(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】超純水製造システム及び超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 9/00 20230101AFI20230413BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20230413BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20230413BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20230413BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230413BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230413BHJP
C02F 1/20 20230101ALI20230413BHJP
【FI】
C02F9/00
C02F1/44 J
B01D61/02 500
B01D61/04
B01D61/58
C02F1/42 B
C02F1/20 A
(21)【出願番号】P 2019168880
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東都 雅典
(72)【発明者】
【氏名】松井 恭則
(72)【発明者】
【氏名】中村 清一
(72)【発明者】
【氏名】小島 泉里
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020131(JP,A)
【文献】特開2019-076827(JP,A)
【文献】特開2010-023006(JP,A)
【文献】特開平11-128924(JP,A)
【文献】特開2000-301145(JP,A)
【文献】特開2001-145879(JP,A)
【文献】特開2007-307561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
C02F 9/00- 9/20
C02F 1/42
C02F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全溶解性蒸発残留物質(TDS)を600mg/L以上、硬度成分を100mg/L as CaCO
3以上、ボロンを0.1mg/L以上、含有する原水を処理して、ボロンの含有量が0.01μg/L(10ppt)以下である超純水を得る超純水製造システムであって、
前記原水の通水処理の順番に、弱酸性イオン交換装置、前記弱酸性イオン交換装置の処理水のpHを2~6の酸性とする第2のpH調整手段、脱炭酸装置、第1の逆浸透膜装置、前記第1の逆浸透膜装置の処理水のpHを10~11のアルカリ性とする第3のpH調整手段、第2の逆浸透膜装置、及び強塩基性イオン交換装置、を有することを特徴とする超純水製造システム。
【請求項2】
前記弱酸性イオン交換装置が、Na型の弱酸性カチオン交換樹脂を充填した装置である請求項1に記載の超純水製造システム。
【請求項3】
前記第2の逆浸透膜装置に用いられる逆浸透膜が、低圧又は超低圧逆浸透膜である請求項1又は2に記載の超純水製造システム。
【請求項4】
前記弱酸性イオン交換装置の前段に、前記原水をアルカリ性とする第1のpH調整手段を有する請求項1~3のいずれか1項に記載の超純水製造システム。
【請求項5】
前記第1のpH調整手段として、前記第2の逆浸透膜装置の濃縮水をpH調整用のアルカリ溶液として循環させる循環配管を有する請求項4に記載の超純水製造システム。
【請求項6】
全溶解性蒸発残留物質(TDS)を600mg/L以上、硬度成分を100mg/L as CaCO
3以上、ボロンを0.1mg/L以上、含有する原水を処理して、ボロンの含有量が0.01μg/L(10ppt)以下である超純水を得る超純水製造方法であって、
前記原水を弱酸性イオン交換装置に通水させ、前記弱酸性イオン交換装置の処理水を第2のpH調整によりpH2~6の酸性として、脱炭酸装置に通水させ、前記脱炭酸装置の処理水を第1の逆浸透膜装置に通水させ、前記第1の逆浸透膜装置の処理水を第3のpH調整によりpH10~11のアルカリ性として、第2の逆浸透膜装置に通水させ、さらに、第2の逆浸透膜装置の処理水を強塩基性イオン交換装置に通水させる、ことを特徴とする超純水製造方法。
【請求項7】
前記第1の逆浸透膜装置の処理水における硬度成分の濃度が、0.01mg/L as CaCO
3以下である請求項6に記載の超純水製造方法。
【請求項8】
前記第1の逆浸透膜装置のボロンの除去率が25%以上である請求項6又は7に記載の超純水製造方法。
【請求項9】
前記第2の逆浸透膜装置のボロンの除去率が85%以上である請求項6~8のいずれか1項に記載の超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水中における塩濃度が非常に高く、さらに、硬度成分、ボロンを含有する場合においても、これら成分を十分に除去して所望の水質となる超純水を製造できる超純水製造システム及び超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理においては、各種イオン成分や硬度成分の除去のため、膜処理手段、イオン交換手段、脱炭酸装置等を用いて、純水や超純水が製造されている。
【0003】
なお、半導体製造のような非常に精密な機器を製造する現場においては、その製造する部品について高い清浄度が求められ、この部品等の洗浄には超純水が用いられる。近年では、この超純水中のボロンの含有量も非常に低いレベルが求められ、種々の水処理方法が検討されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
特許文献1は、脱気処理及び逆浸透膜処理を行った後、pHを所定のアルカリ濃度に調整し、さらに逆浸透膜処理を行うことで、原水中のホウ素を除去するとともに、アルカリ成分のリークが少なく、水質の向上した電気伝導率の小さい純水を効率よく製造することができる純水の製造方法である。
【0005】
特許文献2は、スケール発生を防止するための成分除去と、所定の成分のイオン化を増加させるpH調整と、溶解種の通過を阻止して除去する膜分離と、を有する水処理方法及び装置であって、弱酸性陽イオン交換樹脂、脱炭酸、逆浸透膜処理、イオン交換処理の各処理においてpH調整をしながら順番に行う水処理方法及び装置が記載されている。
【0006】
特許文献3は、硬度の高い被処理水からボロンを除去する水処理設備及び水処理方法であって、酸を加えた被処理水を第1逆浸透膜によりろ過し、この透過水にアルカリ剤を加えた被処理水を第2の逆浸透膜によりろ過し、硬度の高い被処理水からホウ素を除去する水処理設備及び水処理方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-267645号公報
【文献】特表2000-511109号公報
【文献】特開2019-76827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に超純水を必要とする工場、例えば、半導体製造工場やLCDパネル製造工場等を建設する場合、建設地の決定には、得られる原水の水質も重要な要素となってきた。いうまでもなく、水質の良い原水を用いた方が得られる超純水の水質も良く、かつ、安価で製造可能であるためである。
【0009】
ところが、そのような立地条件の良い場所は限られているため、近頃、原水水質の悪い場所に工場を設置する場合も増えつつある。
また、特に、中国のように、原水水質の悪い場所にもかかわらず工場を建設する計画が、国策として進められる場合もある。
これらの場合、不純物濃度の非常に高い原水から、超純水を製造せざるを得ない。
【0010】
上記のような不純物濃度の非常に高い原水から、ボロン濃度を有意に低減した超純水の製造にあたって、上記のような従来技術を考慮し、ボロンを効果的に除去するために特許文献2及び3に記載のような超純水製造システムを検討したが、硬度成分や塩成分の量が非常に多いため、このシステムでの処理前には不純物を除去する必要があることが明らかになった。
【0011】
このような前処理としては、通常、2床3塔式イオン交換装置(2B3T)の使用がまず検討されるが、上記のような水質の場合、イオン交換樹脂が短時間で交換容量に達してしまうため再生、交換を高い頻度で行わなければならない。また、2B3Tを大型化して再生、交換頻度を低くすることも考えられるが、その場合、装置の設置スペースや装置の製造上、実用上の問題が多くあり、現実的ではないことが明らかになった。すなわち、上記のような水質の原水について、簡易な装置構成で、ボロンやその他の不純物を有意に低減できる効率的な処理装置及び処理方法が必要となった。
【0012】
そこで、本発明は、不純物濃度の高い原水を用いても、特にボロン濃度を低減させた所定の水質、を有する超純水を、簡易な装置構成で、かつ、効率的に得ることができる超純水製造システム及び超純水製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の超純水製造システムは、全溶解性蒸発残留物質(TDS)を600mg/L以上、硬度成分を100mg/L as CaCO3以上、ボロンを0.1mg/L以上、含有する原水を処理して、ボロンの含有量が0.01μg/L(10ppt)以下である超純水を得る超純水製造システムであって、前記原水の通水処理の順番に、弱酸性イオン交換装置、前記弱酸性イオン交換装置の処理水のpHを2~6の酸性とする第2のpH調整手段、脱炭酸装置、第1の逆浸透膜装置、前記第1の逆浸透膜装置の処理水のpHを10~11のアルカリ性とする第3のpH調整手段、第2の逆浸透膜装置、及び強塩基性イオン交換装置、を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の超純水製造方法は、全溶解性蒸発残留物質(TDS)を600mg/L以上、硬度成分を100mg/L as CaCO3以上、ボロンを0.1mg/L以上、含有する原水を処理して、ボロンの含有量が0.01μg/L(10ppt)以下である超純水を得る超純水製造方法であって、前記原水を弱酸性イオン交換装置に通水させ、前記弱酸性イオン交換装置の処理水を第2のpH調整によりpH2~6の酸性として、脱炭酸装置に通水させ、前記脱炭酸装置の処理水を第1の逆浸透膜装置に通水させ、前記第1の逆浸透膜装置の処理水を第3のpH調整によりpH10~11のアルカリ性として、第2の逆浸透膜装置に通水させ、さらに、第2の逆浸透膜装置の処理水を強塩基性イオン交換装置に通水させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の超純水製造システム及び超純水製造方法によれば、不純物濃度の高い原水を用いても、特にボロン濃度を低減させた所定の水質、を有する超純水を、簡易な装置構成で、かつ、効率的に得ることができる。また、本発明の超純水製造システム及び超純水製造方法によれば、所定の水質の超純水を長期間安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る超純水製造システムの概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[超純水製造システム]
本実施形態に係る超純水製造システムは、上記のように、不純物濃度の非常に高い原水を効率的に処理して所定の水質の超純水を得られるものであって、
図1に示したように、第1のpH調整手段11、弱酸性イオン交換装置12、第2のpH調整手段13、脱炭酸装置14、第1の逆浸透膜装置15、第3のpH調整手段16、第2の逆浸透膜装置17、強塩基性イオン交換装置18、をこの順番に有して構成される超純水製造システム10である。
【0018】
まず、本実施形態で処理対象とする原水は、上記のように不純物濃度の非常に高い原水(例えば、市水、工業用水、井水、河川水、表流水等)であり、具体的には、全溶解性蒸発残留物質(TDS;Total Dissolved Solids)を600mg/L以上、硬度成分を100mg/L as CaCO3以上、ボロンを0.1mg/L以上、含有するものである。好ましくは、硬度成分を120mg/L as CaCO3以上、さらに好ましくは、硬度成分を150mg/L as CaCO3以上の原水に好適に用いられる。本実施形態では、このような高濃度の塩類、硬度成分を含有する処理水であっても、ボロン濃度を非常に低減したものとできる、これまでにない有用な超純水製造システムである。
【0019】
本実施形態で用いられる第1のpH調整手段11は、次に説明する弱酸性イオン交換装置12の前段において、原水(被処理水)のpHをアルカリ性に調整するものである。
【0020】
この第1のpH調整手段11は、原水を所定のpHとするためにアルカリ溶液を添加できるものであればよく、公知のpH調整手段が挙げられる。pH調整手段としては、例えば、アルカリ溶液を収容する第1の調整槽から薬注ポンプにより配管内にアルカリ溶液を添加するものが挙げられる。
【0021】
なお、このpH調整手段11は、必要に応じ設置すればよい。例えば、後段の弱酸性イオン交換樹脂がH型の場合は、イオン交換が進行するとともに、pHが低下するので、弱酸性イオン交換樹脂の機能するpH範囲を外れてしまう場合には、アルカリの添加が必要となる。しかし、弱酸性イオン交換樹脂の機能するpH範囲を外れない場合にはアルカリの添加は不要である。また、弱酸性イオン交換樹脂がNa型の場合には、イオン交換の進行とともにpHが低下することはないので、アルカリを添加する必要はない。
【0022】
この必要に応じて設置される第1のpH調整手段11により、原水のpHを後段の弱酸性イオン交換装置12において硬度スケールが生じない範囲のpHとして供給する。このときのpHは、アルカリ性であればよく、さらに、pH8~9.5程度が好ましい。
【0023】
なお、この第1のpH調整手段11について、
図1では、上記説明のような調整槽とポンプの構成を示したが、後述する第2の逆浸透膜装置17の濃縮水やその他のアルカリ溶液を、弱酸性イオン交換装置12の前段に循環させて原水のpHを調整する構成としてもよい。
【0024】
このpH調整に用いるアルカリ溶液に含まれるアルカリ成分としては、pH調整に用いられる公知のものであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0025】
本実施形態で用いられる弱酸性イオン交換装置12(WC)は、イオン交換容器内に弱酸性カチオン交換樹脂が収容されて構成されるものであり、pH調整された原水を通水処理して、主として原水中の硬度成分を除去する。
【0026】
ここで用いられる弱酸性カチオン交換樹脂としては、Na型の弱酸性カチオン交換樹脂又はH型の弱酸性カチオン交換樹脂が挙げられ、Na型の弱酸性カチオン交換樹脂が好ましい。この弱酸性カチオン交換樹脂としては、公知の弱酸性カチオン交換樹脂のイオン交換基をH型又はNa型としたものであればよく、例えば、高分子基体にCOOH基又はCOONa基を結合したものが挙げられる。
【0027】
ここで、弱酸性カチオン交換樹脂により、被処理水中に含まれるCa2+やMg2+等の硬度成分とカチオン交換樹脂のH+又はNa+とがイオン交換され、被処理水から硬度成分が除去される。
【0028】
この弱酸性イオン交換装置12は、上記のように容器内に弱酸性カチオン交換樹脂が充填され、原水を接触させることで、被処理水中より硬度成分であるCa2+やMg2+等のイオンを除去するように用いられるものであれば特に限定されるものではない。弱酸性イオン交換装置12は、例えば、再生型又は非再生型の単床式イオン交換装置とすることができる。また、この弱酸性カチオン交換樹脂では、強酸性カチオン交換樹脂との複床式のイオン交換装置としてもよいが、イオン交換容量を確保するため、弱酸性カチオン交換樹脂の単床式イオン交換装置が好ましい。
【0029】
弱酸性カチオン交換樹脂は、Ca2+やMg2+等の硬度成分に対して選択性が大きく、一般的に強酸性カチオン交換樹脂より交換容量が大きいことから、強酸性カチオン交換樹脂を使用する場合の再生頻度の高さに起因する超純水製造システムの再生頻度が大きくなる問題を回避することができる。また、弱酸性カチオン交換樹脂は、化学当量的に僅かに過剰の再生レベルにより容易に再生することが可能であることから、再生剤が少なくて済むという利点も有している。
【0030】
本実施形態で用いられる第2のpH調整手段13は、次に説明する脱炭酸装置14の前段において、その被処理水のpHを酸性に調整するものである。
【0031】
この第2のpH調整手段13は、被処理水を所定のpHとするために酸溶液を添加できるものであればよく、公知のpH調整手段が挙げられる。このpH調整手段としては、例えば、酸溶液を収容する第2の調整槽から薬注ポンプにより配管内に酸溶液を添加するものが挙げられる。
【0032】
この第2のpH調整手段13により、被処理水のpHを、被処理水に残留しており硬度スケールの原因となるMアルカリ度(M-Alk)が炭酸ガスになり、後段の脱炭酸装置14において炭酸ガスとなったM-Alkを除去できる範囲のpHに調整する。このときのpH調整は、例えば、被処理水のpHを、pH2~6の酸性とすることが好ましく、さらにpH4~6とすることがより好ましい。
【0033】
このpH調整に用いる酸溶液に含まれる酸成分としては、pH調整に用いられる公知のものであればよく、塩酸、硝酸、硫酸等が挙げられる。
【0034】
本実施形態で用いられる脱炭酸装置14(DG)は、本分野で公知の脱炭酸装置を用いることができ、被処理水中に溶存する炭酸ガスを除去するものである。この脱炭酸装置14には、その前段で、大部分の硬度成分が除去され、pHが調整された被処理水が供給され、溶解している炭酸成分が効果的に除去される。脱炭酸装置14は、例えば、炭酸成分を効率的に除去できる、公知の脱炭酸塔、脱ガス膜装置等が挙げられる。
【0035】
本実施形態で用いられる第1の逆浸透膜装置15(RO1)は、本分野で公知の逆浸透膜装置を用いることができ、弱酸性イオン交換装置12及び脱炭酸装置14で処理された処理水中に残存する有機不純物や塩類を除去する。第1の逆浸透膜装置15に使用される逆浸透膜としては、例えば、酢酸セルロース、脂肪族ポリアミド系或いは芳香族ポリアミド系又はこれらの複合系からなる各種有機高分子膜或いはセラミック膜等が使用でき、超低圧逆浸透膜、低圧又は中圧逆浸透膜のいずれも適用することができるが、透過流速の向上に伴う低圧操作が可能なことから、低圧逆浸透膜又は超低圧逆浸透膜を適用することが好ましい。また、膜モジュールの形式としては、中空糸型モジュール、管状型モジュール、スパイラル型モジュール、平膜型モジュール等が適用でき、単位容積あたりの膜面積が大きくとれるスパイラル型モジュールが好ましい。
【0036】
本実施形態においては、その前段で、Ca2+やMg2+等のイオン状物質や炭酸成分が除去されているため、この第1の逆浸透膜装置15にかかる負荷を低減しつつ、被処理水中に残存する有機不純物や塩類を効果的に除去することができる。なお、ここではボロンの除去率はそれほど高くないが、その除去率が、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。
【0037】
本実施形態で用いられる第3のpH調整手段16は、次に説明する第2の逆浸透膜装置17の前段において、その被処理水のpHをアルカリ性に調整するものである。
【0038】
この第3のpH調整手段16は、被処理水を所定のpHとするためにアルカリ溶液を添加できるものであればよく、公知のpH調整手段が挙げられる。このpH調整手段としては、例えば、アルカリ溶液を収容する第3の調整槽から薬注ポンプにより配管内にアルカリ溶液を添加するものが挙げられる。
【0039】
この第3のpH調整手段16により、被処理水のpHを後段の第2の逆浸透膜装置17においてボロンを有意に除去できるpHに調整する。このときのpH調整は、この被処理水をpH10~11のアルカリ性とするもので、さらに、pH10.5~11とするのが好ましい。
【0040】
このpH調整に用いるアルカリ溶液に含まれるアルカリ成分としては、pH調整に用いられる公知のものであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0041】
本実施形態で用いられる第2の逆浸透膜装置17(RO2)は、耐アルカリ性の逆浸透膜を有する公知の逆浸透膜装置を用いることができる。アルカリ運転するので、第2の逆浸透膜装置17により、処理水中に残存するボロンが効率よく除去される。
【0042】
この第2の逆浸透膜装置17においては、その前段部分で、原水中の不純物の大部分が除去されており、この膜でのスケーリングが起きにくくなるため、その水回収率を高くすることができる。第2の逆浸透膜装置17としては、超低圧、低圧又は中圧逆浸透膜に加え、高圧の逆浸透膜(海水淡水化膜)を用いることもでき、ボロン除去の観点からは、第2の逆浸透膜装置17は、高圧逆浸透膜が好ましい。ただし、運転圧力が高くなり、ランニングコストが高くなる欠点もある。そのため、被処理水の水質、超純水の水質を考慮し、適宜選択することが好ましい。
【0043】
この第2の逆浸透膜装置17に使用される逆浸透膜の材質としては、例えば、酢酸セルロース、脂肪族ポリアミド系或いは芳香族ポリアミド系又はこれらの複合系からなる各種有機高分子膜或いはセラミック膜等が使用できる。また、膜モジュールの形式としては、中空糸型モジュール、管状型モジュール、スパイラル型モジュール、平膜型モジュール等が適用でき、単位容積あたりの膜面積が大きくとれるスパイラル型モジュールが好ましい。
【0044】
本実施形態で用いられる強塩基性イオン交換装置18は、イオン交換容器内に強塩基性アニオン交換樹脂が収容されて構成されるものであり、第2の逆浸透膜装置17の処理水に対して、さらに該処理水中に微量含まれるボロンを除去して、本実施形態の要求水準を満たす超純水を得る。
【0045】
ここで用いられる強塩基性アニオン交換樹脂としては、この分野における公知の強塩基性アニオン交換樹脂が用いられ、イオン交換樹脂の加水分解が少なく有機系陰イオン成分の超純水への溶出が少ないため、官能基として第4級アンモニウム基を有するスチレン系樹脂等が好ましく用いられる。
【0046】
また、強塩基性陰イオン交換樹脂は、ボロンのようなイオン選択性の低い陰イオン成分を有効に除去するためOH型とする。Cl型の陰イオン交換樹脂をOH型にする方法としては、水酸化ナトリウム水溶液を用いてCl型の陰イオン交換樹脂を処理した後に、脱イオン水で洗浄する方法などが挙げられる。また、再生が効率よく行われやすい均一粒径樹脂が好適に用いられる。
【0047】
この強塩基性イオン交換装置18は、ボロンのみを除去目的とする場合には強塩基性アニオン交換樹脂のみが充填されたアニオン交換樹脂塔を単独で用いた単床単塔式としてもよい。また、強塩基性イオン交換装置18は、他のカチオン性物質等の除去を考慮する場合には、強酸性カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換樹脂塔と、強塩基性アニオン交換樹脂が充填されたアニオン交換樹脂塔とを直列に接続した2床2塔式、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを、一つのイオン交換樹脂塔内に、それぞれが別々の異なる層となるように配置した2床1塔式、強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを均一に混合して同一塔内に充填した混床式等の強塩基性イオン交換装置としてもよい。
【0048】
本実施形態の超純水製造システムにおいては、上記構成に加え、さらに、熱交換器、紫外線酸化装置(TOC-UV)、過酸化水素除去装置、脱気膜装置、ポリッシャ(非再生型混床式イオン交換樹脂装置)、限外ろ過膜装置等を、本発明の効果を阻害しない範囲で、適宜有することができる。
【0049】
[超純水製造方法]
本実施形態の超純水製造方法は、上記説明した水質の原水を用い、これに対して所定の処理を行うことによって超純水を得るものである。すなわち、全溶解性蒸発残留物質(TDS)を600mg/L以上、硬度成分を100mg/L as CaCO3以上、ボロンを0.1mg/L以上、含有する原水を、第1のpH調整によりアルカリ性とした後、弱酸性イオン交換装置に通水させ、その処理水を第2のpH調整によりpHを2~6の酸性として、脱炭酸装置に通水させる。次いで、脱炭酸装置の処理水を第1の逆浸透膜装置に通水させ、その処理水を第3のpH調整によりpHを10~11のアルカリ性とし、第2の逆浸透膜装置に通水させる。さらに、第2の逆浸透膜装置の処理水を強塩基性イオン交換装置に通水させて、超純水を得る。
【0050】
以下、本実施形態の水処理方法について、
図1に示した超純水製造システム10を用いる場合を例に、以下説明する。
【0051】
まず、原水(被処理水)に対して、第1のpH調整を行う。このpH調整は、第1のpH調整手段11から原水にアルカリ溶液を添加して所望のpHとするものである。ここで調整するpHは、後段の弱酸性イオン交換装置12において硬度スケールが生じない範囲のpHに調整する。このときのpHは、原水をアルカリ性とすればよく、pHが8~9.5程度とするのが好ましい。なお、上記超純水製造システム10において説明したように、この第1のpH調整は必要に応じて行えばよく、必須の構成ではない。
【0052】
この第1のpH調整は、超純水製造システムで記載したように、調整槽とポンプの構成を有する第1のpH調整手段11で行ってもよいし、第2の逆浸透膜装置17の濃縮水やその他のアルカリ溶液を循環させて原水のpHを調整する構成としてもよい。
【0053】
次に、pH調整された原水は、弱酸性イオン交換装置12(WC)に供給され、通水処理される。これにより、原水は弱酸性カチオン交換樹脂と接触し、原水中に含まれるCa2+やMg2+等の硬度成分とカチオン交換樹脂のH+又はNa+とがイオン交換され、被処理水から硬度成分が除去される。
【0054】
弱酸性カチオン交換樹脂は、上記の超純水製造システムで説明したように、硬度成分に対する選択性が大きく、交換容量が大きいことから硬度成分のイオンのリーク量を大幅に低減させることができる。このとき硬度成分のリーク量は、例えば、1mg/L as CaCO3以下にまで低減することが好ましい。さらに、再生頻度を少なくすることができ、容易に再生することが可能で、再生コストを安価にできる。
【0055】
なお、この弱酸性カチオン交換樹脂の再生は、通常、再生式のイオン交換装置に対して、公知の再生方法により行えばよい。すなわち、弱酸性カチオン交換樹脂が、Ca又はMg型にイオン交換されているため、これをH型又はNa型に戻す操作を行う。
【0056】
H型に戻すには、イオン交換容器内に塩酸、硫酸等の強酸を供給して、弱酸性カチオン交換樹脂と接触させてH型とすればよい。
【0057】
また、Na型に戻すには、イオン交換容器内に塩化ナトリウム等のナトリウム塩や、水酸化ナトリウム等を供給して、弱酸性カチオン交換樹脂と接触させるか、上記のように一旦H型にした後、次いで、塩化ナトリウム等のナトリウム塩、水酸化ナトリウム等を供給して、弱酸性カチオン交換樹脂と接触させるか、のいずれかの手法を行えばよい。
【0058】
再生効率や使用する薬液の量が少なくて済むことから、一旦H型とした後、Na型とする方法が好ましい。
【0059】
なお、再生にあたっては、再生薬液を弱酸性イオン交換装置12の被処理水の流れと同一方向に流す並流、再生薬液を弱酸性イオン交換装置12の被処理水の流れと反対方向に流す向流、のいずれかで行うことができるが、弱酸性イオン交換樹脂の膨張率が大きいため、再生工程がシンプルな並流再生が好ましい。
【0060】
次に、弱酸性イオン交換装置12で得られた処理水に対して、第2のpH調整を行う。このpH調整は、第2のpH調整手段13から該処理水に酸溶液を添加して所望のpHとするものである。ここで調整するpHは、該処理水に残留しており硬度スケールの原因となるM-Alkが炭酸ガスになり、後段の脱炭酸装置14において炭酸ガスとなったM-Alkを除去できる範囲のpHとすればよく、例えば、pH2~6の酸性とすることが好ましく、さらにpH4~6とすることがより好ましい。
【0061】
次いで、pH調整された処理水を被処理水として、これを脱炭酸装置14(DG)に通水処理させる。この被処理水は、その前段で、大部分の硬度成分が除去され、pHが調整されたもので、この脱炭酸装置14により該被処理水中に溶解している炭酸ガスが効果的に除去される。処理水の炭酸濃度は10mg/L以下が好ましく、6mg/L以下がより好ましい(M-Alk濃度としては、1.0mg/L as CaCO3以下が好ましく、0.6mg/L as CaCO3以下がより好ましい)。
【0062】
脱炭酸装置14の脱炭酸処理により得られた処理水は、そのまま、被処理水として、第1の逆浸透膜装置15(RO1)に供給され、通水処理されて、被処理水中に残存する有機不純物や塩類が除去される。
【0063】
本実施形態においては、その前段で、Ca2+やMg2+等のイオン状物質や炭酸成分が大部分除去されているため、この逆浸透膜装置15にかかる負荷を低減しつつ、被処理水中に残存する有機不純物や塩類を効果的に除去することができる。ただし、弱酸性イオン交換装置12のCa2+やMg2+等の除去能力は、第2の逆浸透膜装置17がスケーリングせずに運転できる条件を満たすに十分ではないので、第1の逆浸透膜装置15においてCa2+やMg2+等を十分除去することが大切である。また、ここではボロンの除去能は低いが、被処理水の高いボロン濃度から、目的とする超純水の要求水質を満たすためには、この除去率も無視できない。
【0064】
この第1の逆浸透膜装置15の処理水の水質としては、例えば、硬度成分を0.01mg/L as CaCO3以下とすることが好ましい。さらに、この水質としては、TDSを10mg/L以下、M-Alkを0.05mg/L as CaCO3以下、ボロンを0.1mg/L以下にまで低減することが好ましい。
【0065】
第1の逆浸透膜装置15では、逆浸透膜処理により透過水(処理水)と濃縮水とが得られるが、濃縮水は排水処理されるか又は再生用水として必要な処理を行い、他用途の水として再利用される。
【0066】
次に、第1の逆浸透膜装置15で得られた処理水に対して第3のpH調整を行う。このpH調整は、第3のpH調整手段16から該処理水にアルカリ溶液を添加して所望のpHとするものである。ここで調整するpHは、後段の第2の逆浸透膜装置17においてボロンを有効に除去できる範囲のpH、例えば、pH10~11程度とするのが好ましく、pH10.5~11とするのがより好ましい。
【0067】
次いで、pH調整された処理水を被処理水として、第2の逆浸透膜装置17(RO2)に供給して、通水処理する。これにより、被処理水と第2の逆浸透膜装置17が接触し、被処理水中に含まれるボロンが十分に低減された濃度にまで除去される。
【0068】
なお、ボロンを十分に除去するために、この第2の逆浸透膜装置17に供給する被処理水は、その硬度成分を十分に低減してスケールを生じさせないようにしておく必要があり、この被処理水の硬度成分の濃度は0.1mg/L as CaCO3以下とする。このような硬度成分を十分に除去した被処理水を得るには、上記説明した第1のpH調整手段11、弱酸性イオン交換装置12、第2のpH調整手段13、脱炭酸装置14、第1の逆浸透膜装置15、の順番に処理する本実施形態の構成が非常に効果的である。
【0069】
また、この第2の逆浸透膜装置17の濃縮水は、ボロンを濃縮して含有し、これを系外に排出して排液として処理する。なお、超純水製造システムの説明で記載したように、この濃縮水の一部を、弱酸性イオン交換装置12の前段に循環させ、原水のpH調整(第1のpH調整)のためのアルカリ溶液として用いてもよい。
【0070】
この第2の逆浸透膜装置17では、ボロンが十分に低減された濃度にまで除去され、この第2の逆浸透膜装置17におけるボロンの除去率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0071】
この第2の逆浸透膜装置17の処理水の水質としては、例えば、ボロンを0.002mg/L以下とすることが好ましい。さらに、この水質としては、TDSを1mg/L以下、M-Alkを0.01mg/L as CaCO3以下、硬度成分を0.005mg/L as CaCO3以下にまで低減することが好ましい。
【0072】
次に、第2の逆浸透膜装置17で得られた処理水を被処理水として、強塩基性イオン交換樹脂18(SA)で通水処理させる。この強塩基性イオン交換樹脂18では、OH型の強塩基性カチオン交換樹脂が、さらに被処理水中に微量含まれるボロンを除去して、本実施形態の要求水準所望の濃度(ボロン濃度が0.01μg/L以下(10ppt以下))にまで低減することができ、所望の水質の超純水が得られる。
【0073】
以上のような、処理順序及び処理条件とすることにより、TDSや硬度成分に加え、ボロンが非常に低減した超純水を効率的に製造することができる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明は、この実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよいし、上記実施形態に開示した複数の構成要素を適宜組み合わせることも可能である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明について実施例及び比較例を参照しながら説明する。なお、実施例及び比較例で用いた装置について、まず説明する。
【0076】
[弱酸性イオン交換装置12]
内径2200mmの樹脂塔に、使用樹脂として弱酸性カチオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:WK60L)を4900L充填した。この樹脂塔を、2塔通水、1塔待機の仕様で用意した。樹脂層高1300mmである。
【0077】
[脱炭酸装置14]
内径2000mmの脱気塔(野村マイクロ・サイエンス株式会社製、型式:DGH-200)を用意した。
【0078】
[第1の逆浸透膜装置15]
逆浸透膜モジュール(デュポン製、商品名:BW30XFR-400/34i)を228本備えた逆浸透膜装置を第1の逆浸透膜装置として用いた。
【0079】
[第2の逆浸透膜装置17]
逆浸透膜モジュール(デュポン製、商品名:BW30XFR-400/34i)を192本備えた逆浸透膜装置を第2の逆浸透膜装置として用いた。
【0080】
[強塩基性イオン交換装置18]
内径2000mmの樹脂塔に、使用樹脂として強塩基性アニオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:UBA120OHUP)を4860L充填した。この樹脂塔を、3塔通水の使用で用意した。樹脂層高1550mmである。
【0081】
[pH調整手段]
pH調整手段としては、それぞれ、pH調整用のアルカリ溶液又は酸溶液を収容する容器と、その容器から薬注ポンプで、処理水が通水する配管内に所定のpHとなるように添加できる構成とした。このとき、pHメーターによりpH調整後のpHを測定、確認して、添加量を調整できる仕様とした。
【0082】
第1のpH調整手段11と第3のpH調整手段16は、水酸化ナトリウム溶液を、第2のpH調整手段13は、硫酸溶液を、それぞれ添加してpH調整を行うものとした。
【0083】
[強塩基性イオン交換装置(比較例2で使用)]
内径2200mmの樹脂塔に、使用樹脂として強塩基性カチオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:UBA120OH)を4900L充填した。この樹脂塔を、2塔通水、1塔待機の仕様で用意した。樹脂層高1300mmである。
【0084】
[強酸性イオン交換装置]
内径2200mmの樹脂塔に、使用樹脂として強酸性カチオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名:UBK08H)を4900L充填した。この樹脂塔を、2塔通水、1塔待機の仕様で用意した。樹脂層高1300mmである。
【0085】
(実施例1)
TDS 600mg/L、M-Alk 120mg/L as CaCO
3、硬度成分 150mg/L as CaCO
3、ボロン 0.15mg/Lを含有する水を被処理水(原水)として、
図1に示した装置構成である超純水システムを用いて、装置の処理流量を280m
3/hで通水処理を行った。
【0086】
すなわち、この実施例における装置構成は、第1のpH調整手段11、弱酸性イオン交換装置12、第2のpH調整手段13、脱炭酸装置14、第1の逆浸透膜装置15、第3のpH調整手段16、第2の逆浸透膜装置17、強塩基性イオン交換装置18、をこの順番に有してなる。
【0087】
各処理装置における処理水の水質を調べ、表1にまとめて示した。この超純水製造装置で処理して得られた超純水は、不純物を非常に低減できており、良好な水質を有するものであることを確認した。なお、被処理水として示したpHは、第1のpH調整手段によりpH調整した後の水質を示している。
【0088】
また、その後継続して4週間水処理を行い、SA処理水として水質を維持できていることも確認した。このとき、弱酸性イオン交換装置12の再生頻度は、15h/cycleであった。
さらに継続して通算1年間水処理を行った後も問題は起きず、表1の水質が維持できていることを確認した。
【0089】
【0090】
(比較例1)
弱酸性イオン交換装置12を、強酸性イオン交換装置に替えた以外は、実施例1と同一の構成を有する装置を用いて、実施例1と同様に処理を行った。
【0091】
同様に各処理装置における処理水の水質を調べ、表2にまとめて示した。この超純水製造装置で処理して得られた超純水は、不純物を非常に低減できており、良好な水質を有するものであることを確認した。
【0092】
ただし、その後継続して数日水処理を行ったところ、実際の再生操作は実施例1の3~4倍必要となり、再生が追い付かなくなった。このとき、強酸性イオン交換装置の再生頻度は、4~6h/cycleであった。
【0093】
なお、再生が追い付かないため、実施例1と再生頻度を同等にしようとすると、樹脂塔サイズ及び使用樹脂量を増やす必要があり、超純水製造装置としての現実的な大きさではなくなることが想定される。例えば、樹脂塔の樹脂充填量は、実施例1と同等の再生頻度とする(樹脂量を3倍にする)場合、樹脂量は22000Lとなる。樹脂層高を実施例と同じ1300mmとすると、塔内径は、4700mmとなる。この内径のタンクを道路輸送する場合、交通の妨げとなる大きさであることがわかる。また、このような樹脂塔の場合、塔自体の強度や、塔製造に関する技術的問題も発生する。また、樹脂塔の圧力損失が問題となるので、樹脂層を高くして対応することも困難である。すなわち、非現実的な樹脂塔となることがわかる。
【0094】
【0095】
(比較例2)
弱酸性イオン交換装置12を、強酸性イオン交換装置に替え、第1の逆浸透膜装置15を、強塩基性イオン交換装置に替えた以外は、実施例1と同一の構成を有する装置を用いて、実施例1と同様に処理を行った。
【0096】
同様に各処理装置における処理水の水質を調べ、表3にまとめて示した。この超純水製造装置で処理して得られた超純水は、不純物を非常に低減できており、良好な水質を有するものであることを確認した。
【0097】
ただし、比較例1と同様に、その後継続して数日水処理を行ったところ、強酸性イオン交換装置及び強塩基性イオン交換装置の再生操作が実施例1の3~4倍必要となり、再生が追い付かなくなった。この比較例の場合も、比較例1と同様に、樹脂塔の樹脂量を多くして対応を試みる場合、樹脂塔の大きさが非現実的な大きさとなるため、実現は困難である。
【0098】
【0099】
(比較例3)
第1の逆浸透膜装置15を設けなかったこと以外は、実施例1と同一の構成を有する装置を用いて、実施例1と同様に処理を行った。
【0100】
同様に各処理装置における処理水の水質を調べ、表4にまとめて示した。この超純水製造装置で処理して得られた超純水は、不純物を非常に低減できており、良好な水質を有するものであることを確認した。
【0101】
ただし、その後継続して6ヶ月水処理を行ったところ、第2の逆浸透膜装置17の差圧が急上昇したため、運転を中止した。差圧の上昇は、硬度スケールの発生が激しかったことが原因であることを確認した。
【0102】
【0103】
(比較例4)
第2のpH調整手段16を設けなかったこと以外は、実施例1と同一の構成を有する装置を用いて、実施例1と同様に処理を行った。
【0104】
同様に各処理装置における処理水の水質を調べ、表5にまとめて示した。この超純水製造装置で処理して得られた超純水は、不純物を非常に低減できており、良好な水質を有するものであることを確認した。
ただし、強塩基性イオン交換装置18のボロン除去の負荷が大きいため、実施例1に比べて5倍の頻度で再生が必要であることを確認した。
【0105】
【0106】
(比較例5)
弱酸性イオン交換装置12及び脱炭酸装置14を設けなかったこと以外は、実施例1と同一の構成を有する装置を用いて、実施例1と同様に処理を行った。
【0107】
同様に各処理装置における処理水の水質を調べ、表6にまとめて示した。この超純水製造装置で処理して得られた超純水は、不純物を非常に低減できており、良好な水質を有するものであることを確認した。
【0108】
ただし、その後継続して6ヶ月水処理を行ったところ、第1の逆浸透膜装置15及び第2の逆浸透膜装置17の差圧が急上昇したため、運転を中止した。差圧の上昇は、硬度スケールの発生が激しかったことが原因であることを確認した。
【0109】
【0110】
なお、上記実施例及び比較例で水質の測定は以下のように行った。
[pH]CP-200(Horiba社製、商品名)を用いてpHを測定した。
[TDS]ES-70(Horiba社製、商品名)を用いてTDS濃度を測定した。
【0111】
[M-Alk]JIS K0101に基づく滴定法によりM-Alkを測定した。
[硬度]ポータブル全硬度計 HI96735(ハンナ インスツルメンツ社製、商品名)を用いて硬度を測定した。
[ボロン]サンプリングして誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)による分析を行い、ボロン濃度を算出した。
【0112】
以上より、本実施形態の超純水製造システム及び超純水製造方法は、不純物濃度の高い原水を用いた場合でも、特にボロン濃度を著しく低減させた所定の水質を有する超純水を、簡易な装置構成で、かつ、効率的に得られることがわかった。また、所定の水質の超純水を長期間安定して得られる優れたシステム及び方法であることがわかった。
【符号の説明】
【0113】
10…超純水製造システム、11…第1のpH調整手段、12…弱酸性イオン交換装置、13…第2のpH調整手段、14…脱炭酸装置、15…第1の逆浸透膜装置、16…第3のpH調整手段、17…第2の逆浸透膜装置、18…強塩基性イオン交換装置