IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プジョー シトロエン オトモビル エスアーの特許一覧 ▶ ジョージア テック ロレーヌの特許一覧 ▶ サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィクの特許一覧

特許7261741ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ
<>
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図1
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図2
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図3
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図3a
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図4a
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図4b
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図4c
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図5-5a
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図6
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図7
  • 特許-ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】ガス状または液体成分を検出するための選択的高電子移動度トランジスタを備える検出センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20230413BHJP
   G01N 27/12 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
G01N27/00 J
G01N27/12 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019541874
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017076377
(87)【国際公開番号】W WO2018069553
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】506213290
【氏名又は名称】プジョー シトロエン オトモビル エスアー
【氏名又は名称原語表記】PEUGEOT CITROEN AUTOMOBILES S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】519135507
【氏名又は名称】ジョージア テック ロレーヌ
【氏名又は名称原語表記】GEORGIA TECH LORRAINE
(73)【特許権者】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】オーブリー,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ウガッザデン,アブダラー
(72)【発明者】
【氏名】サルヴェスティーニ,ジャン-ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヴォス,ポール
(72)【発明者】
【氏名】アルファヤ,ヤシーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,クリス
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02498522(GB,A)
【文献】特開2003-247972(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0288378(US,A1)
【文献】特開2011-094969(JP,A)
【文献】特開2016-161446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0045600(US,A1)
【文献】特開2014-022745(JP,A)
【文献】特表2006-508348(JP,A)
【文献】国際公開第2014/104156(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0315075(US,A1)
【文献】HALFAYA, Y. et al.,Investigation of the Performance of HEMT-Based NO, NO2 and NH3 Exhaust Gas Sensors for Automotive Antipollution Systems,Sensors,2016年02月23日,Vol. 16, Article No. 273 ,pp. 1-12,doi:10.3390/s16030273
【文献】BISHOP, C. et al.,Experimental Study and Device Design of NO, NO2, and NH3 Gas Detection for a Wide Dynamic and Large Temperature Range Using Pt/AlGaNGaN HEMT,IEEE Sensors Journal,2016年07月19日,Vol. 16,pp. 6828-6838,doi:10.1109/JSEN.2016.2593050
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/92
G01N 33/00 - G01N 33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース(2)と、ドレイン(3)とを備え、ゲート(4)がソース(2)とドレイン(3)との間に挿入される高電子移動度トランジスタを有する少なくとも1つの収集セルを備えるセンサ(1)によってガス状または液体混合物中に存在するいくつかの成分の中から少なくとも1つの特定の成分を検出または測定する方法であって、ドレイン(3)-ソース(2)間電圧が印加され、前記収集セルの電流強度(Imeas)が記録され、前記ソース(2)-ドレイン(3)間電圧の駆動は前記電流強度(Imeas)を変化させ、前記電圧は、前記少なくとも1つの特定の成分の特性である強度を有するプロファイルを供給するために実験によって予め決定された電圧モデルに従って、異なる電圧について、駆動されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの特定の成分の特性である強度を有する前記プロファイルが、前記センサ(1)の前記電流強度(Imeas)の符号の反転を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサ(1)の前記同じトランジスタが、異なる特定の成分専用の異なる予め決定された電圧モデルに連続的に従う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記予め決定された電圧モデルが、高周波電圧スケール上にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
検出または測定される前記成分が、一酸化窒素、二酸化窒素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素および酸素の中から個別にまたは組み合わせて採取され、これらの成分が、自動車の排気ラインによって排出されるガス中に含まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ソース(2)と、ドレイン(3)とを備え、ゲート(4)が前記ソース(2)と前記ドレイン(3)との間に挿入される高電子移動度トランジスタを有する少なくとも1つの収集セルを備えるセンサ(1)を洗浄するための方法であって、前記センサ(1)は、請求項1~5のいずれか一項に記載の、ガス状または液体混合物中に存在するいくつかの成分に特有の少なくとも1つの成分を検出または測定するための方法に従って動作し、分極電圧は、前記ソース(2)、前記ドレイン(3)および前記ゲート(4)のうちの要素の少なくとも2つの間に、または前記ソース(2)、前記ドレイン(3)および前記ゲート(4)のうちの要素の2つの間に連続的に挿入された電極(9)によって印加され、前記分極電圧または前記電極(9)の前記電圧は、前記センサ(1)の前記ゲート(4)に保持された前記少なくとも1つの特定の成分のイオンを放出するために予め決定されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
ガス状または液体混合物中に存在するいくつかの成分の中から少なくとも1つの特定の成分を検出または測定するためのセンサ(1)であって、前記センサ(1)は、ソース(2)と、ドレイン(3)とを備え、ゲート(4)が前記ソース(2)と前記ドレイン(3)との間に挿入される高電子移動度トランジスタを有する少なくとも1つの収集セルを備え、前記センサ(1)は、前記ソース(2)と前記ドレイン(3)との間に電圧を印加するための手段と、前記収集セルの電流強度(Imeas)を監視するための手段とを有するマイクロプロセッサを備え、前記マイクロプロセッサは、記憶手段によって保存された電圧モデルに従った電圧駆動手段と、異なる電圧について前記電圧モデルの印加中に前記電流強度(Imeas)を記録するための手段と、前記記憶手段によって保存された前記少なくとも1つの特定の成分の強度プロファイル特性を認識するための手段とを備えることを特徴とする、センサ。
【請求項8】
前記ソース(2)、前記ドレイン(3)および前記ゲート(4)のうちの要素の少なくとも2つの間に再生電圧を適用するための手段、または前記ソース(2)、前記ドレイン(3)および前記ゲート(4)のうちの要素の2つの間に連続して延びる連続スロットの形態の電極(9)と、再生電圧を前記電極(9)に適用するための手段とを備え、前記再生電圧は、前記センサ(1)によって保持された前記少なくとも1つの特定の成分のイオンを放出することによって前記センサ(1)の再生を行うのに十分である、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
少なくとも2つの検出または測定センサ(1)のアセンブリであって、各センサ(1)は、ガス状または液体混合物中に存在するそれぞれの特定の成分を検出し、前記少なくとも2つのセンサ(1)は、請求項7または8に記載のとおりであり、前記少なくとも2つのセンサ(1)の各々は、前記少なくとも1つの特定の成分の特性である記憶された電圧駆動モデルおよび記憶された強度プロファイルを有し、それぞれの成分の選択的検出は、前記少なくとも2つのセンサ(1)の各々によって行われることを特徴とする、アセンブリ。
【請求項10】
自動車の内燃機関の排気ラインであって、請求項7または8に記載の少なくとも1つのセンサ(1)または請求項9に記載の少なくとも2つの検出または測定センサ(1)の少なくとも1つのアセンブリを備え、前記ガス状または液体混合物は、前記排気ラインを通過する排気ガスによって形成され、前記少なくとも1つの特定の成分または少なくとも2つの特定の成分は、それぞれ前記排気ガス中に含まれる1つまたは複数の汚染物質であることを特徴とする、排気ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状または液体混合物中に存在する特定の成分を検出または測定するためのセンサに関し、センサは、高電子移動度トランジスタを有する収集セルを備える。
【0002】
頭字語HEMTとしても知られる高電子移動度トランジスタは、ソースと、ドレインとを備え、ゲートがソースとドレインとの間に挿入されている。収集セルの動作は、ゲートである制御電極の静電作用による、ソースおよびドレインである2つのオーミック接触間の導電性に基づいている。
【0003】
以下では、自動車の排気ラインによって内燃機関から排出された排気ガス中に存在する汚染要素を選択的に検出するためのセンサとして、本発明によるセンサの好ましい用途を開発する。この用途は、本発明を限定するものではない。
【0004】
車両からの排気ガスには多数の化学成分が含まれていることが知られており、その一部は人の健康に、一部は環境に有害である。これらの汚染物質を環境および健康のために制限するために、これらの化学成分の測定および/または検出のための規制がヨーロッパ、米国および日本で導入されている。
【0005】
これらの危険な化学成分の一部を形成する窒素酸化物(以下、それらの化学式NOと表記する)に関しては、排出制限がますます厳しくなり、NO、NO、NOなどを含む異なる窒素酸化物には特異的であるかもしれないが、NOは、全体的に現在規制されている。
【0006】
車両の排気ガスに現在使用されているセンサは、ラムダプローブとしても知られるNOセンサおよびOプローブである。それらは、固体電解質の動作原理とネルンストの法則に基づいており、かつイットリウムドープ酸化ジルコニウムに基づいている。
【0007】
これらのNOセンサは、異なるガス間で選択的ではなく、ガスNO、NO、NO、NHに対応する全体の濃度を検出する。さらに、それらの応答時間は長く、これらのセンサは比較的高価である。
【0008】
光学センサ、金属酸化物センサ、音響センサ、重力センサなどのような他の異なるガスセンサ技術が存在する。しかし、現在のところ、O、H、NO、NO、NO、CO、COなどの異なるガス状種において、車両の排気システム環境に耐性があり、選択的である高感度、高速、低コストのセンサは存在しない。
【0009】
それ故、ガス間で選択的な新世代のセンサが規制のこの発展に従うために必要である。さらに、アンモニアまたはNHの濃度とNO/NO比とを別々に決定することを可能にするセンサは、略称SCRとしても知られる選択的触媒還元システムの規制を改善することを可能にし、最初に尿素系混合物の形態で還元剤が分解することから生じるNHの注入によってNOを低減する。
【0010】
これに関連して、窒化物(III-N)半導体に基づくガスセンサの開発に関して研究が行われてきた。III-N材料をベースとする半導体は、禁制帯が広い材料であり、これはガスセンサ用途に対する関心を持たせる。それらの熱安定性およびそれらの高い絶縁破壊電圧は、例えば自動車用の排気ラインおよび/または内燃機関に当てはまる高温用途にセンサを適したものにする。
【0011】
センサを使用したそのような排気ガスの測定は、本質的な利点をもたらす。実際、排気ガスの環境は、遭遇する高温の観点から非常に強調されている。
【0012】
電気接点を取り除くことにより、必要なコネクタに関連するコストの制約を回避することが可能になる。さらに、高温環境におけるこれらのコネクタの性能は、温度に関して制限要因となる可能性があり、センサ自体の機能ではない。
【0013】
センサは、液体環境またはアクセスが困難な環境でも動作することができ、液体含有量の測定も可能にし得る。これはまた、もはやコネクタを必要としないセンサの容積を減らすことを可能にする。
【0014】
しかしながら、液体またはガス状混合物中の成分を測定および/または検出するためのセンサは、特にこの成分単独に関連する必要がある、検出される成分の選択性に関して改善することができる。
【0015】
米国特許出願公開第2013/0288378号明細書は、化学的環境において1つまたは複数の成分を検出および測定するために使用される1つまたは複数のセンサを開示している。この1つまたは複数のセンサは、二次元電子ガスを含む界面領域を含む半導体構造に基づいている。成分(単数または複数)と反応する触媒を、半導体構造と接触させる。触媒によって1つまたは複数の成分から除去された粒子は、触媒と構造との間の界面で半導体構造の表面を不動態化し、触媒付近のガス中の電荷密度の変化を引き起こす。
【0016】
この基本構造が高電子移動度トランジスタまたはショットキーダイオードなどの電子装置に組み込まれると、電荷密度の変化は、装置の電気応答の変化として現れる。例えば、高電子移動度トランジスタでは、電荷密度の変化は、トランジスタを通る電流の変化の形で現れ、ショットキーダイオードでは、電荷密度の変化は、静電容量の変化の形で現れる。他方、この文献は、そのような装置によって成分を具体的に検出することがいかに可能であろうかを開示も示唆もしていない。
【0017】
したがって、本発明の基礎を形成する問題は、ガス状または液体混合物中に含まれる成分を検出および/または測定するためのセンサに関し、センサは、高電子移動度トランジスタを有する収集セルを備え、ガス状または液体混合物中に存在する他の異なる成分に関して選択的にこの成分含有量を正確に検出および/または測定する。
【0018】
この目的を達成するために、ガス状または液体混合物中に存在するいくつかの成分の中から少なくとも1つの特定の成分を検出または測定する方法は、ソースと、ドレインとを備え、ゲートがソースとドレインとの間に挿入される高電子移動度トランジスタを有する少なくとも1つの収集セルを備えるセンサによって本発明に従って提供され、ドレイン-ソース間電圧が印加され、収集セルの電流強度が記録され、ドレイン-ソース間電圧は、駆動されて電流強度を変化させ、電圧は、前記少なくとも1つの特定の成分の強度特性を有するプロファイルを供給するために実験によって予め決定された電圧モデルに従って駆動されることを特徴とする。
【0019】
技術的効果は、異なるドレイン-ソース間電圧によって、検出される特定の成分に対する選択性を大幅に改善することを可能にするセンサまたはセンサのアセンブリを得ることである。本発明による方法は、現在の方法、特にはるかに長い応答時間を必要とする温度でのサイクルと比較して非常に有利である。
【0020】
本発明による方法を使用することによって、選択性は、単に異なるドレイン-ソース間電圧によって複数のセンサを制御することによって、または単に単一のセンサでこの電圧を駆動することによって1秒未満で達成することができる。この制御は、特に排気ガスを測定および制御する用途のために、ガスまたは液体の検出およびガスまたは液体の測定において選択的かつ非常に迅速な、高電子移動度トランジスタを有するセンサまたはセンサのアレイを得ることを可能にする。
【0021】
この解決策の利点は、異なる成分間の選択性、応答時間の改善およびコストの削減である。
【0022】
有利には、前記少なくとも1つの特定の成分の強度プロファイル特性は、センサの電流強度の符号の反転を有する。
【0023】
有利には、センサの同じトランジスタは、異なる特定の成分専用の異なる所定のモデルに連続的に従う。
【0024】
有利には、所定の電圧モデルは、高周波電圧スケール上にある。
【0025】
有利には、検出または測定される成分は、一酸化窒素、二酸化窒素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素および酸素の中から個別にまたは組み合わせて採取され、これらの成分は、自動車の排気ラインによって排出されるガス中に含まれる。
【0026】
本発明はまた、ソースと、ドレインとを備え、ゲートがソースとドレインとの間に挿入される高電子移動度トランジスタを有する少なくとも1つの収集セルを備えるセンサを洗浄するための方法に関し、センサは、ガス状または液体混合物中に存在するいくつかの成分の中から少なくとも1つの特定の成分を検出または測定するためのそのような方法に従って動作し、分極電圧は、ソース、ドレインおよびゲートのうちの要素の少なくとも2つの間に、またはソース、ドレインおよびゲートのうちの要素の2つの間に連続的に挿入された電極によって印加され、分極電圧または電極の電圧は、センサのゲートに保持された前記少なくとも1つの特定の成分からイオンを放出するために予め決定されることを特徴とする。
【0027】
電圧の印加は、感応面積の温度を上昇させ、感応面積によって捕捉されたガスイオンの放出を引き起こす。この表面の放出は、結合を破壊することによって、センサをその初期の状況に再生する。典型的には、高電子移動度トランジスタを有するセンサは、再生するために300℃の温度上昇を必要とする。電圧を弱い面積、例えばゲートに印加することによって、この局所的な温度上昇は、センサ全体の温度を上昇させることなく十分となる。
【0028】
この新規な方法は、他のセンサが動作し続けている間に特定のセンサの再生を可能にするセンサのアレイの場合にセンサの迅速で目標とされた再生を可能にし、ガスの連続的な測定を保証する。
【0029】
本発明は、ガス状または液体混合物中に存在するいくつかの成分の中から少なくとも1つの特定の成分を検出または測定するためのセンサに関し、センサは、ソースと、ドレインとを備え、ゲートがソースとドレインとの間に挿入される高電子移動度トランジスタを有する少なくとも1つの収集セルを備え、センサは、ソース-ドレイン間電圧を印加するための手段と、収集セルの電流強度を監視するための手段とを有するマイクロプロセッサを備え、マイクロプロセッサは、記憶手段によって保存された電圧モデルに従って電圧を駆動するための手段と、電圧モデルの印加中に電流強度を記録するための手段と、記憶手段によって保存された前記少なくとも1つの特定の成分の強度プロファイル特性を認識するための手段とを備えることを特徴とする。
【0030】
有利には、センサは、ソース、ドレインおよびゲートのうちの要素の少なくとも2つの間に再生電圧を印加するための手段、またはソース、ドレインおよびゲートのうちの要素の2つの間に連続して延びる連続スロットの形態の電極と、再生電圧を電極に印加するための手段とを備え、再生電圧は、前記少なくとも1つの特定の成分からのセンサによって保持されたイオンの放出によってセンサの再生を行うのに十分である。
【0031】
本発明は、少なくとも2つの検出または測定センサのアセンブリに関し、各センサは、ガス状または液体混合物中に存在するそれぞれの特定の成分を検出し、前記少なくとも2つのセンサは、前述のとおりであり、前記少なくとも2つのセンサの各々は、前記少なくとも1つの特定の成分の記憶された電圧駆動モデルおよび記憶された強度プロファイル特性を有し、それぞれの成分の選択的検出は、前記少なくとも2つのセンサの各々によって行われることを特徴とする。
【0032】
本発明は、自動車内燃機関の排気ラインに関し、そのようなセンサまたは少なくとも2つの検出または測定センサのそのようなアセンブリを備え、ガス状または液体混合物は、排気ラインを通過する排気ガスによって形成され、前記少なくとも1つの特定の成分または前記少なくとも2つの特定の成分は、それぞれ排気ガス中に含まれる1つまたは複数の汚染物質であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の詳細な説明を読み、非限定的な例として与えられている添付の図面に照らして明らかになるであろう。
図1は、高電子移動度トランジスタを備える収集セルを有する、本発明によるセンサの一実施形態の概略図である。
図2は、一酸化窒素NO、二酸化窒素NOおよびアンモニアNHなどの異なる成分の電圧の関数としての電流強度曲線を示す図である。
図3および図3aは、時間の関数としてそれぞれ2ボルトおよび7ボルトの電圧について、二酸化窒素を検出するための測定電圧を示す図である。
図4a、図4bおよび図4cは、それぞれ2、5および7ボルトの異なる電圧について、一酸化窒素に対する分単位の応答時間の関数としてのミリアンペア単位の電流曲線を示す図である。
図5および図5aは、再生電極を使用したセンサの有効面積の、本発明の文脈における好ましい再生を示す図である。
図6は、図5および図5aのものの代替のセンサの有効面積の、再生電圧によって生成される本発明の文脈における好ましい再生を示す図である。
図7は、水素およびアンモニアの形態の成分について本発明によるセンサのゲートの白金層の厚さの関数として得られた、これらの2つの要素に対するセンサの感度を表す2つの電圧曲線を示す図である。
図8は、本発明によるセンサのゲートを形成する白金層のいくつかの形態を示す図である。
【0034】
図は例として示されており、本発明を限定するものではないことに留意されたい。それらは、本発明の理解を容易にすることを意図した概略図を構成しており、必ずしも実際の用途の規模ではない。特に、示されている様々な要素の寸法は、現実を表すものではない。
【0035】
以下、すべての図を組み合わせて参照する。1つまたは複数の特定の図を参照するとき、これらの図は、示されている参照番号を認識するために他の図と組み合わせて解釈される。
【0036】
すべての図、特に図1を参照すると、本発明は、ガス状または液体混合物中に存在する少なくとも1つの特定の成分を検出または測定するためのセンサ1に関する。センサ1は、ソース2と、ドレイン3とを備え、ゲート4がソース2とドレイン3との間に挿入される高電子移動度トランジスタを有する少なくとも1つの収集セルを備える。
【0037】
高電子移動度トランジスタは、2つの対向する側方端部でドレイン3およびソース2を支持する。一実施形態では、ソース2とドレイン3との間に、ナノ構造III-N半導体層5と、Al0.3Ga0.7N層6または活性静電相互作用層とが延びており、半導体層5は、Al0.3Ga0.7N層6の上に重ねられている。Al0.3Ga0.7N層6は、GaN層7の上に重ねられる。
【0038】
ナノ構造III-N半導体層5は、電位差を生じさせることによって、検出または測定される成分(単数または複数)のイオン、例えば窒素酸化物NOxまたは酸素Oに対する解離酸素陰イオンO2-のための入力ゲートを形成する層4または層を支持する。入力ゲートを形成するこの層4またはこれらの層は、有利には、酸化物層10で被覆されており、白金またはタングステンとすることができる。
【0039】
Al0.3Ga0.7N層6の下には、ソース2とドレイン3とを接続するチャネルが延びており、チャネル自体は、GaN層7の上に重ねられ、絶縁基板として作用する。図5では、サファイア層11が、GaN層7の下に設けられる。
【0040】
センサ1は、ソース2とドレイン3との間に電圧を印加するための手段と、収集セルの電流強度Imeasを監視するための手段とを有するマイクロプロセッサを備える。本発明によれば、マイクロプロセッサは、記憶手段によって保存された電圧モデルに従った電圧駆動手段と、電圧モデルの印加中に電流強度Imeasを記録するための手段と、記憶手段によって保存された前記少なくとも1つの特定の成分の強度プロファイル特性を認識するための手段とを備える。
【0041】
本発明はまた、前述のように、センサ1によってガス状または液体混合物中に存在するいくつかの成分の中から少なくとも1つの特定の成分を検出または測定するための方法に関する。電圧がソース2とドレイン3との間に印加され、収集セルの電流強度Imeasが記録される。
【0042】
本発明によれば、ソース2-ドレイン3間電圧が駆動されて電流強度Imeasを変化させ、電圧は、前記少なくとも1つの特定の成分の強度プロファイル特性を供給するために実験によって予め決定された電圧モデルに従って駆動される。
【0043】
センサ1の同じトランジスタは、異なる特定の成分専用の異なる所定のモデルに連続的に従うことができ、したがってこれは、ソース2とドレイン3との間に印加される電圧、すなわち電圧モデルの所定の発生の対象であった電圧を変えることによって可能である。この所定の電圧モデルは、高周波電圧スケールであり得る。
【0044】
本発明の好ましいが非限定的な用途は、個別にまたは組み合わせて採取される、以下の成分を検出または測定するためのものである:一酸化窒素NO、二酸化窒素NO、アンモニアNH、一酸化炭素CO、二酸化炭素COおよび酸素O。これらの成分は、非限定的なものであり、自動車の排気ラインによって排出されるガス中の主な含有物である。
【0045】
図2は、15ppmおよび300℃の温度での、窒素酸化物NO、二酸化窒素NOおよびアンモニアNHなどの異なる成分のボルト単位の電圧の関数としての、ミリアンペア単位の電流強度Imeas曲線を示す。
【0046】
前記少なくとも1つの特定の成分の強度プロファイル特性は、センサ1の電流強度Imeasの符号の反転を有することができる。これは、例えば自動車の排気ラインの一酸化窒素またはNOであるガス状成分の検出の場合である。高電子移動度トランジスタを有するセンサ1の構造において、NOに対する信号電流は方向を変えるが、この信号変化は、NOの存在下でのみ起こり、二酸化窒素NOまたはアンモニアNHの存在下では起こらない。
【0047】
図3および図3aは、分単位の時間tの関数としてそれぞれ2ボルトおよび7ボルトの電圧について、二酸化窒素NOを検出するためのミリアンペアmAで測定された電流を示す。これらの図3および図3aは、分単位の時間tの関数としてそれぞれ2、5および7ボルトの異なる電圧について、センサが一酸化窒素にさらされたときに一酸化窒素NOを検出するためのミリアンペアmAで測定された電流に関して図4a、図4bおよび図4cと比較され、電流の最大の変動は、2ボルトで起こる突然の下降の形である。図3または図3aにおけるNOの存在下でのセンサの場合とは異なり、一酸化窒素NOの発生は、分極電圧に大きく依存することが分かる。分極が2~7ボルトを通過するとき、下降から上昇に移る発生の反転が観察される。
【0048】
したがって、NO信号の符号の変化は、ドレイン3とソース2とゲート4との間に異なる電圧を印加することによって得られる。これは、化学的表面の反応を変えることを可能にする。電圧モデルは、個別に採取された成分において具体的に様々な成分について生成することができ、そのようなモデルの生成は、センサ1の電流強度を増大させることによって成分の正確な検出および測定をもたらすことができることが確立された。
【0049】
存在する異なるガス、例えば自動車の排気ガス中の成分の場合にはNO、NH、CO、CO、Oなどに対するセンサ1の選択性を改善するために、NO信号の符号変化を使用することが可能である。
【0050】
本発明はまた、少なくとも2つの検出または測定センサ1のアセンブリに関する。各センサ1は、ガス状または液体混合物中に存在するそれぞれの特定の成分を検出する。2つのセンサ1は、前述のとおりにすることができ、前記少なくとも2つのセンサ1の各々は、前記少なくとも1つの特定の成分の記憶された駆動電圧モデルおよび記憶された強度プロファイル特性を有し、それぞれの成分の選択的検出は、前記少なくとも2つのセンサ1の各々によって行われる。
【0051】
そのようなセンサ1は、その接触表面、特にそのゲート4、またはゲート4を覆う酸化物層10への成分の粒子の堆積によって汚染されるという不都合を有する。ガス状または液体混合物中に存在するいくつかの成分の中から少なくとも1つの特定の成分を検出または測定するための前述の方法の文脈では、高電子移動度トランジスタを有するセンサ1を洗浄する方法を実施することができる。
【0052】
本発明による再生プロセスの第1の実施形態によれば、分極電圧は、ソース2、ドレイン3およびゲート4のうちの要素の2つの間に連続的に挿入された電極9によって印加され、電極9の電圧は、センサ1によってゲート4に保持された前記少なくとも1つの特定の成分のイオンを放出するために予め決定される。これは、電極9について図5および図5aに示されている。
【0053】
本発明による再生プロセスの第2の実施形態によれば、分極電圧は、ソース2、ドレイン3およびゲート4のうちの要素の2つの間に印加され、分極電圧は、センサ1によって保持された前記少なくとも1つの特定の成分のイオンを放出するために予め決定される。これは、図6に示されている。
【0054】
図5図5aおよび図6において、V+およびMassは、再生回路の極を示す。センサ1の基部には、補助再生回路8aが存在し得る。
【0055】
特に図1を参照すると、ゲート4は、有利には、酸化物層10で被覆された白金またはタングステンから作られた本体を備える。高電子移動度トランジスタを有するセンサ1は、ゲート4の厚さ、その材料およびその形態の関数である多数の異なる検出機構を有することができる。
【0056】
例えば、NOとNO/NHとの間の選択性を示す図2の曲線は、ショットキーダイオードセンサのBGaN/GaN接点上の微細白金層を使用して得られたものである。
【0057】
ゲート4を形成する白金層の厚さは、微粒子がBGaN表面の成長プロセス中に形成される場合に白金層の細孔の存在を排除するために、100nmとすることができる。ゲート4の層の厚さは、感度に重大な影響を及ぼし、NO、NO、NHについて100nmの白金層に対して0%、一方で15nmの白金層に対して20%である。
【0058】
NHまたはNH信号の存在による測定信号は、符号を変え、ゲート4の形態および厚さに対する変更を実施することによって反転させることができることも注目されてきた。
【0059】
図7は、キャリアガスとしてアルゴン中の20%の酸素を用いて150℃で水素H2およびアンモニアNHについての、ナノメートルnmでのゲート4の白金層の厚さに対するミリボルトmVでの2つの電圧曲線を示す。センサの感度は電圧の関数であるため、図7では、感度がゲート4の厚さに依存していることが分かる。
【0060】
図8は、ゲート4を製造するための方法によるゲート4の異なる形態を示す。白金層の形態のゲート4は、図8のdで参照される蒸着によって、bで参照される第1の圧力での噴霧によって、cで参照される第2の圧力での噴霧によって、またはナノピラーもしくは他の幾何学的構造でのマスキングによる白金を堆積を伴うaで参照される酸化物層で被覆することによって得ることができる。
【0061】
これらの修正は、感度および選択性を改善するために、高電子移動度トランジスタを有するセンサ1のすべての構造またはショットキーダイオードの形態のゲート4に適用することができる。
【0062】
本発明は、説明され図示された実施形態に決して限定されず、それらは単に例として与えられたものである。
図1
図2
図3
図3a
図4a
図4b
図4c
図5-5a】
図6
図7
図8