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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】薬剤包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/34 20060101AFI20230413BHJP
   A61J 1/03 20230101ALI20230413BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230413BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20230413BHJP
   B65D 83/04 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B65D75/34
A61J1/03 370
B65D65/40 D
B65D77/20 C
B65D83/04 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019236618
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104830
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】512249331
【氏名又は名称】第一三共エスファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 竜之
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-053109(JP,A)
【文献】特開2011-168297(JP,A)
【文献】特開2002-019256(JP,A)
【文献】特開平11-321873(JP,A)
【文献】特表2008-506565(JP,A)
【文献】実公平05-009339(JP,Y2)
【文献】特開2015-030507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/34
B65D 77/20
B65D 65/40
A61J 1/03
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を包装するための薬剤包装体であって、
薬剤収容部を有する透明な樹脂シートと、前記薬剤収容部の開口部を密閉するようにして前記樹脂シートの裏面に接着されるカバーフィルムとを備え、
前記カバーフィルムが、順に、前記樹脂シートの裏面に対向して接着される透明なヒートシール層、印刷層、ベース層及びオーバープリント層が少なくとも積層されてなり、
前記印刷層が発光領域を含み、
前記発光領域が、前記薬剤収容部の前記開口部を除く領域に対応する、前記ベース層の表面の全部又は一部の領域に形成されている、薬剤包装体。
【請求項2】
薬剤を包装するための薬剤包装体であって、
薬剤収容部を有する透明な樹脂シートと、前記薬剤収容部の開口部を密閉するようにして前記樹脂シートの裏面に接着されるカバーフィルムとを備え、
前記カバーフィルムが、順に、前記樹脂シートの裏面に対向して接着される透明なヒートシール層、第一印刷層、ベース層、第二印刷層及び透明なオーバープリント層が少なくとも積層されてなり、
前記第一印刷層及び前記第二印刷層が発光領域を含み、
前記第一印刷層の発光領域が、前記薬剤収容部の前記開口部を除く領域に対応する、前記ベース層の表面の全部又は一部の領域に形成されており、
前記第二印刷層の発光領域が、前記ベース層の裏面の全部又は一部の領域に形成されている、薬剤包装体。
【請求項3】
前記発光領域が蓄光性を有するインクで印刷された領域である、請求項1又は2に記載の薬剤包装体。
【請求項4】
前記発光領域が蛍光性を有するインクで印刷された領域である、請求項1又は2に記載の薬剤包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を包装するための薬剤包装体に関し、特に当該薬剤包装体の所在若しくはその置き場所の探索を助け、又はその所在の確認を容易にする等の薬剤包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤等の経口投与薬剤を包装する薬剤包装体として、代表的なものにPTP(Press Through Pack)シートがある。PTPシートは、複数のポケット(ブリスターともいう。)にそれぞれ薬剤を収容した樹脂シートと、樹脂シートの裏側に貼り付けられてポケットを封止するアルミニウム等の金属箔であるカバーフィルムとから構成される。薬剤の服用者は、PTPシートのポケットを潰してカバーフィルムを押し破ることにより薬剤を容易に取り出すことができる。また、PTPシートは、薬剤がポケットに密封されることでその有効成分の変質等を防ぐことができ、また保管や持ち運びにおいても非常に便利であることから、在宅処方薬の包装体として広く用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、一定のスペースに多くの情報を表示するために、蛍光発光インクからなるインクジェット印刷層を備えたPTP用包装シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-6501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したようにPTPシート等の包装体は、保管性や携帯性において優れている反面、その手軽さから、服用者自身が何処にしまったか忘れてしまう場合がある。また、夜間の停電時等の暗闇や、物が乱雑に散らかった部屋で患者等が薬剤を探すのに手間取るといったことも指摘されている。特に抗生物質のように決められた間隔での服用が求められる医薬においては、服用期間の徒過による思わぬ弊害や副作用を招くおそれもある。
【0006】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、例えば夜間の停電時等の暗闇や、物が乱雑に散らかった環境下等においても、薬剤の所在位置の特定を助け、又はその所在の確認を容易にする等の技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、薬剤を包装するための薬剤包装体であって、薬剤収容部を有する透明な樹脂シートと、前記薬剤収容部の開口部を密閉するようにして前記樹脂シートの裏面に接着されるカバーフィルムとを備え、前記カバーフィルムが、順に、前記樹脂シートの裏面に対向して接着される透明なヒートシール層、ベース層、印刷層及びオーバープリント層が少なくとも積層されてなり、前記印刷層が発光領域を含む、薬剤包装体である。
【0008】
また、本発明は、薬剤を包装するための薬剤包装体であって、薬剤収容部を有する透明な樹脂シートと、前記薬剤収容部の開口部を密閉するようにして前記樹脂シートの裏面に接着されるカバーフィルムとを備え、前記カバーフィルムが、順に、前記樹脂シートの裏面に対向して接着される透明なヒートシール層、印刷層、ベース層及びオーバープリント層が少なくとも積層されてなり、前記印刷層が発光領域を含む、薬剤包装体である。
【0009】
薬剤包装体は、前記発光領域が、前記薬剤収容部の前記開口部を除く領域に対応する、前記ベース層の表面の全部又は一部の領域に形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、薬剤を包装するための薬剤包装体であって、薬剤収容部を有する透明な樹脂シートと、前記薬剤収容部の開口部を密閉するようにして前記樹脂シートの裏面に接着されるカバーフィルムとを備え、前記カバーフィルムが、順に、前記樹脂シートの裏面に対向して接着される透明なヒートシール層、第一印刷層、ベース層、第二印刷層及び透明なオーバープリント層が少なくとも積層されてなり、前記第一印刷層及び前記第二印刷層が発光領域を含み、前記第一印刷層の発光領域が、前記薬剤収容部の前記開口部を除く領域に対応する、前記ベース層の表面の全部又は一部の領域に形成されており、前記第二印刷層の発光領域が、前記ベース層の裏面の全部又は一部の領域に形成されている、薬剤包装体である。
【0011】
薬剤包装体は、前記発光領域が蓄光性を有するインクで印刷された領域であることが好ましい。
【0012】
また、薬剤包装体は、前記発光領域が蛍光性を有するインクで印刷された領域であるものでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば夜間の停電時の暗闇や、物が乱雑に散らかった環境下等においても、薬剤包装体本体が発光することで、その所在場所の確認を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】PTPシートの外観斜視図である。
図2】第1の実施形態によるPTPシートの層構造を示す部分断面図である。
図3】第2の実施形態によるPTPシートの層構造を示す部分断面図である。
図4】第3の実施形態によるPTPシートの層構造を示す部分断面図である。
図5】第4の実施形態によるPTPシートの平面図である。
図6図5のPTPシートの光反射作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照していくつか説明する。図1は、薬剤包装体の一例である、一般的なPTPシート10の外観を示す斜視図である。PTPシート10は、錠剤Mが収容される複数のポケット11a、11a、・・・が形成された透明樹脂シート11と、透明樹脂シート11の裏面に接着された、カバーフィルム12とを有している。カバーフィルム12は、ポケット11a、11a、・・・の開口部を密閉するようにして透明樹脂シート11の裏面に接着されている。
【0016】
PTPシート10から錠剤Mを取り出す場合、ポケット11aの頂部に指を押し当て、ポケット11aを潰しながら錠剤Mをカバーフィルム12側に押しつける。これにより、カバーフィルム12の錠剤Mが押しつけられた箇所が破れることで、錠剤MをPTPシート10から取り出すことができる。また、例えば紙製又は樹脂製のカバーフィルムを有するピールオフタイプの包装体の場合、カバーフィルムをシートから剥がすことによって錠剤を取り出すことができる。
【0017】
透明樹脂シート11は、適宜の熱成形法(真空成形法又は圧縮空気圧成形法等)により、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)又はCPP(無軸延伸ポリプロピレン)等の透明な熱可塑性樹脂のシートから一体成形される。透明樹脂シート11の厚さは例えば0.2~0.5mmである。なお、ここでは、透明樹脂シート11においてポケット11aが突設される側面を表面とし、その反対側面を裏面とする。
【0018】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態によるPTPシート10の層構造を示す断面図である。本実施形態において、カバーフィルム12は、表面側から順に、樹脂シート11の裏面に対向して接着される透明なヒートシール層121、ベース層122、印刷層123及びオーバープリント層124が積層された多層構造を有している。
【0019】
ヒートシール層121は、透明樹脂シート11の裏面側にカバーフィルム12を接着又は溶着させるための層である。ヒートシール層121は、例えばカバーフィルム12と同一の樹脂(例えばVC(塩化ビニル)又はPP(ポリプロピレン))を混合したものを主剤とする樹脂コート剤を使用し、グラビアコート等での塗布により形成することができる。
【0020】
ベース層122は、例えば軟質のアルミニウム箔を用いることができる。また、ベース層122は、アルミニウム箔の一方の面が光沢面(鏡面)、その他の面が艶消面(マット面)になっているタイプ、両面とも光沢面(鏡面)になっているタイプ、両面とも艶消面(マット面)になっているタイプのいずれを用いてもよい。
【0021】
印刷層123は、ベース層122の裏面の全部又は一部の領域に形成することができる。また、印刷層123には、例えば文字、図形、記号等であって、具体的には、薬剤の品名、用量、効能、効果等の不変情報や、製造年月日、ロット番号、有効期限等の可変情報等を印刷することができる。本実施形態による印字層123は、上述した文字、図形、記号等の通常の表示をする通常表示領域123Aの他、蓄光性及び/又は蛍光性を有する透光性発光インクで印刷された発光領域123Bを含む。この発光領域123Bは、PTPシート10の所在確認を容易にするため、ベース層122の裏面の全部又は略全部の領域にわたり形成されることが好ましい。また、発光インクを透光性としたことで、ベース層122の裏面での光反射を利用して、PTPシート10の発光効率を向上させることができる。
【0022】
オーバープリント層124は、カバーフィルム12の裏面側最外層に形成されている。オーバープリント層124は、例えばニトロセルロース系、アクリル系、エポキシ系等の透明樹脂からなるOPコート剤をグラビアコート等で塗布して形成することができる。
【0023】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態によるPTPシート10の層構造を示す断面図である。本実施形態において、カバーフィルム12は、表面側から順に、樹脂シート11の裏面に対向して接着される透明なヒートシール層121、印刷層125、ベース層122及びオーバープリント層124が積層された多層構造を有している。
【0024】
ここで、ヒートシール層121、ベース層122及びオーバープリント層124は、上述の第1の実施形態で説明したものと同様の層要素であり、それぞれの層の素材、構造及び製造方法については、第1の実施形態の説明が参照される。
【0025】
印刷層125は、ベース層122の表面の全部又は一部の領域に形成することができる。また、印刷層125は、文字、図形、記号等の通常の表示をする通常表示領域125Aの他、蓄光性及び/又は蛍光性を有する透光性発光インクで印刷された発光領域125Bを含む。この発光領域125Bは、PTPシート10の所在確認を容易にし、そして、樹脂シート11のポケット11a内の錠剤Mへのコンタミ(不純物の浸入による汚染)を防ぐため、ポケット11a、11a、11a、・・・の開口部を除く領域に対応する、ベース層122の表面の全部又は一部の領域に形成されることが好ましい。また、発光インクを透光性としたことで、ベース層122の表面での光反射を利用して、PTPシート10の発光効率を向上させることができる。
【0026】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態によるPTPシート10の層構造を示す断面図である。本実施形態において、カバーフィルム12は、表面側から順に、樹脂シート11の裏面に対向して接着される透明なヒートシール層121、第一印刷層125、ベース層122、第二印刷層123及びオーバープリント層124が積層された多層構造を有している。
【0027】
ここで、ヒートシール層121、ベース層122及びオーバープリント層124は、上述の第1の実施形態で説明したものと同様の層要素であり、それぞれの層の素材、構造及び製造方法については、第1の実施形態の説明が参照される。
【0028】
第一印刷層125は、ベース層122の表面の全部又は一部の領域に形成することができる。また、第一印刷層125は、文字、図形、記号等の通常の表示をする通常表示領域125Aの他、蓄光性及び/又は蛍光性を有する透光性発光インクで印刷された発光領域125Bを含む。この発光領域125Bは、PTPシート10の所在確認を容易にし、そして、樹脂シート11のポケット11a内の錠剤Mへのコンタミ(不純物の浸入による汚染)を防ぐため、ポケット11a、11a、11a、・・・の開口部を除く領域に対応する、ベース層122の表面の全部又は一部の領域に形成されることが好ましい。
【0029】
第二印刷層123は、ベース層122の裏面の全部又は一部の領域に形成することができる。また、第二印刷層123は、通常表示領域123Aの他、蓄光性及び/又は蛍光性を有する、透光性発光インクで印刷された発光領域123Bを含む。この発光領域123Bは、PTPシート10の所在確認を容易にするため、ベース層122の裏面の全部又は略全部の領域にわたり形成されることが好ましい。
【0030】
第一印刷層125及び第二印刷層123に塗布する発光インクを透光性としたことで、ベース層122の表裏両面での光反射を利用して、PTPシート10の発光効率を向上させることができる。
【0031】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態によるPTPシート10の平面図である。本実施形態によるPTPシート10は、錠剤Mが収容される複数のポケット11a、11a、・・・が形成された透明樹脂シート11と、透明樹脂シート11の裏面に接着された、アルミニウム箔からなる多面反射アルミカバーフィルム13とを有している。多面反射アルミカバーフィルム13は、ポケット11a、11a、・・・の開口部を密閉するようにして透明樹脂シート11の裏面に接着されている。
【0032】
多面反射アルミカバーフィルム13は、軟質のアルミニウム箔層の表裏両面に、光を多面的に反射させる鏡面処理が施されている。ここで、光を多面的に反射させる鏡面処理とは、光が照射された位置に応じて、複数の方向(例えば図5では上下左右の4方向)の何れかの方向に角度を変えて光を反射させるよう、例えばグロス加工やスクラッチ加工された表面処理をいう。例えば、多面反射アルミカバーフィルム13に対し垂直に光が照射されると、その反射位置に応じて、互いに異なる斜め方向に光を反射させる。このような多面反射処理をカバーフィルム13に施すことにより、雑然とした環境にPTPシート10が置かれた場合でも、PTPシート10が輝くように目立たせて、その発見を容易にすることができる。
【0033】
また、本実施形態による多面反射処理を施したアルミニウム箔をベース層に用いて、その全面又は一部の領域に、上述した第1ないし第3の実施形態の蓄光性及び/又は蛍光性を有する発光領域を形成してもよい。
【0034】
以上、例示的に実施形態を説明したPTPシート10によれば、蓄光性及び/又は蛍光性を有する発光領域をカバーフィルム12、13に形成したので、例えば夜間の停電時の暗闇の中であっても本体が発光してその所在を光で知らせ、その発見を容易にすることができる。また、物が乱雑に散らかった場所でも、PTPシート10本体が発光し又は光が乱反射し輝くように目立たせることで、その所在場所の確認を容易にすることができる。
【0035】
なお、本発明を実施するにあたって、薬剤包装体は、カバーフィルムにアルミニウム箔のベース層を含むPTPシートに限定されない。例えば紙や樹脂をベース層に用いたピールオフタイプのPTPであってもよい。更に、PTP以外にも、例えば、ブリスターパック、複数種類の薬剤を一包化した包装袋や分包シート、更にピロー包装体や包装箱、大入袋等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
10 PTPシート
11 透明樹脂シート
11a ポケット
12 カバーフィルム
13 多面反射アルミカバーフィルム
121 ヒートシール層
122 ベース層
123 印刷層(第二印刷層)
123A 通常表示領域
123B 発光領域
124 オーバープリント層
125 印刷層(第一印刷層)
125A 通常表示領域
125B 発光領域
M 錠剤(薬剤)
図1
図2
図3
図4
図5
図6