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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】施工支援システムおよび作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20230413BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20230413BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20230413BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
E02F9/24 B
E02F9/26 B
E02F3/43 M
G08B21/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019188521
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021063376
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】井村 進也
(72)【発明者】
【氏名】泉 枝穂
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209718(JP,A)
【文献】特許第6212197(JP,B1)
【文献】特許第4945670(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/24
E02F 9/26
E02F 3/43
G08B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者と作業機械との位置関係と、前記作業機械の周囲に設定され前記作業機械が到達可能な可動領域及び前記可動領域に対し外側に設定される通知領域と、に基づいて前記作業機械の施工を支援する施工支援処理を行うコントローラを備えた施工支援システムにおいて、
業者の位置情報を取得する作業者位置情報取得装置と、
業者の前記作業機械への接近の意思を検知する接近意思検知装置と、
前記接近意思検知装置の検知結果を前記作業機械のオペレータへ提示する接近意思提示装置と、
前記接近意思提示装置の提示内容への前記作業機械のオペレータによる確認状態を取得する接近確認取得装置とを備え、
前記コントローラは、
前記通知領域に作業者がいると判定された場合には、作業者に対して前記作業機械の周囲で作業を行う意思があるかないかを問い合わせると共に、
前記可動領域に作業者がいると判定された場合には、前記接近確認取得装置が取得した確認状態が、前記作業機械のオペレータが作業者の接近を拒否、または、前記作業機械のオペレータが作業者の接近の意思を確認していないときには、安全動作を実行することを特徴とする施工支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の施工支援システムにおいて、
業者が携帯する作業者端末をさらに備え、
前記作業者端末は、前記作業者位置情報取得装置および前記接近意思検知装置を有することを特徴とする施工支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の施工支援システムにおいて、
前記施工支援処理は、前記作業機械の動作速度を減速あるいは停止させるものであることを特徴とする施工支援システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の施工支援システムにおいて、
前記施工支援処理は、作業者に対して音、光、または振動によって前記作業機械への接近警告を行うものであることを特徴とする施工支援システム。
【請求項5】
作業者と作業機械との位置関係と、前記作業機械の周囲に設定され前記作業機械が到達可能な可動領域及び前記可動領域に対し外側に設定される通知領域と、に基づいて前記作業機械の施工を支援する施工支援処理を行うコントローラを備えた作業機械において、
業者の位置情報を取得する作業者位置情報取得装置と、
業者の前記作業機械への接近の意思を検知する接近意思検知装置と、
前記接近意思検知装置の検知結果を前記作業機械のオペレータへ提示する接近意思提示装置と、
前記接近意思提示装置の提示内容への前記作業機械のオペレータによる確認状態を取得する接近確認取得装置とを備え、
前記コントローラは、
前記通知領域に作業者がいると判定された場合には、作業者に対して前記作業機械の周
囲で作業を行う意思があるかないかを問い合わせると共に、
前記可動領域に作業者がいると判定された場合には、前記接近確認取得装置が取得した確認状態が、前記作業機械のオペレータが作業者の接近を拒否、または、前記作業機械のオペレータが作業者の接近の意思を確認していないときには、安全動作を実行することを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機械において、
前記施工支援処理は、前記作業機械の動作速度を減速あるいは停止させるものであることを特徴とする作業機械。
【請求項7】
請求項5に記載の作業機械において、
前記施工支援処理は、作業者に対して音または光によって前記作業機械への接近警告を行うものであることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工支援システムおよび作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械や移動式クレーン等の作業機械の周囲で作業を行う作業者は、必要に応じて作業機械との位置関係を考慮したり距離を置いたりして作業を行うことで、作業機械による挟まれや巻込まれ等のリスクを低減している。一方で、作業者が作業機械での作業の補助などを目的として作業機械に接近する必要が生じる場合もある。
【0003】
このような作業者のリスク低減に係る技術として、例えば、特許文献1には、作業車両の周囲に侵入禁止領域を予め設定し、作業領域内に侵入した作業者などの侵入物の位置を検出し、該侵入物が前記設定された侵入禁止領域内に入ったときに作業車両を停止させるようにした作業車両の侵入禁止領域での停止制御方法において、作業者などの侵入物の作業内容に応じて、前記侵入禁止領域を変更可能とした作業車両の侵入禁止領域での停止制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-105807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術においては、作業者に予め定められた作業内容に応じて適用する侵入禁止領域を変更可能とし、作業機械に接近する必要のない作業内容の作業者が作業機械に接近する場合には十分に広く設定された侵入禁止領域により作業機械を停止させて作業者のリスクを減少すると共に、作業機械の補助などの目的で作業機械に接近する作業者が作業機械に接近する場合には必要最小限に設定した侵入禁止領域により作業機械が頻繁に停止することによる作業効率の低下を抑制している。
【0006】
しかしながら、例えば、作業機械の補助を目的とするような必要最小限の侵入禁止領域が設定された作業者が相対的に広い侵入禁止領域が設定されるような作業を行うことは十分に考えられ、この場合には作業内容と進入禁止領域に齟齬が生じることとなる。すなわち、作業者が作業中に作業機械の接近に気付かない場合には、作業者が意図しない状態で作業機械と接近しても作業機械の停止制御が働かないという状況が考えられる。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、作業者の意思に応じた施工支援を行うことができ、作業効率の低下を抑制しつつ作業者の安全性をさらに向上することができる施工支援システムおよび作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、作業者と作業機械との位置関係と、前記作業機械の周囲に設定され前記作業機械が到達可能な可動領域及び前記可動領域に対し外側に設定される通知領域と、に基づいて前記作業機械の施工を支援する施工支援処理を行うコントローラを備えた施工支援システムにおいて、作業者の位置情報を取得する作業者位置情報取得装置と、作業者の前記作業機械への接近の意思を検知する接近意思検知装置と、前記接近意思検知装置の検知結果を前記作業機械のオペレータへ提示する接近意思提示装置と、前記接近意思提示装置の提示内容への前記作業機械のオペレータによる確認状態を取得する接近確認取得装置とを備え、前記コントローラは、前記通知領域に作業者がいると判定された場合には、作業者に対して前記作業機械の周囲で作業を行う意思があるかないかを問い合わせると共に、前記可動領域に作業者がいると判定された場合には、前記接近確認取得装置が取得した確認状態が、前記作業機械のオペレータが作業者の接近を拒否、または、前記作業機械のオペレータが作業者の接近の意思を確認していないときには、安全動作を実行するものとする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者の意思に応じた施工支援を行うことができ、作業効率の低下を抑制しつつ作業者の安全性をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】施工支援システムが適用される作業現場の様子を模式的に示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る施工支援システムの全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図3】油圧ショベルの周囲に設定される作業領域の設定の一例を示す図である。
図4A】作業者端末の動作の様子を示す図である。
図4B】作業者端末の動作の様子を示す図である。
図4C】作業者端末の動作の様子を示す図である。
図4D】作業者端末の動作の様子を示す図である。
図5】入出力装置の動作の様子を示す図である。
図6】作業者端末の処理内容を示すフローチャートである。
図7図6のフローチャートの意思疎通処理の処理内容を示すフローチャートである。
図8】コントローラの状態管理装置の処理内容を示すフローチャートである。
図9】コントローラの安全動作実行装置の処理内容を示すフローチャートである。
図10】入出力装置の処理内容を示すフローチャートである。
図11】第2の実施の形態に係る施工支援システムの全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
なお、本実施の形態では、作業機械の一例として、フロント装置(作業機)を備える油圧ショベルを例示して説明するが、例えば、ホイールローダやブルドーザなどのような他の作業機械にも本発明を適用することが可能である。
【0013】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1図10を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態に係る施工支援システムが適用される作業現場の様子を模式的に示す図である。
【0015】
図1においては、作業現場において作業機械の一例である油圧ショベル1と作業者3とが作業を行う場合を例示して示している。
【0016】
図1において、油圧ショベル1は、下部走行体1Cと、下部走行体1Cに対して旋回可能に設けられた上部旋回体1Bと、上部旋回体1Bに設けられ、バケットなどの作業具を備えた多関節型の作業装置1Aとを備えている。上部旋回体1Bには、油圧ショベル1の全体の動作を制御するコントローラ11が配置されている。
【0017】
また、上部旋回体1Bには、油圧ショベル1を操縦するオペレータ2が搭乗する運転室20が設けられている。運転室20の内部には、オペレータ2に対して各種情報を出力したり、オペレータ2が各種設定や情報を入力したりすることができる入出力装置12が配置されている。入出力装置12は、例えば、タッチパネル式のモニタなどで構成されてもよいし、入力装置と出力装置が分かれているものでも構わない。なお、コントローラ11や入出力装置12は無線LANなどの通信機能(通信装置55)に接続されており、油圧ショベル1の内外と通信が可能である。
【0018】
作業者3は、油圧ショベル1の周囲で作業を行う可能性のある作業者であり、作業者端末4を携帯し身に着けている。作業者端末4は、例えば、腕時計型のウェアラブルデバイスであり、タッチパネル式のモニタ、GPSなどの衛星測位機能、無線LANなどの通信機能(通信装置54)、装着者へ振動により情報を伝えるバイブレーション機能などを有している。なお、作業者端末4は腕時計型のウェアラブルデバイスでなくとも良く、作業者3が携帯可能であって同等の機能を有していればスマートフォンのような他の形態のものでも構わない。
【0019】
図2は、本実施の形態に係る施工支援システムの全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【0020】
図2において、施工支援システムは、作業者3の作業者端末4に備えられた作業者位置情報取得装置50、作業者識別情報取得装置51、接近意思検知装置52、接近確認提示装置53、及び、通信装置54と、油圧ショベル1に備えられた通信装置55、状態管理装置56、安全動作実行装置57、接近意思提示装置58、及び、接近確認取得装置59とから構成されている。状態管理装置56および安全動作実行装置57は、油圧ショベル1に搭載されたコントローラ11により実現され、接近意思提示装置58および接近確認取得装置59は、入出力装置12により実現される。
【0021】
作業者位置情報取得装置50は、作業者端末4内のGPSなどの衛星測位システムにより実現され、作業者端末4の位置を計測することで作業者3の位置を代替する。
【0022】
作業者識別情報取得装置51は作業者端末4に対して作業者3が自身の識別情報を入力することで実現される。識別情報は例えば予め割り振られた番号でもよいし、指紋などの生体情報でもよい。
【0023】
接近意思検知装置52は作業者3が作業者端末4に対してボタンを押すなどの方法で実現される。
【0024】
接近確認提示装置53は作業者端末4が作業者3に対して振動や音、表示などによりオペレータ2の確認情報を提示することで実現される。
【0025】
通信装置54、55は、例えば無線LANなどの無線通信によって実現される。作業者位置情報取得装置50、作業者識別情報取得装置51、接近意思検知装置52のそれぞれで得られた情報や、接近確認提示装置53へ伝達する情報は、作業者端末4に設けられた通信装置54、油圧ショベル1に設けられた通信装置55とを介して状態管理装置56とやり取りされる。
【0026】
状態管理装置56は、同一の作業者端末4から取得した作業者位置情報と接近意思情報を作業者識別情報を用いて紐付け、作業者状態として記憶する。作業者状態には、作業者位置情報、作業者識別情報、作業者接近意思情報に加え、オペレータ2の接近確認結果である接近確認情報も作業者識別情報に紐付いて記憶される。状態管理装置56は、作業者識別情報と作業者接近意思情報を接近意思提示装置58に送る。
【0027】
接近意思提示装置58は音や表示などによりオペレータ2へ作業者3の接近意思を伝達する。オペレータ2は接近意思提示装置58により提示された情報を基に、接近確認取得装置59に対して作業者3の接近意思を認知したか、接近を拒否するかを入力する。接近確認取得装置59は例えば「認知」と「拒否」の2つのボタンを有し、どちらかをオペレータ2に押させることで実現される。この時、オペレータ2が「認知」ボタンを押した場合は確認状態は「接近認知状態」、オペレータ2が「拒否」ボタンを押した場合は確認状態は「接近不可状態」と設定される。接近意思提示装置58と接近確認取得装置59は、タッチパネル式のモニタのように入力と出力を一つの機器で行える入出力装置12によって構成されるが、必ずしも一つの機器である必要はなく、別々の機器であっても構わない。
【0028】
接近確認取得装置59はオペレータ2の確認情報を取得したあと、この情報を状態管理装置56へ送り、状態管理装置56では前述の通り作業者識別情報を基に作業者位置情報や作業者接近意思情報と紐付いて記憶される。
【0029】
安全動作実行装置57は、施工支援処理として、例えば、安全動作に関する処理を行う。施工支援処理では、状態管理装置56から作業者位置情報、確認情報を読み出し、確認情報が接近認知状態で無い場合には、油圧ショベル1への接近作業を不可とし、作業者位置が油圧ショベル1の周囲に設定される作業領域の一つである可動領域A1(後述)内にある場合に安全動作として油圧ショベル1の動作の減速あるいは停止などの処理を実行する。また、確認情報が接近認知状態である場合には、油圧ショベル1への接近作業を可能とし、作業者位置が可動領域A1内にある場合でも安全動作を行わない。なお、安全動作は油圧ショベル1の動作の減速や停止以外にも、音による警告、警告灯の点灯による警告などにより作業者3に可動領域A1から出るよう働きかけるものであってもよい。
【0030】
図3は、油圧ショベルの周囲に設定される作業領域の設定の一例を示す図である。図3においては、油圧ショベル1、作業者3(作業者3a~3c)、及び、作業領域の位置関係を示している。図2に示すように、油圧ショベル1の周囲には、作業領域として、可動領域A1、通知領域A2、及び、通知外領域A3が設定される。
【0031】
可動領域A1は、油圧ショベル1の構造物が到達可能な範囲である。例えば、可動領域A1内に作業者(例えば作業者3a)がいると油圧ショベル1と作業者3aとの間での激突や挟まれ、巻き込まれなどのリスクが生じる。そこで、本実施の形態においては、作業者3が可動領域A1内での作業(接近作業)を行う場合には、油圧ショベル1のオペレータ2と作業者3との意思疎通をとることにより、リスクの低減を図っている。
【0032】
通知領域A2は、油圧ショベル1から見て可動領域A1の外側に設定される。例えば、通知領域A2内に作業者(例えば作業者3b)がいる場合、可動領域A1の外側であるため油圧ショベル1と接触するリスクはないが、可動領域A1へ容易に侵入できる。すなわち、通知領域A2は、可動領域A1へ侵入する可能性のある領域である。
【0033】
通知外領域A3は、油圧ショベル1から見て通知領域A2のさらに外側の領域である。通知外領域A3にいる作業者(例えば作業者3c)は、すぐに(すなわち、通知領域A2を通らずに)可動領域A1に侵入する可能性はなく、油圧ショベル1と接触する差し迫ったリスクはない。
【0034】
ここで、本実施の形態に係る施工支援システムの概要について説明する。本実施の形態は、作業機械(油圧ショベル1)のオペレータ2とその周囲の作業者3との間で意思疎通が図れた状態を形成する支援を行うことを第一の目的とする。また、意思疎通が図れていない場合、作業機械の周囲での作業を行わないように作業機械や作業者端末が必要に応じて安全動作を行うことを第二の目的とする。そして、本実施の形態に係る施工支援システムは、第一及び第二の目的を達成するために、以下のような振る舞いをオペレータ2と作業者3に促す。
【0035】
まず、作業者3が通知領域A2の外側(例えば作業者3cの位置)にいる場合、施工支援システムは本発明に関わる動作を行わない。
【0036】
作業者3が通知領域A2に侵入すると(例えば作業者3bの位置)、作業者端末4が音や振動などの手段によって作業者3へ通知領域A2へ入ったことを通知すると共に、作業者端末4は油圧ショベル1への接近の意思を確認する表示及び入力待機状態となる。作業者3は作業者端末4を確認し、油圧ショベル1への接近が目的であれば、作業者端末4を操作して接近の意思を入力し、接近が目的でなければ通知領域A2から外に出る。
【0037】
作業者端末4は作業者3の接近の意思が入力されると、油圧ショベル1へその情報を伝達する。油圧ショベル1はこれを受けて入出力装置12を用いてオペレータ2へ作業者3の接近の意思を伝えると共に、オペレータ2が作業者3の接近の意思を確認したかどうかの入力待機状態となる。オペレータ2が入出力装置12を操作して作業者3の接近の意思を確認したことを入力すれば、油圧ショベル1はさらにその情報を作業者端末4へ伝達し、作業者端末4は作業者3の接近の意思がオペレータ2に認知されたことを振動や表示などを用いて作業者3へ伝える。この一連の手順を意思疎通処理と呼ぶこととする。
【0038】
本実施の形態の施工支援システムは、基本的には作業者3が油圧ショベル1の可動領域A1へ侵入すると安全動作を実行する。安全動作とは、例えば油圧ショベル1が動作を減速または停止する、油圧ショベル1が音や光で作業者へ警告する、作業者端末4が音や振動で作業者へ警告するなどである。安全動作はこれらのうち一つでもよいし複数組み合わせてもよい。本実施形態では、安全動作は油圧ショベル1の動作停止と作業者端末4の振動による作業者3への警告である。ただし、意思疎通処理を実施しオペレータ2と作業者3とが互いの意思を確認し合った状態において、その作業者3に対しては安全動作を実行しない。このようにすることで、どちらか一方が相手を気付いていない(オペレータ2が作業者3の接近に気付いていない、作業者3が油圧ショベル1の接近に気付いていない)場合、油圧ショベル1の動作を停止するなどの安全動作を行うことで油圧ショベル1と作業者3との間のリスクを低減させるが、互いの意思を確認した状態(意思疎通が図れた状態)では油圧ショベル1と作業者3との間のリスクを認識した状態となるので注意して行動することができ、安全動作を行わなくてもリスクが低減された状態となる。このため、油圧ショベル1に作業者3が近づいても油圧ショベル1の動作が停止することなく、リスクが低い状態で周囲作業が可能となる。
【0039】
図4A図4Dは、作業者端末の動作の様子を示す図である。また、図5は、入出力装置の動作の様子を示す図である。
【0040】
図4A図4Dに示すように、作業者端末4はタッチパネル式のモニタ41を備えている。
【0041】
作業者位置情報取得装置50により取得された位置が通知領域A2内であると接近意思検知装置52が判断した場合、接近意思検知装置52はタッチパネル式のモニタ41上に周囲作業を行うかどうかを問い合わせる表示を行う(図4A参照)。問い合わせ画面では周囲作業を行う意思があるかないかを意思表示させるために、意思がある場合と無い場合にそれぞれ選択する2つのボタン(例えば、「はい」と「いいえ」のボタン)を配置し、どちらかを作業者3に押させるように促す。作業者3が接近意思有りのボタンを押すことで、接近意思検知装置52が作業者3の接近意思を検知したことになる。
【0042】
油圧ショベル1のオペレータ2によって接近確認がなされると、接近確認提示装置53によってオペレータ2によって接近が認知されたかどうかを示す画面を表示する(図4B図4C参照)。
【0043】
また、本実施形態では安全動作実行装置57はコントローラ11内に実装される構成としているが、例えば安全動作実行装置57を作業者端末4内にも実装すれば、作業者3が接近不可状態で可動領域A1へ侵入した場合に、安全動作として作業者3へ可動領域から外へ出ることを促す表示や振動による警告を行うこともできる(図4D参照)。
【0044】
図5に示すように、入出力装置12の画面には、接近意思提示装置58によって作業者3の識別情報と接近の意思とがオペレータ2へ提示されると共に、作業者3の接近を認知するボタン(例えば、「認知」のボタン)と、接近を拒否するボタン(例えば、「拒否」のボタン)の2つのボタンが画面内に配置され、どちらかのボタンが押されることによってオペレータ2の接近確認情報が接近確認取得装置59で取得される。また、図5に示すように、接近意思を発信した作業者3と油圧ショベル1との位置関係、および、油圧ショベル1の可動領域A1と作業者3との位置関係が表示され、オペレータ2による作業者3の認知が的確に行われる。
【0045】
以上のように構成した本実施の形態に係る施工支援システムの動作をさらに詳細に説明する。
【0046】
図6図10は、施工支援システムの処理内容を示すフローチャートであり、図6は作業者端末の処理内容を示すフローチャート、図7図6のフローチャートの意思疎通処理の処理内容を示すフローチャート、図8はコントローラの状態管理装置の処理内容を示すフローチャート、図9はコントローラの安全動作実行装置の処理内容を示すフローチャート、図10は入出力装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0047】
まず、作業者端末4の処理内容について説明する。
【0048】
図6において、作業者端末4は、まず、作業者端末4が保持するオペレータからの確認状態を接近不可状態に設定する(ステップS101)。その後、ステップS102~S105に係る処理と、ステップS106~S119に係る処理が並列に実行される。
【0049】
ステップS102~S105に係る処理は、作業者位置情報の取得送信に係るものである。まず、作業者端末4に内蔵されたGPSにより作業者位置情報を検知し(ステップS102)、その情報を作業者端末4内のメモリに記録し(ステップS103)、作業者端末4内のメモリに保存された作業者識別情報を読み出し(ステップS104)、ステップS102で取得した作業者位置情報とステップS104で取得した作業者識別情報とをセットにして通信装置54により油圧ショベル1へ送信する(ステップS105)。その後、ステップS102~S105の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS106~S119に係る処理は、接近意思検知装置52と接近確認提示装置53の処理内容に係るものである。まず、接近意思検知装置52は、油圧ショベル1の可動領域A1を取得し(ステップS106)、可動領域A1から所定の距離外側に離れた通知領域A2を演算する(ステップS107)。次に、前回の作業者位置情報を記憶し(ステップS108)、ステップS103で記録した最新の作業者位置情報を読み出す(ステップS109)。
【0051】
続いて、作業者位置情報で示される作業者3の位置がステップS107で算出した通知領域A2の外側か否か(すなわち、通知外領域A3であるか否か)を判定する(ステップS110)。判定結果がYESの場合、すなわち、作業者3の位置が通知領域A2の外側(通知外領域A3)である場合には、作業者端末4が保持するオペレータ2からの確認状態が接近認知状態か接近不可状態かを判定し(ステップS111)、判定結果がNOの場合、すなわち、接近不可状態である場合にはステップS106の処理に戻る。
【0052】
また、ステップS111での判定結果がYESの場合、すなわち、接近認知状態であった場合には、作業者3の位置が通知領域A2の外側(通知外領域A3)において接近認知状態である時間が予め定めた時間だけ経過したか否かを判定し(ステップS112)、判定結果がNOの場合にはステップS106の処理に戻り、判定結果がYESの場合には接近不可状態へ移行して(ステップS113)、ステップS106の処理に戻る。
【0053】
このように、ステップS111~S113の処理では、一度通知領域A2内で意思疎通処理を実行し接近認知状態になったあと、通知領域の外側に出た場合に、一定時間以内であれば接近認知状態を保持し、再度通知領域A2や可動領域A1に侵入しても意思疎通処理をやり直さなくて済むようにしており、これにより頻繁な意思疎通処理の実行による作業効率の低下を防止している。ただし、通知領域A2を出て所定の時間が経過すると、安全性の観点から再度意思疎通処理を実施しなければならない。この接近認知状態が保持される時間は現場の作業者やオペレータのスキルや作業内容などから適切な時間が設定されることが望ましいが、例えば数秒程度であれば作業者とオペレータの意識はまだ保たれている可能性が高く、リスクは少ないと考えられる。
【0054】
また、ステップS110での判定結果がNOの場合、すなわち、作業者3の位置が通知外領域A3でない場合には、作業者3の位置が通知領域A2上であるか否かを判定し(ステップS115)、判定結果がYESの場合には、接近可能状態であるか否かと、ステップS108で取得した前回作業者位置の情報が通知領域A2の外側(通知外領域A3)であるか否かとを判定する(ステップS115,S116)。
【0055】
ステップS115,S116の両方の判定結果がYESの場合には、作業者端末の意思疎通処理を実行し(ステップS117)、ステップS106の処理に戻る。また、ステップS115,S116の少なくとも一方の判定結果がNOの場合には、ステップS106の処理に戻る。
【0056】
また、ステップS114での判定結果がNOの場合、すなわち、作業者3の位置が可動領域A1上である場合には、現在の確認状態が接近不可状態か否かを判定し(ステップS118)、判定結果がNOの場合、すなわち、接近認知状態である場合には、ステップS106の処理に戻る。また、ステップS118での判定結果がYESの場合には、安全動作を実行し(ステップS119)、ステップS106の処理に戻る。
【0057】
安全動作は、例えば音や振動、作業者端末4への表示(図4A図4D参照)などで作業者3へ可動領域A1から速やかに外側(通知領域A2や通知外領域A3側)へ退避することを促すものである。この安全動作は、図6のフローチャートにも示す通り、オペレータ2からの確認状態が接近不可状態、つまり作業者3とオペレータ2とが意思疎通を図れていない状態で作業者3が可動領域A1へ侵入した場合に実行されるものであり、油圧ショベル1側の安全動作と併せてより事故のリスクを減らし安全性に寄与するものである。
【0058】
図7において、作業者端末4は、意思疎通処理(図6のステップS117)として、まず、作業者3へ接近意思を問い合わせる(ステップS201)。作業者3への接近意思の問い合わせは、作業者端末4に接近位置検知のための情報を表示することにより行う(図4A等参照)。
【0059】
続いて、作業者3からボタン操作による応答があったか否かを判定し(ステップS202)、判定結果がNOの場合、すなわち、作業者3からの応答が無い場合には、作業者3への問い合わせから予め定めた一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS204)。ステップS204での判定結果がNOの場合にはステップS202の処理に戻る。また、ステップS204での判定結果がYESの場合には、接近不可状態を維持して(ステップS214)、処理を終了する。これは、接近意思の問い合わせに対して作業者3からの応答が一定時間なければ、接近の意思無しとして取り扱うための処理である。
【0060】
また、ステップS202での判定結果がYESの場合、すなわち、作業者3からの応答があった場合には、応答の内容を確認し(ステップS203)、続いて、応答の内容が接近意思有りの応答であるか否かを判定する(ステップS205)。ステップS205での判定結果がNOの場合には、接近不可状態を維持して(ステップS214)、処理を終了する。
【0061】
ステップS205での判定結果がYESの場合、すなわち、作業者3の接近意思が有る場合には、作業者端末4のメモリに記録されている作業者識別情報を読み出し(ステップS206)、作業者接近意思と作業者識別情報とをセットで油圧ショベル1へ送信する(ステップS207)。
【0062】
その後、オペレータ2からの確認情報が作業者端末4に届いているか否かを判定し(ステップS208)、判定結果がNOの場合には、作業者意思情報を送信してからの経過時間が予め定めた時間を経過しているか否かを判定する(ステップS210)。ステップS210での判定結果がNOの場合には、ステップS208の処理に戻る。また、ステップS210での判定結果がYESの場合には、接近不可状態を維持して(ステップS214)、処理を終了する。これは、オペレータ2からの確認情報が所定の時間たっても得られない場合(通信エラーを含む)、オペレータ2から認知されなかったとして接近不可状態を設定するものである。
【0063】
また、ステップS208での判定結果がYESの場合、すなわち、オペレータ2からの確認状態が届いた場合には、接近確認情報を受信し(ステップS209)、接近確認情報を作業者端末4に送信することで作業者3に提示する(ステップS211)。接近確認情報の作業者3への提示は、作業者端末4への接近確認情報の提示により行う(図4B図4C等参照)。
【0064】
続いて、確認状態が接近認知か否かを判定し(ステップS212)、判定結果がNOの場合、すなわち、接近拒否である場合には、接近不可状態を維持して(ステップS214)、処理を終了する。また、ステップS212での判定結果がYESの場合には、作業者端末4に保持される確認状態を接近認知状態へ移行し(ステップS213)、処理を終了する。
【0065】
続いて、コントローラ11の状態管理装置56の処理内容について説明する。
【0066】
図8において、状態管理装置56は、ステップS301~S303に係る処理と、ステップS304~S307に係る処理と、ステップS308~S311に係る処理とを並列に実行する。これらの処理は、油圧ショベル1の始動時(例えば、エンジンの始動時)に開始される。
【0067】
ステップS301~S303に係る処理は、作業者位置情報と作業者識別情報を作業者端末4から受信しコントローラ11内のメモリに記憶するものである。状態管理装置56は、まず、作業者端末4からの作業者位置情報と作業者識別情報が送信されてきたか否かを判定し(ステップS301)、判定結果がYESの場合は、作業者端末4から送信された作業者位置情報と作業者識別情報を受信し(ステップS302)、作業者位置情報と作業者識別情報をコントローラ11内のメモリにセットで記憶し(ステップS303)、ステップS301の処理に戻る。また、ステップS301での判定結果がNOの場合、すなわち、情報が無い場合には、ステップS301の処理を繰り返す。このように、ステップS301~S303に係る処理では、作業者端末4から送信された情報を受信してメモリに最新情報を書き込む処理を繰り返す。
【0068】
ステップS304~S307に係る処理は、作業者意思情報と作業者識別情報を受信して入出力装置12へ送信するものである。状態管理装置56は、まず、作業者端末4から送信された作業者接近意思情報と作業者識別情報があるか否かを判定し(ステップS304)、判定結果がYESの場合には、作業者接近意思情報と作業者識別情報とを受信し(ステップS305)、作業者識別情報を基に作業者位置情報と作業者接近意思情報を紐付けて、コントローラ11内のメモリに作業者意思情報を記憶させ(ステップS306)、紐付けられた作業者位置情報、作業者接近意思情報、および作業者識別情報を入出力装置12へ送信し(ステップS307)、ステップS304の処理に戻る。また、ステップS304での判定結果がNOの場合、すなわち、情報が無い場合には、ステップS304の処理を繰り返す。
【0069】
ステップS308~S311に係る処理は、入出力装置12から得られたオペレータ2の接近確認情報を作業者端末4へ送信するものである。状態管理装置56は、まず、入出力装置12から接近確認情報と作業者識別情報が届いているか否かを判定し(ステップS308)、判定結果がYESの場合には、接近確認情報と作業者識別情報を受信し(ステップS309)、接近確認情報を作業者識別情報と紐付けて油圧ショベル1のコントローラ11内のメモリに記憶させ(ステップS310)、適切な作業者端末4へ接近確認情報を送信し(ステップS311)、ステップS308の処理に戻る。なお、適切な作業者端末4とは、複数の作業者3が存在する場合に作業者識別情報がどの作業者端末4から送信されたかを記憶しておき、接近確認情報と紐づいた作業者識別情報に対応する作業者端末4を選択するものである。なお、この作業者端末4と作業者識別情報は予め対応付けられたリストなどを油圧ショベル1のコントローラ11に持たせておいてもよい。また、ステップS308での判定結果がNOの場合、すなわち、接近確認情報が届いていない場合には、ステップS308の処理を繰り返す。
【0070】
続いて、コントローラ11の安全動作実行装置57の処理内容について説明する。
【0071】
図9において、安全動作実行装置57は、まず、状態管理装置56から作業者識別情報で紐づいた作業者位置情報と接近確認情報とを読み出す(ステップS401)。このとき、もし状態管理装置56に複数の作業者情報が記憶されていれば、その全てを読み出す。
【0072】
続いて、作業者位置情報が可動領域A1内であるか否かを判定し(ステップS402)、判定結果がNOの場合、すなわち、ステップS401で読み出した全ての作業者位置情報が可動領域A1の外側である場合には、ステップS401の処理に戻る。
【0073】
また、ステップS402での判定結果がYESの場合、すなわち、ステップS401で読み出した作業者位置情報のうちの少なくとも1つが可動領域A1内である場合には、作業者位置が可動領域A1内である作業者3の識別情報に紐づく接近確認情報が全て認知状態であるか否かを判定し(ステップS403)、判定結果がYESの場合、すなわち、可動領域A1内の全ての作業者3が認知状態である場合には、可動領域A1内の作業者3の全員が可動領域A1内での作業を希望し、かつ、油圧ショベル1のオペレータ2もそれを認知している状態であるのでリスクは低いとして、ステップS401の処理に戻る。
【0074】
また、ステップS403での判定結果がYESの場合、すなわち、作業者位置が可動領域A1内である作業者3の識別情報に紐づく接近確認情報の少なくとも1つが認知状態では無い(つまり、接近不可状態である)場合には、安全動作を実行し(ステップS404)、ステップS401の処理に戻る。なお、安全動作とは、例えば、油圧ショベル1のアクチュエータの動作を減速する又は停止したり、音や光でオペレータや周囲作業者に警告を発したりすることである。
【0075】
続いて、入出力装置12の処理内容について説明する。
【0076】
図10において、入出力装置12は、まず、状態管理装置56から送信される作業者接近意思情報と作業者識別情報とが存在するか否かを判定し(ステップS501)、判定結果がNOの場合には、ステップS501の処理を繰り返す。
【0077】
また、ステップS501での判定結果がYESの場合、すなわち、作業者接近意思情報と作業者識別情報とが存在する場合には、その情報を受信し(ステップS502)、受信した情報を基にオペレータへ作業者接近意思があったことを提示する(ステップS503)。作業者接近意思の提示は、入出力装置12の出力部(モニタなど)において、作業者接近意思と共に、オペレータ2が作業者接近意思を認知したか、もしくは作業に集中したいなどの理由で作業者の接近を拒否するかをオペレータ2へ問いかけるボタンを出力部に表示し、オペレータに応答を促すことで行う(図5等参照)。
【0078】
続いて、入出力装置12で表示したボタンが押されたか否かを判定し(ステップS504)、判定結果がNOの場合、すなわち、オペレータ2からの入力が無い場合には、入出力装置12へのボタンの表示から予め定めた一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS506)。
【0079】
ステップS506での判定結果がNOの場合、すなわち、ボタンの表示から一定時間が経過していない場合には、ステップS504の処理に戻る。また、ステップS506での判定結果がYESの場合、すなわち、ボタンの表示から一定時間が経過した場合には、接近拒否として接近確認情報を送信し(ステップS508)、ステップS501の処理に戻る。ステップS506,S508のように、オペレータが一定時間意思表示をしない場合には、安全側に判断して作業者の接近を不可とする。
【0080】
また、ステップS504での判定結果がYESの場合、すなわち、オペレータ2からの応答があった(オペレータ2による入出力装置12の操作が行われた)場合には、オペレータ2の応答結果が作業者の接近意思に対する認知であるか否かを判定し(ステップS505)、判定結果がNOの場合、すなわち、オペレータ2が接近拒否を選択した場合には、ステップS508の処理に進む。また、ステップS505での判定結果がYESの場合、すなわち、オペレータ2が作業者3の接近意思を認知した場合には、接近認知として接近確認情報を状態管理装置56に送信し(ステップS507)、ステップS501の処理に戻る。
【0081】
以上のように構成した本実施の形態においては、油圧ショベル1の周囲で作業を行う作業者3と油圧ショベル1のオペレータ2との意思疎通を図ることができ、意思疎通が取れた状態であれば、生産性の観点から周囲作業を可能とし、意思疎通が取れて居ない状態であれば、安全性の観点から安全動作を実行して周囲作業をしづらい状態とすることができる。このため、作業者の意思に応じた施工支援を行うことができ、作業効率の低下を抑制しつつ作業者の安全性をさらに向上することができる。
【0082】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図11を参照しつつ説明する。
【0083】
本実施の形態は、第1の実施の形態における作業者端末4の各機能を油圧ショベル1に設けた場合を示すものである。
【0084】
図11は、本実施の形態に係る施工支援システムの全体構成を概略的に示す機能ブロック図である。図中、第1の実施の形態と同様の処理には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0085】
図11において、施工支援システムは、油圧ショベル1に備えられた作業者位置情報取得装置50、作業者識別情報取得装置51、接近意思検知装置52、接近確認提示装置53、状態管理装置56、安全動作実行装置57、接近意思提示装置58、及び、接近確認取得装置59とから構成されている。状態管理装置56および安全動作実行装置57は、油圧ショベル1に搭載されたコントローラ11により実現される。
【0086】
作業者位置情報取得装置50は、油圧ショベル1に搭載されたカメラやレーザセンサなどで、油圧ショベル1に対する作業者3の相対位置を取得できる実施装置である。
【0087】
作業者識別情報取得装置51は、油圧ショベル1に搭載されたカメラなどであり、作業者3の顔やマーカなどの情報を読み取って識別することで実現される。なお、マーカを用いる場合は、例えば、作業者3の装着するヘルメットや衣服などに作業者毎に異なるものを予め付しておくことで実現できる。
【0088】
接近意思検知装置52は、例えば、作業者3の腕を振る動作などのジェスチャーを油圧ショベル1に搭載したカメラなどのセンサで取得することなどにより作業者3の接近意思の検知が実現される。予めわかりやすいジェスチャーを接近意思であると設定しておき、そのようなジェスチャーを作業者が行ったか否かを認識することで作業者3の接近意思を検知することができる。
【0089】
接近確認提示装置53は、油圧ショベル1に周囲作業者向けのモニタやスピーカを搭載することで実現される。光や音によって、オペレータ2が接近認知したか接近拒否したかを作業者3に伝えることができる。
【0090】
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0091】
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0092】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0093】
(1)上記の実施の形態では、作業者3と作業機械(例えば、油圧ショベル1)との位置関係と、前記作業機械の周囲に設定され前記作業機械が到達可能な可動領域及び前記可動領域に対し外側に設定される通知領域と、に基づいて前記作業機械の施工を支援する施工支援処理を行うコントローラ11を備えた施工支援システムにおいて、作業者の位置情報を取得する作業者位置情報取得装置50と、作業者の前記作業機械への接近の意思を検知する接近意思検知装置52と、前記接近意思検知装置の検知結果を前記作業機械のオペレータ2へ提示する接近意思提示装置58と、前記接近意思提示装置の提示内容への前記作業機械のオペレータによる確認状態を取得する接近確認取得装置59とを備え、前記コントローラは、前記通知領域に作業者がいると判定された場合には、作業者に対して前記作業機械の周囲で作業を行う意思があるかないかを問い合わせると共に、前記可動領域に作業者がいると判定された場合には、前記接近確認取得装置が取得した確認状態が、前記作業機械のオペレータが作業者の接近を拒否、または、前記作業機械のオペレータが作業者の接近の意思を確認していないときには、安全動作を実行するものとした。
【0094】
これにより、作業者の意思に応じた施工支援を行うことができ、作業効率の低下を抑制しつつ作業者の安全性をさらに向上することができる。
【0095】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の施工支援システムにおいて、作業者3が携帯する作業者端末4をさらに備え、前記作業者端末は、前記作業者位置情報取得装置50および前記接近意思検知装置52を有する端末(例えば、作業者端末4)を有するものとした。
【0096】
(3)また、上記の実施の形態では、(1)または(2)の施工支援システムにおいて、前記施工支援処理は、前記作業機械(例えば、油圧ショベル1)の動作速度を減速あるいは停止させるものとした。
【0097】
(4)また、上記の実施の形態では、(1)または(2)の施工支援システムにおいて、前記施工支援処理は、作業者3に対して音、光、または振動によって前記作業機械(例えば、油圧ショベル1)への接近警告を行うものとした。
【0098】
(5)上記の実施の形態では、作業者3と作業機械(例えば、油圧ショベル1)との位置関係と、前記作業機械の周囲に設定され前記作業機械が到達可能な可動領域及び前記可動領域に対し外側に設定される通知領域と、に基づいて前記作業機械の施工を支援する施工支援処理を行うコントローラ11を備えた作業機械において、作業者の位置情報を取得する作業者位置情報取得装置50と、作業者の前記作業機械への接近の意思を検知する接近意思検知装置52と、前記接近意思検知装置の検知結果を前記作業機械のオペレータ2へ提示する接近意思提示装置58と、前記接近意思提示装置の提示内容への前記作業機械のオペレータによる確認状態を取得する接近確認取得装置59とを備え、前記コントローラは、前記通知領域に作業者がいると判定された場合には、作業者に対して前記作業機械の周
囲で作業を行う意思があるかないかを問い合わせると共に、前記可動領域に作業者がいると判定された場合には、前記接近確認取得装置が取得した確認状態が、前記作業機械のオペレータが作業者の接近を拒否、または、前記作業機械のオペレータが作業者の接近の意思を確認していないときには、安全動作を実行するものとした。
【0099】
(6)また、上記の実施の形態では、(5)の作業機械(例えは、油圧ショベル1)において、前記施工支援処理は、前記作業機械の動作速度を減速あるいは停止させるものとした。
【0100】
(7)また、上記の実施の形態では、(5)の作業機械(例えは、油圧ショベル1)において、前記施工支援処理は、作業者3に対して音または光によって前記作業機械への接近警告を行うものとした。
【0101】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…油圧ショベル、1A…作業装置、1B…上部旋回体、1C…下部走行体、2…オペレータ、3,3a~3c…作業者、4…作業者端末、11…コントローラ、12…入出力装置、20…運転室、41…モニタ、50…作業者位置情報取得装置、51…作業者識別情報取得装置、52…接近意思検知装置、53…接近確認提示装置、54,55…通信装置、56…状態管理装置、57…安全動作実行装置、58…接近意思提示装置、59…接近確認取得装置、A1…可動領域、A2…通知領域、A3…通知外領域
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
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図10
図11