(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】消毒保管庫
(51)【国際特許分類】
A61L 2/06 20060101AFI20230413BHJP
【FI】
A61L2/06
(21)【出願番号】P 2019156109
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】黒木 亜美
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑哉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰光
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-252336(JP,A)
【文献】特開平07-174458(JP,A)
【文献】特開2003-237564(JP,A)
【文献】特表2018-512936(JP,A)
【文献】特開平11-262516(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0046672(US,A1)
【文献】特開2000-283644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00- 2/28
A47L 15/00-21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の搬送に用いる物品カート(51,52)を筐体(13)の前面開口(15)を介して庫内に搬入可能で、当該庫内に収容された物品カート(51,52)上の物品を熱風により消毒する消毒保管庫において、
庫内底面(25)を形成するベース(23)と、該ベース(23)を補強する複数の補強部材(27)とを備え、
前記複数の補強部材(27)は、前記物品カート(51,52)の搬入方向である前後方向に延在すると共に、左右方向に並ぶように前記ベース(23)の下面側に配設され、
前記ベース(23)における左右方向の両端側を補強する補強部材(27)が、隣接する補強部材(27)と密着する状態で配設されていると共に、前記ベース(23)における左右方向の中央側を補強する補強部材(27)が、隣接する補強部材(27)と隙間(s3)をあけて近接するよう配設されている
ことを特徴とする消毒保管庫。
【請求項2】
前記複数の補強部材(27)は、当該消毒保管庫が設置される床面(FL)との接触面を有する接地板部(27a)と、該接地板部(27a)の両側縁から起立する縦板部(27b)と、該縦板部(27b)の上縁から左右方向の外側に向けて水平に延出する支持板部(27c)とを夫々備え、該支持板部(27c)の上面で前記ベース(23)を支持するように構成され、
前記中央側を補強する補強部材(27)は、前記接地板部(27a)の左右寸法(s1)より小さい隙間(s3)をあけて前記隣接する補強部材(27)と近接するよう配設されている請求項1記載の消毒保管庫。
【請求項3】
前記前面開口(15)を開閉する扉体(17)の上端面(17a)から上方に突出するラッチ(29)を備え、
前記筐体(13)において前記ラッチ(29)を掛止する高さ位置を調節可能に構成されている請求項1または2に記載の消毒保管庫。
【請求項4】
前記前面開口(15)を開閉する扉体(17)の上端面(17a)に設けられた被検出体(37)と、前記筐体(13)における前記前面開口(15)の開口上端面(15a)に設けられて前記被検出体(37)を検出するスイッチ(35)とを備え、
前記扉体(17)において前記被検出体(37)の高さ位置を調節可能に構成されている請求項1~3の何れか一項に記載の消毒保管庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品カートを収容した庫内に熱風を循環させて物品カート上の物品を消毒する消毒保管庫に関する。
【背景技術】
【0002】
庫内に熱風を循環させて洗浄後の食器等を消毒する消毒保管庫が広く使用されている。消毒保管庫には、空気を加熱するヒータと、ヒータで加熱された空気を外周方向へ送出するファン(シロッコファン)とからなる熱風循環手段が、庫内上部に配設されている。また、熱風循環手段によって送出される熱風の移動経路が庫内に形成され、当該移動経路と食器カートの収容空間とを熱風が循環するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消毒保管庫の一種として、食器籠を載置する棚が上下複数段に設けられた食器カートを庫内に収容し、この食器カートに載せた食器籠の食器を熱風により消毒するカートイン仕様の消毒保管庫がある。例えば
図5に示す消毒保管庫10は、縦長矩形状の筐体13の前面に食器カートの搬入口15が設けられ、この搬入口15から庫内(庫内底面25上)に食器カートを搬入することができる。
【0005】
消毒保管庫の庫内底面25を形成するベース23には、食器カートが食器籠を多数載置した状態で乗ることになる。このためベース23は、食器カートの荷重を受けることに起因する撓みや変形が生じ易い。ここで、食器カートは一般にキャスターが下面の四隅に設けられているため、庫内スペースに整合する規定サイズの食器カートを庫内に収容する場合、その食器カートの荷重はキャスターを介して庫内底面25のうち左右方向の両端側にかかる。従って、ベース23における左右方向の両端側を補強部材で補強することが行われる。一方で、規定サイズの食器カートの荷重を受けないベース23の中央側の補強に関しては、従来において充分な検討が行われていないのが現状である。
【0006】
しかしながら、規定サイズの食器カートよりも左右寸法の小さい食器カートが庫内に収容される場合には、ベース23の中央側に食器カートの荷重がかかり、ベース23に撓みや変形が生じる虞がある。また、筐体13の後面に食器カートの搬出口が開口するパススルー式の消毒保管庫では、その使用者(作業者)が庫内の食器カートを搬出口から搬出する際にベース23の中央側を通過することがあり、ベース23の中央側に使用者が乗った際にベース23に撓みや変形が生じ得る。
【0007】
そこで本発明は、従来のカートイン仕様の消毒保管庫に内在する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、庫内の底面を形成するベースの撓みや変形を防止し得る消毒保管庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
物品の搬送に用いる物品カートを筐体の前面開口を介して庫内に搬入可能で、当該庫内に収容された物品カート上の物品を熱風により消毒する消毒保管庫において、
庫内底面を形成するベースと、該ベースを補強する複数の補強部材とを備え、
前記複数の補強部材は、前記物品カートの搬入方向である前後方向に延在すると共に、左右方向に並ぶように前記ベースの下面側に配設され、
前記ベースにおける左右方向の両端側を補強する補強部材が、隣接する補強部材と密着する状態で配設されていると共に、前記ベースにおける左右方向の中央側を補強する補強部材が、隣接する補強部材と隙間をあけて近接するよう配設されていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、庫内底面を形成するベースにおける左右方向の両端側に限らず中央側についても補強部材により強度が高められるので、左右寸法の小さい物品カートを庫内に収容する場合や、消毒保管庫の使用者が庫内に入った場合等に、ベースに撓みや変形が生じるのを防ぐことができる。ここで、ベースの中央側を補強する補強部材を隣接する補強部材と隙間を介して近接させるのに対し、ベースの両端側を補強する補強部材を隣接する補強部材と密着するように配設することで、複数の補強部材によりベースを全体的に補強しつつ、ベースの両端側については特に強度を高めることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、
前記複数の補強部材は、当該消毒保管庫が設置される床面との接触面を有する接地板部と、該接地板部の両側縁から起立する縦板部と、該縦板部の上縁から左右方向の外側に向けて水平に延出する支持板部とを夫々備え、該支持板部の上面で前記ベースを支持するように構成され、
前記中央側を補強する補強部材は、前記接地板部の左右寸法より小さい隙間をあけて前記隣接する補強部材と近接するよう配設されていることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、補強部材が、消毒保管庫が設置される床面との接触面を有する接地板部と、ベースを支持する支持板部とを備えるように構成され、庫内の底面を形成するベースのうち左右方向の中央側を補強する補強部材が、隣接する補強部材と接地板部の左右寸法より小さい隙間をあけて近接するように配設されることで、消毒保管庫が設置される床面に対する当該消毒保管庫の接触面積が大きく確保され、当該消毒保管庫が設置される床面に傾斜や凹凸がある場合等のレベル調整が容易になる。
【0010】
請求項3に係る発明では、
前記前面開口を開閉する扉体の上端面から上方に突出するラッチを備え、
前記筐体において前記ラッチを掛止する高さ位置を調節可能に構成されていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、扉体のラッチを掛止する高さ位置を調節し得るので、傾斜や凹凸のある床面に消毒保管庫が設置された場合にも適切な高さ位置でラッチを掛止でき、扉体を閉鎖し得ない等の不具合を防止することができる。
【0011】
請求項4に係る発明では、
前記前面開口を開閉する扉体の上端面に設けられた被検出体と、前記筐体における前記前面開口の開口上端面に設けられて前記被検出体を検出するスイッチとを備え、
前記扉体において前記被検出体の高さ位置を調節可能に構成されていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、扉体の上端面に設けられた被検出体の高さ位置を調節し得るので、傾斜や凹凸のある床面に消毒保管庫を設置する場合にもスイッチによる被検出体の検出を確実に行うことができ、扉体の閉鎖を判別し得ない等の不具合を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る消毒保管庫によれば、庫内の底面を形成するベースの撓みや変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、本発明の実施例に係る消毒保管庫の概略構成を示す斜視図であり、庫内に収容される食器カートを二点鎖線で示している。(b)は、(a)において円Xで囲んだ部位の拡大図である。
【
図2】(a)は、消毒保管庫の底面図であり、(b)は、(a)におけるY-Y線断面図である。
【
図3】(a)は、第1の食器カートを消毒保管庫の庫内に収容し、かつ前扉を取り除いた状態を示す正面図であり、(b)は、第2の食器カートを消毒保管庫の庫内で左側に寄せて収容し、かつ前扉を取り除いた状態を示す正面図である。
【
図4】(a)は、閉鎖状態の前扉の上端面と筐体における搬入口の開口上端面との対向位置を正面から見た要部拡大図であり、(b)は、
図1(a)のZ-Z線断面図である。
【
図5】一般的な消毒保管庫の搬入口を開放した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る消毒保管庫につき、好適な実施例を挙げ、添付図面を参照して以下に説明する。なお、消毒保管庫10を正面(前側)から見た状態で、「左」および「右」を指称する。また、
図5を参照して説明した構造と共通する構造に関しては同じ名称および参照符号を用い、詳細な説明を省略することがある。
【実施例】
【0015】
(消毒保管庫の概略構成について)
実施例の消毒保管庫10は、洗浄後の食器(物品)の搬送に用いる食器カート(物品カート)51,52(
図3参照)を収容した庫内に高温の熱風を循環させることで、当該庫内に収容した食器カート51,52の棚に載置されている食器籠内の食器(図示せず)を消毒・乾燥させるように構成されている(カートイン仕様)。また、消毒保管庫10は、
図1に示すように、厨房内の食器洗浄エリア等で食器を載せた食器カート51,52を搬入する搬入口(前面開口)15が、矩形箱状の筐体13の前面に形成されると共に、搬入口15を開閉する前扉(扉体)17が、筐体13における搬入口15の開口縁に配設されている。また、消毒保管庫10による消毒完了後に食器カート51,52を厨房内の食材盛り付けエリア等に向けて搬出する搬出口19が、筐体13の後面に形成されると共に、搬出口19を開閉する後扉21が、筐体13における搬出口19の開口縁に配設されている。なお、符号13aは、各種の操作部や表示部を有するパネルである。
【0016】
(ベース23および補強部材27について)
図2に示すように、筐体13は、庫内底面25を形成するベース23と、このベース23を補強する複数の補強部材27とを備えている。各補強部材27は、何れも板金を折曲することで形成された同形状の部材であり、
図2(a)に示すように、前後方向に延在すると共に左右方向に並ぶようにベース23の下側に配設されている。なお、
図2(a)ではベース23を下面側(床面FL側)から見た状態を示しているが、
図2(a)における符号A1,A2,A3は、ベース23の上面である庫内底面25の左右方向を複数に区分したエリア(後述する第1~第3エリア)の各範囲を示している。
【0017】
図3(a)に示すように、消毒保管庫10は、外形が庫内スペースに整合する第1の食器カート51を庫内に収容可能であり、庫内に収容した第1の食器カート51上の食器の消毒を行うように構成されている。この第1の食器カート51のキャスター53は、当該第1の食器カート51が庫内に収容された場合、庫内底面25のうち左右方向の両端側の第1エリアA1に乗る(第1エリアA1より中央側には乗らない)。このため、ベース23における左右方向の両端側が第1の食器カート51の荷重を受けることになり、撓みや変形が生じ易い。一方で、消毒保管庫10は、
図3(b)に示すように、第1の食器カート51よりも左右寸法の小さい第2の食器カート52も収容可能であり、この第2の食器カート52を庫内に収容して当該第2の食器カート52上の食器の消毒を行うこともある。この第2の食器カート52のキャスター53は、当該第2の食器カート52が庫内に収容された場合、庫内底面25のうち、第1エリアA1に乗るか、第1エリアA1より中央側の第2エリアA2に乗る。すなわち、第2の食器カート52が庫内に収容され得ることから、ベース23における左右方向の中央側にも撓みや変形が生じる可能性がある。
【0018】
これに対し、実施例の消毒保管庫10では、第1エリアA1の下方に補強部材27を配設すると共に、第2エリアA2の下方にも補強部材27を配設することで、両食器カート51,52の荷重を受け得るベース23の両端側だけでなく、第1の食器カート51の荷重を受けない(第2の食器カート52の荷重のみを受け得る)ベース23の中央側についても強度を高めている。なお、
図2(a)に示すように、庫内底面25のうち両食器カート51,52のキャスター53が乗り得ない第3エリアA3(第2エリアA2よりも左右方向の中央側の領域)の下方にも、補強部材27が位置している。このため、消毒保管庫10の使用者(作業者)が庫内底面25の第3エリアA3に乗った場合にも、ベース23に撓みや変形が生じ難い。
【0019】
ここで、
図2に示すように、両食器カート51,52のキャスター53が位置し得る第1エリアA1の下方位置と、第1の食器カート51のキャスター53が位置し得ない第2・第3エリアA2,A3の下方位置とで、補強部材27同士の間隔を異ならせてある。具体的には、第1エリアA1の下方に位置する補強部材27(すなわち、ベース23の両端側を補強する補強部材27)が、隣接する別の補強部材27と隙間なく密着するように配設されている。一方、第2・第3エリアA2,A3の下方に位置する補強部材27(すなわち、ベース23の中央側を補強する補強部材27)は、隣接する別の補強部材27と密着せず、隙間をあけて近接するように配設されている。すなわち、ベース23を全体的に補強部材27で補強しつつ、ベース23の両端側については特に強度を高めている。
【0020】
また、補強部材27は、
図2(b)に示すように、消毒保管庫10が設置される厨房等の床面FLとの接触面を有する接地板部27aと、この接地板部27aの両側縁から起立する縦板部27bと、この縦板部27bの上縁から左右方向の外側に向けて水平に延出する支持板部27cとを備えている。そして、支持板部27cの上面でベース23を支持するように構成されている。ここで、補強部材27は、接地板部27aの左右寸法(床面FLとの接触面の左右寸法)s1が、支持板部27cの左右寸法s2よりも大きく、支持板部27cの左右寸法s2の2倍よりも小さくなるように構成されている。
【0021】
ところで、消毒保管庫10を設置する床面FLに傾斜や凹凸があるような場合、扉17,21が傾き、扉17,21の開閉不良や、ドアパッキン46(
図4(b)参照)の挟み込みや、後述するラッチ29の掛止不良や、後述する扉閉鎖検出スイッチ35の検出不良といった不具合が生じ得る。これらの不具合を回避するために、ライナー(レベル調整板)を用いたレベル調整が行われるが、ベース23の下方領域における床面FLとの接触面積が小さい(ベース23の下方領域に床面FLと離間する大きなスペースがある)と、ライナーの配置によるレベル調整が困難になる。そこで、実施例の消毒保管庫10では、庫内底面25における第2エリアA2の下方に配設された補強部材27同士の離間寸法(隙間)s3が接地板部27aの左右寸法s1よりも小さくなるように、各補強部材27が左右に近接して配設されている。すなわち、複数の補強部材27の接地板部27aによる床面FLとの接触面がベース23の下方領域に満遍なく振り分けられ、ベース23の下方領域において床面FLと離間する大きなスペースが生じないようにしている。また、ベース23の下方領域において床面FLとの接触面積が大きく確保されている。
【0022】
(ラッチ29、ラッチ受け31a,31bおよびラッチ受けスペーサ33について)
図4(a)に示すように、前扉17には、筐体13に対する当該前扉17を閉鎖状態に維持するためのラッチ29が設けられている。ラッチ29は、図示しない付勢手段によって前扉17の上端面17aから上方へ突出するように付勢され、筐体13における搬入口15の開口上縁に前方から接触することで下方へ退避するように構成されている。
【0023】
ここで、前述したように、消毒保管庫10を設置する床面FLに傾斜や凹凸がある場合に、扉17,21が傾き、ラッチ29の掛止不良が生じ得る。なお、このラッチ29の掛止不良とは、扉17,21の上端面17a,21aと、筐体13における搬入口15の開口上端面15aとの上下間隔が狭くなったり、広くなったりすることで、ラッチ29の掛かりが通常より深くなったり、浅くなったりして扉17,21の開放・閉鎖を速やかに行えなくなる不具合のことである。従来において、消毒保管庫10の下(床面FLとの間)に薄板等の簡易なスペーサを挿し込んで対処することもあったが、重量のある消毒保管庫10を持ち上げて行うこのような方法は、作業が容易ではないばかりか指を挟む等の危険を伴う。
【0024】
これに対し、実施例の消毒保管庫10は、筐体13側で前扉17のラッチ29を掛止する高さ位置を調節可能に構成されており、扉17,21の傾き等に起因してラッチ29の掛止不良が生じた場合に、消毒保管庫10を持ち上げる等の作業を伴うことなく対応し得るようになっている。なお、後扉21のラッチを掛止する高さ位置を調節可能に構成してもよい。
【0025】
具体的に、実施例の消毒保管庫10は、ラッチ29を掛止可能な掛止口31bの高さ位置を調節可能に構成されている。ここで、筐体13には、掛止口31bを有するラッチ受け30が配設されている。実施例においてラッチ受け30は、
図4(b)に示すように、掛止口31bが形成された本体部材31と、2枚のスペーサ板33とで構成されている。本体部材31は、掛止口31bが上下に貫通形成された第1水平板31aと、この第1水平板31aの後端縁から上方に起立する垂直板31cと、垂直板31cの上端縁から後方に延出する第2水平板31dとを有し、第2水平板31dに形成されたネジ孔(図示せず)に挿通されるネジ34により、筐体13の取付面13b(
図4(b)参照)に固定されるようになっている。各スペーサ板33は、第2水平板31dのネジ孔との対応位置にネジ挿通孔(図示せず)を有し、本体部材31と同じネジ34によって筐体13の取付面13bに固定(共締め)可能に構成されている。そして、ラッチ受け30を構成するスペーサ板33の枚数を例えば0枚から4枚の間で変更することで、掛止口31bの高さ位置(ラッチ29を掛止する高さ位置)を調節できるようになっている。
【0026】
なお、
図4(a)に示すラッチ受け30において、本体部材31の第1水平板31aは、搬入口15の開口上端面15aから下方に離間すると共に、前面扉17の上端面17aから上方に離間するように位置しているが、第2水平板31dと筐体13との間に介在させるスペーサ板33の枚数を増加させ、例えば4枚とすることで、搬入口15の開口上端面15aと接する位置まで当該第1水平板31aの高さ位置(掛止口31bの高さ位置)を上昇させることができ、スペーサ板33の枚数を1枚または0枚に減少させることで、当該第1水平板31aの高さ位置(掛止口31bの高さ位置)を
図4(a)の位置より下降させることができる。
【0027】
また、ラッチ受け30は、垂直板31cの存在により、第2水平板31dが搬入口15の開口上端面15aと前扉17の上端面17aとの間位置より上側に位置し、筐体13の前面上部を構成するパネル13aによって第2水平板31dおよび各スペーサ板33が前側から覆われるため、消毒保管庫10の見栄えの悪化を防ぐことができる。
【0028】
(扉閉鎖検出スイッチ35、被検出体37および高さ調節ホルダ39について)
図4(b)に示すように、筐体13における搬入口15の開口上端面15aには、前扉17の上端面17aに設けられた被検出体37(
図4(a)および
図4(b)参照)を前扉17の閉鎖位置で検出する扉閉鎖検出スイッチ35が設けられている。実施例では、被検出体37として、磁石(例えば、磁石ホルダに保持された状態のもの)が用いられており、扉閉鎖検出スイッチ35として、磁気センサが用いられている。
【0029】
ここで、前述したように、消毒保管庫10を設置する床面FLに傾斜や凹凸がある場合に、扉17,21が傾き、扉閉鎖検出スイッチ35の検出不良が生じ得る。これに対し、実施例の消毒保管庫10は、前扉17側で被検出体37の高さ位置を調節可能に構成されており、扉17,21の傾き等に起因して扉閉鎖検出スイッチ35の検出不良が生じた場合に、消毒保管庫10を持ち上げる等の作業を伴うことなく対応し得るようになっている。なお、後扉21に被検出体37を設け、この後扉21の被検出体37の高さ位置を調節可能に構成してもよい。
【0030】
具体的に、実施例の消毒保管庫10は、前扉17の上端面17aに、被検出体37を上面に保持する高さ調節ホルダ39が取り付けられている。この高さ調節ホルダ39は、上下に複数の構成部材39aを重ね合わせて構成されている。そして、高さ調節ホルダ39における構成部材39aの数を増減させたり、高さ調節ホルダ39自体を取り除いて被検出体37を直接上端面17aに取り付けたりすることで、被検出体37を保持する高さ位置を調節できるようになっている。なお、高さ調節ホルダ39は、1つの構成部材39aにより構成してもよい。
【0031】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る消毒保管庫10の作用について説明する。
【0032】
実施例の消毒保管庫10は、前後方向に延在する複数の補強部材27が、庫内底面25を形成するベース23の下面側に左右方向に並ぶように配設されているので、庫内に収容される食器カート51,52の荷重がかかるベース23を補強することができる。ベース23の両端側に限らず中央側についても補強部材27で強度を高めることで、庫内スペースに整合する第1の食器カート51を庫内に収容する場合に限らず、左右寸法の小さい第2の食器カート52を庫内に収容する場合や、消毒保管庫10の使用者が庫内に入ってベース23に乗った場合等にも、ベース23に撓みや変形が生じるのを防ぐことができる。ここで、複数の補強部材27のうち、ベース23における左右方向の両端側を補強する補強部材27、すなわち庫内底面25における第1エリアA1の下方に配設される補強部材27が、隣接する補強部材27と密着する状態で配設され、ベース23における左右方向の中央側を補強する補強部材27、すなわち庫内底面25における第2エリアA2の下方に配設される補強部材27が、隣接する補強部材27と隙間をあけて近接するように配設されているので、複数の補強部材27によりベース23を全体的に補強しつつ、ベース23の両端側については特に強度を高めることができる。
【0033】
また、複数の補強部材27は、消毒保管庫10が設置される床面FLとの接触面を有する接地板部27aと、該接地板部27aの両側縁から起立する縦板部27bと、該縦板部27bの上縁から左右方向の外側に向けて水平に延出して上面でベース23を支持する支持板部27cとを夫々備えており、ベース23における左右方向の中央側を補強する補強部材27が、隣接する補強部材27と接地板部27aの左右寸法s1より小さい隙間s3をあけて近接するように配設されているので、消毒保管庫10が設置される床面FLに対する当該消毒保管庫10の接触面積が大きく確保され、当該消毒保管庫10が設置される床面FLに傾斜や凹凸がある場合等の(ライナーを用いた)レベル調整が容易になる。
【0034】
また、実施例の消毒保管庫10は、筐体13の搬入口15を開閉する前扉17の上端面17aから上方に突出するラッチ29を掛止する高さ位置を、筐体13に配設されるラッチ受け30を構成するスペーサ板33(第2水平板31dと筐体13との間に設けるスペーサ板33)の枚数の増減に応じて調節することができる。このため、傾斜や凹凸のある床面FLに消毒保管庫10が設置された場合にも、適切な高さ位置でラッチ29を掛止でき、前扉17を閉鎖し得ない等の不具合を防止することができる。
【0035】
また、実施例の消毒保管庫10は、前扉17の上端面17aに設けられて筐体13における搬入口15の開口上端面15aに設けられた扉閉鎖検出スイッチ35により検出される被検出体37の高さ位置を、前扉17において高さ調節ホルダ39の構成部材39aの数を増減させることで調節することができる。このため、傾斜や凹凸のある床面FLに消毒保管庫10を設置する場合にも、扉閉鎖検出スイッチ35による被検出体37の検出を確実に行うことができ、前扉17の閉鎖を判別し得ない等の不具合を防止することができる。
【0036】
〔変更例〕
本願は前述した実施例の構成に限定されるものではなく、例えば以下の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例では、食器の搬送に用いる物品カート(食器カート)を庫内に収容して当該食器を熱風により消毒する消毒保管庫を例に挙げて説明したが、食器以外の物品の搬送に用いる物品カートを庫内に収容して当該物品を熱風により消毒する消毒保管庫に実施例の構成を採用することも可能である。
(2) 実施例では、筐体の前面・後面に搬入口・搬出口が開口する消毒保管庫(パススルー式)を例に挙げて説明したが、搬入口および搬出口が共通の消毒保管庫に実施例の構成を採用することも可能である。
(3) 実施例では、筐体において庫内底面を形成するベースにおける左右方向の両端側を補強する補強部材を、隣接する補強部材と密着する状態でベースの下面側に配置するようにしたが、密着しない(離間する)ようにしてもよい。なおこの場合は、ベースの両端側を補強する補強部材同士を、ベースにおける左右方向の中央側を補強する補強部材同士の離間寸法より小さい寸法で離間させることが好ましい。
【符号の説明】
【0037】
51 第1の食器カート(物品カート),52 第2の食器カート(物品カート),
13 筐体,15 搬入口(前面開口),15a 開口上端面,17 前扉(扉体),
17a 上端面,23 ベース,25 庫内底面,27 補強部材,27a 接地板部,
27b 縦板部,27c 支持板部,29 ラッチ,
35 扉閉鎖検出スイッチ(スイッチ),FL 床面,s1 設置板部の左右寸法,
s3 補強部材同士の隙間,接地板部(27a)の左右寸法(s1)