IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシザキ電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-加熱調理器 図1
  • 特許-加熱調理器 図2
  • 特許-加熱調理器 図3
  • 特許-加熱調理器 図4
  • 特許-加熱調理器 図5
  • 特許-加熱調理器 図6
  • 特許-加熱調理器 図7
  • 特許-加熱調理器 図8
  • 特許-加熱調理器 図9
  • 特許-加熱調理器 図10
  • 特許-加熱調理器 図11
  • 特許-加熱調理器 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 14/00 20060101AFI20230413BHJP
   F24C 1/00 20060101ALI20230413BHJP
   F24C 15/14 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
F24C14/00 C
F24C1/00 360A
F24C1/00 360Z
F24C15/14 A
F24C1/00 340A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019145866
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021025735
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100147625
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】畑田 康治
(72)【発明者】
【氏名】増田 翔太郎
【審査官】武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-58223(JP,U)
【文献】特開2002-13738(JP,A)
【文献】特開2019-89000(JP,A)
【文献】実開昭55-144595(JP,U)
【文献】特開2015-155777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 14/00
F24C 1/00
F24C 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を加熱調理するための調理庫と、
前記調理庫内を加熱するヒータと、
前記調理庫内の空気を対流させる対流ファンと、
前記調理庫内に蒸気を供給する蒸気発生装置と、
前記調理庫の底部に設けられた排水口と、
前記排水口に排水管を介して接続された排水タンクと、
前記排水タンクに洗浄水を供給する給水部と、
前記調理庫の天井部に設けられて洗浄水を噴出する洗浄ノズルと、
前記排水管と前記排水タンクを含み前記洗浄ノズルに洗浄水を送る洗浄水経路と、
前記洗浄水経路に介装されて前記排水タンク内の洗浄水を前記洗浄ノズルに送出するポンプと、
前記ヒータと前記蒸気発生装置の少なくとも一方と前記対流ファンとを作動させて前記調理庫内に収容した食材を加熱調理する調理プログラムと、
前記給水部から供給された前記排水タンク内の洗浄水を前記ポンプを作動させることによって前記洗浄ノズルから前記調理庫内に噴出させ、噴出させた洗浄水を前記排水口から再び前記排水タンクに戻し、前記排水タンクと前記調理庫とを循環する洗浄水によって前記調理庫内を洗浄する洗浄プログラムとを備えた調理庫の洗浄機能付きの加熱調理器であって、
前記排水タンクの第1の側壁上部には前記排水タンク内の過剰な水を排出する円形の溢出口が形成され、
前記排水タンクの第1の側壁の前記溢出口の周囲には、前記溢出口の下端より高い位置の上端を有し、上面が開口した状態で前記溢出口を隙間を介して囲うようにした嵩上げ部を設けたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記嵩上げ部の底部内面を前記溢出口の下端に正接させたことを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチームコンベクションオーブン等の熱風によって食材を加熱調理する加熱調理器に関し、特に、調理庫の洗浄機能付きの加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、熱風により食材を加熱調理する加熱調理器が開示されており、この加熱調理器は、ハウジング内に設けた調理庫と、調理庫内を加熱するヒータと、調理庫内の空気を対流させる対流ファンと、調理庫内に蒸気を供給する蒸気発生装置とを備えている。この加熱調理器で調理プログラムを実行したときには、ヒータと対流ファンとの作動により、調理庫内の空気は熱風となって対流するとともに、蒸気発生装置から調理庫内に蒸気が供給されることで、調理庫内の空気は蒸気を含んだ熱風となって対流し、調理庫内に収容した食材は蒸気を含んだ熱風によって加熱調理される。
【0003】
調理庫内で食材を加熱調理すると、食材に含まれる油分が対流する熱風とともに調理庫内を飛散し、油分が調理庫の周壁に付着することになる。この種の加熱調理器では調理庫内を常に清浄に管理する必要があり、調理庫を例えば使用した日毎に洗浄することが衛生的に好ましい。この加熱調理器は、調理庫の天井部に洗浄ノズルを備え、洗浄ノズルは、調理庫の天井部に固定される取付ヘッドと、取付ヘッドに回転可能に遊嵌されるスリーブと、スリーブから径方向に延びる噴射管とを備えている。この加熱調理器で調理庫内を洗浄するときに洗浄ノズルに洗浄水を供給すると、洗浄水は噴射管の先端の噴射口から噴射されるため、噴射管は噴射口から噴射される洗浄水によってスリーブとともに回転し、洗浄水は回転する噴射管から噴射されることで調理庫内の周壁の全体に噴射される。洗浄ノズルの噴射管から噴射された洗浄水は調理庫に設けられた排水口から第1の排水管を通って排水タンクに送られ、排水タンクに送られた洗浄水は第2の排水管を通って外側に排水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-155777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の加熱調理器では、調理庫内に飛散した油分が加熱調理の際の高温の熱風によって調理庫の周壁に焼き付くために、洗剤を含んだ洗浄水を調理庫内で繰り返し循環させるのが好ましい。洗剤を含んだ洗浄水を調理庫内で繰り返し循環させて洗浄するときには、調理庫内に設けた洗浄ノズルと調理庫の排水口に接続された排水タンクとを洗浄水供給管により接続し、洗浄水供給管にポンプを介装する。排水タンク内に供給した洗浄水をポンプによって調理庫との間で繰り返し循環させると、洗浄水には調理庫に投入した洗剤が溶けて含まれるようになり、調理庫内は洗剤を含んだ洗浄水によって洗浄されるようになる。
【0006】
洗浄水を排水タンクと調理庫を循環させるようにしたときには、排水タンクの側壁上部には誤って過剰に供給された洗浄水を溢出させて排水する溢出口を形成する必要がある。排水タンクの側壁上部に溢出口を形成したときには、溢出口には過剰な洗浄水を外側に排水させるための溢出管を接続する。溢出管に汎用性の高い断面形状が円筒形の管部材を用いるためには、溢出口を円形にする必要がある。また、調理庫内で蒸気を含んだ熱風によって加熱調理をするときに、調理庫内の圧力が供給された蒸気によって高くなりすぎないようにするために、溢出口を十分な開口面積となるように大きな内径としておく必要がある。
【0007】
また、洗浄水を洗浄水供給管を通して排水タンクと調理庫内とを循環させた状態で、排水タンク内の洗浄水を調理庫に送り出すポンプでエア噛みが生じないようにするために、給水時に排水タンク内に多くの洗浄水を貯えておく必要がある。上述したように、排水タンクには側壁上部に円形の溢出口を形成しておく必要があり、排水タンクの上部で溢出口の下端より上側には洗浄水を貯えることができず、排水タンクの上部に洗浄水を貯えることのできないデッドスペースができてしまう。上述したように、溢出口は調理庫内の圧力が高くなりすぎないようにする機能を有しているので、溢出口の内径を小さくすることもできなく、排水タンクの上部に洗浄水を貯えることのできないデッドスペースが大きくなり、排水タンクが大型化してハウジング内の機械室に収容できなくなるおそれがあった。本発明は、洗浄水を排水タンクと調理庫とを循環させるようにして調理庫内を洗浄する洗浄機能付きの加熱調理器において、排水タンクの側壁上部に過剰な洗浄水を溢れさせることで排水する溢出口を形成しても、排水タンク内に十分な洗浄水を貯えることができるようにして、排水タンクを必要以上に大型化させないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、食材を加熱調理するための調理庫と、調理庫内を加熱するヒータと、調理庫内の空気を対流させる対流ファンと、調理庫内に蒸気を供給する蒸気発生装置と、調理庫の底部に設けられた排水口と、排水口に排水管を介して接続された排水タンクと、排水タンクに洗浄水を供給する給水部と、調理庫の天井部に設けられて洗浄水を噴出する洗浄ノズルと、排水管と排水タンクを含み洗浄ノズルに洗浄水を送る洗浄水経路と、洗浄水経路に介装されて排水タンク内の洗浄水を洗浄ノズルに送出するポンプと、ヒータと蒸気発生装置の少なくとも一方と対流ファンとを作動させて調理庫内に収容した食材を加熱調理する調理プログラムと、給水部から供給された排水タンク内の洗浄水をポンプを作動させることによって洗浄ノズルから調理庫内に噴出させ、噴出させた洗浄水を排水口から再び排水タンクに戻し、排水タンクと調理庫とを循環する洗浄水によって調理庫内を洗浄する洗浄プログラムとを備えた調理庫の洗浄機能付きの加熱調理器であって、排水タンクの第1の側壁上部には排水タンク内の過剰な水を排出する円形の溢出口が形成され、排水タンクの第1の側壁の溢出口の周囲には、溢出口の下端より高い位置の上端を有し、上面が開口した状態で溢出口を隙間を介して囲うようにした嵩上げ部を設けたことを特徴とする加熱調理器を提供するものである。
【0009】
上記のように構成した加熱調理においては、排水タンクの第1の側壁上部には排水タンク内の過剰な水を排出する円形の溢出口が形成され、排水タンクの第1の側壁の溢出口の周囲には、溢出口の下端より高い位置の上端を有し、上面が開口した状態で溢出口を隙間を介して囲うようにした嵩上げ部を設けた。このようにしたことで、排水タンクの溢出口の下端より上側にも洗浄水を貯えることができ、溢出口を小さくすることなく排水タンク内の上部にも洗浄水を貯えることができるようになり、排水タンクを大型化させることなく十分な洗浄水を貯えることができるようになった。
【0010】
上記のように構成した加熱調理においては、嵩上げ部の底部内面を溢出口の下端に正接させるのが好ましい。このようにしたときには、嵩上げ部の底部内面は溢出口の下端と正接しているので、嵩上げ部の上端を超えて内部に流入した洗浄水は底部に残ることなく溢出口に流入するようになり、嵩上げ部の内部に洗浄水が残らないようになった
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の加熱調理器の一実施形態の正面図である。
図2図1の扉を開いた状態とした正面図である。
図3】前後方向の中央部における縦方向断面図である。
図4】A-A断面図である。
図5】仕切板と支持フレームとを取り外したときのA-A断面図である。
図6】ハウジングの左パネルを取り外して機械室が見えるようにした左側面図である。
図7】排水タンクと洗浄ノズルとの間の洗浄水経路の概略図である。
図8】B-B断面斜視図である。
図9】排水タンクの斜視図(a)と、蓋部と抑え板を取り外した排水タンクの斜視図(b)(c)である。
図10】排水タンクの平面図(a)と、C-C断面図(b)と、D-D断面図(c)と、E-E断面図(d)である。
図11】制御装置のブロック図である。
図12】第1洗浄プログラムの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の加熱調理器の一実施形態を添付図面を参照して説明する。本発明の加熱調理器は、スチームコンベクションオーブンと呼ばれるもので、蒸気を含んだ熱風を対流させて食材を加熱調理するものである。また、この加熱調理器は、調理庫の排水口に排水管を介して接続された排水タンクに洗浄水を貯えるようにし、洗浄水を排水タンクと調理庫とを循環させるようにして、調理庫内を洗浄する調理庫の洗浄機能付きの加熱調理器である。図1に示したように、加熱調理器10は、ハウジング11内の左側部に機械室12と、ハウジング11内の機械室12を除いた部分に食材を加熱調理するための調理庫20とを備えている。図2に示したように、調理庫20の前面部には食材を出し入れする開口部20aが設けられており、開口部20aにはこれを開閉する扉13が設けられている。
【0013】
図2及び図3に示したように、調理庫20は食材を収容して加熱調理するためのものであり、調理庫20の左側部を除く部分を食材を収容する食材収容室21とし、調理庫20の左側部を食材収容室21に送り出す熱風を生成する熱風生成室22としている。図3及び図4に示したように、調理庫20の左右方向の中央部より左側には食材収容室21と熱風生成室22を仕切る仕切板23が設けられている。仕切板23には多数の開口よりなる吸込口23aが設けられており、食材収容室21内の空気は吸込口23aを通って熱風生成室22に送られる。また、仕切板23は調理庫20の天井壁、底壁、前壁及び後壁との間に通風路23bが形成されるように調理庫20に取り付けられており、熱風生成室22の空気は通風路23bを通って食材収容室21に送られる。
【0014】
図2図4に示したように、調理庫20の食材収容室21にはホテルパンと呼ばれるトレイを上下に多段状に支持する左右一対の支持フレーム24が設けられている。各支持フレーム24は前後一対の支柱24aと、前後の支柱24aに固定されてトレイの左右の縁部を支持するレール24bとを備えている。
【0015】
図3及び図5に示したように、調理庫20の左側部にはヒータ25と対流ファン26が設けられている。ヒータ25は調理庫20を加熱するものであり、対流ファン26は調理庫20内の空気を対流させるものである。ヒータ25は調理庫20の左側壁に環状に巻回されている。また、環状に巻回されたヒータ25の内側には対流ファン26が配置されている。ヒータ25と対流ファン26を作動させると、食材収容室21の空気は吸込口23aを通って熱風生成室22に送られ、対流ファン26から遠心方向外向きに吹き出された空気は熱風生成室22内にてヒータ25によって加熱されて熱風となり、加熱された熱風は仕切板23と調理庫20の各壁との間の通風路23bを通って食材収容室21に送られる。図5に示したように、調理庫20の左側壁には温度センサ27が設けられており、温度センサ27は調理庫20内の温度を検出するものである。
【0016】
図6に示したように、ハウジング11の機械室12には調理庫20内に蒸気を供給する蒸気発生装置30が設けられている。蒸気発生装置30は、誘導加熱によって水を加熱して蒸気を発生させるものであり、調理庫20から排水を流すための排水タンク40の上側に立設している。蒸気発生装置30は、所定の水位の水を貯えた筒形の蒸気発生容器31と、蒸気発生容器31内の水を加熱する加熱体(図示省略)と、蒸気発生容器31の外周に巻回されて加熱体を発熱させる誘導加熱コイル32と、調理庫20の蒸気導入口20b(図5に示した)に接続されて蒸気発生容器31内で発生した蒸気を調理庫20に送出する蒸気送出筒33と、蒸気発生容器31の隣接する位置に配置された水位検知タンク34とを備えている。
【0017】
蒸気発生容器31の下端部は排水タンク40に接続されており、蒸気発生容器31の下部には排水弁(図示省略)が設けられている。蒸気発生容器31内の水は排水弁を開放させることによって排水タンク40に排水される。蒸気発生容器31の下部は水位検知タンク34の下部に接続されており、蒸気発生容器31内の水位は水位検知タンク34と同じ水位となっている。水位検知タンク34内にはフロートスイッチよりなる水位センサ(図示省略)が設けられており、水位センサは水位検知タンク34内の水位を検出することで、蒸気発生容器31内の水位を検知している。水位検知タンク34には給水源から導出された給水管36が接続されており、給水源の水は給水管36を通って水位検知タンク34を介して蒸気発生容器31に送られる。水位検知タンク34にはオーバーフロー管35が接続されており、オーバーフロー管35は排水タンク40に接続されている。給水管36から水位検知タンク34に過剰に供給された水はオーバーフロー管35を通って排水タンク40に排出される。
【0018】
図3及び図7に示したように、調理庫20の底部には排水口20cが形成されており、排水口20cには排水経路と排気経路と洗浄水経路が接続されている。この実施形態の排水経路は、排水口20cに接続された第1排水管14と、第1排水管14に接続された排水タンク40と、排水タンク40に接続された第2排水管15とを備えている。また、第2排水管15には排水弁16が介装されており、調理庫20内の水は排水弁16の開放によって第1排水管14、排水タンク40及び第2排水管15を通って外側に排出される。同様に、蒸気発生装置30から排水された水は排水弁16の開放によって排水タンク40と第2排水管15を通って外側に排出される。
【0019】
また、この実施形態の排気経路は、排水口20cに接続された第1排水管14と、第1排水管14に接続された排水タンク40と、排水タンク40に立設した排気筒17とを備えている。調理庫20内の空気は第1排水管14と排水タンク40と排気筒17とを通って外側に排出される。
【0020】
図3図4及び図7に示したように、調理庫20の天井部には洗浄ノズル28が設けられており、洗浄ノズル28は洗浄水経路によって調理庫20の排水口20cに接続されている。この実施形態の洗浄水経路は、排水経路及び排気経路の一部を利用するものであり、第1排水管14と、排水タンク40と、第2排水管の排水弁16より上流側と、第2排水管15の排水弁16より上流側と洗浄ノズル28とを接続する洗浄水供給管18とを備えている。洗浄水供給管18にはポンプ19が介装されており、排水タンク40内の洗浄水はポンプ19の作動によって第2排水管15と洗浄水供給管18を通って調理庫20内の洗浄ノズル28から噴射される。調理庫20内に噴射された洗浄水は排水口20cから第1排水管14を通って排水タンク40内に戻され、洗浄水は排水タンク40と調理庫20とを循環する。
【0021】
上述したように、排水タンク40は排水経路と排気経路だけでなく洗浄水経路の全ての経路の一部を構成するものであり、排水タンク40がこれらの全ての経路として機能するための構造について下記に詳述する。図9に示したように、排水タンク40は、水と空気を通過させるとともに洗浄水を貯えるように上面が開口した略矩形状のタンク部41と、タンク部41の上面開口を塞ぐ蓋部42とを備えている。
【0022】
図9及び図10に示したように、タンク部41の右側壁(第1の側壁)には前側から順に流入口41a、流出口41b及び溢出口41cが形成され、タンク部41の右側壁外面には流入口41a、流出口41b及び溢出口41cが形成された位置に管部材を接続するための円筒形状の接続筒部41a1,41b1,41c1が外側に突出して形成されている。流入口41aはタンク部41の右側壁上部に円形に形成されており、流入口41aの接続筒部41a1には第1排水管14が接続されている。
【0023】
流出口41bはタンク部41の最も低くなる位置の右側壁下部に円形に形成されており、流出口41bの接続筒部41b1には第2排水管15が接続されている。溢出口41cはタンク部41の右側壁上部に円形に形成されており、溢出口41cの接続筒部41c1には溢出管43が接続されている。溢出管43は第2排水管15の排水弁16より下流側に接続されている。第1及び第2排水管14,15と溢出管43とをまとめて配置するために、流入口41a、流出口41b及び溢出口41cはタンク部41の右側壁にまとめて配置されている。
【0024】
図8図10に示したように、タンク部41には流入口41aと流出口41bとの間にガイド41dが設けられている。ガイド41dはタンク部41の右側壁から左右方向の中央部より少し左側まで延びている。流入口41aから流入する水はガイド41dに沿ってタンク部41の左側部まで流れ、タンク部41の左側部に流れた水はガイド41dに沿って流出口41bの配置されている右側部に流れる。
【0025】
図8及び図10(c)に示したように、タンク部41の右側部には流出口41bの上側を覆う抑え板41eが設けられており、抑え板41eは洗浄水を循環させているときに流出口41bの周囲で渦の発生を低減させる機能を有している。抑え板41eの左端部とタンク部41の底壁との間に洗浄水等の水を通水可能な状態となるように、抑え板41eはタンク部41の底壁との間に隙間を介在させた状態で、流出口41bより上側の流出口41bの周囲を覆っている。
【0026】
溢出口41cは、排水タンク40内の過剰な洗浄水を排水する機能に加え、調理庫20内に蒸気を供給する加熱調理を実行したときに、調理庫20内の圧力の上昇を防ぐ機能を有している。溢出口41cは調理庫20内の圧力の上昇を防ぐ機能を有しているので大きな内径とする必要があり、この実施形態では流出口41bよりも大きな内径となっている。
【0027】
また、溢出口41cの内径を大きくしても、排水タンク40内に多くの洗浄水を貯えることができるようにするために、排水タンク40の右側壁の溢出口41cの周囲には嵩上げ部41fが設けられている。嵩上げ部41fは溢出口41cを塞ぐことなく溢出口41cの下端より上側を隙間を介して囲うようにしたものであり、排水タンク40の右側壁とともに上面が開口した容器形をしている。溢出口41cは、嵩上げ部41fにより隙間を介して囲われ、嵩上げ部41fによっても開口面積が減少されていないので、調理庫20内で蒸気を含んだ加熱調理をしても、調理庫20内は排気経路とともに排水タンク40の溢出口41cにより外側に開放され、調理庫20内の圧力が高くなりすぎないようにすることができる。
【0028】
嵩上げ部41fの上端は溢出口41cの下端よりも高い位置となっており、排水タンク40内は溢出口41cの下端より高い位置まで洗浄水を貯水可能となっている。排水タンク40内に溢出口41cの下端よりも高い位置まで洗浄水を貯水可能としたことで、排水タンク40を必要以上に大型化することなく洗浄に必要な洗浄水を貯えることができる。嵩上げ部41fの底部内面は円形の溢出口41cの下端に正接しており、嵩上げ部41f内に流入した水は嵩上げ部41f内に残ることなく溢出口41cから排出される。
【0029】
タンク部41の前壁には給水口41gが形成されており、給水口41gには水道等の給水源から水(洗浄水)を供給する給水管(給水部)44(図6及び図7に示した)が接続されている。給水管44から排水タンク40内に供給される水は、調理プログラムの実行時に排水タンク40内を冷却する冷却水として用いられるとともに、洗浄プログラムの洗浄水として用いられる。図6及び図7に示したように、給水管44には給水弁45と流量計46が介装されている。給水源の水は給水弁45を開放させることによって給水管44を通って排水タンク40内に供給される。流量計46は給水弁45を開放したときに給水管44を通過する水の流量を計測するものである。
【0030】
図9(a)及び図10に示したように、蓋部42はタンク部41の上面開口を覆うものであり、蓋部42には蒸気発生容器31の下端部と接続する第1接続部42aと、蒸気発生装置30のオーバーフロー管35に接続される第2接続部35aと、排気筒17のに接続される第3接続部17aとが設けられている。第1接続部42aは蓋部42を貫通するように取り付けられており、接続部42aにはナット等の締結部材によって蒸気発生容器31の下端部が接続されている。
【0031】
第2接続部35aは蓋部42を貫通するように取り付けられており、第2接続部35aには蒸気発生装置30のオーバーフロー管35が接続されている。第2接続部35aはオーバーフロー35の下部を構成し、第2接続部35aの下端は洗浄プログラムを実行して洗浄水が排水タンク40と調理庫20を循環しているときの水位よりも低い位置に配置されている。第3接続部17aは蓋部42を貫通するように取り付けられており、第3接続部17aには排気筒17が接続されている。第3接続部17aは排気筒17の下部を構成し、第3接続部17aの下端は洗浄プログラムを実行して洗浄水が排水タンク40と調理庫20を循環しているときの水位よりも低い位置に配置されている。
【0032】
図11に示したように、加熱調理器10は制御装置50を備えており、制御装置50は、排水弁16、ポンプ19、ヒータ25、対流ファン26、温度センサ27、蒸気発生装置30、給水弁45及び流量計46に接続されている。制御装置50はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM及びタイマ(いずれも図示省略)を備えている。
【0033】
制御装置50は、ROMに調理庫20内の食材を加熱調理する調理プログラムを備えている。調理プログラムは、ヒータ25と対流ファン26を作動させて対流する熱風により食材を加熱調理するホットエアーモード調理プログラムと、対流ファン26と蒸気発生装置30を作動させて対流する蒸気を含んだ熱風により食材を加熱調理するスチームモード調理プログラムと、ヒータ25と対流ファン26と蒸気発生装置30を作動させて対流する蒸気を含んだ高温の熱風により食材を加熱調理するコンビモード調理プログラムとの3種類の調理プログラムを備えている。なお、ROMには調理庫20内の設定温度、蒸気量及び調理時間が予め設定された調理プログラムが記憶されているとともに、調理プログラムの調理庫20の設定温度、蒸気量及び調理時間をユーザが設定可能としている。
【0034】
調理プログラムのホットエアーモード調理プログラムを実行したときには、ヒータ25と対流ファン26との作動により、調理庫20内の空気は熱風になって対流し、調理庫20内に収容した食材は対流する熱風によって加熱調理される。また、調理プログラムのコンビモード調理プログラムを実行したときには、ヒータ25と対流ファン26との作動により、調理庫20内の空気は熱風になって対流するとともに、蒸気発生装置30から調理庫20内に蒸気が供給されることで、調理庫20内を対流する熱風は蒸気を含むようになり、調理庫20内に収容した食材は蒸気を含んで対流する熱風によって加熱調理される。
【0035】
制御装置50は、ROMに調理庫20内を洗浄する洗浄プログラムを備えている。洗浄プログラムは調理庫20内を蒸気によって予め洗浄する蒸気予洗浄処理と、調理庫20内を高温の洗浄水によって洗浄する1回以上の洗浄処理とを実行する第1洗浄プログラムと、蒸気予洗浄処理を実行せずに調理庫20内を高温の洗浄水によって洗浄する1回以上の洗浄処理を実行する第2洗浄プログラムを備え、第1及び第2洗浄プログラムを選択可能としている。第1及び第2洗浄プログラムでは一例として4回の洗浄処理を実行するように制御されている。1回目の洗浄処理は排水口20cに設けた排水目皿20dに置いた洗剤を排水タンク40と調理庫20とを循環する洗浄水に溶かすようにして、調理庫20内を洗剤を含んだ洗浄水によって洗浄するものである。2回目以後の洗浄処理は洗剤を含まない洗浄水を排水タンク40と調理庫20とを循環させるようにして、1回目の洗剤を含んだ洗浄水を洗い流す濯ぎの洗浄をするものである。
【0036】
次に、洗浄プログラムの一例として第1洗浄プログラムについて説明する。調理庫20内を洗浄するときには、洗剤を排水口20cに設けた排水目皿20dに置いた後で洗浄プログラムを実行させる。図12に示したように、第1洗浄プログラムでは、制御装置50は、ステップ101にて蒸気予洗浄処理を実行する。蒸気予洗浄処理は蒸気発生装置30から供給される蒸気によって調理庫20内に付着した油分の汚れを浮かす処理である。この蒸気予洗浄処理では、制御装置50は温度センサ27の検出温度に基づいて、蒸気洗浄温度として95℃となるように蒸気発生装置30の作動を所定時間として30分間制御する。調理庫20に付着した油分の汚れは蒸気発生装置30から供給される蒸気によって浮くようになって後述する洗浄処理により洗い流されやすくなる。
【0037】
制御装置50は、ステップ101の予洗浄処理後にステップ102にて洗浄処理を実行する。ステップ102の洗浄処理はこの実施形態では4回繰り返し実行され、1回目の洗浄処理は洗剤を含んだ洗浄水によって調理庫20内を洗浄するものであり、2回目以後の洗浄処理は洗剤を含まない洗浄水によって調理庫20内に残る洗剤を含んだ洗浄水を洗い流す濯ぎの洗浄をするものである。
【0038】
洗浄処理では、制御装置50は、図10にてWL1で示した水位(水量)となるまで、流量計46により検出された流量に基づいて給水弁45を開放させると、排水タンク40には洗浄水が図10に示した水位(水量)で供給される。その後、制御装置50はポンプ19を作動させると、排水タンク40内の洗浄水は洗浄ノズル28に送られて調理庫20内に噴出される。洗浄ノズル28から調理庫20内に噴出された洗浄水は排水口20cから再び排水タンク40に戻り、洗浄水は排水タンク40と調理庫20を循環する。このとき、洗浄水の一部が洗浄水供給経路を通過しているとともに調理庫20内に飛散しているので、排水タンク40内の水位(水量)は図10にてWL2で示した水位(水量)となっている。
【0039】
排水口20cの排水目皿20dの上側に置いた洗剤は循環する洗浄水が排水口20cを通過するときに洗浄水に溶けるようになり、調理庫20内には洗浄ノズル28から洗剤を含んだ洗浄水が噴き出されるようになる。また、この洗浄処理では、制御装置50はポンプ19を作動させるとともにヒータ25と対流ファン26とを作動させており、洗浄ノズル28から調理庫20に噴き出された洗浄水はヒータ25により加熱されて高温の洗浄水となり、対流ファン26によって調理庫20内の隅々まで飛散する。洗剤を含んだ洗浄水は洗浄水経路を循環する過程及び調理庫20内に飛散する過程で泡立つようになる。
【0040】
洗浄処理では、制御装置50は温度センサ27の検出温度に基づいて、洗浄温度として90℃となるようにヒータ25の作動を制御している。ポンプ19とヒータ25と対流ファン26とを作動させてから所定時間として30分経過すると、制御装置50はポンプ19とヒータ25と対流ファン26を作動停止させるとともに、排水弁16を所定時間として5分間開放して、排水タンク40内の洗浄水を排水して洗浄処理を終了する。
【0041】
1回目の洗浄処理を終了すると、制御装置50はステップ103にて洗浄処理を4回実行したか否かを判定し、洗浄処理を4回実行するまでNOと判断してステップ102の洗浄処理を繰り返し実行する。上述したように、2回目以後の洗浄処理は洗剤を含まない洗浄水によって調理庫20内に残る洗剤を含んだ洗浄水を洗い流す濯ぎの洗浄をするものである。2回目以後の洗浄処理でも、制御装置50は給水弁45、ポンプ19、ヒータ25及び対流ファン26を1回目の洗浄処理と同様に制御する。調理庫20内は排水タンク40と調理庫20とを循環する濯ぎの洗浄水によって洗い流されるようになる。
【0042】
洗剤を含んだ洗浄水による洗浄処理と濯ぎの洗浄水による洗浄処理とを合わせて4回実行すると、制御装置50はステップ103にてYESと判断してステップ104の乾燥処理に進める。制御装置50はステップ104にて対流ファン26を作動させるとともに、調理庫20内の温度が200℃となるように、温度センサ27の検出温度に基づいてヒータ25の作動を制御する。調理庫20内に残る濯ぎの洗浄水はヒータ25によって加熱されながら対流ファン26によって対流する熱風により蒸発し、調理庫20は洗浄水が残らずに乾燥状態となる。制御装置50はヒータ25と対流ファン26とを作動させてから所定時間として30分経過すると、ヒータ25と対流ファン26の作動を停止させて乾燥処理を終了する。
【0043】
上記のように構成した加熱調理器10は、食材を加熱調理するための調理庫20と、調理庫20内を加熱するヒータ25と、調理庫20内の空気を対流させる対流ファン26と、調理庫20内に蒸気を供給する蒸気発生装置30と、調理庫20の底部に設けられた排水口20cと、排水口20cに第1排水管14を介して接続された排水タンク40と、排水タンク40に洗浄水を供給する給水管36と、調理庫20の天井部に設けられて洗浄水を噴出する洗浄ノズル28と、第1排水管14と排水タンク40を含み洗浄ノズル28に洗浄水を送る洗浄水経路と、洗浄水経路に介装されて排水タンク40内の洗浄水を洗浄ノズル28に送出するポンプ19とを備えている。
【0044】
この加熱調理器10は、ヒータ25と蒸気発生装置30の少なくとも一方と対流ファン26とを作動させて調理庫20内に収容した食材を加熱調理する調理プログラムと、給水管44から供給された排水タンク40内の洗浄水をポンプ19を作動させることによって洗浄ノズル28から調理庫20内に噴出させ、噴出させた洗浄水を排水口20cから再び排水タンク40に戻し、排水タンク40と調理庫20とを循環する洗浄水によって調理庫20内を洗浄する洗浄プログラムとを備え、調理庫20を洗浄する洗浄機能を備えている。
【0045】
この加熱調理器10においては、排水タンク40のタンク部41の右側壁(第1の側壁であり、他の側壁であってもよい)上部には排水タンク40内の過剰な水を排出する円形の溢出口41cが形成されている。排水タンク40の溢出口41cは洗浄プログラムを実行したときに給水管44から誤って供給された過剰な洗浄水を排出するだけでなく、蒸気発生装置30から供給される蒸気を含んだ熱風によって食材を加熱調理する調理プログラムを実行したときに調理庫20から排出される蒸気を含んだ空気を外側に排出し、調理庫20内の圧力が高くなりすぎるのを防ぐ機能を有している。
【0046】
溢出口41cは調理庫20内の圧力が高くなりすぎるのを防ぐ機能を有しているので、溢出口41cの内径を小さくすることができない。溢出口41cの内径を大きくしているために、排水タンク40の上部にて溢出口41cの下端より上側に洗浄水を貯えることができないデッドスペースができ、排水タンク40が大型化するおそれがあった。この加熱調理器10においては、タンク部41の右側壁の溢出口41cの周囲には、上面が開口した状態で溢出口41cを塞ぐことなく、溢出口41cを隙間を介して囲うようにした嵩上げ部41fが設けられており、嵩上げ部41fの上端は溢出口41cの下端よりも高い位置に配置されている。これによって、溢出口41cの内径を小さくすることなく、排水タンク40の上部にて溢出口41cの下端より上側にも洗浄水を貯えることができ、排水タンク40内に十分な洗浄水を貯えることができるようになり、排水タンク40が大型化するの防ぐことができた。
【0047】
また、嵩上げ部41fの底部内面は溢出口41cの下端に正接されている。嵩上げ部41fの上端を超えて内部に流入した洗浄水は底部に残ることなく溢出口41cに流入するようになり、嵩上げ部41fの内部に洗浄水が残らないようになった。
【符号の説明】
【0048】
10…加熱調理器、14…排水管(第1排水管)、19…ポンプ、20…調理庫、25…ヒータ、26…対流ファン、28…洗浄ノズル、30…蒸気発生装置、36…給水部(給水管)、40…排水タンク、41c…溢出口、41f…嵩上げ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12