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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】工作機械及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 3/30 20060101AFI20230413BHJP
   B23B 1/00 20060101ALI20230413BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20230413BHJP
   B23B 13/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B23B3/30
B23B1/00 Z
B23K20/12 B
B23B13/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019125403
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021010959
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏之
(72)【発明者】
【氏名】御園 春彦
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112621(JP,A)
【文献】特開2015-174179(JP,A)
【文献】特開平2-041804(JP,A)
【文献】国際公開第2012/070138(WO,A1)
【文献】特公昭49-018705(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 3/30
B23B 1/00
B23K 20/12
B23B 13/00-13/12
B23B 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのワーク同士の接合部を有する接合ワークを把持する把持部と、該把持部に把持された前記接合ワークを支持する支持部とを有し、前記接合ワークを前記支持部によって所定幅の内周面で支持し、前記把持部によって回転させて加工する工作機械であって、
前記接合部が前記支持部から突出した前記接合ワークを構成する一方の第1ワークを前記把持部で把持して、前記接合ワークの前記接合部から前記接合ワークを構成する他方の第2ワークの側に向かう所定の領域を、前記所定幅以上の範囲に亘って前記第1ワークの外径以下の外径に加工するように、前記接合ワークの前記接合部の処理を制御する接合部処理制御手段と、
前記第1ワークが前記支持部に支持された状態から、前記第2ワークが前記支持部に支持された状態となるまで、前記接合ワークを前記支持部に対して摺動させるように、前記接合ワークの移動を制御する移動制御手段とを有することを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記支持部を備えるガイドブッシュを有する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記把持部を備える主軸と、前記主軸とは別の主軸とからなる互いに対向する2つの主軸と、
前記2つの主軸で前記2つのワークを1つずつ把持して前記接合ワークとするように、前記2つのワークの接合を制御する接合制御手段とを有する、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
2つのワーク同士の接合部を有する接合ワークを把持する開閉可能な把持部と、前記接合ワークを構成する一方の第1ワークを把持して、前記把持部から突出する接合部が、開放状態の前記把持部内側に引込まれるように前記接合ワークを移動させるワーク供給部とを有し、前記ワーク供給部によって引込まれた前記接合ワークを前記把持部の所定幅の内周面で把持して加工する工作機械であって、
前記接合部を前記把持部から突出させて前記第1ワークを前記把持部で把持して、前記接合ワークの前記接合部から前記接合ワークを構成する他方の第2ワークの側に向かう所定の領域を、前記所定幅以上の範囲に亘って前記第1ワークの外径以下の外径に加工するように、前記接合ワークの前記接合部の処理を制御する接合部処理制御手段と、
開放状態の前記把持部から突出する前記第2ワークが、前記把持部内に収容されるまで、前記接合部処理制御手段によって前記接合部が処理された前記接合ワークを前記ワーク供給部で把持して前記把持部に対して摺動させるように、前記接合ワークの移動を制御する移動制御手段とを有することを特徴とする工作機械。
【請求項5】
2つのワーク同士の接合部を有する接合ワークを把持する把持部と、該把持部に把持された前記接合ワークを支持する支持部とを有し、前記接合ワークを前記支持部によって所定幅の内周面で支持し、前記把持部によって回転させて加工する工作機械を用いる加工方法であって、
前記接合部が前記支持部から突出した前記接合ワークを構成する一方の第1ワークを前記把持部で把持して、前記接合ワークの前記接合部から前記接合ワークを構成する他方の第2ワークの側に向かう所定の領域を、前記所定幅以上の範囲に亘って前記第1ワークの外径以下の外径に加工するように、前記接合ワークの前記接合部の処理を制御する接合部処理制御ステップと、
前記第1ワークが前記支持部に支持された状態から、前記第2ワークが前記支持部に支持された状態となるまで、前記接合ワークを前記支持部に対して摺動させるように、前記支持部による前記接合ワークの移動を制御する移動制御ステップとを有することを特徴とする加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのワーク同士を接合する工作機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-269364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主軸から突出するワークをガイドする支持部を設けた工作機械が知られている。このような工作機械において、2つのワーク同士を接合した接合ワークを加工する場合、2つのワークが偏心して接合されている場合には、接合部が支持部を通過することができず、円滑に加工を行うことができない場合があり得る。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、接合ワークが偏心している場合でも円滑に加工することができる工作機械及び加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様における工作機械は、2つのワーク同士の接合部を有する接合ワークを把持する把持部と、該把持部に把持された前記接合ワークを支持する支持部とを有し、前記接合ワークを前記支持部によって所定幅の内周面で支持し、前記把持部によって回転させて加工する工作機械であって、前記接合部が前記支持部から突出した前記接合ワークを構成する一方の第1ワークを前記把持部で把持して前記接合ワークの前記接合部から前記接合ワークを構成する他方の第2ワークの側に向かう所定の領域を、前記所定幅以上の範囲に亘って前記第1ワークの外径以下の外径に加工するように、前記接合ワークの前記接合部の処理を制御する接合部処理制御手段と、前記第1ワークが前記支持部に支持された状態から、前記第2ワークが前記支持部に支持された状態となるまで、前記接合ワークを前記支持部に対して摺動させるように、前記接合ワークの移動を制御する移動制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の第1の態様における工作機械は、上記構成において、前記支持部を備えるガイドブッシュを有するのが好ましい。
【0008】
本発明の第1の態様における工作機械は、上記構成において、前記把持部を備える主軸と、前記主軸とは別の主軸とからなる互いに対向する2つの主軸と、前記2つの主軸で前記2つのワークを1つずつ把持して、前記第1ワークが前記支持部に支持された状態で前記2つのワークを接合し、前記接合ワークとするように、前記2つのワークの接合を制御する接合制御手段とを有するのが好ましい。
【0009】
本発明の第2の態様における工作機械は、2つのワーク同士の接合部を有する接合ワークを把持する開閉可能な把持部と、前記接合ワークを構成する一方の第1ワークを把持して、前記把持部から突出する接合部が、開放状態の前記把持部内側に引込まれるように前記接合ワークを移動させるワーク供給部とを有し、前記ワーク供給部によって引込まれた前記接合ワークを前記把持部の所定幅の内周面で把持して加工する工作機械であって、前記接合部を前記把持部から突出させて前記第1ワークを前記把持部で把持して、前記接合ワークの前記接合部から前記接合ワークを構成する他方の第2ワークの側に向かう所定の領域を、前記所定幅以上の範囲に亘って前記第1ワークの外径以下の外径に加工するように、前記接合ワークの前記接合部の処理を制御する接合部処理制御手段と、開放状態の前記把持部から突出する前記第2ワークが、前記把持部内に収容されに支持されるまで、前記接合部処理制御手段によって前記接合部が処理された前記接合ワークを前記ワーク供給部で把持して前記把持部に対して摺動させるように、前記接合ワークの移動を制御する移動制御手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の加工方法は、2つのワーク同士の接合部を有する接合ワークを把持する把持部と、該把持部に把持された前記接合ワークを支持する支持部とを有し、前記接合ワークを前記支持部によって所定幅の内周面で支持し、前記把持部によって回転させて加工する工作機械を用いる加工方法であって、前記接合部が前記支持部から突出した前記接合ワークを構成する一方の第1ワークを前記把持部で把持して、前記接合ワークの前記接合部から前記接合ワークを構成する他方の第2ワークの側に向かう所定の領域を、前記所定幅以上の範囲に亘って前記第1ワークの外径以下の外径に加工するように、前記接合ワークの前記接合部の処理を制御する接合部処理制御ステップと、前記第1ワークが前記支持部に支持された状態から、前記第2ワークが前記支持部に支持された状態となるまで、前記接合ワークを前記支持部に対して摺動させるように、前記支持部による前記接合ワークの移動を制御する移動制御ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接合ワークが偏心している場合でも円滑に加工することができる工作機械及び加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態である工作機械の構成を概略で示す説明図である。
図2】ワークに所定の加工を行っている状態を簡略化して示す説明図である。
図3】ワークから製品を加工した状態を簡略化して示す説明図である。
図4】ワークの加工が完了し、ワークが旧材となった状態を簡略化して示す説明図である。
図5】旧材としての第2ワークを正面主軸から背面主軸に受け渡すとともに、正面主軸に新材としての第1ワークを供給した状態を簡略化して示す説明図である。
図6】第2ワークと第1ワークとの端面同士を摩擦圧接により接合し、接合ワークとした状態を簡略化して示す説明図である。
図7】接合部を処理した状態を簡略化して示す説明図である。
図8】接合ワークを正面主軸で把持してガイドブッシュの支持部に対して互いに摺動させ、接合部が支持部を通過した状態を簡略化して示す説明図である。
図9】接合ワークをさらに摺動させ、第2ワークが支持部に支持された状態を簡略化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施の形態である工作機械及び加工方法について詳細に例示説明する。
【0014】
図1に示す工作機械1は、ワークWを加工する自動旋盤(CNC旋盤)であり、互いに対向する2つの主軸として、正面主軸10と背面主軸20とを有している。
【0015】
2つのワークWは、それぞれ中心軸線Oを有するとともに中心軸線Oに沿って長尺状に延在する棒材であり、互いに同等の外径を有している。2つのワークWは、それぞれ円柱状をなしているが、これに限らず、例えば正多角柱状をなしていてもよい。2つのワークWは、それぞれ中実の棒材であるが、これに限らず、中空の棒材であってもよい。2つのワークWは、それぞれ金属材料からなっているが、これに限らない。
【0016】
正面主軸10と背面主軸20とは、正面主軸10の中心軸線と背面主軸20の中心軸線とが平行となるように、互いに対向して配置されている。以下、正面主軸10と背面主軸20の中心軸線に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交する方向をX軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。
【0017】
基台2上には、例えばボールネジ機構等の正面側移動機構3によってZ軸方向に移動可能に正面主軸台11が設置されている。正面主軸10は、正面主軸台11にワークWを把持して回転可能に支持され、主軸モータによって回転駆動される。主軸モータとしては、例えば、正面主軸台11の内部において、正面主軸台11と正面主軸10との間に構成されるビルトインモータを採用することができる。
【0018】
基台2上には、例えばボールネジ機構等の背面側移動機構4によってZ軸方向に移動可能に背面主軸台21が設置されている。背面主軸20は、背面主軸台21にワークWを把持して回転可能に支持され、主軸モータによって回転駆動される。主軸モータとしては、例えば、背面主軸台21の内部において、背面主軸台21と背面主軸20との間に構成されるビルトインモータを採用することができる。
【0019】
背面側移動機構4と背面主軸台21との間にY軸移動機構を設置し、背面主軸20をY軸方向に移動させるように構成することもできる。
【0020】
正面主軸10の先端には、正面チャック12が開閉可能に設けられている。正面チャック12は、チャックスリーブ13の内側に収容されている。正面チャック12は、チャックスリーブ13が正面主軸10の先端側に向けてスライド移動すると閉じられ、チャックスリーブ13が正面主軸10の基端側に向けてスライド移動すると開かれる。正面主軸10は、正面チャック12を開いた開放状態としてワークWを挿入し、正面チャック12を閉じた閉止状態とすることによってワークWを把持することができる。
【0021】
背面主軸20の先端には、背面チャック22が開閉可能に設けられている。背面チャック22は、チャックスリーブ23の内側に収容されている。背面チャック22は、チャックスリーブ23が背面主軸20の先端側に向けてスライド移動すると閉じられ、チャックスリーブ23が背面主軸20の基端側に向けてスライド移動すると開かれる。背面主軸20は、背面チャック22を開いた開放状態としてワークWを挿入し、背面チャック22を閉じた閉止状態とすることによってワークWを把持することができる。
【0022】
正面主軸10と背面主軸20との間には、ガイドブッシュ30が設けられている。ガイドブッシュ30は、基台2に設置されたガイドブッシュ支持台31に装着され、正面主軸10と同軸に配置されている。本実施の形態では、ガイドブッシュ30は、所定幅Swの内周面で形成される支持部80を有している。支持部80は、ガイドブッシュ30がガイドブッシュ支持台31に対してZ軸方向に位置調節されることで、ワークWを回転可能且つZ軸方向に摺動可能に支持することができるように、ワークWの外径に対応した内径に調節される。ガイドブッシュ30は支持可能なワークWの径に応じてサイズが異なり、所定幅Swは、ガイドブッシュのサイズに応じて、例えば5~100mm程度に、ワークWの外径に応じて適宜設定される。
【0023】
工作機械1は、ワークWを加工する工具41を備える加工部40を有している。工具41は、正面主軸10に把持され回転させられたワークWに対し、X軸方向への移動により切り込み、正面主軸10(正面主軸台11)のZ軸方向への移動により送られる。すなわち、X軸方向が切り込み方向となり、Z軸方向が送り方向となる。工具41は刃物台42に保持されている。刃物台42は、工具41がガイドブッシュ30の前方に配置され、ガイドブッシュ支持台31にX軸方向及びY軸方向に移動可能に支持されている。刃物台42のZ軸方向の位置は一定である。刃物台42には、工具41として、例えば外径切削バイトや突っ切りバイトなどが搭載されており、各工具41は、刃物台42の例えばY軸方向への移動により、加工内容に応じて適宜切り替えられる。
【0024】
工作機械1の正面主軸10の後方にバーフィーダで構成されるワーク供給部50が配置されている。ワーク供給部50は、ワークWの後端を把持するフィンガー51と、フィンガー51をZ軸方向に駆動する駆動ロッド52とを有している。ワーク供給部50は、正面主軸10に新材としてのワークWを順次供給することができる。ワーク供給部50は、所定の加工及び突っ切り加工が行われる毎に、ワークWを繰り出すことができる。
【0025】
工作機械1は、制御部60を有している。制御部60は、例えばCPU(中央演算処理装置)等のプロセッサとメモリとを有するコンピュータで構成することができる。制御部60は、正面主軸台11、正面主軸10(正面チャック12を含む)、背面主軸台21、背面主軸20(背面チャック22を含む)、ガイドブッシュ30、加工部40及びワーク供給部50の各作動を統合制御することができる。
【0026】
次に、上記構成を有する工作機械1を用いたワークWの加工方法の一例である、本発明の一実施の形態としての加工方法について例示説明する。工作機械1の各部が制御部60によって統合制御されることにより行われる。
【0027】
図2図3に示すように、制御部60は、連続加工制御手段としての機能による連続加工制御ステップによって、正面主軸10で把持したワークWを回転させて、加工部40の工具41で所定の加工(除去加工)及び突っ切り加工を交互に連続的に行い、ワークWから所定の長さの製品Pを所定の個数連続して得るようにワークWの加工を制御する。ワークWは、ガイドブッシュ30に挿通され、支持部80によって所定幅Swに亘って支持されてガイドブッシュ30から突出し、ガイドブッシュ30から突出した部分で加工が行われる。なお、図2図9においては、正面主軸10及び背面主軸20の全体は図示せずに、正面チャック12及び背面チャック22のみを示している。
【0028】
図4図6に示すように、制御部60は、接合制御手段としての機能による接合制御ステップにより、連続加工制御手段によって所定の個数の製品Pが加工された後のワークW(残材)からなる旧材を第2ワークW2として背面主軸20で把持し、正面主軸10に供給される新材を第1ワークW1として正面主軸10で把持することによって、正面主軸10と背面主軸20とで2つのワークWを1つずつ把持して、2つのワークWを摩擦圧接により、1つの接合ワークW3として接合するように制御する。なお、摩擦圧接とは、正面主軸10と背面主軸20とを相対回転させ、2つのワークWの端面同士を所定の摩擦圧力で押圧することで2つのワークWの端面間に摩擦熱を生じさせた後、2つのワークWの相対回転を停止させて所定のアプセット圧力で押圧することによって端面同士を接合する従来公知の技術であり、詳細な説明は割愛する。
【0029】
本実施形態において接合制御手段による摩擦圧接は第1ワークW1の端部をガイドブッシュ30から突出させ、第1ワークW1が支持部80に支持された状態として、ガイドブッシュ30と背面チャック22との間に第1ワークW1の端部と第2ワークWの端部を配置して行われる。2つのワークWである第1ワークW1と第2ワークW2を摩擦圧接によって接合することによって、第1ワークW1と第2ワークW2との当接部分は両ワークWの外周にバリ71が突出した接合部70が形成される。
【0030】
図6図7に示すように、接合制御ステップが完了すると、次に、制御部60は、接合部処理制御手段としての機能による接合部処理制御ステップによって、第1ワークW1を把持部81で把持して第1中心軸線O1を中心に接合ワークW3を回転させながら、接合ワークW3における2つのワークW同士の接合部70の処理として、接合ワークW3の外周面の接合部70から第2ワークW2の側に向かう所定の領域を加工部40の工具41でバリ71を含めて除去加工するように制御する。本実施の形態では、把持部81は、正面主軸10の正面チャック12で構成されている。工具41によるバリ71を含めた除去加工は、工具41を第1ワークW1の外周面に当てた状態からZ軸方向に所定幅Sw以上の範囲Rに亘って、範囲Rの終端にテーパ面72を形成して行われる。
【0031】
図7図9に示すように、接合部処理制御ステップが完了すると、次に、制御部60は、移動制御手段としての機能による移動制御ステップによって、第1ワークW1が支持部80に支持された第1状態(図7参照)から、第2ワークW2が支持部80に支持された第2状態(図9参照)となるまで、接合ワークW3を把持部81で把持して支持部80に対して摺動させて接合ワークW3を支持するように制御する。正面主軸10は、背面主軸20が接合ワークW3の把持を解除した状態で、接合ワークW3の第1ワークW1部分を把持して、背面主軸20から離反するように移動することによって、第1状態から第2状態に接合ワークW3を摺動させる。
【0032】
接合部処理制御ステップによる除去加工によって、範囲Rは、バリ71を含めて、第1ワークW1の外周面から突出することなく第1ワークW1以下の外径に切削加工されているため、支持部80と第1ワークW1との間の隙間に比較して大きな隙間を介して支持部80に進入することができる。また、第1ワークW1の中心軸線である第1中心軸線O1と、第2ワークW2の中心軸線である第2中心軸線O2とが互いに対してずれ、第1ワークW1と第2ワークW2とが接合部70で偏心している場合には、範囲Rの第2ワークW2の外周面と支持部80との間にはより大きな隙間が形成されるため、範囲Rの終端の部分は、この隙間分第2ワークW2が撓むようにしてテーパ面72に案内されて支持部80を通過し、これにより第2ワークW2が支持部80に支持される。したがって、本実施の形態によれば、接合ワークW3が偏心している場合でも接合部70が支持部80を通過することを可能にし、その結果、第1状態から第2状態とすることを可能にすることができる。ただし第2状態において接合ワークW3は偏心分僅かに撓んだ状態で支持部80に支持される。
【0033】
なお、範囲Rでは製品Pの加工を行うことができないため、範囲Rは接合部70及び第2ワークW2が支持部80を通過可能となる必要最小限の範囲とするのが好ましく、概ね支持部80の所定幅Swと同じ程度とするのが好ましい。
【0034】
移動制御ステップが完了すると、次に、制御部60は、連続加工制御ステップに戻り、連続加工制御ステップから移動制御ステップを繰り返す。
【0035】
以上、説明したように、本実施の形態である加工装置及び加工方法は、接合部70から第2ワークW2の側に向かう所定の領域を、所定幅Sw以上の範囲Rに亘って第1ワークW1の外径以下の外径に除去加工することにより、接合ワークW3が偏心している場合でも接合部70が支持部80を円滑に通過できるようにすることができるので、接合ワークW3の円滑な加工を実現することができる。
【0036】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0037】
例えば、前記実施の形態では、移動制御ステップにおいて接合ワークW3を正面主軸10の正面チャック12で把持して支持部80に対して摺動させるようにしているが、これに限らず、例えば、移動制御ステップにおいて接合ワークW3をワーク供給部50で把持して支持部80に対して摺動させるようにしてもよい。
【0038】
また、正面主軸10の正面チャック12が所定幅Swの内周面でワークWを把持するように構成されている場合には、移動制御ステップにおいて、開放状態の正面チャック12から突出する第2ワークW2が、正面チャック12内に収容されるまで、接合部処理制御手段によって接合部70が処理された接合ワークW3をワーク供給部50で把持して正面チャック12に対して摺動させるようにしてもよい。この場合、ガイドブッシュ30を設けない構成としてもよい。
【0039】
前記実施の形態では、摩擦圧接によって接合ワークW3を形成するようにしているが、摩擦圧接以外の方法によって接合ワークW3を形成するようにしてもよい。また、前記実施の形態では、正面主軸10と背面主軸20とを用いて接合ワークW3を形成するようにしているが、これに限らず、例えば、正面主軸10及び背面主軸20以外の手段によって接合ワークW3を形成するようにしてもよいし、予め形成された接合ワークW3を工作機械1で加工するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 工作機械
2 基台
3 正面側移動機構
4 背面側移動機構
10 正面主軸
11 正面主軸台
12 正面チャック
13 チャックスリーブ
20 背面主軸
21 背面主軸台
22 背面チャック
23 チャックスリーブ
30 ガイドブッシュ
31 ガイドブッシュ支持台
40 加工部
41 工具
42 刃物台
50 ワーク供給部
51 フィンガー
52 駆動ロッド
60 制御部(連続加工制御手段、接合制御手段、接合部処理制御手段、移動制御手段)
70 接合部
71 バリ
72 テーパ面
80 支持部
81 把持部
W ワーク
W1 第1ワーク
W2 第2ワーク
W3 接合ワーク
O 中心軸線
O1 第1中心軸線
O2 第2中心軸線
P 製品
Sw 所定幅
R 範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9