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特許7261768重ね合わせ内装部品及び重ね合わせ内装部品用のクッション部材
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  • 特許-重ね合わせ内装部品及び重ね合わせ内装部品用のクッション部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-12
(45)【発行日】2023-04-20
(54)【発明の名称】重ね合わせ内装部品及び重ね合わせ内装部品用のクッション部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/02 20060101AFI20230413BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20230413BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B32B3/26 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020119717
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016782
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 文彦
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171158(JP,A)
【文献】特開2014-046619(JP,A)
【文献】特開2017-030372(JP,A)
【文献】実開平05-060831(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B32B 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材を覆う表皮材と、前記基材と前記表皮材との間に設けられるクッション部材と、を備え、前記基材、前記クッション部材、及び前記表皮材が重ね合わせられてなる重ね合わせ内装部品において、
前記クッション部材は、
前記表皮材に接触する接触面及び複数の貫通孔を有する基部と、
前記貫通孔の各々の縁から前記基材に向かって突出する突起と、を有する、
重ね合わせ内装部品。
【請求項2】
前記貫通孔の縁に複数の前記突起が設けられている、
請求項1に記載の重ね合わせ内装部品。
【請求項3】
前記複数の貫通孔のうち単一の貫通孔の縁に設けられる複数の前記突起が、互いに異なる方向に向かって突出している、
請求項2に記載の重ね合わせ内装部品。
【請求項4】
複数の前記貫通孔が互いに一定の間隔をおいて設けられている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の重ね合わせ内装部品。
【請求項5】
基材と、前記基材を覆う表皮材との間に設けられ、前記基材及び前記表皮材と重ね合わせられることで重ね合わせ内装部品を構成するクッション部材であって、
前記表皮材に接触する接触面及び複数の貫通孔を有する基部と、
前記貫通孔の縁から前記基材に向かって突出する突起と、を有する、
重ね合わせ内装部品用のクッション部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせ内装部品及び重ね合わせ内装部品用のクッション部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の部材と、第1の部材に向かって突出するとともに撓み変形可能とされた先細状の複数の突起を有する第2部材とを備える内装部品が開示されている。
こうした内装部品によれば、第2の部材が第1の部材に向けて押し込まれると、複数の突起の一部または全体が第1の部材と接触するとともに撓み変形する。このため、使用者に対して、発泡ウレタンなどの発泡材が埋め込まれた内装部品に似た触感を提示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/132677号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、第2の部材の押し込み量を大きくするために、突起の長さを長くすると、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、上述したように、突起は先細状であることから、突起の長さを長くすると、これに伴って突起の基端部が太くなる。そのため、第2の部材の表皮部分のうち突起の基端部分とそれ以外の部分とで厚さの差が大きくなり、これに起因して熱収縮量の差が大きくなる。その結果、熱収縮に伴う成形不良、所謂ヒケが第2の部材の表皮部分に発生しやすくなり、意匠性が損なわれるおそれがある。
【0005】
これに対して、上記表皮部分を厚くすることでヒケの発生を抑えるようにすると、第2の部材を押し込む際の触感が硬くなるといった別の問題が生じる。
なお、上述したヒケの問題は、先細状の突起に限定されるものではなく、一定の太さの突起であっても、第2の部材の押し込み量を大きくするために突起を長くすることに伴って突起を太くした場合には同様にして生じることとなる。
【0006】
本発明の目的は、押し込み量の拡大と意匠性の向上との両立を図ることのできる重ね合わせ内装部品及び重ね合わせ内装部品用のクッション部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための重ね合わせ内装部品は、基材と、前記基材を覆う表皮材と、前記基材と前記表皮材との間に設けられるクッション部材と、を備え、前記基材、前記クッション部材、及び前記表皮材が重ね合わせられてなる。前記クッション部材は、前記表皮材に接触する接触面及び複数の貫通孔を有する基部と、前記貫通孔の各々の縁から前記基材に向かって突出する突起と、を有する。
【0008】
また、上記目的を達成するための重ね合わせ内装部品用のクッション部材は、基材と、前記基材を覆う表皮材との間に設けられ、前記基材及び前記表皮材と重ね合わせられることで重ね合わせ内装部品を構成する。クッション部材は、前記表皮材に接触する接触面及び複数の貫通孔を有する基部と、前記貫通孔の縁から前記基材に向かって突出する突起と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】重ね合わせ内装部品の一実施形態について、内装部品の断面図。
図2】同実施形態のクッション部材の斜視図。
図3】同実施形態のクッション部材の平面図。
図4】同実施形態のクッション部材を成形する金型の断面図。
図5】同実施形態のクッション部材について、1つの貫通孔を中心に拡大して示す斜視図。
図6】同実施形態のクッション部材について、1つの貫通孔を中心に拡大して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図6を参照して、一実施形態について説明する。なお、図1は、図3の1-1線に沿った断面図である。
図1に示すように、重ね合わせ内装部品(以下、内装部品10)は、例えば自動車のドアトリムであり、基材11と、基材11を覆う薄板状の表皮材12と、基材11と表皮材12との間に設けられるクッション部材13とを備えている。基材11、クッション部材13、及び表皮材12が重ね合わされることで内装部品10が形成されている。
【0011】
基材11は、ポリプロピレンなどの硬質樹脂材料により形成されている。
表皮材12は、軟質ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂材料により形成されている。
クッション部材13は、軟質ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂材料により形成されている。
【0012】
図1図3に示すように、クッション部材13は、表皮材12に接触する接触面21及び複数の貫通孔22を有する板状の基部20と、各貫通孔22の縁から基材11に向かって突出する複数の突起30とを有しており、一体成形されている。なお、本実施形態の基材11は一定の厚さを有している。
【0013】
図2及び図3に示すように、各貫通孔22は、略正三角形状である。
図3に示すように、各貫通孔22は、平面視において互いに同一の姿勢にて、且つ互いに一定の間隔をおいて設けられている。
【0014】
図1図3に示すように、各突起30の突出方向は、基部20に対して傾斜している。突起30の基端部は、貫通孔22の内周面よりも貫通孔22の内側に突出している。
図1に示すように、突起30の全体が、当該突起30が設けられている貫通孔22を接触面21に直交する方向(図1の上下方向)に沿って仮想的に延長した領域V内に位置している。
【0015】
図2及び図3に示すように、各突起30は、角が丸められた四角錐台形状である。
本実施形態では、貫通孔22の縁において正三角形の各頂点に対応する3つの位置に、3つの突起30がそれぞれ設けられている。
【0016】
上記3つの突起30は、貫通孔22の互いに異なる辺に沿って延在している。すなわち、上記3つの突起30は、互いに異なる方向に突出しており、互いに間隔をおいて設けられている。
【0017】
図1に示すように、表皮材12に対して外力が作用していない状態において、クッション部材13の基部20の接触面21は表皮材12に接触している。また、この状態において、各突起30の先端は基材11に接触している。
【0018】
図4に示すように、本実施形態では、固定型40の成形面41によってクッション部材13の基部20の接触面21を成形するとともに、可動型50の成形面51によって基部20の上記接触面21とは反対側の面、すなわち基材11に対向する対向面23を成形する。
【0019】
この場合、各突起30のうち貫通孔22の軸線に近づく側である内側を向く部分31は、可動型50の成形面51ではアンダーカットとなる。
そこで、図5に一点鎖線にて示すように、本実施形態では、上記内側を向く部分31を、基部20の貫通孔22を利用することで、固定型40の成形面41の凸部42によって成形する。すなわち、固定型40と可動型50とで突起30を分割して成形する。
【0020】
図6に示すように、このようにして成形されるクッション部材13において貫通孔22の縁と対向面23との境界部分には、貫通孔22の周方向に沿って延びるパーティングライン24が形成される。
【0021】
また、クッション部材13において各突起30のうち貫通孔22の軸線に近づく側である内側を向く部分31と外側を向く部分32との境界部分には、突起30の突出方向に沿って延びるパーティングライン33が形成される。
【0022】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)クッション部材13は、表皮材12に接触する接触面21及び複数の貫通孔22を有する基部20と、貫通孔22の各々の縁から基材11に向かって突出する突起30とを有する。
【0023】
こうした構成によれば、表皮材12が基材11に向けて押し込まれると、クッション部材13の基部20から突出する複数の突起30が基材11と接触するとともに撓み変形する。このため、使用者に対して、発泡ウレタンなどの発泡材が埋め込まれた内装部品に似た触感を提示することができる。
【0024】
また、表皮材12自体に突起30を設けなくて済むため、突起30の成形に起因した表皮材12の成形不良の問題を回避できる。
また、表皮材12の厚さを薄くできるため、表皮材12を押し込む際の触感が硬くなることを抑制できる。
【0025】
さらに、可動型50の成形面51ではアンダーカットとなる突起30の内側を向く部分31を、基部20の貫通孔22を利用することで固定型40の成形面41の凸部42によって成形することができる。すなわち、固定型40と可動型50とで突起30を分割して成形することができる。
【0026】
したがって、押し込み量の拡大と意匠性の向上との両立を図ることができる。
(2)貫通孔22の縁に複数の突起30が設けられている。
こうした構成によれば、1つの貫通孔22の縁に複数の突起30が設けられるため、基部20の単位面積当たりにおける突起30の数を増やすことができる。このため、突起30が形成されていない部分を減らすことができ、位置による触感のばらつきを抑制できる。
【0027】
(3)複数の貫通孔22のうち単一の貫通孔22の縁に設けられる複数の突起30が、互いに異なる方向に向かって突出している。
こうした構成によれば、各突起30の傾斜方向を異ならせることによって、位置による触感のばらつきを抑制できる。
【0028】
(4)複数の貫通孔22が互いに一定の間隔をおいて設けられている。
こうした構成によれば、突起30の数が位置によってばらつくことを抑制できる。このため、位置による触感のばらつきを抑制できる。
【0029】
<変更例>
上記実施形態は、例えば以下のように変更して実施することもできる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0030】
・貫通孔22同士は不等間隔にて設けられていてもよい。
・貫通孔22の形状は、略正三角形に限定されず、四角形や五角形などの他の多角形であってもよいし、円形であってもよい。
【0031】
・貫通孔22の縁から突出する突起30の数は3つに限定されず、1つや2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
・クッション部材13は、軟質ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂材料により形成されているものに限定されない。要するに、クッション部材13としては、可撓性材料であればよく、硬質樹脂材料により形成されているものであってもよい。
【0032】
・本発明に係る重ね合わせ内装部品及び重ね合わせ内装部品用のクッション部材13は、自動車のドアトリムに適用されるものに限らず、自動車のダッシュボードや、コンソールボックス、インストルメントパネルなど他の内装部品に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10…内装部品
11…基材
12…表皮材
13…クッション部材
20…基部
21…接触面
22…貫通孔
23…対向面
24…パーティングライン
30…突起
31…内側を向く部分
32…外側を向く部分
33…パーティングライン
40…固定型
41…成形面
42…凸部
50…可動型
51…成形面
図1
図2
図3
図4
図5
図6