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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】連続式加熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/22 20060101AFI20230413BHJP
   F27B 7/24 20060101ALI20230413BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20230413BHJP
   C10B 49/06 20060101ALI20230413BHJP
   C10B 53/02 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F27B7/22
F27B7/24
F27D7/06 B
C10B49/06
C10B53/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019145057
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021025720
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】592141053
【氏名又は名称】明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池戸 紀孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 修二
(72)【発明者】
【氏名】松原 肇
(72)【発明者】
【氏名】見澤 学
【審査官】岡田 眞理
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-327985(JP,A)
【文献】特開昭50-018838(JP,A)
【文献】特開2002-130629(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00325189(EP,A1)
【文献】特開平11-014264(JP,A)
【文献】特開昭50-160637(JP,A)
【文献】特開2001-116460(JP,A)
【文献】実開平01-136898(JP,U)
【文献】特開2008-232538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 7/00- 7/42
F27D 7/00-15/02
C10B 49/00-49/22
C10B 53/02
F23G 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を移送しつつ加熱処理し、軸心を中心に回転する回転炉と、
前記回転炉の外周に間隙を介して配設された環状の枠体と、
前記枠体を回転可能に支持する支持部と、を含む連続式加熱処理装置であって、
前記回転炉は一方向に延在する筒状であり、
前記回転炉の外周面に、前記枠体の内周面に向けて突出する嵌合部が前記回転炉の円周
方向に複数設けられ、
前記枠体の内周面に、前記嵌合部に嵌合し得る被嵌合部が設けられ、
前記嵌合部と前記被嵌合部との間に、前記嵌合部が前記回転炉の半径方向へ移動するこ
とを許容する空間部が形成され
さらに、前記回転炉の一端部が挿入される開口部が形成された側板を有する固定装置と、
前記固定装置と前記回転炉との間の隙間に配設された断面がL字形状のシール部材と、を含み、
前記シール部材は、
前記回転炉の外周に取り付けられるリング状部材と、
前記固定装置の側板の開口部の周縁に回転可能に配設される円盤状のフランジと、を有し、
前記フランジに、前記固定装置の側板に摺接する第1のパッキンが取り付けられ、
前記固定装置の側板に固定された固定金具に、前記フランジを前記側板側へ押圧するローラが取り付けられている、連続式加熱処理装置。
【請求項2】
前記空間部は、前記嵌合部と前記被嵌合部とで形成された、請求項1に記載の連続式加熱処理装置。
【請求項3】
前記枠体は、環状部と、前記環状部の内周面から突出する前記被嵌合部と、を含み、
前記嵌合部は、前記回転炉の外周面から突出する第1部材および第2部材を含み、
前記被嵌合部は、前記第1部材と前記第2部材との間に形成される溝部内に配置され、
前記被嵌合部と前記溝部との間に前記空間部が形成される、請求項1または2記載の連続式加熱処理装置。
【請求項4】
前記嵌合部は、前記回転炉の外周面に、円周方向に等間隔をおいて3か所以上設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の連続式加熱処理装置。
【請求項5】
被処理物を移送しつつ加熱処理し、軸心を中心に回転する回転炉と、
前記回転炉の一端部が挿入される開口部が形成された側板を有する固定装置と、
前記固定装置と前記回転炉との間の隙間に配設された断面がL字形状のシール部材と、
を含む連続式加熱処理装置であって、
前記シール部材は、
前記回転炉の外周に取り付けられるリング状部材と、
前記固定装置の側板の開口部の周縁に回転可能に配設される円盤状のフランジと、を有し、
前記フランジに、前記固定装置の側板に摺接する第1のパッキンが取り付けられ、
前記固定装置の側板に固定された固定金具に、前記フランジを前記側板側へ押圧するローラが取り付けられている、連続式加熱処理装置。
【請求項6】
前記側板の前記開口部の周縁に沿って複数の前記固定金具が前記側板に固定され、前記ローラの支軸の軸芯方向は前記回転炉の軸芯方向と直交する、請求項記載の連続式加熱処理装置。
【請求項7】
前記リング状部材と前記回転炉との間に第2のパッキンが設けられた、請求項または記載の連続式加熱処理装置。
【請求項8】
前記被処理物が籾殻であり、前記回転炉が、前記被処理物を移送しつつ加熱処理して炭化する炭化炉である、請求項1からのいずれかに記載の連続式加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾殻、おが屑などの粉粒体、一般家庭からの廃棄物、その他の廃棄物などを、乾燥、炭化、加熱分解、またはその他の処理を行う連続式加熱処理装置に関し、さらに詳しくは廃棄物を炭化処理して、例えば、活性炭の原料となる炭素質材料を製造するための連続式加熱処理装置に関する。
【0002】
従来より、籾殻、おが屑などの粉粒体、一般家庭からの廃棄物、その他の廃棄物(以下、炭材ともいう。)を炭化する装置として、炭材を移送しつつ加熱処理する回転炉と、回転炉の軸方向の一端部側に連結された炭材の供給部と、回転炉の軸方向の他端部側に連結された排出部と、を含む装置が提案されている。
【0003】
このような構成の炭化装置において、回転炉の両端部に環状のレール部が溶接固定され、そのレール部を回転可能に支持するガイドローラが設けられている。さらに、回転炉はモータなどの駆動装置によって回転されるように構成され、回転炉をその軸回りに回転させることにより、供給部から回転炉内に供給された炭材が撹拌されながら加熱され、排出部側へ送られるように構成されている。
【0004】
そこで、回転炉と供給部との間のシール性を向上するため、特許文献1(特開2001-116460号公報)には、回転炉の回転胴の変形並びに熱伸びによる軸方向、径方向の変位を吸収することができ、信頼性並びに安全性が高く回転炉の回転部と静止部の間をシールすることのできる回転炉のシール装置が提案されている。
特許文献1に記載の回転炉のシール装置は、円筒状をなして回転する回転胴と、この回転胴の外部に配置され回転胴が貫入するハウジングと、このハウジングに取付けられて回転胴の周面を囲繞するパッキン箱とを備えた回転炉のシール装置において、パッキン箱の内周面に設けられて回転胴の外周面に摺接し回転胴の軸方向伸縮を許容する回転シール部材と、パッキン箱のハウジングへの取付部に介装されて回転胴の径方向伸縮を許容する端面シール部材とを備えた構成とするものである。
【0005】
また、特許文献2(特開平9-72666号公報)には、駆動源によって回転駆動される大径回転体と、その周囲に少しの隙間を有して筒体部が位置する固定部材とのシールを行う大径回転体の気密装置が提案されている。
この特許文献2に記載の大径回転体の気密装置は、固定部材の筒体部を少し外した位置の大径回転体の周囲に盲板部を介して取付けられた筒状のシール部材取付け金具と、筒体部の垂直面に取付けられ、予め表面加工された摺動面を有し、その軸心を大径回転体の軸心に略一致させて取付けた環状摺動板と、シール部材取付け金具にその一側が密封状態で取付けられ、他側はラッパ状に開いてその端部が環状摺動板に摺接する弾性シール部材とを有することを特徴とするものである。
【0006】
さらに、特許文献3(特開2001-324272号公報)には、被処理物を加熱処理する加熱円筒体を有する回転加熱処理装置に於いて、処理装置のガスが漏洩するのを防止するために加熱円筒体の摺動面を完全に遮断する密封手段が提案されている。
この特許文献3に記載の回転加熱処理装置は、被処理物を移送しつつ加熱処理する外熱式の加熱円筒体の両端部に被処理物を供給、排出する装置の筺体を嵌合連結せしめて、加熱円筒体を回転可能に支持すると共に、加熱円筒体と筺体の間にグランドパッキンからなる主シール部材を設けて摺動可能に密封して、更に、主シール部材の外側にはシート状のパッキンを線状弾性体を介して加熱円筒体面に押圧するように囲繞して補助シール部材を設けて二重密封構造にすると共に、該補助シール部材を筺体に着脱自在に固定して回転加熱処理装置を形成するものである。
【0007】
特許文献4(特許第5692620号公報)には、長時間必要な賦活処理の生産性を上げる活性炭製造装置について開示されている。
特許文献4に記載の活性炭製造装置は、活性炭原料の供給を連続的に受け、その供給された活性炭原料を連続的に加熱移送する炭化炉加熱室及び炭化炉加熱室の周囲を包み加熱する熱風通路を有し、供給を受ける活性炭原料の熱分解特性に応じて設定された炭化処理温度を制御して炭化物を製造する炭化炉と、炭化炉から炭化物を連続的に受け入れて、炭化物を保管する少なくとも1台と、炭化物を保管した後、賦活活性化ガスの供給を受けて賦活を行う少なくとも他の1台からなり、炭化物が収容された賦活炉加熱室及び賦活炉加熱室の周囲を包み加熱する熱風通路を有する複数台の炭化物保管・賦活炉と、炭化炉から得られた乾留ガス及び炭化物保管・賦活炉の保管の際に発生した乾留ガス及び炭化物保管・賦活炉の賦活の際に賦活活性化ガスを供給して生成した賦活発生ガスを燃焼させて得る熱風を炭化炉及び炭化物保管・賦活炉の熱風通路に送出する熱風発生炉とを具備するものである。
【0008】
特許文献5(特許第5691118号公報)には、処理する活性炭原料の熱分解特性に対応して活性炭原料としての炭化物を製造する活性炭製造装置について開示されている。
特許文献5に記載の活性炭製造装置においては、独立して炭化温度が調整可能な炭化炉を複数台有し、連続して活性炭原料を順次次の炭化炉に移送すべく直列に連結され、活性炭原料の熱分解特性に応じた炭化条件を設定してなる連続炭化炉群と、連続炭化炉群の最後の炭化炉から供給される炭化物を収納保管し、炭化物の収容を終えた後、賦活活性化ガスを供給して賦活化させる炭化物保管・賦活炉と、連続炭化炉群から発生する乾留ガスと、炭化物保管・賦活炉で炭化物を収納保管の際に発生する乾留ガス、及び炭化物保管・賦活炉で賦活の際に発生する賦活発生ガスとを燃料として燃焼させ熱風を発生させる熱風発生炉と、熱風発生炉で発生した熱風を温度調整に使用する熱エネルギとして連続炭化炉群の必要数の炭化炉及び炭化物保管・賦活炉に供給する熱風ダクトと、炭化物保管・賦活炉で賦活が終了したとき、炭化物保管・賦活炉から供給された賦活物を冷却する冷却機とを具備するものである。
【0009】
特許文献6(特開2014-88457号公報)には、安価に製造した廃棄物からなる被処理物を連続かつ安定的に炭化させて高収率による炭材製品を得る廃棄物の炭化処理方法及び炭化装置について開示されている。
特許文献6に記載の廃棄物の炭化処理方法及び炭化装置においては、プラスチック系廃棄物と有機質系廃棄物とをそれぞれ破砕し、それらを混合、圧縮、加熱して成る被処理物としての固形物を製造する工程と、内部が閉鎖され一端閉鎖壁側に被処理物の投入部を有すると共に他端側を開放した被処理物の排出部を有する半開放型の炉体を300℃以上に予熱させる工程と、300℃以上に予熱された炉体の投入部から被処理物を連続して投入する工程と、被処理物の炉体への投入と共に投入部近傍で投入される固形物の総量の理論酸素量未満の酸素を炉体内に連続して供給する工程と、投入された被処理物を投入部から排出部へ向けて搬送する工程と、予熱された炉体へ供給される被処理物の酸素量に応じた燃焼による炉体温度維持と、理論酸素量に不足の乾留による被処理物の炭化と、を同時に行なう自燃炭化工程と、を含むものである。
【0010】
特許文献7(特開2013-177620号公報)には、幅広い原料を用いて高エネルギーの再生炭を生成することができる還元炭化処理システムについて開示されている。
特許文献7に記載の還元炭化処理システムにおいては、一つのキルン内で、有機物の乾燥と熱分解と蓄熱を行うようにした炭化処理装置であって、入口及び出口を有する回転可能キルンと、該入口から該キルン内に有機物を導入するための原料供給部と、該キルンを内部空間に有し、該キルンに外部から熱を供給する燃焼室と、を有し、含水率が高い有機物は、含水率の低い有機物よりもキルン内における滞在時間が長くなるようにしたものである。
【0011】
特許文献8(国際公開WO2010/047283号公報)には、幅広い原料を用いて高エネルギーの再生炭を生成することができる還元炭化処理システムについて開示されている。
特許文献8に記載の還元炭化処理システムにおいては、一つのキルン内で、有機物の乾燥と熱分解と蓄熱を行うようにした炭化処理装置であって、入口及び出口を有する回転可能キルンと、該入口から該キルン内に有機物を導入するための原料供給部と、該キルンを内部空間に有し、該キルンに外部から熱を供給する燃焼室と、を有し、含水率が高い有機物は、含水率の低い有機物よりもキルン内における滞在時間が長くなるようにしたものである。
【0012】
特許文献9(特開平10-17312号公報)には、被炭化物の炉内滞留時間の調整が容易な炭化装置について開示されている。
特許文献9に記載の炭化装置においては、高温ガスを生成する高温ガス生成装置と、スクリューとトラフとから構成されるスクリューコンベア用いて被炭化物を搬送し、その搬送途中で高温ガスと被炭化物との熱交換を行うことで、被炭化物を炭化させて炭化物を生成する炭化炉とを備えたものである。
【0013】
特許文献10(特開平10-17311号公報)には、被炭化物の灰化を防止して安定した炭化物を生成することが可能な炭化装置について開示されている。
特許文献10に記載の炭化装置においては、高温ガスを生成する高温ガス生成装置と、その高温ガスと被炭化物との熱交換により、被炭化物を炭化させて炭化物を生成する炭化炉とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2001-116460号公報
【文献】特開平9-72666号公報
【文献】特開2001-324272号公報
【文献】特許第5692620号公報
【文献】特許第5691118号公報
【文献】特開2014-88457号公報
【文献】特開2013-177620号公報
【文献】国際公開WO2010/047283号公報
【文献】特開平10-17312号公報
【文献】特開平10-17311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
先行技術文献に記載された炭化装置の回転炉は長尺な金属管で構成されているので、回転炉が高温に加熱されると、回転炉は軸方向および径方向に熱膨張する。
そうすると、回転炉は高熱で熱膨張するのに対して、回転炉の外側に溶接されたレール部は熱膨張する程度が小さいので、レール部によって回転炉は締め付けられることになり、回転炉の膨張する力の逃げ場がなく、そのため炭化装置に負荷がかかり破損するおそれがある。また、回転炉の熱が直接ガイドローラに伝わるため、ガイドローラが早期に摩耗するという欠点がある。
【0016】
さらに、このような構成の炭化装置において、供給部および排出部は架台上に固定され静止しているのに対し、回転炉は回転し、かつ加熱によって回転炉は軸方向に伸長しおよび径方向に膨張するので、回転炉と供給部との間、および回転炉と排出部との間に大きい隙間が形成されることになる。
【0017】
回転炉と供給部との間に隙間が形成されると、その隙間から炭材およびガスが装置の外側へ漏れるという欠点があり、また隙間から外部の空気が回転炉内に侵入すると回転炉内の処理雰囲気が変化するので、熱分解または炭化等の加熱処理が安定した状態で行えなくなる。
【0018】
しかし、上記特許文献1乃至3の装置では、シール部材について研究開発が成されているが、熱による影響について全く想定されていない。さらには、ガイドローラの摩耗に関する問題も残存した状態である。
【0019】
さらに、上記特許文献4乃至10の特許文献には、熱による影響について全く想定されていない。また、ガイドローラの摩耗に関する問題も残存した状態である。
【0020】
本発明の主な目的は、上記欠点を解消するためになされたものであって、回転炉が熱膨張した際の装置の破損を防止し、ガイドローラの摩耗を抑えることができる連続式加熱処理装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、回転炉が熱膨縮した場合であっても熱膨縮を吸収する構造を有し、温度変化に対応可能で回転炉と固定装置との間をシールすることのできる連続式加熱処理装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、熱分解または炭化等の加熱処理を安定した状態で行うことができる連続式加熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)
一局面に従う連続式加熱処理装置は、連続式加熱処理装置であって、被処理物を移送しつつ加熱処理し、軸心を中心に回転する回転炉と、回転炉の外周に間隙を介して配設された環状の枠体と、枠体を回転可能に支持する支持部と、を含む連続式加熱処理装置であって、回転炉は、一方向に延存している長い筒状であり、回転炉の外周面に、枠体の内周面に向けて突出する嵌合部が回転炉の円周方向に複数設けられ、枠体の内周面に、嵌合部に嵌合し得る被嵌合部が設けられ、嵌合部と被嵌合部との間に、嵌合部が回転炉の半径方向へ移動することを許容する空間部が形成されている。
【0022】
この場合、回転炉が回転すると、回転炉の嵌合部は枠体の被嵌合部に嵌合しているので、回転炉の回転に伴って枠体も回転炉と一体となって回転する。そして、回転炉および枠体は支持部によって回転可能に支持される。
回転炉が加熱されて熱膨張した場合には、嵌合部が回転炉の半径方向へ移動することになる。ここで、嵌合部と被嵌合部との間に、嵌合部が回転炉の半径方向へ移動することを許容する空間部が形成されているので、嵌合部が空間部内へ移動することで嵌合部の半径方向の移動を空間部で吸収することができ、それによって、回転炉が破損することを防止することができる。
【0023】
また支持部は回転炉に直接接触していないので、支持部は回転炉のように高温にはならない。したがって、複数の駆動部材から構成される支持部は、回転炉の温度の影響を受けにくいため、支持部の摩耗を抑えることができる。
さらに、回転炉の回転軸芯は大きく変動することがない。よって、回転炉と固定装置(例えば、供給部、排出部)との間のシール性を向上させることができる。これにより、回転炉と供給部との間の隙間から炭材およびガスが装置の外側へ漏れることがなくなり、また隙間から外部の空気が回転炉内に侵入することがなくなる。よって、回転炉内の処理雰囲気が安定化して、熱分解または炭化等の加熱処理を安定した状態で行うことができる。
【0024】
(2)
第2の発明にかかる連続式加熱処理装置は、一局面に従う連続式加熱処理装置において、空間部は、嵌合部と被嵌合部とで形成されてもよい。
【0025】
これにより、嵌合部が空間部内へ移動することで嵌合部の半径方向の移動を空間部で吸収することができ、それによって、回転炉が破損することを防止することができる。
【0026】
(3)
第3の発明にかかる連続式加熱処理装置は、第2の発明にかかる連続式加熱処理装置において、枠体は、環状部と、環状部の内周面から突出する被嵌合部と、を含み、嵌合部は、回転炉の外周面から突出する第1部材および第2部材を含み、被嵌合部は、第1部材と第2部材との間に形成される溝部内に配置され、被嵌合部と溝部との間に空間部が形成されてもよい。
【0027】
この場合、回転炉の回転を枠体に確実に伝達することができ、また、回転炉の半径方向への熱膨張を空間部によって吸収することができる。
また、第1部材は2つの凸部から形成され、第2部材は1つの凸部から形成され、第1部材と第2部材とは互いに交差するように配置してもよい。これにより、安定した空間部を形成することができる。
【0028】
(4)
第4の発明にかかる連続式加熱処理装置は、第3の発明にかかる連続式加熱処理装置において、嵌合部は、回転炉の外周面に、円周方向に等間隔をおいて3か所以上設けられていてもよい。
【0029】
この場合、嵌合部は、回転炉の外周面に、円周方向に等間隔をおいて3か所以上設けられていると、回転炉が回転した場合において、回転炉の下側にある嵌合部と枠体の被嵌合部とが常に嵌合している。したがって、回転炉の荷重は枠体を介して支持部に支持され、また回転炉の上側にある嵌合部と枠体の被嵌合部とは両者間に空間部が形成された状態で嵌合する。よって、加熱による回転炉の熱膨張は常に空間部によって吸収される。
【0030】
(5)
第5の発明にかかる連続式加熱処理装置は、第1の発明にかかる連続式加熱処理装置において、さらに、回転炉の一端部が挿入される開口部が形成された側板を有する固定装置と、固定装置と回転炉との間の隙間に配設された断面がL字形状のシール部材と、を含み、シール部材は、回転炉の外周に取り付けられるリング状部材と、固定装置の側板の開口部の周縁に回転可能に配設される円盤状のフランジと、を有し、フランジに、固定装置の側板に摺接する第1のパッキンが取り付けられ、固定装置の側板に固定された固定金具に、フランジを側板側へ押圧するローラが取り付けられていてもよい。
【0031】
この場合、回転炉が回転すると、シール部材も回転炉と一体に回転するので、固定装置に固定された固定金具のローラと側板との間でシール部材のフランジが挟持された状態で、シール部材のフランジは円弧を描くように移動する。よって、ローラは第1のパッキンを側板方向へ押圧するので、固定装置(供給部)の側板と回転炉との間の隙間はシール部材によって確実にシールされる。
これにより、回転炉と固定装置(供給部)との間の隙間から炭材およびガスが装置の外側へ漏れることがなくなり、また隙間から外部の空気が回転炉内に侵入することがなくなる。よって、回転炉内の処理雰囲気が安定化して、熱分解または炭化等の加熱処理を安定した状態で行うことができる。
【0032】
(6)
他の局面からなる連続式加熱処理装置は、被処理物を移送しつつ加熱処理し、軸心を中心に回転する回転炉と、側板に回転炉の一端部が挿入される開口部が形成された固定装置と、固定装置および回転炉の隙間に配設された、断面がL字形状のシール部材と、を含む連続式加熱処理装置であって、シール部材は、固定装置の側板の開口部の周縁に回転可能に配設される円盤状の(環状)フランジと、回転炉の外周に取り付けられるリング状部材と、を有し、シール部材のフランジに、固定装置の側板に摺接する第1のパッキンが取り付けられ、固定装置の側板に固定された固定金具に、シール部材のフランジを側板側へ押圧するローラが取り付けられている。
【0033】
この場合、回転炉が回転すると、シール部材も回転炉と一体に回転するので、固定装置に固定された固定金具のローラと側板との間でシール部材のフランジが挟持された状態で、シール部材のフランジは円弧を描くように移動する。よって、ローラは第1のパッキンを側板方向へ押圧するので、固定装置(供給部)の側板と回転炉との間の隙間はシール部材によって確実にシールされる。
【0034】
これにより、回転炉と固定装置(供給部)との間の隙間から炭材およびガスが装置の外側へ漏れることがなくなり、また隙間から外部の空気が回転炉内に侵入することがなくなるため、回転炉内の処理雰囲気が安定化して、熱分解または炭化等の加熱処理を安定した状態で行うことができる。
【0035】
(7)
第7の発明にかかる連続式加熱処理装置は、他の局面に従う連続式加熱処理装置において、固定金具は、側板の開口部の周縁に沿って複数側板に固定され、ローラの支軸の軸芯方向は回転炉の軸芯方向と直交するようにしてもよい。
【0036】
この場合、固定金具のローラによってシール部材のフランジを均一の力で押圧できるので、シール性をさらに向上させることができる。
【0037】
(8)
第8の発明にかかる連続式加熱処理装置は、他の局面に従う連続式加熱処理装置において、シール部材のリング状部材と回転炉との間に第2のパッキンが設けられてもよい。
【0038】
この場合、第2のパッキンによって回転炉と固定装置の側板との間のシール性をさらに向上させることができ、また第2のパッキンの弾性および摩擦によってシール部材を回転炉と一体に回転させることができる。
【0039】
(9)
第9の発明にかかる連続式加熱処理装置は、第1の発明にかかる連続式加熱処理装置または他の局面に従う連続式加熱処理装置において、被処理物が籾殻であり、回転炉が、被処理物を移送しつつ加熱処理して炭化する炭化炉であってもよい。
【0040】
この場合、連続式加熱処理装置を用いて、籾殻を炭化し炭素質材料 を製造することができる。この炭素質材料を賦活化処理することによって、活性炭を得ることができる。また、製造された炭素質材料は、活性炭以外の炭素原料としても利用することができる。
【0041】
(A)
上記の連続式加熱処理装置において、シール部材に、第2のパッキンを圧縮してシール部材に保持させる留め具が設けられ、圧縮された第2のパッキンが回転炉の外周面に圧接されてもよい。
この場合、留め具によってシール部材の回転炉への取付けを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本実施の形態にかかる連続式加熱処理装置の模式的斜視図である。
図2】連続式加熱処理装置の模式的断面図である。
図3】連続式加熱処理装置の要部の模式的拡大断面図である。
図4】連続式加熱処理装置の回転炉と固定装置の側板とのシール構造を示す模式的断面図である。
図5】連続式加熱処理装置の回転炉に角度を付与する方法を示す模式図である。
図6】連続式加熱処理装置の要部の模式的拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
図1は本発明の実施の形態の連続式加熱処理装置10の模式的斜視図、図2は連続式加熱処理装置10の模式的断面図、図3は連続式加熱処理装置10の要部の模式的拡大断面図である。
【0044】
図1から図3に示すように、本発明の実施の形態の連続式加熱処理装置10は、被処理物を移送しつつ加熱処理し、軸心を中心に回転する回転炉100と、回転炉100の外周に間隙を介して配設された環状の枠体120と、枠体120を回転可能に支持する支持部130と、を含む。
連続式加熱処理装置10(以下、単に、加熱処理装置ともいう。)は、さらに回転炉100の上流側端部(図1の左側端部)が連結される固定装置200(以下、供給部ともいう。)を含む。
【0045】
図1および図4に示すように、固定装置200の側板210に開口部220が形成され、開口部220に回転炉100の左側端部が回転可能に挿入されている。供給部200は、被処理物の供給ホッパーに接続されている。
回転炉100の下流側端部(図1の右側端部)は、別の固定装置250(以下、排出部ともいう。)に連結されている。
【0046】
供給部200から被処理物が回転炉100内に供給され、回転炉100内で被処理物を移送しつつ加熱処理(例えば、炭化処理)することで、加熱処理物(例えば、炭化物)が排出部250から排出されるようになっている。
連続式加熱処理装置10は、通常は架台50上に設置されている。
【0047】
図5(a)に示すように、架台50は水平としたまま、回転炉100の供給部200への取付け高さを排出部250への取付け高さより高く設定することにより、回転炉100に特定の傾斜角度を与えることができる。すなわち、設計段階から傾斜角度が決定している場合には、回転炉100の製造時から特定の傾斜角度に調整することができる。
また、図5(b)に示すように、回転炉100自体を、水平状態で設計しても良い。この場合、回転炉100、供給部200および排出部250を水平面に載置した状態で設計することができる。すなわち製造コストを低減することができる。
【0048】
また、支持部材52によって架台50傾斜角度を調整することができる架台50に、水平状態で設計した回転炉100を載置させることで、回転炉100の傾斜角度を調節可能としてもよい。架台50の傾斜角度を適宜調整することによって回転炉100の傾斜角度を自由に調節することができるようになる。
このようにして回転炉100に傾斜角度を設けることにより、回転炉100の回転に伴って被処理物は特定の速度で排出部250から排出される。回転炉100の傾斜角度および回転速度は、被処理物の原料の種類および必要な加熱処理時間に応じて適宜設定される。
【0049】
回転炉100はロータリーキルン(回転ドラム)で構成することができる。
回転炉100はその両端部が支持部130で回転可能に支持されている。支持部130としては、本実施の形態ではガイドローラ134を含むことができる。回転炉100の一端部は供給部200の側板210に形成された開口部220に挿入されている。また回転炉100の他端部は、排出部250の側板に形成された開口部(図示せず)に挿入されている。
【0050】
回転炉100の周囲にはギヤなどが形成され、モータにて駆動する歯車がかみ合っており、モータの駆動により回転炉100を回転するように構成されている。
ガスバーナー 、木質ペレットバーナーなどのバイオマスバーナーなどの燃焼装置が回転炉100の内部に向けて取付けられており、燃焼装置により回転炉100の内部が加熱されるようになっている。ガスバーナーは、回転炉100の一端および/または中間部に設けることができ、熱風あるいは火炎により被処理物(炭材など)の高温処理を行う。
【0051】
図1に示すように、支持部130は、枠体120を回転可能に支持するものである。支持部130は、架台50に固定された基台132と、該基台132に回転可能に軸支されたガイドローラ134と、を有する。支持部130は、回転炉100の下側に複数配設されている。回転炉100はその両端部が複数の支持部130で回転可能に支持され、モータを備えた駆動装置によって回転駆動されるように構成されている。
【0052】
そして、供給部200および排出部250は架台50上に固定され静止しているのに対し、回転炉100は回転しているので、回転炉100と供給部200との間に形成される隙間、および回転炉100と排出部250との間に形成される隙間をシールするシール構造が採用されている。シール構造の具体的構成は後述する。
【0053】
このような構成を有する連続式加熱処理装置10において、典型的には、回転炉100は排出部250に向かってわずかに下り傾斜するように設置され、回転炉100をその軸回りに回転させることにより、供給部200から回転炉100内に供給された炭材などの被処理物は撹拌されながら加熱処理され、排出部250側へ送られるように構成されている。
【0054】
被処理物としては、例えば、籾殻、おが屑などの粉粒体、一般家庭からの廃棄物、その他の廃棄物を含むことができる。
【0055】
各部材の具体的な構成は次のとおりである。
(回転炉100)
上記のとおり、外表面が長尺な金属部材で内部がコンクリートで構成される胴体を有する回転炉100の両端部は、支持部130によって回転可能に支持されている。その支持部130の位置において、回転炉100の外周に間隙を介して環状の枠体120が配設されている。
図1から図3に示すように、その枠体120の配設位置において、回転炉100の外周面に枠体120の内周面に向けて突出する嵌合部110が回転炉100の円周方向に複数設けられている。この実施の形態では、嵌合部110は回転炉100の外周面から突出する第1部材111および第2部材112を含み、第1部材111および第2部材112の間に溝部113が形成されている。
【0056】
そして、本実施の形態では、図3に示すように、嵌合部110は、第1部材111と第2部材112とが底板114によって連結されている。底板114は回転炉110の外周面に沿うように湾曲しており、底板114の湾曲した両端部に第1部材111と第2部材112とがそれぞれ設けられている。
このような構成の嵌合部110を被嵌合部124に嵌合させるには、図3に示すように、嵌合部110の溝部113に被嵌合部124に位置合わせ、嵌合部110を回転炉100の軸芯方向に移動させればよい。その後、第1部材111と第2部材112とが底板114によって一体に形成された嵌合部110の底板114を溶接により回転炉100の外周面に取り付ける。
【0057】
また、図6に示すように、この嵌合部110A(図3における嵌合部110)と、被嵌合部124との嵌合箇所に隣接する嵌合箇所においては、第1部材111および第2部材112が底板114によって一体に連結されている。
すなわち、回転炉100の外周面と枠体120の内周面との隙間に、嵌合部110Aを形成する必要がある。この場合、嵌合部110Aを構成する第1部材111または第2部材112、底板114、および被嵌合部124の各厚みについて、それぞれは当該間隔よりも小さいが、合計の厚みは当該隙間よりも当然大きい。
【0058】
そのため、まず、被嵌合部124を枠体120に溶接する。次に、第1部材111および第2部材112を、被嵌合部124に嵌合させつつ底板114を回転炉100の外周面側に挿入して当該外周面と溶接した後、第1部材111および第2部材112と溶接する。それにより、嵌合部110Aを形成することができる。
【0059】
次に、嵌合部110Bは、嵌合部110Aにおける被嵌合部124、第1部材111および第2部材112を90度回転させたものであり、溶接手法としては、同じ手順で形成することができる。
また、嵌合部110A、および嵌合部110Bを形成することにより、枠体120のがたつきを低減することができる。
【0060】
なお、図3の底板114は、回転炉100の外周面に沿うように湾曲して示したが、底板114の大きさに対して回転炉100の大きさが十分に大きい場合は、回転炉100の外周面は平面に近くなるため、底板114は平板を用いることもできる。
【0061】
このように嵌合部110Aおよび110Bを使用することによって、回転炉100の外周面に嵌合部110を容易に精度よく形成することができる。このように、第1部材111、第2部材112および底板114で構成される溝部113と、被嵌合部124とによって空間部115が形成される。
【0062】
なお、嵌合部および被嵌合部の構成は上記実施形態に限らず、両者の間に半径方向への移動が可能な空間部が形成できるものであればよい。例えば、嵌合部および被嵌合部をそれぞれ略コ字状の部材で構成し、嵌合部および被嵌合部を対向する方向へ移動させることで両者を嵌合させる構成としてもよい。その場合は、嵌合部および被嵌合部を嵌合させた場合は、嵌合部および被嵌合部を回転炉の軸芯方向および周方向へ移動できないように、嵌合部および被嵌合部が構成される。例えば、嵌合部および被嵌合部の嵌合部分の幅寸法を溝部の内幅寸法よりも大きく形成すればよい。嵌合部と被嵌合部とを嵌合させるには、嵌合部および被嵌合部を対向する方向へ移動させて両者を嵌合させた後、嵌合部と回転炉の外周面との間に底板を挿入して嵌合部を被嵌合部側へ移動させ、その後、嵌合部および底板を回転炉の外周面に溶接する。
【0063】
嵌合部110は回転炉100の周方向に3か所以上設けられているのが好ましい。本実施の形態においては、4個としているがこれに限定されず、任意の個数であることが好ましい。図2では、説明を簡略にするため、嵌合部110が4か所設けられた例を示している。
【0064】
(枠体120)
枠体120は回転炉100の外周に間隙を介して配設された環状の金属部材で構成されている。間隙の距離は任意に設定することができるが、回転炉100の直径と1つの隙間の距離との比(隙間/回転炉)は0.009以上0.091以下が適切であり、0.018以上0.036以下が好ましい。また、間隙の距離は、10mm以上100mm以下が適切であり、20mm以上40mm以下が好ましい。
【0065】
枠体120の内周面に、嵌合部110に嵌合し得る被嵌合部124が設けられている。つまり、枠体120は、環状部122と、環状部122の内周面から突出する被嵌合部124と、を含む。被嵌合部124は断面が山状の突部で構成されている。
そして、嵌合部110と被嵌合部124との間に、嵌合部110が回転炉100の半径方向の外側へ移動することを許容する空間部115が形成されている。空間部115の大きさおよび形状は、回転炉100、枠体120のサイズ、および加熱温度などに応じて適宜設定することができる。
【0066】
モータの駆動によって回転炉100が回転すると、回転炉100の嵌合部110は枠体120の被嵌合部124に嵌合しているので、回転炉100の回転に伴って枠体120も回転炉100と一体となって回転する。つまり、枠体120は回転炉100に連れ回りする。
【0067】
回転炉100が加熱によって熱膨張した場合には、嵌合部110が回転炉100の半径方向の外側へ移動することになるが、嵌合部110と被嵌合部124との間に、嵌合部110が回転炉100の半径方向へ移動することを許容する空間部115が形成されているので(図3)、嵌合部110が空間部115内へ移動することで嵌合部110の移動を空間部115で吸収することができる。そのことによって、回転炉100が熱膨張した場合でも枠体120によって締め付けられ破損することがない。また、回転炉100の回転軸芯は加熱によって大きく変動することがない。
【0068】
すなわち、図2に示すように、嵌合部110は、回転炉100の外周面に、円周方向に等間隔をおいて複数(好ましくは3か所以上)設けられており、回転炉100は嵌合部110と被嵌合部124との嵌合によって枠体120を介して支持部130に支持されている。
【0069】
図2に示す状態において、回転炉100の下側にある第1の嵌合部110aと枠体120の第1の被嵌合部124aとの嵌合(接触)によって、回転炉100の荷重は枠体120を介して支持部130に支持されているが、回転炉100の上側にある第2の嵌合部110bと枠体120の第2の被嵌合部124bとは両者の間に空間部115が形成された状態で嵌合している。
【0070】
よって、加熱による回転炉100の嵌合部110の半径方向外方への移動は、回転炉100の第2の嵌合部110と枠体120の第2の被嵌合部124との間に形成された空間部115によって吸収されることになる。従って、回転炉100が枠体120に締め付けられることによって破損することはなく、また回転炉100の軸芯の位置が加熱によって大きく変動することもない。
また、回転炉100はその軸方向へも熱膨張するが、嵌合部110は被嵌合部124との嵌合状態を維持しながら、回転炉100は枠体120の内周面にスライド移動する。
【0071】
次に、籾殻を被処理物とし、連続式加熱処理装置10を用いて籾殻から炭素質材料を製造する方法を説明する。
回転炉100の胴体部分は、1/100以上30/100以下程度の小さな角度で下り傾斜し 、枠体120と支持部130で支持され、胴体部分に固定されたギヤなどを介してモータで回転駆動される。
回転炉100の入口側の一端部に、架台50に固定した供給部200が配設され、出口側の一端部に、架台50に固定した排出部250が配設されている。供給部200の近傍位置にガスバーナーが固定され、空気が送り込まれて発生した高温ガスとの接触により籾殻が炭素質材料へ炭化処理される。この回転炉100では内部で発火しないように制御される。
なお、ガスバーナーにはオイルタンクから燃料油が導入されてもよく、このようにすれば加熱処理装置10の起動時に回転炉100を効率よく加熱することができる。
【0072】
このような構成を有する加熱処理装置10において、原料供給器(ホッパー)が籾殻を受け取り、ホッパーに接続された供給部200から籾殻を回転炉100内へ移送し、回転炉100内で加熱処理されて籾殻の炭化が行われ、排出部250から排出された炭素質材料は冷却後、粉砕機により粉砕されて微粉体となる。
【0073】
このようにして得られた炭素質材料は、例えば、ガス賦活剤により賦活処理することによって、活性炭を製造することができる(ガス賦活法)。ガス賦活剤としては、高温の水蒸気または二酸化炭素などを用いることができる。
賦活処理は、例えば、窒素ガスで充満させた回転式の賦活炉に、炭素質材料と750℃以上の水蒸気とを混合して20分以上撹拌することによって、進行させることができる。炭素質材料は、賦活処理によりガス化され微細孔を有する活性炭となる。
+HO=Cn-1+CO+H
このとき、ガス賦活剤の種類、ガス賦活剤の供給量、賦活炉加熱室の温度、賦活時間、冷却方法等により活性炭の性能を調整することができる。
また、上記のようにして得られた炭素質材料は、活性炭以外の炭素原料としても利用することができる。
【0074】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の連続式加熱処理装置10は、被処理物を移送しつつ加熱処理し、軸心を中心に回転する回転炉100と、回転炉100の一端部が挿入される開口部220が形成された側板210を有する固定装置としての供給部200と、供給部200および回転炉100の隙間に配設された断面がL字形状のシール部材300と、を含む。
回転炉100は第1実施形態で説明した回転炉100と同様の構成を備えている。
【0075】
供給部200は、回転炉100の一端側では(原料供給の上流側では)第1実施形態で説明した供給部200と同様の構成とすることができ、回転炉100の他端側では(原料供給の下流側では)第1実施形態で説明した排出部250と同様の構成とすることができる。
【0076】
第2の実施の形態では、図1に示すように、回転炉100の左端部には原料供給ホッパーに接続された供給部200が配設され、回転炉100の右端部に加熱処理された被処理物を次の工程に移送する排出部250が配設されている。
供給部200の側板210に設けられた開口部220は円形状の孔であり、回転炉100の外径よりもやや大きく形成されている。
【0077】
そして、回転炉100と供給部200、および回転炉100と排出部250とはシール部材300を介して摺動可能に連結されている。
図4に示すように、シール部材300は、供給部200の側板210の開口部220の周縁に回転可能に配設される円盤状(環状)のフランジ310と、回転炉100の外周に取り付けられるリング状部材320と、を有する。
【0078】
シール部材300は金属で形成されている。フランジ310の一端とリング状部材320の一端とが連続し、断面がL字状に形成されたものである。
シール部材300のフランジ310に、供給部200の側板210に摺接する第1のパッキン312が取り付けられている。
【0079】
この実施形態では、フランジ310の供給部側の面に凹溝314が形成され、凹溝314内に帯状の第1のパッキン312が装着されている。第1のパッキン312としては、例えば、耐熱性に優れた炭化素材からなるグランドパッキンを使用することができる。フランジ310の表面側は平滑面に形成されている。
【0080】
シール部材300のリング状部材320が回転炉100の外周面に取り付けられている。リング状部材320の内径は、回転炉100の外径に比べてやや大きく設定されており、リング状部材320を回転炉100に外嵌した場合には、リング状部材320と回転炉100との間に数ミリ程度の間隙が形成され、該間隙に第2のパッキン322が配設されている。この第2のパッキン322の弾性反発力および摩擦によって、リング状部材320は回転炉100の外周面に取り付けられた状態となっている。
【0081】
リング状部材320の回転炉100側に、第2のパッキン322を配置して位置決めするための切欠部340が形成されている。また、シール部材300に、第2のパッキン322を圧縮してシール部材300に保持させる留め具330が設けられている。
【0082】
留め具330は、シール部材300のリング状部材320の端部に螺合されたボルト332と、このボルト332を通すための孔部が設けられた留め片334と、を有している。ボルト332をシール部材300に締め付けることにより、第2のパッキン322の側面が留め片334で押さえられる。すると、第2のパッキン322が変形してリング状部材320の底面から第2のパッキン322の一部が回転炉100側へ突出して、第2のパッキン322が回転炉100の外周面に圧接される。その結果、シール部材300は回転炉100の外周面に第2のパッキン322の弾性反発力および摩擦によって取り付けられことになる。
【0083】
上記のとおり、シール部材300のフランジ310に、供給部200の側板210に摺接する第1のパッキン312が取り付けられている。すなわち、フランジ310の供給部200側の底面に凹溝314が形成され、この凹溝314内に帯状の第1のパッキン312が装着されている。
【0084】
そして、供給部200の側板210に固定された固定金具400に、シール部材300のフランジ310を側板210側へ押圧するローラ410が取り付けられている。
【0085】
固定金具400は、供給部200の側板210に固定される固定片440と、固定片440から回転炉100の軸芯方向と平行な方向に立設された立設片420と、立設片420に設けられた軸孔に挿入された回転軸430と、回転軸430に取付けられたローラ410と、を有する。
固定金具400の固定片440が側板210に固定されると、回転軸430の軸芯は回転炉100の軸芯と直交するようになり、従って、回転軸430に枢着されたローラ410の回転軸は回転炉100の軸芯と直交する。
【0086】
固定金具400は側板210に溶接、ビスなどの固定具によって固定することができる。
図1に示すように、複数の固定金具400がフランジ310の外側において側板210に固定されている。つまり、複数の固定金具400は等間隔をおいて円弧を描くように側板210に配置されている。側板210の開口部220の周縁に沿って複数の固定金具400が側板210に固定され、ローラ410の支軸の軸芯方向は回転炉100の軸芯方向と直交している。
【0087】
回転炉100が回転すると、シール部材300も回転炉100と一体に回転するので、供給部200に固定された固定金具400のローラ410と側板210との間でフランジ310が挟持された状態で、シール部材300のフランジ310は円弧を描くように移動する。よって、ローラ410は第1のパッキン312を側板210方向へ常に押圧しているので、供給部200の側板210と回転炉100との隙間はシール部材300によって常にシールされる。
【0088】
加熱により回転炉100がその半径方向に膨張した場合には、回転炉100に取り付けられたシール部材300もその半径方向の外側に向かって移動するが、固定金具400と側板210との間にはスペースが形成されていることにより、フランジ310はシール状態を維持した状態で半径方向の外側へ移動する。
加熱により回転炉100がその軸方向へ伸長した場合には、側板210とシール部材300との間に配設された第1のパッキン312の変形によって、回転炉100の伸長を吸収することができる。ここで、回転炉100の最大伸長状態において、シール部材300と側板210との間の寸法が第2のパッキン322によってシールされるように設定してもよい。
【0089】
なお、上記実施形態では、加熱処理装置10内に投入した被処理物を回転炉100内で直接加熱して処理する構成としたが、加熱処理装置10の回転炉100内に投入した被処理物を回転炉100の外側から間接的に加熱して処理する外熱式の構成としてもよい。
外熱式にすることで、炉内の温度管理を精密に管理することができ、また炉内の温度を均一に保つことができる。また内熱式と異なり被処理物が燃焼されることがないため、品質の高い炭化物を得ることができる。
【0090】
また、供給ホッパーを備えた供給部200から被処理物を回転炉100内に供給する際に、スクリューコンベア、シュートなどを用いて、供給部200から被処理物を回転炉100内に送るようにしてもよい。
【0091】
上記実施形態では、回転炉100に形成された嵌合部110を、回転炉100の外周面から断面ハ字状に突出する第1部材111および第2部材112で構成し、枠体120の内周面に設けられた被嵌合部124を、第1部材111および第2部材112の間に形成された溝部113内に配置される断面山状の被嵌合部124で構成したが、嵌合部110および被嵌合部124の形態は何ら限定されない。例えば、嵌合部と被嵌合部とを逆の形態とし、被嵌合部を一対の第1部材および第2部材から構成し、嵌合部を第1部材および第2部材の間に形成される溝内に配置される山状部材で構成してもよい。
【0092】
さらに、嵌合部と被嵌合部とが当接する面に回転炉の軸芯方向に傾斜する傾斜面を設けてもよい。すなわち、回転炉が加熱により軸芯方向へ伸長した場合に溝部の幅が広がるように第1部材の当接面、第2部材の当接面、および/または被嵌合部の当接面に傾斜面を形成してもよい。このように構成することにより、回転炉の伸長につれて嵌合部と被嵌合部との嵌合深さが増すので、回転炉の軸芯位置の変動をさらに抑制することができる。
【0093】
また、上記の実施形態では籾殻を炭化する連続式加熱処理装置10の例を説明したが、籾殻以外に、おが屑、木片などその他の廃棄物を炭化する場合にも本発明の装置を適用することができ、さらに、例えば汚泥由来の物質(下水汚泥,し尿汚泥,生産活動に伴って発生する各種産業汚泥等),植物由来の物質(廃木材,建材,椰子殻等),高分子物質由来の物質(樹脂,ゴム等)、畜産廃棄物または家畜排泄物(牛糞・豚糞・鶏糞など)、またはそれら 各物質の混合物から乾燥物,炭化物を得る場合にも本発明の連続式加熱処理装置を使用することができる。
また、炭化装置以外に、乾燥炉,熱分解炉等の各装置についても同様に本発明は適用することができる。
【0094】
本発明においては、加熱処理装置および連続式加熱処理装置10が「連続式加熱処理装置」に相当し、回転炉100が「回転炉」に相当し、嵌合部110が「嵌合部」に相当し、枠体120が「枠体」に相当し、支持部130が「支持部」に相当し、シール部材300が「シール部材」に相当し、空間部115が「空間部」に相当し、フランジ310が「フランジ」に相当し、溝部113が「溝部」に相当し、第1部材111が「第1部材」に相当し、第2部材112が「第2部材」に相当し、第1のパッキン312が「第1のパッキン」に相当し、第2のパッキン322が「第2パッキン」に相当し、固定装置200および供給部200が「固定装置」に相当し、側板210が「側板」に相当し、支持部130が「支持部」に相当し、リング状部材320が「リング状部材」に相当し、固定金具400が「固定金具」に相当し、ローラ410が「ローラ」に相当する。
【0095】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神の範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0096】
10 連続式加熱処理装置,加熱処理装置
100 回転炉
110 嵌合部
111 第1部材
112 第2部材
113 溝部
115 空間部
120 枠体
122 環状部
124 被嵌合部
130 支持部
134 ガイドローラ
200 固定装置,供給部
210 側板
220 開口部
300 シール部材
310 フランジ
312 第1のパッキン
320 リング状部材
322 第2のパッキン
330 留め具
400 固定金具
410 ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6