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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】建設機械の稼働履歴データ管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/06 20230101AFI20230413BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20230413BHJP
【FI】
G06Q10/06
G06Q50/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019181571
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021056938
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅嗣
(72)【発明者】
【氏名】柴尾 峰貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩太郎
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/040761(WO,A1)
【文献】特開2015-005032(JP,A)
【文献】特開2017-163541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設現場にて施工に従事する建設機械に搭載された車載コントローラと、前記建設機械に取外可能に搭載され、前記車載コントローラと通信可能に設けられた端末とを有し、前記車載コントローラと前記端末とで取得した前記建設機械の施工に関する稼働履歴データを管理する稼働履歴データ管理システムであって、
前記車載コントローラは、
前記建設機械に搭載された各種車載センサの検出値であり、前記建設機械の現在位置を含む稼働履歴データを内部情報として取得する内部情報取得部を備え、
前記端末は、
前記端末に設けられた各種端末センサの検出値であり、前記端末の現在位置を含む稼働履歴データを外部情報として取得する外部情報取得部を備え、
前記車載コントローラあるいは前記端末の少なくとも一方は、
前記内部情報取得部で取得した前記内部情報または前記外部情報取得部で取得した前記外部情報の少なくとも一方に基づいて1セットの連続施工を特定する連続施工特定部と、
前記連続施工特定部で特定した連続施工の作業期間において、前記内部情報取得部で取得した前記内部情報と前記外部情報取得部で取得した前記外部情報と、前記内部情報に含まれる前記建設機械の現在位置と前記外部情報に含まれる前記端末の現在位置とに基づいて演算した前記建設機械の車両方位を含む追加演算情報とを対応付けて保存する対応付け履歴保存部と、を更に備えることを特徴とする建設機械の稼働履歴データ管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の稼働履歴データ管理システムにおいて、
前記車載コントローラあるいは前記端末の少なくとも一方は、外部から入力される連続施工特定条件を取得する連続施工特定条件取得部を更に備え、
前記連続施工特定部は、前記連続施工特定条件に応じた施工を1セットの連続施工として特定することを特徴とする建設機械の稼働履歴データ管理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械の稼働履歴データ管理システムにおいて、
前記内部情報取得部で取得する前記内部情報には、前記建設機械のエンジンの負荷状態が含まれ、
前記連続施工特定部は、前記建設機械のエンジン負荷状態が所定の閾値を上回った時刻から、その後に所定の閾値を下回った時刻までの期間に行った施工を1セットの連続施工として、連続施工を特定することを特徴とする建設機械の稼働履歴データ管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械の稼働履歴データ管理システムにおいて、
前記連続施工特定部は、施工計画として予定開始日時および予定終了日時で定められる施工日程と、実際に施工を行った時刻とに基づき、前記施工日程の予定開始日時および予定終了日時の期間内に行われた施工を1セットの連続施工として、連続施工を特定することを特徴とする建設機械の稼働履歴データ管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械の稼働履歴データ管理システムにおいて、
前記連続施工特定部は、施工計画として予め定められる所定の施工領域における施工目標に対する実際の進捗状況を算出し、施工目標に着手してから完了するまでの期間に行った施工を1セットの連続施工として、連続施工を特定することを特徴とする建設機械の稼働履歴データ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械において施工管理などに用いる稼働履歴データを管理する稼働履歴データ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木現場において施工に従事するショベル・ホイールローダ・転圧用ローラなどの建設機械は、本体を形成するフレーム、走行用の履帯あるいは車輪を有し、オペレータによる操作指示により所望の作業を行う。
【0003】
このような建設機械では従来、施工終了後に検測と呼ばれる測量作業を行い、目標とする図面通りの施工結果が得られたかを確認することで施工状況を管理している。この手作業的な管理方法では多大な労力と時間を要するため、近年では建設機械が記録する稼働履歴(データ)から施工状況を把握し、施工管理や帳票作成に活用する情報化施工の導入が進められている。
【0004】
しかしながら、一般に建設機械の稼働履歴は、制御状態や各種センサの検出値といった車両で得られる情報の時系列データで構成されるため、施工後にどの稼働履歴がどの工程に対応するのかを判別することや、その工程に対応する各種の施工情報を稼働履歴と対応付けることが困難となる状況があった。
【0005】
こうした課題に対して、例えば特許文献1に示されるような、農業機械と携帯端末を用いて、農業機械と作業員を位置情報で対応付けて稼働履歴を管理する技術が提案されている。また、特許文献2では、複数の圃場で農作業した場合において、各圃場で取得した稼働履歴が、どの圃場に対応しているかを判定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6013255号公報
【文献】特許第5806997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述した特許文献1、2に記載された農業機械や農作業情報の管理システムと異なり、土木の施工では、1つの工程が数日から数週間と長期に亘ることが珍しくない。そのため、工程の期間に対して多数の稼働履歴が細切れに生成されてしまい、施工管理への活用が困難となる傾向がある。前述した特許文献1、2に開示された技術によって、稼働履歴と作業員あるいは施工現場を対応付けることは施工管理の一助とはなるが、土木の施工のような長期に亘る工程単位での管理に用いるには十分でないというのが実情である。
【0008】
本発明は、これらの問題点に鑑みて、施工が長期に亘って建設機械の稼働履歴が細切れになる状況においても、稼働履歴と各種の施工情報を工程単位で対応付けて管理することが容易に行い得る建設機械の稼働履歴データ管理システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る稼働履歴データ管理システムは、建設現場において施工に従事する建設機械に搭載された車載コントローラと、前記建設機械に取外可能に搭載され、前記車載コントローラと通信可能に設けられた端末とを有し、前記車載コントローラと前記端末とで取得した前記建設機械の施工に関する稼働履歴データを管理する稼働履歴データ管理システムであって、前記車載コントローラは、前記建設機械に搭載された各種車載センサの検出値であり、前記建設機械の現在位置を含む稼働履歴データを内部情報として取得する内部情報取得部を備え、前記端末は、前記端末に設けられた各種端末センサの検出値であり、前記端末の現在位置を含む稼働履歴データを外部情報として取得する外部情報取得部を備え、前記車載コントローラあるいは前記端末の少なくとも一方は、前記内部情報取得部で取得した前記内部情報または前記外部情報取得部で取得した前記外部情報の少なくとも一方に基づいて1セットの連続施工を特定する連続施工特定部と、前記連続施工特定部で特定した連続施工の作業期間において、前記内部情報取得部で取得した前記内部情報と前記外部情報取得部で取得した前記外部情報と、前記内部情報に含まれる前記建設機械の現在位置と前記外部情報に含まれる前記端末の現在位置とに基づいて演算した前記建設機械の車両方位を含む追加演算情報とを対応付けて保存する対応付け履歴保存部と、を更に備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、施工作業中に、建設機械の車両内部(車載コントローラ)で取得した内部情報および車両外部(端末)で取得した外部情報に基づいて、1セットの連続施工を特定することができる。その結果、建設機械にて得られる稼働履歴と各種の施工情報を工程単位で対応付けて管理することが容易に行い得る建設機械の稼働履歴データ管理システムを提供することができる。
【0011】
前述のように施工作業を特定することにより、管理上有用な稼働履歴を抽出できるので、建設機械の移動時やアイドル時といった管理上不要な稼働履歴を保存しないように構成することも容易となる。稼働履歴を保存するストレージの容量や、稼働履歴の回収に用いる無線通信に制約がある場合において特に有用である。
【0012】
また、端末から情報を補充することにより、建設機械では本来得られない情報を容易に統合することが可能となる。建設機械の改変やコストアップを要しないため、高度なセンサ類が付いていない旧式機や廉価機で利用する場合において特に有用である。
【0013】
上記した以外の課題、構成および効果については、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における建設機械を含む稼働履歴データ管理システムを示す図。
図2】実施形態の車載コントローラおよびポータブル端末の電気的接続を示す図。
図3】実施形態の車載コントローラおよびポータブル端末の制御系を示すブロック図。
図4】施工実施中の履歴保存に関する処理のシーケンス図。
図5】施工終了後の履歴表示に関する処理のシーケンス図。
図6】第1実施形態におけるポータブル端末での施工名称および連続施工特定条件の入力画面例。
図7】第1実施形態における連続施工の特定処理(S620)のフローチャート。
図8】第1実施形態における連続施工の特定方法を示したイメージ図。
図9】対応付け履歴の保存処理(S640)のフローチャート。
図10】第1実施形態における車両方位の演算方法を示した模式図。
図11】第1実施形態における障害物検知位置の演算方法を示した模式図。
図12】対応付け履歴として保存するレコード一覧のイメージ図。
図13】ポータブル端末での対応付け履歴の表示例。
図14】第2実施形態におけるポータブル端末での施工名称および連続施工特定条件の入力画面例。
図15】第2実施形態における連続施工の特定処理(S620)のフローチャート。
図16】第2実施形態における連続施工の特定方法を示したイメージ図。
図17】第3実施形態におけるポータブル端末での施工名称および連続施工特定条件の入力画面例。
図18】第3実施形態における連続施工の特定処理(S620)のフローチャート。
図19】第3実施形態における施工完了領域の推移と施工目標領域のイメージ図であり、(a)は施工開始時の例、(b)は施工途中の例、(c)は施工終了時の例を示したイメージ図。
図20】第3実施形態における連続施工の特定方法を示したイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。以下の実施形態の説明において、同一の機能を有する部分には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
<第1実施形態>
[機器構成の説明]
(ハードウェアの外観と配置の説明)
まず、本発明の第1実施形態について図1図13を用いて説明する。図1は、実施形態における建設機械を含む稼働履歴データ管理システムを示す図である。
【0017】
建設機械100は、本例では、建設現場にて走行により転圧作業を実施するタイヤローラ(転圧機械や転圧用ローラともいう)であり、図1に示すように、本体を形成するフレーム101と、フレーム101に取り付けられた前輪(左右)102aおよび後輪(左右)102bからなる車輪102と、建設機械100の車両エンジン回転数を計測する車両エンジン回転数センサ103と、建設機械100の車両前後進状態をシフトレバーの位置から取得する車両前後進センサ104と、建設機械100の外部と無線通信を行う車両通信アンテナ105と、自己位置を取得する車両位置センサ106と、建設機械100の周囲障害物を検出する車両測域センサ107(左側車両測域センサ107L、右側車両測域センサ107R)と、コンピュータなどで実装された車載コントローラ200と、コンピュータなどで実装された取外可能なポータブル端末300と、を備えている。本例において、車両エンジン回転数センサ103、車両前後進センサ104、車両位置センサ106および車両測域センサ107は、建設機械100に搭載されて当該建設機械100の車両に関する状態情報を含む稼働履歴データを取得(検出)する車載センサであり、車両エンジン回転数センサ103は、検出値として車両エンジン回転数VEを出力し、車両前後進センサ104は、検出値として車両前後進状態VSを出力し、車両位置センサ106は、検出値として現在の車両位置VPを出力し、車両測域センサ107は、検出値として障害物検知情報VDを出力する。車両測域センサ107は、光波の照射方向に応じた反射距離を取得する光波距離計であり、反射距離が所定値未満となった照射方向に障害物があると判定して、この障害物への位置ベクトルを障害物検知情報VDとして出力する。
【0018】
建設機械100に取外可能に搭載されるポータブル端末300は、現在時刻を計測する端末内蔵時計301と、自己位置を計測する端末内蔵位置センサ302と、オペレータからの入力を受け付ける端末キーボード303と、オペレータに対して情報を表示する端末モニタ304と、ポータブル端末300の外部と無線通信を行う端末通信アンテナ305と、加速度を計測する端末加速度センサ306と、を備えている。本例において、端末内蔵時計301、端末内蔵位置センサ302および端末加速度センサ306は、ポータブル端末300に搭載されて当該建設機械100の施工に関する作業情報を含む稼働履歴データを取得(検出)する端末センサであり、端末内蔵時計301は、検出値として端末の現在時刻PTを出力し、端末内蔵位置センサ302は、検出値として現在の端末位置PPを出力し、端末加速度センサ306は、検出値としてポータブル端末300に生じる鉛直方向の端末加速度PAを出力する。
【0019】
本実施形態においては、前記建設機械100(に搭載された前記車載コントローラ200)と前記ポータブル端末300とで、建設機械100において施工に関する稼働履歴データを管理する稼働履歴データ管理システム500が構成される。
【0020】
(ハードウェアの電気的接続の説明)
図2は、実施形態の車載コントローラ200およびポータブル端末300の電気的接続を示す図である。
【0021】
車載コントローラ200は、コントローラ通信バス208とコントローラ制御装置209を備えている。コントローラ制御装置209は、車載コントローラ200の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU等の演算・制御装置、ROMやRAM、HDD等の記憶装置を含むハードウェアと、コントローラ制御装置209により実行されるソフトウェアとを含んで構成される。
【0022】
ポータブル端末300は、端末通信バス308と端末制御装置309を備えている。端末制御装置309は、ポータブル端末300の各構成要素の動作を制御するものであり、CPU等の演算・制御装置、ROMやRAM、HDD等の記憶装置を含むハードウェアと、端末制御装置309により実行されるソフトウェアとを含んで構成される。
【0023】
車載コントローラ200とポータブル端末300は、車両通信アンテナ105と端末通信アンテナ305を介してWiFi(登録商標)による無線通信経路を構築する。この無線通信により、車載コントローラ200とポータブル端末300は、各種情報を随時送受(通信)することができる。
【0024】
(制御系と入出力の説明)
図3は、実施形態の車載コントローラ200およびポータブル端末300の制御系を示すブロック図である。
【0025】
車載コントローラ200は、図2および図3に示されるように、車両エンジン回転数センサ103による車両エンジン回転数VE、車両前後進センサ104による車両前後進状態VS、車両位置センサ106による車両位置VP、車両測域センサ107による障害物検知情報VDを取り込み、これらの稼働履歴データを同期してまとめた内部情報INとして出力する内部情報取得部210と、内部情報取得部210による内部情報IN、後述する外部情報取得部310による外部情報EX、後述する連続施工特定条件取得部340による連続施工特定条件CSに応じて、1セットの連続施工を所定の方法に基づいて特定し、その特定結果を現在連続施工番号CCとして出力する連続施工特定部240と、連続施工特定部240の演算情報を不揮発的に記憶する施工進捗記憶部241と、後述する連続施工特定条件取得部340による連続施工特定条件CSに応じて、内部情報取得部210による内部情報INおよび後述する外部情報取得部310による外部情報EXを、連続施工毎に対応付けたレコードにより構成される対応付け履歴RRを一時的に保存する対応付け履歴保存部250と、対応付け履歴保存部250が保存する対応付け履歴RRを不揮発的に記憶し、また、後述する対応付け履歴表示部350の要求に応じて保存した対応付け履歴RRを出力する対応付け履歴記憶部251と、を備えている。
【0026】
ポータブル端末300は、図2および図3に示されるように、水晶振動子により計測した端末の現在時刻PTを出力する端末内蔵時計301と、GNSSにより計測した現在の端末位置PPを出力する端末内蔵位置センサ302と、端末加速度PAを出力する端末加速度センサ306と、端末内蔵時計301による現在時刻PT、端末内蔵位置センサ302による現在の端末位置PP、端末加速度センサ306による端末加速度PA、後述する施工名称取得部320による施工名称CNを取り込み、これらの稼働履歴データを同期してまとめた外部情報EXとして出力する外部情報取得部310と、端末キーボード303を介したオペレータ操作により取得した施工名称CNを出力する施工名称取得部320と、端末キーボード303を介したオペレータ操作により取得した連続施工特定条件CSを出力する連続施工特定条件取得部340と、対応付け履歴記憶部251から取得した対応付け履歴RRに基づいて、保存された履歴をオペレータに表示するための画面・インタフェースを作成し、端末モニタ304で表示する対応付け履歴表示部350と、を備えている。
【0027】
[処理の説明]
次に、本実施形態の処理の流れをシーケンス図(図4図5)で説明する。シーケンス図に記載した一部の処理については、詳細をフローチャート(図7図9)で説明する。本実施形態の作業は、施工実施中の履歴保存(図4)と施工終了後の履歴表示(図5)の2作業で構成する。それぞれを順番に説明する。
【0028】
(シーケンス図による履歴保存に関する処理の説明)
図4は、施工実施中の履歴保存に関する処理のシーケンス図である。本シーケンス図では、オペレータが建設機械100の電源をONにしてから、所定の施工作業を実施し、建設機械100の電源をOFFにするまでの間に行われる、履歴保存に関わる処理の流れを記載している。
【0029】
施工作業を始めるにあたって、オペレータは建設機械100に搭乗し、建設機械100の電源ON操作を行う(S401)。更に、オペレータは建設機械100に設置されたポータブル端末300の電源ON操作を行う(S402)。
【0030】
ポータブル端末300の起動処理が終了すると、ポータブル端末300では履歴管理用のアプリケーションが動作を開始する。オペレータは、端末キーボード303を介して、初期設定としてこれから始める施工作業に関する施工名称CNの入力(S403)と、連続施工特定条件CSの入力(S404)を行う。なお、ポータブル端末300が、前述した入力処理(S403)や入力処理(S404)で入力された施工名称CNや連続施工特定条件CSを所定時間(例えば休憩時間に相当する時間)保存しておくことが可能な場合には、施工名称CNの入力処理(S403)や連続施工特定条件CSの入力処理(S404)は省略することもできる。
【0031】
図6に、第1実施形態におけるポータブル端末300での施工名称CNおよび連続施工特定条件CSの入力画面例を示す。
【0032】
施工名称CNには、実施した施工作業を名称でオペレータが認識できるような固有の名称を設定させる。オペレータが簡便に設定できるように、施工名称CNのデフォルト入力値として現在の日付と時刻で構成した文字列(施工_2020-01-01_093000など)を与える。この施工名称CNは、ポータブル端末300の施工名称取得部320により取得される。
【0033】
連続施工特定条件CSには、連続施工の開始および終了の判定に用いる、建設機械100のエンジン回転数の閾値を設定させる。一般に、建設機械の機種に応じて作業時のエンジン回転数が制御上の仕様として定まっているので、連続施工特定条件CSのデフォルト入力値として建設機械100の仕様に基づく値(アイドル時の回転数+所定のオフセット値)を与える。この連続施工特定条件CSは、ポータブル端末300の連続施工特定条件取得部340により取得される。
【0034】
オペレータによる初期設定が行われると、ポータブル端末300(の連続施工特定条件取得部340)は、車載コントローラ200に対して、取得した連続施工特定条件CSを送信する(S504)。施工名称CNについては、ポータブル端末300(の施工名称取得部320、外部情報取得部310)は、車載コントローラ200に対して、後述のステップで外部情報EXとして送信する(S511)。
【0035】
この時点において、オペレータは施工を開始することが可能となる。以下、オペレータが施工を終了するまでの施工実施中の間に、ポータブル端末300および車載コントローラ200において、1秒間隔で周期的に実施されるループ処理について説明する。
【0036】
ポータブル端末300(の外部情報取得部310)は、建設機械100の施工に関する作業情報を含む稼働履歴データである現在時刻PT・現在の端末位置PP・端末加速度PA・施工名称CNの現在値をまとめて、外部情報EXを作成する(S510)。車載コントローラ200(の内部情報取得部210)は、建設機械100の車両に関する状態情報を含む稼働履歴データである車両エンジン回転数VE、車両前後進状態VS、車両位置VP、障害物検知情報VDの現在値をまとめて、内部情報INを作成する(S610)。
【0037】
続いて、ポータブル端末300(の外部情報取得部310)は、作成した外部情報EXを車載コントローラ200に送信する(S511)。これを受信した車載コントローラ200(の連続施工特定部240、対応付け履歴保存部250)は、連続施工の特定(S620)を行い、さらに対応付け履歴の保存(S640)を行う。ステップS620およびステップS640については、詳細を後述する。
【0038】
以上で述べたステップ(S510・S511・S610・S620・S640)が、ループ処理の対象である。最後のステップS640まで実施したら、次の周期まで待機した後に、最初のステップS510に戻って処理を繰り返す。
【0039】
施工作業終了後、オペレータは建設機械100を停車させ、建設機械100に設置されたポータブル端末300の電源をOFFにする(S405)。更に、オペレータは建設機械100の電源をOFFにする(S406)。以上をもって、施工実施中の履歴保存に関する処理を終了する。
【0040】
(フローチャートによる連続施工の特定処理の説明)
図7は、第1実施形態における連続施工の特定処理(S620)のフローチャートである。本図を用いて、連続施工特定部240が実施する、連続施工の特定処理(S620)の詳細を説明する。本実施形態の連続施工特定部240は、建設機械100のエンジンの負荷状態が所定の閾値を上回った時刻から、その後に所定の閾値を下回った時刻までの期間に行った施工を1セットの連続施工として、連続施工を特定する。
【0041】
本処理の中では、内部変数として、施工中フラグTF(初期値:0)と連続施工カウントTC(初期値:0)を用いる。これらの内部変数は、施工進捗記憶部241が不揮発的に記憶する静的変数であり、後の周期における同処理でも値が保持される。連続施工特定部240は、これらの内部変数を随時参照・更新できるものとする。
【0042】
ステップS621Aでは、内部情報取得部210から取得した内部情報INよりエンジン回転数VEを取り込み、また、外部情報取得部310から取得した外部情報EXより現在時刻PTを取り込み、ステップS622Aに進む。
【0043】
ステップS622Aでは、連続施工特定条件取得部340から取得した連続施工特定条件CSを取り込み、これを負荷閾値(図6における判定閾値)LTとして記憶して、ステップS623Aに進む。
【0044】
ステップS623Aでは、「負荷閾値LT≦エンジン回転数VE」の真偽を判断して、真ならばステップS626Aに進み、そうでなければステップS624Aに進む。
【0045】
ステップS624Aでは、施工中フラグTFを0(偽)に更新して、ステップS625Aに進む。
【0046】
ステップS625Aでは、現在連続施工番号CCを無効値(‐)に更新して、ステップS630Aに進む。
【0047】
ステップS626Aでは、「施工中フラグTF=1(真)」の真偽を判断して、真ならばステップS629Aに進み、そうでなければステップS627Aに進む。
【0048】
ステップS627Aでは、施工中フラグTFを1(真)に更新して、ステップS628Aに進む。
【0049】
ステップS628Aでは、連続施工カウントTCを1加算して更新し、ステップS629Aに進む。
【0050】
ステップS629Aでは、現在連続施工番号CCに連続施工カウントTCを代入して更新し、ステップS630Aに進む。
【0051】
ステップS630Aでは、現在連続施工番号CCを対応付け履歴保存部250に出力し、ステップS620での処理を終了してステップS640に進む。
【0052】
図8は、第1実施形態における連続施工の特定方法を示したイメージ図である。本図は、エンジン回転数VEの推移と、合わせて出力される現在連続施工番号CCの一例を示したものである。図8の例では、エンジン回転数VEが負荷閾値LT以上となる期間が2つ(Ts[1]~Te[1]、Ts[2]~Te[2])存在しており、それぞれの期間で特定結果として現在連続施工番号CCに1・2が出力されて、それらが1セットの連続施工として特定されている。エンジン回転数VEが負荷閾値LT未満の期間では、現在連続施工番号CCに無効値(‐)が特定結果として出力されている。
【0053】
図8で示すエンジン回転数VEの波形は、模式的に表現したものである。実際の処理においては、信号のフィルタリングを適宜行った上で、負荷閾値LTとの比較判定においても開始判定と終了判定とでオフセットを変えるといった実装とすることが好ましい。また、施工中は一時停車など僅かな時間だけ作業が中断されることもあるので、エンジン回転数を瞬間値だけで判定せず、継続時間を考慮して判定するとよい。
【0054】
本実施形態では、連続施工特定条件CSとなる負荷閾値LTのエンジン回転数を、オペレータ操作によって手動で設定したが、車載コントローラ200が自動で設定するように構成してもよい。省燃費運転や特定の作業のために、エンジン回転数を動的に制御する仕組みが入っている製品については、制御に応じて動的に設定する構成にするとよい。
【0055】
(フローチャートによる対応付け履歴の保存処理の説明)
図9は、対応付け履歴の保存処理(S640)のフローチャートである。本図を用いて、対応付け履歴保存部250が実施する、対応付け履歴の保存処理(S640)の詳細を説明する。本実施形態の対応付け履歴保存部250は、前述した連続施工特定部240で特定した連続施工の作業期間において、内部情報取得部210による内部情報INおよび外部情報取得部310による外部情報EXを対応付けて保存する。なお、本保存処理(S640)は、後述する第2および第3実施形態においても同じである。
【0056】
本処理の中で、対応付け履歴保存部250は、対応付け履歴記憶部251が不揮発的に記憶する対応付け履歴RRを、外部のデータベースとして随時参照・更新できるものとする。
【0057】
ステップS641では、内部情報取得部210から取得した内部情報INよりエンジン回転数VE・前後進状態VS・車両位置VP・障害物検知情報VDを取り込み、ステップS642に進む。
【0058】
ステップS642では、外部情報取得部310から取得した外部情報EXより現在時刻PT・現在の端末位置PP・端末加速度PA・施工名称CNを取り込み、ステップS643に進む。
【0059】
ステップS643では、連続施工特定部240から取得した現在連続施工番号CCを取り込み、ステップS644に進む。
【0060】
ステップS644では、追加演算情報としての車両方位VH・衝撃有無情報SD・障害物検知位置DPを演算し、ステップS645に進む。
【0061】
車両方位VHは、車両位置VPおよび端末位置PPを用いて演算する。図10は、第1実施形態における車両方位の演算方法を示した模式図である。図10に示すように、建設機械100における端末内蔵位置センサ302および車両位置センサ106の取付位置が既知であれば、対応付け履歴保存部250にて建設機械100の方位を演算できるので、これを車両方位VHとして対応付け履歴記憶部251に格納する。衝撃有無情報SDは、端末加速度PAを用いて演算する。端末加速度PAが所定の閾値を超えたときに、衝撃がある場合は1を、端末加速度PAが所定の閾値以下のときに、衝撃がない場合は0を、衝撃有無情報SDとして対応付け履歴記憶部251に格納する。障害物検知位置DPは、車両方位VH・車両位置VP・障害物検知情報VDを用いて演算する。図11は、第1実施形態における障害物検知位置の演算方法を示した模式図である。図11に示すように、建設機械100における車両測域センサ107(107L、107R)の取付位置が既知であれば、車両測域センサ107(107L、107R)が検出した障害物の位置を演算できるので、これを障害物検知位置DPとして対応付け履歴記憶部251に格納する。
【0062】
ステップS645では、「現在連続施工番号CC=無効値(‐)」の真偽を判断して、真ならばステップS640での処理を終了し、そうでなければステップS646に進む。
【0063】
ステップS646では、エンジン回転数VE・前後進状態VS・車両位置VP・障害物検知情報VD・現在時刻PT・現在の端末位置PP・端末加速度PA・施工名称CNおよび現在連続施工番号CCを対応付けたレコードを作成し、対応付け履歴RRに本レコードを追記して更新し、ステップS640での処理を終了する。
【0064】
ステップS640での処理の終了後は、建設機械100の電源がONである限り、次の処理周期まで待機してからステップS610に戻り、ループ処理を継続する。
【0065】
図12は、対応付け履歴RRとして保存するレコード一覧のイメージ図である。本図は、現在連続施工番号CC(連続施工No.)・現在時刻PT(タイムスタンプ)・現在の端末位置PP(端末位置)・施工名称CN(施工名称)・エンジン回転数VE(エンジン回転数)・車両位置VP(車両位置)・前後進状態VS(前後進状態)・車両方位VH(車両方位)・衝撃有無情報SD(衝撃有無情報)・障害物検知位置DP(障害物検知位置)を1秒毎にレコード化し、時系列で格納したデータベースの構成をテーブルで示した例である。図12に示されるように、連続施工特定部240で特定した連続施工の作業期間毎、つまり現在連続施工番号CC(連続施工No.)毎に、外部情報EXである現在時刻PT(タイムスタンプ)・現在の端末位置PP(端末位置)・施工名称CN(施工名称)と内部情報INであるエンジン回転数VE(エンジン回転数)・車両位置VP(車両位置)・前後進状態VS(前後進状態)が対応付けて保存される。
【0066】
(シーケンス図による履歴表示に関する処理の説明)
図5は、施工終了後の履歴表示に関する処理のシーケンス図である。本シーケンス図では、オペレータが建設機械100の電源をONにしてから、過去の施工作業で保存された履歴を確認し、建設機械100の電源をOFFにするまでの間に行われる、履歴表示に関わる処理の流れを記載している。
【0067】
上述した図4による施工作業の終了後、オペレータは建設機械100に再度搭乗し、建設機械100の電源ON操作を行う(S411)。更に、オペレータは建設機械100に設置されたポータブル端末300の電源ON操作を行う(S412)。
【0068】
ポータブル端末300の起動処理が終了すると、ポータブル端末300では履歴管理用のアプリケーションが動作を開始する。オペレータは、端末キーボード303を介して、対応付け履歴RRの表示要求操作を行う(S413)。
【0069】
オペレータによる対応付け履歴RRの表示要求操作が行われると、ポータブル端末300は、車載コントローラ200に対して、対応付け履歴RRの送信要求を行う(S550)。これを受けて車載コントローラ200(の対応付け履歴記憶部251)は、ポータブル端末300に対して、対応付け履歴記憶部251が記憶する対応付け履歴RRを送信する(S650)。
【0070】
ポータブル端末300が対応付け履歴RRを受信すると、ポータブル端末300(の対応付け履歴表示部350)は、対応付け履歴RRを基にしたオペレータ提示用の表示画面を作成し、これを端末モニタ304に出力する(S560)。
【0071】
オペレータは、端末モニタ304に表示された履歴を確認し、その確認を終えたら、建設機械100に設置されたポータブル端末300の電源をOFFにする(S415)。更に、オペレータは建設機械100の電源をOFFにする(S416)。以上をもって、施工終了後の履歴表示に関する処理を終了する。
【0072】
図13は、ポータブル端末300での対応付け履歴RRの表示例である。ポータブル端末300には、連続施工特定部240が特定した連続施工単位で、これまでに保存された対応付け履歴が一覧表示されている。オペレータは、本表示画面によって、実施した施工に関する対応付け履歴が適切に保存されていることを確認する。
【0073】
この施工終了後の履歴表示に関しては、オペレータの代わりに施工作業には携わらない施工管理者が実施する場合もある。その際は管理用の機能として、保存された対応付け履歴に基づいて地図表示あるいは統計表示を行う機能や、所定のフォーマットのファイルにエクスポートする機能などを合わせて実装することが実用上好ましい(図13の表示画面下部に設定された「地図表示」や「エクスポート」参照)。
【0074】
本実施形態では、上述のように、連続施工の作業期間特定にあたってエンジンの負荷状態を参照したが、その他の作業装置などのアクチュエータ(例えばローラの加振アクチュエータや加圧アクチュエータなど)の負荷状態を参照してもよい。また、例えばショベルに適用する場合においては、作業装置であるバケット部に関わる所定の油圧配管で計測した圧力値を負荷状態として、エンジン負荷と合わせて特定条件にしてもよい。
【0075】
本実施形態では、上述のように、連続施工特定部240および対応付け履歴保存部250などを、車載コントローラ200側に搭載したが、これらは実装上の都合に合わせて、例えばその一方もしくは両方をポータブル端末300側に搭載してもよい。
【0076】
本実施形態では、上述のように、外部情報取得部310を搭載する端末として、持ち運びが容易なポータブル端末を用いたが、車載コントローラ200と同様に建設機械100に据え付けてもよい。車載コントローラ200についても、後付けが容易なポータブル端末に替えてもよい。
【0077】
外部情報を取得するセンサが物理的に離れている場合は、端末を複数個に分けて構成するのが有用である。また、施工現場内で広域の無線通信が既に確立している場合は、車外の作業員が所持するポータブル端末や事務所にあるサーバを端末として構成してもよい。
【0078】
(第1実施形態の効果)
以上のように構成された第1実施形態では、施工作業中に、建設機械100の車両内部(車載コントローラ200)で取得した内部情報および車両外部(ポータブル端末300)で取得した外部情報に基づいて、1セットの連続施工を特定することができる。その結果、建設機械100にて得られる稼働履歴と各種の施工情報を工程単位で対応付けて管理することが容易に行い得る建設機械100の稼働履歴データ管理システム500を提供することができる。
【0079】
前述のように施工作業を特定することにより、管理上有用な稼働履歴を抽出できるので、建設機械100の移動時やアイドル時といった管理上不要な稼働履歴を保存しないように構成することも容易となる。稼働履歴を保存するストレージの容量や、稼働履歴の回収に用いる無線通信に制約がある場合において特に有用である。
【0080】
また、ポータブル端末300から情報を補充することにより、建設機械100では本来得られない情報を容易に統合することが可能となる。建設機械100の改変やコストアップを要しないため、高度なセンサ類が付いていない旧式機や廉価機で利用する場合において特に有用である。
【0081】
たとえば本実施形態では、外部情報と内部情報を対応付けた対応付け履歴RRとして、安全状況に関わる衝撃の有無や障害物検知の履歴を、対応付け履歴記憶部251に記憶することができる。衝撃の履歴からは、たとえば路面上の異物や凹凸の乗り越えの原因となる施工異常が対応していると推定される履歴を抽出できる。障害物検知の履歴からは、たとえば建設機械100に他の車両や作業員が近づいたことによる危険が対応していると推定できる履歴を抽出できる。これらの履歴情報は、ドライブレコーダのように時系列で記憶されるので、事故の事後検証・オペレータへの運転指導・無人稼働機のモニタリングなどに有用である。
【0082】
また、第1実施形態では、建設機械100の施工作業中に取得したエンジン回転数(負荷)に基づいて1セットの連続施工を特定する。そのため、施工計画などを予め定めることが困難な場合においても適用することが可能である。
【0083】
また、端末として持ち運びが容易なポータブル端末300を利用するので、対応付け履歴記憶部251に記憶された履歴情報をポータブル端末にコピーすれば、オペレータは作業終了後にポータブル端末300を回収するだけで、施工管理上に必要なデータを施工事務所に持ち帰ることが可能となる。
【0084】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について図14図16を用いて説明する。第2実施形態として、施工計画として予め定められる施工日程と、実際の施工時刻に基づいて連続施工を特定する、第1実施形態の変形例を説明する。
【0085】
第2実施形態の機器構成は、第1実施形態と同じである。連続施工特定条件CSの定義内容と、連続施工特定条件取得部340および連続施工特定部240の処理が異なっている。これらの変更点を順番に説明する。
【0086】
図14に、第2実施形態におけるポータブル端末300での施工名称CNおよび連続施工特定条件CSの入力画面例を示す。
【0087】
本実施形態の連続施工特定条件取得部340では、連続施工特定条件CSとして、第1実施形態にて設定したエンジン回転数の代わりに、施工計画として予め定められる施工日程をオペレータの入力から取得する。施工日程は、予定開始日時および予定終了日時によって定義される施工予定期間の情報とする。
【0088】
連続施工特定部240では、連続施工特定条件CSから得られる予定開始日時および予定終了日時を、現在時刻PTと照らし合わせることで、現在の作業が施工計画上の施工に該当するかを判断する。
【0089】
(フローチャートによる連続施工の特定処理の説明)
図15は、第2実施形態における連続施工の特定処理(S620)のフローチャートである。本図を用いて、連続施工特定部240が実施する、連続施工の特定処理(S620)の詳細を説明する。本実施形態の連続施工特定部240は、施工計画として予定開始日時および予定終了日時で定められる施工日程と、実際に施工を行った時刻とに基づき、施工日程の予定開始日時および予定終了日時の期間内に行われた施工を1セットの連続施工として、連続施工を特定する。
【0090】
ステップS621Bでは、外部情報取得部310から取得した外部情報EXより現在時刻PTを取り込み、ステップS622Bに進む。
【0091】
ステップS622Bでは、連続施工特定条件取得部340から取得した連続施工特定条件CSを取り込み、連続施工特定条件CSに含まれる施工予定期間である予定開始日時および予定終了日時を、それぞれ予定開始日時Ps・予定終了日時Peとして記憶して、ステップS623Bに進む。
【0092】
予定開始日時Psおよび予定終了日時Peは、予定する施工の数だけ定義する。例えば予定する施工が3つある場合には、予定開始日時PsはPs[0]・Ps[1]・Ps[2]、予定終了日時PeはPe[0]・Pe[1]・Pe[2]のように、それぞれ3要素の配列で保持する。
【0093】
ステップS623Bでは、「Ps[n]≦PT<Pe[n]となるnが有るか」、即ち、予め定義された施工予定期間のどれかに現在時刻PTを含むものがあるかの真偽を判断して、真ならばステップS625Bに進み、そうでなければステップS624Bに進む。
【0094】
ステップS624Bでは、現在連続施工番号CCを無効値(‐)に更新して、ステップS630Bに進む。
【0095】
ステップS625Bでは、現在連続施工番号CCにPs[n]≦PT<Pe[n]となるnを代入して更新し、ステップS630Bに進む。
【0096】
ステップS630Bでは、現在連続施工番号CCを対応付け履歴保存部250に出力し、ステップS620での処理を終了してステップS640に進む。
【0097】
図16は、第2実施形態における連続施工の特定方法を示したイメージ図である。本図は、建設機械100が実際に稼働した期間および施工予定期間の一例を、時系列で示したものである。本図の例では、4つの施工予定期間が予め定義されており、これらの施工予定期間中(施工日程の予定開始日時および予定終了日時の期間内)に行った施工においては、それぞれの期間で特定結果として現在連続施工番号CCに1・2・3・4が出力されて、それらが1セットの連続施工として特定されている。どの施工予定期間にも該当しない時期に行った施工では、現在連続施工番号CCに無効値(‐)が特定結果として出力されている。
【0098】
つまり、本実施形態においては、連続施工特定部240は、外部情報取得部310による外部情報EXのみに基づいて1セットの連続施工を特定することになる。
【0099】
(第2実施形態の効果)
以上のように構成された第2実施形態では、施工作業中に、建設機械100の車両外部(ポータブル端末300)で取得した外部情報に基づいて、1セットの連続施工を特定することができる。その結果、建設機械100にて得られる稼働履歴と各種の施工情報を工程単位で対応付けて管理することが容易に行い得る建設機械100の稼働履歴データ管理システム500を提供することができる。
【0100】
また、第2実施形態では、施工計画として予め定められる施工日程と、実際の施工時刻に基づいて1セットの連続施工を特定する。そのため、施工計画を予め定めることが可能な場合においては、確実に工程単位で稼働履歴を抽出することが可能である。
【0101】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について図17図20を用いて説明する。第3実施形態として、施工計画として予め定められる所定の施工領域における施工結果の形状あるいは締固め度といった現場毎の施工目標に対する実際の進捗状況に基づいて連続施工を特定する、第1実施形態の変形例を説明する。
【0102】
第3実施形態の機器構成は、第1実施形態と同じである。連続施工特定条件CSの定義内容と、連続施工特定条件取得部340および連続施工特定部240の処理が異なっている。これらの変更点を順番に説明する。
【0103】
図17に、第3実施形態におけるポータブル端末300での施工名称CNおよび連続施工特定条件CSの入力画面例を示す。
【0104】
本実施形態の連続施工特定条件取得部340では、連続施工特定条件CSとして、第1実施形態にて設定したエンジン回転数の代わりに、施工計画として予め定められる施工目標領域をオペレータの入力から取得する。施工目標領域は、地図平面上で多角形を構成する点群の座標で定義する。複数の現場にまたがって施工する場合には、施工目標領域を複数定義する。
【0105】
連続施工特定部240では、連続施工特定条件CSから得られる施工目標領域と、連続施工特定部240で演算する実際の進捗状況を比較することで、現在の作業が施工計画上の施工に該当するかを判断する。
【0106】
(フローチャートによる連続施工の特定処理の説明)
図18は、第3実施形態における連続施工の特定処理(S620)のフローチャートである。本図を用いて、連続施工特定部240が実施する、連続施工の特定処理(S620)の詳細を説明する。本実施形態の連続施工特定部240は、施工計画として予め定められる所定の施工領域における施工結果の形状あるいは締固め度といった現場毎の施工目標に対する実際の進捗状況を算出し、施工目標に着手してから完了するまでの期間に行った施工を1セットの連続施工として、連続施工を特定する。
【0107】
説明の便宜上、施工目標領域は1つのみ定義されるものとして以下説明する。施工目標領域を複数定義する場合には、現在施工中の施工目標領域を識別する処理などを適宜加えて実装する。
【0108】
ステップS621Cでは、外部情報取得部310から取得した外部情報EXより現在時刻PT・現在の端末位置PPを取り込み、ステップS622Cに進む。
【0109】
ステップS622Cでは、連続施工特定条件取得部340から取得した連続施工特定条件CSを取り込み、連続施工特定条件CSに含まれる施工目標領域の座標情報を、施工目標領域DAとして記憶して、ステップS623Cに進む。
【0110】
ステップS623Cでは、施工完了領域TAを後述の方法で更新し、ステップS624Cに進む。
【0111】
ステップS624Cでは、施工完了率TPを後述の方法で更新し、ステップS625Cに進む。
【0112】
ステップS625Cでは、「0%<TP<100%」の真偽を判断して、真ならばステップS627Cに進み、そうでなければステップS626Cに進む。
【0113】
ステップS626Cでは、現在連続施工番号CCを無効値(‐)に更新して、ステップS630Cに進む。
【0114】
ステップS627Cでは、現在連続施工番号CCに施工目標領域の通し番号(ここでは“1”、複数存在する場合はその番号)を代入して更新し、ステップS630Cに進む。
【0115】
ステップS630Cでは、現在連続施工番号CCを対応付け履歴保存部250に出力し、ステップS620での処理を終了してステップS640に進む。
【0116】
本実施形態における転圧管理方法を説明する。転圧機械である建設機械100は、走行により自重で地盤を転圧する。その検測においては、地盤各所における締固め度合いを記録する必要がある。本実施形態では、その1手法である転圧回数による施工管理を行うものとする。この手法は、施工に先立って往復走行による試験施工を行って所定の締固め度が得られる目標転圧回数(往復回数)を計測してから、施工対象の地盤全域を目標転圧回数だけ転圧されるように施工するものである。
【0117】
前述したステップS623Cの施工完了領域TAの定義と更新方法を説明する。施工完了領域TAは、グリッド状に区切られた地盤各所における転圧回数が記録された車両に関する状態情報とする。建設機械100が各グリッド上を通過する度に、当該グリッドに関する転圧回数を1加算することにより、施工完了領域TAを更新する。なお、この施工完了領域TAは、車載コントローラ200の内部情報取得部210により取得される情報である。
【0118】
図19(a)~(c)は、第3実施形態における施工完了領域の推移と施工目標領域のイメージ図である。凡例に示すように、「未着手」・「転圧中」・「完了」の3パターンでグリッドを色分け表示している。転圧回数が0のグリッドを「未着手」、転圧回数が1回以上かつ目標転圧回数未満のグリッドを「転圧中」、転圧回数が目標転圧回数以上のグリッドを「完了」で示している。
【0119】
本実施形態におけるグリッドの間隔は1m、目標転圧回数は8回とする。説明の便宜上、これらの値は固定値とするが、実際の施工では使用する転圧機械や試験施工の結果に応じた値を施工管理者が設定できるようにする。
【0120】
前述したステップS624Cの施工完了率TPの定義と更新方法を説明する。施工完了率TPは、施工目標領域DA内において、目標転圧回数以上となった地盤が占める面積の割合とする。即ち、施工完了領域TAに含まれる目標転圧回数以上のグリッドの面積を、施工目標領域DAの面積で除した値を演算し、これを施工完了率TPとして更新する。つまり、施工完了率TPは、施工計画として予め定められる所定の施工領域における施工結果の形状あるいは締固め度といった現場毎の施工目標(領域)に対する実際の進捗状況を表している。なお、この施工完了率TPは、車載コントローラ200の内部情報取得部210にて算出してもよいし、連続施工特定部240にて算出してもよい。
【0121】
図19(a)~(c)において、破線でしめされた領域の内部が施工目標領域DAである。図19(a)は施工開始時の例で施工完了率TPはほぼ0%、図19(b)は施工途中の例で施工完了率TPは約70%、図19(c)は施工終了時の例で施工完了率TPは100%の状況である。
【0122】
図20は、第3実施形態における連続施工の特定方法を示したイメージ図である。施工目標領域DA内の施工に着手してから、地盤全域が目標転圧回数だけ施工されて完了するまでの期間で、現在連続施工番号CCに施工目標領域の通し番号(ここでは“1”、複数存在する場合はその番号)が特定結果として出力されて、それが1セットの連続施工として特定されている。また、施工目標領域DAに着手する前と、施工が完了した後の期間では、現在連続施工番号CCに無効値(‐)が特定結果として出力されている。
【0123】
(第3実施形態の効果)
以上のように構成された第3実施形態では、上記第1実施形態と同様、施工作業中に、建設機械100の車両内部(車載コントローラ200)で取得した内部情報および車両外部(ポータブル端末300)で取得した外部情報に基づいて、1セットの連続施工を特定することができる。その結果、建設機械100にて得られる稼働履歴と各種の施工情報を工程単位で対応付けて管理することが容易に行い得る建設機械100の稼働履歴データ管理システム500を提供することができる。
【0124】
また、第3実施形態では、施工計画として予め定められる所定の施工領域における施工目標領域に対する実際の進捗状況に基づいて1セットの連続施工を特定する。そのため、施工期間を予め定められない、あるいは施工期間が変動する場合においても、確実に工程単位で稼働履歴を抽出することが可能である。
【0125】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形形態が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものや、任意の構成を組み合わせたものも含まれる。
【0126】
上記の実施形態では、建設現場において施工に従事する建設機械として、タイヤローラを例示したが、本発明は、掘削や積込作業などを行うショベルやホイールローダにも適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0127】
100:建設機械
101:フレーム
102:車輪
102a:前輪(左右)
102b:後輪(左右)
103:車両エンジン回転数センサ
104:車両前後進センサ
105:車両通信アンテナ
106:車両位置センサ
107:車両測域センサ(左側車両測域センサ107L、右側車両測域センサ107R)
200:車載コントローラ
208:コントローラ通信バス
209:コントローラ制御装置
210:内部情報取得部
240:連続施工特定部
241:施工進捗記憶部
250:対応付け履歴保存部
251:対応付け履歴記憶部
300:ポータブル端末(端末)
301:端末内蔵時計
302:端末内蔵位置センサ
303:端末キーボード
304:端末モニタ
305:端末通信アンテナ
306:端末加速度センサ
308:端末通信バス
309:端末制御装置
310:外部情報取得部
320:施工名称取得部
340:連続施工特定条件取得部
350:対応付け履歴表示部
500:稼働履歴データ管理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20