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特許7261714インクジェットプリンタ及び両面印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ及び両面印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 15/04 20060101AFI20230413BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230413BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20230413BHJP
   B41J 3/60 20060101ALI20230413BHJP
   B41J 15/16 20060101ALI20230413BHJP
   B65H 18/02 20060101ALI20230413BHJP
   B65H 16/02 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B41J15/04
B41J2/01 103
B41J2/01 305
B41J2/01 301
B41J29/00 A
B41J3/60
B41J15/16
B65H18/02
B65H16/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019176439
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021053820
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】原山 隆太
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-091968(JP,A)
【文献】特開2008-126530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21 -2/215
15/00-15/24
29/00-29/70
B65H 18/00-18/28
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドと、当該インクジェットヘッドの真下の印刷領域に記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えるインクジェットプリンタであって、
前記搬送手段は、巻回された前記記録媒体を前記印刷領域に繰り出す繰出ローラ、及び前記印刷領域で印刷された前記記録媒体を巻き取る巻取ローラを有し、
前記印刷領域は、前記記録媒体の搬送方向上流側に設けられて前記繰出ローラから繰り出された前記記録媒体が搬入される搬入部、及び当該搬入部から搬入されて一方の面に印刷が行われた前記記録媒体の搬送方向下流側に設けられる搬出部を有し、
前記一方の面に印刷が行われて前記巻取ローラに巻き取られた前記記録媒体の終端部を前記搬入部から前記印刷領域に搬入させ、前記記録媒体の他方の面に印刷が行われた後、前記搬出部から搬出された前記記録媒体を前記繰出ローラに巻き取らせ
前記巻取ローラ及び前記繰出ローラは、何れも前記印刷領域より重力方向の下方に設けられ、
前記他方の面に印刷する際に、前記記録媒体は下方から前記搬入部へ搬入される、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記記録媒体は、前記搬入部に搬入される前に前記印刷領域の下方を通過する、請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記繰出ローラの回転中心と前記巻取ローラの回転中心は、重力方向において離間した位置に配置されている、請求項1又は2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記繰出ローラの回転中心と前記巻取ローラの回転中心とは、重力方向と直交する水平方向において同じ位置に配設される、
請求項1からの何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記繰出ローラと前記巻取ローラとは、何れも前記印刷領域より前記搬出部側に偏って配設されている、
請求項1からの何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
インクジェットヘッドと、当該インクジェットヘッドの真下の印刷領域に記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えるインクジェットプリンタによる両面印刷方法であって、
前記記録媒体が巻回され、前記印刷領域より下方に設けられた繰出ローラから前記印刷領域に前記記録媒体を繰り出し、前記印刷領域において前記記録媒体の一方の面に印刷が行われた前記記録媒体を、前記印刷領域より下方に設けられた巻取ローラで巻き取る第1工程と、
前記一方の面の印刷の時点から前記繰出ローラ及び前記巻取ローラの位置を変更することなく、前記一方の面に印刷が行われて前記巻取ローラに巻き取られた前記記録媒体の終端部を、前記印刷領域の搬送方向上流側に設けられた搬入部から前記印刷領域に搬入させ、かつ前記印刷領域の搬送方向下流側に設けられた搬出部を通過させて前記繰出ローラに取り付ける第2工程と、
前記記録媒体の他方の面に印刷を行い、前記他方の面に印刷が行われて前記搬出部から搬出された前記記録媒体を前記繰出ローラで巻き取る第3工程と、
を有し、
前記第2工程では、前記記録媒体を下方から前記搬入部に搬入する両面印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ及び両面印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続紙等のロール状とされた記録媒体(メディアともいう。)を印刷するための印刷装置は、記録媒体が繰出ローラから繰り出されて印刷が行われた後に、巻取ローラに巻き取られる。そして、このような連続した記録媒体に対しても両面印刷を行うことが求められている。
【0003】
図8は、ロール状のメディア104に印刷を行う従来の印刷装置100を示している。印刷装置100は、印刷装置100の前後方向に配設されている2つのローラ102A,102Bによってメディア104を繰り出し又は巻き取りながら、プラテン106上のメディア104に対してインクジェットヘッド108からインクを吐出することで印刷を行う。このような印刷装置100で両面印刷を行うためには、メディア104の一方の面への印刷が終了すると、ローラ102A,102Bの配設位置を逆とし、かつメディア104の他方の面をインクジェットヘッド108に対向させるとのような、ローラ102A,102Bの載せ替え工程を必要とする。
【0004】
このように、図8に示されるような印刷装置100では、両面印刷を行うためには2つのローラ102A,102Bを印刷装置100から取り外し、前後逆にして印刷装置100に載せ替えが必要であり、作業者による作業負担が大きい。
【0005】
そこで、特許文献1には、両面印刷を行うインクジェットプリンタとして、連続紙が上を向いた状態で第1紙送り経路に沿って紙送りされ、第1プリントヘッド部で表面が印刷された後、連続紙の裏面がターンバーに接した状態で上流側から下流側に向けて折り返して紙送りされ、連続紙の裏面が上を向いた状態で第2紙送り経路に沿って紙送りされることによって、第2プリントヘッド部で裏面を印刷する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-11452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているインクジェットプリンタでは、プリントヘッドを2つ必要とする等、インクジェットプリンタの部品点数も多く、その構成も複雑となる。
【0008】
そこで本発明は、ロール状とされた記録媒体であっても簡易な構成で作業負担を少なく両面印刷が行えるインクジェットプリンタ及び両面印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドと、当該インクジェットヘッドの真下の印刷領域に記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えるインクジェットプリンタであって、前記搬送手段は、巻回された前記記録媒体を前記印刷領域に繰り出す繰出ローラ、及び前記印刷領域で印刷された前記記録媒体を巻き取る巻取ローラを有し、前記印刷領域は、前記記録媒体の搬送方向上流側に設けられて前記繰出ローラから繰り出された前記記録媒体が搬入される搬入部、及び当該搬入部から搬入されて一方の面に印刷が行われた前記記録媒体の搬送方向下流側に設けられる搬出部を有し、前記一方の面に印刷が行われて前記巻取ローラに巻き取られた前記記録媒体の終端部を前記搬入部から前記印刷領域に搬入させ、前記記録媒体の他方の面に印刷が行われた後、前記搬出部から搬出された前記記録媒体を前記繰出ローラに巻き取らせる。
【0010】
本構成によれば、一方の面に印刷が行われて巻取ローラに巻き取られた記録媒体の終端部を印刷領域の搬入部から搬入させ、この記録媒体を繰出ローラが巻き取るように、記録媒体の終端部を繰出ローラに取り付ける。そして、一方の面に印刷が行われた記録媒体の他方の面に印刷が行われる。このような構成によれば、一方の面に印刷が行われた記録媒体の引き回しを変更することで、巻取ローラと繰出ローラとを載せ換えることなく記録媒体に対する両面印刷が可能となるので、簡易な構成で作業負担が少なく両面印刷を行える。
【0011】
本発明のインクジェットプリンタによれば、前記繰出ローラの回転中心を通過する仮想的な第1直線と前記巻取ローラの回転中心を通過する仮想的な第2直線とが平行であり、前記繰出ローラの回転中心と前記巻取ローラの回転中心は、前記第1直線及び前記第2直線に対して直交する方向に離間してもよい。
【0012】
本構成によれば、繰出ローラと巻取ローラとを載せ替えることなく、記録媒体の引き回しを変更するだけで両面印刷を可能にできる。
【0013】
本発明のインクジェットプリンタによれば、前記繰出ローラの回転中心と前記巻取ローラの回転中心は、重力方向に離間してもよい。
【0014】
本構成によれば、繰出ローラと巻取ローラとを載せ替えることなく、記録媒体の引き回しを変更するだけで両面印刷を可能にできる。
【0015】
本発明のインクジェットプリンタによれば、前記繰出ローラ及び前記巻取ローラは、前記インクジェットヘッドの重力方向下方に配設され、前記繰出ローラの回転中心と前記巻取ローラの回転中心とが重力方向に重なるように配設されてもよい。
【0016】
本構成によれば、繰出ローラと巻取ローラとが上下方向に配設されることになる。このため、インクジェットプリンタの前後方向の何れか一方向から作業を行うことにより、両面印刷を行うための記録媒体の引き回しの変更を行える。
【0017】
本発明のインクジェットプリンタによれば、前記繰出ローラと前記巻取ローラとは、前記インクジェットヘッドに対して前記搬出部側に偏って配設されてもよい。
【0018】
本構成によれば、繰出ローラと巻取ローラとがインクジェットプリンタの前方に配設されることになる。これにより、インクジェットプリンタの前方向から作業を行うことにより、両面印刷を行うための記録媒体の引き回しの変更を行え、かつインクジェットプリンタの後ろ側に両面印刷を行うための作業スペースを設ける必要が無くなり、インクジェットプリンタの配設位置の自由度が増す。
【0019】
本発明の両面印刷方法は、インクジェットヘッドと、当該インクジェットヘッドの真下の印刷領域に記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えるインクジェットプリンタによる両面印刷方法であって、前記記録媒体が巻回された繰出ローラから前記印刷領域に前記記録媒体を繰り出し、前記印刷領域において前記記録媒体の一方の面に印刷が行われた前記記録媒体を巻取ローラで巻き取る第1工程と、前記一方の面に印刷が行われて前記巻取ローラに巻き取られた前記記録媒体の終端部を、前記印刷領域の搬送方向上流側に設けられた搬入部から前記印刷領域に搬入させ、かつ前記印刷領域の搬送方向下流側に設けられた搬出部を通過させて前記繰出ローラに取り付ける第2工程と、前記記録媒体の他方の面に印刷が行われて前記搬出部から搬出された前記記録媒体を前記繰出ローラで巻き取る第3工程と、を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、ロール状とされた記録媒体であっても簡易な構成で作業負担を少なく両面印刷が行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のインクジェットプリンタの概略側面図である。
図2】本実施形態のインクジェットプリンタによる両面印刷を行う場合におけるインクジェットプリンタの動作を示す概略図であり、(A)は表面印刷を行う場合を示し、(B)は裏面印刷を行う場合を示す。
図3】本実施形態の繰出ローラと巻取ローラの配設位置を示す概略図であり、(A)は繰出ローラと巻取ローラの配設例であり、(B)は繰出ローラと巻取ローラの他の配設例である。
図4】本実施形態のインクジェットプリンタによる両面印刷の工程を示すフローチャートである。
図5】他の実施形態のインクジェットプリンタによる両面印刷を行う場合におけるインクジェットプリンタの動作を示す概略図であり、(A)は表面印刷を行う場合を示し、(B)は裏面印刷を行う場合を示す。
図6】他の実施形態のインクジェットプリンタによる両面印刷を行う場合におけるインクジェットプリンタの動作を示す概略図であり、(A)は表面印刷を行う場合を示し、(B)は裏面印刷を行う場合を示す。
図7】他の実施形態のインクジェットプリンタによる両面印刷を行う場合におけるインクジェットプリンタの動作を示す概略図であり、(A)は表面印刷を行う場合を示し、(B)は裏面印刷を行う場合を示す。
図8】従来のインクジェットプリンタの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態のインクジェットプリンタ及び両面印刷方法について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本実施形態のインクジェットプリンタ1の概略側面図である。
【0024】
インクジェットプリンタ1は、図1に示すように、ロール状とされた記録媒体(以下「メディア」という。)10に印刷を行う装置であり、インクジェットヘッド12、搬送部14、及び制御部16を備える。なお、メディア10は、例えば、印刷用紙、布帛又は樹脂製のフィルム等である。
【0025】
インクジェットプリンタ1は、Z軸方向に立設して設けられたスタンド2を備え、スタンド2の上方には印刷対向部18が備えられる。印刷対向部18の上面は、印刷が行われるメディア10が載置されるプラテン20が設けられている。
【0026】
インクジェットヘッド12は、印刷対向部18(プラテン20)よりも上方に設けられ、印刷対向部18とZ軸方向で対向している。インクジェットヘッド12は、インクジェットヘッド12の直下の印刷領域22に搬送されるメディア10に対して、画像データに基づいてY軸方向(主走査方向)に移動しながらインクを吐出することで印刷を行う。なお、印刷領域22におけるメディア10の搬送方向であるX軸方向を副走査方向又は前後方向ともいい、Z軸方向を上下方向又は重力方向ともいう。
【0027】
インクジェットプリンタ1の上部、すなわち図1に示されるように、インクジェットヘッド12、制御部16、印刷対向部18は、一例として、筐体部29によって覆われる。筐体部29は、開閉可能とされており、インクジェットプリンタ1のメンテナンス等に応じて開閉される。
【0028】
搬送部14は、インクジェットヘッド12の真下の印刷領域22にメディア10を搬送する手段であり、繰出ローラ30、巻取ローラ32、搬出誘導部34、折返部36、及び挟持搬送ローラ38を備える。なお、メディア10の搬送方向上流側から、繰出ローラ30、折返部36、挟持搬送ローラ38、プラテン20、搬出誘導部34、巻取ローラ32とのように各構成部分が配設される。
【0029】
繰出ローラ30は、ロール保持部40Aに保持され、巻回されたメディア10を印刷領域22に繰り出す。巻取ローラ32は、ロール保持部40Bに保持され、印刷領域22で一方の面に印刷が行われたメディア10を巻き取る。
【0030】
なお、本実施形態の印刷領域22において、メディア10の搬送方向上流側に設けられて、繰出ローラ30から繰り出されたメディア10が搬入される部分を搬入部22Aという。また、本実施形態の印刷領域22において、搬入部22Aから搬入されて一方の面に印刷が行われたメディア10の搬送方向下流側に設けられる部分を搬出部22Bという。
【0031】
本実施形態の繰出ローラ30及び巻取ローラ32は、インクジェットヘッド12の重力方向下方(Z軸方向下方)に配設され、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aとが重力方向に重なるように配設される(図3参照)。また、本実施形態の繰出ローラ30及び巻取ローラ32は、インクジェットヘッド12に対して搬出部22Bの側に偏って配設されている。すなわち、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、インクジェットプリンタ1の正面の下方に繰出ローラ30が配設され、その上方に巻取ローラ32が配設される。なお、本実施形態の繰出ローラ30及び巻取ローラ32の配設位置の詳細は後述する。
【0032】
搬出誘導部34は、印刷対向部18の前方側に設けられ、印刷対向部18の上面の前方側から巻取ローラ32に向かう経路に沿って滑らかな曲線面を有し、この曲線面に複数のローラ35が配設される。搬出誘導部34は、インクジェットヘッド12によって印刷が行われた後のメディア10を、複数のローラ35によって巻取ローラ32へ誘導する。なお、搬出誘導部34は、その曲線面にローラ35が配設されなくてもよい。
【0033】
折返部36は、メディア10の搬送経路における繰出ローラ30と巻取ローラ32との間に設けられ、メディア10の搬送方向を変化させる。なお、本実施形態の折返部36は、一例として、挟持搬送ローラ38の上流側であって、プラテン20と略同じ高さに配設される。なお、本実施形態の折返部36は、一例として、ローラとされる。
【0034】
本実施形態のインクジェットプリンタ1は、繰出ローラ30がインクジェットプリンタ1の前方下側に配設されているため、繰出ローラ30から繰り出されるメディア10は一旦、インクジェットプリンタ1の前方下側から上方後方へ向けて搬送される。そして、メディア10がインクジェットプリンタ1の後方から前方へ、すなわち、印刷領域22の搬入部22Aへ搬送されるように、メディア10は折返部36によってその搬送方向が変更される。
【0035】
なお、繰出ローラ30から折返部36に向かうメディア10の搬送経路には、メディア10の引き回しを簡略化するためのガイドレール40,42が設けられてもよい。繰出ローラ30から繰り出されたメディア10は、折返部36までガイドレール40,42に沿って搬送される。
【0036】
挟持搬送ローラ38は、印刷対向部18の後方側に設けられ、繰出ローラ30から繰り出されたメディア10を挟持しながら回転することで、メディア10を印刷領域22へ搬送する。
【0037】
制御部16は、入力される画像データに基づいてインクジェットヘッド12によるインク吐出動作を制御すると共に、繰出ローラ30、巻取ローラ32、搬出誘導部34、及び挟持搬送ローラ38の回転動作を制御することで、メディア10に対する印刷を実行する。
【0038】
ここで、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、メディア10の一方の面(以下「表面」という。)だけでなく、メディア10の他方の面(以下「裏面」という。)にも印刷を行う、いわゆる両面印刷を可能とする。
【0039】
本実施形態のインクジェットプリンタ1では両面印刷を行うために、表面印刷が行われて巻取ローラ32に巻き取られたメディア10の終端部を搬入部22Aから印刷領域22に搬入させ、メディア10の裏面に印刷が行われた後、搬出部22Bから搬出されたメディア10を繰出ローラ30に巻き取らせる。
【0040】
図2は、本実施形態のインクジェットプリンタ1による両面印刷を行う場合におけるインクジェットプリンタ1の動作を示す概略図である。なお、図2及び後述する図3,5~7では、インクジェットプリンタ1を構成する部材のうち、印刷対向部18や挟持搬送ローラ38等、これらの図を用いた説明に要しない部材を適宜省略し、また、図示されている部材は説明が理解され易いように大きさ等が図1とは異なるものとされている。
【0041】
図2(A)はメディア10に対して表面印刷を行う場合を示しており、上述のように、繰出ローラ30から繰り出されたメディア10は、折返部36でその搬送方向が斜め上方から前方向へ折り返されることで、印刷領域22へ搬送されることでインクジェットヘッド12からインクが吐出されて表面印刷が行われ、巻取ローラ32に巻き取られる。
【0042】
一方、図2(B)はメディア10に対して裏面印刷を行う場合を示しており、本実施形態のインクジェットプリンタ1では、表面印刷が行われたメディア10を巻取ローラ32及び繰出ローラ30から取り外し、メディア10の終端部を搬入部22Aから搬入させる。これにより、印刷領域22に搬送されるメディア10は、裏面がインクジェットヘッド12に対向するようになる。そして、巻取ローラ32からメディア10が繰り出されて裏面印刷が行われたメディア10を繰出ローラ30が巻き取るように、メディア10の終端部が繰出ローラ30に取り付けられる。
【0043】
すなわち、本実施形態のインクジェットプリンタ1による裏面印刷を行う場合には、巻取ローラ32がメディア10を繰り出し、折返部36によってメディア10の搬送方向が変化され、印刷領域22でメディア10の裏面に印刷が行われた後に、繰出ローラ30によってメディア10が巻き取られる。
【0044】
このように本実施形態のインクジェットプリンタ1は、表面印刷が行われたメディア10の引き回しを変更することで、巻取ローラ32と繰出ローラ30とを載せ換えることなくメディア10に対する両面印刷が可能となるので、簡易な構成で作業負担が少なく両面印刷を行える。
【0045】
なお、裏面印刷を行う場合において繰出ローラ30の回転方向は、表面印刷を行う場合における回転方向とは逆方向である。一例として、繰出ローラ30は、表面印刷の場合に時計回り(CW)に回転してメディア10を繰り出し、裏面印刷の場合には反時計回り(CCW)に回転してメディア10を巻き取る。一方、巻取ローラ32の回転方向は、表面印刷の場合でも裏面印刷の場合でも同じである。
【0046】
すなわち、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、裏面印刷を行う場合に、巻取ローラ32が表面印刷後のメディア10を繰り出し、繰出ローラ30が逆回転して裏面印刷後のメディア10を巻き取る、とのように表面印刷と裏面印刷とでは繰出ローラ30と巻取ローラ32の機能が変化する。
【0047】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、印刷領域22の搬入部22Aよりもメディア10の搬送方向上流側に折返部36が配設されることによって、繰出ローラ30と巻取ローラ32の配設位置にかかわらず、メディア10を印刷領域22へ搬送可能となる。
【0048】
次に、図3を参照して、繰出ローラ30と巻取ローラ32の配設位置を説明する。
【0049】
図3(A)に示されるように、繰出ローラ30の回転中心30Aを通過する仮想的な第1直線50と、巻取ローラ32の回転中心32Aを通過する仮想的な第2直線52が設定され、この第1直線50と第2直線52とは平行とされる。そして、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aは、第1直線50及び第2直線52に対して直交する方向に離間する。
【0050】
本実施形態では、第1直線50と第2直線52とは、印刷領域22(プラテン20の上面)、換言するとXY平面に平行とされる。そして、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aは、重力方向(Z軸方向)に離間している。すなわち、繰出ローラ30と巻取ローラ32は、上下方向に離間している。
【0051】
このような構成によれば、繰出ローラ30と巻取ローラ32とを載せ替えることなく、メディア10の引き回しを変更するだけで両面印刷を可能にできる。
【0052】
そして、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、繰出ローラ30及び巻取ローラ32がインクジェットヘッド12の重力方向下方に配設され、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aとが重力方向に重なるように配設される。
【0053】
すなわち、繰出ローラ30と巻取ローラ32とは上下方向に配設されることになる。このため、インクジェットプリンタ1の前後方向の何れか一方向から作業を行うことにより、両面印刷を行うためのメディア10の引き回しの変更を行える。
【0054】
さらに、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、繰出ローラ30と巻取ローラ32とは、インクジェットヘッド12に対して搬出部22Bの側に偏って配設されている。これにより、繰出ローラ30と巻取ローラ32とがインクジェットプリンタ1の前方に配設されることになる。従って、インクジェットプリンタ1の前方向から作業を行うことにより、両面印刷を行うためのメディア10の引き回しの変更を行え、かつインクジェットプリンタ1の後ろ側に両面印刷を行うための作業スペースを設ける必要が無くなるので、インクジェットプリンタ1の配設位置の自由度が増す。
【0055】
なお、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aは、第1直線50と第2直線52に対して直交する方向に離間していればよく、図3(B)に示されるように、繰出ローラ30と巻取ローラ32とはインクジェットプリンタ1の前後方向に離間してもよい。図3(B)の例では、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aとを重力方向に重なるように配設するものではないので、繰出ローラ30と巻取ローラ32の配設位置の自由度が増す。
【0056】
図4は、本実施形態のインクジェットプリンタ1による両面印刷の工程を示すフローチャートである。
【0057】
まず、ステップS100では、インクジェットプリンタ1がメディア10に対して表面印刷を行う。具体的には、インクジェットプリンタ1は、メディア10が巻回された繰出ローラ30から印刷領域22にメディア10を繰り出し、印刷領域22においてメディア10の表面に印刷を行い、印刷後のメディア10を巻取ローラ32で巻き取る。
【0058】
メディア10の表面印刷が終了するとステップS102では、メディア10の引き回しを変更する。具体的には、表面印刷されて巻取ローラ32に巻き取られたメディア10の終端部を、印刷領域22の搬送方向上流側に設けられた搬入部22Aから印刷領域22に搬入させ、かつ印刷領域22の搬送方向下流側に設けられた搬出部22Bを通過させて繰出ローラ30に取り付ける。
【0059】
なお、ステップS102の工程は、作業員がインクジェットプリンタ1の前面に位置し、この前面からメディア10の引き回しの変更作業を行う。
【0060】
次のステップS104では、インクジェットプリンタ1の制御設定を裏面印刷に変更する。この変更処理によって、裏面印刷を行うときに制御部16は繰出ローラ30を逆回転させることになる。
【0061】
次のステップS106では、インクジェットプリンタ1がメディア10に対して裏面印刷を行い、搬出部22Bから搬出されたメディア10を繰出ローラ30で巻き取る。
【0062】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0063】
例えば、上記実施形態では、折返部36をローラとする形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示されるように、印刷領域22(プラテン20)の後端部が円弧状となり、この円弧状の部分でメディア10の搬送方向を変化させてもよい。なお、図5(A)は表面印刷を行う場合のメディア10の搬送経路を示し、図5(B)は裏面印刷を行う場合のメディア10の搬送経路を示す。
【0064】
また、上記実施形態では、搬出誘導部34を備える形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6に示されるように、搬出誘導部34を備える替わりに搬出誘導部34の配設位置に巻取ローラ32が備えられてもよい。なお、図6(A)は表面印刷を行う場合のメディア10の搬送経路を示し、図6(B)は裏面印刷を行う場合のメディア10の搬送経路を示す。
【0065】
また、上記実施形態では、繰出ローラ30と巻取ローラ32とがインクジェットヘッド12の重力方向下方に配設され、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aとが重力方向に重なるように配設される形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7に示されるように、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aとがインクジェットプリンタ1の前後方向にずれて配設されてもよい。
【0066】
なお、図7(A)は表面印刷を行う場合のメディア10の搬送経路を示し、図7(B)は裏面印刷を行う場合のメディア10の搬送経路を示す。また、図7の例では、折返部36が備えられる替わりにプラテン20の後端部が円弧状とされ、搬出誘導部34が備えられる替わりにプラテン20の前端部が円弧状とされる。
【0067】
さらに、図7の例では、巻取ローラ32がインクジェットプリンタ1の後方に配設されているため、インクジェットプリンタ1の前方であって、繰出ローラ30の配設位置よりも重力方向下側にも折返部60が配設される。すなわち、図7(A)に示されるように、表面印刷が行われて印刷領域22の搬出部22Bから搬出されたメディア10は、重力方向に搬送された後に巻取ローラ32へ搬送されるように折返部60によって搬送方向が変更される。一方、図7(B)に示されるように、裏面印刷が行われて印刷領域22の搬出部22Bから搬出されたメディア10は、重力方向に配設された繰出ローラ30によって巻き取られるため、折返部60は用いられない。
【0068】
(実施形態の効果)
(1)本実施形態のインクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド12と、インクジェットヘッド12の真下の印刷領域22にメディア10を搬送する搬送部14と、を備えるインクジェットプリンタ1であって、搬送部14は、巻回されたメディア10を印刷領域22に繰り出す繰出ローラ30、及び印刷領域22で印刷されたメディア10を巻き取る巻取ローラ32を有し、印刷領域22は、メディア10の搬送方向上流側に設けられて繰出ローラ30から繰り出されたメディア10が搬入される搬入部22A、及び搬入部22Aから搬入されて一方の面に印刷が行われたメディア10の搬送方向下流側に設けられる搬出部22Bを有し、一方の面に印刷が行われて巻取ローラ32に巻き取られたメディア10の終端部を搬入部22Aから印刷領域22に搬入させ、メディア10の他方の面に印刷が行われた後、搬出部22Bから搬出されたメディア10を繰出ローラ30に巻き取らせる。
【0069】
本実施形態によれば、一方の面に印刷が行われて巻取ローラ32に巻き取られたメディア10の終端部を印刷領域22の搬入部22Aから搬入させ、このメディア10を繰出ローラ30が巻き取るようにメディア10の終端部を繰出ローラ30に取り付ける。そして、一方の面に印刷が行われたメディア10の他方の面に印刷が行われる。このような構成によれば、一方の面に印刷が行われたメディア10の引き回しを変更することで、巻取ローラ32と繰出ローラ30とを載せ換えることなくメディア10に対する両面印刷が可能となるので、簡易な構成で作業負担が少なく両面印刷を行える。
【0070】
(2)本実施形態のインクジェットプリンタ1は、繰出ローラ30の回転中心30Aを通過する仮想的な第1直線50と巻取ローラ32の回転中心32Aを通過する仮想的な第2直線52とが平行であり、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aは、第1直線50及び第2直線52に対して直交する方向に離間する。
【0071】
本実施形態によれば、繰出ローラ30と巻取ローラ32とを載せ替えることなく、メディア10の引き回しを変更するだけで両面印刷を可能にできる。
【0072】
(3)本実施形態のインクジェットプリンタ1は、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aは、重力方向に離間している。
【0073】
本実施形態によれば、繰出ローラ30と巻取ローラ32とを載せ替えることなく、メディア10の引き回しを変更するだけで両面印刷を可能にできる。
【0074】
(4)本実施形態のインクジェットプリンタ1は、繰出ローラ30及び巻取ローラ32は、インクジェットヘッド12の重力方向下方に配設され、繰出ローラ30の回転中心30Aと巻取ローラ32の回転中心32Aとが重力方向に重なるように配設される。
【0075】
本実施形態によれば、繰出ローラ30と巻取ローラ32とが上下方向に配設されることになる。このため、インクジェットプリンタ1の前後方向の何れか一方向から作業を行うことにより、両面印刷を行うためのメディア10の引き回しの変更を行える。
【0076】
(5)本実施形態のインクジェットプリンタ1は、繰出ローラ30と巻取ローラ32とは、インクジェットヘッド12に対して搬出部22Bの側に偏って配設されている。
【0077】
本実施形態によれば、繰出ローラ30と巻取ローラ32とがインクジェットプリンタ1の前方に配設されることになる。これにより、インクジェットプリンタ1の前方向から作業を行うことにより、両面印刷を行うためのメディア10の引き回しの変更を行え、かつインクジェットプリンタ1の後ろ側に両面印刷を行うための作業スペースを設ける必要が無くなり、インクジェットプリンタ1の配設位置の自由度が増す。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ロール状とされた記録媒体に対して印刷を行うインクジェットプリンタに関する。
【符号の説明】
【0079】
1 インクジェットプリンタ
10 メディア(記録媒体)
14 搬送部(搬送手段)
22 印刷領域
22A 搬入部
22B 搬出部
30 繰出ローラ
32 巻取ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8