(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ガスタービンの多段式軸流圧縮機のロータを修復する方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
F02C7/00 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019152887
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】102018000008387
(32)【優先日】2018-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519307791
【氏名又は名称】エトスエナジー・イタリア・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ETHOSENERGY ITALIA S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・フォルノ
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・バルサニア
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-237655(JP,A)
【文献】特開平09-088504(JP,A)
【文献】特開2003-072417(JP,A)
【文献】米国特許第5746579(US,A)
【文献】特開昭59-046301(JP,A)
【文献】特開昭63-150401(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2268100(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/00
F02C 3/06
F02C 7/00
F04D 29/054
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の数の最後のブレードディスク(14
N-2,14
N-1,14
N)を新しいブレードディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)と交換することによって、ガスタービンの多段式軸流圧縮機のロータ(10)を修復する方法であって、前記最後のブレードディスク(14
N-2,14
N-1,14
N)の各々は、中央ボア(20)を有するハブ(16)を備え、回転軸(x)の周りに回転可能である前記ロータ(10)のシャフト(12)上に締まり嵌めによって設置され、
a)交換対象となる前記ブレードディスク(14
N-2,14
N-1,14
N)が設置される前記シャフト(12)の一部を前記シャフト(12)の残りの部分(12’)から分離するように、前記シャフト(12)の回転軸(x)に垂直な断面平面(P)で前記シャフト(12)を切断する工程と、
b)交換対象となる各ブレードディスク(14
N-2,14
N-1,14
N)の代わりに、中実断面を備えるそれぞれのハブ(16”)を有するそれぞれの新しいブレードディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)を提供する工程と、
c)中実断面を備える前記シャフト(12)の新しい端部分(12”)を提供する工程と、
d)前記新しいブレードディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)を前記シャフトの前記残りの部分(12’)と前記シャフトの前記新しい端部分(12”)との間に締め付け、アンカーボルト(28,30)によって前記新しいブレードディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)を前記シャフトの前記残りの部分(12’)に固定する工程と、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記新しいブレードディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)は、交換対象となる前記ブレードディスク(14
N-2,14
N-1,14
N)の材料以外の材料で作製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の貫通孔(24”)が、前記新しいブレードディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)の各々の前記ハブ(16”)に設けられ、前記新しいブレードディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)を前記シャフトの前記残りの部分(12’)に固定するために工程d)で用いられる前記アンカーボルト(28,30)の各々は、各新しいブレードディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)のために、そのディスク(14
N-2”,14
N-1”,14
N”)の前記ハブ(16”)のそれぞれの貫通孔(24”)を通過するねじ(28)を備える、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程d)において、前記アンカーボルト(28,30)の前記ねじ(28)の各々は、前記シャフトの前記残りの部分(12’)の端面(12a’)に設けられるそれぞれの止まりねじ穴(32)の中へねじ留めすることによって、前記シャフトの前記残りの部分(12’)に固定される、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ガスタービンの多段式軸流圧縮機のロータを修復する方法に関する。
【0002】
より特定的には、本発明は、ガスタービンの多段式軸流圧縮機のロータの最終段の損傷したブレードディスクを交換する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
よく知られているように、ガスタービンの多段式軸流圧縮機のロータは、複数のブレードディスクが設置されるシャフトを備えており、ブレードディスクの各々は、圧縮機のそれぞれの段を形成する。ブレードディスクは、たとえば、締まり嵌めによって結合されるように、シャフト上に熱収縮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、ブレードディスクとシャフトとの間の確実な結合を確保するためには、特に動作温度が非常に高い値に到達し得る圧縮機の最終段において、ブレードディスクとシャフトとの間の高い干渉が提供されなければならない。ロータの耐用年数の終わりの前に、圧縮機自体の耐用年数を延ばすために、高い動作温度によって劣化および破損が最も起こりやすいディスクである、ロータの最後のブレードディスク(たとえば、18ディスク圧縮機ロータにおける1~7のディスク)を交換することが一般的に行われている。
【0005】
しかしながら、ブレードディスクとシャフトとの間の高い干渉は、その内径を増加し、ひいてはシャフトとの干渉をゼロにまで低減するようにディスクを単純に加熱することによっては、ディスクがシャフトから取り外されることを可能にしない。これは、ディスクを加熱するために要求される熱が、ディスクだけでなくシャフト自体を取り返しの付かないほど損傷して、もはや使用できなくし得るためである。したがって、最後のブレードディスクを交換するためには、言うまでもなくシャフトをそれ以上使用できない状態にせずに、最後のブレードディスクにおけるシャフトの材料を取り除くことが必要である。したがって、現在は、すべてのブレードディスクがシャフトから取り外すことを可能にするようにシャフトの材料を取り除き、その後新しいシャフトを構築し、最終的にはまだ使用できる古いブレードディスクと損傷したものに代わる新しいブレードディスクとを新しいシャフト上に取り付けることによって、ガスタービンの圧縮機のロータは修復される。このプロセスは、明らかに非常に面倒である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は、上述された先行技術よりも面倒でない、最終段の損傷したブレードディスクを新しいディスクと交換することによる、上記に示したタイプのガスタービンの圧縮機のロータを修復する方法を提供することである。
【0007】
このおよび他の目的は、添付の独立請求項1に記載の工程を含む方法によって、本発明にしたがって十分に達成される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は従属請求項において特定され、その内容は以下の説明の不可欠な部分を形成するものとして理解されるべきである。
【0009】
要するに、本発明に係るガスタービンの圧縮機のロータを修復する方法は、順番に、
交換対象となるディスクが取り付けられるシャフトの一部をまだ使用できるディスクが取り付けられるシャフトの一部から分離するように、シャフトの回転軸に垂直な平面断面で、ロータシャフトを切断する工程と、
交換対象となる各ディスクの代わりに、中実断面を備えるハブを有する新しいディスクを提供する工程と、
中実断面を備えるシャフトの新しい端部分を提供する工程と、
シャフトの残りの部分とシャフトの新しい端部分との間に新しいディスクを締め付け、アンカーボルトによって新しいディスクをシャフトの残りの部分に固定する工程と、を含む。
【0010】
この方法によって、圧縮機のロータを修復する時間と費用が低減される。これは、上述された現在用いられる方法での場合のように、古いシャフトを完全に取り除いて新しいものを構築する必要がもはやなくなり、古いディスクを新しいシャフト上に設置する必要がもはやなくなるためである。
【0011】
加えて、熱収縮によって新しいディスクがシャフト上に設置されることはないため、高い動作温度によるシャフトとの干渉の損失を回避するために、ステンレス鋼などの耐クリープ性材料の上記ディスクを作製する必要がなくなる。ガスタービンの圧縮機に一般的に用いられるステンレス鋼ディスクは、非常に高価であり水素脆化を受けやすいという不都合を有する。本発明の方法によれば、新しいディスクは、たとえば、ステンレス鋼よりも高価でなく水素脆化を受けにくい、マイクロ合金鋼で作製され得る。
【0012】
本発明のさらなる利点は、圧縮機のロータの最後のディスクの可能なさらなる交換が特に容易であるということである。これは、上記ディスクを取り外すために、最後のディスクの交換の前の介在の間に再生されるシャフトの古い部分に固定するアンカーボルトを取り外すのに十分であるためである。
【0013】
本発明のさらなる構成および利点は、添付の図面を参照して、単に非限定的な例として与えられる、以下の詳細な説明からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の方法で修復される前のガスタービンの圧縮機のロータの軸方向断面図である。
【
図2】
図1のロータの(特に最後の7段の)端部分の拡大スケールにおける軸方向断面図である。
【
図3】最後の3つのブレードディスクが本発明の方法を用いて交換された後の、
図1のロータの端部分の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明の方法が適用可能である、ガスタービンのための多段式軸流圧縮機のロータが、概して10で示される。ロータ10は、基本的に、シャフト12(回転軸がxで示される)と、シャフト12上に一列に交互に設置される複数のブレードディスク14(以下、単に「ディスク」とよばれる)とを備える。ディスク14の各々は、ロータに沿った位置にしたがって、1からNまでの指数iで示される。第1ディスクは14
1で示される一方、最後のディスクは14
Nで示される。本願に示される例では、ロータ10は、18段の圧縮機の一部であり、したがってディスク14の数Nは18に等しい。しかし、言うまでもなく、本発明は、任意の数のディスクを有する多段式軸流圧縮機のロータの修復に適用可能である。
【0016】
ディスク14の各々は、よく知られるように、ハブ16と、ハブ16の周りに設けられるクラウンリング18と、クラウンリング18から径方向に延在する複数のブレード20(各ディスクについてその1つのみが
図1に示される)とを備える。ハブ16およびクラウンリング18は典型的には一片で作製される一方、ブレード20はクラウンリング18とは別個の片として作製され、たとえば蟻継ぎ接続によって、そこに堅固に接続される。しかしながら、本願に示されるディスクの特定の構造は、本発明の目的のために必須ではない。ハブ16は、シャフト12の直径Dに対応する直径を有する中央ボア22を有する。各ディスク14は、シャフトにしっかりと固定されるように、たとえば熱収縮プロセスによって、シャフト12上に締まり嵌めで設置される。第1ディスクよりも動作の間に高い温度を受けやすい最後のディスク、たとえばディスク14
N-6~14
Nは、典型的には、第1ディスクが設置されるよりも大きな干渉でシャフト12上に設置されるが、これは本発明のために必須ではない。
【0017】
ここで、最後の3つのディスク(しかしながら、本発明の方法はロータの任意の数の最後のディスクを交換するために用いられ得る)、すなわち順に14
N-2,14
N-1および14
Nで示されるディスクを交換するために、ロータ10が修復されるが必要があることを想定する。ここで、
図2および
図3を参照して、このようなディスクが本発明の方法を用いてどのように交換されるかが説明される。
【0018】
まず、
図2に示されるように、交換対象となるディスク14
N-2,14
N-1および14
Nが設置されるシャフトの一部を分離するために、シャフト12は回転軸xに垂直な断面平面Pで切断される(
図2においては、上記ディスクのハブ16およびクラウンリング18のみが示される)。ディスク14
1~14
N-3が設置されるロータの残りの部分(以下、再生されたロータ部分とよばれる)、すなわちシャフトの残りの部分(以下、再生されたシャフト部分とよばれる)は、新しいロータを設けるために再利用される。断面平面Pにおいてシャフトを切断する結果取り除かれたロータの一部は、以下のように、再構築され、再生されたロータ部分に取り付けられる。
【0019】
図3は、本発明の修復方法の終わりに得られるロータを示す。ロータは、10’で示される再生されたロータ部分と、10”で示されるロータの新しい部分とを備える。再生されたロータ部分10’は、上述されたように、12’で示される再生されたシャフト部分と、再生されたシャフト部分12’に取り付けられるディスク14
1~14
N-3とを備える。
【0020】
新しいロータ部分10”は、新しいディスク14N-2”,14N-1”および14N”(この場合、3つのディスクであるが、一般に新しいディスクの数は断面平面Pでシャフト12を切断することによって取り除かれた古いディスクの数に等しい)と、新しい端部シャフト部分12”とを備える。
【0021】
新しいディスク14
N-2”,14
N-1”および14
N”の各々は、ハブ16”と、クラウンリング18”と、クラウンリング18”に取り付けられる複数のブレード(ここでは図示せず)とを備える。新しいディスク14
N-2”,14
N-1”および14
N”の各々のクラウンリング18”は、対応する古いディスク14
N-2,14
N-1および14
Nの形状に実質的に一致する形状を有するが、新しいディスク14
N-2”,14
N-1”および14
N”の各々のハブ16”は、ここで、中実断面を有する、すなわちシャフト12の直径Dに対応する直径を有する中実ボアを有しない。シャフト12の直径Dに対応する直径を有する中央ボアの代わりに、新しいディスク14
N-2”,14
N-1”および14
N”の各々のハブ16”には、複数の貫通孔24”(
図3には1つのみが示される)が設けられ、これは、シャフト12の直径Dよりも小さい直径D”を有し、回転軸xに平行に延在し、好ましくは回転軸x上の中心およびシャフト12の直径Dよりも小さいが孔24”の直径D”よりも大きい直径D’を有して外周に沿って配置される。新しい端部シャフト部分12”は、また、貫通孔26”(
図3には1つのみが示される)を備える中実断面を有し、その各々は、新しいディスク14
N-2”,14
N-1”および14
N”のそれぞれの貫通孔24”と位置合わせされる。
【0022】
新しいディスク14
N-2”,14
N-1”および14
N”は、一列に配置され、各々がねじ28とナット30とを備えるアンカーボルト(
図3には1つのみが示される)によって、再生されたシャフト部分12’と新しい端部シャフト部分12”との間に締め付けられる。各ねじ28は、新しい端部シャフト部分12”のそれぞれの貫通孔26”、および新しいディスク14
N-2”,14
N-1”および14
N”の各一のそれぞれの貫通孔24”に挿入され、再生されたシャフト部分12’のそれぞれの止まりねじ穴32の中へねじ留めされる。止まりねじ穴32は、断面平面Pでのシャフト12の切断によって得られる再生されたシャフト部分12’の端面(12a’で示される)に設けられる。各ナット30は、再生されたシャフト部分12’の反対側の新しい端部シャフト部分12”から軸方向に突出するそれぞれのねじ28の端部上へねじ留めされる。
【0023】
上述されたように、古いディスク14N-2,14N-1および14Nとは異なり、新しいディスク14N-2”,14N-1”および14N”は締まり嵌めによって設置されないため、高い耐クリープ性を有する材料(たとえばステンレス鋼)で作製される必要はない。それらは、古いディスク14N-2,14N-1および14N材料以外の材料で(特に、マイクロ合金鋼などのあまり高価でない材料で)作製され得る。
【0024】
さらに、一定時間後に、ロータ10の耐用寿命をさらに延ばすためにディスク14N-2”,14N-1”および14N”を対応する新しいディスクと交換する必要がある場合、この動作は、アンカーボルトを取り除いた後にディスク14N-2”,14N-1”および14N”を取り外し、前のものと同一の新しいディスクを設置してロータのすべての他の部品を再生するのに十分であるように、さらにより容易に行われ得る。
【0025】
上記に提供された説明から明らかであるように、本発明の方法は、周知の方法に対して、費用の観点および時間の観点の両方において、大幅な節約を可能にする。
【0026】
当然ながら、本発明の原理は不変のままで、本発明の方法を実行するためのモードは、添付の請求項において規定されるような本発明の範囲から逸脱することなく、単位非限定的な例として本願に説明され示されるものから広く異なり得る。