(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 41/12 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
A01D41/12 R
(21)【出願番号】P 2019147857
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-004743(JP,A)
【文献】特開2005-282501(JP,A)
【文献】特開2015-019596(JP,A)
【文献】特開2015-065888(JP,A)
【文献】特開2018-153111(JP,A)
【文献】特開2017-216886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置に支持された機体フレームの前方一側に運転席を配置し、該運転席にエンジン及びラジエータを収納したエンジンルームを備えたコンバインにおいて、
前記エンジンルームの機体横外側に配置された機体側フレームに枢支軸により前記ラジエータを揺動可能に支持し、該ラジエータを前記エンジンに連結する2本のラジエータホースを前記枢支軸に近い側に配置
し、
前記ラジエータを、カバー体を開閉自在に支持するドア枠に取付けて、該ドア枠と前記ラジエータとをサブアッシとし、該サブアッシである前記ドア枠とラジエータとを一体に前記機体側フレームに揺動可能とした、
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記枢支軸は、前記ドア枠を前記機体側フレームに取付ける多数のボルトの内の一部のボルトである、
請求項
1記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自脱型や汎用型のコンバインに係り、詳しくは運転席におけるフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、運転シートの下方にエンジン及びその関連部品が配置され、運転シートの外側サイドの防塵網を通して冷却ファンに吸込まれた空気が、ラジエータ、オイルクーラを冷却し、更にエンジン自体を冷却してエンジンルームから排出される。
【0003】
従来、エンジンルームの機体横外側に、ラジエータ用の防塵カバーを揺動開閉可能に支持したコンバインが提案されている(特許文献1)。該コンバインは、防塵カバーを揺動させるだけでラジエータの機体横外側を開放することができ、容易にラジエータを清掃することができる。また、上記防塵カバーを支持する横外側構造体を取外し可能とし、防塵カバーと共に該横外側構造体を取外して、エンジンルーム内を開放することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記コンバインは、機体フレームに固定して設けられたラジエータ支持体にラジエータ及びオイルクーラが取付けられ、該ラジエータ支持体の横外側に、エンジンボンネットを構成する上記横外側構造体が機体側フレームに固定して配置されている。
【0006】
従って、ドア枠である横外側構造体を取外した状態で、ラジエータホースを外してラジエータを取外さないと、冷却ファンの取外し、ファンベルトの交換をすることができず、整備性が面倒であった。
【0007】
そこで、本発明は、ラジエータを枢支軸で揺動して、ラジエータの裏側に手の入る空間を作り、上述した課題を解決したコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行装置(2)に支持された機体フレーム(3)の前方一側に運転席(6)を配置し、該運転席にエンジン(20)及びラジエータ(16)を収納したエンジンルーム(11)を備えたコンバイン(1)において、
前記エンジンルーム(11)の機体横外側に配置された機体側フレーム(25,26a)に枢支軸(B1)により前記ラジエータ(16)を揺動可能に支持し、該ラジエータを前記エンジン(20)に連結する2本のラジエータホース(16a)を前記枢支軸(B1)に近い側に配置し、
前記ラジエータ(16)を、カバー体(15)を開閉自在に支持するドア枠(13)に取付けて、該ドア枠(13)と前記ラジエータ(16)とをサブアッシとし、該サブアッシである前記ドア枠(13)とラジエータ(16)とを一体に前記機体側フレーム(25,26a)に揺動可能とした、
ことを特徴とするコンバインにある。
【0010】
前記枢支軸(B1)は、前記ドア枠(13)を前記機体側フレーム(25,26a)に取付ける多数のボルト(B)の内の一部のボルト(B1)である。
【0011】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る本発明によると、ラジエータを機体側フレームに対して揺動して、該ラジエータの機体内方の部品、例えばファンベルトの交換等の整備を行うことができる。この際、2本のラジエータホースがラジエータの揺動を規制するが、該ラジエータホースは、枢動軸の近い側に配置されるので、上記揺動の規制を緩和して、ファンベルトの交換等のために手を入れるスペースを確保することができる。
【0013】
また、ラジエータをドア枠に取付けて、サブアッシ化したラジエータ及びドア枠を一体に揺動するので、構造が簡単化すると共に、ラジエータの所定量の揺動を容易かつ確実に行うことができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、ドア枠を機体側フレームに固定するボルトの内の一部のボルトを枢支軸としたので、ラジエータの揺動及び着脱を兼用して、部品の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るコンバインの全体を示す斜視図。
【
図4】運転席フレームを外したエンジン部分を示す斜視図。
【
図9】(a)はフレームを示す斜視図、(b)はフレームの断面図。
【
図12】(a)はドア枠の下部分を示す斜視図、(b)はその分解斜視図、(c)はその一部拡大斜視図、(d)はその断面図。
【
図13】(a)はラジエータを示す平面図、(b)はその回動した状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に沿って本発明の実施の形態について説明する。コンバイン1は、
図1に示すように、クローラ走行装置2に支持された機体フレーム3を有し、該機体フレーム3上には脱穀装置5、運転席6及びグレンタンク7が配置され、その前方に刈取り部9が昇降自在に支持される。運転席6は、
図2及び
図3に示すように、機体フレーム3の左前側に配置され、運転席フレームユニット10を有している。該フレームユニット10は、プレートで囲われ、その内部は、エンジンルーム11となっており、かつ上部に運転シート12(
図1参照)が取付けられる。
【0017】
上記フレームユニット10の機体横外側である右側にはドア枠13が固定されており、該ドア枠13にはカバー体(ドア)15がヒンジにより開放自在に支持されている。上記ドア枠13にはラジエータ16及びオイルクーラ17等が取付けられ、カバー体15には防塵網19が張られている。上記エンジンルーム11内には機体フレーム3に防振ゴムを介してエンジン20が載置されており、該エンジン20の機体横外側には冷却ファン22が配置されている。
【0018】
前記機体フレーム3の前方右側には運転席6の足踏みとなるステップフレーム23が上方に突出するように一体に固定されており、該ステップフレーム23は、エンジンルーム11の前方において機体フレーム3に対して一段高い位置に配置される。フレームユニット10の前方フレーム25が上記ステップフレーム23に立設されている。上記エンジンルーム11の後方には、
図3ないし
図8に示すように、後方フレーム26が配置されており、該後方フレーム26は、機体幅方向に所定間隔あけて機体フレーム3に下端を固定されて立設された2本の縦フレーム26a,26bを有しており、これら縦フレームの上端部及び中間部に横フレーム26c,26dが横切るように連結されている。更に、中間横フレーム26dと上記ステップフレーム23との間に倒れ防止フレーム30が連結されている。従って、該倒れ防止フレーム30は、その前端部が横フレームを介して後方フレーム26に連結されており、その前端部がステップフレーム23を介して機体フレーム3に連結されている。
【0019】
該倒れ防止フレーム30は、中間横フレーム26dから略水平に延びる水平部30aと該水平部30aの先端とステップフレーム23との間を斜めに延びる傾斜部30bとを有し、平面視(
図8参照)において、エンジン20とラジエータ16との間を通るように機体の前後方向に配置されている。
【0020】
前記エンジン20の機体幅方向に延びるクランクシャフトの機体内側には出力部材であるプーリ31が配置され、機体外側には冷却ファン22等の補機駆動用のプーリ32が配置されている。該プーリ32と上記冷却ファン22との間にはベルトが巻掛けられ、該ベルトの伝動経路を変更することにより冷却ファン22の回転方向が正逆に切換えられる。上記倒れ防止フレーム30にはエアクリーナ37と上記冷却ファン22を正逆転に切換えるファン正逆転切換え用モータ(切換え装置)39が取付けられている。なお、
図8において、35は、エンジン20のヘッドカバーであり、36は、インジェクタである。
図5において、22aは、ファンシュラウドである。
【0021】
上記倒れ防止フレーム30の水平部30aは、
図9に示すように、水平状に配置されるプレート部材40とコ字形状の部材41とからなり、該プレート部材40とコ字形状部材41とはリブ42等により一体に固定されている。倒れ防止フレーム30の傾斜部30bは、角パイプからなり、上記水平部30aと傾斜部30bとは一体に結合されている。エアクリーナ37は、水平部30aのコ字形状部材41にボルト43により一体に固定されている。ファン正逆転切換え用モータ39は、取付けプレート45に取付けられており、該取付けプレート45が上記水平部30aのプレート部材40にボルト43により一体に取付けられている。なお、符号46は、前記ドア枠13に固定された連結ブラケット47(
図3参照)を連結するための固定用ブラケットである。
【0022】
これにより、倒れ防止フレーム30は、横フレーム26dと一段高いステップフレーム23との間にあって、機体フレーム3に連結するものと比して長さが短くて足り、強度を確保し得る。また、倒れ防止フレーム30は、エンジン20とラジエータ16との間を通るように配置され、伝動部材が密集している出力部材31の取付け及び整備の邪魔になることはなく、かつエンジン20の整備の邪魔になることもない。また、エアクリーナ37及びファン正逆転切換え用モータ39を適宜な位置にて安定して取付けることができる。
【0023】
前記ドア枠13は、
図3,
図10及び
図11に示すように、下部材13aと上部材13bとからなり、下部材13aは、プレート部材を打抜いて形成され、開口50を有すると共に該プレート部材の周囲を折曲した枠体からなり、該下部材13aの上端部は、仕切り部52からなり、上部材13bは、該仕切り部52の上方を囲むように構成され、開口53を形成すると共に、外縁部分は、上述した下部分と同様に周囲を折曲した枠体からなる。即ち、上記ドア枠13は、カバー体(ドア)15と略同形状からなり、該カバー体15が閉じた状態で前記枠体51がカバー体の枠部15aに当接する当接部となる。該ドア枠13は、前方フレーム25及び後方フレーム26の機体外側縦フレーム26a等の機体側フレームに取外し自在に取付けられている。
【0024】
上記ドア枠13の機体後方側には2個のヒンジ55が設けられ、該ヒンジ55にヒンジピン54が差込まれてカバー体15が揺動自在に支持されると共に、該カバー体15を上方に持上げることによりドア枠13から取外すことができる。該カバー体15を開放又は取外した状態で、上記ドア枠13の上部開口53は、エアクリーナ37整備用の開口となり、また上部材13bを分割、取外すことにより、ラジエータ16への給水が容易となると共に組立性が向上する。また、カバー体15の上部分は目塞ぎ板56からなり、上記ドア枠13の開口53を塞ぐ。
【0025】
上記ドア枠13の下開口50にはラジエータ16及びオイルクーラ17等の冷却装置が取付けられる。即ち、上記下開口50は、中央部を横に延びる連結プレート59により連結され、また下枠部分に連結プレート60が固定され、これら両連結プレート59,60にドア枠13の表側からオイルクーラ17が取付けられる。また、上記下連結プレート60にオイルクーラ17の間において燃料クーラ61が取付けられる。上記ドア枠下部材にラジエータ支持プレート63が一体に取付けられ、ラジエータ16は、その下端突部64をドア枠の裏側から支持プレート63のグロメットに差込んで、ボルト68により取付けられる。該ラジエータ16の裏面にはファンシュラウド22aが一体に取付けられる。なお、図中16a,16aは、ラジエータホースである。
【0026】
従って、ドア枠13は、その下部材13aがラジエータ取付け部材からなり、該ラジエータ取付け部材を兼用するサブアッシとなり、該サブアッシとなるドア枠13は、ラジエータ16等を取付けた状態で一体に前方フレーム25及び後方フレームの外側縦フレーム26a等からなる機体側フレームに着脱可能となる。ドア枠13は、エンジンルーム11とその上方のエアクリーナ37部分に亘る構成からなり、該ドア枠13を取外した状態では、上記エンジンルーム11及びエアクリーナ37部分を開放した状態となる。
【0027】
ドア枠13の下部には、
図12に示すように、下部カバー65が取付けられている。即ち、ドア枠13の下部は、折返した折曲部分がなく、該折曲部分が上記下部カバー65で構成される。下部カバー65は、折返しの折曲部65aと平坦部65bとを有し、該折曲部65aの両端が、ドア枠13の折曲枠部51下端の突出部51aに外(表)側への移動を阻止するように係止され、かつ上記平坦部65bがドア枠13の下部面にボルト及びナットにより固定されて、折曲部65aが表側になるように固定される。該下部カバー65をドア枠13から取外した状態で、ドア枠13の下部面に溜った屑、水等を掃除し得る。
【0028】
カバー体(ドア)15は、
図2及び
図10に示すように、2個のヒンジピン54,54及び2個のノブナット67,67によりドア枠13に開閉自在に固定されている。ドア枠13は、
図3及び
図4に示すように、多数のボルト及びナット等の固定具B並びに連結ブラケット47により機体側フレームに固定される。該ドア枠13を固定する固定具Bの内、下部を固定する固定部である2本のボルトB1,B2は、縦向き(上下方向)に配置され、この内の機体前側のボルトB1を緩めて残した状態で、他のボルトB2,B・・・を取外す。これにより、
図13(a)に示すように、ドア枠13が機体フレームに固定されている状態から、
図13(b)に示すように、上記残された前下ボルトB1を枢支点として、ドア枠13は、揺動し得る状態となる。ドア枠13にはラジエータ16等が一体に取付けられており、ラジエータホース16a,16aが固くて揺動量は規制されるが、ラジエータホース16a,16aのラジエータ16への取付け部分は、上記枢支軸となる前下ボルトB1に近い側にあり、上記揺動の規制を弛め、ドア枠13の所定揺動量を稼げる。
【0029】
該ドア枠13を揺動した状態では、該ドア枠と一体のファンシュラウド22aと、エンジン20と一体の冷却ファン22との間に手を入れることが可能なスペースCがあき、ここから手を入れて冷却ファン22の固定ボルトを外すことが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1 コンバイン
2 走行装置
3 機体フレーム
6 運転席
11 エンジンルーム
13 ドア枠
15 カバー体(ドア)
16 ラジエータ
16a ラジエータホース
20 エンジン
25,26a 機体側フレーム(前方フレーム、後方フレームの縦フレーム)
B ボルト
B1 枢支軸(ボルト)