【0052】
即ち、本工程では、前工程でセラミックスヒータ6の上部に取り付けられた金属製外筒8における、上方に位置する後端8bに、インシュレータ14の小径部14bを嵌入させる。この際に、貫通孔14aに挿し込まれたリード線10は、その先端が上方から突出した状態になる。
リード線10は、金属製外筒8の中心軸と軸が一致する貫通孔14aに貫通し、保持されることで、金属製外筒8の中心軸の位置に支持された状態になっている。
【0053】
インシュレータ14の小径部14bには、既述の通り、リブ14fが設けられているため、金属製外筒8における後端8bの開口に対して軽圧入されるようになっている。そのため、スムーズに圧入されるとともに、嵌入後は、安定した仮固定状態になる。なお、金属製外筒8における後端8bの開口(内径)とインシュレータ14の小径部14b(リブ14fの張り出しを含めた外径)との関係は、本実施形態の如く軽圧入になる程度が好適である。ただし、第1の製造方法において、両者の関係は、完全には嵌合せず、後端8bの開口に比して小径部14bが小さくて多少余裕のある状態から、後端8bの開口に比して小径部14bが大きくて、ある程度強く圧入しなければ嵌入しない状態までの間であればよい。
【0054】
インシュレータ14の小径部14bを金属製外筒8の後端8bに軽圧入させて行くと、インシュレータ14の段部14dが、金属製外筒8の後端8bにおける開口端8cと当接する。段部14dが後端8bの開口端8cと当接することで、インシュレータ14と金属製外筒8との間で位置決め(仮固定)が為されて、両者の位置関係が安定した状態になる。
【0055】
(電極取り出し金具取付工程)
第1の製造方法において、電極取り出し金具取付工程は、電極取り出し金具12の先端部(一方の端部)12aとリード線10の端部10aとを接続させる操作を行い、当該接続部にインシュレータ14を位置させる工程である。本工程により、セラミックスヒータ6、金属製外筒8、インシュレータ14及び電極取り出し金具12からなるアッセンブリを組み立てることができる。
【0056】
より具体的には、電極取り出し金具12を上方から下方(図5(b)に示す矢印B方向)に移動させて、図5(c)に示すように、インシュレータ14の上方に電極取り出し金具12を取り付ける。この際、電極取り出し金具12とリード線10との電気的な接続と、物理的な接続とが為される。
【0057】
即ち、まず、電極取り出し金具12の端面12bに形成された挿入穴12fにリード線10の端部10aを挿入させてから、前工程で金属製外筒8の上部に取り付けられたインシュレータ14に向けて、電極取り出し金具12を移動させる。インシュレータ14の貫通孔14aが金属製外筒8の中心軸と軸が一致しているため、リード線10の端部10a
を挿入穴12fに容易に挿入させることができる。
【0058】
そして、インシュレータ14における、上方に位置する凹部14hに、電極取り出し金具12の先端部12aを嵌入させる。このときも、インシュレータ14の貫通孔14aが金属製外筒8の中心軸と軸が一致しているため、精密な位置合わせをすることなく、端部12aを凹部14hに容易に嵌入することができる。
【0059】
電極取り出し金具12における後端部12d寄りの位置には、インサート成形もしくは圧入等の方法によって、予めインシュレータ12gが固定され、取り付けられている。
電極取り出し金具12の先端部12aは、インシュレータ14における凹部14hに対して軽圧入されるようになっている。そのため、スムーズに圧入されるとともに、嵌入後は、安定した仮固定状態になる。両者間の軽圧入が好適に実現されるように、本実施形態では設けられていないが、インシュレータ14の小径部14bに設けられたリブ14fの如きリブを、凹部14hの内周壁に設けても構わない。
【0060】
なお、インシュレータ14における凹部14hの内径(リブが設けられている場合にはその張り出しを含めた内径。以下、両者を合わせて、単に「内径」という。)と電極取り出し金具12の先端部12a(外径)との関係は、本実施形態の如く軽圧入になる程度が好適である。ただし、第1の製造方法において、両者の関係は、完全には嵌合せず、凹部14hの内径に比して先端部12aの外径が小さくて多少余裕のある状態から、凹部14hの内径に比して先端部12aの外径が大きくて、ある程度強く圧入しなければ嵌入しない状態までの間であればよい。
【0061】
電極取り出し金具12の先端部12aをインシュレータ14の凹部14hに軽圧入させて行くと、電極取り出し金具12の先端部12aにおける端面12bが凹部14hの底14iに当接する。端面12bが底14iと当接することで、電極取り出し金具12とインシュレータ14との間で位置決め(仮固定)が為されて、両者の位置関係が安定した状態になる。
【0062】
また、前工程で、段部14dと開口端8cとが当接してインシュレータ14と金属製外筒8との位置関係が安定した状態になっており、かつ、本工程で、端面12bと底14iとが当接して電極取り出し金具12とインシュレータ14との位置関係が安定した状態になっている。
【0063】
即ち、電極取り出し金具12と金属製外筒8との関係がインシュレータ14を介して安定的な状態になっている。そのため、セラミックスヒータ6から、金属製外筒8と、インシュレータ14と、さらには電極取り出し金具12とを順に組み立てる途中段階において、これら部材の位置関係を安定的に保つことができる。また、電極取り出し金具12まで組み上げたアッセンブリの状態においても、各部材の位置関係を安定的に保つことができる。
【0064】
これら安定的な各部材の保持により、本工程までの操作を容易かつ確実に行うことができる他、以降の工程(リード線緊結工程、ハウジング取付工程等)においても、前記アッセンブリが組み上げられた全ての部材の位置関係が安定的な状態になっていることから、操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0065】
(リード線緊結工程)
次に、本実施形態においては、リード線緊結工程の操作が行われる。第1の製造方法において、リード線緊結工程は、図5(d)に示すように、挿入穴12fに挿入されたリード線10が存在する前記軸方向(図1及び図2の両矢印D方向)位置であって、インシュ
レータ14が存在しない前記軸方向(両矢印D方向)位置における電極取り出し金具12の外周を縮径させる操作によって、当該電極取り出し金具12とリード線10とを緊結させる工程である。
【0066】
挿入穴12fへのリード線10の端部10aの圧入等によって、電極取り出し金具12とリード線10とは接続することができるが、本工程を経ることによって、両者を強固に緊結することができる。特に、本実施形態においては、電極取り出し金具12とリード線10との固定点が金属製外筒8の外側にあるため、縮径による緊結のプロセスが実施し易く、緊結の品質を向上させることができる。
【0067】
縮径の操作は、図5(d)における矢印Eに示すように、電極取り出し金具12を外側から絞り込むように行えばよい。具体的には、例えば、半環状で小径の2部材からなる冶具で締め付けるようにして縮径する方法を挙げることができる。本工程の操作によって、図5(d)における縮径部12cの電極取り出し金具12の外径が縮径されて、電極取り出し金具12とリード線10とを強固に緊結することができる。
【0068】
本工程の操作を実現できるようにするためには、前記軸方向(両矢印D方向)において、挿入穴12fに挿入されたリード線10が存在する位置であって、インシュレータ14が存在しない位置がなければならない。そのため、インシュレータ14における凹部14hの深さが大きくなり過ぎない(深過ぎない)ことが望ましい。一方、凹部14hの深さがあまりに小さいと(浅いと)、電極取り出し金具12とインシュレータ14との間の位置決め(仮固定)が不安定になってしまう。よって、前記軸方向(両矢印D方向)において、挿入穴12fに挿入されたリード線10が存在する位置であって、インシュレータ14が存在しない位置が生じる範囲で、凹部14hの深さを、電極取り出し金具12とインシュレータ14との間の位置決め(仮固定)に適した大きさ(深さ)にすることが望ましい。
【0069】
(ハウジング取付工程)
第1の製造方法において、ハウジング取付工程は、ハウジング2の内部孔4内に電極取り出し金具12とインシュレータ14との接続部が位置するようにして、金属製外筒8の後端(他端部)8bを内部孔4の端部開口2aに固定させる操作を行う工程である。
【0070】
本工程は、具体的には、まず、セラミックスヒータ6、金属製外筒8、インシュレータ14及び電極取り出し金具12からなるアッセンブリを、セラミックスヒータ6側から、ハウジング2の他端部開口2bに挿入する。そして、図5(e)に示すように、ハウジング2を矢印F方向に移動し、所定の位置で、金属製外筒8の8b後端(他端部)側とハウジング2の内部孔4の端部開口2aとを固定する。金属製外筒8の後端(他端部)8b側とハウジング2の内部孔4の端部開口2aとの固定は、圧入またはロウ付け等により行われる。
【0071】
図2に示すように、ハウジング2の内部孔4の大径部4aの内周面と、インシュレータ14の大径部14cの外周面との間には僅かな間隙がある。一方、金属製外筒8の外径は、後端(他端部)8bでは、インシュレータ14の大径部14cと略同径であるものの、先端(一端部)8aに向けて拡径し、大径部4aの内周面との間に隙間はなく、圧入させなければ進入しない状態になっている。
【0072】
そのため、ハウジング2の内部孔4の大径部4aの内周面には、潤滑剤を塗布しておくことが好ましい。ハウジング2の内周面に潤滑剤を塗布しておくことで、前記アッセンブリをハウジング2の内部孔4に挿入する際に、ごく接近するインシュレータ14の外周面で当該潤滑剤が均され、ハウジング2の内周面に潤滑性を付与することができる。
【0073】
前記アッセンブリがハウジング2の内部孔4に挿入される際、インシュレータ14の外周面で潤滑性が改善された内部孔4の内周面は、すぐにハウジング2の内周面との間で圧入状態となるが、改善された潤滑性の作用により、容易に圧入することができる。ハウジング2の内部孔4の内周面に使用可能な潤滑剤としては、粉末状の潤滑剤でも液体状の潤滑剤でもよく、従来公知のものを用いることができる。
【0074】
電極取り出し金具12における後端部12d寄りの位置に取り付けられているインシュレータ12gの外径は、ハウジング2の内部孔4の小径部14bの内径よりも、僅かに小さく設計されている。そのため、前記アッセンブリがハウジング2の内部孔4に挿入される際、インシュレータ12gが取り付けられている箇所が、小径部14bの所定の位置まで進んで行く。
【0075】
このインシュレータ12gの外径と小径部14bの内径との差が小さければ、そのままでも電極取り出し金具12の支持部材としての機能を果たし得るが、電極取り出し金具12のより安定的な支持を実現すべく、インシュレータ12gの外周面とハウジング2の内部孔4の内周面とを接着することが望ましい。
【0076】
インシュレータ12gの外周面とハウジング2の内部孔4の内周面との接着は、前記アッセンブリをハウジング2の内部孔4に挿入し終えて、図5(e)に示す所定の位置にインシュレータ12gを配した後に行う。両者の接着方法としては、特に制限はなく、例えば、両者の隙間に接着剤を注入して所定の硬化処理(加熱、紫外線照射、放置等)を施す方法が挙げられる。また、図5(e)に示す所定の位置にインシュレータ12gを配した後に、インシュレータ12gが位置する箇所のハウジング2の外周を縮径させることで固定しても構わない。
【0077】
電極取り出し金具12における後端部12d近傍は、ハウジング2の他端部開口2bから突出している。そして、図5(e)では不図示であるが、シール部材20を電極取り出し金具12における後端部12dから挿入し、ハウジング2の内部孔4の小径部4bの端部開口2aに嵌合させ、絶縁性のナット26によって固定する。
【0078】
以上のようにして、第1の製造方法により、既述の本実施形態のセラミックスヒータ型グロープラグを製造することができる。製造されたグロープラグの電極取り出し金具12における、ナット26を貫通した後端部12dには、ラウンドピン18が接続され、使用に供される(図1参照)。
【0079】
<第2の製造方法>
第2の製造方法は、金属製外筒取付工程と、インシュレータ仮固定工程と、四部品一体化工程と、ハウジング取付工程と、を四部品一体化工程以降はこの順で行う製造方法であり、四部品一体化工程とハウジング取付工程との間に、必要に応じて、リード線緊結工程が含まれる。
以下、図6を用いて、各工程ごとに順を追って説明する。なお、図6は、第2の製造方法における各工程を追って順に操作を行った場合の製造過程を(a)~(e)の順に示す模式断面図である。
【0080】
(金属製外筒取付工程)
第2の製造方法において、金属製外筒取付工程は、図6(a)に示すように、セラミックスヒータ6を、リード線10が突出する端面6bが内部に位置し、リード線10は貫通して表出するように金属製外筒8に挿入する操作を行い、セラミックスヒータ6に金属製外筒8を固定する工程である。第2の製造方法における金属製外筒取付工程は、第1の製
造方法における金属製外筒取付工程と同一の工程であるため、その詳細な説明は省略する。
【0081】
(インシュレータ仮固定工程)
第2の製造方法において、インシュレータ仮固定工程は、図6(b)に示すように、インシュレータ14における、金属製外筒8に嵌入する側とは反対側を、電極取り出し金具12の先端部(一方の端部)12aに仮固定する操作を行う工程である。
【0082】
具体的には、図6(b)に示すように、インシュレータ14を電極取り出し金具12の先端部12aに向けて(矢印G方向に)移動させ、インシュレータ14における凹部14hに、電極取り出し金具12の先端部12aを嵌入させる。電極取り出し金具12の先端部12aは、インシュレータ14における凹部14hに対して軽圧入されるようになっている。
【0083】
本工程の操作によって得られるユニットYにおいては、図6(b)に示すように、インシュレータ14の貫通孔14aと、電極取り出し金具12の挿入穴12fとが、ともに中心軸に位置していることから一直線状に連通し、あたかも1本の連通孔の如き状態になっている。
【0084】
インシュレータ14における凹部14hの内径と電極取り出し金具12の先端部12a(外径)との関係や、その他、両者の結合に関する構成は、第1の製造方法における電極取り出し金具取付工程において説明した内容と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0085】
ここまでで説明した金属製外筒取付工程とインシュレータ仮固定工程とは、別個独立の工程であり、いずれを先に行っても構わないし、同時に行っても構わない。また、別の場所でそれぞれの工程の操作を行って各ユニットを作製し、得られた2種のユニットを、以下に説明する以降の工程の操作に供することにしても構わない。
【0086】
(四部品一体化工程)
第2の製造方法において、四部品一体化工程は、金属製外筒取付工程の操作により得られた図6(a)に示す2部品からなるユニットXと、インシュレータ仮固定工程の操作により得られた図6(b)に示す2部品からなるユニットYと、を合体させて一体化させる工程である。
【0087】
より詳しくは、図6(c)に示すように、セラミックスヒータ6が固定された金属製外筒8の後端(他端部)8bに、電極取り出し金具12に仮固定されたインシュレータ14における金属製外筒8に嵌入する側(大径部4a側)を近づけて行く。そして、貫通孔14aにリード線10を貫通させつつ、金属製外筒8の後端(他端部)8bに少なくとも一部(本例では、インシュレータ14の一部に相当する小径部14b)を嵌入させる。このとき同時に、電極取り出し金具12の先端部(一方の端部)12aとリード線10の端部10aとを接続させる。四部品一体化工程は、以上の操作により、電極取り出し金具12の先端部(一方の端部)12aとリード線10の端部10aとの接続部にインシュレータ14を位置させる工程である。
【0088】
より具体的には、まず、ユニットXを垂直に固定し、ユニットYを下方に移動させることで、両者を合体させて一体化させる。ユニットXは、セラミックスヒータ6の上部に取り付けられた金属製外筒8における後端8bが上方に位置した状態で保持される。ユニットYは、インシュレータ14側を下方にして下降させ、後端8bとインシュレータ14とを近づけて行く。
【0089】
そして、貫通孔14aにリード線10を挿し込み、そのままさらに下降させて、金属製外筒8の後端(他端部)8bに、少なくとも一部(本例では、インシュレータ14の一部に相当する小径部14b)を嵌入させる。この際、リード線10は、貫通孔14aを貫通し、その先端が、連通している電極取り出し金具12の挿入穴12fにまで達した状態になっている(以上、図6(c)参照)。
【0090】
以上のようにして、セラミックスヒータ6と、金属製外筒8と、インシュレータ14と、電極取り出し金具12とからなる図6(c)に示すアッセンブリが、本工程の操作により組み立てられる。
金属製外筒8における後端8bの開口(内径)とインシュレータ14の小径部14bとの関係や、その他、両者の結合に関する構成は、第1の製造方法におけるインシュレータ取付工程において説明した内容と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0091】
また、本工程の操作により組み立てられたアッセンブリは、第1の製造方法における電極取り出し金具取付工程の操作により組み立てられた図5(c)に示すアッセンブリと同じであり、電極取り出し金具取付工程において説明した内容と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0092】
(リード線緊結工程)
次に、本実施形態においては、リード線緊結工程の操作が行われる。第2の製造方法において、リード線緊結工程は、図6(d)に示すように、挿入穴12fに挿入されたリード線10が存在する前記軸方向(図1及び図2の両矢印D方向)位置であって、インシュレータ14が存在しない前記軸方向(両矢印D方向)位置における電極取り出し金具12の外周を縮径させる操作によって、当該電極取り出し金具12とリード線10とを緊結させる工程である。
本工程は、第1の製造方法におけるリード線緊結工程と同一であり、第1の製造方法において既に詳細に述べられているため、その詳細な説明は省略する。
【0093】
(ハウジング取付工程)
第2の製造方法において、ハウジング取付工程は、ハウジング2の内部孔4内に電極取り出し金具12とインシュレータ14との接続部が位置するようにして、金属製外筒8の後端(他端部)8bを内部孔4の端部開口2aに固定させる操作を行う工程である(図6(e)参照)。
本工程も、第1の製造方法におけるハウジング取付工程と同一であり、第1の製造方法において既に詳細に述べられているため、その詳細な説明は省略する。
【0094】
以上のようにして、第2の製造方法により、既述の本実施形態のセラミックスヒータ型グロープラグを製造することができる。製造されたグロープラグの電極取り出し金具12における、ナット26を貫通した後端部12dには、ラウンドピン18が接続され、使用に供される(図1参照)。
【0095】
以上説明したとおり、第1の製造方法では、セラミックスヒータ6を垂直状態に保持し、その他の部材を順次垂直方向に組み上げて行くことで、容易かつ精度良く本実施形態のセラミックスヒータ型グロープラグを製造することができる。一方、第2の製造方法では、ユニットXとユニットYとを別々に組み立てて、これを一体化して合体させることで、本実施形態のセラミックスヒータ型グロープラグを製造することができ、組み立ての分業化に適している。
即ち、本実施形態のセラミックスヒータ型グロープラグは、簡易な構成のインシュレータ14を1個用意するだけで、容易かつ低コストで簡便な工程で製造することができるた
め、製造方法の自由度が高いといったメリットを有している。
【0096】
以上、本発明のセラミックスヒータ型グロープラグおよびその製造方法について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明のセラミックスヒータ型グロープラグおよびその製造方法は上記の実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態においては、電極取り出し金具12とリード線10との接続方法として、挿入穴12fにリード線10の端部10aを圧入により挿入し、かつ、縮径部12cで縮径させて両者を緊結させる特徴的な方法を例に挙げているが、縮径による緊結を省略してもよいし、挿入穴12fへのリード線10の端部10aの挿入が、圧入になっていなくても構わない。本発明においては、さらに本実施形態とは完全に異なる方法による接続であっても構わない。
【0097】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のセラミックスヒータ型グロープラグおよびその製造方法を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0098】
2:ハウジング、2a:端部開口、2b:他端部開口、4:内部孔、4a:大径部、4b:小径部、6:セラミックスヒータ、6a:発熱部、6b:端面、8:金属製外筒、8a:先端(一端部)、8b:後端(他端部)、8c:開口端、10:リード線、10a:端部、12:電極取り出し金具、12a:先端部(一方の端部)、12b:端面、12c:縮径部、12d:後端部、12e:ローレット部、12f:挿入穴、12g:インシュレータ、14:インシュレータ、14a:貫通孔、14b:小径部、14c:大径部、14d:段部、14e:傾斜部、14f:リブ、14g:等高部、14h:凹部、14i:底、18:ラウンドピン、20:シール部材(Oリング)、26:インシュレータ、X:ユニット、Y:ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6